JP5721191B2 - 3段階方式矩形波多重パルスを利用した藻類細胞への遺伝子導入法 - Google Patents

3段階方式矩形波多重パルスを利用した藻類細胞への遺伝子導入法 Download PDF

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Description

本発明は、第1電気パルスの総電力量を所定範囲にして3段階方式の矩形波多重パルスを与えて電気穿孔を行うことにより、細胞壁を有した状態のままの真核藻類の細胞に効率良く遺伝子導入する技術に関する。
・真核藻類へ遺伝子導入する場合の技術上の課題
近年、新種の有用な真核藻類が次々と発見されており、次世代バイオ燃料生産の鍵として光合成によって油脂を生産する微細藻類の利用が期待されている。そのため、これらの藻類についての有用な形質を有する系統を作成するために、遺伝子導入及び形質転換技術の開発が求められていた。
ところが、真核藻類の細胞は、通常の植物細胞と同様に細胞を保護するための厚い細胞壁を有するため、遺伝子導入及び形質転換を行うためには技術上の大きな課題が存在する。
現在、真核藻類細胞に対する形質転換技術としては、具体的には、(1) 藻類細胞、導入したいDNA、及びガラスビーズを溶液中に共存させ、一定時間強く撹拌することにより、細胞に損傷を与えて細胞内にDNAを導入する‘ガラスビーズ法’を挙げることができる(非特許文献1 参照)。また、(2) 藻類細胞、導入したいDNAを溶液中に共存させ、コンデンサーに充電された電流を放電し、細胞に損傷を与えて細胞内にDNAを導入する‘エレクトロポレーション法’も行われている(非特許文献2 参照)。
しかし、ガラスビーズ法及びエレクトロポレーション法では、対象の藻類細胞を、細胞壁を除去した細胞状態である「プロトプラスト」の状態にして遺伝子導入を行う必要がある。そのため、これらの方法を行う場合には、対象の藻類の種類ごとにプロトプラスト化及びその再生系を確立する必要がある。(なお、プロトプラストを調製しない場合には、細胞壁を欠損した特別な変異株を作成することが必要となる。)
従って、これらの方法を特定の藻類(クラミドモナス等)以外の大部分の藻類の種類に対して用いることは、現実的には困難であると認められる。また、クラミドモナス等に対して行う場合であっては、プロトプラスト化とその再生は煩雑な作業であるため、実験者によっては再現性が低いという問題が指摘されている。
また、プロトプラスト調製を省略できる方法としては、(3)‘遺伝子銃(パーティクルガン)’を用いた方法が挙げられる。当該方法は、導入したいDNAをコーティングした金粒子又はタングステン粒子を調製し、火薬や窒素銃で細胞に当該粒子を打ち込むことで細胞内にDNAを導入する方法である(非特許文献3,4 参照)。
しかし、当該方法は、高価で特別な装置と高額な消耗品が必要であり、試料調製に長時間を要し、一般的な実験室レベルの設備で利用することは困難な方法であると認められる。また、ハイスループットや大量処理を行うことに適さないという問題がある。さらに、遺伝子導入頻度が低いため、十分な形質転換効率を期待することができないという問題も指摘されている。
・真核藻類遺伝子導入技術の必要性
このように、真核藻類細胞に外来遺伝子を導入するためには、技術的な課題が存在し、クラミドモナス等の特定の種類を除いては、遺伝子導入が実質的に困難な状況である。そのため、いずれの種類の藻類に対しても施用が可能な汎用性の高い遺伝子導入法の開発が望まれている。特に、緑藻類や珪藻類の様々な有用藻類に対して即座に施用可能な技術の開発が求められている。
また、クラミドモナス等に対して遺伝子導入を行う場合に関しても、細胞壁溶解酵素であるガメトライシンの調製が必要となるため、より短時間で効率良く遺伝子導入可能な方法の開発が望まれている。
Kindle, K.: High-frequency nuclear transformation of Chlamydomonas reinhardtii. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, p1228-1232 (1990). Shimogawara, K., Fujiwara, S., Grossman, A., and Usuda, H.: High-efficiency transformation of Chlamydomonas reinhardtii by electroporation. Genetics, 148, p1821-1828 (1998). Boynton, J., Gillham, N., Harris, E., Hosler, J., Johnson, A., Jones, A., Randolph-Anderson, B., Robertson, D., Klein, T., Shark, K., and Sanford, J.: Chloroplast transformation in Chlamydomonas with high velocity microprojectiles. Science, 240, p1534-1538 (1998). Blowers, A., Bogorad, L., Shark, K., and Sanford, J.: Studies on Chlamydomonas chloroplast transformation: foreign DNA can be stably maintained in the chromosome. Plant Cell, 1, p123-132 (1989). Sukharev S.I., Klenchin V.A., Serov S.M., Chemomordik L.V., and Chizmadzhev Yu.A.: Electroporation and electrophoretic DNA transfer into cells. Biophys. J., 63, p1320-1327 (1992).
本発明は、上記課題を解決し、細胞壁を有した状態のままの真核藻類細胞に直接施用可能な技術であって、藻類の種類に限定されることなく高効率で再現性良く遺伝子導入及び形質転換を行うことができる技術を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねたところ、高電圧で短時間の矩形波電気パルス(第1電気パルス)の総電力量を所定範囲条件になるようにして与え、次いで低電圧で長時間の矩形波電気パルス(第2電気パルス)を2回以上与え、次いで、前記第2電気パルスとは逆の極性の低電圧で長時間の矩形波電気パルス(第3電気パルス)を2回以上与えて、3段階方式矩形波多重パルスによる電気穿孔(エレクトロポレーション)を行うことによって、細胞壁を有した状態のままの真核藻類細胞に対して、高い効率で安定して遺伝子導入及び形質転換できることを見出した。
特に本発明者らは、これらの電気条件において、「第1電気パルスの総電力量が所定範囲にある条件」を充足することが特に重要な技術的特徴であることを見出した。
また、本発明者らは、当該電気条件を満たすエレクトロポレーション法が、特定の藻類の種類に限定されることなく、緑藻類と珪藻類に対して幅広く適用可能な技術であることを見出した。
なお、ここで、従来技術として真核藻類細胞に対して一般的に行われているエレクトロポレーション法では、懸濁状態にした細胞に対して、「減衰波方式(エクスポネンシャル方式)」を採用する出力装置からの電気パルスを1回与える方法が良く用いられている(例えば、非特許文献2 参照)。また、哺乳類細胞に対する技術としては、2種類の電気パルスを与えることにより哺乳類細胞に効率良く遺伝子導入する方法が開示されている(非特許文献5 参照)。
しかし、これらの文献に記載の方法にて「細胞壁を有した状態の藻類」にエレクトロポレーションを行った場合、遺伝子導入効率が著しく低い値となる。そのため、これらの技術によるエレクトロポレーションを施用する場合には、電気パルスをかける前に対象の藻類細胞をプロトプラスト化することが必要となる。
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
