JP5702902B2 - cis−アコニット酸脱炭酸酵素およびそれをコードする遺伝子 - Google Patents

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Description

本発明は、cis−アコニット酸脱炭酸酵素(CAD:cis-Aconitic acid decarboxylase)およびcis−アコニット酸からイタコン酸への脱炭酸反応を触媒するcis−アコニット酸脱炭酸酵素をコードする遺伝子に関する。また、該遺伝子を含有する組換えベクターおよび該ベクターにより形質転換された微生物に関する。さらに、該微生物もしくはその調製物を用いたイタコン酸の製造方法に関する。
イタコン酸は、エチレン重合性不飽和二重結合やカルボキシル基を有するニ塩基酸化合物であり、これらの官能性を利用して、合成樹脂、接着剤、洗剤、ラテックス、塗料、印刷インキやアクリル繊維改質剤など広く化学工業用途の原料として使用されており、非常に有用な化合物である。
イタコン酸の製造は、従来より、グルコース、スクロース及びフラクトースのようなモノ−及びジ−サッカライド並びにデンプン等の炭水化物を原料として発酵法により実施されている。発酵生産に使用される微生物としては、アスペルギルス(Aspergillus)属微生物(特許文献1)やリゾプス(Rhizopus)属微生物(特許文献2)などのカビ類、そして、カンジダ(Candida)属微生物(特許文献3)などの酵母類が知られている。特許文献4には、イタコン酸生産菌であるアスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)の突然変異処理により高温耐性株を取得する技術が開示されている。
しかしながら、上記の各種特許文献においては、培養技術が開示されているのみで、イタコン酸生産菌体内で働くイタコン酸生成代謝経路に関しては全く言及されていない。
また、非特許文献1では、アスペルギルス・テレウス菌体内でのグルコースからイタコン酸生成に至る幾つかの可能性ある代謝経路の中でも、イタコン酸はTCA回路で生成されるcis−アコニットがcis−アコニット酸脱炭酸酵素(以下、CADともいう)の作用によりイタコン酸が生成すると特定されているものの、CADそのものに関しては、遺伝子工学的知見の提供は勿論のこと何ら解析は行われていない。
さらに、非特許文献2では、アスペルギルス・テレウス株よりCADを分離・精製し、CAD溶液中でのcis−アコニット酸からイタコン酸への脱炭酸反応(セルフリー反応)に関するCAD触媒活性が調べられており、CADの分離・精製技術やその触媒機能に関する知見が開示されているが、微生物菌体内で発現されているCADの遺伝子工学的知見は何ら提供されていない。
遺伝子情報に基づく遺伝子工学的手法により、CADの高発現が可能になれば、イタコン酸の高効率な生産技術を提供することが可能となる。即ち、従来のイタコン酸生産菌に限定されない広範囲に亘る宿主の組換え技術により、CADの高生産技術の獲得や宿主の適性に応じた多様な条件や方法によるイタコン酸生産技術の確立ができる。
米国特許5,673,485号公報 特開昭61−209596号公報 特開昭55−34017号公報 特開平6−38774号公報 P.BONNARME,他5名、ジャーナル・オブ・バクテリオロジー(Journal Of Bacteriology)、6月号、1995年、p.3573−3578 LIES DWIARTI,他4名、ジャーナル・オブ・バイオサイエンス アンドバイオエンジニアリング(Journal of Bioscience and Bioengineering)、94巻、1号、29−33、2002年。
本発明は、cis−アコニット酸からイタコン酸への脱炭酸反応を触媒するcis−アコニット酸脱炭酸酵素(CAD)およびそれをコードする遺伝子を提供する。また、本発明は、該遺伝子を含有する組換えベクターを提供する。さらに、該ベクターにより宿主が形質転換されてなる微生物(形質転換体)を提供する。さらに、該微生物またはその調製物を用いたイタコン酸の製造方法を提供する。
本発明者らは、cis−アコニット酸からイタコン酸への脱炭酸反応を触媒するcis−アコニット酸脱炭酸酵素をコードする遺伝子を取得するために、例えば、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)株が産生する全可溶性酵素蛋白よりCAD活性を有するものを選別し、そのアミノ酸配列より求めた遺伝子配列をクローニングし発現させた結果、目的とする遺伝子配列であることを見出し、この知見に基づいてさらに研究を進め、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1] 以下の(a)、(b)、(c)または(d)に示す遺伝子:
(a)配列番号1に示す塩基配列のDNAからなる遺伝子:
(b)配列番号1に示す塩基配列のDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、cis−アコニット酸脱炭酸酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子:
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子:
(d)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、cis−アコニット酸脱炭酸酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子、
[2] 以下の(a)または(b)に示すタンパク質:
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質:
