JP6490618B2 - 難燃性架橋樹脂成形体及び難燃性架橋性樹脂組成物とそれらの製造方法、難燃性シランマスターバッチ、並びに、難燃性成形品 - Google Patents
難燃性架橋樹脂成形体及び難燃性架橋性樹脂組成物とそれらの製造方法、難燃性シランマスターバッチ、並びに、難燃性成形品 Download PDFInfo
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Description
シラン架橋法とは、有機過酸化物の存在下で不飽和基を有する加水分解性シランカップリング剤を樹脂にグラフト反応させてシラングラフト樹脂を得た後に、シラノール縮合触媒の存在下でシラングラフト樹脂を水分と接触させることにより、樹脂を架橋する方法である。
シラン架橋法を応用した例として、例えば、特許文献1には、ポリオレフィン系樹脂及び無水マレイン酸系樹脂を混合してなる樹脂成分にシランカップリング剤で表面処理した無機フィラー、シランカップリング剤、有機過酸化物及び架橋触媒をニーダーにて十分に溶融混練した後に、単軸押出機にて成形する方法が提案されている。
また、別の方法として、例えば、特許文献2〜4には、水添ブロック共重合体と非芳香族系ゴム用軟化剤等と含有する熱可塑性樹脂又はエラストマー組成物を、シラン表面処理された無機フィラーを介して有機過酸化物を用いて部分架橋する方法が、提案されている。
また、本発明は、この難燃性架橋樹脂成形体を形成可能な、難燃性シランマスターバッチ、難燃性架橋性樹脂組成物及びその製造方法を提供することを課題とする。
更に、本発明は、難燃性架橋樹脂成形体の製造方法で得られた難燃性架橋樹脂成形体を含む難燃性成形品を提供することを課題とする。
<1>下記工程(1)、工程(2)及び工程(3)を有する、難燃性架橋樹脂成形体の製造方法であって、
工程(1):ベース樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.6質量
部と、ベーマイト60〜200質量部と、前記ベーマイトと反応し、シラノール縮合
可能な反応部位、及びラジカルの存在下で前記ベース樹脂にグラフト反応しうるグラ
フト化反応部位を有するシランカップリング剤2〜15質量部と、シラノール縮合触
媒とを溶融混合して混合物を得る工程
工程(2):前記工程(1)で得られた混合物を成形して成形体を得る工程
工程(3):前記工程(2)で得られた成形体を水と接触させて難燃性架橋樹脂成形
体を得る工程
前記ベース樹脂が、ポリオレフィン樹脂及びエチレンゴムの少なくとも1種を含有し、かつ、前記ポリオレフィン樹脂を100質量%以下、前記エチレンゴムを100質量%以下、スチレン系エラストマーを35質量%以下、及び、オイルを40質量%以下の割合で含有し、
前記工程(1)を行うに当たり、下記工程(a−2)でベース樹脂の全部を溶融混合する場合には、前記工程(1)が下記工程(a−1)、工程(a−2)及び工程(c)を有し、下記工程(a−2)でベース樹脂の一部を溶融混合する場合には、前記工程(1)が下記工程(a−1)、工程(a−2)、工程(b)及び工程(c)を有する、難燃性架橋樹脂成形体の製造方法。
工程(a−1):少なくとも前記ベーマイト及び前記シランカップリング剤を混合
して混合物を調製する工程
工程(a−2):前記混合物と前記ベース樹脂の全部又は一部とを、前記有機過酸
化物の存在下で前記有機過酸化物の分解温度以上の温度において溶融混合して、前
記グラフト化反応部位と前記ベース樹脂とをグラフト化反応させることにより、シ
ラン架橋性樹脂を含む難燃性シランマスターバッチを調製する工程
工程(b):前記ベース樹脂の残部及び前記シラノール縮合触媒を溶融混合して、
触媒マスターバッチを調製する工程
工程(c):前記難燃性シランマスターバッチと、前記シラノール縮合触媒又は前
記触媒マスターバッチとを溶融混合する工程
<2>前記ベース樹脂が、ポリオレフィン樹脂50質量%以下と、エチレンゴム10〜100質量%と、スチレン系エラストマー35質量%以下と、オイル40質量%以下とを含有する、<1>に記載の難燃性架橋樹脂成形体の製造方法。
<3>前記ベース樹脂が、ポリオレフィン樹脂20〜40質量%と、エチレンゴム10〜60質量%と、スチレン系エラストマー10〜35質量%と、オイル10〜40質量%とを含有する、<1>又は<2>に記載の難燃性架橋樹脂成形体の製造方法。
<4>前記ベーマイトの配合量が、ベース樹脂100質量部に対して、60〜170質量部である、<1>〜<3>のいずれか1項に記載の難燃性架橋樹脂成形体の製造方法。
<5>ベース樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、ベーマイト60〜200質量部と、前記ベーマイトと反応し、シラノール縮合可能な反応部位、及びラジカルの存在下で前記ベース樹脂にグラフト反応しうるグラフト化反応部位を有するシランカップリング剤2〜15質量部と、シラノール縮合触媒とを溶融混合する工程(1)を有する、難燃性架橋性樹脂組成物の製造方法であって、
前記ベース樹脂が、ポリオレフィン樹脂及びエチレンゴムの少なくとも1種を含有し、かつ、前記ポリオレフィン樹脂を100質量%以下、前記エチレンゴムを100質量%以下、スチレン系エラストマーを35質量%以下、及び、オイルを40質量%以下の割合で含有し、
前記工程(1)を行うに当たり、下記工程(a−2)でベース樹脂の全部を溶融混合する場合には、前記工程(1)が下記工程(a−1)、工程(a−2)及び工程(c)を有し、下記工程(a−2)でベース樹脂の一部を溶融混合する場合には、前記工程(1)が下記工程(a−1)、工程(a−2)、工程(b)及び工程(c)を有する、難燃性架橋性樹脂組成物の製造方法。
工程(a−1):少なくとも前記ベーマイト及び前記シランカップリング剤を混合
して混合物を調製する工程
工程(a−2):前記混合物と前記ベース樹脂の全部又は一部とを、前記有機過酸
化物の存在下で前記有機過酸化物の分解温度以上の温度において溶融混合して、前
記グラフト化反応部位と前記ベース樹脂とをグラフト化反応させることにより、シ
