以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
本実施形態のシングルスクリュー圧縮機(1)(以下、単にスクリュー圧縮機と言う。)は、冷凍装置(100)の冷媒回路(101)に設けられて冷媒を圧縮する。
〈冷凍装置〉
スクリュー圧縮機(1)を備える冷凍装置(100)について、図1を参照しながら説明する。
冷凍装置(100)は、冷媒が充填された冷媒回路(101)を備えている。冷媒回路(101)は、スクリュー圧縮機(1)と、凝縮器(102)と、レシーバ(103)と、膨張弁(104)と、蒸発器(105)とを順に接続することによって形成された閉回路である。
具体的に、冷媒回路(101)では、スクリュー圧縮機(1)の吸入口(11)が蒸発器(105)の出口に接続され、スクリュー圧縮機(1)の吐出口(12)が凝縮器(102)の入口に接続されている。また、冷媒回路(101)では、凝縮器(102)の出口がレシーバ(103)を介して膨張弁(104)の一端に接続され、蒸発器(105)の入口が膨張弁(104)の他端に接続されている。レシーバ(103)は、後述するスクリュー圧縮機(1)の液インジェクションポート(13)に、インジェクション用配管(106)を介して接続されている。
冷媒回路(101)では、充填された冷媒が循環することによって、冷凍サイクルが行われる。具体的に、スクリュー圧縮機(1)の吐出口(12)から吐出された高圧ガス冷媒は、凝縮器(102)へ流入し、冷却水や室外空気等へ放熱して凝縮する。凝縮器(102)から流出した高圧液冷媒は、レシーバ(103)を通過後に膨張弁(104)へ向かって流れ、膨張弁(104)を通過する際に減圧される。膨張弁(104)を通過した低圧冷媒は、蒸発器(105)へ流入し、水や空気等の冷却対象物から吸熱して蒸発する。蒸発器(105)から流出した低圧ガス冷媒は、スクリュー圧縮機(1)の吸入口(11)へ吸入される。また、レシーバ(103)内の高圧液冷媒の一部は、インジェクション用配管(106)を通ってスクリュー圧縮機(1)の液インジェクションポート(13)へ供給される。
〈スクリュー圧縮機〉
図1に示すように、スクリュー圧縮機(1)では、圧縮機構(20)とそれを駆動する電動機(15)とが1つのケーシング(10)に収容されている。このスクリュー圧縮機(1)は、半密閉型に構成されている。
ケーシング(10)は、横長の円筒状に形成されている。ケーシング(10)の内部空間は、ケーシング(10)の一端側に位置する低圧空間(S1)と、ケーシング(10)の他端側に位置する高圧空間(S2)とに仕切られている。ケーシング(10)には、低圧空間(S1)に連通する吸入口(11)と、高圧空間(S2)に連通する吐出口(12)とが設けられている。冷媒回路(101)の蒸発器(105)から流れてきた低圧ガス冷媒は、吸入口(11)を通って低圧空間(S1)へ流入する。また、圧縮機構(20)から高圧空間(S2)へ吐出された圧縮後の高圧ガス冷媒は、吐出口(12)を通って冷媒回路(101)の凝縮器(102)へ供給される。
ケーシング(10)内では、低圧空間(S1)に電動機(15)が配置され、低圧空間(S1)と高圧空間(S2)の間に圧縮機構(20)が配置されている。電動機(15)は、ケーシング(10)の吸入口(11)と圧縮機構(20)の間に配置されている(図2を参照)。また、低圧空間(S1)では、電動機(15)よりも吸入口(11)側の空間が上流側空間(5)となり、電動機(15)よりも圧縮機構(20)側の空間が下流側空間(6)となっている。電動機(15)の固定子(16)は、ケーシング(10)に固定されている。一方、電動機(15)の回転子(17)は、圧縮機構(20)の駆動軸(21)に連結されている。電動機(15)に体して商用電源から交流を供給すると、その回転子(17)が一定の回転速度で回転する。
ケーシング(10)内では、高圧空間(S2)に油分離器(18)が配置されている。油分離器(18)は、圧縮機構(20)から吐出された冷媒から冷凍機油を分離する。高圧空間(S2)における油分離器(18)の下方には、潤滑油である冷凍機油を貯留するための油貯留室(19)が形成されている。油分離器(18)において冷媒から分離された冷凍機油は、下方へ流れ落ちて油貯留室(19)に蓄えられる。
図2〜4に示すように、圧縮機構(20)は、ケーシング(10)内に形成された円筒壁(30)と、該円筒壁(30)の中に配置された1つのスクリューロータ(40)と、該スクリューロータ(40)に噛み合う2つのゲートロータ(45)とを備えている。スクリューロータ(40)には、駆動軸(21)が挿通されている。駆動軸(21)は、スクリューロータ(40)と同軸上に配置され、スクリューロータ(40)に連結されている。
円筒壁(30)の高圧空間(S2)側の端部には、軸受ホルダ(35)が挿入されている。軸受ホルダ(35)の内側には、玉軸受(36)が設けられている。玉軸受(36)には駆動軸(21)の端部が挿通され、この玉軸受(36)が駆動軸(21)を回転自在に支持する。
図5にも示すように、スクリューロータ(40)は、概ね円柱状に形成された金属製の部材である。スクリューロータ(40)は、円筒壁(30)に回転可能に嵌合しており、その外周面が円筒壁(30)の内周面と摺接する。スクリューロータ(40)の外周部には、スクリューロータ(40)の一端から他端へ向かって螺旋状に延びる螺旋溝(41)が複数(本実施形態では、6本)形成されている。スクリューロータ(40)の各螺旋溝(41)は、図5における手前側の端部が始端となり、同図における奥側の端部が終端となっている。
各ゲートロータ(45)は、樹脂製の部材である。各ゲートロータ(45)には、長方形板状に形成された複数(本実施形態では、11枚)のゲート(46)が放射状に設けられている。