即ち、[請求項1]に係る発明は、細胞壁を有した状態の緑藻類細胞と核酸分子を含有する溶液に対して、前記溶液に1回又は2回以上の下記(A)に記載の条件を満たす矩形波電気パルスを、電力量の合計が1.3〜4.9J/100μLになるように与え;次いで下記(B1)及び(B2)に記載の条件を満たす矩形波電気パルスを2回以上与え、;次いで下記(C1)〜(C3)に記載の条件を満たす矩形波電気パルスを2回以上与えることにより、;3段階方式矩形波多重パルスによる電気穿孔を行うことを特徴とする、真核藻類の細胞に外来遺伝子を導入する方法に関するものである。
(A):1パルスの電圧が750V/cm以上である矩形波電気パルス。
(B1):1パルスの電圧が150V/cm以下である矩形波電気パルス。
(B2):1パルスの電力量が0.02〜0.6J/100μLである矩形波電気パルス。
(C1):上記(B1)及び(B2)に記載の条件を満たす電気パルスとは逆の極性の矩形波電気パルス。
(C2):1パルスの電圧が150V/cm以下である矩形波電気パルス。
(C3):1パルスの電力量が0.02〜0.6J/100μLである矩形波電気パルス。
また、[請求項2]に係る発明は、細胞壁を有した状態の珪藻類細胞と核酸分子を含有する溶液に対して、前記溶液に1回又は2回以上の下記(A)に記載の条件を満たす矩形波電気パルスを、電力量の合計が3.3〜14.3J/100μLになるように与え;次いで下記(B1)及び(B2)に記載の条件を満たす矩形波電気パルスを2回以上与え、;次いで下記(C1)〜(C3)に記載の条件を満たす矩形波電気パルスを2回以上与えることにより、;3段階方式矩形波多重パルスによる電気穿孔を行うことを特徴とする、真核藻類の細胞に外来遺伝子を導入する方法に関するものである。
(A):1パルスの電圧が750V/cm以上である矩形波電気パルス。
(B1):1パルスの電圧が150V/cm以下である矩形波電気パルス。
(B2):1パルスの電力量が0.02〜0.6J/100μLである矩形波電気パルス。
(C1):上記(B1)及び(B2)に記載の条件を満たす電気パルスとは逆の極性の矩形波電気パルス。
(C2):1パルスの電圧が150V/cm以下である矩形波電気パルス。
(C3):1パルスの電力量が0.02〜0.6J/100μLである矩形波電気パルス。
また、[請求項3]に係る発明は、前記緑藻類又は珪藻類が単細胞微細藻類である、請求項1又は2のいずれかに記載の方法に関するものである。
また、[請求項4]に係る発明は、上記(A)に記載の条件を満たす矩形波電気パルスを与える回数が2回以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法に関するものである。
また、[請求項5]に係る発明は、上記(B1)及び(B2)に記載の条件を満たす矩形波電気パルスを与える回数が5回以上であり、且つ、上記(C1)〜(C3)に記載の条件を満たす矩形波電気パルスを与える回数が5回以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法に関するものである。
また、[請求項6]に係る発明は、前記電気穿孔を行うにあたり、ギャップ間の空隙が2mm以上のキュベット電極を用いることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法に関するものである。
また、[請求項7]に係る発明は、前記藻類細胞が前記溶液中に懸濁状態になっていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法に関するものである。
また、[請求項8]に係る発明は、請求項1〜7のいずれかの方法により遺伝子導入を行うことを特徴とする、真核藻類の細胞を形質転換する方法に関するものである。
本発明は、細胞壁を有した状態のままの真核藻類細胞に直接施用可能なエレクトロポレーション技術を提供する。また、真核藻類細胞に高効率で再現性良く遺伝子導入及び形質転換を行うことを可能とする。
これにより、本発明では、電気パルス処理前のプロトプラスト調製や細胞壁欠損株の作成が不要となるため、藻類の種類に限定されることなく緑藻類と珪藻類に対して幅広く施用可能な汎用性の極めて高い技術となる。即ち、本発明の方法は、遺伝子導入法が確立されていない有用な緑藻類と珪藻類に対して好適に施用可能な技術となることが期待される。
なお、珪藻類に対するエレクトロポレーション法による遺伝子導入及び形質転換は、本発明により初めて達成された重要な成果である。
以上により、本発明の遺伝子導入及び形質転換技術は、多くの有用真核藻類(特にバイオ燃料となる油脂生産藻類等)の商業的利用および学術研究の進展を促す技術になることが期待される。
本発明に係る3段階方式矩形波多重パルス電気穿孔によるエレクトロポレーション法の概念を示した図である。縦軸は電圧(V)、横軸は時間(m秒)を示す。図中の「Pp」はPoring Pulse、「Tp」はTransfer Pulseを示す。 実施例1において、ハイグロマイシン耐性遺伝子を形質転換したクラミドモナス細胞が増殖した後のTAP寒天培地を撮影した写真像図である。増殖した緑色のコロニーが、ハイグロマイシン耐性を有するクラミドモナスのコロニーを示す。 実施例2において測定した形質転換細胞数を示すグラフである。縦軸はDNA 1μgあたりの形質転換細胞数、横軸はPoring Pulseのパルス幅(m秒)を示す。(A): Poring Pulseの電圧が200V(1000V/cm)の条件での結果を示す図である。(B): Poring Pulseの電圧が250V(1250V/cm)の条件での結果を示す図である。(C): Poring Pulseの電圧が300V(1500V/cm)の条件での結果を示す図である。 実施例3において測定した形質転換細胞数を示すグラフである。縦軸はDNA 1μgあたりの形質転換細胞数、横軸はPoring Pulseの総電力量(J/100μL)を示す。 実施例4において測定した形質転換細胞数を示すグラフである。縦軸はDNA 1μgあたりの形質転換細胞数、横軸はDNA濃度を示す。 実施例5において、蛍光顕微鏡を用いてpTT1-LciB-GFPを形質転換した細胞を撮影した写真像図である。緑色の部分がGFP蛍光を示す。図中のBarは5μmを示す。 実施例8において測定した形質転換細胞数を示すグラフである。縦軸はDNA 1μgあたりの形質転換細胞数、横軸はPoring Pulseの総電力量(J/100μL)を示す。 実施例8において、pPha-T1-sGFP-GUSを形質転換した細胞を撮影した写真像図である。図中のBarは10μmを示す。(A) 顕微鏡を用いて可視光下で撮影した写真像図である。(B) 蛍光顕微鏡を用いて撮影した写真像図である。緑色の部分がGFP蛍光を示す。(C) GUS染色後に顕微鏡を用いて可視光下で撮影した写真像図である。青色の部分がGUS染色された部分を示す。
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
本発明は、第1電気パルスの総電力量を所定範囲にして3段階方式の矩形波多重パルスを与えて電気穿孔を行うことにより、細胞壁を有した状態のままの真核藻類の細胞に効率良く外来遺伝子を導入する技術に関する。
[真核藻類細胞]
本発明のエレクトロポレーション法は、「細胞壁を有した状態の真核藻類細胞」を遺伝子導入対象とする技術である。
ここで、‘真核藻類’とは、光合成を行う真核性の生物を指す用語であるが、本発明の技術は、具体的には、緑藻類又は珪藻類に分類される藻類を対象とするものである。これらの細胞は、細胞膜の外側に厚い細胞壁を有するという点で共通する性質を有する。
これらの細胞に対して、従来法でのエレクトロポレーションが直接施用できない理由は、当該厚い細胞壁が遺伝子導入を阻害している点にある。即ち、バクテリアや動物細胞(哺乳類、昆虫類等)に適用されている通常のエレクトロポレーション法を行っただけでは、真核藻類細胞に対して実用に足るレベルでの遺伝子導入や形質転換を行うことができない。
本発明の技術は、緑藻類又は珪藻類に属する真核藻類のうち、野生において通常に生存している藻類の細胞壁の種類と厚さを有するものであれば、如何なる種類であっても適用が可能な技術であると認められる。
ここで、‘緑藻類’とは、クロロフィルa,bを有する葉緑体を持った緑藻(広義の緑藻)を指す。緑色植物から陸上植物(コケ植物、シダ植物、裸子植物、被子植物)を除いた一群と定義することもできる。