ラン架橋性樹脂を含む難燃性シランマスターバッチを調製する工程
工程(b):前記ベース樹脂の残部及び前記シラノール縮合触媒を溶融混合して、
触媒マスターバッチを調製する工程
工程(c):前記難燃性シランマスターバッチと、前記シラノール縮合触媒又は前
記触媒マスターバッチとを溶融混合する工程
<6>上記<5>に記載の難燃性架橋性樹脂組成物の製造方法により製造されてなる難燃性架橋性樹脂組成物。
<7>上記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の難燃性架橋樹脂成形体の製造方法により製造されてなる難燃性架橋樹脂成形体。
<8>上記<7>に記載の難燃性架橋樹脂成形体を含む難燃性成形品。
<9>ベース樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、ベーマイト60〜200質量部と、前記ベーマイトと反応し、シラノール縮合可能な反応部位、及びラジカルの存在下で前記ベース樹脂にグラフト反応しうるグラフト化反応部位を有するシランカップリング剤2〜15質量部と、シラノール縮合触媒とを溶融混合してなる難燃性架橋性樹脂組成物の製造に用いられる難燃性シランマスターバッチであって、
前記ベース樹脂が、ポリオレフィン樹脂及びエチレンゴムの少なくとも1種を含有し、かつ、前記ポリオレフィン樹脂を100質量%以下、前記エチレンゴムを100質量%以下、スチレン系エラストマーを35質量%以下、及び、オイルを40質量%以下の割合で含有し、
少なくとも前記ベーマイト及び前記シランカップリング剤を混合して混合物を調製し、得られた混合物と前記ベース樹脂の全部又は一部とを前記有機過酸化物の存在下で前記有機過酸化物の分解温度以上の温度において溶融混合してグラフト化反応部位と前記ベース樹脂とをグラフト化反応させることにより得られる、シラン架橋性樹脂を含む難燃性シランマスターバッチ。
したがって、本発明により、良好な外観、柔軟性及び耐酸性を兼ね備えた難燃性架橋樹脂成形体及びその製造方法を提供できる。また、このような特性を有する難燃性架橋樹脂成形体を形成可能な、難燃性シランマスターバッチ、難燃性架橋性樹脂組成物及びその製造方法を提供できる。更には、上述の難燃性架橋樹脂成形体を含む難燃性成形品を提供できる。
本発明に用いる各成分について説明する。
本発明に難燃性架橋樹脂成形体の製造方法に用いるベース樹脂は、ポリオレフィン樹脂及びエチレンゴムの少なくとも1種を含有する。その際に、ベース樹脂は、ポリオレフィン樹脂を100質量%以下、エチレンゴムを100質量%以下、スチレン系エラストマーを35質量%以下、及び、オイルを40質量%以下の割合で含有する樹脂混合物である。
ベース樹脂に含まれうる樹脂成分としては、シランカップリング剤のビニル基と、有機過酸化物の存在下で、グラフト反応可能な部位を主鎖中又はその末端に有する樹脂が用いられる。グラフト反応可能な部位としては、例えば、炭素鎖の不飽和結合部位や、水素原子を有する炭素原子が挙げられる。
このような樹脂成分として、ポリオレフィン樹脂、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーが挙げられる。本発明においては、ベース樹脂として、ポリオレフィン樹脂及びエチレンゴムの少なくとも1種を含有し、ポリオレフィン樹脂、エチレンゴム及びスチレン系エラストマーのうちいずれか2つを含有していることが好ましく、すべてを含有していることがより好ましい。中でも、樹脂成分の1つとしてエチレンゴムを含有していることが特に好ましい。
ポリオレフィン樹脂は、エチレン性不飽和結合を有する化合物を重合又は共重合して得られる樹脂であれば特に限定されるものではなく、従来、難燃性樹脂組成物に使用されている公知のものを使用することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレンとエチレン−α−オレフィン樹脂とのブロック共重合体、酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有するポリオレフィン共重合体の各樹脂が挙げられる。また、これら共重合体のゴムないしはエラストマー(エチレンゴム及びスチレン系エラストマーを除く)等も挙げられる。例えば、アクリルゴムが挙げられる。
本発明に用い得るポリエチレン樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMW−PE)、直鎖型低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)等が挙げられる。中でも、直鎖型低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンが好ましい。ポリエチレン樹脂は1種単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
ここで、ランダムポリプロピレンは、プロピレンとエチレンとの共重合体であって、エチレン成分含有量が1〜5質量%のものをいう。また、ブロックポリプロピレンは、ホモポリプロピレンとエチレン−プロピレン共重合体とを含む組成物であって、エチレン成分含有量が5〜15質量%程度で、エチレン成分とプロピレン成分が独立した成分として存在するものをいう。
例えば、難燃性架橋樹脂成形体により高度な柔軟性が求められる場合、ベース樹脂は、ポリオレフィン樹脂としての上記各樹脂の中でも、密度が0.915g/cm2以下の直鎖型低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)及びエチレン−α−オレフィン共重合体からなる群より選択される1種又は2種以上の樹脂を含むことが好ましい。特に、ポリオレフィン樹脂としてポリプロピレン樹脂を含有していないと、難燃性架橋樹脂成形体に更に高い柔軟性を付与できる。一方、難燃性架橋樹脂成形体により高い強度又は磨耗特性が求められる場合、ベース樹脂は、上述の各樹脂の中でも、ポリプロピレン樹脂を含むことが好ましい。更に、難燃性架橋樹脂成形体により高度な難燃性が求められる場合、ベース樹脂は、酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有するポリオレフィン共重合体及びアクリルゴムからなる群より選択される1種又は2種以上の樹脂を含むことが好ましい。
