JP5714396B2 - バイオマスの糖化方法 - Google Patents
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Description
(a)酵素が吸着した糖化反応残渣をそのまま次回の酵素糖化反応に再利用する方法(特許文献1、非特許文献2参照)
(b)界面活性剤を使用して糖化反応残渣から酵素を脱着・回収する方法(非特許文献3参照)
(c)アルカリで糖化反応残渣から酵素を脱着・回収する方法(非特許文献3、4、5参照)
(d)酸性〜中性の高濃度のバッファーで糖化反応残渣から酵素を脱着・回収する方法(非特許文献6、7参照)
上記(b)の方法は、酵素脱着効果が十分でなく酵素回収率が低いこと、界面活性剤を使用するためコスト高になることなどの課題を有している。
上記(c)の方法は、アルカリによる酵素の失活が課題であり、また、高い回収率で酵素を回収した例は知られていない。
上記(d)の方法は、高濃度のバッファー(例えば、0.5Mリン酸バッファー)を大量に使用するため、コスト高になるという課題を有している。
[1]リグノセルロース系バイオマスを酵素で糖化する糖化工程と、糖化工程終了後に酵素を回収する酵素回収工程を含むリグノセルロース系バイオマスの糖化方法であって、
酵素回収工程が、以下の(A)および(B)の工程のうち少なくとも1つを含むことを特徴する糖化方法。
(A)糖化反応スラリーにアルカリを添加して、糖化反応残渣に吸着した酵素を脱着させた後、糖化反応スラリーの固液分離を行って酵素を含有する酵素回収液を回収する工程
(B)糖化反応スラリーの固液分離により得られた糖化反応残渣にアルカリを添加して、糖化反応残渣に吸着した酵素を脱着させて酵素を含有する酵素回収液を回収し、その際、酵素回収液のpHが漸増するように糖化反応残渣にアルカリを添加する工程
[2]糖化工程の前に、リグノセルロース系バイオマスの酵素糖化効率を高める処理を行う前処理工程を有することを特徴とする前記[1]に記載の糖化方法。
[3]酵素がセルラーゼおよびヘミセルラーゼの混合物である前記[1]または[2]に記載の糖化方法。
[4]セルラーゼが少なくともセロビオヒドロラーゼ、β−グルカナーゼおよびβ−グルコシダーゼを含み、ヘミセルラーゼが少なくともキシラナーゼおよびβ−キシロシダーゼを含むことを特徴とする前記[3]に記載の糖化方法。
[5](B)の工程において、pH漸増の終点における酵素回収液のpHが7〜13の範囲内であることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載の糖化方法。
[6]酵素回収工程において、酵素回収液を回収後速やかに、酵素回収液のpHを弱酸性〜中性に調整することを特徴とする前記[1]〜[5]のいずれかに記載の糖化方法。
[7]前処理工程が、リグノセルロース系バイオマスをアルカリ処理するものであり、その際に生じたアルカリ廃液を、酵素回収工程のアルカリとして用いることを特徴とする前記[2]〜[6]のいずれかに記載の糖化方法。
(A)糖化反応スラリーにアルカリを添加して、糖化反応残渣に吸着した酵素を脱着させた後、糖化反応スラリーの固液分離を行って酵素を含有する酵素回収液を回収する工程
(B)糖化反応スラリーの固液分離により得られた糖化反応残渣にアルカリを添加して、糖化反応残渣に吸着した酵素を脱着させて酵素を含有する酵素回収液を回収し、その際、酵素回収液のpHが漸増するように糖化反応残渣にアルカリを添加する工程
本発明の糖化方法における酵素回収工程は、好ましくは工程(B)を含むものであり、より好ましくは工程(A)および工程(B)を含むものである。
酵素回収工程における工程(B)の特徴は、反応残渣からの酵素回収において酵素回収液のpHを漸増させることであるので、酵素回収開始時の酵素回収液のpHは、酵素回収終了時よりも低いpHであればよく、特に限定されない。反応残渣からの酵素回収開始時の酵素回収液のpHは、pH約4〜11であることが好ましく、pH約5〜9であることがより好ましい。また、酵素回収工程において、アルカリ添加による酵素回収区間の途中または終了後に、水などを用いて反応残渣を洗浄し、残存する酵素を回収してもよい。
