JP5707874B2 - 駆動力伝達装置 - Google Patents

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本発明は、車両の駆動系に適用され、駆動力の伝達を断接する多板乾式クラッチが閉鎖空間内に配置された駆動力伝達装置に関する。
従来、ハイブリッド駆動力伝達装置としては、エンジンとモータ&クラッチユニットと変速機ユニットとが連結接続されたものが知られている。このうちモータ&クラッチユニットは、電動モータの内側に多板乾式クラッチを配置している。すなわち、エンジンの出力軸に連結したクラッチハブと、電動モータのロータが固定されると共に変速機の入力軸に連結したクラッチドラムと、クラッチハブとクラッチドラムの間に介装した多板乾式クラッチと、を備えている(例えば、特許文献1参照)。
特開2010−151313号公報
しかしながら、従来のハイブリッド駆動力伝達装置にあっては、ユニットハウジングにより覆われ、シール部材により閉鎖されたドライ空間に多板乾式クラッチが収納されている。このため、インナープレートに設けられた摩擦フェーシングがクラッチ締結とクラッチ開放を繰り返すと、摩耗粉が外部に排出されることなく摩擦面間に溜まることで、インナープレートとアウタープレートの間で引き摺りが生じ、多板乾式クラッチが締結/開放不良になる、という問題があった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、摩擦フェーシングを介して圧接するプレート間に滞留する摩耗粉による引き摺りを抑え、多板乾式クラッチが締結/開放不良になるのを防止することができる駆動力伝達装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明では、第1軸と第2軸の間で駆動力の伝達を断接する多板乾式クラッチが閉鎖空間内に配置された駆動力伝達装置において、前記多板乾式クラッチは、インナープレートと、アウタープレートと、複数の摩擦フェーシングと、カバー部材と、を備える手段とした。
前記インナープレートは、前記第1軸と第2軸のうち一方の軸に設けたクラッチハブにスプライン嵌合され、前記クラッチハブとのスプライン嵌合部領域に、気流入口側である外部側から内部側へ向かって軸方向に連通する内周流入路を有する。
前記アウタープレートは、前記第1軸と第2軸のうち他方の軸に設けたクラッチドラムにスプライン嵌合され、前記クラッチドラムとのスプライン嵌合部領域に、内部側から気流出口側である外部側へ向かって軸方向に連通する外周流出路を有する。
前記複数の摩擦フェーシングは、前記インナープレートと前記アウタープレートの対向するプレート面のうち一方のプレート面に設けられ、内周側から外周側へ向かって径方向に連通するクラッチ溝を有する。
前記カバー部材は、前記インナープレートと前記アウタープレートの気流出入口側を覆って配置され、前記閉鎖空間内に外気を取り込む外気導入穴と前記閉鎖空間内からの気流を外気へ排出する外気排出穴を有する。
前記クラッチ溝は、前記外気導入穴から外気を取り込み前記外気排出穴から気流を外気へ排出する気流の流れが生成され、摩擦フェーシングから分離した摩耗粉が外部に排出されるときの気流出入口側である外部側に配置される摩擦フェーシングに有する溝の溝断面積合計より、内部側に配置される摩擦フェーシングに有する溝の溝断面積合計が大きくなるように設定した。
上記手段としたため、インナープレートとアウタープレートの少なくとも一方の回転により発生する遠心力が、クラッチ溝内の空気、あるいは、クラッチ溝内とプレート隙間の空気に作用し、外周流出路に向かう径方向の空気流動が発生する。この空気流動の発生により内周側の気圧が低下し、外周側の気圧が上昇するのに伴い、外気→外気導入穴→内周流入路→クラッチ溝(プレート隙間)→外周流出路→外気排出穴→外気、という流線を描く気流の流れが生成される。したがって、摩擦フェーシングから分離した摩耗粉が、この気流の流れに乗って、あるいは、押されて移動し、外部に排出される。
このように摩擦フェーシングから分離した摩耗粉が外部に排出されるときの気流出入口側である外部側から内部側までのクラッチ溝の溝断面積合計を全て同じにすると、流路抵抗が低い外部側は大流量が確保されるものの、内部側では外部側より流路抵抗が高くなり内部に向かうほど小流量になってしまうという流量分担になる。これに対し、クラッチ溝の溝断面積合計を、外部側より内部側を大きく設定することにより、内部側に向かうほど径方向気流に与える流路抵抗が小さく抑えられると共に、遠心力が作用する空気が増加するため、流量分担の平準化が図られる。この流量分担の平準化作用により、内部側に滞留する摩耗粉の排出が確保されるし、気流の流量(流速)が増加することで、摩耗粉の排出機能が高められる。
この結果、摩擦フェーシングを介して圧接するプレート間に滞留する摩耗粉による引き摺りを抑え、多板乾式クラッチが締結/開放不良になるのを防止することができる。
実施例1の前輪駆動車に適用されるハイブリッド駆動力伝達装置(駆動力伝達装置の一例)を示す全体概略図である。 実施例1のハイブリッド駆動力伝達装置におけるモータ&クラッチユニットの多板乾式クラッチとスレーブシリンダーの構成を示す要部断面図である。 実施例1のハイブリッド駆動力伝達装置におけるスレーブシリンダーのピストン組立体を示す分解側面図である。 実施例1のハイブリッド駆動力伝達装置における多板乾式クラッチのインナープレートを示す正面図である。 実施例1のハイブリッド駆動力伝達装置における多板乾式クラッチのアウタープレートを示すA−A線断面図(a)と正面図(b)である。 実施例1のハイブリッド駆動力伝達装置における多板乾式クラッチのインナープレートを示す斜視図である。 実施例1の多板乾式クラッチにおけるインナープレートの両面に貼り付けられた摩擦フェーシングに形成された浅いクラッチ溝(a)と深いクラッチ溝(b)を示す一部斜視図である。 実施例1の多板乾式クラッチにおけるクラッチ溝の溝数を徐々に増やした4枚のインナープレートを示す斜視図である。 実施例1のハイブリッド駆動力伝達装置における多板乾式クラッチからの摩耗粉排出作用を示す作用説明図である。 ハイブリッド駆動力伝達装置においてクラッチ溝の溝数を全て同じ数としたことによる流量分担作用の一例を示す作用説明図である。 実施例1のハイブリッド駆動力伝達装置(図8のクラッチ溝数)においてプレート位置の違い(a)による流速の違いグラフ(b)をベース構成による場合と対比した一例を示す流速対比図である。 実施例2のハイブリッド駆動力伝達装置における多板乾式クラッチの要部を示す断面図である。 実施例2のハイブリッド駆動力伝達装置における多板乾式クラッチの背面板を有するアウタープレートを示す背面図である。 実施例2のハイブリッド駆動力伝達装置(図8のクラッチ溝数+背面板)においてプレート位置の違い(a)による流速の違いグラフ(b)をベース構成による場合と対比した一例を示す流速対比図である。 実施例3の多板乾式クラッチにおけるクラッチ溝の溝数をステップ的に変更した4枚のインナープレートを示す斜視図である。 実施例3のハイブリッド駆動力伝達装置(図15のクラッチ溝数+背面板)においてプレート位置の違い(a)による流速の違いグラフ(b)をベース構成による場合と対比した一例を示す流速対比図である。