エチレンゴムとしては、エチレン性不飽和結合を有する化合物を共重合して得られる共重合体からなるゴム(エラストマーを含む)であれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。エチレンゴムとしては、好ましくは、エチレンとα−オレフィンとの共重合体、エチレンとα−オレフィンとジエンとの三元共重合体からなるゴムが挙げられる。三元共重合体のジエンは、共役ジエンであっても非共役ジエンであってもよく、非共役ジエンが好ましい。すなわち、三元共重合体は、エチレンとα−オレフィンと共役ジエンとの三元共重合体、及び、エチレンとα−オレフィンと非共役ジエンとの三元共重合体等が挙げられる。エチレンゴムとしてはエチレンとα−オレフィンとの共重合体及びエチレンとα−オレフィンと非共役ジエンとの三元共重合体が好ましい。
α−オレフィンとしては、炭素数3〜12の各α−オレフィンが好ましく、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。共役ジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられ、ブタジエン等が好ましい。非共役ジエンとしては、例えば、ジシクロペンタジエン(DCPD)、エチリデンノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン等が挙げられ、エチリデンノルボルネンが好ましい。
エチレンとα−オレフィンとの共重合体からなるゴムとして、例えば、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−オクテンゴム等が挙げられる。エチレンとα−オレフィンとジエンとの三元共重合体からなるゴムとしては、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−ブテン−ジエンゴム等が挙げられる。中でも、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム及びエチレン−ブテン−ジエンゴムが好ましく、エチレン−プロピレンゴム及びエチレン−プロピレン−ジエンゴムがより好ましい。
ベース樹脂中のエチレンゴムの含有量が60質量部以上である場合、エチレンゴムのジエン構成成分量(ジエン含有量という)が0〜3.5質量%が好ましく、0〜3質量%がより好ましく、0〜2.5質量%が更に好ましい。ジエン含有量は、例えば赤外線吸収分光法(FT−IR)、プロトンNMR(1H−NMR)法等で測定できる。
スチレン系エラストマーとしては、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とのブロック共重合体及びランダム共重合体の各エラストマー、又は、それらの水素添加物等が挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、p−(t−ブチル)スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルトルエン、p−(t−ブチル)スチレン等が挙げられる。芳香族ビニル化合物は、これらの中でも、スチレンが好ましい。この芳香族ビニル化合物は、単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。共役ジエン化合物は、これらの中でも、ブタジエンが好ましい。この共役ジエン化合物は、単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。また、スチレン系エラストマーとして、同様な製法で、スチレン成分が含有されてなく、スチレン以外の芳香族ビニル化合物を含有するエラストマーを使用してもよい。
スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、水素化スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(水素化SBS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、水素化SIS、水素化スチレン・ブタジエンゴム(HSBR)等からなるものを挙げることができる。
スチレン系エラストマーは1種単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
ベース樹脂が含有しうるオイルは、特に限定されないが、有機油又は鉱物油が挙げられる。ベース樹脂が有機油を含有していると、ブツ(表面に突出したツブ状物)の発生を抑制して優れた外観を有する難燃性架橋樹脂成形体を製造することができる。
有機油又は鉱物油として、大豆油、パラフィンオイル、ナフテンオイル、アロマオイルが挙げられ、パラフィンオイル又はナフテンオイルが好ましく、機械強度の点でパラフィンオイルがより好ましい。
ベース樹脂の組成を上記通りにすることにより、柔軟性と強度を両立することができる。
有機過酸化物は、少なくとも熱分解によりラジカルを発生して、触媒として、シランカップリング剤の樹脂成分へのラジカル反応によるグラフト反応を生起させる働きをする。特にシランカップリング剤の反応部位が例えばエチレン性不飽和基を含む場合、エチレン性不飽和基と樹脂成分とのラジカル反応(樹脂成分からの水素ラジカルの引き抜き反応を含む)によるグラフト反応を生起させる働きをする。
有機過酸化物としては、ラジカルを発生させるものであれば、特に制限はなく、例えば、一般式:R1−OO−R2、R3−OO−C(=O)R4、R5C(=O)−OO(C=O)R6で表される化合物が好ましい。ここで、R1〜R6は各々独立にアルキル基、アリール基又はアシル基を表す。各化合物のR1〜R6のうち、いずれもアルキル基であるもの、又は、いずれかがアルキル基で残りがアシル基であるものが好ましい。