ゲートロータ(45)は、金属製のロータ支持部材(47)に取り付けられている。ゲートロータ(45)が取り付けられたロータ支持部材(47)は、円筒壁(30)に隣接したゲートロータ室(7)に収容されている(図4を参照)。各ゲートロータ(45)は、円筒壁(30)の外側に、スクリューロータ(40)の回転軸に対して軸対称となるように配置されている。そして、各ゲートロータ(45)は、ゲート(46)がスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に噛み合うように配置されている(図5を参照)。
圧縮機構(20)では、円筒壁(30)の内周面と、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)と、ゲートロータ(45)のゲート(46)とによって囲まれた空間が流体室(23)になる。そして、スクリューロータ(40)が回転すると、流体室(23)の容積が変化して流体室(23)内の冷媒が圧縮される。
スクリュー圧縮機(1)には、容量調節用のスライドバルブ(70)が設けられている。このスライドバルブ(70)は、スライドバルブ収納部(31)内に設けられている。スライドバルブ(70)は、円筒壁(30)の軸心方向にスライド可能に構成されており、スライドバルブ収納部(31)へ挿入された状態でスクリューロータ(40)の周側面と対面する。
図3及び図6に示すように、スライドバルブ(70)は、弁体部(71)とガイド部(75)と連結部(77)とを一体に形成した金属製の部材である。なお、図6では、一方のスライドバルブ(70)だけを図示している。
スライドバルブ(70)では、弁体部(71)とガイド部(75)の間に連結部(77)が形成されている。スライドバルブ(70)は、弁体部(71)が低圧空間(S1)側を向くように配置されている。弁体部(71)とガイド部(75)は、それぞれがスクリューロータ(40)の周側面に対向している。また、スライドバルブ(70)では、弁体部(71)とガイド部(75)の間に形成された隙間が、流体室(23)と高圧空間(S2)とを連通させるための吐出ポート(25)となっている。
ケーシング(10)内には、円筒壁(30)の外側に連通路(32)が形成されている。連通路(32)は、各スライドバルブ収納部(31)に対応して1つずつ形成されている。連通路(32)は、その一端が低圧空間(S1)に開口し、その他端がスライドバルブ収納部(31)の吸入側の端部に開口している。円筒壁(30)のうち連通路(32)の他端(図3における右端)に隣接する部分には、スライドバルブ(70)の先端面(P2)と向かい合うシート面(P1)が形成されている。
スライドバルブ(70)が高圧空間(S2)寄り(図3における駆動軸(21)の軸方向を左右方向とした場合の右側寄り)へスライドすると、シート面(P1)とスライドバルブ(70)の先端面(P2)の間に隙間が形成され、連通路(32)を介して一部の流体室(23)が低圧空間(S1)と連通する。スライドバルブ(70)が移動すると、シート面(P1)とスライドバルブ(70)の先端面(P2)の間隔が変化し、低圧空間(S1)から遮断されて閉じきり状態となった時点における流体室(23)の容積が変化する。
スクリュー圧縮機(1)には、スライドバルブ(70)を駆動するスライドバルブ駆動機構(80)が設けられている。このスライドバルブ駆動機構(80)は、軸受ホルダ(35)に固定されたシリンダ(81)と、シリンダ(81)内に装填されたピストン(82)と、ピストン(82)のピストンロッド(83)に連結されたアーム(84)と、アーム(84)とスライドバルブ(70)とを連結する連結ロッド(85)と、アーム(84)を図3の右方向(アーム(84)をケーシング(10)から引き離す方向)に付勢するスプリング(86)とを備えている。
図3に示すスライドバルブ駆動機構(80)では、ピストン(82)の左側空間(ピストン(82)のスクリューロータ(40)側の空間)の内圧が、ピストン(82)の右側空間(ピストン(82)のアーム(84)側の空間)の内圧よりも高くなっている。そして、スライドバルブ駆動機構(80)は、ピストン(82)の右側空間の内圧を調節することによって、スライドバルブ(70)の位置を調整するように構成されている。
スクリュー圧縮機(1)の運転中において、スライドバルブ(70)では、その軸方向の端面の一方に圧縮機構(20)の吸入圧が、他方に圧縮機構(20)の吐出圧がそれぞれ作用する。このため、スクリュー圧縮機(1)の運転中において、スライドバルブ(70)には、常にスライドバルブ(70)を低圧空間(S1)側へ押す方向の力が作用する。従って、スライドバルブ駆動機構(80)におけるピストン(82)の左側空間及び右側空間の内圧を変更すると、スライドバルブ(70)を高圧空間(S2)側へ引き戻す方向の力の大きさが変化し、その結果、スライドバルブ(70)の位置が変化する。
図2及び図6に示すように、スクリュー圧縮機(1)は、二つの液インジェクションポート(13)を備えている。なお、図6には、一方の液インジェクションポート(13)だけが図示されている。液インジェクションポート(13)は、スクリューロータ(40)の上側と下側に一つずつ配置されている。各液インジェクションポート(13)は、ケーシング(10)を貫通する配管によって構成されている。各液インジェクションポート(13)の出口端は、円筒壁(30)の内周面に開口し、流体室(23)に連通している。上述したように、各液インジェクションポート(13)には、液インジェクション用配管(106)が接続され
ている。
図2及び図6に示すように、スクリュー圧縮機(1)には、液供給通路(50)が設けられている。液供給通路(50)は、ケーシング(10)にドリル等で孔開け加工を施すことによって形成された通路である。この液供給通路(50)は、その始端が一方の液インジェクションポート(13)に接続し、その終端がケーシング(10)内の上流側空間(5)に連通している。また、液供給通路(50)の終端部には、冷媒用弁(60)が設けられている。冷媒用弁(60)については後述する。