(1)バイオマス
リグノセルロース系バイオマスとして、パーム油を生産する際に排出されるアブラヤシの空果房(以下「EFB」という。)を原料に用いた(産地インドネシア)。
(2)糖化酵素
ノボザイムズ社の酵素液Cellic CTec2(以下「CTec」という。)およびCellic HTec2(以下「HTec」という。)を用いた。これらの酵素液は、セルラーゼとしてセロビオヒドロラーゼ(以下「CBH」という。)、β−グルコシダーゼ(以下「GLD」という。)、β−グルカナーゼ(以下「CMC」という。)を含有し、ヘミセルラーゼとしてキシラナーゼ(以下「XYN」という。)、キシロシダーゼ(以下「XLD」という。)を含有している。
酵素活性の測定、および酵素回収率の算出は、以下のようにして行った。なお、ここで使用したバッファーは0.1M、pH5.0の酢酸バッファーである。
(1)CBH活性
p−ニトロフェニル−β−D−セロビオシド(PNP−CB)を基質とした比色法により測定した。すなわち、1.5mlのマイクロチューブに215μlのバッファーをとり、酵素含有のサンプル溶液を10μl加えた。これに基質溶液(PNP−CBの1.25wt%バッファー溶液)を25μl加えて酵素反応を開始し、水浴上で40℃、1時間保温して酵素反応を行った。1時間経過後、0.1Mのグリシン水溶液(pH10.0)を500μl添加し、酵素反応の停止と発色を行った。得られたサンプルの吸光度(波長405nm)を測定し、酵素活性の指標とした。測定は、吸光度が1.5を越えない範囲で、適宜バッファーで希釈したサンプル溶液を用いて行った。酵素回収液、および糖化反応に使用したものと同じ酵素液(初期投入酵素液)の酵素活性を測定し、以下の式に従って回収酵素活性(=酵素回収率)を算出した。
回収酵素活性(%)=[酵素回収液中の酵素活性総量/初期投入酵素液中の酵素活性総量]×100
(2)GLD活性
p−ニトロフェニル−β−D−グルコピラノシド(PNP−GP)を基質とした比色法により測定した。CBH活性と全く同様の方法で、ただし基質をPNP−GP、酵素反応条件を40℃、30分に変え、測定を行った。
カルボキシメチルセルロース(CMC)を基質とした比色法により測定した。還元糖量の測定にはDNS(ジニトロサリチル酸)法を用いた。すなわち、1.5mlのマイクロチューブに180μlの基質溶液(カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、シグマ社製C5678の4wt%バッファー溶液)をとり、酵素含有のサンプル溶液を20μl加えて酵素反応を開始し、水浴上で50℃、1時間保温して酵素反応を行った。1時間経過後、300μlのDNS溶液A(1%3,5−ジニトロサリチル酸、0.2%フェノール、1%水酸化ナトリウム、0.05%亜硫酸ナトリウムの水溶液)および100μlのDNS溶液B(40%ロッシェル塩水溶液)を加え、沸騰水中で10分間加熱して発色させ、水冷後、600μlの水を加えて希釈した。得られたサンプルの吸光度(波長540nm)を測定した(吸光度1)。サンプル中の初期含有糖量を差し引くために、酵素反応を行わないサンプル(酵素サンプルをDNS溶液の後に加える)を同様に調製し、発色を行って吸光度を測定した(吸光度2)。吸光度1と吸光度2の差を酵素活性の指標とした。測定は各吸光度が1.5を越えない範囲で、適宜バッファーで希釈したサンプル溶液を用いて行った。回収酵素活性はCBH活性と同様に算出した。
可溶性キシランを基質とした比色法により測定した。CMC活性と全く同様の方法で、ただし基質を可溶性キシラン(2wt%キシラン、シグマ社製X0502、のバッファー溶液を調製し、不溶分を遠心分離で取り除いた上清画分を使用)、および酵素反応条件を40℃、30分に変え、測定を行った。
(5)XLD活性