本発明において、有機過酸化物の分解温度とは、単一組成の有機過酸化物を加熱したとき、ある一定の温度又は温度域でそれ自身が2種類以上の化合物に分解反応を起こす温度を意味する。具体的には、DSC法等の熱分析により、窒素ガス雰囲気下で5℃/分の昇温速度で、室温から加熱したとき、吸熱又は発熱を開始する温度をいう。
ベーマイトとは、酸化アルミニウム水和物(Al2O3・H2O)のことをいう。ベーマイトは、その表面に、シランカップリング剤の反応部位と水素結合若しくは共有結合等、又は分子間結合により、化学結合しうる部位(例えば、酸素原子)を有している。
本発明において、ベーマイトは、シランカップリング剤を保持し、フィラー又は難燃剤として作用する。
本発明において、ベーマイトは、表面未処理で使用することが好ましい。
ベーマイトの平均1次粒径は、特に限定されないが、0.3〜5μmが好ましく、0.4〜2μmがより好ましい。平均1次粒径が0.3〜5μmであると、伸びと強度を損なうことなく、難燃性を付与することができる。また、シランカップリング剤との混合時にベーマイトが2次凝集しにくく、外観に優れたものとなる。平均1次粒径は、ベーマイトをアルコールや水で分散させて、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置等の光学式粒径測定器によって求められる。
ベーマイトの形状は、特に限定されず、粒状、板状、針状などのものを使用することができ、板状のものが好ましい。板状である場合、アスペクト比は、1〜60が好ましく、強度と柔軟性のバランスの観点から、1〜3が好ましい。
ベーマイトのBET比表面積は、特に限定されないが、引張強さ又は柔軟性の点で、0.8〜30m2/gが好ましく、1.2〜25m2/gがより好ましい。BET比表面積は、JIS Z 8830:2013の「キャリアガス法」に準拠して、吸着質として窒素ガスを用いて、測定される値である。例えば、比表面積・細孔分布測定装置「フローソーブ」(島津製作所社製)を用いて測定した値である。
本発明に用いられるシランカップリング剤は、有機過酸化物の分解により生じたラジカルの存在下で樹脂成分にグラフト反応しうるグラフト化反応部位(基又は原子)と、ベーマイトの化学結合しうる部位と反応し、シラノール縮合可能な反応部位(加水分解して生成する部位を含む。例えばシリルエステル基等)とを、少なくとも有するものであればよい。このようなシランカップリング剤として、従来、シラン架橋法に使用されているシランカップリング剤が挙げられる。
上記シランカップリング剤の中でも、末端にビニル基とアルコキシ基を有するシランカップリング剤が更に好ましく、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが特に好ましい。
シラノール縮合触媒は、樹脂成分にグラフトしたシランカップリング剤を水分の存在下で縮合反応させる働きがある。このシラノール縮合触媒の働きに基づき、シランカップリング剤を介して、樹脂成分同士が架橋される。その結果、上述の優れた特性を有する難燃性架橋樹脂成形体が得られる。
シラノール縮合触媒は、所望により樹脂又はゴムに混合されて、用いられる。このような樹脂又はゴム(キャリア樹脂ともいう)としては、特に限定されないが、ベース樹脂で説明した樹脂成分を用いることができる。キャリア樹脂は、エチレンゴムが好ましい。
難燃性架橋樹脂成形体及び難燃性架橋性樹脂組成物は、電線、電気ケーブル、電気コード等の各種配線材、シート、発泡体、チューブ、パイプにおいて、一般的に使用されている各種の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。このような添加剤として、例えば、架橋助剤、酸化防止剤、滑剤、金属不活性剤、又は、上記ベーマイト以外の充填剤(難燃(助)剤を含む。)等が挙げられる。
酸化防止剤は、ベース樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜15.0質量部、更に好ましくは0.1〜10質量部で加えることができる。
本発明の難燃性架橋樹脂成形体の製造方法及び本発明の難燃性架橋性樹脂組成物の製造方法は、いずれも、少なくとも下記の工程(1)を行う。したがって、本発明の難燃性架橋樹脂成形体の製造方法及び本発明の難燃性架橋性樹脂組成物の製造方法を併せて以下に説明する(両製造方法に共通する説明においては、本発明の製造方法ということがある。)。
本発明の難燃性架橋樹脂成形体は、この製造方法により得られる成形体である。
また、本発明の難燃性シランマスターバッチは、下記工程(a−1)及び工程(a−2)(両工程を併せて工程(a)という)により製造される。したがって、本発明の難燃性シランマスターバッチの製造方法を本発明の製造方法において説明する。
工程(1):ベース樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.6質量
部と、ベーマイト60〜200質量部と、シランカップリング剤2〜15質量部と、
シラノール縮合触媒とを溶融混合して混合物を得る工程
工程(2):前記工程(1)で得られた混合物を成形して成形体を得る工程
工程(3):前記工程(2)で得られた成形体を水と接触させて難燃性架橋樹脂成形
体を得る工程
工程(a−1):少なくとも前記ベーマイト及び前記シランカップリング剤を混合
して混合物を調製する工程
工程(a−2):前記混合物と前記ベース樹脂の全部又は一部とを、前記有機過酸
化物の存在下で前記有機過酸化物の分解温度以上の温度において、溶融混合して難
燃性シランマスターバッチを調製する工程
工程(b):前記ベース樹脂の残部及び前記シラノール縮合触媒を溶融混合して、
触媒マスターバッチを調製する工程
工程(c):前記難燃性シランマスターバッチと、前記シラノール縮合触媒又は前
記触媒マスターバッチとを溶融混合する工程