一方のスライドバルブ(70)には、弁部材(56)が取り付けられている。この弁部材(56)は、棒状に形成され、弁体部(71)の先端面(P2)に突設されている。具体的に、弁部材(56)には、同径部(57)とテーパー部(58)とが形成されている。同径部(57)は、外径が一定の棒状に形成されている。同径部(57)は、その基端部がスライドバルブ(70)の弁体部(71)に接合されている。テーパー部(58)は、同径部(57)の先端に連続して形成された部分(即ち、弁部材(56)の先端部)である。このテーパー部(58)は、先端に向かって細径化するテーパー形状となっている。
ケーシング(10)には、弁部材(56)を挿入するための挿入穴(14)が形成されている。この挿入穴(14)は、シート面(P1)に開口する有底の穴である。また、挿入穴(14)は、断面が円形の細長い形状となっている。挿入穴(14)の内径は、その全長に亘って一定である。また、挿入穴(14)の内径は、弁部材(56)の外形よりも僅かに大きくなっている。そして、スライドバルブ(70)が移動すると、挿入穴(14)に挿入された弁部材(56)は、挿入穴(14)の軸方向へ移動する。
図3及び図6に示すように、液供給通路(50)は、挿入穴(14)と交差している。つまり、液供給通路(50)は、その一部が挿入穴(14)と重複している。液供給通路(50)では、挿入穴(14)よりも液インジェクションポート(13)寄りの部分が上流側通路部(51)となり、挿入穴(14)よりも冷媒用弁(60)寄りの部分が下流側通路部(52)となっている。
図8にも示すように、挿入穴(14)に挿入された弁部材(56)は、液供給通路(50)のうち挿入穴(14)と重複した部分を横断可能となっている。そして、スライドバルブ(70)と共に弁部材(56)が移動すると、弁部材(56)のうち液供給通路(50)を横断する部分が変化し、液供給通路(50)における液冷媒の流量が変化する。液供給通路(50)における液冷媒の流量を弁部材(56)が調節する動作については、後ほど詳しく説明する。
冷媒用弁(60)は、その上流側と下流側の圧力差が所定の基準値を超えると開くように構成されている。図7に示すように、冷媒用弁(60)は、管部材(61)と、弁体(63)と、支持部材(65)と、コイルばね(66)とを備えている。管部材(61)には、テーパー形状の貫通穴が形成された弁座部(62)が設けられている。弁体(63)は、円錐台形状の頭部(64)を備え、支持部材(65)に支持されている。また、弁体(63)は、コイルばね(66)によって弁座部(62)に押し付けられている。
冷媒用弁(60)が閉じた状態では、弁体(63)の頭部(64)が弁座部(62)に押し付けられている。そして、弁座部(62)の上流側(図7の右側)の圧力が弁座部(62)の下流側(同図の左側)の圧力よりも所定値以上高くなると、弁体(63)がコイルばね(66)を圧縮しながら移動し、その結果、弁体(63)の頭部(64)が弁座部(62)から離れて冷媒用弁(60)が開く。
−スクリュー圧縮機の運転動作−
先ず、スクリュー圧縮機(1)が冷媒を圧縮する動作について説明する。
電動機(15)に通電すると、スクリューロータ(40)が電動機(15)によって駆動されて回転する。スクリューロータ(40)が回転するとゲートロータ(45)も回転し、圧縮機構(20)が冷媒を圧縮する動作を行う。
具体的に、ケーシング(10)内の低圧空間(S1)へは、蒸発器(105)から流出した低圧ガス冷媒が、吸入口(11)を通って吸い込まれる。低圧空間(S1)の上流側空間(5)へ流入した冷媒は、電動機(15)に形成された隙間や、電動機(15)とケーシング(10)の隙間を通って下流側空間(6)へ流入する。電動機(15)は、上流側空間(5)から下流側空間(6)へ向けて流れる冷媒によって冷却される。
下流側空間(6)の冷媒は、圧縮機構(20)の流体室(23)へ吸い込まれる。スクリューロータ(40)が回転し、流体室(23)が低圧空間(S1)から遮断された閉じきり状態になると、その後は流体室(23)内の冷媒が圧縮される。流体室(23)が吐出ポート(25)に連通すると、圧縮された冷媒が吐出ポート(25)を通って流体室(23)から流出する。流体室(23)から流出した高圧ガス冷媒は、油分離器(18)を通過し、その後に吐出口(12)を通ってケーシング(10)の外部へ吐出される。吐出口(12)から吐出された高圧ガス冷媒は、凝縮器(102)へ向かって流れてゆく。
また、スクリュー圧縮機(1)の液インジェクションポート(13)には、レシーバ(103)から高圧液冷媒が供給される。この高圧液冷媒の圧力は、凝縮器(102)における冷媒の凝縮圧力(即ち、冷凍サイクルの高圧)と実質的に等しい。液インジェクションポート(13)を流れる液冷媒は、圧縮機構(20)の流体室(23)へ供給される。液インジェクションポート(13)から流体室(23)へ流入した液冷媒は、流体室(23)内で圧縮されつつある冷媒から吸熱して蒸発する。このため、流体室(23)内の冷媒の温度が低下し、流体室(23)から吐出ポート(25)へ吐出されるガス冷媒の温度が低く抑えられる。
次に、スライドバルブ(70)がスクリュー圧縮機(1)の運転容量を調節する動作について説明する。
スライドバルブ(70)が図3の左側(即ち、低圧空間(S1)側)へ最も押し込まれた状態では、スライドバルブ(70)の先端面(P2)がシート面(P1)に押し付けられ、スクリュー圧縮機(1)の運転容量が最大となる。
具体的に、この状態では、スライドバルブ(70)の先端面(P2)がシート面(P1)と密着し、流体室(23)と連通路(32)の間が弁体部(71)によって遮断される。このため、低圧空間(S1)から遮断された閉じきり状態になった時点における流体室(23)の容積が最大となり、単位時間当たりに圧縮機構(20)へ吸入される冷媒の体積が最大となる。従って、この状態では、蒸発器(105)から吸入口(11)を通ってケーシング(10)内へ流入する冷媒の体積流量が最大となる。
一方、スライドバルブ(70)が図3の右側(即ち、高圧空間(S2)側)へ退き、スライドバルブ(70)の先端面(P2)がシート面(P1)から離れると、スクリュー圧縮機(1)の運転容量は、最大容量よりも小さくなる。