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、cis−アコニット酸脱炭酸酵素活性を有するタンパク質、
[3] 前記[1]に記載の遺伝子を含有する組換えベクター、
[4] 前記[3]に記載の組換えベクターにより宿主が形質転換されてなる微生物、
[5] 宿主が、大腸菌、コリネバクテリウム属菌及び酵母の内から選ばれることを特徴とする前記[4]記載の微生物、
[6] 微生物が、エシェリヒア・コリ JM109/cad001株(受託番号FERM P−21146)である前記[5]記載の微生物、
[7] 微生物が、コリネバクテリウム・グルタミカム R/cad002株(受託番号FERM P−21147)である前記[5]記載の微生物、および
[8] 前記[4]〜[7]のいずれかに記載の微生物またはその調製物を、cis−アコニット酸を含有する液と接触させることにより、該液中にイタコン酸を生成蓄積させ、これを採取することを特徴とするイタコン酸の製造方法、
に関する。
本発明により、cis−アコニット酸脱炭酸酵素およびcis−アコニット酸からイタコン酸への脱炭酸反応を触媒するcis−アコニット酸脱炭酸酵素をコードする遺伝子を提供することができる。また、該遺伝子を含有する組換えベクターは、本発明の形質転換された微生物の生産に利用することができる。さらに、本発明の微生物は、cis−アコニット酸脱炭酸酵素を産生することができ、cis−アコニット酸脱炭酸酵素の生産に利用でき、また、該ベクターにより形質転換された微生物またはその調製物を用いて、イタコン酸を高効率で製造することができる。
cis−アコニット酸脱炭酸酵素(CAD)は、cis−アコニット酸からイタコン酸への脱炭酸反応を触媒する蛋白酵素である。従って、このCADを微生物菌体内で著量蓄積できれば、CAD産生微生物またはその調製物により、イタコン酸を高効率・高生産性で製造することができる。
本発明のCADとしては、例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む蛋白質が好ましく挙げられる。また、本発明のCADには、前記配列番号2において1若しくは複数個(約2〜20個、好ましくは約2〜10個程度)のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、CAD活性を有する蛋白質なども含まれる。
本発明で用いられるCADをコードする遺伝子としては、アスペルギルス属、カンジダ属、リゾプス属、ウスティラゴ(Ustilago)属、シュードザイマ(Pseudozyma)属、ヘリコバシディウム(Helicobacidium)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属などの微生物由来の遺伝子、さらに好ましくは、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)由来の遺伝子、とりわけ好ましくは、アスペルギルス・テレウス NBRC6123株(独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部の保存株)由来の遺伝子が挙げられる。
アスペルギルス・テレウス NBRC6123株由来のCADをコードするDNAを含む遺伝子としては、例えば本発明で初めて特定された配列番号1で示される塩基配列のDNAを含む遺伝子を挙げることができる。
また、前記配列番号1で示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、CAD活性を有する蛋白質をコードするDNAを含む遺伝子も、本発明に用いられる遺伝子である。また、本発明のDNAは、化学合成によっても調製することもできる。加えて、これら本発明のDNAから、CAD活性を有する人工変異タンパク質をコードするDNAも本発明は包含するものである。すなわち、対応する塩基配列やアミノ酸配列に関する本発明の人工変異DNAを得るには、公知の突然変異導入方法を用いればよく、例えば市販の突然変異誘発キットを用いて変異を容易に導入することができる。
「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列」とは、例えば、配列番号1に示す塩基配列をプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法またはプラーク・ハイブリダイゼーション法などにより得られるDNAを意味する。
なお、「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、例えば、相同性が高いDNA同士、少なくとも、配列番号1で示される塩基配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、より好ましくは約80%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは、約0.1〜2倍程度の濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウムからなるものをいう)、温度約65℃程度でのハイブリダイズ条件をいう。なお、相同性は塩基配列解析ソフト、例えば、EMBOSS(The European Molecular Biology Open Software Suite)などにより計算することができる。
ただし、本発明における遺伝子は、上記の遺伝子に限定されず、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含むCADをコードする全ての遺伝子を含む。