ここで、混合するとは、均一な混合物を得ることをいう。
ここで、工程(b)でベース樹脂の残部が配合される場合、ベース樹脂は、工程(a−2)において、好ましくは80〜99質量%、より好ましくは94〜98質量%が配合され、工程(b)において、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2〜6質量%が配合される。
すなわち、ベース樹脂として、ポリオレフィン樹脂及びエチレンゴムの少なくとも1種を含有し、かつ、ポリオレフィン樹脂を0〜100質量%の範囲、エチレンゴムを0〜100質量%の範囲、スチレン系エラストマーを0〜35質量%の範囲、及び、オイルを0〜40質量%の範囲から、合計で100質量%となるように、それぞれ、選択して、用いる。
上記観点から、シランカップリング剤の配合量は、ベース樹脂100質量部に対して、好ましくは3〜12質量部であり、より好ましくは4〜12質量部である。
この工程(1)において、ベース樹脂の全部又は一部、有機過酸化物、ベーマイト、シランカップリング剤及びシラノール縮合触媒の溶融混合は、特定の混合順で、行われる。
ベーマイトとシランカップリング剤の混合方法においては、ベース樹脂が存在していてもよく、有機過酸化物が共存する場合には上記分解温度未満の温度を保持する。この場合、ベース樹脂とともにベーマイト及びシランカップリング剤を上記温度で混合(工程(a−1))した後に溶融混合することが好ましい。
湿式混合では、シランカップリング剤とベーマイトとの結力合が強くなるため、シランカップリング剤の揮発を効果的に抑えることができるが、シラノール縮合反応が進みにくくなることがある。一方、乾式混合では、湿式混合の場合よりもシランカップリング剤が揮発しやすいが、ベーマイトとシランカップリング剤の結合力が比較的弱くなるため、効率的にシラノール縮合反応が進みやすくなる。これにより、難燃性架橋樹脂成形体に柔軟性を付与できる。
例えば、有機過酸化物は、シランカップリング剤と混合した後にベーマイトと混合されてもよいし、シランカップリング剤と分けて別々にベーマイトに混合されてもよい。有機過酸化物をシランカップリング剤と混合する場合、有機過酸化物とシランカップリング剤とは実質的に一緒に混合した方がよい。一方、生産条件によっては、シランカップリング剤のみをベーマイトに混合し、次いで有機過酸化物を混合してもよい。
また、有機過酸化物は、他の成分と混合させたものでもよいし、単体でもよい。
混合方法としては、ゴム、プラスチック等で通常用いられる方法であれば、特に限定されない。混合装置は、例えばベーマイトの配合量に応じて適宜に選択される。混練装置として、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等が用いられる。樹脂成分の分散性、及び架橋反応の安定性の面で、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等の密閉型ミキサーが好ましい。
また、通常、ベーマイトがベース樹脂100質量部に対して100質量部を超えて混合される場合、連続混練機、加圧式ニーダー、バンバリーミキサーで混練りするのがよい。
ベース樹脂の混合方法も特に限定されない。例えば、予めベース樹脂を調製して用いてもよく、各成分をそれぞれ別々に用いてもよい。
工程(1)、特に工程(a−1)及び工程(a−2)において、架橋助剤は実質的に混合されないことが好ましい。架橋助剤が実質的に混合されないと、溶融混合中に樹脂成分同士の架橋が生じにくく、難燃性架橋樹脂成形体の外観、更には耐熱性が優れる。
混合は、均一に混合できる方法であればよく、ベース樹脂の溶融下で行う混合(溶融混合)が挙げられる。溶融混合は上記工程(a−2)の溶融混合と同様に行うことができる。例えば、混合温度は、80〜250℃、より好ましくは100〜240℃で行うことができる。その他の条件、例えば混合時間は適宜設定することができる。
キャリア樹脂が他の樹脂である場合、工程(a−2)においてグラフト反応を促進させることができるうえ、成形中にブツが生じにくい。他の樹脂の配合量は、ベース樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜60質量部、より好ましくは2〜50質量部、更に好ましくは2〜40質量部である。
この触媒MBは、シランMBとともに、工程(1)で調製される難燃性架橋性樹脂組成物の製造に、マスターバッチセットとして、用いられる。
混合方法は、上述のように均一な混合物を得ることができれば、どのような混合方法でもよい。
上記のように、シラン架橋性樹脂は、シランカップリング剤がシラノール縮合していない未架橋体である。実際的には、工程(c)で溶融混合されると、一部架橋(部分架橋)は避けられないが、得られる難燃性架橋性樹脂組成物について、少なくとも工程(2)での成形における成形性が保持されたものとする。
本発明の難燃性架橋樹脂成形体の製造方法において、得られた混合物を成形して成形体を得る工程(2)を行う。この工程(2)は、混合物を成形できればよく、本発明の難燃性成形品の形態に応じて、適宜に成形方法及び成形条件が選択される。成形方法は、押出機を用いた押出成形、射出成形機を用いた押出成形、その他の成形機を用いた成形が挙げられる。押出成形は、本発明の難燃性成形品が電線又は光ファイバケーブルである場合に、好ましい。
このようにして、難燃性架橋性樹脂組成物の成形体が得られる。この成形体は難燃性架橋性樹脂組成物と同様に、一部架橋は避けられないが、工程(2)で成形可能な成形性を保持する部分架橋状態にある。したがって、この発明の難燃性架橋樹脂成形体は、工程(3)を実施することによって、架橋又は最終架橋された成形体とされる。
この工程(3)の処理自体は、通常の方法によって行うことができる。シランカップリング剤同士の縮合は、水分存在下であれば常温で保管するだけで進行する。したがって、工程(3)において、成形体を水に積極的に接触させる必要はない。