当該緑藻類には、単細胞から多細胞のものまで極めて多様な種類の藻類が含まれる。具体的には、緑藻綱(狭義の緑藻:クラミドモナス、ボルボックス、ゴニウム、ボトリオコッカス、クンショウモ、イカダモなど)、アオサ藻綱(アオノリ、アナアオサ、ミル、カサノリなど)、車軸藻綱(シャジクモ、コレオケーテ、ミカヅキモ、ツヅミモ、アオミドロ、ケートスフェリディウムなど)に属する藻類を挙げることができる。
また、オイル生産菌などの多くの有用藻類が発見されつつあり、本発明の遺伝子導入技術の適用が期待される一群である。また、クラミドモナスは、ゲノム解析や遺伝的解析が極めて高度に進展しており、多くの遺伝子変異体も蓄積されている。
緑藻類は、セルロースを含む多糖類を主成分とする厚い細胞壁で覆われている種類が多いが、野生型に見られる細胞壁の種類や厚さを有する種類であれば、本発明の遺伝子導入技術の適用が可能である。
なお、本発明の技術は、好ましくはクラミドモナスが属するボルボックス目(オオヒゲマワリ目)、より好ましくはクラミドモナス科、さらに好ましくはクラミドモナス属、に属する緑藻類の細胞に対して好適に施用可能な技術である。これらの藻類細胞の細胞壁は、緑藻類の中でも特にクラミドモナスと細胞壁の性質が近似すると認められるからである。
なお、いわゆる‘植物’と呼ばれる陸上植物(コケ植物、シダ植物、裸子植物、被子植物)の一群は、約4.5〜5億年前に緑藻類の一部であるシャジクモ藻類の仲間が上陸し陸上に適応放散したものである。しかし、植物は多細胞体制を高度に分化させた種類であり、陸上進出に伴う乾燥適応のため、細胞壁の二次肥大や木化等が起こった一群である。そのため、本発明の技術が原理的に適用可能かどうかは不明である。
ここで‘珪藻類’とは、黄色植物(不等毛植物)を構成する藻類の一群であり、葉緑体の性質により褐色の色彩を有している。全て単細胞性の種類であり、淡水及び海水プランクトンの多くを占める。赤潮の原因にもなる。具体的には、羽状目珪藻(フェオクチラム、シリンドロセカ、ナビクラなど)、中心目珪藻(サイクロセラ、タラシオシラ、カエトセロスなど)などを挙げることができる。当該珪藻類には、珪酸質の被殻を有する点と有用な脂質を生産する点から、商業的に重要な種類が存在する。また、単細胞性のフェオクチラムは、珪藻細胞の代表種として解析が詳細に行われている種類である。
珪藻類は、珪酸質の厚い細胞壁(被殻)で覆われている種類が多いが、野生型に見られる細胞壁(被殻)の種類や厚さを有する種類であれば、本発明の遺伝子導入技術の適用が可能であると認められる。
なお、本発明の技術は、好ましくはフェオダクチラムが属する羽状目(ナビキュラ目)、より好ましくはフェオダクチラム科、さらに好ましくはフェオダクチラム属、に属する珪藻類の細胞に対して好適に施用可能な技術である。これらの藻類細胞の細胞壁は、珪藻類の中でも特にフェオダクチラムと細胞壁の性質が近似すると認められるからである。
本発明の技術は、特に‘単細胞の微細藻類’に対して有効な技術である。培養や採集等により準備した藻類細胞に対して、特別な細胞処理を行うことなく直接電気穿孔処理を行うことが可能であるからである。また、遺伝子導入後に再生処理等を要することなくそのまま培養することが可能であるからである。
なお、‘多細胞藻類’に対して本発明の遺伝子導入技術を適用するためには、植物体をキュベットに入る大きさにするための処理が必要である。例えば、遺伝子導入効率及び形質転換効率の観点を踏まえると、細胞壁溶解酵素等で処理し単細胞〜数細胞の塊に分離した状態で電気穿孔処理を行うことが好適である。また、遺伝子導入後に組織再生を容易にする観点を踏まえると、細断や組織剥離等を行って組織片の状態で電気穿孔処理を行うことが望ましい。
[電気穿孔処理]
本発明では、上記藻類細胞と核酸分子を含有する溶液に対して、所定の電気パルス条件を充足するような3段階方式矩形波多重パルスを与える処理(電気穿孔処理)を行うことを必須とする技術である。
・エレクトロポレーションバッファー
当該電気穿孔処理は、前記電極容器に対象の前記藻類細胞と導入したい核酸分子を含有する溶液を電極溶液に充填して行う。
ここで、溶液(エレクトロポレーションバッファー)としては、淡水性の藻類の培養に用いる液体培地をそのまま又は水で希釈して用いることができる。即ち、特殊なエレクトロポレーションバッファーを購入したり調製したりする必要がない。また、海水性の藻類の場合には、塩分を含まない又は大幅に減らした培地を用いることができる。ただし、当該溶液としては、糖類(シュークロース、マンニトール、ソルビトール等)を加えて浸透圧を細胞質と等張になるように調節したものであることが望ましい。電気穿孔時の細胞の損傷を低減することができるからである。
また、当該溶液としては、抗生物質を含まない培地(抗生物質フリー培地)を用いることが好適である。抗生物質が溶液中に存在する場合、電気穿孔処理により抗生物質が細胞に取り込まれてしまい、細胞の生存率が低下するためである。なお、低濃度(例えば1%以下、好ましくは0.5%以下)であれば抗生物質の含有は許容される範囲である。
・核酸分子
ここで‘核酸分子’とは、導入対象となる外来性の核酸分子(DNA, RNA, RNPなど)を広く指すものであるが、主な導入対象としてはDNAが想定される。DNAの形状としては、線状化したもの(PCR産物、制限酵素処理物など)が好ましいが、プラスミド等のように環状の状態であっても良い。また、オリゴヌクレオチド、siRNA、アンチセンスRNA、ウイルスベクターを導入することも可能である。
また、配列情報としては、遺伝子配列を有するcDNAやゲノムDNAの配列を挙げることができるが、遺伝子の全長配列だけでなく、部分配列、調節領域、スペーサー領域、変異配列、コンストラクト配列なども含まれる。
当該溶液(エレクトロポレーションバッファー)に含有させる核酸の濃度としては、0.5μg/mL以上、好ましくは1μg/mL以上、より好ましくは2μg/mL以上、さらに好ましくは2.5μg/mL以上、特に好ましくは3μg/mL以上、一層好ましくは4μg/mL以上、より一層好ましくは4.5μg/mL以上、さらに一層好ましくは5μg/mL以上が好適である。核酸濃度が低すぎる場合、遺伝子導入効率が低くなり好ましくない。
上限としては、200μg/mL以下、好ましくは150μg/mL以下、より好ましくは125μg/mL以下、さらに好ましくは100μg/mL以下、特に好ましくは75μg/mL以下、一層好ましくは50μg/mL以下、より一層好ましくは40μg/mL以下、さらに一層好ましくは30μg/mL以下、特に一層好ましくは25μg/mL以下が好適である。核酸濃度が高すぎる場合、細胞の生存率が下がり、結果として形質転換効率が低下し好ましくない。
これらを踏まえると、核酸濃度1〜100μg/mL、好ましくは2.5〜50μg/mL、より好ましくは5〜25μg/mLの時に特に高効率での遺伝子導入及び形質転換が可能となる。
・細胞濃度
当該溶液(エレクトロポレーションバッファー)に含有させる細胞の濃度としては、10〜10細胞/mL、好ましくは5×10〜5×10細胞/mL、より好ましくは5×107〜2.5×10細胞/mL、さらに好ましくは2.5×107〜10細胞/mLの範囲に調整することが望ましい。
なお、当該上記藻類細胞と核酸を含む溶液の調製は、ピペッティング、ボルテックスミキサーなどで数秒攪拌する操作を行って、当該藻類細胞と核酸が溶液中で充分に混合した状態にすることが望ましい。電気穿孔処理時において細胞が懸濁状態になっている状態が最も好適である。なお、攪拌等の操作を行い過ぎて、溶液を泡立っている状態にすることは好ましくない。
・装置
当該電気穿孔処理を行うためには、後述する所定の電気パルス条件を充足する3段階方式矩形波多重パルスを出力可能な装置であれば、如何なる装置をも用いることができる。
例えば、ネッパジーン社の電気パルス出力装置「NEPA21(登録商標)」を好適に用いることができる。当該装置は、一回の処理ごとに電気抵抗値や電流値を計測する機能を有するため、電気条件の設定を詳細に行うことが可能となる。また、多重電気パルスを与える際において、電気パルスごとに電気極性を切り替える機能が備わっている。
なお、従来のスクエアーパルス式電気パルス出力装置の使用方法を工夫して電気穿孔を行うことも可能ではあるが、装置の機能上電気穿孔時の電力量を求めることができないため好適ではない。
当該電気穿孔処理は、電気パルス出力装置に接続されているキュベット電極ホルダーと細胞/核酸の混合溶液を入れる為の電極容器(キュベット電極)を用いて行う。前記電気パルス出力装置から出力された電気パルスは、キュベット電極保持用容器を経由して、その電極容器に挿入されたキュベット電極に出力され、電極容器内の細胞に通電される。