具体的に、この状態では、スライドバルブ(70)の先端面(P2)とシート面(P1)の間に隙間が形成され、流体室(23)が連通路(32)と連通する。流体室(23)が連通している間は、流体室(23)へ吸い込まれた冷媒の一部が、連通路(32)へ押し出されて低圧空間(S1)へ戻ってゆく。そして、流体室(23)は、スライドバルブ(70)の先端面(P2)よりも高圧空間(S2)側に達した時点で、低圧空間(S1)から遮断された閉じきり状態となる。このため、低圧空間(S1)から遮断された閉じきり状態になった時点における流体室(23)の容積は、その最大値より小さくなり、単位時間当たりに圧縮機構(20)が吸入する冷媒の体積も、その最大値より小さくなる。従って、この状態では、蒸発器(105)から吸入口(11)を通ってケーシング(10)内へ流入する冷媒の体積流量が、その最大値よりも小さくなる。
スライドバルブ(70)の先端面(P2)とシート面(P1)の間隔が広がるにつれて、低圧空間(S1)から遮断された閉じきり状態となった時点における流体室(23)の容積が小さくなる。つまり、スライドバルブ(70)の先端面(P2)とシート面(P1)の間隔が広がるほど、単位時間当たりに圧縮機構(20)へ吸入される冷媒の体積が減少し、蒸発器(105)から吸入口(11)を通ってケーシング(10)内へ流入する冷媒の体積流量が減少してゆく。
そして、スライドバルブ(70)の位置が図3の最も右側(即ち、高圧空間(S2)側)に達すると、蒸発器(105)から吸入口(11)を通ってケーシング(10)内へ流入する冷媒の体積流量が最小となる。つまり、スクリュー圧縮機(1)の運転容量が最小容量となる。
−液冷媒による電動機の冷却−
上述したように、スクリュー圧縮機(1)の運転中には、吸入口(11)からケーシング(10)内へ流入した低圧ガス冷媒が電動機(15)を通り抜けて圧縮機構(20)へ吸入されており、この低圧ガス冷媒によって電動機(15)が冷却される。ところが、スクリュー圧縮機(1)の運転容量が小さくなると、電動機(15)を通過する冷媒の流量が減少し、電動機(15)の冷却が不充分となるおそれがある。
また、冷凍サイクルの高圧(即ち、凝縮器(102)における冷媒の凝縮圧力)と冷凍サイクルの低圧(即ち、蒸発器(105)における冷媒の蒸発圧力)との差が大きくなると、圧縮機構(20)の前後における冷媒の圧力差が大きくなり、スクリューロータ(40)を駆動するのに必要な動力が大きくなる。その結果、電動機(15)を流れる電流が大きくなり、電動機(15)の発熱量が増える。このため、スクリュー圧縮機(1)へ吸入される冷媒の圧力(吸入圧力)とスクリュー圧縮機(1)から吐出される冷媒の圧力(吐出圧力)との差が大きい運転状態においても、電動機(15)の冷却が不充分となるおそれがある。
本実施形態のスクリュー圧縮機(1)では、その運転容量が比較的小さく、しかもその吸入圧力と吐出圧力の差が比較的大きい場合に、液インジェクションポート(13)へ流入した液冷媒の一部が、液供給通路(50)を通ってケーシング(10)内の上流側空間(5)へ供給される。上流側空間(5)へ流入した液冷媒は、吸入口(11)からケーシング(10)内へ流入した冷媒と共に電動機(15)を通過し、その際に電動機(15)から吸熱して蒸発する。このため、電動機(15)の冷却が充分に行われ、電動機(15)の過昇温が回避される。
本実施形態のスクリュー圧縮機(1)において、液供給通路(50)における液冷媒の流通状態は、流通制御部(55)を構成する弁部材(56)及び冷媒用弁(60)によって制御される。ここでは、液供給通路(50)における液冷媒の流通状態の制御について説明する。
図8(A)は、スクリュー圧縮機(1)の運転容量が最大容量となっている状態での弁部材(56)の位置を示している。この状態において、弁部材(56)の同径部(57)の先端は、液供給通路(50)のうち挿入穴(14)と重複する部分よりも、挿入穴(14)の奥側に位置している。このため、液供給通路(50)の上流側通路部(51)と下流側通路部(52)の間が弁部材(56)によって遮断され、液供給通路(50)から上流側空間(5)への液冷媒の供給は行われない。
一方、図8(D)は、スクリュー圧縮機(1)の運転容量が最小容量となっている状態での弁部材(56)の位置を示している。この状態において、弁部材(56)のテーパー部(58)の先端は、液供給通路(50)のうち挿入穴(14)と重複する部分よりも、挿入穴(14)の開口部側に位置している。このため、液供給通路(50)の上流側通路部(51)と下流側通路部(52)が連通し、下流側通路部(52)に設けられた冷媒用弁(60)の上流側における液冷媒の圧力が、液インジェクションポート(13)へ流入した液冷媒の圧力と実質的に等しくなる。そして、冷媒用弁(60)の上流側における液冷媒の圧力と、冷媒用弁(60)の下流側に連通する低圧空間(S1)の圧力との差が所定の基準値を上回ると、冷媒用弁(60)が開いて液供給通路(50)から上流側空間(5)へ液冷媒が供給される。
ここで、レシーバ(103)から液インジェクションポート(13)へ供給される液冷媒の圧力は、凝縮器(102)における冷媒の凝縮圧力(即ち、冷凍サイクルの高圧)と実質的に等しい。また、凝縮器(102)における冷媒の凝縮圧力は、スクリュー圧縮機(1)の吐出口(12)から吐出される冷媒の圧力とほぼ同じである。更に、低圧空間(S1)内の冷媒の圧力は、スクリュー圧縮機(1)の吸入口(11)へ吸入される冷媒の圧力と実質的に等しい。従って、冷媒用弁(60)は、吸入口(11)を通ってケーシング(10)へ流入する冷媒と吐出口(12)を通ってケーシング(10)から流出する冷媒の圧力差が所定の基準値以下の場合は閉じる一方、その圧力差が所定の基準値を上回ると開く。