この架橋反応を促進させるために、成形体を水分と積極的に接触させることもできる。例えば、常温水への浸漬、高湿度環境での保管等が挙げられる。更に、速やかに縮合反応を進行させために、必要に応じて、温水(例えば、50〜90℃)への浸水、湿熱槽への投入、高温の水蒸気への暴露等の積極的に水に接触させる方法を採用できる。また、その際に水分を内部に浸透させるために圧力をかけてもよい。
本発明では、工程(c)で、最終的な架橋反応を行うこともあり、ベース樹脂にシランカップリング剤を上述のように特定量配合すると、成形時の押し出し加工性を損なうことなくベーマイトを多量に配合することが可能になり、優れた難燃性を確保しながらも、機械特性、更に耐熱性等を併せ持つことができる。
ベーマイトと強い結合を有するシランカップリング剤は、このシラノール縮合触媒による水存在下での縮合反応が生じにくく、ベーマイトとの結合が保持される。ベーマイトとシランカップリング剤の結合エネルギーが高く、シラノール縮合触媒下にあっても縮合反応が起こらないと考えられる。このように、樹脂成分とベーマイトの結合が生じ、シランカップリング剤を介した樹脂成分の架橋が生じる。これにより樹脂成分とベーマイトの密着性が強固になり、機械強度が高く、更には耐摩耗性及び傷付性を備えた成形体が得られる。特に、1つのベーマイト粒子表面に複数のシランカップリング剤を複数結合でき、高い機械強度を得ることができる。このように、ベーマイトに対して強い結合で結合したシランカップリング剤は、高い機械特性、場合によっては耐摩耗性、耐傷付性等に寄与すると考えられる。
しかも、上述したように、シランカップリング剤の揮発、ベース樹脂又はシランカップリング剤同士の架橋反応も抑えることができる。更には、上述の溶融混合中、ベーマイトは安定に存在し、溶融混合中の発泡を効果的に抑えることができる。
このように、特定の混合態様で上述のベース樹脂とシランカップリング剤とを溶融混合するシラン架橋法において、ベーマイトとシランカップリング剤とを併用することにより、難燃性と外観と耐酸性と柔軟性とを高い水準で兼ね備えたものとなる。
本発明の難燃性成形品として、例えば、耐熱性難燃絶縁電線等の電線又は耐熱難燃ケーブルの被覆材料、ゴム代替電線・ケーブルの材料、その他、耐熱難燃電線部品、難燃耐熱シート、難燃耐熱フィルム等が挙げられる。また、電源プラグ、コネクター、スリーブ、ボックス、テープ基材、チューブ、シート、パッキン、クッション材、防震材、電気・電子機器の内部配線及び外部配線に使用される配線材、特に電線や光ケーブルが挙げられる。耐酸性が要求される製品としては、例えば、屋外用電線又は自動車用配線が挙げられる。
本発明の難燃性成形品が電線、ケーブル等の押出成形品である場合、好ましくは、成形原料を押出機(押出被覆装置)内で溶融混合して難燃性架橋性樹脂組成物を調製しながら、この難燃性架橋性樹脂組成物を導体等の外周に押し出して導体等を被覆し、次いで架橋反応させる方法等により、製造できる。この方法においては、ベーマイトを大量に加えても難燃性架橋性樹脂組成物を電子線架橋機等の特殊な機械を使用することなく汎用の押出被覆装置を用いて、導体の周囲に、又は抗張力繊維を縦添え若しくは撚り合わせた導体の周囲に押出被覆することにより、成形することができる。例えば、導体としては軟銅の単線又は撚り線等を用いることができる。また、導体としては裸線の他に、錫メッキしたものやエナメル被覆絶縁層を有するものを用いることもできる。導体の周りに形成される絶縁層(本発明の難燃性架橋性樹脂成形体からなる被覆層)の肉厚は特に限定されないが、通常、0.15〜5mm程度である。
表1及び表2において、各例の配合量に関する数値は特に断らない限り質量部を表す。
<ベース樹脂>
PE:「NUC7641」(商品名、日本ユニカー社製、直鎖型低密度ポリエチレンの樹脂)
EVA:「EV360」(商品名、三井・デュポンポリケミカル社製、エチレン−酢酸ビニル共重合体の樹脂)
EPゴム1:「ノーデル3640」(商品名、ダウ・ケミカル社製、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンゴム、エチレン含有量60質量%、ジエン含有量1.8質量%)
EPゴム2:「EPT3092」(商品名、三井化学社製、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンゴム、エチレン含有量65質量%、ジエン含有量4.6質量%)
SEPS:「セプトン4077」(商品名、クラレ社製、スチレン系エラストマー、スチレン含有量30質量%)
OIL:「コスモニュートラル500」(商品名、コスモ石油ルブリカンツ社製、パラフィンオイル)
<ベーマイト>
水酸化アルミニウム(日本軽金属社製、商品名:B703)に対して水熱処理(210℃、2MPaの雰囲気下で3時間加熱)を行い、脱水、乾燥させた後、ボールミルで粉砕し、下記のベーマイト1〜3を得た。
ベーマイト1:平均1次粒径1.5μm、アスペクト比2.5、BET表面積比5
ベーマイト2:平均1次粒径0.9μm、アスペクト比2.5、BET表面積比15
ベーマイト3:平均1次粒径2.5μm、アスペクト比2.0、BET表面積比3
<無機フィラー>
水酸化アルミニウム1:「ハイジライト42M」(商品名、昭和電工社製、表面未処理水酸化アルミニウム)
水酸化アルミニウム2:「ハイジライト42S」(商品名、昭和電工社製、脂肪酸(ステアリン酸)処理水酸化アルミニウム)
<シランカップリング剤>
KBM:「KBM−1003」(商品名、信越化学工業社製、ビニルトリメトキシシラン)
<有機過酸化物>
「Perkadox BC−FF」(商品名、化薬アクゾ社、ジクミルパーオキサイド(DCP)、分解温度151℃)
<酸化防止剤(ヒンダードフェノール酸化防止剤)>
「イルガノックス1010」(商品名、BASF社製、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])
<シラノール縮合触媒>
「アデカスタブOT−1」(商品名、ADEKA社製、ジオクチルスズジラウレート)
実施例1〜19及び比較例1〜4において、ベース樹脂を構成する樹脂成分の内、EPゴムを触媒MBのキャリア樹脂として用いた。実施例20においては、キャリア樹脂としてPEを用いた。
