JP5705558B2 - シラン架橋樹脂成形体の製造方法及びそれを用いた成形体 - Google Patents
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<1>(B−11)下記一般式(1)で表される有機不飽和シラン化合物及び(B−12)有機パーオキサイドを含有するキャリア樹脂成分(B1)の混合物と、
シラノール縮合触媒を含有するキャリア樹脂成分(C)の混合物と、
酸化防止剤を含有するキャリア樹脂成分(D)の混合物とを、
前記キャリア樹脂成分(B1)の溶融温度以上で溶融混合して反応させ、次いで水分と接触させて架橋させるシラン架橋樹脂成形体の製造方法であって、
前記キャリア樹脂成分(B1)、前記キャリア樹脂成分(C)および前記キャリア樹脂成分(D)におけるキャリア樹脂が、ポリプロピレン樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体およびエチレン−(メタ)アクリレートアルキル共重合体からなる群から選択され、
前記酸化防止剤を、全樹脂成分の合計100質量部に対して、0.4〜6質量部含有することを特徴とするシラン架橋樹脂成形体の製造方法、
<2>(B−21)下記一般式(2)で表される有機不飽和シラン化合物を含有するキャリア樹脂成分(B2a)の混合物と、
(B−22)有機パーオキサイドを含有するキャリア樹脂成分(B2b)の混合物と、
シラノール縮合触媒を含有するキャリア樹脂成分(C)の混合物と、
酸化防止剤を含有するキャリア樹脂成分(D)の混合物とを、
前記キャリア樹脂成分(B2a)と(B2b)のうちいずれの溶融温度以上の温度で溶融混合して反応させ、次いで水分と接触させて架橋させるシラン架橋樹脂成形体の製造方法であって、
前記キャリア樹脂成分(B2a)、キャリア樹脂成分(B2b)、前記キャリア樹脂成分(C)および前記キャリア樹脂成分(D)におけるキャリア樹脂が、ポリプロピレン樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体およびエチレン−(メタ)アクリレートアルキル共重合体からなる群から選択され、
前記酸化防止剤を、全樹脂成分の合計100質量部に対して、0.4〜6質量部含有することを特徴とするシラン架橋樹脂成形体の製造方法、
<3>(A−1)ポリオレフィン樹脂100〜0質量%及び(A−2)スチレン系エラストマー0〜100質量%を含有するキャリア樹脂(A)をさらに溶融混合させることを特徴とする<1>又は<2>に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法、
<4>前記有機不飽和シラン化合物を、全樹脂成分の合計100質量部に対して、0.2〜4.0質量部含有することを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法、
<5>前記有機パーオキサイドを、全樹脂成分の合計100質量部に対して、0.03〜0.8質量部含有することを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法、
<6>前記キャリア樹脂成分(D)の混合物中に、他の樹脂成分よりも高い溶融温度のキャリア樹脂を含むことを特徴とする<1>〜<5>のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法、
<7>前記キャリア樹脂成分(C)の混合物中に、前記キャリア樹脂成分(D)以外の樹脂成分よりも高い溶融温度のキャリア樹脂を含むことを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法、
<8>前記酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤であることを特徴とする<1>〜<7>のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法、
<9>前記キャリア樹脂成分(D)の混合物が、溶融混練により得られることを特徴とする<1>〜<8>のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法、及び
<10><1>〜<9>のいずれか1項に記載の製造方法により得られることを特徴とするシラン架橋樹脂成形体、
を提供するものである。
シラノール縮合触媒を含有するキャリア樹脂成分(C)の混合物と、
酸化防止剤を含有するキャリア樹脂成分(D)の混合物とを、
前記キャリア樹脂成分(B1)の溶融温度以上で溶融混合して反応させ、次いで水分と接触させて架橋させて得ることができる。