スライドバルブ(70)が移動してスクリュー圧縮機(1)の運転容量が最大容量より小さくなっても、弁部材(56)の同径部(57)が液供給通路(50)を完全に遮断している間は、液供給通路(50)から上流側空間(5)へ液冷媒は供給されない。そして、図8(B)及び図8(C)に示すように、スライドバルブ(70)が更に移動して弁部材(56)のテーパー部(58)が液供給通路(50)を横断する状態になると、液供給通路(50)の上流側通路部(51)と下流側通路部(52)が互いに連通する。スクリュー圧縮機(1)の運転容量が小さくなる方向へスライドバルブ(70)が移動すると、弁部材(56)は挿入穴(14)から引き抜かれる方向へ移動し、テーパー部(58)のうち液供給通路(50)を横断する部分の外径が小さくなる。このため、スクリュー圧縮機(1)の運転容量が小さくなるほど、液供給通路(50)を流れる液冷媒の流量は大きくなる。
上述したように、本実施形態のスクリュー圧縮機(1)では、その運転容量が比較的大きい(即ち、吸入口(11)からケーシング(10)内へ流入する冷媒の体積流量が比較的多い)第1運転状態において、液供給通路(50)の上流側通路部(51)と下流側通路部(52)の間が弁部材(56)の同径部(57)によって完全に遮断される。一方、スクリュー圧縮機(1)の運転容量が第1運転状態よりも小さい(即ち、吸入口(11)からケーシング(10)内へ流入する冷媒の体積流量が第1運転状態よりも少ない)第2運転状態では、液供給通路(50)のうち挿入穴(14)と重複する部分を弁部材(56)のテーパー部(58)が横断する状態となり、液供給通路(50)の上流側通路部(51)と下流側通路部(52)が互いに連通する。そして、スクリュー圧縮機(1)では、第2運転状態であって電動機(15)を通過する冷媒の体積流量が比較的少なく、しかもスクリュー圧縮機(1)の吐出圧力と吸入圧力の差が比較的大きくて電動機(15)での発熱量が比較的多くなる場合に、液供給通路(50)から上流側空間(5)へ液冷媒が供給され、この液冷媒が電動機(15)を冷却するために利用される。
−実施形態1の効果−
本実施形態のスクリュー圧縮機(1)では、その運転容量が低下する方向へスライドバルブ(70)が移動すると、スライドバルブ(70)と共に弁部材(56)が移動し、液供給通路(50)の上流側通路部(51)と下流側通路部(52)が互いに連通する。そして、スクリュー圧縮機(1)の吐出圧力と吸入圧力の差が比較的大きくなって冷媒用弁(60)が開くと、レシーバ(103)から液インジェクションポート(13)へ供給された液冷媒の一部が、液供給通路(50)を通ってケーシング(10)内の上流側空間(5)へ供給され、電動機(15)の冷却に利用される。
このように、本実施形態によれば、従来であれば電動機(15)を充分に冷却できないほどスクリュー圧縮機(1)の運転容量が低い場合であっても、液供給通路(50)から供給される液冷媒によって電動機(15)を冷却できる。従って、本実施形態によれば、電動機(15)の過昇温を回避しつつ、スクリュー圧縮機(1)の運転容量の下限を引き下げることができ、その運転容量の制御範囲を拡大することができる。
特に、本実施形態では、スクリュー圧縮機(1)の運転容量を調節するためのスライドバルブ(70)に弁部材(56)を取り付け、この弁部材(56)によって液供給通路(50)での液冷媒の流通状態を制御している。従って、本実施形態によれば、従来と同様にスライドバルブ(70)の位置を制御するだけで、スクリュー圧縮機(1)の運転容量だけでなく、液供給通路(50)からケーシング(10)内の上流側空間(5)へ供給される液冷媒の流量も調節することができる。
−実施形態1の変形例1−
本実施形態のスクリュー圧縮機(1)のケーシング(10)では、液供給通路(50)の上流側通路部(51)及び下流側通路部(52)と、流通制御部(55)の弁部材(56)とが、図9に示すように配置されていてもよい。
同図に示すように、本変形例のケーシング(10)では、上流側通路部(51)の終端部と、下流側通路部(52)の始端部とが互いに直交している。また、このケーシング(10)において、弁部材(56)が挿入される挿入穴(14)は、下流側通路部(52)と同軸に形成されている。また、下流側通路部(52)及び挿入穴(14)の内径は、何れも弁部材(56)の同径部(57)の外径よりも僅かに大きい。本変形例の弁部材(56)は、下流側通路部(52)へ進入可能となっている。本変形例では、弁部材(56)のテーパー部(58)が下流側通路部(52)の始端の開口面積を変化させることによって、液供給通路(50)における液冷媒の流量が調節される。
図9(A)は、スクリュー圧縮機(1)の運転容量が最大容量となっている状態での弁部材(56)の位置を示している。この状態では、弁部材(56)の同径部(57)が下流側通路部(52)に入り込んでおり、下流側通路部(52)の始端が同径部(57)によって塞がれる。このため、液供給通路(50)の上流側通路部(51)と下流側通路部(52)の間が弁部材(56)によって遮断され、液供給通路(50)から上流側空間(5)への液冷媒の供給は行われない。
一方、図9(D)は、スクリュー圧縮機(1)の運転容量が最小容量となっている状態での弁部材(56)の位置を示している。この状態では、弁部材(56)の全体が下流側通路部(52)の外側に位置しており、液供給通路(50)の上流側通路部(51)と下流側通路部(52)が連通する。また、この状態では、下流側通路部(52)の始端の開口面積が最大となる。
スライドバルブ(70)が移動してスクリュー圧縮機(1)の運転容量が最大容量より小さくなっても、弁部材(56)の同径部(57)が下流側通路部(52)の始端を完全に塞いでいる間は、液供給通路(50)から上流側空間(5)へ液冷媒は供給されない。そして、図9(B)及び図9(C)に示すように、スライドバルブ(70)が更に移動し、弁部材(56)の同径部(57)の先端が下流側通路部(52)の外部へ出ると、液供給通路(50)の上流側通路部(51)と下流側通路部(52)が互いに連通する。スクリュー圧縮機(1)の運転容量が小さくなる方向へスライドバルブ(70)が移動すると、弁部材(56)は下流側通路部(52)から引き抜かれる方向へ移動し、テーパー部(58)のうち下流側通路部(52)の始端に位置する部分の外径が小さくなる。このため、スクリュー圧縮機(1)の運転容量が小さくなるほど、下流側通路部(52)の始端の開口面積が拡大し、液供給通路(50)を流れる液冷媒の流量が増加する。