次に、このようにして得られた粉体混合物と、表1又は表2のシランMB欄に示す樹脂成分と、有機過酸化物とを、表1又は表2に示す質量比で、日本ロール製2Lバンバリーミキサー内に投入し、有機過酸化物の分解温度以上の温度、具体的には200℃において5分混練りし、シランMBを得た(工程(a−2))。得られたシランMBは、樹脂成分にシランカップリング剤がグラフト反応したシラン架橋性樹脂を含有している。
<押出成形条件(1)>
得られたドライブレンド物を、L/D(スクリュー有効長Lと直径Dとの比)=24、スクリュー直径40mmのスクリューを備えた押出機(送り出し部スクリュー温度160℃、圧縮部スクリュー温度190℃、ヘッド温度190℃)に投入した。この押出機内でドライブレンド物を溶融混合しながら(溶融混合時間5分)、7/0.6A(導体径1.8mm)の外周に被覆厚さ1mmとなるように線速20m/分で押し出して、導体の周囲に難燃性架橋性樹脂組成物の押出成形体を有する、外径3.8mmの被覆導体を得た(工程(c)及び工程(2))。
押出成形条件(1)において、圧縮部スクリュー温度を210℃に、ヘッド温度を210℃にしたこと以外は押出成形条件(1)と同様にして、被覆導体を得た(工程(c)及び工程(2))。
このようにして、上記被覆導体から、難燃性架橋樹脂成形体の被覆層を備えた電線を製造した。この難燃性架橋樹脂成形体は上述のシラン架橋樹脂を有している。
上記押出成形条件(1)により得られた被覆導体を水と接触させることにより製造した各電線において、押出機からドライブレンド物を押出後20分経過した部分の外観を観察した。電線としての外観が優れていたものを「A」、電線としての外観に問題がないもの(電線外観として許容可能な程度)を「B」、電線としての外観に問題があるものを「C」とした。評価が「B」以上であることが本試験の合格レベルである。
<外観試験2>
上記押出成形条件(2)により得られた被覆導体を水と接触させることにより製造した各電線において、押出機からドライブレンド物を押出後20分経過した部分の外観を観察した。電線としての外観が優れていたものを「A」、電線としての外観に問題がないものを「B」、電線としての外観に問題があるものを「C」とした。評価が「B」以上であることが本試験の合格レベルである。
上記押出成形条件(1)により得られた被覆導体を水と接触させることにより製造した各電線から抜き取った被覆層(管状片)について引張試験を行った。
この引張試験はJIS C 3005に準じて、標線間25mm、引張速度200mm/分の条件で、引張強さ(MPa)、100%モジュラス(MPa)及び引張伸び(%)を測定した。
本試験において、引張強さは、12MPa以上であったものを特に優れたレベルとして「AA」で表し、10MPa以上12MPa未満であったものを優れたレベルとして「A」で表し、8MPa以上10MPa未満であったものを本試験の合格レベルとして「B」で表し、8MPa未満であったものを本試験の不合格レベルとして「C」で表した。
100%モジュラスは、柔軟性の指標となるものであり、本試験において、6MPa以下であったものを特に優れたレベルとして「AA」で表し、6MPaを超え7MPa以下であったものを優れたレベルとして「A」で表し、7MPaを超え8MPa以下であったものを本試験の合格レベルとして「B」で表し、8MPaを超えたものを本試験の不合格レベルとして「C」で表した。
本試験において、引張伸びは、300%以上であったものを優れたレベルとして「AA」で表し、200%以上300%未満であったものを本試験の合格レベルとして「A」で表し、200%未満であったものを本試験の不合格レベルとして「C」で表した。
難燃性試験は、JIS C 3005に規定の「傾斜難燃試験」に準じて行った。
試験電線として、上記押出成形条件(1)により得られた被覆導体を水と接触させることにより製造した各電線を用いた。
傾斜角は60°、燃焼時間は30秒とした。
評価は、炎が自消したものを「A」、炎が自消しなかったものを「C」とした。
試験片として、上記押出成形条件(1)により得られた被覆導体を水と接触させることにより製造した各電線から抜き取った被覆層(管状片)を用いた。
上記電線5gを量り取り、下記4種の酸液50mLそれぞれに、50℃で168時間浸漬させた。その後、試験片を取出し、その質量WA(g)を測定した。各酸液について、試験片の、浸漬前後の質量変化率(%)を下記式から求めた。
式:質量変化率(%)=[WA(g)−5(g)]/5(g)×100
本試験において、すべての酸液において浸漬前後の質量変化率が5%以内であったものを「A」、1つ以上の酸液において5%を超えたものを「C」とした。
酸液:10質量%硫酸、10質量%硝酸、10質量%塩酸及び10質量%酢酸
無機フィラーとして水酸化アルミニウムを用いた場合、及び、ベーマイトを用いてもその配合量が多すぎる場合は、いずれも、外観及び柔軟性の少なくとも一方に劣り、これらを両立できなかった(比較例2〜4)。また、ベーマイトを用いてもその配合量が少なすぎる場合は、難燃性が十分ではなかった(比較例1)。
これに対して、特定組成のベース樹脂を用い、所定量のベーマイトをシランカップリング剤と併用した場合は、いずれも、外観、柔軟性及び耐酸性を高い水準で兼ね備えていた(実施例1〜20)。特に、高温押出条件であっても外観低下を効果的に防止することができた。更には、機械特性(引張強さ及び引張伸び)にも十分な性能を示した。
Claims (9)
- 下記工程(1)、工程(2)及び工程(3)を有する、難燃性架橋樹脂成形体の製造方法であって、
工程(1):ベース樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.6質量
部と、ベーマイト60〜200質量部と、前記ベーマイトと反応し、シラノール縮合
可能な反応部位、及びラジカルの存在下で前記ベース樹脂にグラフト反応しうるグラ
フト化反応部位を有するシランカップリング剤2〜15質量部と、シラノール縮合触