また、本発明において「遺伝子」または「DNA」という用語はDNAのみならずそのmRNAおよびcDNAを含むものとする。従って、本発明の遺伝子には、これらのDNA、mRNAおよびcDNAの全てが含まれる。
本発明における微生物の「調製物」とは、形質転換体にcis−アコニット酸脱炭酸酵素(CAD)を生成蓄積し抽出された酵素、好ましくは精製されて樹脂担体等に固定化された固定化酵素を意味する。さらには、CADをコードする遺伝子または該遺伝子を含むベクターにより形質転換された微生物菌体をアクリルアミドやカラギーナン等の担体上に固定化された固定化菌体も含まれる。
本発明のCADをコードする遺伝子または該遺伝子を含むベクターにより形質転換された微生物は、紫外線、エックス線または薬品等を用いる人工的な変異導入方法により変異しうるが、このようにして得られる変異株であっても、本発明の目的であるcis−アコニット酸からイタコン酸への脱炭酸反応を触媒する蛋白酵素を産生する能力を有するかぎり、本発明の形質転換された微生物である。
アスペルギルス・テレウス NBRC6123株からCADの単離およびそのアミノ酸配列を決定する。別菌株ではあるが、全ゲノムドラフトシーケンスが完了しているアスペルギルス・テレウス NIH2624株が持つ約1万個の遺伝子群より本発明の目的とする遺伝子と相同性の高い配列を選定する(推定遺伝子)。次にこれら推定遺伝子のうち、イタコン酸を生産しているアスペルギルス・テレウス NBRC6123株のなかで発現している遺伝子を探索する。最終的に選定された推定遺伝子配列は、その遺伝子機能を有するクローニングベクターを例えば大腸菌などに導入して、組換えタンパク質を発現させる。さらに、こうして発現誘導される酵素タンパク質がCAD活性を有することを確認することにより、上記のごとく選定された推定遺伝子が、本発明のCADをコードする遺伝子であると決定することができる。これら一連の実施態様を詳細に以下に記載する。
i)アスペルギルス・テレウス NBRC6123株の培養とCADの単離
アスペルギルス・テレウス NBRC6123株を、例えば、表1に示す固体培地を用いて約30℃で好気的に培養後、例えば、表2に示す液体培地に植菌し、約1週間程度の培養を行い、菌体を回収する。
なお、上記培地組成は、上記の他、アスペルギルス・テレウスにイタコン酸を生産させることができる培地組成であれば、何れも好ましく用いることができる。
菌体をろ過や遠心分離などで回収後、凍結乾燥する。この乾燥菌体を例えば、乳鉢等で磨砕後、pHが5〜7、好ましくは約6.5の緩衝液に分散させ、遠心分離などにより不溶性物質を除くことで粗酵素液を得ることができる。
粗酵素液からCADタンパク質を精製する方法は、非特許文献2に示されるような一般的なタンパク質精製に用いられる公知の技術、沈殿分画、イオン交換、疎水相互作用などのカラムクロマトグラフィー法を組み合わせることにより行うことができる。CADタンパク質の同定は、精製酵素によるcis−アコニット酸からイタコン酸への変換反応で検定を行うことにより確定できる。
ii)単離されたCADのアミノ酸配列分析
精製されたCADの内部アミノ酸配列分析は、適当なタンパク質分解酵素、例えばリシルエンドペプチダーゼやトリプシンなどを用いて精製CADタンパク質を分解し、生じたペプチド断片を高速液体クロマトグラフィーや電気泳動などにより分離回収し、そのアミノ酸末端をアミノ酸配列分析装置、例えばProcise 494HT Protein Sequencing System(アプライドバイオシステムス社製)などにより決定することで行うことができる。
iii)アミノ酸配列分析に基づくCADをコードする推定遺伝子のクローニング
決定されたアミノ酸配列に対し、ブラスト(BLAST:Basic Local Alignment Search Tool)などのプログラムを用いて相同性検索を実施する。そのような解析結果を通して、高い相同性を示す遺伝子が存在すれば、そのDNA配列をPCR(Polymerase chain reaction)法により増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマーを作製する。このようなプライマーとしては、例えば配列番号6、7の塩基配列で示されるものなどが挙げられる。PCR法は、公知のPCR装置、例えばサーマルサイクラーなどを利用することができる。PCRのサイクルは、公知の技術にしたがって行われてよく、例えば、変性、アニーリング、伸張を1サイクルとし、通常約10〜100サイクル、好ましくは約20〜50サイクルである。PCR反応の鋳型としては、イタコン酸を産生しているアスペルギルス・テレウスより単離したRNAもしくはRNAから逆転写反応により合成した一本鎖cDNA(first strand cDNA)を用いて、RT(reverse transcription)−PCRもしくはPCR法によりCADのcDNAを合成することができる。PCR法により得られた遺伝子は、適当なクローニングベクターへ導入することができる。クローニング法としては、pGEM-T easy vector system(Promega社製)、TOPO TA-cloning system(Invitrogen社製)、Mighty Cloning Kit(Takara社製)などの商業的に入手可能なPCRクローニングシステムなどを好ましく挙げることができる。