p−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシド(PNP−XP)を基質とした比色法により測定した。CBH活性と全く同様の方法で、ただし基質をPNP−XPに変え、測定を行った。
糖類の収率は重量基準で算出した。すなわち、以下の式で算出した。
糖収率(wt%)=[生成糖の重量/原料バイオマスの乾燥重量]×100
(1)前処理工程(アルカリ前処理、10wt%NaOH)
100mlの高圧反応器に、粉砕処理(1mmスクリーン)を施した原料EFB(6.0g、含水率7.3%)、水酸化ナトリウム(0.6g=10wt%対原料EFB)、および水(29.4g)を加えて密閉した。反応器を120℃のオイルバスで3時間加熱し、冷却後、ろ過により固液分離を行い、さらに固形分を水洗浄した。得られた固形分を105℃で3時間乾燥し、前処理EFB−1(4.1g、含水率8.7%、絶乾基準の重量収率67.3%)を取得した。
10mlのガラス容器に、前処理EFB−1(0.44g)を加え、さらに酵素溶液(CTec3mg/ml、HTec3mg/ml、酢酸バッファー(pH5.5)0.05M、テトラサイクリン塩酸塩40μg/ml、シクロヘキシミド30μg/mlを含有)を6ml加え、密閉した。これを恒温振とう機で振とうしながら、45℃で24時間、糖化反応を行い、反応スラリーを得た。
得られた反応スラリーを遠心ろ過カラム(モビテック社のモビコール、フィルター細孔径30μm)に入れ、遠心分離にかけ、反応液と反応残渣に固液分離した(以下、各実施例の番号を付して「反応液1」、「反応残渣1」等という。)。反応液1を分析したところ、グルコース収率は43.1wt%、キシロース収率は15.5wt%で合計58.6wt%の単糖類の生成が確認された(前処理EFB基準)。なお未処理の原料EFB基準に換算すると、グルコース収率は29.0wt%、キシロース収率は10.4wt%で合計39.4wt%となる。
得られた反応残渣1にpH8.0のアルカリ液(0.05Mホウ酸ナトリウムバッファー)を5ml添加し、室温で30分間攪拌混合して吸着酵素の脱着処理を行った。遠心ろ過を行い、酵素回収液1−1(pH7.1)と残渣に分離した。次にpH9.0のアルカリ液(0.05Mホウ酸ナトリウムバッファー)5mlを用いて同様に脱着処理を行い、酵素回収液1−2(pH8.8)と残渣を得た。続いてpH10.0のアルカリ液(0.05Mホウ酸ナトリウムバッファー)5mlを用いて同様に脱着処理を行い、酵素回収液1−3(pH9.8)と残渣を得た。なお酵素回収液には速やかに酢酸バッファーを添加し、pHを5〜7の範囲に調整して保存した。
反応液1、酵素回収液1−1〜3を混合し、限外ろ過を行った。すなわち、遠心分離式の限外ろ過装置(クラボウ社のセントリカット、限外ろ過膜の材質はポリスルホン、分画分子量1万)を用い、回収酵素液を濃縮した。さらに酢酸バッファー(0.05M、pH5.5)で洗浄を行い、最終的に酵素液を約4mlに調整し、酵素回収液1−4を得た。続いて、上記初回の糖化工程と同様の方法で前処理EFB−1の糖化反応を行った。ただし、酵素溶液としては、酵素回収液1−4に初回の20%分のフレッシュ酵素(CTecとHTeCの比率は1対1)を補充したものを使用した。45℃、24時間の糖化反応で、グルコース収率は43.0wt%、キシロース収率は13.5wt%、合計56.5wt%(前処理EFB基準)であり、100%フレッシュ酵素を用いた初回の反応と同等の糖収率が得られた。すなわち、酵素使用量の80%が削減できた。
(1)前処理工程、糖化工程
実施例1と同様に前処理工程を行い、EFB前処理品を得た。糖化工程においては、酵素濃度をCTec4.8mg/ml、HTec1.2mg/ml(割合にして8対2)に変更し、反応温度および時間を50℃、72時間に変更した以外は実施例1と同様に行い、反応スラリーを得た。