(B−22)有機パーオキサイドを含有するキャリア樹脂成分(B2b)の混合物と、
シラノール縮合触媒を含有するキャリア樹脂成分(C)の混合物と、
酸化防止剤を含有するキャリア樹脂成分(D)の混合物とを、
前記キャリア樹脂成分(B2a)と(B2b)のうちいずれの溶融温度以上の温度で溶融混合して反応させ、次いで水分と接触させて架橋させて得ることができる。
その後、有機不飽和シラン化合物は、キャリア樹脂成分にグラフト化される。グラフト化された官能基は、シラノール触媒存在下で加水分解し、シラン架橋樹脂成形体を得ることができる。本発明においては、(C)成分にシラノール縮合触媒を混合したキャリア樹脂混合物(C)と、それとは独立に、(D)成分に酸化防止剤を混合したキャリア樹脂混合物(D)とを、別々に加えて溶融混合する。これにより、シラノール縮合触媒と酸化防止剤とを同一樹脂成分内に含有させて溶融混合する場合に比べて、架橋阻害を大幅に低減することができる。このため、架橋阻害による成形体の外観悪化や耐熱性低下を回避することができる。本発明の方法により、シラングラフトと架橋を円滑に進行させることができ、ゲル分率が25〜95%程度の架橋成形体を効率よく製造することができる。
さらに、キャリア樹脂成分(D)中の樹脂成分に、他の樹脂成分よりも高い溶融温度のものを含むことを特徴とする。これにより、シラングラフトが終了し、シラン架橋が進行した後に酸化防止剤を分散させることができる。このため、架橋阻害が低減されるとともに、酸化防止剤の消耗を最小限に抑えることができる。したがって、外観及び耐熱性に優れたシラン架橋樹脂成形体を得ることができる。
さらにまた、(C)中の樹脂成分に、他の樹脂成分よりも高い溶融温度のものを含むことにより、シラングラフトが十分進行した後に、架橋が開始される。このため、副反応が生じにくい。その結果、優れた外観を有するシラン架橋樹脂成形体を得ることができる。
シラン架橋樹脂成形体の製造方法において、(B1)、(B2a)、(B2b)、(C)及び(D)成分に用いられるキャリア樹脂としては、以下のポリオレフィン樹脂及び/又はスチレン系エラストマーが挙げられる。キャリア樹脂(A)も、(B1)、(B2a)、(B2b)、(C)及び(D)成分に用いられるキャリア樹脂と同様のものを使用することができる。
ただし、本発明では、キャリア樹脂成分(B1)、キャリア樹脂成分(B2a)、キャリア樹脂成分(B2b)、キャリア樹脂成分(C)およびキャリア樹脂成分(D)におけるキャリア樹脂は、ポリプロピレン樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体およびエチレン−(メタ)アクリレートアルキル共重合体からなる群から選択される。
ポリプロピレン樹脂としては、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、プロピレンと他の少量のα−オレフィン(例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等)との共重合体、構成成分としてアタクチックのプロピレンを含むポリプロピレン、プロピレンとエチレン系共重合体ゴムとのブロック共重合体等が挙げられる。本明細書においては、ポリプロピレン樹脂としては、プロピレンの単独重合体のほかに、構成成分として、プロピレン成分とエチレン成分を有する共重合体のうち、プロピレン成分が85質量%以上のものをいう。
本発明におけるポリオレフィン樹脂としては、LLDPE、LDPE、HDPE、VLDPE、シングルサイト触媒存在下に合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体が好ましく、その中でも特に、シングルサイト触媒存在下に合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体が好ましい。シングルサイト触媒の存在下に合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えばDow Chemical社から、「AFFINITY」「ENGAGE」(商品名)が、日本ポリエチレン社から「カーネル」、三井化学社から「タフマー」が、またプライムポリマー社からは「エボリュー」が上市されている。
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレンなどがあり、1種または2種以上が選ばれ、中でもスチレンが好ましい。
また共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどがあり、1種または2種以上が選ばれ、中でもブタジエンが好ましい。