次いでPCRで得られた遺伝子を含むクローニングベクターを、微生物、例えばエシェリヒア・コリ(Escherichia coli) JM109菌株などに導入し、該菌株を形質転換する。この形質転換された菌株を適当な抗生物質(例えばアンピシリン、クロラムフェニコールなど)を含む培地で培養し、培養物から菌体を回収する。回収された菌体からプラスミドDNAを抽出する。プラスミドDNAの抽出は、公知の技術によって行うことができ、また市販のプラスミドDNA抽出キットを用いて簡便に抽出することもできる。市販のプラスミド抽出キットとしては、キアクイック プラスミド精製キット(商品名:Qiaquick plasmid purification kit、キアゲン社製)などが挙げられる。この抽出されたプラスミドDNAの塩基配列を決定することにより、本発明のCADをコードする遺伝子配列を決定することができる。
DNAの塩基配列の決定は、公知の方法、例えばジデオキシヌクレオチド酵素法などにより決定することができる。また、キャピラリー電気泳動システムを用いて、検出には多蛍光技術を使用して塩基配列を決定することもできる。また、DNAシークエンサー、例えばABI PRISM 3730xl DNA Analyzer(アプライドバイオシステムス社製)などを使用して決定することもできる。
上記のようにして、CADをコードする遺伝子配列を決定し、例えば配列番号1に示す塩基配列を決定しうる。次いで該塩基配列をアミノ酸配列に翻訳し、配列番号2に示すCADの全アミノ酸配列を決定することができる。
iv)宿主によるCAD遺伝子の発現
次に、組換えCAD発現ベクターの作製は、全アミノ酸配列が決定された該酵素をコードする遺伝子を、適当な発現ベクターに挿入することにより行うことができる。発現ベクターとしては、例えばpET、pMal、pCold、pGEX、pCRB1とその誘導体や、一般的な細菌用プラスミド、pUC18,19、pBR322などが挙げられ、更には酵母プラスミド(YEp型、YCp型など)、ファージDNA、哺乳類細胞用のベクターとしてバキュウロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルスなどのウイルスDNA、SV40とその誘導体などが挙げられ、宿主において複製可能である限りほかのいかなるベクターも用いることができる。
ベクターは例えば複製開始点、選択マーカー、プロモーターを含み、必要に応じてエンハンサー、転写終結配列(ターミネーター)、リボソーム結合部位、His−tagまたはGST−tagのような精製・検出用タグ配列、ポリアデニル化シグナルなどを含んでいてもよい。ベクターは、種々の制限酵素部位をその内部にもつポリリンカーを含んでいる、または単一の制限酵素部位を含んでいることが望ましい。制限酵素部位としては、例えばPstIサイト、NdeIサイト、SalIサイト、EcoRIサイトまたはHindIIIサイトなどが挙げられる。これら制限酵素サイトは、各々制限酵素PstI、NdeI、SalI、EcoRIまたはHindIIIなどで切断され得る。
ベクターヘの遺伝子導入は、公知の手段で行なうことができる。具体的には、ベクター中の特定の制限酵素部位を特定の制限酵素によって切断し、その切断部位に本発明の遺伝子を挿入するのが好ましい。このようにして、本発明の遺伝子を含む組換えベクターを調製できる。
例えば、配列番号1に示した酵素遺伝子の5’末端配列の上流に、例えば制限酵素NdeIの認識配列を追加したプライマーと、3’末端配列の下流に例えば制限酵素EcoRIの認識配列を追加したプライマーを設計し、これを用いてPCR法によりCADをコードするDNAを増幅する。この増幅した断片を制限酵素NdeIと制限酵素EcoRIで処理し、同じく両制限酵素で処理した発現用ベクター、例えばpColdI(Takara社製)と連結させることにより本発明の遺伝子を含む組換えベクター、すなわちCAD発現ベクターを得ることができる。
次いで、この発現ベクターを、宿主に挿入し、宿主(菌株)を形質転換する。本発明において形質転換の対象となる宿主は、cis−アコニット酸脱炭酸酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を含む組換えベクターにより形質転換され、結果としてcis−アコニット酸脱炭酸酵素活性を発現することができる生物であれば特に制限されない。当業者であれば、適切な宿主とベクターの組み合わせを選択することができる。宿主としては、例えば細菌、例えば大腸菌(例えば、エシェリヒア・コリ JM109菌株等)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属菌、バチルス(Bacillus)属(例えば、枯草菌等)、ストレプトミセス(Streptomyces)など;真菌細胞、例えばアスペルギルス属菌など;酵母細胞、例えばパン酵母、メタノール資化性酵母など;昆虫細胞、例えばドロソフィラS2(Drosophila Schneider-2)、スポドプテラSf9(Spodoptera Sf9)など;ヒト培養細胞を含む哺乳類細胞、例えばCHO、COS、BHK、3T3、C127など;あるいはこれらのコンピテントセルなどが挙げられ、好ましくは大腸菌のコンピテントセルである。
形質転換は、例えば塩化カルシウム/塩化ルビジウム法、リン酸カルシウム法、DEAE−デキストラン介在トランスフェクション、電気穿孔法などの公知の方法で行うことができる。具体的には、例えば本発明の遺伝子を含む組換えベクターとエシェリヒア・コリ JM109(以下、大腸菌JM109ともいう)のコンピテントセルを接触させることにより、形質転換された微生物を得ることができる。
上記方法は、遺伝子工学実験の常法に基づいて行うことができる。大腸菌や放線菌等の種々の微生物のベクターの情報や外来遺伝子の導入・発現法は、多くの実験書に記載されているので(例えば、Sambrook、J.、Russel、D.W.、Molecular Cloning A Laboratory Manual、3rd Edition、CSHL Press、2001;HopwoodにD.A.、Bibb、M.J.、Chater、K.F.、Bruton、C.J.、Kieser、H.M.、Lydiate、D.J.、Smith、C.P.、Ward、J.M.、Schrempf、 H.Genetic manipulation of Streptomyces:A laboratory manual、The John lnnes institute、Norwich、UK、1985等)、それらに従ってベクターの選択、遺伝子の導入、発現を行うことができる。