続いて、実施例1と同様に得られた反応スラリーを遠心ろ過にかけ、反応液2と反応残渣2に分離した。反応液2を分析したところ、グルコース収率は46.8wt%、キシロース収率は23.3wt%で合計70.1wt%の単糖類の生成が確認された(前処理EFB基準)。得られた反応残渣2にpH9.0のアルカリ液(0.1Mホウ酸ナトリウムバッファー)を5ml添加し、室温で30分間攪拌混合して吸着酵素の脱着処理を行った。遠心分離を行い、上澄みの酵素回収液(pH8.4)と残渣に分離した。再度、pH9.0のアルカリ液(0.1Mホウ酸ナトリウムバッファー)5mlを用いて同様に脱着処理を行い、酵素回収液(pH8.8)と残渣を得た。再び、pH9.0のアルカリ液(0.1Mホウ酸ナトリウムバッファー)5mlを用いて同様に脱着処理を行い、酵素回収液(pH9.0)と残渣を得た。得られた3つの酵素回収液は混合し、酵素回収液2とした。
実施例2と同様に前処理、糖化、酵素回収工程(工程(B))を実施した。ただし酵素回収工程では、アルカリ液として、実施例3ではpH9.5、実施例4ではpH10.0、実施例5ではpH10.5の0.1Mホウ酸ナトリウムバッファーを用いて、それぞれ3回の脱着処理を行い酵素回収液3〜5を得た。酵素回収液中のGLD活性およびCBH活性を測定し、得られたGLDおよびCBHの回収酵素活性と、3回のアルカリ処理のpHパターンを表2に示した。
実施例2〜5の結果から、GLDに関しては高いpHの方がより高い回収率が得られ、CBHに関しては低いpHの方がより高い回収率が得られることが分かった。このように、酵素種によって脱着しやすいpH条件が異なることが分かった。
実施例2と同様に前処理、糖化、酵素回収工程(工程(B))を実施した。ただし酵素回収工程では、アルカリ液として、前処理工程で得られたアルカリ廃液(固液分離後のろ液原液)を0.1Mホウ酸バッファーに対して10wt%添加した溶液(pH9.0)を用い、3回の脱着処理(アルカリ処理のpHパターンは実施例2と同じ)を行って酵素回収液6を得た。GLD活性を測定したところ、酵素回収液6中に58%の活性が確認された。同pH条件の実施例2と比較して(51%)、回収率の向上が観察され、前処理液に酵素脱着促進効果が有ることが分かった。
(1)前処理工程(アルカリ前処理、7.5wt%NaOH)
100mlの高圧反応器に、実施例1で用いた原料EFB粉砕品を1.00g、水酸化ナトリウムを75mg(=7.5wt%対原料EFB)、および水10.0gを加えて密閉した。反応器を150℃のオイルバスで3時間加熱し、冷却後、ろ過により固液分離を行い、さらに固形分を水洗浄して前処理EFB−2(水ウェット体)を得た。得られた固形分は乾燥工程を経ずに次の糖化工程に供した。
20mlのガラス容器に、前処理EFB−2を全量、CTecを30mg、HTecを30mg、0.1M酢酸バッファー(pH5.5)を5ml、テトラサイクリン塩酸塩を400μg、シクロヘキシミドを300μg加えた。10%酢酸水溶液でpHを5.5に調整した後、最後に反応液の重量を水で11.0gに調整した。これを振とうしながら、45℃で44時間糖化反応を行い、反応スラリーを得た。
続いて、実施例1と同様に得られた反応スラリーを遠心ろ過にかけ、反応液7と反応残渣7に分離した。反応液7を分析したところ、グルコース収率は32.7wt%、キシロース収率は12.7wt%で合計45.4wt%の単糖類の生成が確認された(未処理の原料EFB基準)。得られた反応残渣7に水を5ml加え、攪拌混合してスラリーとした。続いて、スラリーのpHを測定しながら、0.1%のNaOH水溶液(pH12.4)を適量添加し、スラリーpHを6.6に調整した。これを30℃で30分間振とうし、アルカリ液による酵素脱着操作を行った。続いて遠心ろ過を行い、酵素回収液7−1(pH6.6)と残渣を得た。残渣に対して更に同様の操作を2回繰り返し(表3に示したpHに調整)、酵素回収液7−2(pH7.1)および酵素回収液7−3(pH8.2)を得た。本実施例では、0.1%NaOH水溶液を用いて、処理液のpHを段階的に上げる方法で脱着操作を行った。