−実施形態1の変形例2−
本実施形態のスクリュー圧縮機(1)では、冷媒用弁(60)が省略されていてもよい。この場合、液供給通路(50)における液冷媒の流通状態は、弁部材(56)だけによって制御される。従って、この変形例を適用したスクリュー圧縮機(1)では、その吐出圧力と吸入圧力の差に拘わらず、第2運転状態になって液供給通路(50)の上流側通路部(51)と下流側通路部(52)が互いに連通すれば、液供給通路(50)から上流側空間(5)へ液冷媒を供給され、第1運転状態になって液供給通路(50)の上流側通路部(51)と下流側通路部(52)が弁部材(56)によって遮断されれば、液供給通路(50)から上流側空間(5)へ液冷媒は供給されない。つまり、液供給通路(50)から上流側空間(5)へ液冷媒を供給するか否かは、スクリュー圧縮機(1)の運転容量(即ち、吸入口(11)からケーシング(10)へ流入する冷媒の体積流量)だけに応じて決定される。
また、本実施形態のスクリュー圧縮機(1)では、弁部材(56)が全長に亘って外径が一定の棒状に形成されていてもよい。この場合、弁部材(56)は、その全体が同径部(57)となる。このため、弁部材(56)は、実質的には液供給通路(50)における液冷媒の流れの断続だけを行い、液供給通路(50)における液冷媒の流量を徐々に増減させる動作は行わない。
−実施形態1の変形例3−
本実施形態のスクリュー圧縮機(1)において、弁部材(56)は、スライドバルブ(70)以外の部材であってスライドバルブ(70)と共に移動するものに取り付けられていてもよい。例えば、スライドバルブ駆動機構(80)のアーム(84)や連結ロッド(85)は、スライドバルブ(70)と同じ方向へ同じ距離だけ移動する。従って、弁部材(56)は、スライドバルブ駆動機構(80)のアーム(84)や連結ロッド(85)に取り付けられていてもよい。
《参考技術1》
参考技術1について説明する。この参考技術1は、本発明の実施形態ではない。本参考技術のスクリュー圧縮機(1)は、実施形態1のスクリュー圧縮機(1)において、液供給通路(50)と流通制御部(55)の構成を変更したものである。以下では、本参考技術のスクリュー圧縮機(1)について、実施形態1のスクリュー圧縮機(1)と異なる点を説明する。
図10に示すように、本参考技術の液供給通路(50)は、ケーシング(10)の外部に設置された配管によって構成されている。この配管によって構成された液供給通路(50)は、その一端がケーシング(10)の外部で液インジェクションポート(13)に接続され、その他端がケーシング(10)を貫通して上流側空間(5)に開口している。
本参考技術の流通制御部(55)は、開度可変の調節弁(59)と、調節弁(59)の開度を制御するコントローラ(90)と、上流側温度センサ(91)と、下流側温度センサ(92)とによって構成されている。調節弁(59)は、液供給通路(50)に設けられている。調節弁(59)の開度を変更すると、液供給通路(50)における液冷媒の流量が変化する。上流側温度センサ(91)は、ケーシング(10)の上流側空間(5)における吸入口(11)の近傍に設置され、電動機(15)を通過する前の冷媒の温度を計測する。下流側温度センサ(92)は、ケーシング(10)の下流側空間(6)に設置され、電動機(15)を通過した後の冷媒の温度を計測する。コントローラ(90)には、上流側温度センサ(91)及び下流側温度センサ(92)の計測値が入力される。そして、コントローラ(90)は、上流側温度センサ(91)及び下流側温度センサ(92)の計測値に基づいて、調節弁(59)の開度を制御する。
ここで、ケーシング(10)内の低圧空間(S1)を圧縮機構(20)へ向かって流れる冷媒の温度は、電動機(15)を通り抜ける際に上昇する。そして、吸入口(11)からケーシング(10)内へ流入して電動機(15)を通過する低圧冷媒の流量(厳密には質量流量)が減少すると、電動機(15)を通過する際の冷媒の温度の上昇幅が拡大する。そこで、コントローラ(90)は、電動機(15)の前後における冷媒の温度差(具体的には、下流側温度センサ(92)の計測値から上流側温度センサ(91)の計測値を差し引いた値)を監視する。
具体的に、下流側温度センサ(92)の計測値から上流側温度センサ(91)の計測値を差し引いた値(以下では、指標値という)が所定の上限値(例えば、30℃)以下である場合、コントローラ(90)は、吸入口(11)からケーシング(10)内へ流入する冷媒の流量が比較的多い第1運転状態であると判断し、調節弁(59)を全閉状態に保持する。この場合には、電動機(15)の前後における冷媒の温度差が比較的小さく、電動機(15)の冷却が充分に行われていると判断できる。そこで、この場合には、コントローラ(90)が調節弁(59)を全閉状態に保ち、液供給通路(50)から上流側空間(5)へ液冷媒は供給されない。
一方、上記指標値が上限値を上回っている場合、コントローラ(90)は、第1運転状態に比べて吸入口(11)からケーシング(10)内へ流入する冷媒の流量が少ない第2運転状態であると判断し、調節弁(59)を開く。この場合には、電動機(15)の前後における冷媒の温度差が比較的大きく、電動機(15)の冷却が不充分であると判断できる。そこで、この場合には、コントローラ(90)が調節弁(59)を開き、液供給通路(50)から上流側空間(5)へ液冷媒が供給される。
コントローラ(90)は、指標値が上限値以下に保たれるように、調節弁(59)の開度を調節する。例えば、調節弁(59)が開いている状態で指標値が上限値を上回っている場合、コントローラ(90)は、調節弁(59)の開度を拡大して液供給通路(50)における液冷媒の流量を増やす。また、調節弁(59)が開いている状態で指標値が上限値を下回っている場合、コントローラ(90)は、調節弁(59)の開度を縮小して液供給通路(50)における液冷媒の流量を減らす。