スチレン系エラストマーとしては、SBS(スチレン・ブタジエンブロックコポリマー)、SIS(スチレン・イソプレンブロックコポリマー)、SEBS(水素化SBS)、SEEPS、SEPS(水素化SIS)、HSBR(水添スチレン・ブタジエンゴム)等を挙げることができる。この中でも、SEBS、SEPSが好ましい。
スチレン系エラストマーの量は0〜100質量%、好ましくは0〜40質量%、さらに好ましくは、0〜30質量%である。スチレン系エラストマーの量が多すぎると、架橋が進行せず耐熱性が低下する。
一般に、ゴム用軟化剤として用いられる鉱物油軟化剤は、芳香族環、ナフテン環およびパラフィン鎖の三者の組み合わさった混合物である。パラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものをパラフィン系とよび、ナフテン環炭素数が30〜40%のものはナフテン系、芳香族炭素数が30%以上のものは芳香族系と呼ばれて区別されている。
ゴム用軟化剤としては、液状もしくは低分子量の合成軟化剤またはパラフィン系およびナフテン系の鉱物油を用いることができる。
上記の樹脂成分のほかに、ポリウレタン、ポリエステル、ナイロン樹脂やそのエラストマーのほか、シリコーン樹脂や種々のゴム系樹脂等を本発明の耐熱性を損なわない範囲で適宜使用することができる。この中でも、キャリア樹脂としては、上記のポリオレフィン樹脂、及び必要に応じてスチレン系エラストマーを含有する樹脂成分が好ましい。なお、上記の樹脂成分は1種類の樹脂でも良いし、2種類以上の樹脂を混ぜ合わせても良い。
(B1)成分は、(B−11)有機不飽和シラン化合物および(B−12)有機パーオキサイドを含有するキャリア樹脂成分(B1)の混合物である。また、(B2a)成分は、(B−21)有機不飽和シラン化合物を含有するキャリア樹脂成分(B2a)の混合物である。
キャリア樹脂成分(B1)及び(B2a)の混合物中の有機不飽和シラン化合物は、有機パーオキサイドの働きにより各樹脂成分とグラフト化する。
(B−11)有機不飽和シラン化合物は、下記一般式(1)で表される。
前記一般式(1)におけるRa11は、一般式(2)におけるRa21と同義であり、一般式(1)におけるRb11は、一般式(2)におけるRb21と同義である。また一般式(1)におけるY11、Y12、Y13は、それぞれ、一般式(2)におけるY21、Y22、Y23と同義である。下記に説明するものであれば、特に制限なく使用することができる。
以下の有機不飽和シラン化合物の説明は、一般式(1)をもって説明し、一般式(2)の有機不飽和シラン化合物の説明は省略する。
Rb11は脂肪族炭化水素基、水素原子又は後述のY13である。脂肪族炭化水素基としては、脂肪族不飽和炭化水素基を除く炭素数1〜8の1価の脂肪族炭化水素基が挙げられる。本発明におけるRb11としては、後述のY13であることが好ましい。
Y11、Y12及びY13は加水分解する有機基である。Y11、Y12及びY13は互いに同じでも異なっていてもよい。これらの基としてはアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、アセチル等を挙げることができる。この中でも反応性の点からメトキシ又はエトキシが好ましい。
具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、ビニルジメトキシブトキシシラン、ビニルジエトキシブトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
この有機不飽和シラン化合物は全樹脂成分の合計100質量部に対して0.2質量部〜4.0質量部含有することが好ましい。この量が少なすぎると、有機不飽和シラン化合物のグラフトが十分に進まず、得られる樹脂成形体の耐熱性、架橋度が低下する。さらに、シラングラフト部分での架橋が進まず、通常のポリマー主鎖での架橋が生じ、得られた樹脂成形体の外観が著しく損なわれる。また、有機不飽和シラン化合物の量が多すぎると、有機不飽和シラン化合物同士の重合が進み、ゲル化物が多く生成する。その結果、得られた樹脂成形体の外観が損なわれる。
(B−12)有機パーオキサイドと、(B−22)有機パーオキサイドは同義である。下記に説明するものであれば、特に制限なく使用することができる。
本発明で用いられる有機パーオキサイドとしては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert‐ブチルクミルパーオキサイドなどを挙げることができる。これらのうち、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3が最も好ましい。