実施例7と同様に、前処理、糖化、酵素回収工程(工程(B))を行った。ただし酵素回収工程では、アルカリ処理pHを表4に示したpHパターンに変えて、3回の脱着操作を行った。得られた反応液8、回収酵素液8−1〜3に含まれる5種の酵素活性を測定し、回収酵素活性(初期投入量に対する%で表示)を表4に示した。
実施例7と同様に、前処理、糖化、酵素回収工程(工程(B))を行った。ただし酵素回収工程では、0.1%NaOHの代わりに、0.1%Ca(OH)2水溶液を用いて、pHの調整を行った。また、アルカリ処理pHは、表5に示したpHパターンで3回の脱着操作を行った。得られた反応液9、回収酵素液9−1〜3に含まれる5種の酵素活性を測定し、回収酵素活性(初期投入量に対する%で表示)を表5に示した。
実施例7と同様に、前処理、糖化、酵素回収工程(工程(B))を行った。ただし酵素回収工程では、アルカリ液として、前処理工程で得られたアルカリ廃液(固液分離後のろ液原液)を0.1%のNaOH水溶液に対して5wt%添加した溶液(pH12.4)を用いた。また脱着操作は3回ではなく、2回に変更した。得られた反応液10、回収酵素液10−1、2に含まれる5種の酵素活性を測定し、回収酵素活性(初期投入量に対する%で表示)を表6に示した。この結果から、前処理液を添加することで、2回の脱着操作で3回の脱着操作(実施例7)と同等の回収率が得られることが分かった。
実施例7と同様に、前処理、糖化工程を行った。得られた反応スラリー(pH5.5)に1%水酸化ナトリウム水溶液を適量加え、pHを7.9に上げて、吸着酵素の一部脱着を行った。続いて、実施例7と同様に遠心ろ過で固液分離を行い、酵素回収液11−1と反応残渣11を得た。反応残渣11に水を5ml加え、攪拌混合して30℃で30分間振とうし、水による洗浄操作を行った。遠心ろ過を行い、酵素回収液11−2(pH8.2)と残渣を得た。
(1)前処理工程(アルカリ前処理、10wt%NaOH、アントラキノン添加)
実施例7と同様に行った。ただしここでは、加えるNaOHの量を100mg(=10wt%対原料EFB)に変更し、さらに助剤としてアントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム1水和物(東京化成)を10mg加え、加熱条件を120℃、3時間にして実験を行い、前処理EFB−3を得た。得られた前処理品は乾燥工程を経ずに次の糖化工程に供した。
実施例7と同様に行った。ただしここでは、糖化反応時間を48時間に変更して実験を行い、反応スラリー11.0gを得た。反応スラリーのpHは5.6であった。反応スラリーから反応液を少量抜き出し(反応液12とする)、分析したところ、グルコース収率は33.5wt%、キシロース収率は14.9wt%で合計48.3wt%の単糖類の生成が確認された(未処理の原料EFB基準)。
反応スラリーに、1%NaOH水溶液を0.45ml加えてアルカリ側にpHをシフトさせ、30℃で30分間振とうし、一部の吸着酵素を遊離させる操作を行った。振とう後の糖化反応スラリーのpHは6.9であった。続いて、実施例7と同様に遠心ろ過を行い、酵素回収液12−1(pH6.9)約10gと反応残渣12約1gを得た。さらに、連続的酵素回収を模擬した方法で酵素回収を行った。すなわち遠心カラム中で、反応残渣12に50ppmのNaOH水溶液(pH9.1)を1.2ml加え、混合して30℃で20分間振とうした。続いて遠心ろ過を行い、酵素回収液と残渣を得た。この酵素回収操作(1.2mlの50ppmNaOH水溶液での脱着および遠心ろ過)を合計5回行い、各酵素回収液を混合して、酵素回収液12−2を得た(合計約6g)。さらに2回、酵素回収操作を繰り返し、酵素回収液12―3を得た(合計約2g)。酵素回収液のpHは、酵素回収操作1回目でpH7.2、3回目でpH7.7、5回目でpH8.4、最終7回目でpH8.6と漸増していた。なお得られた酵素回収液12−1〜3には、速やかに極微量の硫酸を加え、pHを5.0に調製し、保管した。
