JP5705810B2 - 塔状構造物、及び、塔状構造物の施工方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、基礎から立設される外筒と、外筒の頂部に揺動可能に吊り下げられる内筒とによって構成される塔状構造物が開示されている。この構造物は、内筒を、互いに並列関係をもって配置されるばねおよび減衰部材を介して外筒によって支持し、ばねおよび減衰部材と内筒の質量とによって構成される振動系を、外筒の固有周期に同調させる。そうすることで特許文献1は、内筒を振動させ、一種の同調型タンパ(TMD:Tuned Mass Damper)として機能させることを目的としている。
本発明は、このような課題に基づいてなされたもので、新設及び既設の両者において、地震応答の低減を効果的に図ることのできる多脚型の塔状構造物、及び、その施工方法を提供することを目的とする。
本発明の塔状構造物は、筒身及び柱状構造体が、基礎に近い下部位置と、先端に近い側の上部位置と、下部位置と上部位置の間に位置する中間位置と、を有するものとすると、第1つなぎ梁は、下部位置から中間位置にわたる領域Aに設置され、減衰機構は、中間位置から上部位置にわたる領域Bに設置されることを特徴としている。
そうすることで、筒身ごとに若干の重量の違いなどのアンバランスがあっても、各々の筒身に生じる若干の振動特性のずれを吸収でき、一体化した形で塔状構造物を挙動させることが可能となる。
そうすることで、柱状構造体の振動特性を調整して、減衰機構を設けることによる減衰特性を大きくできる。
柱状構造体の振動特性の調整は、領域Aにおいて、筒身と柱状構造体をピン結合により連結するつなぎ材を設置することによっても可能である。
前者の場合には、施工当初より、第1つなぎ梁は領域Aに設置される一方、減衰機構は領域Bに設置される。後者の場合には、領域Bに第1つなぎ梁が設けられていた既設の構造物から、第1つなぎ梁を取り除いた後に、領域Bに減衰機構を設置すればよい。いずれも、格別困難な作業を伴うことなく、本発明の塔状構造物を得ることができる。
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
本実施形態は、本発明の塔状構造物を煙突10に適用した例について説明する。
図1に示すように、多脚型の煙突10は、4本の筒身1と、4本の筒身1に取り囲まれる空間に立設される芯柱3と、適宜の位置で筒身1を剛結合するつなぎ梁(第1つなぎ梁)4と、筒身1と芯柱3の間に設けられる減衰機構7と、を備える。詳しくは後述するが、煙突10は、新たに建設される場合(新設)のみならず、既設の煙突の改修工事を行って得られる場合もある。
芯柱3は、筒身1とは別体の柱状の構造体であり、基礎200から鉛直方向に立ち上る。芯柱3は、筒身1と同様に鋼製であるが、既設の煙突を対象とする場合には、芯柱3を新たに建てるのではなく、既設の柱状の構造体、例えばエレベータシャフトがあるのであれば、それ芯柱3として利用できる。
煙突10は、筒身1と筒身1とがつなぎ梁4により剛結合される領域Aと、筒身1と芯柱3とが減衰機構7により連結される領域Bと、に区分される。領域A,領域Bについては、後述する。
つなぎ梁4は、図1にはトラス構造の例を示しているが、他の形態、例えばI型鋼のように単純形態の部材を用いることもできる。
減衰機構7は、図1(b)に示すように、4本の筒身1の各々と芯柱3の間に2つずつ設けられている。減衰機構7は、各筒身1から隣接する筒身1に向けて延びる連結材2の先端と芯柱3との間を繋いでおり、一つの筒身1と芯柱3の間には直交する向きに2つの減衰機構7が設けられている。そうすることで、水平方向の任意の向きの振動に対応する減衰性能が得られる。
領域Aにおいては、隣接する筒身1同士がつなぎ梁4で連結されている。このように複数の筒身1をつなぎ梁4で連結した構造が多脚型煙突の基本的な構成であるから、領域Aは従来の多脚型煙突と同じ構成、作用・効果を備えているものとみなせる。これに対して、領域Bにおいては、つなぎ梁4が省かれている。したがって、煙突10は、下部位置αと中間位置βにおいてのみつなぎ梁4により筒身1が結合されているため、領域Aにおいては複数の筒身1は一体的に変位するが、領域Bにおいて各筒身1は独立して変位できる。