以下、本発明の駆動力伝達装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1〜実施例3に基づいて説明する。
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の前輪駆動車に適用されるハイブリッド駆動力伝達装置(駆動力伝達装置の一例)を示す全体概略図である。以下、図1に基づき装置の全体構成を説明する。
実施例1のハイブリッド駆動力伝達装置は、図1に示すように、エンジンEngと、モータ&クラッチユニットM/Cと、変速機ユニットT/Mと、エンジン出力軸1と、クラッチハブ軸2と、クラッチハブ3と、クラッチドラム軸4と、変速機入力軸5と、クラッチドラム6と、多板乾式クラッチ7と、スレーブシリンダー8と、モータ/ジェネレータ9と、を備えている。なお、多板乾式クラッチ7の締結・開放を油圧制御するスレーブシリンダー8は、一般に「CSC(Concentric Slave Cylinderの略)」と呼ばれる。
実施例1のハイブリッド駆動力伝達装置は、ノーマルオープンである多板乾式クラッチ7を開放したとき、モータ/ジェネレータ9と変速機入力軸5を、クラッチドラム6とクラッチドラム軸4を介して連結し、「電気自動車走行モード」とする。そして、多板乾式クラッチ7をスレーブシリンダー8により油圧締結したとき、エンジンEngとモータ/ジェネレータ9を、エンジン出力軸1とクラッチハブ軸2を、ダンパー21を介して連結する。そして、クラッチハブ3とクラッチドラム6を締結された多板乾式クラッチ7を介して連結し、「ハイブリッド車走行モード」とする。
前記モータ&クラッチユニットM/Cは、多板乾式クラッチ7と、スレーブシリンダー8と、モータ/ジェネレータ9と、を有する。多板乾式クラッチ7は、エンジンEngに連結接続され、エンジンEngからの駆動力伝達を断接する。スレーブシリンダー8は、多板乾式クラッチ7の締結・開放を油圧制御する。モータ/ジェネレータ9は、多板乾式クラッチ7のクラッチドラム6の外周位置に配置され、変速機入力軸5との間で動力の伝達をする。このモータ&クラッチユニットM/Cには、スレーブシリンダー8への第1クラッチ圧油路85を有するシリンダーハウジング81が、O−リング10によりシール性を保ちながら設けられている。
前記モータ/ジェネレータ9は、同期型交流電動機であり、クラッチドラム6と一体に設けたロータ支持フレーム91と、ロータ支持フレーム91に支持固定され、永久磁石が埋め込まれたロータ92と、を有する。そして、ロータ92にエアギャップ93を介して配置され、シリンダーハウジング81に固定されたステータ94と、ステータ94に巻き付けられたステータコイル95と、を有する。なお、シリンダーハウジング81には、冷却水を流通させるウォータジャケット96が形成されている。
前記変速機ユニットT/Mは、モータ&クラッチユニットM/Cに連結接続され、変速機ハウジング41と、Vベルト式無段変速機機構42と、オイルポンプO/Pと、を有する。Vベルト式無段変速機機構42は、変速機ハウジング41に内蔵され、2つのプーリ間にVベルトを掛け渡し、ベルト接触径を変化させることにより無段階の変速比を得る。オイルポンプO/Pは、必要部位への油圧を作る油圧源であり、オイルポンプ圧を元圧とし、プーリ室への変速油圧やクラッチ・ブレーキ油圧、等を調圧する図外のコントロールバルブからの油圧を必要部位へ導く。この変速機ユニットT/Mには、さらに前後進切換機構43と、オイルタンク44と、エンドプレート45と、が設けられている。エンドプレート45は、第2クラッチ圧油路47(図2)を有する。
前記オイルポンプO/Pは、変速機入力軸5の回転駆動トルクを、チェーン駆動機構を介して伝達することでポンプ駆動する。チェーン駆動機構は、変速機入力軸5の回転駆動に伴って回転する駆動側スプロケット51と、ポンプ軸57を回転駆動させる被動側スプロケット52と、両スプロケット51,52に掛け渡されたチェーン53と、を有する。駆動側スプロケット51は、変速機入力軸5とエンドプレート45との間に介装され、変速機ハウジング41に固定されたステータシャフト54に対し、ブッシュ55を介して回転可能に支持されている。そして、変速機入力軸5にスプライン嵌合すると共に、駆動側スプロケット51に対して爪嵌合する第1アダプタ56を介し、変速機入力軸5からの回転駆動トルクを伝達する。
図2は、実施例1のハイブリッド駆動力伝達装置におけるモータ&クラッチユニットの多板乾式クラッチ7とスレーブシリンダー8の構成を示す。図3は、実施例1のハイブリッド駆動力伝達装置におけるスレーブシリンダー8のピストン組立体を示す。以下、図2および図3に基づき、モータ&クラッチユニットM/Cの多板乾式クラッチ7とスレーブシリンダー8の構成を説明する。
前記クラッチハブ3は、エンジンEngのエンジン出力軸1に連結される。このクラッチハブ3には、図2に示すように、多板乾式クラッチ7のインナープレート71がスプライン嵌合により保持される。
前記クラッチドラム6は、変速機ユニットT/Mの変速機入力軸5に連結される。このクラッチドラム6には、図2に示すように、多板乾式クラッチ7のアウタープレート72がスプライン嵌合により保持される。
前記多板乾式クラッチ7は、クラッチハブ3とクラッチドラム6の間に、両面に摩擦フェーシング73,73を貼り付けたインナープレート71と、アウタープレート72と、を交互に複数枚配列することで介装される。つまり、多板乾式クラッチ7を締結することで、クラッチハブ3とクラッチドラム6の間でトルク伝達可能とし、多板乾式クラッチ7を開放することで、クラッチハブ3とクラッチドラム6の間でのトルク伝達を遮断する。