酵素回収液12−1〜3に含まれる5種の酵素活性を測定した。回収酵素活性を表8に示す。少量のアルカリ液(1.2ml×7=8.4ml)でも高い酵素回収率を得ることができた。
実施例1と同様に、酵素回収液12−1の限外ろ過を行った。約10gの液量を約0.5gまで限外ろ過で濃縮し、つづいて酵素回収液12−2を加え、液量を約1gまで濃縮し、さらに酵素回収液12−3を加え、液量を約1gまで濃縮して、最終的に酵素回収液12−4を得た。続いて、上記初回の糖化工程と同様の方法で、前処理EFB−3の糖化反応を行った。ただし、添加する酵素としては、酵素回収液12−4に初回の20%分のフレッシュな酵素(CTec6mg、HTec6mg)を補充したものを使用した。45℃、48時間の糖化反応で、グルコース収率は35.5wt%、キシロース収率は13.9wt%、合計49.4wt%(未処理の原料EFB基準)であり、100%フレッシュ酵素を用いた初回の反応と同等の糖収率が得られた。すなわち、酵素使用量の80%が削減できた。
実施例7と同様に、前処理、糖化、酵素回収工程を行った。ただし酵素回収工程では、処理液として非特許文献7に記載の0.5Mのリン酸バッファー(pH7.0)を用いて、同じ脱着操作を計2回行った。得られた反応液11、回収酵素液11−1、2に含まれる5種の酵素活性を測定し、回収酵素活性(初期投入量に対する%で表示)を表7に示した。表7から明らかなように、0.5Mリン酸バッファー(pH7.0)によるpHを変えない脱着方法では、残渣からの酵素回収率は極めて低かった。
Claims (6)
- リグノセルロース系バイオマスを、セルラーゼ及びヘミセルラーゼの混合物を含む酵素で糖化する糖化工程と、糖化工程終了後に酵素を回収する酵素回収工程を含むリグノセルロース系バイオマスの糖化方法であって、
糖化工程の前に、リグノセルロース系バイオマスの酵素糖化効率を高める処理を行う前処理工程を有し、
酵素回収工程が、以下の(A)および(B)の工程のうち少なくとも1つを含むことを特徴する糖化方法。
(A)糖化反応スラリーにアルカリを添加して、糖化反応残渣に吸着した酵素を脱着させた後、糖化反応スラリーの固液分離を行って酵素を含有する酵素回収液を回収する工程
(B)糖化反応スラリーの固液分離により得られた糖化反応残渣にアルカリを添加して、糖化反応残渣に吸着した酵素を脱着させて酵素を含有する酵素回収液を回収することを少なくとも2回以上繰り返し、その際、後の回の酵素回収液のpHを前の回の酵素回収液のpHより高くすることにより酵素回収液のpHが漸増するように糖化反応残渣にアルカリを添加する工程 - セルラーゼが少なくともセロビオヒドロラーゼ、β−グルカナーゼおよびβ−グルコシダーゼを含み、ヘミセルラーゼが少なくともキシラナーゼおよびβ−キシロシダーゼを含むことを特徴とする請求項1に記載の糖化方法。
- (B)の工程において、pH漸増の終点における酵素回収液のpHが7〜13の範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載の糖化方法。
- 酵素回収工程において、酵素回収液を回収後速やかに、酵素回収液のpHを弱酸性〜中性に調整することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の糖化方法。
- 前処理工程が、リグノセルロース系バイオマスをアルカリ処理、酸処理、水熱処理から選ばれる少なくとも1つの方法で処理することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の糖化方法。
- 前処理工程が、リグノセルロース系バイオマスをアルカリ処理するものであり、その際に生じたアルカリ廃液を、酵素回収工程のアルカリとして用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の糖化方法。
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