キュベット電極は、通常用いる容量のものであれば如何なるものも用いることができる。例えば、1mm gap(容量20〜70μm)、2mm gap(容量40〜400μm)、4mm gap(容量80〜800μm)を用いることができる。好適には、2mm gapキュベット以上の容量のもの(2mm gapキュベット又は4mm gapキュベット)を用いることで、遺伝子導入効率及び形質転換効率の結果を安定させることができる。
当該電気穿孔処理は、室温(例えば、10〜35℃程度)で行うことができる。なお、電極容器の金属部分への水滴付着を防止するために、氷冷は行わない方がよい。
[電気パルス条件]
本発明は、前記藻類細胞と核酸分子を含む溶液に対して、所定条件での高電圧で短時間の矩形波電気パルス(第1電気パルス)を与え、次いで低電圧で長時間の矩形波電気パルス(第2電気パルス)を2回以上与え、次いで、前記第2電気パルスとは逆の極性の低電圧で長時間の矩形波電気パルス(第3電気パルス)を2回以上与えて、3段階方式矩形波多重パルスによる電気穿孔(エレクトロポレーション)を行う方法である(例えば、図1 参照)。
本発明における第1〜3電気パルスは、‘電圧’と‘電力量’の両方が、後述する特定の範囲にあることを要する。
ここでの電圧は、前記電極容器の電極間の幅(具体的にはキュベット電極の幅)の単位cmあたりにかかる電圧Vを表す値である。例えば、300V/cmの電圧をかけるためには、1mm gapキュベットでは30V、2mm gapキュベットでは60V、4mm gapキュベットでは120Vの電圧をかければよい。
また、ここでの電力量(W)とは、前記溶液100μLあたりにかかる電力量(エネルギー量)を表す値である。例えば、抵抗50Ωの溶液100μLに、パルス幅5m秒の時間(T)で150Vの電圧(V)をかけた場合、3Aの電流(I)が発生する。この場合、当該溶液100μLあたりにかかる電力量(W=VIT)は2.25Jとなる。
また、本発明の電気パルスは、‘矩形波’での電気パルスを与えることを要する。‘減衰波’の電気パルスでは本発明の遺伝子導入効率を達成することができない。
・第1電気パルス:Poring Pulse (Pp)
本発明における電気穿孔処理では、所定条件での高電圧で短時間の矩形波電気パルス(第1電気パルス:Poring Pulse)を与えることを必須とする技術である。当該第1電気パルスを与えることによって、藻類細胞の細胞壁に損傷程度の少ない小孔が空けられる。
なお、バクテリアや動物細胞のエレクトロポレーション法(従来法)では、第1電気パルスの電圧を高くすることで、核酸分子(DNA, RNA等)が細胞内に導入されるという知見があるが、藻類細胞(植物細胞)では、単に電圧を上げただけでは実用的なレベルでの遺伝子導入を達成することができない。細胞壁の損傷がひどい場合には電気穿孔処理した細胞の生存率が著しく低下してしまうからである。
当該第1電気パルスでは、少なくとも750V/cm以上(2mm gap キュベットの場合で150V以上)の電圧をかけることが必要である。好ましくは800V/cm以上、より好ましくは850V/cm以上、さらに好ましくは900V/cm以上、特に好ましくは950V/cm以上、一層好ましくは1000V/cm以上の電圧をかけることが望ましい。電圧が低すぎる場合、細胞壁に小孔を空けることができないからである。
なお、当該第1電気パルスの電圧値の上限としては、後述する総電力量の条件が充足される限り特に制限なく与えることができる。細胞壁の損傷程度は、電圧ではなく‘総電力量(エネルギー量)’の値に依存するからである。
当該第1電気パルスは、‘総電力量’が所定の範囲にあることが必須となる。ここで総電力量とは、上記電圧値以上の電気パルスの電力量の合計値を示す値である。例えば、750V/cm以上の電気パルスを2回与えた場合には、当該2回の電気パルスの電力量の合計値が、総電力量の値となる。
当該総電力量としては、緑藻類の細胞を対象とする場合には、1.3J/100μL以上であることが必須となる。総電力量が低すぎる場合、十分な遺伝子導入効率を達成することができない。総電力量の下限としては、好ましくは1.7J/100μL以上、より好ましくは1.9J/100μL以上、さらに好ましくは2.1 J/100μL以上、特に好ましくは2.4J/100μL以上、一層好ましくは2.7J/100μL以上を挙げることができる。
また、当該総電力量の上限としては、4.9J/100μL以下であることが必須となる。総電力量が高すぎる場合、細胞壁や細胞膜の損傷が大きくなり生存率が低下するため好ましくない。総電力量の上限としては、好ましくは4.8J/100μL以下、より好ましくは4.6J/100μL以下、さらに好ましくは4.3J/100μL以下、特に好ましくは3.8J/100μL以下、一層好ましくは3.3J/100μL以下を挙げることができる。
これらを総合的に踏まえると、当該総電力量としては、1.3〜4.9J/100μL、好ましくは1.7〜4.8J/100μL、より好ましくは1.9〜4.6J/100μL、さらに好ましくは2.1〜4.3J/100μL、特に好ましくは2.4〜3.8J/100μL、一層好ましくは2.7〜3.3J/100μL、最も好ましくは3J/100μL付近が好適である。当該総電力量条件は、細胞壁に核酸の取り込みに好適な小孔を空けつつ、細胞壁や細胞膜の損傷を抑える条件に相当する。
当該総電力量としては、珪藻類の細胞を対象とする場合には、3.3J/100μL以上であることが必須となる。総電力量が低すぎる場合、十分な遺伝子導入効率を達成することができない。総電力量の下限としては、好ましくは4.8J/100μL以上、より好ましくは6.5J/100μL以上、さらに好ましくは7.5J/100μL以上を挙げることができる。
また、当該総電力量の上限としては、14.3J/100μL以下であることが必須となる。総電力量が高すぎる場合、細胞壁や細胞膜の損傷が大きくなり生存率が低下するため好ましくない。総電力量の上限としては、好ましくは12.9J/100μL以下、より好ましくは11.3/100μL以下、さらに好ましくは10.2J/100μL以下を挙げることができる。
これらを総合的に踏まえると、当該総電力量としては、3.3〜14.3J/100μL、好ましくは4.8〜12.9J/100μL、より好ましくは6.5〜11.3J/100μL、さらに好ましくは7.5〜10.2J/100μL、最も好ましくは8.9J/100μL付近が好適である。当該総電力量条件は、細胞壁に核酸の取り込みに好適な小孔を空けつつ、細胞壁や細胞膜の損傷を抑える条件に相当する。
なお、第1電気パルスを与える回数としては、総電力量が上記範囲であれば特に回数の制限なく与えることができる。例えば、前記電力量の範囲の電気パルスを1回で与えてもよいし、2回以上に分けて与えてもよい。具体的には2〜10回を挙げることができる。回数を分けることで、細胞壁損傷のダメージが若干低減される効果が期待される。
なお、当該複数回パルスを与える場合のパルス間の間隔としては、例えば200m秒以下、好ましくは100m秒以下、より好ましくは75m秒以下、さらに好ましくは50m秒以下を挙げることができる。
また、本発明においては、第1電気パルスのパルス幅及び減衰率は、電力量を決定する要因ではあるが、遺伝子導入効率や形質転換効率と直接相関する関係を示さない。
・第2電気パルス:Transfer Pulse 1 (Tp1)
本発明における電気穿孔処理では、前記第1電気パルスを与えた後(最後の第1電気パルス出力後)、所定条件での低電圧で長時間の矩形波電気パルス(第2電気パルス:Transfer Pulse 1)を与えることを必須とする技術である。当該第2電気パルスにより、核酸分子が前記小孔(第1電気パルスにより形成された細胞壁の孔)から細胞内に効率的に取り込まれるからである。なお、当該第2電気パルスは、エネルギー量の低い低電力量のパルスであるため、細胞に損傷を与える懸念がない。
なお、第2電気パルスの電気極性は、第1電気パルスと同じ電気極性(電極の向きが同じ)であっても逆の極性(電極の向きが逆)であっても良いが、好ましくは同じ極性の電気パルスであることが望ましい。