煙突10は、領域Bにおいては、筒身1と芯柱3の間に減衰機構7を設けているので、地震による振動を受けると、筒身1と芯柱3の相対変位を減衰エネルギに置換し、煙突10の地震応答を低減させる。
さらにまた、煙突10は従来の多脚型の煙突に芯柱3を加える必要があるが、4本の筒身1の内側に芯柱3を設置すればよいので、芯柱3を新たに設置するエリアを必要としない。
しかも、新設の煙突に限らず、既設の煙突に対してもそれまで設けていたつなぎ梁4を取り除き、その代わりに減衰機構7設置するだけで、本実施形態の煙突10を容易に得ることができる。
なお、減衰機構7の減衰定数、筒身1と芯柱3の振動数などは、耐震上、最適となるように適宜設定されるべきものであり、本発明を限定する要素にはならない。
例えば、図2(a)に示すように、4脚型煙突に円柱状の芯柱3を用いると、減衰機構7は放射状に配列できる。
また、図2(b),(c)に示すように、本発明を3脚型煙突に適用できる。この場合も芯柱3は3本の筒身1で取り囲まれる領域に配置され、各々の筒身1と芯柱3の間に減衰機構7が2つずつ設けられている。この場合、1つの筒身1と芯柱3の間に設けられる2つの減衰機構7は、直交に近い角度で交差している。
さらに、図2(d),(e)に示すように、本発明を2脚型煙突に適用できる。この場合は、図2(d)に示すように、2本の筒身1の間から外れた位置に2本の芯柱3を設けることができるし、図2(e)に示すように、2本の筒身1に1本の芯柱3を設けることもできる。図2(d)の形態では、連結材2を、2本の筒身1の中心間を結ぶ線上、および、当該中心線を挟む両側に連結材2を設け、これら連結材2と2本の芯柱3の間に減衰機構7で繋ぐ。図に示すように、2本の筒身1の間に設けられる減衰機構7と、当該中心線を挟む両側の連結材2と芯柱3を繋ぐ減衰機構7とは、ほぼ直行するように配置されている。一方、図2(e)の例では、1本の芯柱3とその両側に配置される筒身1との間に4本の減衰機構7が芯柱3を基準にして放射状に配置されている。
また、図1には減衰機構7を領域Bの範囲で鉛直方向の複数個所(2カ所)に設けた例を示したが、領域Bの範囲で一箇所だけに減衰機構7を設けることもできる。
第1実施形態は、筒身1ごとに任意の向きに減衰作用が生じるように減衰機構7を例えば直交するように設けている。また、例えば筒身1が4本の例では、筒身1ごとに若干の重量の違いなどのアンバランスがあると、振動モードが相違し、各々の筒身1に個別の振動モードが生ずる可能性もある。そこで、第2実施形態では、上記の課題に対して、各々の筒身1に生じる若干の振動特性のずれを吸収可能な構造を提案する。
隣接する筒身1をピン結合されたつなぎ梁5で接続することで、図3(c)の横方向に並ぶ筒身1及び縦方向に並ぶ筒身1の間には相対的な変位が生ずることなく、また横方向及び縦方向に変形した際に筒身1の曲げ変形によるモーメントが伝達されない。そうすることで、複数の筒身1間の水平方向の変位挙動を協調させることができる。これにより、各々の筒身1に若干の振動特性のアンバランスがあったとしても、4本の筒身1は一体として挙動することになるので、より効率的な減衰効果を得ることができ、減衰機構7の設置箇所数を低減することが可能となる。例えば、つなぎ梁5を設けることにより図3(c)に示すように減衰機構7を、第1実施形態の煙突10に比べて半減できる。また、このことは、減衰機構7の設置を含めた煙突20の設計自体を簡便にできることを示唆している。
また、つなぎ梁5による筒身1の連結形態は図3(c)に限らず、例えば図4に示す形態を含め、上述した作用・効果が得られる種々の形態を採用できる。なお、つなぎ梁5は、その目的を達成する限り、トラス構造、I型鋼など種々の形態を適用できる。
以上説明した実施形態において、減衰機構7を設けたことによる減衰効果を大きくできるように調整できることが望まれる。第3実施形態では、マスを用いてこの要請に応える煙突30を図5に基づいて説明する。なお、減衰効果を大きくできる要素を除いて、煙突30は第1実施形態の煙突10と同じ構成を備えている。したがって、第1実施形態と同じ構成要素には、図5に同じ符号を付すことで、その説明を省略する。