上述したように、ケーシング(10)内における電動機(15)の前後の冷媒の温度差は、吸入口(11)からケーシング(10)内へ吸い込まれる冷媒の流量に応じて変化するパラメータとなる。そこで、本参考技術のコントローラ(90)は、ケーシング(10)内における電動機(15)の前後の冷媒の温度差が所定の基準値を上回ると、調節弁(59)を開いて液供給通路(50)からケーシング(10)内の上流側空間(5)へ液冷媒を供給する。従って、本参考技術によれば、液供給通路(50)からケーシング(10)内の上流側空間(5)へ供給される液冷媒の流量を、吸入口(11)からケーシング(10)内へ吸い込まれる冷媒の流量に応じて、適切に制御することができる。
《参考技術2》
参考技術2について説明する。この参考技術2は、本発明の実施形態ではない。本参考技術のスクリュー圧縮機(1)は、参考技術1のスクリュー圧縮機(1)において、流通制御部(55)の構成を変更したものである。以下では、本参考技術のスクリュー圧縮機(1)について、参考技術1のスクリュー圧縮機(1)と異なる点を説明する。
図11に示すように、本参考技術の流通制御部(55)は、上流側温度センサ(91)及び下流側温度センサ(92)に代えて、電動機温度センサ(93)を備えている。電動機温度センサ(93)は、電動機(15)の固定子(16)に取り付けられ、固定子(16)の温度を計測する。
また、本参考技術の流通制御部(55)では、コントローラ(90)の構成が参考技術1と異なっている。本参考技術のコントローラ(90)には、電動機温度センサ(93)の計測値が入力される。そして、コントローラ(90)は、電動機温度センサ(93)の計測値に基づいて、調節弁(59)の開度を制御する。
ここで、電動機(15)は、上流側空間(5)から下流側空間(6)へ向かって流れる低圧冷媒によって冷却される。そして、吸入口(11)からケーシング(10)内へ流入して電動機(15)を通過する低圧冷媒の流量(厳密には質量流量)が減少すると、電動機(15)の温度が上昇する。そこで、コントローラ(90)は、電動機(15)の温度(具体的には、電動機温度センサ(93)の計測値)を監視する。
具体的に、電動機温度センサ(93)の計測値が所定の上限値(例えば、100℃)以下である場合、コントローラ(90)は、吸入口(11)からケーシング(10)内へ流入する冷媒の流量が比較的多い第1運転状態であると判断し、調節弁(59)を全閉状態に保持する。この場合には、電動機(15)の温度が比較的低く、電動機(15)の冷却が充分に行われていると判断できる。そこで、この場合には、コントローラ(90)が調節弁(59)を全閉状態に保ち、液供給通路(50)から上流側空間(5)へ液冷媒は供給されない。
一方、電動機温度センサ(93)の計測値が上限値を上回っている場合、コントローラ(90)は、第1運転状態に比べて吸入口(11)からケーシング(10)内へ流入する冷媒の流量が少ない第2運転状態であると判断し、調節弁(59)を開く。この場合には、電動機(15)の温度が比較的高く、電動機(15)の冷却が不充分であると判断できる。そこで、この場合には、コントローラ(90)が調節弁(59)を開き、液供給通路(50)から上流側空間(5)へ液冷媒が供給される。
コントローラ(90)は、電動機温度センサ(93)の計測値が上限値以下に保たれるように、調節弁(59)の開度を調節する。例えば、調節弁(59)が開いている状態で電動機温度センサ(93)の計測値が上限値を上回っている場合、コントローラ(90)は、調節弁(59)の開度を拡大して液供給通路(50)における液冷媒の流量を増やす。また、調節弁(59)が開いている状態で電動機温度センサ(93)の計測値が上限値を下回っている場合、コントローラ(90)は、調節弁(59)の開度を縮小して液供給通路(50)における液冷媒の流量を減らす。
上述したように、電動機(15)の温度は、吸入口(11)からケーシング(10)内へ吸い込まれる冷媒の流量に応じて変化するパラメータとなる。そこで、本参考技術のコントローラ(90)は、電動機(15)の温度が所定の上限値を上回ると、調節弁(59)を開いて液供給通路(50)からケーシング(10)内の上流側空間(5)へ液冷媒を供給する。従って、本参考技術によれば、液供給通路(50)からケーシング(10)内の上流側空間(5)へ供給される液冷媒の流量を、吸入口(11)からケーシング(10)内へ吸い込まれる冷媒の流量に応じて、適切に制御することができる。
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2について説明する。本実施形態のスクリュー圧縮機(1)は、参考技術1のスクリュー圧縮機(1)において、流通制御部(55)の構成を変更したものである。以下では、本実施形態のスクリュー圧縮機(1)について、参考技術1のスクリュー圧縮機(1)と異なる点を説明する。
図12に示すように、本実施形態の流通制御部(55)は、上流側温度センサ(91)及び下流側温度センサ(92)に代えて、冷媒流量計(94)を備えている。冷媒流量計(94)は、スクリュー圧縮機(1)の吸入口(11)に接続する配管に取り付けられ、蒸発器(105)からスクリュー圧縮機(1)へ吸い込まれる冷媒の質量流量を計測する。
また、本実施形態の流通制御部(55)では、コントローラ(90)の構成が参考技術1と異なっている。本実施形態のコントローラ(90)には、冷媒流量計(94)の計測値が入力される。そして、コントローラ(90)は、冷媒流量計(94)の計測値に基づいて、調節弁(59)の開度を制御する。
ここで、電動機(15)は、上流側空間(5)から下流側空間(6)へ向かって流れる低圧冷媒によって冷却される。そして、吸入口(11)からケーシング(10)内へ流入して電動機(15)を通過する低圧冷媒の質量流量が減少すると、電動機(15)の温度が上昇する。そこで、コントローラ(90)は、吸入口(11)からケーシング(10)内へ流入する冷媒の質量流量(具体的には、冷媒流量計(94)の計測値)を監視する。