当該第2電気パルスでは、150V/cm以下(2mm gap キュベットの場合で30V以下)の条件にて電圧をかけることが必要である。好ましくは125V/cm以下、より好ましくは100V/cm以下での電圧をかけることが望ましい。電圧が高すぎる場合、細胞壁の損傷が増大し生存率が低下してしまい好適でない。
なお、当該第1電気パルスの電圧値の下限としては、後述する1パルスあたりの電力量の条件が充足される限り特に制限なく与えることができる。
当該第2電気パルスは、‘1パルスあたりの電力量’が所定の範囲にあることが必須となる。当該電力量としては、0.02J/100μL以上であることが必須となる。当該電力量が低すぎる場合、十分な遺伝子導入効率を達成することができない。当該電力量の下限としては、好ましくは0.04J/100μL以上、より好ましくは0.06J/100μL以上、さらに好ましくは0.08J/100μL以上、特に好ましくは0.09J/100μL以上、一層好ましくは0.1J/100μL以上を挙げることができる。
また、当該総電力量の上限としては、0.6J/100μL以下であることが必須となる。当該電力量が高すぎる場合、細胞壁の損傷が増大し生存率が低下するため好ましくない。当該電力量の上限としては、好ましくは0.5J/100μL以下、より好ましくは0.45J/100μL以下、さらに好ましくは0.4J/100μL以下、特に好ましくは0.35J/100μL以下、一層好ましくは0.3J/100μL以下、より一層好ましくは0.25J/100μL以下を挙げることができる。
これらを総合的に踏まえると、当該1パルスあたりの電力量としては、0.02〜0.6J/100μL、好ましくは0.04〜0.5J/100μL、より好ましくは0.06〜0.4J/100μL、さらに好ましくは0.08〜0.3J/100μL、特に好ましくは0.09〜0.25J/100μL、一層好ましくは0.1〜0.25J/100μLが好適である。
本発明においては、当該第2電気パルスを2回以上の回数にて与えることを要する技術である。当該回数としては、好ましくは3回以上、より好ましくは4回以上、さらに好ましくは5回以上、特に好ましくは6回以上、一層好ましくは7回以上、より一層好ましくは8回以上、さらに一層好ましくは9回以上、特に一層好ましくは10回以上が好適である。当該第2電気パルスの回数を多くすることによって、前記小孔からの核酸分子の取り込みを何度も行わせることができるため、導入効率を向上させることが可能となる。回数の上限としては、特に制限はないが、例えば20回以下を挙げることができる。これ以上に回数を増やしたとしても、効率向上があまり期待されないからである。
なお、当該複数回パルスを与える場合のパルス間の間隔としては、例えば200m秒以下、好ましくは100m秒以下、より好ましくは75m秒以下、さらに好ましくは50m秒以下を挙げることができる。
また、本発明においては、第2電気パルスのパルス幅及び減衰率は、電力量を決定する要因ではあるが、遺伝子導入効率や形質転換効率と直接相関する関係を示さない。
・第3電気パルス:Transfer Pulse 2 (Tp2)
本発明における電気穿孔処理では、前記第2電気パルスを与えた後(最後の第2電気パルス出力後)、前記第2電気パルスとは逆の電気極性(電極の向きが逆)である所定条件での低電圧で長時間の矩形波電気パルス(第2電気パルス:Transfer Pulse 2)を与えることを必須とする技術である。
当該第3電気パルスにより、第2電気パルスにより核酸分子の細胞への取り込み終わった後においても、さらに核酸分子を取り込ませることが可能となる。即ち、導入効率を大幅に向上させることが可能となる。なお、当該第3電気パルスも、第2電気パルスと同様に、エネルギー量の低い低電力量のパルスであるため、細胞に損傷を与える懸念がない電気パルスである。
当該第3電気パルスは、電気極性が逆である点を除けば、前記第2電気パルスと同条件の電気パルスである。即ち、第3電気パルスの各種電気条件としては、上記第2電気パルスに記載の条件と同条件を採用することができる。
[培養]
本発明の技術は、‘細胞壁を有した状態の真核藻類細胞’に対しての電気穿孔処理技術であり、対象藻類のプロトプラスト化処理が不要である。そのため、上記所定の電気パルスを与えて電気穿孔処理を行った後の細胞は、選択培地等を用いて通常に培養することで、極めて簡便に遺伝子導入された藻類細胞(形質転換された藻類細胞)を得ることが可能となる。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらにより限定されるものではない。
[実施例1]『矩形波3ステップ法によるエレクトロポレーション』
矩形波3ステップ法を用いることによって、細胞壁を有したままの緑藻類の細胞に対してキュベット電極を用いたエレクトロポレーション法による形質転換が可能かを検討した。
(1)「藻類細胞溶液の調製」
まず、形質転換の解析が容易な単細胞緑藻類クラミドモナスを対象にして検討を行った。
乾熱滅菌処理した300mL容三角フラスコにTAP培地(Tris-Acetate-Phospate培地)を100mLずつ分注し、TAP培地にて前培養していたクラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii C-9株:国立環境研究所 NIES-2235株)の培養液5mLを接種した。25℃で50μmol/m/secの光照射下にて100rpmで撹拌しながら、細胞濃度が1〜2×10/mL(730nmのODが0.3〜0.4)になるまで培養した。
当該藻類培養液を遠心(600×gで5分間)し、TSバッファー(40mMシュークロースを含むTAP培地)に懸濁し細胞溶液を調製した。
(2)「DNA溶液の調製」
プラスミドpHyg3(Berthold P. et al., Protist., 153(4), p401-412, (2002) 参照)のハイグロマイシン耐性遺伝子aph7を含む領域について、配列番号1,2に記載の塩基配列からなるプライマーを用いてPCR反応を行い(酵素:PrimeSTAR GXL DNA Polymerase, TAKARA, Japanを用いて)、1999bpのDNA断片を得た。これをPCR purification kit(QIAGEN, USA)を用いて精製し、DNA溶液を調製した。
(3)「電気パルス処理」
2mL容エッペンチューブに、細胞溶液とDNA溶液とを常温にて泡立てることなく良く混合して、最終細胞濃度1×10細胞/mL、最終DNA濃度10μg/mLの懸濁液を調製した。当該溶液40μL(4×10細胞/40μL、400ng/40μL)を2mm gapキュベット(EC-002S NEPAキュベット電極 40〜400μL容, ネッパジーン(株))に充填した。
当該キュベットを、矩形波電気パルスの発生が可能な電気パルス発生装置(NEPA21(登録商標), ネッパジーン(株)のキュベット電極用チャンバー(CU500, ネッパジーン(株))に装着し、Poring Pulse (Pp)、Transfer Pulse 1 (Tp1)、Transfer Pulse 2 (Tp2)の3種類の矩形波電気パルスを順に与える3ステップ式多重パルス電気穿孔法(図1 参照)による電気パルス処理を行った(試験区1-1)。なお、一連の操作は、キュベットへの水滴付着を防止するため、室温条件にて行った。なお、表中における、Transfer Pulseの極性を表す「+」の記号はPoring Pulseと同じ極性の電気パルスを、「−」の記号はPoring Pulseと逆の極性の電気パルスを与えたことを示す。
一方、対照として、通常の減衰波電気パルス発生装置(Gene-Pulser, Bio-Rad)を使用して、減衰波電気パルス法での標準的条件での電気パルス処理を行った(試験区1-2)。
(4)「形質転換効率の評価」
電気処理後1分以内に、当該細胞/DNA懸濁液を、14mL容ポリエチレンチューブ内に調製したTSバッファー10mLと混合した。これを、2〜3μmol/m/secの光照射下で、25℃で24時間静置培養した。
培養後、当該溶液を遠心(600×g, 5分間)して上清を捨て、30μg/mLハイグロマイシンBを含む1.5%寒天TAP培地にプレーティングした。80μmol/m/secの光照射下で、25℃で静置培養し、4日後にハイグロマイシン抵抗性のコロニーの数を計測した。結果を表1に示した。また、形質転換細胞が増殖した後のTAP寒天培地の写真像図を図2に示した。