上記CADをコードする遺伝子を含む組換えベクターにより形質転換された微生物(以下、単に形質転換された微生物または形質転換微生物という)は下記する微生物培養培地等で、培養温度約15〜37℃、培養時間約1〜7日間、培地のpH約5.0〜8.0程度で培養されることが好ましい。
また、形質転換された微生物は、紫外線、エックス線または薬品等を用いる人工的な変異導入方法により変異しうるが、このように得られるどのような変異株であっても本発明の目的とするCAD生産能を有するかぎり、本発明の形質転換された微生物として使用することができる。
微生物培養培地は、通常の微生物の培養に使用される培地であれば好ましく用いることができ、例えば炭素源、窒素源、無機塩類およびその他の栄養物質等を含有する天然培地または合成培地等が用いられる。
炭素源としては、例えばグルコース、フルクトース、スクロース、マンノース、マルトース、マンニトール、キシロース、ガラクトース、澱粉、糖蜜、ソルビトールまたはグリセリン等の糖質および糖アルコール、酢酸、クエン酵、乳酸、フマル酸、マレイン酸またはグルコン酸等の有機酸、エタノールまたはプロパノール等のアルコール等が挙げられる。また、所望によりノルマルパラフィン等の炭化水素等も用いることができる。炭素源は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。これら炭素源の培地における濃度は通常約0.1〜10%(wt)程度である。
窒素源としては、窒素化合物、例えば塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等の無機もしくは有機アンモニヴム化合物、尿素、アンモニア水、硝酸ナトリウムまたは硝酸カリウム等が挙げられるが、これらに限定されない。また、コーンスティープリカー、肉エキス、ベプトン、NZ−アミン、蛋白質加水分解物またはアミノ酸等の含窒素有機化合物等も使用可能である。窒素源は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。窒素源の培地濃度は、使用する窒素化合物によっても異なるが、通常約0.1〜10%(wt)程度である。
無機塩類としては、例えばリン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硝酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸コバルトまたは炭酸カルシウム等が挙げられる。これら無機塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。無機塩類の培地濃度は、使用する無機塩によっても異なるが、通常約0.01〜1.0%(wt)程度である。
栄養物質としては、例えば肉エキス、ペプトン、ポリペプトン、酵母エキス、乾燥酵母、コーンスティープリカー、脱脂粉乳、脱脂大豆塩酸加水分解物または動植物若しくは微生物菌体のエキスやそれらの分解物等が挙げられる。栄養物質の培地濃度は、使用する栄養物質によっても異なるが、通常約0.1〜10%(wt)程度である。さらに、必要に応じて、ビタミン類を添加することもできる。ビタミン類としては、例えば、ビオチン、チアミン(ビタミンB1)、ピリドキシン(ビタミンB6)、パントテン酸、イノシトール、ニコチン酸等が挙げられる。
培地のpHは約5.0〜8.0程度が好ましい。
好ましい微生物培養培地としては、LB(Luria−Bertani)培地、NZYM培地、TB(Terrific Broth)培地、SOB培地、2×YT培地、AHC培地、χ1776培地、M9培地、YPD培地、SD培地、YPAD培地またはSuper broth培地等が挙げられる。
v)発現CADによるイタコン酸生成反応
本発明のイタコン酸合成反応は、本発明の形質転換微生物の調製物である分離・精製したCADとcis−アコニット酸との接触、または、本発明の形質転換微生物細胞内における代謝産物としてのcis−アコニット酸と発現CADとの接触によって一段階合成反応として実施することができる。
形質転換微生物からCADを含む酵素液を調製するには、集めた形質転換微生物を例えば水媒体中で超音波やガラスビーズ、市販の大腸菌溶解液等で破砕した後のCADを含む遠心分離上清を回収すればよい。また、該上清から公知の技術によりCADを精製することもできる。
CADによりcis−アコニット酸からイタコン酸を生成させる反応は、pH約5〜7において、温度4〜50℃、特に約10〜40℃で反応させるのが好ましい。反応時間は、通常1〜48時間が好ましい。
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
アスペルギルス・テレウス NBRC6123株よりcis−アコニット酸脱炭酸酵素(CAD)の単離