前記スレーブシリンダー8は、多板乾式クラッチ7の締結・開放を制御する油圧アクチュエータであり、変速機ユニットT/M側とクラッチドラム6の間の位置に配置される。このスレーブシリンダー8は、図2に示すように、シリンダーハウジング81のシリンダー孔80に摺動可能に設けたピストン82と、シリンダーハウジング81に形成し、変速機ユニットT/Mにより作り出したクラッチ圧を導く第1クラッチ圧油路85と、第1クラッチ圧油路85に連通するシリンダー油室86と、を有する。ピストン82と多板乾式クラッチ7との間には、図2に示すように、ニードルベアリング87と、ピストンアーム83と、リターンスプリング84と、アーム圧入プレート88と、が介装されている。
前記ピストンアーム83は、スレーブシリンダー8からの押圧力により多板乾式クラッチ7の押し付け力を発生させるもので、クラッチドラム6に形成した貫通孔61に摺動可能に設けている。リターンスプリング84は、ピストンアーム83とクラッチドラム6の間に介装されている。ニードルベアリング87は、ピストン82とピストンアーム83との間に介装され、ピストン82がピストンアーム83の回転に伴って連れ回るのを抑えている。アーム圧入プレート88は、蛇腹弾性支持部材89,89と一体に設けられ、蛇腹弾性支持部材89,89の内周部と外周部がクラッチドラム6に圧入固定されている。このアーム圧入プレート88と蛇腹弾性支持部材89,89により、ピストンアーム83側からのリーク油が多板乾式クラッチ7へ流れ込むのを遮断する。つまり、クラッチドラム6のピストンアーム取り付け位置に密封固定されたアーム圧入プレート88および蛇腹弾性支持部材89により、スレーブシリンダー8を配置したウェット空間と、多板乾式クラッチ7を配置したドライ空間を分ける仕切り機能を持たせている。
前記ピストンアーム83は、図3に示すように、リング状に形成したアームボディ83aと、該アームボディ83aから4箇所で突設させたアーム突条83bと、によって構成されている。
前記リターンスプリング84は、図3に示すように、リング状に形成したスプリング支持プレート84aと、該スプリング支持プレート84aに固定した複数個のコイルスプリング84bと、により構成されている。
前記アーム圧入プレート88は、図2に示すように、ピストンアーム83のアーム突条83bに圧入固定される。そして、図3に示すように、アーム圧入プレート88の内側と外側に蛇腹弾性支持部材89,89を一体に有する。
実施例1のリーク油回収油路は、図2に示すように、第1ベアリング12と、第1シール部材31と、リーク油路32と、第1回収油路33と、第2回収油路34と、を備えている。すなわち、ピストン82の摺動部からのリーク油を、第1シール部材31により密封された第1回収油路33および第2回収油路34を経過し、変速機ユニットT/Mに戻す回路である。これに加えて、ピストンアーム83の摺動部からのリーク油を、仕切り弾性部材(アーム圧入プレート88、蛇腹弾性支持部材89,89)により密封されたリーク油路32と、第1シール部材31により密封された第1回収油路33および第2回収油路34を経過し、変速機ユニットT/Mに戻す回路である。
実施例1のベアリング潤滑油路は、図2に示すように、ニードルベアリング20と、第2シール部材14と、第1軸心油路19と、第2軸心油路18と、潤滑油路16と、隙間17と、を備えている。このベアリング潤滑油路は、変速機ユニットT/Mからのベアリング潤滑油を、ニードルベアリング20と、シリンダーハウジング81に対しクラッチドラム6を回転可能に支持する第1ベアリング12と、ピストン82とピストンアーム83との間に介装されたニードルベアリング87と、を通過し、変速機ユニットT/Mへ戻す経路によりベアリング潤滑を行う。
前記第2シール部材14は、図2に示すように、クラッチハブ3とクラッチドラム6の間に介装している。この第2シール部材14により、スレーブシリンダー8を配置したウェット空間から、多板乾式クラッチ7を配置したドライ空間へとベアリング潤滑油が流れ込むのをシールしている。
前記多板乾式クラッチ7は、図2に示すように、クラッチハブ3とクラッチカバー6とハウジングカバー60により囲まれた閉鎖空間によるクラッチ室64内に配置されている。
前記ハウジングカバー60は、シリンダーハウジング81に対して一体に固定され、モータ/ジェネレータ9と多板乾式クラッチ7の気流出入口側を覆って配置される。このハウジングカバー60およびシリンダーハウジング81を覆うことにより形成される内部空間のうち、クラッチ回転軸CL(=ロータ軸)側空間を、多板乾式クラッチ7を収容するクラッチ室64とし、クラッチ室64の外側空間を、モータ/ジェネレータ9を収容するモータ室65とする。そして、ダストシール部材62により分割されるクラッチ室64とモータ室65は、油が入り込むのを遮断したドライ空間である。なお、シリンダーハウジング81は、クラッチドラム軸4に対し第1ベアリング12により支持された静止部材であり、ハウジングカバー60は、クラッチハブ軸2に対し第2ベアリング13により支持されると共に、カバーシール15により密封された静止部材である。
図4〜図8は、多板乾式クラッチ7の各構成部材の構成を示す。以下、図4〜図8に基づき、多板乾式クラッチ7の各構成部材の詳細な構成を説明する。
前記多板乾式クラッチ7は、インナープレート71(=ドライブプレート)と、アウタープレート72(=ドリブンプレート)と、摩擦フェーシング73と、ハウジングカバー60(カバー部材)と、を備える(図2参照)。
前記インナープレート71は、エンジン出力軸1(第1軸)に設けたクラッチハブ3にスプライン嵌合される。そして、クラッチハブ3とのスプライン嵌合部領域に、周方向に複数個の通気穴74を有する。この通気穴74は、図4に示すように、クラッチハブ3のスプライン部に噛み合うスプライン歯のうち、内径側に突出するスプライン歯突部75の位置であり、かつ、摩擦フェーシング73に形成されたクラッチ溝76の内側位置に有する。そして、複数枚(実施例1では4枚)のインナープレート71に開穴された通気穴74が、気流入口側である外部側(ENG側)から内部側(CVT側)へ向かって軸方向に連通する設定とすることにより、内周流入路74,74,…を構成している(図2参照)。