その結果、表1に記載の電気条件にてPoring Pulse、Transfer Pulse 1、Transfer Pulse 2 の3種類の矩形波電気パルスを順に与えるエレクトロポレーションを行うことにより、細胞壁を有したままの緑藻類細胞(クラミドモナス)に対して、極めて高効率での形質転換が可能なことが示された(試験区1-1)。
一方、従来の減衰波電気パルス法での標準的条件にてエレクトロポレーション法を行った場合、細胞壁を有する緑藻類細胞が形質転換された数は少なかった(試験区1-2)。
(5)「考察」
上記条件での3種類の矩形波電気パルスを順に与えることによって、細胞壁を有した状態の真核藻類に対して極めて高い効率での形質転換が可能となることが示された。当該実施例の方法では、藻類細胞に前処理を行うことなくとも、従来法の約26倍もの高い導入効率が達成できることが示された。
[実施例2]『Poring Pulseの電圧値及びパルス幅の検討』
Poring Pulseの電気パルス条件について、電圧値及びパルス幅が形質転換効率に与える影響を検討した。
(1)「電気パルス処理」
実施例1に記載の方法と同様にして細胞/DNA懸濁液(Chlamydomonas reinhardtii C-9株:1×10細胞/mL、pHyg3のaph7を含む約2kbpのDNA断片:10μg/mL)を調製し、当該溶液40μL(4×10細胞/40μL、400ng/40μL)を2mm gapキュベットに充填した。
調製した試料ごとにPoring Pulseの電圧を200V(1000V/cm), 250V(1250V/cm), 300V(1500V/cm)に変化させ、各電圧条件についてパルス幅を2ms, 4ms, 6ms, 8msで変化させて、3ステップ法による矩形波電気パルス処理を行った。なお、各条件について6サンプルずつ(計72サンプル)の試験を行った。また、パルス回数、減衰率、パルス間隔については、表2に示す固定値にて行った。また、当該処理に用いた機器や基本的操作は、実施例1に記載の方法と同様にして行った。
(2)「形質転換効率の評価」
実施例1に記載の方法と同様にして、TAP寒天培地で電気パルス処理後の細胞を培養し、培養後のハイグロマイシン抵抗性のコロニーの数を計測することで形質転換効率を評価した。結果を図3(A)〜(C)に示した。
その結果、Poring Pulseの電圧条件が200V(1000V/cm)(図3(A)), 250V(1250V/cm)(図3(B))の条件では、パルス幅を2〜8msに設定した場合、パルス幅が長い程形質転換体数は高い値となった。
一方、300V(1500V/cm)(図3(C))では、パルス幅を2〜6msに設定した場合パルス幅を増やすと導入効率が増加し、パルス幅6msの時に形質転換体数がピークを示す傾向が見られた。また、パルス幅を8msに設定した場合、形質転換体数がやや減少する傾向が見られた。
また、250V(1250V/cm)の条件の8msの場合(図3(B))と、300V(1500V/cm)の条件の8msの場合(図3(C))とを比較すると、電圧が低い250V(1250V/cm)の条件の方が、形質転換体数が多くなる傾向が見られた。
(3)「考察」
これらの結果から、当該方法における形質転換効率は、Poring Pulseの電気条件と密接な関係があることが示されたが、電圧値や電流値等との単純な比例関係にはないことが示された。
[実施例3]『Poring Pulseの電気量の検討』
Poring Pulseの電気パルス条件について、電力量が形質転換効率に与える影響を検討した。
(1)「電気パルス処理」
実施例1に記載の方法と同様にして細胞/DNA懸濁液(Chlamydomonas reinhardtii C-9株:1×10細胞/mL、pHyg3のaph7を含む約2kbpのDNA断片:10μg/mL)を調製し、当該溶液40μL(4×10細胞/40μL、400ng/40μL)を2mm gapキュベットに充填した。
調製した試料ごとにPoring Pulseの総電力量(J/100μL)を図4に示す横軸値(0.5〜5J/100μLの範囲)で変化させて、計84サンプルについて3ステップ法による矩形波電気パルス処理を行った。なお、各種電気条件については、表3に示す値の範囲で行った。また、当該処理に用いた機器や基本的操作は、実施例1に記載の方法と同様にして行った。
なお、当該電気条件におけるTransfer Pulseの最初の1パルスあたりの電力量は、0.16〜0.25J/100μL程度の値であった。
(2)「形質転換効率の評価」
実施例1に記載の方法と同様にして、TAP寒天培地で電気パルス処理後の細胞を培養し、培養後のハイグロマイシン抵抗性のコロニーの数を計測することで形質転換効率を評価した。結果のグラフを図4に示した。なお、当該グラフにおいては、各データをプロットした点の集合から近似曲線を作成した。
その結果、当該方法における形質転換効率は、Poring Pulseの総電力量が1.3〜4.9J/100μLの範囲では、約1000細胞/μgDNA以上の形質転換細胞が得られる傾向があり、従来技術(減衰波法:試験区1-2参照)の値である約150細胞/μgDNAよりも約6.7倍以上の高い導入効率となると認められた。
また、1.7〜4.8J/100μLの範囲では、約1500細胞/μgDNA以上の形質転換細胞が得られる傾向があり、当該従来技術よりも約10倍以上のより高い導入効率となると認められた。
また、1.9〜4.6J/100μLの範囲では、約2000細胞/μgDNA以上の形質転換細胞が得られる傾向があり、当該従来技術よりも約13.3倍以上の特に高い導入効率となると認められた。
また、2.1〜4.3J/100μLの範囲では、約2500細胞/μgDNA以上の形質転換細胞が得られる傾向があり、当該従来技術よりも約16.7倍以上の一層高い導入効率となると認められた。
また、2.4〜3.8J/100μLの範囲では、約3000細胞/μgDNA以上の形質転換細胞が得られる傾向があり、当該従来技術よりも約20倍以上の一層高い導入効率となると認められた。
また、2.7〜3.3J/100μLの範囲では、約3500細胞/μgDNA以上の形質転換細胞が得られる傾向があり、当該従来技術よりも約23.3倍以上のより一層高い導入効率となると認められた。
また、3J/100μL付近では、約3700細胞/μgDNAの形質転換細胞が得られる傾向があり、当該従来技術よりも約24.7倍と最も高い導入効率となると認められた。
(3)「考察」
これらの結果から、当該方法における形質転換効率は、Poring Pulseの総電力量と密接な関係があり、上記至適範囲が存在することが明らかになった。
[実施例4]『DNA濃度の検討』
細胞/DNA懸濁液の調製において、溶液中のDNA濃度が形質転換効率に与える影響を検討した。
(1)「電気パルス処理」
表4に示すDNA濃度の細胞/DNA溶液(Chlamydomonas reinhardtii C-9株:1×10細胞/mL、pHyg3のaph7を含む約2kbpのDNA断片:1〜100μg/mL)を調製し、当該溶液40μL(4×10細胞/40μL、40ng〜4μg/40μL)を2mm gapキュベットに充填した。調製した試料ごとに実施例1の試験区1-1に示す電気条件(Poring Pulseの総電力量=2.69〜3.11J/100μL、Transfer Pulseの最初の1パルスあたりの電力量=0.16〜0.25J/100μL程度)にて3ステップ法による矩形波電気パルス処理を行った。また、当該処理に用いた機器や基本的操作は、実施例1に記載の方法と同様にして行った。
(2)「形質転換効率の評価」
実施例1に記載の方法と同様にして、TAP寒天培地で電気パルス処理後の細胞を培養し、培養後のハイグロマイシン抵抗性のコロニーの数を計測することで形質転換効率を評価した。結果を表4, 図5に示した。
その結果、DNA濃度1.25〜100μg/mLという幅広いDNA濃度に調製したいずれの溶液を用いた場合であっても、当該方法を用いることによって、約1000細胞/μgDNA以上の導入効率での形質転換が可能であることが示された。また、DNA濃度2.5〜50μg/mLのDNA濃度に調製した溶液では、1700細胞/μgDNA以上の効率での形質転換が可能であることが示された。
具体的には、DNA濃度が5μg/mLまではDNA濃度の増加とともに形質転換数が急激に上昇し、5〜25μg/mLで3000細胞/μgDNA以上の著しく高い導入効率となることが示された。