媒とを溶融混合して、混合物を得る工程
工程(2):前記工程(1)で得られた混合物を成形して成形体を得る工程
工程(3):前記工程(2)で得られた成形体を水と接触させて難燃性架橋樹脂成形
体を得る工程
前記ベース樹脂が、ポリオレフィン樹脂及びエチレンゴムの少なくとも1種を含有し、かつ、前記ポリオレフィン樹脂を100質量%以下、前記エチレンゴムを100質量%以下、スチレン系エラストマーを35質量%以下、及び、オイルを40質量%以下の割合で含有し、
前記工程(1)を行うに当たり、下記工程(a−2)でベース樹脂の全部を溶融混合する場合には、前記工程(1)が下記工程(a−1)、工程(a−2)及び工程(c)を有し、下記工程(a−2)でベース樹脂の一部を溶融混合する場合には、前記工程(1)が下記工程(a−1)、工程(a−2)、工程(b)及び工程(c)を有する、難燃性架橋樹脂成形体の製造方法。
工程(a−1):少なくとも前記ベーマイト及び前記シランカップリング剤を混合
して混合物を調製する工程
工程(a−2):前記混合物と前記ベース樹脂の全部又は一部とを、前記有機過酸
化物の存在下で前記有機過酸化物の分解温度以上の温度において溶融混合して、前
記グラフト化反応部位と前記ベース樹脂とをグラフト化反応させることにより、シ
ラン架橋性樹脂を含む難燃性シランマスターバッチを調製する工程
工程(b):前記ベース樹脂の残部及び前記シラノール縮合触媒を溶融混合して、
触媒マスターバッチを調製する工程
工程(c):前記難燃性シランマスターバッチと、前記シラノール縮合触媒又は前
記触媒マスターバッチとを溶融混合する工程 - 前記ベース樹脂が、ポリオレフィン樹脂50質量%以下と、エチレンゴム10〜100質量%と、スチレン系エラストマー35質量%以下と、オイル40質量%以下とを含有する、請求項1に記載の難燃性架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記ベース樹脂が、ポリオレフィン樹脂20〜40質量%と、エチレンゴム10〜60質量%と、スチレン系エラストマー10〜35質量%と、オイル10〜40質量%とを含有する、請求項1又は2に記載の難燃性架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記ベーマイトの配合量が、ベース樹脂100質量部に対して、60〜170質量部である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃性架橋樹脂成形体の製造方法。
- ベース樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、ベーマイト60〜200質量部と、前記ベーマイトと反応し、シラノール縮合可能な反応部位、及びラジカルの存在下で前記ベース樹脂にグラフト反応しうるグラフト化反応部位を有するシランカップリング剤2〜15質量部と、シラノール縮合触媒とを溶融混合する工程(1)を有する、難燃性架橋性樹脂組成物の製造方法であって、
前記ベース樹脂が、ポリオレフィン樹脂及びエチレンゴムの少なくとも1種を含有し、かつ、前記ポリオレフィン樹脂を100質量%以下、前記エチレンゴムを100質量%以下、スチレン系エラストマーを35質量%以下、及び、オイルを40質量%以下の割合で含有し、
前記工程(1)を行うに当たり、下記工程(a−2)でベース樹脂の全部を溶融混合する場合には、前記工程(1)が下記工程(a−1)、工程(a−2)及び工程(c)を有し、下記工程(a−2)でベース樹脂の一部を溶融混合する場合には、前記工程(1)が下記工程(a−1)、工程(a−2)、工程(b)及び工程(c)を有する、難燃性架橋性樹脂組成物の製造方法。
工程(a−1):少なくとも前記ベーマイト及び前記シランカップリング剤を混合
して混合物を調製する工程
工程(a−2):前記混合物と前記ベース樹脂の全部又は一部とを、前記有機過酸
化物の存在下で前記有機過酸化物の分解温度以上の温度において溶融混合して、前
記グラフト化反応部位と前記ベース樹脂とをグラフト化反応させることにより、シ
ラン架橋性樹脂を含む難燃性シランマスターバッチを調製する工程
工程(b):前記ベース樹脂の残部及び前記シラノール縮合触媒を溶融混合して、
触媒マスターバッチを調製する工程
工程(c):前記難燃性シランマスターバッチと、前記シラノール縮合触媒又は前
記触媒マスターバッチとを溶融混合する工程 - 請求項5に記載の難燃性架橋性樹脂組成物の製造方法により製造されてなる難燃性架橋性樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性架橋樹脂成形体の製造方法により製造されてなる難燃性架橋樹脂成形体。
- 請求項7に記載の難燃性架橋樹脂成形体を含む難燃性成形品。
- ベース樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、ベーマイト60〜200質量部と、前記ベーマイトと反応し、シラノール縮合可能な反応部位、及びラジカルの存在下で前記ベース樹脂にグラフト反応しうるグラフト化反応部位を有するシランカップリング剤2〜15質量部と、シラノール縮合触媒とを溶融混合してなる難燃性架橋性樹脂組成物の製造に用いられる難燃性シランマスターバッチであって、
前記ベース樹脂が、ポリオレフィン樹脂及びエチレンゴムの少なくとも1種を含有し、かつ、前記ポリオレフィン樹脂を100質量%以下、前記エチレンゴムを100質量%以下、スチレン系エラストマーを35質量%以下、及び、オイルを40質量%以下の割合で含有し、
少なくとも前記ベーマイト及び前記シランカップリング剤を混合して混合物を調製し、得られた混合物と前記ベース樹脂の全部又は一部とを前記有機過酸化物の存在下で前記有機過酸化物の分解温度以上の温度において溶融混合して前記グラフト化反応部位と前記ベース樹脂とをグラフト化反応させることにより得られる、シラン架橋性樹脂を含む難燃性シランマスターバッチ。
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