前記アウタープレート72は、変速機入力軸5(第2軸)に設けたクラッチドラム6にスプライン嵌合される。そして、クラッチドラム6とのスプライン嵌合部領域に、周方向に複数個の通気開口77を有する。この通気開口77は、図5に示すように、外径側に突出するスプライン歯突部の中央位置に凹部78を形成し、クラッチドラム6のスプライン歯と嵌合させたときに開口する空間により設定している。そして、複数枚(実施例1では5枚)のアウタープレート72に形成された通気開口77が、内部側(CVT側)から気流出口側である外部側(ENG側)へ向かって軸方向に連通する設定とすることにより、外周流入路77,77,…を構成している(図2参照)。
前記摩擦フェーシング73は、図6に示すように、インナープレート71の両面に設けられ、クラッチ締結時に摩擦面がアウタープレート72のプレート面に圧接する。この摩擦フェーシング73は、図7(a)に示すように、環状のプレート部材の内周側から外周側に向かって放射直線にて形成された径方向の浅溝によるクラッチ溝76を有する。なお、摩擦フェーシング73は、図7(b)に示すように、分割したプレート部材を周方向に間隔を介して貼り付けることで、内周側から外周側に向かって放射直線にて形成された径方向の深溝によるクラッチ溝76'を有するようにしても良い。つまり、クラッチ溝76,76'は、フェーシング摩耗がある程度進行しても凹溝形状を保つ深さを持たせている。
前記ハウジングカバー60は、インナープレート71とアウタープレート72の気流出入口側を覆って配置される。そして、閉鎖空間によるクラッチ室64内に外気を取り込む外気導入穴66と、閉鎖空間によるクラッチ室64内からの気流を外気へ排出する外気排出穴67と、を有する(図2参照)。外気導入穴66は、通気穴74の軸方向位置に対応し、通気穴74に向かって外気を取り込む内径側位置に有する。外気排出穴67は、アウタープレート72のスプライン嵌合部を移動する気流を、外気導入穴66へ向かう流れをラビリンス構造により抑えながら外気へ排出する外径側位置に有する。このラビリンス構造を説明すると、まず、クラッチドラム6側は、その先端部を軸方向に延長して軸方向先端部6aを形成する。一方、ハウジングカバー60側は、クラッチドラム6の軸方向先端部6aが入り込む位置に内壁凹部60aを形成すると共に、内壁凹部60aよりも径方向外側位置に内壁突起部60bを形成する。そして、クラッチドラム6より径方向外側位置であって、ダストシール部材62より径方向内側位置に、外気排出穴67を設定することで、外気導入穴66へ向かう流れを抑える構造(ラビリンス構造)としている。
前記クラッチ溝76は、気流出入口側である外部側(ENG側)に配置されるインナープレート71の両面の摩擦フェーシング73に有する溝の溝断面積合計より、内部側(CVT側)に配置されるインナープレート71の両面の摩擦フェーシング73に有する溝の溝断面積合計を大きく設定している。つまり、実施例1の複数の摩擦フェーシング73…は、それぞれに有するクラッチ溝76の溝断面積を同一断面積とし、外部側(ENG側)に配置される摩擦フェーシング73に有する溝数より、内部側(CVT側)に配置される摩擦フェーシング73に有する溝数を多く設定している。
ここで、複数枚のインナープレート71を、図8に示すように、外部側(ENG側)から内部側(CVT側)に向かって第1プレート71-1、第2プレート71-2、第3プレート71-3、第4プレート71-4という。
このとき、実施例1では、第1プレート71-1の溝数を12本とし、第2プレート71-2の溝数を18本とし、第3プレート71-3の溝数を24本とし、第4プレート71-4の溝数を36本としている。つまり、第1プレート71-1から第4プレート71-4までの溝数を、内部側(CVT側)に向かうほど増加させた溝数設定にする。そして、互いに隣接する内部側クラッチと外部側クラッチのクラッチ溝76の溝数の差は、36本−24本=12本、24本−18本=6本、18本−12本=6本というように、内部側クラッチが内側であるほど大きくなるように設定している。
次に、作用を説明する。
実施例1のハイブリッド駆動力伝達装置における作用を、「スレーブシリンダーによるクラッチ締結/開放作用」、「多板乾式クラッチの摩耗粉排出作用」、「流量分担の平準化作用」に分けて説明する。
[スレーブシリンダーによるクラッチ締結/開放作用]
以下、図2を用いてスレーブシリンダー8により多板乾式クラッチ7を締結・開放するクラッチ締結/開放作用を説明する。
スレーブシリンダー8により多板乾式クラッチ7を締結するときには、変速機ユニットT/Mにて作り出したクラッチ油圧を、シリンダーハウジング81に形成した第1クラッチ圧油路85を経過してシリンダー油室86に供給する。これにより、油圧と受圧面積を掛け合わせた油圧力がピストン82に作用し、ピストンアーム83とクラッチドラム6の間に介装されたリターンスプリング84による付勢力に抗して、ピストン82を図2の右方向にストロークさせる。そして、油圧力と付勢力の差による締結力は、ピストン82→ニードルベアリング87→ピストンアーム83→アーム圧入プレート88へと伝達され、インナープレート71とアウタープレート72を押し付け、多板乾式クラッチ7が締結される。
締結状態の多板乾式クラッチ7を開放するときは、シリンダー油室86に供給されている作動油を、クラッチ圧油路85を経過して変速機ユニットT/Mへ抜き、ピストン82に作用する油圧力を低下させると、リターンスプリング84による付勢力が油圧力を上回り、一体に構成されたピストンアーム83とアーム圧入プレート88を図2の左方向にストロークさせる。これによりアーム圧入プレート88へ伝達されていた締結力が解除され、多板乾式クラッチ7が開放される。
[多板乾式クラッチの摩耗粉排出作用]
図9は、実施例1のハイブリッド駆動力伝達装置における多板乾式クラッチ7からの摩耗粉排出作用を示す。以下、図9に基づき、多板乾式クラッチ7の摩耗粉排出作用を説明する。
インナープレート71とアウタープレート72の少なくとも一方が回転すると、回転により発生する遠心力が、クラッチ締結時には、クラッチ溝76内の空気に作用し、クラッチ開放時には、クラッチ溝76内とプレート隙間の空気に作用する。このように、隣接するプレート間の空気に遠心力が作用することにより、図9に示すように、クラッチハブ3側のB領域からクラッチドラム6側のC領域へと外径方向に空気が流動する径方向気流Eが発生する。この径方向気流Eが発生すると、内周側であるクラッチハブ3側の気圧が低下し、外周側であるクラッチドラム6側の気圧が上昇するというように、内周側と外周側とで気圧差が生じる。