アスペルギルス・テレウス NBRC6123株を表1に示す固体培地により30℃で培養した。これを表2に示す液体培地に植菌し、30℃で7日間静置培養した。培養菌体は、濾布(商品名:ミラクロス、カルビオケム社製)を用いて培養液から分離し、純水により入念に洗浄した。こうして得た菌体は、十分に水分を切り、−80℃で凍結後、凍結乾燥した。この乾燥菌体約2gに石英砂約2gを加え、乳鉢により粉砕した。これに25mlの緩衝液(0.2Mリン酸緩衝液pH6.5、1mM DTT、1mM EDTA、1μM pepstatin)を加えホモジナイズし、遠心分離(5000g,30分)することで全可溶性酵素液を得た。この酵素液から30〜60%硫酸アンモニウム沈殿画分を回収した。得られた沈殿は、5mlの緩衝液1(50mMリン酸緩衝液pH6.5、以下、緩衝液1という)に懸濁し、これをあらかじめ緩衝液1により平衡化してあった脱塩カラム(商品名:10DGカラム、バイオラッド社製)により脱塩した。これを緩衝液1により平衡化してあった陰イオン交換カラム(商品名:DEAE−HiPrep 16/10カラム、GEヘルスケアバイオサイエンス社製)に添加した。その後、20mlの緩衝液1で洗浄し、塩化ナトリウム濃度0から0.5Mのグラジエント溶出(200ml)を行い、CAD活性を含む塩化ナトリウム濃度0.18〜0.35Mの画分を回収した。なお、CAD活性の測定は、cis−アコニット酸を基質とし、生成したイタコン酸をHartfordの方法(Analytical chemistry、426-428、34巻、1962年)を用い定量することにより行った。この画分に硫酸アンモニウムを終濃度2Mとなるように添加し、あらかじめ緩衝液2(50mMリン酸緩衝液pH6.5、2M硫酸アンモニウム、以下、緩衝液2という)により平衡化した疎水性相互作用カラム(Resource ISOカラム、GEヘルスケアバイオサイエンス社製)に添加した。その後、5mlの緩衝液2で洗浄後、硫酸アンモニウム濃度2〜0Mのグラジエント溶出(45ml)を行い、CAD活性を含む画分を回収した。回収画分を上に示した手法により脱塩後、あらかじめ緩衝液1により平衡化してあったクロマトグラフィーカラム(商品名:Bio−Scale CHT2−I カラム、バイオラッド社製)に添加した。その後、5mlの緩衝液3(5mMリン酸緩衝液pH6.5、以下、緩衝液3という)で洗浄後、リン酸濃度0〜250mMのグラジエント溶出(50ml)を行い、CAD活性を含む51〜53.5mMの画分を回収した。こうして得た酵素溶液を、ドデシル硫酸ナトリウム―ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により分析したところ、分子量約50kDaに唯一のバンドを示した。精製酵素はSDS−PAGE後、PVDF膜(バイオラッド社製)に転写し、アミノ酸配列分析に供した。
アミノ酸配列分析は、タンパク質分解酵素(リジルエンドペプチダーゼ)により分解し、それにより得られたペプチド断片についてアミノ末端配列決定を、プロテインシーケンサ(商品名:Procise 494HT Protein Sequencing System、アプライドバイオシステムス社製)を用いて行った。その結果、配列番号3〜5のアミノ酸配列が決定された。
[実施例2]
cis−アコニット酸脱炭酸酵素遺伝子の単離
同定したアミノ酸配列を用いて、前記のアスペルギルス・テレウス NIH2624株のゲノム配列に対し相同性検索を行った。その結果、アスペルギルス・テレウス NIH2624株のロバスタチン生合成遺伝子の1つであるlovFの近傍に存在する機能未知な推定遺伝子に対し、実施例1で同定した3つのアミノ酸断片(配列番号3〜5)すべてにおいて相同性が非常に高いことを見出した。そこでこの推定遺伝子の塩基配列を元にプライマー1,2(配列番号6、7)を作製し、cis−アコニット酸脱炭酸酵素遺伝子cDNAをPCR(polymerase chain reaction)により増幅を試みた。はじめに、前述のようにアスペルギルス・テレウスを液体培地で培養し、6日後に菌体を回収した。全RNAの単離は、AGPC(acid guanidinium phenol-chloroform)法(Chonczynski P.,Sacchi N.,Analytical Biochemistry,162,156−159,1987)により、菌体約0.1g(湿潤重量)を用いて行った。単離した全RNAは、RNA精製キット(商品名:oligotex-dT30 <Super> mRNA Purification Kit、Takara社製)を用い、polyA RNAを分別することにより回収した。60ngのPolyA RNAは、SuperscriptII(Invitrogen社製)により、プライマー3(配列番号8)を用いて取扱説明書に従い逆転写し、一本鎖cDNA(first strand cDNA)を得た。合成した1μlの一本鎖cDNA溶液に、0.2μMのプライマー1および2(配列番号6、7)、0.2mMのdNTP(deoxyribonucleoside triphosphate)、2UのPCR用酵素(Ex−Taq、Takara社製)、3μlのバッファ(10×Ex−Taq buffer、Takara社製)を加え、最終液量を30μlとした。PCRは、サーマルサイクラー(商品名:GeneAmp PCR System 9700、アプライドバイオシステムス社製)を用いて、反応1(94℃で30秒、58℃で30秒、72℃で1.5分、を30サイクル;反応液、dNTP 0.2mM、Ex−Taq 2U、10×Ex−Taq buffer 3μl、プライマー各0.2μM、最終液量30μl、以下、反応1という)の条件で行った。この結果得られた反応液を、アガロース電気泳動にかけた後、DNAのゲル抽出キット(商品名:Minelute Gel Extraction Kit、キアゲン社製)を用い、約1.5kbpのDNA断片をゲルから回収した。該DNA断片をpGEM−Tベクター(Promega社製)に取扱説明書に従い連結し、このベクターを用いて大腸菌JM109株を形質転換し、目的のDNA断片を含むコロニーを、シークエンスすることでDNA配列を決定した。なお、DNAシークエンサーはABI PRISM3100(アプライドバイオシステムス社製)、シークエンス反応はABI PRISM Cycle sequencing Kit(アプライドバイオシステムス社製)を用いた。