頂部のみに集中マス8を設ける場合、芯柱3がトップヘビー(top heavy)になるため、芯柱3の断面積を頂部から基礎200にかけて全体的に増加させる必要がある。しかし、分布マス9とすることで、芯柱3の断面積の増加を最低限に抑えることができる。また、マスを分布させるので、振動特性の調整範囲が拡大する。
なお、煙突30が新設の場合には、当然、筒身1側に分布マス9を設置して、振動特性の調整を行ってよいことはいうまでもない。
マスを付加するのではなく、芯柱3の支持条件を調整することにより芯柱3の振動特性を調整する手法を第4実施形態として説明する。
第4実施形態の煙突40は、図7に示すように、領域Aにおいて、つなぎ梁4による筒身1の連結に加えて、芯柱3が筒身1とつなぎ材6により連結される。ただし、筒身1及び芯柱3の各々とつなぎ材6の結合は、ピン結合とする。なお、煙突40は、第3実施形態(図5(b))につなぎ材6を設置したものである。このつなぎ材6は、図7(b)に示すように、芯柱3を中心にして放射状に設けられる。また、図7(b)に示すように、筒身1につなぎ梁4が設置された断面に設けることを原則とするが、それ以外の箇所でも効果が大きいのであれば、そこに設置することは排除するものではない。このように、第3実施形態のようにマスを付加するのに代えて、支持条件を変更することで芯柱3の剛性を変化させることで、振動特性の調整範囲を行なうことができる。さらに、マスを付加するのに加えて、芯柱3の支持条件を変更すれば、振動特性の調整範囲を拡大することが可能となる。
例えば、図1に示した下部位置α、中間位置β及び上部位置γはあくまで一例であり、本発明を実際に適用する塔状構造物の仕様、その他の条件に応じて、下部位置α、中間位置β及び上部位置γを適宜設定できる。
1 筒身
2 連結材
3 芯柱
4,5 つなぎ梁
6 つなぎ材
7 減衰機構
8 集中マス
9 分布マス
A 領域
B 領域
α 下部位置
β 中間位置
γ 上部位置
Claims (7)
- 基礎から先端に向けて鉛直方向に立ち上る複数の筒身と、
前記筒身同士を剛結合により連結する第1つなぎ梁と、
前記基礎から立ち上がり、前記筒身に隣接して設置される柱状構造体と、
前記柱状構造体と前記筒身をピン結合により連結する減衰機構と、を備え、
前記筒身及び前記柱状構造体は、前記基礎に近い下部位置と、前記先端に近い側の上部位置と、前記下部位置と前記上部位置の間に位置する中間位置と、を有し、
前記第1つなぎ梁は、前記下部位置から前記中間位置に亘る領域Aに設置され、
前記減衰機構は、前記中間位置から前記上部位置に亘る領域Bに設置される、
ことを特徴とする多脚型の塔状構造物。 - 前記柱状構造体は、複数の前記筒身で取り囲まれる領域に設置される、
請求項1に記載の多脚型の塔状構造物。 - 前記領域Bにおいて、
前記筒身同士をピン結合により連結する第2つなぎ梁が設置される、
請求項1に記載の多脚型の塔状構造物。 - 前記柱状構造体に、前記柱状構造体の振動特性を調整するマスが設置される、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の多脚型の塔状構造物。 - 前記領域Aにおいて、
前記筒身と前記柱状構造体をピン結合により連結するつなぎ材が設置される、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の多脚型の塔状構造物。 - 請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の多脚型の塔状構造物の施工方法であって、
施工当初より、
前記第1つなぎ梁は、前記領域Aに設置され、
前記減衰機構は、前記領域Bに設置される、
ことを特徴とする多脚型の塔状構造物の施工方法。 - 請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の塔状構造物の施工方法であって、
前記領域Bに前記第1つなぎ梁が設けられていた既設の構造物から、前記第1つなぎ梁を取り除いた後に、
前記領域Bに前記減衰機構を設置する、
ことを特徴とする多脚型の塔状構造物の施工方法。
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