前記径方向気流Eの発生により内周側であるクラッチハブ3側の気圧が低下すると、相対的に気圧が高い外気との間で、空気を流動させる気圧差を生じる。したがって、図9に示すように、外気導入穴66から外気が取り込まれ、気圧の高い外気が気圧の低いクラッチハブ3側の内周流入路74,74…に流れ込んでゆく内周側軸方向気流Fが発生する。
一方、径方向気流Eの発生により外周側であるクラッチドラム63側の気圧が上昇すると、相対的に気圧が低い外気との間で、空気を流動させる気圧差を生じる。したがって、図9に示すように、径方向気流Eを、クラッチドラム6側の外周流出路77,77…と外気排出穴67を経由して外気へ排出する外周側軸方向気流Gが発生する。
このようなメカニズムにより発生する内周側軸方向気流Fと径方向気流Eと外周側軸方向気流Gが互いに連携し、内周側軸方向気流F→径方向気流E→外周側軸方向気流Gという一連の繋がった流線を描く気流の流れ(空気の流動)が生成される。つまり、外気が外気導入穴66に導入されると、内周流入路74,74…、クラッチ溝76(プレート隙間)、外周流出路77,77…、外気排出穴67を経由して外気へ排出される。ここで、図9には、1つの径方向気流Eだけを記載しているが、各クラッチ溝76を有する複数の箇所にてそれぞれ径方向気流Eが生じる。このため、例えば、クラッチ断接の繰り返しにより摩擦フェーシング73の表面から剥がれて分離した摩耗粉は、この気流の流れ(F→E→G)に乗って、あるいは、押されて移動し、外部に排出される。
この摩耗粉排出作用は、インナープレート71とアウタープレート72が一体に回転するクラッチ締結時においても、インナープレート71とアウタープレート72の一方が回転するクラッチ開放時においても得ることができる。しかし、最も効率的に摩耗粉排出作用が得られるモードは、クラッチ開放状態であって、アウタープレート72が静止しているときにインナープレート71を回転させるモードである。その理由は、下記の二点にある。
第一に、静止しているアウタープレート72をファンケーシングとみなし、クラッチ溝76を有する摩擦フェーシング73を設けたインナープレート71をファン翼とみなすと、多板摩擦クラッチ7は、遠心ファンに類似した構成となる。この状態で、ファン翼であるインナープレート71を回転させると、遠心ファン効果により、クラッチハブ3側からクラッチドラム6側へと径方向に大量の空気が流動する径方向気流Eが発生する。
第二に、アウタープレート72と外周流出路77,77…の表面とが静止した状態においては、外周流出路77,77…の表面に付着した摩耗粉に、アウタープレート72による遠心力が作用しない。したがって、インナープレート71の回転により発生する空気流動が、遠心力が作用することなく付着している摩耗粉に作用するので、アウタープレート72が回転している状態よりも小さい流速により、閉鎖空間であるクラッチ室64の外に摩耗粉を移動させることができる。
[流量分担の平準化作用]
上記多板乾式クラッチ7の摩耗粉排出作用においては、クラッチ溝76(プレート隙間)を径方向に流れる径方向気流Eの流線は、プレート枚数に応じて複数描かれる。しかし、内周流入路74,74…や外周流出路77,77…での空気の流動を考えると、気流出入口側である外部側(ENG側)ほど流路抵抗が小さく、内部側(CVT側)に向かうほど流路抵抗が大きくなる。
したがって、複数のインナープレートに設けた摩擦フェーシングに有するクラッチ溝の溝数を全て同じ数とすると、外部側(ENG側)は大流量になるものの、内部側(CVT側)に向かうほど小流量になってしまうという流量分担になる。つまり、図10に示すように、内周流入路74,74…への流入量を100%とすると、外部側(ENG側)から内部側(CVT側)に向かって33%→22%→17%→11%というように低下していき、最内部の空間への流入分が17%となる。なお、外周流出路77,77…からの流出量分担についても、流入量分担と同じ関係を示し、外部側(ENG側)での流出量は大流量になるものの、内部側(CVT側)に向かうほど流出量は小流量になってしまう。
これに対し、実施例1では、クラッチ溝76の溝数を、外部側(ENG側)より内部側(CVT側)を多く設定する構成、言い換えると、クラッチ溝76の溝断面積合計を、外部側(ENG側)より内部側(CVT側)を大きく設定する構成を採用した。この溝設定により、内部側(CVT側)に向かうほど径方向気流Eに与える流路抵抗が小さく抑えられるし、しかも、内部側(CVT側)に向かうほど遠心力が作用する空気の量が増加するため、流量分担の平準化が図られる。
さらに、図10に示すように、気流流量は気流出入口側ほど多くなる。例えば、外周流出路の断面積が同じような場合は、この流量分担の違いに起因して外部側ほど流速が速くなる。そこで、互いに隣接する内部側クラッチと外部側クラッチのクラッチ溝76の溝数の差を、内部側クラッチが内側であるほど大きくなるように設定した(図8)。このような流路構成を採用したことで、外部側クラッチの流量分担を内部側クラッチの流量分担に比べて小さくして、内周流入路74,74…および外周流出路77,77…における内部側と外部側での流速のばらつきをより小さくした。この流速のばらつき低減作用により、流量分担のより一層の平準化が図られることになる。
ちなみに、複数のインナープレートに設けた摩擦フェーシングに有するクラッチ溝の溝数を全て同じ数としたものをベース(BASE)とする。また、クラッチ溝76を内部側(CVT側)に向かうほど徐々に増加させる溝数設定(図8:12本→18本→24本→36本)にしたものを実施例1とする。このベース構成と実施例1の構成による流速の違いを対比したものが図11であり、図11(a)に示すように、プレート位置を、外部側(ENG側)から内部側(CVT側)に向かって1,2,3,4,5としている。
このとき、ベース構成と実施例1の構成による流速の違いをみると、図11(b)に示すように、最外部側のプレート位置1においては、ベース構成での流速より実施例1の構成での流速が低くなっている。次からのプレート位置2,3,4においては、ベース構成での流速より実施例1の構成での流速が高くなっている。なお、最内部側のプレート位置5においては、ベース構成と実施例1の構成での流速がほぼ等しく低い流速で、流れの方向が逆流方向になっている。