完全長cDNA配列の決定は、5’−および3’−RACE(rapid amplification of cDNA ends)−PCR法により決定した。なお、5’−RACE−PCRには、5’−Full RACE Core Set(Takara社製)を用い、取扱説明書にしたがって行った。まず、先に決定した部分CAD cDNAの塩基配列をもとに、プライマー4(配列番号9)を作製し、一本鎖cDNAを合成した。こうして得た一本鎖cDNAをコンカテマー化後、これを100倍希釈したもの1μlを鋳型とし、プライマー5、6(配列番号10、11)を用いてPCRを行った。PCR反応条件は、94℃で30秒、60℃で30秒、72℃で30秒、を30サイクルとした。100倍に希釈した該反応液1μlを鋳型とし、プライマー7,8(配列番号12、13)を用いてPCRを行った。PCR反応条件は、94℃で30秒、60℃で30秒、72℃で30秒、を22サイクルとした。3’−RACE−PCRには、5’−RACE−PCRの際に使用した一本鎖cDNA1μlを鋳型とし、プライマー1、9(配列番号6、14)を用い、反応1の条件で行った。上に示したPCRの結果得られた該反応液を、アガロース電気泳動にかけた後、DNAのゲル抽出キット(商品名:Minelute Gel Extraction Kit、キアゲン社製)を用いて、約0.6kbp(5’−RACE−PCR)および1.5kbp(3’−RACE−PCR)のDNA断片をゲルから回収した。該DNA断片をpGEM−Tベクター(Promega社製)に取扱説明書に従い連結し、このベクターを用いて大腸菌JM109株を形質転換し、目的のDNA断片を含むコロニーを、シークエンスすることでDNA配列を決定した。こうして得た配列は、上記得られたCAD遺伝子断片の塩基配列と約300bp以上にわたり同一の配列をもち、これらの配列を連結することにより完全長CAD遺伝子cDNA配列(配列番号1)を決定することができた。また、連結後の配列から推定されるCADアミノ酸配列(配列番号2)には、精製酵素より決定されたN末端アミノ酸配列が存在していた(配列番号3〜5、配列番号2中のアミノ酸61〜68、218〜229、392〜399)。
[実施例3]
cis−アコニット酸脱炭酸酵素遺伝子の大腸菌による発現
CAD cDNAの5’−および3’−末端にそれぞれNdeIおよびHindIII認識配列を付加させたDNA断片を、プライマー10、11(配列番号15、16)を用い、反応1の条件で増幅した。増幅産物は、上述の方法によりpGEM−Tベクターへ連結した。このように作製されたプラスミドからNdeI,HindIIIにより切り出したCAD cDNAを含むDNA断片を調製し、これを発現ベクターpColdI(Takara社製)のNdeI−HindIIIサイトに挿入したプラスミドpCADを作製した。作製したプラスミドを図1に示す。このプラスミドを大腸菌JM109株へ導入し、形質転換株エシェリヒア・コリ JM109/cad001株を得た。エシェリヒア・コリ JM109/cad001株は、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託した(受託日:2006年12月27日、受託番号:FERM P−21146)。形質転換株エシェリヒア・コリ JM109/cad001株は、100mlのLB液体培地で濁度0.5になるまで37℃で増殖させた後、培養温度を15℃とし、1時間後、IPTG(Isopropyl-β-D-thiogalactopyranoside)を0.1mMとなるように添加することでCADタンパク質の発現を誘導した。24時間後菌体を回収した(乾燥菌体重量:39mg)。この菌体を1.8mlの50mMリン酸緩衝液pH7.0に懸濁させ、200μlの菌体溶解バッファ(商品名:FastBreak Cell Lysis Reagent、Promega社製)を添加し、転倒混和した。15分後、遠心分離(10,000g,5分)により不溶性物質を分離し、細胞抽出液を得た。こうして調製した細胞抽出液は、35700unitのCADを含んでいた(1Unitは、1分間に1μmolのアコニット酸をイタコン酸へ変換する酵素量)。組換えCAD酵素の分離精製は、組換えタンパク質精製キット(商品名:Ni-NTA Fast Start Kit、キアゲン社製)を用いて行った。調製した細胞抽出液に終濃度0.3M塩化ナトリウム、および5mMイミダゾールを添加した。この溶液をNi−NTAカラムに添加し、8mlの洗浄液(50mMリン酸緩衝液pH7、0.3M塩化ナトリウム、60mMイミダゾール)により洗浄し、その後、2mlの溶離液(50mMリン酸緩衝液pH7、0.3M塩化ナトリウム、200mMイミダゾール)により組換えCADを溶出した。精製CADのドデシル硫酸ナトリウム―ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分析結果を、図2に示した。エシェリヒア・コリ JM109/cad001株により発現させたCADは、アスペルギルス・テレウス NBRC6123株からCADを分離精製した(実施例1)場合より、はるかに容易な方法で同程度の純度のCADを得られることがわかった。なお、図2において、実施例3で分離精製されたCAD(レーン3)はHis−tag配列などの付加によりアスペルギルス・テレウス NBRC6123株から分離精製したCAD(レーン2)よりも、分子量が約1.3kDa大きくなっている。
[実施例4]
組換えCADの活性に及ぼすpHの影響