この量は全樹脂成分の合計100質量部中、0.03質量部〜0.8質量部であることが好ましい。この含有量が少なすぎると、有機不飽和シラン化合物のグラフト反応が進まないことから、得られる樹脂成形体の外観や耐熱性が著しく低下する。また、含有量が多すぎると、ポリマー同士の架橋が進み、得られる樹脂成形体の外観が著しく損なわれる。
なお、キャリア樹脂が1種類の場合、予め有機不飽和シラン化合物と有機パーオキサイドとを同時に加えても、別々に加えた後に混合してもよい。また、キャリア樹脂が2種類以上の場合、1種類の樹脂に有機不飽和シラン化合物(B21)を加えてキャリア樹脂成分(B2a)の混合物とし、ほかの樹脂に有機パーオキサイド(B−22)を加えてキャリア樹脂成分(B2b)の混合物とし、これらを別々に用いてもよい。また、2種類以上の樹脂を予め混合した後に有機不飽和シラン化合物と有機パーオキサイドとを同時に又は別々に加えて、得られた混合物を用いてもよい。
(B1)成分は、(B−11)有機不飽和シラン化合物と、(B−12)有機パーオキサイドとを、キャリア樹脂に含浸させてキャリア樹脂に混合させることにより製造することができる。(B2a)成分は、(B−21)有機不飽和シラン化合物をキャリア樹脂に含浸させてキャリア樹脂に混合させることにより製造することができる。また、(B2b)成分は、(B−22)有機パーオキサイドを、キャリア樹脂に含浸させてキャリア樹脂に混合させることにより製造することができる。
本発明におけるシラノール縮合触媒としては、有機スズ化合物、金属石けん、白金化合物等が用いられる。一般的なシラノール縮合触媒としては、具体的に、ジブチルスズジラウリレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ナフテン酸鉛、硫酸鉛、硫酸亜鉛、有機白金化合物などが用いられる。
本発明におけるシラノール縮合触媒は、グラフト化された有機不飽和シラン化合物を縮合反応により水分の存在下で結合させる働きがある。このシラノール縮合触媒の働きに基づき、有機不飽和シラン化合物を介してポリマー同士が架橋される。その結果、耐熱性に優れた樹脂成形体を得ることができる。
シラノール縮合触媒の量は全樹脂成分の合計100質量部に対し0.005質量部〜0.2質量部が好ましい。含有量が少なすぎると、十分な架橋反応が進まず得られる樹脂成形体の耐熱性が得られない。また、含有量が多すぎると、架橋反応が速く進んだり、部分的に反応が進むため、得られる樹脂成形体の外観が著しく低下する。
(C)シラノール縮合触媒を含有するキャリア樹脂は、シラノール縮合触媒を通常用いる混練装置を用いてキャリア樹脂成分(C)に混合することにより、製造することができる。
本発明における酸化防止剤としては、4,4’−ジオクチル・ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物などのアミン系酸化防止剤、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等のフェノール系酸化防止剤、ビス(2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル)スルフィド、2−メルカプトベンゾイミダゾールおよびその亜鉛塩、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリル−チオプロピオネート)などのイオウ系酸化防止剤などがあげられる。この中でも、フェノール系酸化防止剤が好ましく、具体的には、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)が好ましい。
熱老化特性の点から、全樹脂成分の合計100質量部中酸化防止剤の含有量は0.3〜7質量部であることが好ましい。さらに好ましくは0.4〜6質量部であり、特に好ましいのは0.5〜5質量部である。
ただし、本発明では、酸化防止剤は、全樹脂成分の合計100質量部に対して、0.4〜6質量部含有する。
(D)成分は、酸化防止剤を通常用いる混練装置を用いてキャリア樹脂成分(D)に混合することにより、製造することができる。
金属不活性剤としては、N,N’−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、2,2’−オキサミドビス−(エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)などがあげられる。