この対比結果により、実施例1の構成を採用することで、最外部側のプレート位置1において流速(流量)を低く抑え、その低下分以上にプレート位置2,3,4において流速(流量)を高めるというように、ベース構成に対して流量分担の平準化が達成されることを確認した。そして、流量分担の平準化により、内部側(CVT側)に滞留する摩耗粉の排出が確保されるし、内部側(CVT側)の気流の流量(流速)が増加することで、摩耗粉の排出機能が高められる。
次に、効果を説明する。
実施例1のハイブリッド駆動力伝達装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) 第1軸(エンジン出力軸1)と第2軸(変速機入力軸5)の間で駆動力の伝達を断接する多板乾式クラッチ7が閉鎖空間(クラッチ室64)内に配置された駆動力伝達装置(ハイブリッド駆動力伝達装置)において、
前記多板乾式クラッチ7は、
前記第1軸(エンジン出力軸1)と第2軸(変速機入力軸5)のうち一方の軸に設けたクラッチハブ3にスプライン嵌合され、前記クラッチハブ3とのスプライン嵌合部領域に、気流入口側である外部側から内部側へ向かって軸方向に連通する内周流入路74,74…を有するインナープレート71と、
前記第1軸(エンジン出力軸1)と第2軸(変速機入力軸5)のうち他方の軸に設けたクラッチドラム6にスプライン嵌合され、前記クラッチドラム6とのスプライン嵌合部領域に、内部側から気流出口側である外部側へ向かって軸方向に連通する外周流出路77,77…を有するアウタープレート72と、
前記インナープレート71と前記アウタープレート72の対向するプレート面のうち一方のプレート面に設けられ、内周側から外周側へ向かって径方向に連通するクラッチ溝76を有する複数の摩擦フェーシング73と、
前記インナープレート71と前記アウタープレート72の気流出入口側を覆って配置され、前記閉鎖空間(クラッチ室64)内に外気を取り込む外気導入穴66と前記閉鎖空間(クラッチ室64)内からの気流を外気へ排出する外気排出穴67を有するカバー部材(ハウジングカバー60)と、を備え(図2)、
前記クラッチ溝76は、気流出入口側である外部側に配置される摩擦フェーシング73に有する溝の溝断面積合計より、内部側に配置される摩擦フェーシング73に有する溝の溝断面積合計が大きくなるように設定した(図8)。
このため、摩擦フェーシング73を介して圧接するプレート71,72間に滞留する摩耗粉による引き摺りを抑え、多板乾式クラッチ7が締結/開放不良になるのを防止することができる。
(2) 前記クラッチ溝76は、互いに隣接する内部側クラッチと外部側クラッチに有する溝の溝断面積合計の差を、内部側クラッチが内側であるほど大きくなるように設定した(図8)。
このため、上記(1)の効果に加え、内周流入路74,74…および外周流出路77,77…における内部側と外部側での流速のばらつきをより小さくすることで、流量分担のより一層の平準化を図ることができる。
(3) 前記複数の摩擦フェーシング73は、それぞれに有するクラッチ溝76の溝断面積を同一断面積とし、
前記クラッチ溝76は、気流出入口側である外部側に配置される摩擦フェーシング73に有する溝数より、内部側に配置される摩擦フェーシング73に有する溝数を多く設定した(図8)。
このため、上記(1)〜(3)の効果に加え、同じ断面形状のクラッチ溝76の溝数を異ならせるという製造的・コスト的に有利な設定手法により、外部側に有するクラッチ溝76の溝断面積合計と、内部側に有するクラッチ溝76の溝断面積合計と、に所望の差を与えることができる。
(4) 前記多板乾式クラッチ7は、前記インナープレート71のプレート面に前記クラッチ溝76を有する摩擦フェーシング73を設け、クラッチ開放状態であって、前記アウタープレート72が静止状態のとき、前記インナープレート71を回転させる。
このため、上記(1)〜(3)の効果に加え、摩耗分に遠心力が作用せず、かつ、遠心ファン効果が得られるモードにより、効率的な摩耗粉排出作用を得ることができる。
実施例2は、実施例1の構成に背面板を追加した例である。
まず、構成を説明する。
図12は、実施例2のハイブリッド駆動力伝達装置における多板乾式クラッチの要部を示し、図13は、実施例2のハイブリッド駆動力伝達装置における多板乾式クラッチの背面板を有するアウタープレートを示す。以下、図12及び図13インナープレートを示す 実施例2の背面板79は、図12に示すように、多板乾式クラッチ7の最も内部側に配置されるアウタープレート72の背面位置に、内周側から外周側へ向かう径方向に立設される。詳しくは、図13に示すように、アウタープレート72の背面位置のうち、4箇所で突設させたアーム突条83bおよびアーム圧入プレート88を避けた位置に、径方向に複数枚(例えば、24枚)立設される。そして、実施例2の場合、アーム圧入プレート88は、図3に示すように、全周にわたってアーム突条83bに圧入されるプレートではなく、4箇所で突設させたアーム突条83bのみに圧入させるプレートに変更している。なお、他の構成については、実施例1と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
次に、流量分担の平準化作用を説明する。
実施例2では、アウタープレート72が回転することで、最も内部側に配置されたアウタープレート72の背面に対して内部側(CVT側)に立設された背面板79の近傍の空気に対し、遠心力による空気流動が発生する。この空気流動により、閉鎖空間であるクラッチ室64内の最内部側空間の圧力が、最内部側空間に隣接する外周流出路77,77…の圧力よりも高くなるので、図12の径方向気流E’に示すように、最内部側空間から外周流出路77,77…に向かって空気流動が発生する。
ちなみに、複数のインナープレートに設けた摩擦フェーシングに有するクラッチ溝の溝数を全て同じ数としたものをベース(BASE)とする。また、クラッチ溝76を内部側(CVT側)に向かうほど徐々に増加させる溝数設定(図8)にすると共に背面板79を立設したものを実施例2とする。このベース構成と実施例2の構成による流速の違いを対比したものが図14であり、図14(a)に示すように、プレート位置を、外部側(ENG側)から内部側(CVT側)に向かって1,2,3,4,5としている。