(3)「考察」
これらの結果から、当該方法における形質転換効率は、DNA濃度1.25〜100μg/mLという幅広いDNA濃度の溶液を用いた高効率での形質転換が可能であることが示された。特に、DNA濃度2.5〜50μg/mL、最も好ましくは5〜25μg/mLの時に著しく高い効率での形質転換が実現可能なことが示された。
[実施例5]『外来性蛍光タンパク質の発現及び機能試験』
細胞/DNA懸濁液の調製において外来遺伝子を組み込んだプラスミドDNAを用い、外来性蛍光タンパク質(レポーター遺伝子産物)の発現機能が可能かを検討した。
(1)「DNA溶液の調製」
pTT1-LciB-GFP(Yamano T. et al., Plant Cell Physiol., 51, p1453-1468, (2010) 参照)のプラスミドDNA(約7800bp)を大腸菌とプラスミド抽出キットを用いて調製し、制限酵素KpnIで線状化したDNA溶液を調製した。
(2)「電気パルス処理」
上記プラスミドDNAを用いた細胞/DNA溶液(Chlamydomonas reinhardtii C-9株:1×10細胞/mL、pTT1-LciB-GFP 約7.8kbpのDNA断片:10μg/mL)を調製し、当該溶液40μL(4×10細胞/40μL、400ng/40μL)を2mm gapキュベットに充填した。調製した試料ごとに実施例1の試験区1-1に示す電気条件(Poring Pulseの総電力量=2.69〜3.11J/100μL、Transfer Pulseの最初の1パルスあたりの電力量=0.16〜0.25J/100μL程度)にて3ステップ法による矩形波電気パルス処理を行った。また、当該処理に用いた機器や基本的操作は、実施例1に記載の方法と同様にして行った。
(3)「形質転換効率の評価」
実施例1に記載の方法と同様にして、TAP寒天培地で電気パルス処理後の細胞を培養し、培養後のハイグロマイシン抵抗性のコロニーの数を計測することで形質転換効率を評価した。また、蛍光顕微鏡(BZ-9000 KEYENCE, Japan)を用いて励起光490nmで蛍光510nmを検出して撮影した写真像図を図6に示した。
その結果、約7.8kbのプラスミドDNAを用いた場合であっても、約500細胞/μgDNAという導入効率での形質転換が可能であることが示された。また、形質転換細胞からGFP蛍光を発する形質転換体が生じることが確認された(図6 参照)
(4)「考察」
この結果から、当該方法を用いることによって、細胞壁を有した状態のままの真核藻類細胞にプラスミドDNAを効率良く導入して形質転換し、外来性タンパク質を正常に発現機能できることが示された。
なお、当該実施例における形質転換細胞数が他の実施例の形質転換細胞数より低い値となった理由は、導入対象のDNAが長いことに起因すると推測された
[実施例6]『Transfer Pulseの検討』
Transfer Pulseの回数が形質転換効率に与える影響を検討した。
(1)「電気パルス処理」
実施例5に記載の方法と同様にして細胞/DNA溶液(Chlamydomonas reinhardtii C-9株:1×10細胞/mL、pTT1-LciB-GFP 約7.8kbpのDNA断片:10μg/mL)を調製し、当該溶液40μL(4×10細胞/40μL、400ng/40μL)を2mm gapキュベットに充填した。調製した試料ごとに表5-Aに示す電気条件(Poring Pulseの総電力量=1.51〜1.56J/100μL、Transfer Pulseの最初の1パルスの電力量=0.22〜0.23J/100μL程度)にて、3ステップ法による矩形波電気パルス処理を行った。また、当該処理に用いた機器や基本的操作は、実施例1に記載の方法と同様にして行った。
なお、当該電気条件におけるTransfer Pulse 1 (Tp1)、Transfer Pulse 2 (Tp2)の回数は表5-Bに記載の回数にて行った。
(2)「形質転換効率の評価」
実施例1に記載の方法と同様にして、TAP寒天培地で電気パルス処理後の細胞を培養し、培養後のハイグロマイシン抵抗性のコロニーの数を計測することで形質転換効率を評価した。結果を表5-Bに示した。
その結果、Transfer Pulse1,2の回数を、それぞれ5回から10回に増加することによって、形質転換細胞数が増加し導入効率が向上することが示された。
(3)「考察」
これらの結果から、当該方法におけるTransfer Pulseの回数は、Transfer Pulse 1、Transfer Pulse 2ともそれぞれ10回程度とすることによって、形質転換効率が大幅に高まることが示された。これは、Transfer Pulseの回数が増えたことで、DNAの導入効率が向上し、形質転換された細胞の生存細胞が得られやすくなったためと推測された。
なお、当該実施例における形質転換細胞数が他の実施例の形質転換細胞数より低い値となった理由は、Poring Pulseの総電力量が低めの値であること及び導入対象のDNAが長いことに起因すると考えられた。
[実施例7]『他の緑藻類細胞への応用』
上記決定したPoring Pulseの電力量条件を満たすようにエレクトロポレーションを行って、他の緑藻類細胞に対して形質転換が可能かを検討した。
(1)「電気パルス処理」
表6に示すクラミドモナス株の細胞溶液を実施例1に記載の方法と同様にして調製し、細胞/DNA懸濁液(緑藻細胞:1×10細胞/mL、pHyg3のaph7を含む約2kbpのDNA断片:10μg/mL)を調製し、当該溶液40μL(4×10細胞/40μL、400ng/40μL、)を2mm gapキュベットに充填した。調製した試料ごとに実施例1の試験区1-1に示す電気条件(Poring Pulseの総電力量=2.69〜3.11J/100μL、Transfer Pulseの最初の1パルスあたりの電力量=0.16〜0.25J/100μL程度)にて3ステップ法による矩形波電気パルス処理を行った。また、当該処理に用いた機器や基本的操作は、実施例1に記載の方法と同様にして行った。
(2)「形質転換効率の評価」
実施例1に記載の方法と同様にして、TAP寒天培地で電気パルス処理後の細胞を培養し、培養後のハイグロマイシン抵抗性のコロニーの数を計測することで形質転換効率を評価した。結果を表6に示した。
その結果、上記決定したPoring Pulseの電気量の条件を満たすようにして3ステップ法のエレクトロポレーションを行ったところ、各種クラミドモナス株に対しても高効率での形質転換が可能なことが示された(試験区7-1〜7-4)。
(3)「考察」
CC-125株を対象とした場合、C-9株等の他の株に比べて形質転換数が低い値となった。このことは、CC-125株細胞壁が他のC-9株等の他の株に比べて細胞壁が厚いためと推測される。当該結果を踏まえると、本発明の方法は、細胞壁の厚さの異なる多様な各種緑藻類の細胞に対しても、好適に適用可能な技術であると推測される。
[実施例8]『珪藻類細胞への応用』
上記決定したPoring Pulseの電力量条件を満たすようにエレクトロポレーションを行って、緑藻類以外の藻類に対しても形質転換が可能かを検討した。
(1)「藻類細胞溶液の調製」
緑藻類とは進化的な系統関係が全く異なり且つ硬い珪酸質の細胞壁を有する珪藻類を対象にして検討を行った。
乾熱滅菌処理した三角フラスコに、0.2 mM NaSiOを含むダイゴIMK液体培地(Nihon Pharmaceutical Co. Ltd.)に人工海水塩(Sigma)を加えた培地を分注し、前培養していたフェオダクチラム(Phaeodactylum tricornutum テキサス大学 UTEX 642株)を接種した。20℃のインキュベーターで、白色蛍光灯下で30μmol/m/secの連続光照射下にて培養した。
当該対数増殖期(OD700=0.2〜0.4)にある当該藻類の培養液を遠心(700×gで4分間)し、0.77Mマンニトール水溶液で洗浄した後、8%IMKを含む0.77Mマンニトール水溶液に懸濁した。
(2)「DNA溶液の調製」
プラスミドpPha-T1(fcpBプロモーターの下流にブレノマイシン耐性遺伝子を結合させたカセットを含むプラスミド(Zaslavskaia LA. et al. J.Phycol., 36, p379-386 (2000) 参照)のマルチクローニングサイトに、レポーター遺伝子としてsGFP遺伝子(sgfp)又はGUS遺伝子(uidA)を挿入した。