添加される耐候剤としては、光安定剤(例えばヒンダードアミン系光安定剤)、紫外線吸収剤(例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、カーボンブラック)など、一般的な耐候剤が挙げられる。
難燃(助)剤、充填剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、カーボン、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ホワイトカーボンなどがあげられる。
滑剤としては、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石けん系、シリコーン系などがあげられ、なかでも、炭化水素系やシリコーン系が好ましい。
(B1)、(C)及び(D)成分、又は(B2a)、(B2b)、(C)及び(D)成分の混合物に、必要な場合は、さらに(A)成分を例えばブレンダーでブレンドし、一軸混練押出機、二軸混練押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど通常用いられる混練装置で溶融混練することにより、樹脂組成物を得ることができる。溶融混練は、上記の、(B1)、(B2a)及び(B2b)成分、必要な場合は、さらに(A)成分の溶融温度以上で行う。さらに(B1)及び(C)成分、又は(B2a)、(B2b)及び(C)成分の樹脂よりも高い溶融温度以上で混練することが好ましい。ここで、樹脂成分が融点を有する場合は、溶融温度はDSC(示差走査熱量計)によって測定された融点をいい、スチレン系エラストマーは融点を有しないため、ハードセグメントであるポリスチレンが溶融する温度を溶融温度とする。こうして得られた樹脂組成物を、常温で放置、もしくは、温水、水中或いは湿熱下で放置することにより、水分と接触させて架橋反応を進行させて、シラン架橋樹脂成形体を得ることができる。
(A)成分は、一軸混練押出機、二軸混練押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど通常用いられる混練装置を用いてそれぞれの成分を溶融混練することにより製造することができる。混練温度は150℃〜240℃が好ましい。(A)成分は、1種類の材料をそのまま使用しても良いし、2種以上の材料をブレンダー等で混合して使用しても良い。
(B1)成分の混合物は、キャリア樹脂に有機不飽和シラン化合物及び有機パーオキサイドを含浸させて得ることができる。含浸の方法は特に限定されるものではないが、加温ができるミキサーであることが好ましく、例えばスーパーミキサー、ヘンシェルミキサー等が挙げられる。含浸温度は特には限定されないが、キャリア樹脂の融点より10〜40℃程度低い温度で含浸させることが好ましい。なお、有機不飽和シラン化合物に有機パーオキサイドを溶かし込んだ混合液をキャリア樹脂に含浸させてもよい。
(B2a)成分の混合物は、キャリア樹脂に有機不飽和シラン化合物を含浸させて得ることができる。含浸の方法は特に限定されるものではないが、(B1)成分の混合物と同様の方法で行うことができる。また、(B2b)成分の混合物は、キャリア樹脂に有機有機パーオキサイドを含浸させて得ることができる。含浸の方法は特に限定されるものではないが、(B1)成分の混合物と同様の方法で行うことができる。
(C)成分の混合物および(D)成分の混合物の製造方法としては、一軸混練押出機、二軸混練押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど通常用いられる混練装置を用いてそれぞれの成分を溶融混練すればよい。混練温度は150℃〜240℃が好ましい。
なお、上記成分の保管の際には、少なくとも(D)成分は他の成分と別に保管することが好ましい。また、(B1)及び(B2a)成分は有機不飽和シラン化合物の揮発を抑えるため、密封して保管することがよい。
絶縁電線やケーブルは、通常の押出成形機を用いて導体、光ファイバ、集合絶縁電線やその他成形体の周囲に上記の方法で押出被覆し、シラン架橋することにより製造することができる。
絶縁電線の肉厚には、特に制限はないが、好ましくは、0.15〜3mmのものを得ることができる。被覆層は多層構造であってもよい。
また、本発明の製造方法により、導体に押出被覆して被覆層を形成して、その後常温で放置するか、温水や水、湿熱下に放置することにより、耐熱性のシラン架橋被覆層を有する配線材を得ることができる。さらに耐熱性を向上させるために押出後の被覆層をさらに他の方法で架橋させることもできる。