このとき、ベース構成と実施例2の構成による流速の違いをみると、図14(b)に示すように、最外部側のプレート位置1においては、ベース構成での流速より実施例2の構成での流速が僅かに高くなっている。次からのプレート位置2,3,4においては、ベース構成での流速より実施例2の構成での流速が少し高くなっている。さらに、最内部側のプレート位置5においては、ベース構成での流れの方向が逆流方向であるのに対し、実施例2の構成での流れの方向が流線方向に変更されている。
この対比結果により、実施例2の構成を採用することで、最内部側のプレート位置5において最内部側空間から外周流出路77,77…に向かって空気流動が発生することを確認した。また、プレート位置1,2,3,4において流速(流量)が全面的に高められるというように、ベース構成に対して流量分担の平準化が達成され、トータル流量が増加することを確認した。
したがって、最内部側(最CVT側)に滞留する摩耗粉を含め、内部側(CVT側)に滞留する摩耗粉の排出を確保できる。また、流量分担の平準化により、全体的に気流の流量(流速)が増加することで、摩耗粉の排出機能を実施例1より高めることができる。
なお、他の作用は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
次に、効果を説明する。
実施例2のハイブリッド駆動力伝達装置にあっては、実施例1の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
(5) 前記多板乾式クラッチ7は、最も内部側に配置されるプレート(アウタープレート72)の背面位置に、内周側から外周側へ向かう径方向の背面板79を立設した(図12,図13)。
このため、最内部側(最CVT側)に滞留する摩耗粉を含め、内部側(CVT側)に滞留する摩耗粉の排出を確保することができる。
実施例3は、実施例2の構成のうち、実施例1のクラッチ溝の溝数設定に対し、より流量分担の平準化を図るように溝数設定に変更を加えた例である。
まず、構成を説明する。
図15は、実施例3の多板乾式クラッチにおいてクラッチ溝の溝数をステップ的に変更した4枚のインナープレートを示す。以下、図15に基づいて、クラッチ溝の溝数設定を説明する。
複数枚のインナープレート71を、図15に示すように、外部側(ENG側)から内部側(CVT側)に向かって第1プレート71-1、第2プレート71-2、第3プレート71-3、第4プレート71-4という。このとき、実施例3では、第1プレート71-1〜第3プレート71-3に有するクラッチ溝76の溝数を0本とし、第4プレート71-4に有するクラッチ溝76の溝数を48本としている。つまり、第1プレート71-1から第3プレート71-3までの溝ゼロに対し、第4プレート71-4に有するクラッチ溝76の溝数をステップ的に増加させた溝数設定としている。
なお、他の構成は、実施例1,2と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
次に、作用を説明する。
実施例3の流量分担の平準化作用は、基本的に、実施例1,2で述べた流量分担の平準化作用と同様である。しかし、実施例3では、インナープレート71-1からインナープレート71-3までの溝ゼロに対し、インナープレート71-4に有するクラッチ溝76の溝数をステップ的に増加させた溝数設定としたことで、高水準で流量分担の平準化を図ることができた。
すなわち、複数のインナープレートに設けた摩擦フェーシングに有するクラッチ溝の溝数を全て同じ数としたものをベース(BASE)とする。また、クラッチ溝76を最内部側(最CVT側)でステップ的に増加させた溝数設定(図15)にすると共に背面板79を立設したものを実施例3とする。このベース構成と実施例3の構成による流速の違いを対比したものが図16であり、図16(a)に示すように、プレート位置を、外部側(ENG側)から内部側(CVT側)に向かって1,2,3,4,5としている。
このとき、ベース構成と実施例3の構成による流速の違いをみると、図16(b)に示すように、最外部側のプレート位置1においては、ベース構成での流速より実施例3の構成での流速が僅かに低くなっている。次からのプレート位置2,3,4においては、ベース構成での流速より実施例3の構成での流速が次第に高くなっている。つまり、プレート位置1,2,3,4において、プレート位置1でのベース構成での流速より少し低い流速に一定化されている。さらに、最内部側のプレート位置5においては、ベース構成での流れの方向が逆流方向であるのに対し、実施例3の構成での流れの方向が流線方向で高い流速に変更されている。
この対比結果により、実施例3の構成を採用することで、最内部側のプレート位置5において最内部側空間から外周流出路77,77…に向かって空気流動が発生することを確認した。また、プレート位置1,2,3,4において流速(流量)が全面的に高められるばかりでなく、流速の一定化が図られるというように、ベース構成に対して高水準による流量分担の平準化が達成され、トータル流量が増加することを確認した。
したがって、最内部側(最CVT側)に滞留する摩耗粉を含め、内部側(CVT側)に滞留する摩耗粉の排出を確保することができる。また、高水準による流量分担の平準化により、全体的に気流の流量(流速)の大幅増加を望めることで、摩耗粉の排出機能を、実施例1,2よりさらに高めることができる。
加えて、高水準による流量分担の平準化により、クラッチ開放時、隣接するプレート間の均等なクリアランスが確保され、クラッチ開放時におけるプレート引き摺りによるフリクショントルクの低減を図ることができる。
なお、他の作用は、実施例1,2と同様であるので、説明を省略する。
実施例3のハイブリッド駆動力伝達装置にあっては、高水準での流量分担の平準化と流量の大幅増加を図ることで、実施例1の(1)〜(4)の効果、および、実施例2の(5)の効果を得ることができる。