当該コンストラクトを有するプラスミドDNAを大腸菌とプラスミド抽出キットを用いて調製し、制限酵素NdeIで線状化したDNA溶液を調製した。
(3)「電気パルス処理」
上記プラスミドDNAを用いた細胞/DNA溶液(Phaeodactylum tricornutum UTEX 642株:2.5×10細胞/mL、sgfp又はuidAを挿入したpPha-T1のDNA断片:50μg/mL)を調製し、当該溶液40μL(1×10細胞/40μL、2μg/40μL)を2mm gapキュベットに充填した。調製した試料ごとにPoring Pulseの総電力量(J/100μL)を図7に示す横軸値(0.01〜17.6J/100μLの範囲)で変化させて、計26サンプルについて3ステップ法による矩形波電気パルス処理を行った。なお、各種電気条件については、表7に示す値の範囲で行った。また、当該処理に用いた機器や基本的操作は、実施例1に記載の方法と同様にして行った。
なお、当該電気条件におけるTransfer Pulseの最初の1パルスあたりの電力量は、0.17〜0.39J/100μL程度の値であった。
(4)「形質転換効率の評価」
電気処理後1分以内に、当該細胞/DNA懸濁液を、14mL容ポリエチレンチューブ内に調製したダイゴIMK液体培地4mLと混合した。これを、20℃で30μmol/m/secの光照射下で、20時間静置培養した。なお、フェオダクチラムの増殖速度は遅いため、当該培養中に***する細胞はほとんどいない。
培養後、当該培地を遠心(700×g, 4分間)して上清を捨て、0.2mLのダイゴIMK液体培地に懸濁し、100μg/mL zeocin(R)(Invirtogen)を含む1%寒天ダイゴIMK培地にプレーティングした。30μmol/m/secの光照射下で、20℃で20時間の静置培養(回復培養)を行い、10日後にゼオシン耐性を有するコロニーの数を計測することで形質転換効率を評価した。結果のグラフを図7に示した。なお、当該グラフにおいては、各データをプロットした点の集合から近似曲線を作成した。
また、ゼオシン耐性コロニーにおけるレポーター遺伝子の発現及び機能を確認した。形質転換細胞について顕微鏡を用いて可視光下で撮影した写真像図を図8(A)に示した。また、蛍光顕微鏡(BZ-9000 KEYENCE, Japan)を用いて励起光490nmで蛍光510nmを検出して撮影した写真像図を図8(B)に示した。また、GUS染色後に顕微鏡を用いて可視光下で撮影した写真像図を図8(C)に示した。
その結果、Poring Pulseの総電力量が3.3〜14.3J/100μLの範囲では、約500細胞/μgDNA以上の形質転換細胞が得られる傾向が認められ、高い導入効率になることが示された。
また、4.8〜12.9J/100μLの範囲では、約1000細胞/μgDNA以上の形質転換細胞が得られる傾向が認められ、高い導入効率になることが示された。
また、6.5〜11.3J/100μLの範囲では、約1500細胞/μgDNA以上の形質転換細胞が得られる傾向が認められ、高い導入効率になることが示された。
また、7.5〜10.2J/100μLの範囲では、約1700細胞/μgDNA以上の形質転換細胞が得られる傾向が認められ、高い導入効率になることが示された。
また、8.9J/100μL付近では、約1850細胞/μgDNAの形質転換細胞が得られる傾向が認められ、高い導入効率になることが示された。
なお、得られたゼオシン耐性コロニー(形質転換細胞)からゲノムDNAを抽出して、sgfp遺伝子、またはuidA遺伝子に特異的なプライマーを用いてPCR反応を行ったところ、全ての形質転換細胞のゲノムDNAから、sgfp遺伝子又はuidA遺伝子の増幅断片が検出された。
また、ゼオシン耐性コロニーの約90%から、GFP蛍光の観察及びGUS染色が確認された。即ち、形質転換細胞の大部分において、外来性タンパク質の発現機能(レポーター遺伝子の発現機能)が正常に起こっていることが確認された。
(5)「考察」
これらの結果から、珪藻類に対して3段階方式の矩形波多重パルスを与えて遺伝子導入を行うためには、Poring Pulseの総電力量の条件を上記至適範囲に調整して行う必要があることが明らかになった。
当該フェオダクチラムに遺伝子導入を行うために好適なPoring Pulseの総電力量範囲は、緑藻類であるクラミドモナスに対する好適な総電力量の範囲に比べて、高い範囲にあるものと認められた。これは、珪藻類であるフェオダクチラムの外層が、珪酸質の厚い被殻の細胞壁で覆われているためと推測された。
本発明の遺伝子導入及び形質転換技術は、多くの有用真核藻類(特にバイオ燃料となる油脂生産藻類等)の商業的利用および学術研究の進展を促す技術になることが期待される。

Claims (8)

  1. 細胞壁を有した状態の緑藻類細胞と核酸分子を含有する溶液に対して、前記溶液に1回又は2回以上の下記(A)に記載の条件を満たす矩形波電気パルスを、電力量の合計が1.3〜4.9J/100μLになるように与え;次いで下記(B1)及び(B2)に記載の条件を満たす矩形波電気パルスを2回以上与え、;次いで下記(C1)〜(C3)に記載の条件を満たす矩形波電気パルスを2回以上与えることにより、;3段階方式矩形波多重パルスによる電気穿孔を行うことを特徴とする、真核藻類の細胞に外来遺伝子を導入する方法。
    (A):1パルスの電圧が750V/cm以上である矩形波電気パルス。
    (B1):1パルスの電圧が150V/cm以下である矩形波電気パルス。
    (B2):1パルスの電力量が0.02〜0.6J/100μLである矩形波電気パルス。
    (C1):上記(B1)及び(B2)に記載の条件を満たす電気パルスとは逆の極性の矩形波電気パルス。
    (C2):1パルスの電圧が150V/cm以下である矩形波電気パルス。
    (C3):1パルスの電力量が0.02〜0.6J/100μLである矩形波電気パルス。
  2. 細胞壁を有した状態の珪藻類細胞と核酸分子を含有する溶液に対して、前記溶液に1回又は2回以上の下記(A)に記載の条件を満たす矩形波電気パルスを、電力量の合計が3.3〜14.3J/100μLになるように与え;次いで下記(B1)及び(B2)に記載の条件を満たす矩形波電気パルスを2回以上与え、;次いで下記(C1)〜(C3)に記載の条件を満たす矩形波電気パルスを2回以上与えることにより、;3段階方式矩形波多重パルスによる電気穿孔を行うことを特徴とする、真核藻類の細胞に外来遺伝子を導入する方法。
    (A):1パルスの電圧が750V/cm以上である矩形波電気パルス。
    (B1):1パルスの電圧が150V/cm以下である矩形波電気パルス。
    (B2):1パルスの電力量が0.02〜0.6J/100μLである矩形波電気パルス。
    (C1):上記(B1)及び(B2)に記載の条件を満たす電気パルスとは逆の極性の矩形波電気パルス。
    (C2):1パルスの電圧が150V/cm以下である矩形波電気パルス。
    (C3):1パルスの電力量が0.02〜0.6J/100μLである矩形波電気パルス。
  3. 前記緑藻類又は珪藻類が単細胞微細藻類である、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
  4. 上記(A)に記載の条件を満たす矩形波電気パルスを与える回数が2回以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 上記(B1)及び(B2)に記載の条件を満たす矩形波電気パルスを与える回数が5回以上であり、且つ、上記(C1)〜(C3)に記載の条件を満たす矩形波電気パルスを与える回数が5回以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記電気穿孔を行うにあたり、ギャップ間の空隙が2mm以上のキュベット電極を用いることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 前記藻類細胞が前記溶液中に懸濁状態になっていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかの方法により遺伝子導入を行うことを特徴とする、真核藻類の細胞を形質転換する方法。
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