電子線架橋法の場合は、樹脂組成物を押出成形して被覆層とした後に常法により電子線を照射することにより架橋をおこなう。電子線の線量は1〜30Mradが適当であり、効率よく架橋をおこなうために、被覆層を構成する樹脂組成物に、トリメチロールプロパントリアクリレートなどのメタクリレート系化合物、トリアリルシアヌレートなどのアリル系化合物、マレイミド系化合物、ジビニル系化合物などの多官能性化合物を架橋助剤として含有してもよい。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
表1−1及び表1−2の実施例1〜15および参考例1の各成分の含有量は、「樹脂成分の比率」を除き、表中の数値は質量部である。
(A)成分については、実施例8はブレンダーでドライブレンド、実施例10はバンバリーミキサー(BM)で混合し、その他の実施例は樹脂ペレットをそのまま用いることにより材料を得た。
(B)成分については、実施例1〜11および参考例1は、(B−11)有機不飽和シラン化合物に(B−12)有機パーオキサイドを溶かし込んだ後、この混合液をキャリア樹脂に含浸させることにより、(B1)成分の混合物を得た。
実施例14および15については、(B−21)有機不飽和シラン化合物をキャリア樹脂(エンゲージ7256もしくはカーネルKF360)に含浸させて、(B2a)成分の混合物を得た。また、(B−22)有機パーオキサイドをキャリア樹脂(UE320)に含浸させて、(B2b)成分の混合物を得た。
(C)および(D)成分については、各成分ごとにバンバリーミキサーを用いて溶融混練して得た。
各樹脂成分を表1−1、表1−2の「樹脂成分の比率(%)」に示す割合で配合して、ブレンダーでブレンドして樹脂混合物を得た。例えば、実施例1は、成分(A)の樹脂成分が55%、成分(B1)の樹脂成分が20%、成分(C)の樹脂成分が5%及び成分(D)の樹脂成分が20%となるように配合して、表1の「混合後組成」のとおりの組成を得た。
押出温度はシリンダー温度が180℃、ヘッド温度を190℃に設定し、押出を行った。得られた電線は、60℃90%の湿熱恒温槽に24時間放置してから用いた。
表2に比較例1〜7の各成分の含有量は、「樹脂成分の比率」を除き、表中の数値は質量部である。
表2に示す(A)、(B1)、(F)成分を以下の方法で作成した。
表2の(A)成分は樹脂ペレットをそのまま用いることにより材料を得た。
表2の(B1)成分については有機不飽和シラン化合物に有機パーオキサイドを溶かし込んだ混合液を用意した。キャリア樹脂にこの混合液を含浸させることにより、樹脂成分(B1)を得た。
表2に示す(F)成分はバンバリーミキサーを用いて溶融混練して、各樹脂組成物を製造した。
次に樹脂成分(A)、(B1)、(F)成分を表2の如く配合し、ブレンダーでブレンドし樹脂組成物を得た。
(A)、(B1)、(F)成分を表2の「樹脂成分の比率(%)」に示す割合で配合して、ブレンダーでブレンドして樹脂混合物を得た。例えば、比較例1は、成分(A)の樹脂成分が60%、成分(B1)の樹脂成分が20%、成分(C)の樹脂成分が20%となるように配合して、表2の「混合後組成」のとおりの組成を得た。
押出温度はシリンダー温度が180℃、ヘッド温度を190℃に設定し、押出を行った。得られた電線は、60℃で90%の湿熱恒温槽に24時間放置してから用いた。
(A)成分
(A−1)成分
以下の材料のうち、融点を有する場合は、溶融温度はDSC(示差走査熱量計)によって測定された融点をいう。スチレン系エラストマーは融点を有しないため、ハードセグメントであるポリスチレンが溶融する温度を溶融温度とする。
・ポリエチレン
商品名:エンゲージ7256、製造元:ダウ・ケミカル、溶融温度:75℃
商品名:エンゲージ8842、製造元:ダウ・ケミカル、溶融温度:38℃
商品名:カーネルKF360、製造元:日本ポリケム(株)、溶融温度:91℃
・直鎖型低密度ポリエチレン
商品名:UE320、製造元:日本ポリエチレン(株)、溶融温度:121℃
・エチレン−アクリル酸エチル共重合体
商品名:NUC6510、製造元:日本ユニカー(株)、溶融温度:94℃
・ブロックポリプロピレン
商品名:BC8A、製造元:日本ポリプロピレン(株)、溶融温度:162℃
(A−2)成分
・スチレン系エラストマー(SEEPS)
商品名:セプトン4077、製造元:(株)クラレ、溶融温度:80〜100℃
(B−11)、(B−21)
・有機不飽和シラン化合物(ビニルトリメトキシシラン)
商品名:Dynasylan、製造元:エボニックデグサ
(B−12)、(B−22)
・有機パーオキサイド
商品名:パークミルD、製造元:日本油脂(株)
商品名:パーヘキサ25B、製造元:日本油脂(株)
・ジブチルスズジラウリレート
商品名:TN−12、製造元:堺化学工業