以上、本発明の駆動力伝達装置を実施例1〜3に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1〜3では、クラッチ溝76の溝数の設定により、気流出入口側である外部側に配置される摩擦フェーシング73に有するクラッチ溝76の溝断面積合計より、内部側に配置される摩擦フェーシング73に有するクラッチ溝76の溝断面積合計が大きくなるように設定する例を示した。しかし、例えば、溝数は、外部側と内部側で同じ数に設定し、クラッチ溝の径方向溝断面積(溝幅×溝深さ)を、外部側より内部側を広くする設定とすることで、溝断面積合計に差を与えるような例としても良い。さらに、クラッチ溝の溝数の差と径方向溝断面積(溝幅×溝深さ)の差を併用することにより、溝断面積合計に差を与えるような例としても良い。要するに、外部側の溝断面積合計より、内部側の溝断面積合計が大きくなるような設定であれば、本発明に含まれる。
実施例1〜3では、ノーマルオープンによる多板乾式クラッチの例を示した。しかし、ダイアフラムスプリング等を用いたノーマルクローズによる多板乾式クラッチの例としても良い。
実施例1〜3では、インナープレート71をクラッチハブ3にスプライン嵌合し、アウタープレート72をクラッチドラム6にスプライン嵌合する例を示した。しかし、インナープレートをクラッチドラムにスプライン嵌合し、アウタープレートをクラッチハブにスプライン嵌合するような例としても良い。
実施例1〜3では、インナープレート71に摩擦フェーシング73を有する例を示した。しかし、アウタープレートに摩擦フェーシングを有する例としても良い。また、実施例1〜3では、摩擦フェーシングに有するクラッチ溝の形状を、回転中心に向かう放射直線形状とする例を示した。しかし、クラッチ溝の形状としては、放射線から傾斜角度を持たせた傾斜直線形状としても良いし、あるいは、回転によりクラッチ溝内の空気の流れをスムーズにする曲線形状としても良い。
実施例1〜3では、外周流出路77,77…を、外径側に突出するスプライン歯突部の中央位置に凹部78を形成し、クラッチドラム6のスプライン歯と嵌合させたときに開口する通気開口77を、軸方向に連通させることにより設定する例を示した。しかし、例えば、クラッチドラムにスプライン嵌合するクラッチプレートのスプライン歯を一つおきに抜くような例としても良い。さらに、スプライン嵌合部のスプライン溝を深くし、それに係合するスプライン歯の高さを低くし、スプライン嵌合状態で両者に空間を形成するような例としても良い。
実施例1〜3では、エンジンとモータ/ジェネレータを搭載し、多板乾式クラッチを走行モード遷移クラッチとするハイブリッド駆動力伝達装置への適用例を示した。しかし、エンジン車のように、駆動源としてエンジンのみを搭載し、多板乾式クラッチを発進クラッチとするエンジン駆動力伝達装置に対しても適用することができる。さらに、電気自動車や燃料電池車、等のように、駆動源としてモータ/ジェネレータのみを搭載し、多板乾式クラッチを発進クラッチとするモータ駆動力伝達装置に対しても勿論適用することができる。
1 エンジン出力軸(第1軸)
3 クラッチハブ
5 変速機入力軸(第2軸)
6 クラッチドラム
60 ハウジングカバー(カバー部材)
64 クラッチ室(閉鎖空間)
66 外気導入穴
67 外気排出穴
7 多板乾式クラッチ
71 インナープレート
72 アウタープレート
73 摩擦フェーシング
74 通気穴
74,74… 内周流入路
76 クラッチ溝
77 通気開口
77,77…外周流出路
79 背面板
E 径方向気流
F 内周側軸方向気流
G 外周側軸方向気流

Claims (5)

  1. 第1軸と第2軸の間で駆動力の伝達を断接する多板乾式クラッチが閉鎖空間内に配置された駆動力伝達装置において、
    前記多板乾式クラッチは、
    前記第1軸と第2軸のうち一方の軸に設けたクラッチハブにスプライン嵌合され、前記クラッチハブとのスプライン嵌合部領域に、気流入口側である外部側から内部側へ向かって軸方向に連通する内周流入路を有するインナープレートと、
    前記第1軸と第2軸のうち他方の軸に設けたクラッチドラムにスプライン嵌合され、前記クラッチドラムとのスプライン嵌合部領域に、内部側から気流出口側である外部側へ向かって軸方向に連通する外周流出路を有するアウタープレートと、
    前記インナープレートと前記アウタープレートの対向するプレート面のうち一方のプレート面に設けられ、内周側から外周側へ向かって径方向に連通するクラッチ溝を有する複数の摩擦フェーシングと、
    前記インナープレートと前記アウタープレートの気流出入口側を覆って配置され、前記閉鎖空間内に外気を取り込む外気導入穴と前記閉鎖空間内からの気流を外気へ排出する外気排出穴を有するカバー部材と、を備え、
    前記クラッチ溝は、前記外気導入穴から外気を取り込み前記外気排出穴から気流を外気へ排出する気流の流れが生成され、摩擦フェーシングから分離した摩耗粉が外部に排出されるときの気流出入口側である外部側に配置される摩擦フェーシングに有する溝の溝断面積合計より、内部側に配置される摩擦フェーシングに有する溝の溝断面積合計が大きくなるように設定した
    ことを特徴とする駆動力伝達装置。
  2. 請求項1に記載された駆動力伝達装置において、
    前記クラッチ溝は、互いに隣接する内部側クラッチと外部側クラッチに有する溝の溝断面積合計の差を、内部側クラッチが内側であるほど大きくなるように設定した
    ことを特徴とする駆動力伝達装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載された駆動力伝達装置において、
    前記複数の摩擦フェーシングは、それぞれに有するクラッチ溝の溝断面積を同一断面積とし、
    前記クラッチ溝は、気流出入口側である外部側に配置される摩擦フェーシングに有する溝数より、内部側に配置される摩擦フェーシングに有する溝数を多く設定した
    ことを特徴とする駆動力伝達装置。
  4. 請求項1から請求項3までの何れか1項に記載された駆動力伝達装置において、
    前記多板乾式クラッチは、最も内部側に配置されるプレートの背面位置に、内周側から外周側へ向かう径方向の背面板を立設した
    ことを特徴とする駆動力伝達装置。
  5. 請求項1から請求項4までの何れか1項に記載された駆動力伝達装置において、
    前記多板乾式クラッチは、前記インナープレートのプレート面に前記クラッチ溝を有する摩擦フェーシングを設け、クラッチ開放状態であって、前記アウタープレートが静止状態のとき、前記インナープレートを回転させる
    ことを特徴とする駆動力伝達装置。
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