組換えCAD酵素は、実施例3と同様にして、細胞抽出液を調製し、精製した。組換えCADの活性に与えるpHの影響は、pH5〜6の酢酸種緩衝液、およびpH6〜8のリン酸緩衝液を用いて検討した。反応液の組成は、130μlの0.2M酢酸またはリン酸緩衝液、50μl(6μg)の精製CAD、20μlの10mMのcis−アコニット酸であった。反応条件は、30℃、1時間反応させた。反応液を前述のHartfordの方法により分析し、イタコン酸を定量した。その結果を図3に示す。この結果から、pH6.0付近が、最も高いCAD活性を呈する反応条件であることが明らかとなった。
[実施例5]
cis−アコニット酸脱炭酸酵素遺伝子のコリネバクテリウム属菌による発現
工業的に広く利用されているグラム陽性細菌コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)を宿主とする組換えCADの発現システムを作製した。CAD cDNAの5’−および3’−末端にそれぞれEcoRIおよびBamHI認識配列を付加させたDNA断片を、プライマー12、13(配列番号17、18)を用いて、反応1の条件で増幅した。増幅産物は、上述の方法によりpGEM−Tベクターへ連結し、DNA配列を確認した。このように作製されたプラスミドからEcoRI、BamHIにより切り出したCAD cDNAを含むDNA断片を調製し、これをコリネバクテリウム発現ベクターpCRB1のEcoRI−BamHIサイトに挿入したプラスミドpCAD2を作製した(図4)。このプラスミドをコリネバクテリウム・グルタミカム R株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターFERM P−18976)へ導入し、形質転換株コリネバクテリウム・グルタミカム R/cad002を得た。コリネバクテリウム・グルタミカム R/cad002株は、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託した(受託日:2006年12月27日、受託番号:FERM P−21147)。形質転換株は、100mlの表3に示すA液体培地で33℃、好気的に培養した。約24時間後、菌体を遠心分離(5000g,5分)により回収した(乾燥菌体重量:80mg)。回収した菌体を5mlの50mMリン酸緩衝液pH7.0に懸濁させ、約0.5gのグラスビーズを加えた後、超音波破砕機(商品名:Biorupter、コスモバイオ社製)により15分間破砕した。遠心分離(10,000g,5分)により不溶性物質を分離し、細胞抽出液を得た。このようにして得た細胞抽出液は、19300unitのCADを含んでいた。
[比較例]
実施例3および5で得られたエシェリヒア・コリ JM109/cad001株、およびコリネバクテリウム・グルタミカム R/cad002株を宿主とする組換えCADの生産速度と、アスペルギルス・テレウス NBRC6123株による生産速度を比較した。アスペルギルス・テレウスは、実施例1に示した条件に従い培養した。すなわち、70mlのイタコン酸生産培地(前記表2記載)を含む500mlのフラスコ3本にアスペルギルス・テレウス NBRC6123株を植菌し、30℃で6日間培養した。濾布(商品名:ミラクロス)を用いて、菌体を洗浄・回収後、凍結乾燥した(乾燥菌体重量:733mg)。この菌体から実施例1に示した方法により粗酵素液(10ml)から66200unitのCADを得た。エシェリヒア・コリ JM109/cad001株およびコリネバクテリウム・グルタミカム R/cad002株による組換えCAD生産速度は、実施例3および5に示した結果より算出した。その結果、エシェリヒア・コリ JM109/cad001株での生産性は、約61倍程度、コリネバクテリウム・グルタミカム R/cad002株では、約16倍程度、アスペルギルス・テレウス NBRC6123株の場合よりも顕著に向上していることが明らかとなった。イタコン酸の生産速度の比較結果を表4に示す。
本発明により、cis−アコニット酸脱炭酸酵素(CAD)をコードする遺伝子を導入・高発現した組換え微生物またはその調製物を用いて、イタコン酸を高効率に製造し、合成樹脂、接着剤、洗剤、ラテックス、塗料、印刷インキやアクリル繊維改質剤など広く化学工業用途の原料として使用することができる。
図1は、実施例3において作製したベクターpCADを示す。 図2は、実施例1記載のアスペルギルス・テレウス NBRC6123株(レーン2)および実施例3記載のエシェリヒア・コリ JM109/cad001株(レーン3)より精製したCADのポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果を示す(レーン1は分子量マーカーを示す)。 図3は、CAD活性の至適pHを示す。 図4は、実施例5において作製したベクターpCAD2を示す。

Claims (3)

  1. 以下の(a)または(b)に示す遺伝子を含有する組換えベクターによりエシェリヒア・コリが形質転換されてなる形質転換体またはその調製物を、cis−アコニット酸を含有する液と接触させることにより、該液中にイタコン酸を生成蓄積させ、これを採取することを特徴とするイタコン酸の製造方法。
    (a)配列番号1に示す塩基配列のDNAからなる遺伝
    (b)列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝
  2. 組換えベクターが、(a)または(b)に示す遺伝子を発現ベクターpCo1dIに挿入したものである請求項1に記載の方法。
  3. 形質転換体が、エシェリヒア・コリ JM109/cad001株(受託番号FERM P−21146)である請求項記載の製造方法。
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