(D)酸化防止剤
・フェノール系酸化防止剤
商品名:イルガノックス1010、製造元:BASFジャパン
商品名:イルガノックスMD1024、製造元:BASFジャパン
(1)加熱変形
UL1581の方法に従い、加熱変形を測定した。測定温度は160℃で測定し、荷重は3Nとした。50%以下が合格である。
(2)外観
電線の外観を目視で確認を行った。外観が問題ないサンプルを○、ブツがややあるが製品上問題がないサンプルを△、ブツが多くて外観が悪いものを×とした。△以上が合格である。
(3)ゲル分率
電線の被覆層から約0.1gを採取して、120℃キシレンに20時間浸漬し、浸漬前後の質量変化率(浸漬後の質量/浸漬前の質量)からゲル分率を求めた。表1−1、表2にその値を示す。
これに対して、本発明の実施例1〜15は、加熱変形のない外観の優れた成形品を得ることができた。
Claims (10)
- (B−11)下記一般式(1)で表される有機不飽和シラン化合物及び(B−12)有機パーオキサイドを含有するキャリア樹脂成分(B1)の混合物と、
シラノール縮合触媒を含有するキャリア樹脂成分(C)の混合物と、
酸化防止剤を含有するキャリア樹脂成分(D)の混合物とを、
前記キャリア樹脂成分(B1)の溶融温度以上で溶融混合して反応させ、次いで水分と接触させて架橋させるシラン架橋樹脂成形体の製造方法であって、
前記キャリア樹脂成分(B1)、前記キャリア樹脂成分(C)および前記キャリア樹脂成分(D)におけるキャリア樹脂が、ポリプロピレン樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体およびエチレン−(メタ)アクリレートアルキル共重合体からなる群から選択され、
前記酸化防止剤を、全樹脂成分の合計100質量部に対して、0.4〜6質量部含有することを特徴とするシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
- (B−21)下記一般式(2)で表される有機不飽和シラン化合物を含有するキャリア樹脂成分(B2a)の混合物と、
(B−22)有機パーオキサイドを含有するキャリア樹脂成分(B2b)の混合物と、
シラノール縮合触媒を含有するキャリア樹脂成分(C)の混合物と、
酸化防止剤を含有するキャリア樹脂成分(D)の混合物とを、
前記キャリア樹脂成分(B2a)と(B2b)のうちいずれの溶融温度以上の温度で溶融混合して反応させ、次いで水分と接触させて架橋させるシラン架橋樹脂成形体の製造方法であって、
前記キャリア樹脂成分(B2a)、キャリア樹脂成分(B2b)、前記キャリア樹脂成分(C)および前記キャリア樹脂成分(D)におけるキャリア樹脂が、ポリプロピレン樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体およびエチレン−(メタ)アクリレートアルキル共重合体からなる群から選択され、
前記酸化防止剤を、全樹脂成分の合計100質量部に対して、0.4〜6質量部含有することを特徴とするシラン架橋樹脂成形体の製造方法。 - (A−1)ポリオレフィン樹脂100〜0質量%及び(A−2)スチレン系エラストマー0〜100質量%を含有するキャリア樹脂(A)をさらに溶融混合させることを特徴とする請求項1又は2に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記有機不飽和シラン化合物を、全樹脂成分の合計100質量部に対して、0.2〜4.0質量部含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記有機パーオキサイドを、全樹脂成分の合計100質量部に対して、0.03〜0.8質量部含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記キャリア樹脂成分(D)の混合物中に、他の樹脂成分よりも高い溶融温度のキャリア樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記キャリア樹脂成分(C)の混合物中に、前記キャリア樹脂成分(D)以外の樹脂成分よりも高い溶融温度のキャリア樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記キャリア樹脂成分(D)の混合物が、溶融混練により得られることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法により得られることを特徴とするシラン架橋樹脂成形体。
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