具体的に、冷媒流量計(94)の計測値が所定の下限値以上である場合、コントローラ(90)は、吸入口(11)からケーシング(10)内へ流入する冷媒の流量が比較的多い第1運転状態であると判断し、調節弁(59)を全閉状態に保持する。この場合には、電動機(15)を通り抜ける冷媒の質量流量が比較的多く、電動機(15)の冷却が充分に行われていると判断できる。そこで、この場合には、コントローラ(90)が調節弁(59)を全閉状態の保ち、液供給通路(50)から上流側空間(5)へ液冷媒は供給されない。
一方、冷媒流量計(94)の計測値が下限値を下回っている場合、コントローラ(90)は、第1運転状態に比べて吸入口(11)からケーシング(10)内へ流入する冷媒の流量が少ない第2運転状態であると判断し、調節弁(59)を開く。この場合には、電動機(15)を通り抜ける冷媒の質量流量が比較的少なく、電動機(15)の冷却が不充分となるおそれがある。そこで、この場合には、コントローラ(90)が調節弁(59)を開き、液供給通路(50)から上流側空間(5)へ液冷媒が供給される。
コントローラ(90)は、冷媒流量計(94)の計測値に応じて、調節弁(59)の開度を増減させる。つまり、コントローラ(90)は、冷媒流量計(94)の計測値が小さくなるに従って調節弁(59)の開度を拡大し、液供給通路(50)における液冷媒の流量を増やす。このため、電動機(15)を通り抜ける冷媒の質量流量が確保され、電動機(15)の冷却が充分に行われる。
《参考技術3》
参考技術3について説明する。この参考技術3は、本発明の実施形態ではない。本参考技術のスクリュー圧縮機(1)は、参考技術1のスクリュー圧縮機(1)において、流通制御部(55)の構成を変更したものである。以下では、本参考技術のスクリュー圧縮機(1)について、参考技術1のスクリュー圧縮機(1)と異なる点を説明する。
図13に示すように、本参考技術の流通制御部(55)は、上流側温度センサ(91)及び下流側温度センサ(92)に代えて、吸入圧力センサ(95)及び吐出圧力センサ(96)を備えている。吸入圧力センサ(95)は、スクリュー圧縮機(1)の吸入口(11)に接続する配管に取り付けられ、蒸発器(105)からスクリュー圧縮機(1)へ吸い込まれる冷媒の圧力を計測する。吐出圧力センサ(96)は、スクリュー圧縮機(1)の吐出口(12)に接続する配管に取り付けられ、スクリュー圧縮機(1)から凝縮器(102)へ向けて吐出された冷媒の圧力を計測する。
また、本参考技術の流通制御部(55)では、コントローラ(90)の構成が参考技術1と異なっている。本参考技術のコントローラ(90)には、吸入圧力センサ(95)及び吐出圧力センサ(96)の計測値が入力される。そして、コントローラ(90)は、吸入圧力センサ(95)及び吐出圧力センサ(96)の計測値に基づいて、調節弁(59)の開度を制御する。
ここで、吸入圧力センサ(95)の計測値が低い場合は、スクリュー圧縮機(1)の吸入口(11)へ吸い込まれる冷媒の密度が低く、従って、吸入口(11)からケーシング(10)内へ流入する冷媒の質量流量が少なくなる。そうすると、電動機(15)を通り抜ける冷媒の質量流量が少なくなり、電動機(15)の冷却が不充分となるおそれがある。また、スクリュー圧縮機(1)の吸入圧力と吐出圧力の差(具体的には、吐出圧力センサ(96)の計測値から吸入圧力センサ(95)の計測値を差し引いた値)が大きくなると、スクリューロータ(40)を駆動するのに必要な動力が大きくなる。そうすると、電動機(15)の消費電力が増えて電動機(15)の発熱量が増えるため、この場合も電動機(15)の冷却が不充分となるおそれがある。そこで、コントローラ(90)は、吸入圧力センサ(95)の計測値と吐出圧力センサ(96)の計測値の両方に基づいて、調節弁(59)の開度を制御する。
コントローラ(90)が行う動作について、図14を参照しながら説明する。コントローラ(90)は、吸入圧力センサ(95)及び吐出圧力センサ(96)の計測値が同図における点Aと点Bを通る直線(直線AB)よりも右側の領域にある場合には調節弁(59)を全閉状態に保持する。また、コントローラ(90)は、吸入圧力センサ(95)及び吐出圧力センサ(96)の計測値が同図の直線ABよりも左側の領域にある場合には調節弁(59)を開く。同図の直線ABは、一次関数:HP=a・LP+b(a,bは定数)で表される。
具体的に、コントローラ(90)は、吸入圧力センサ(95)の計測値PSを監視する。吸入圧力センサ(95)の計測値PSがPL2以上の場合、コントローラ(90)は、調節弁(59)を全閉状態に保持する。一方、吸入圧力センサ(95)の計測値PSがPL2を下回っている場合、コントローラ(90)は、吐出圧力センサ(96)の計測値PDを、直線ABを示す数式に吸入圧力センサ(95)の計測値PSを代入して得られた値(a・PS+b)と比較する。そして、コントローラ(90)は、PD≦a・PS+bの場合には調節弁(59)を全閉状態に保持し、PD>a・PS+bの場合には調節弁(59)を開く。調節弁(59)が開くと、液供給通路(50)から上流側空間(5)へ液冷媒が供給され、この液冷媒が電
動機(15)の冷却に利用される。また、コントローラ(90)は、PD−(a・PS+b) の値が大きくなるにつれて調節弁(59)の開度を拡大し、液供給通路(50)から上流側空間(5)へ供給される液冷媒の流量を増大させる。
なお、図14において、PL1,PL3,PH1,PH3の各値は、スクリュー圧縮機(1)の運転限界を示す。つまり、吸入圧力センサ(95)の計測値PSが下限値PL1を下回るという条件と、吸入圧力センサ(95)の計測値PSが上限値PL3を上回るという条件と、吐出圧力センサ(96)の計測値PDが下限値PH1を下回るという条件と、吐出圧力センサ(96)の計測値PDが上限値PH3を上回るという条件との何れかが成立すると、スクリュー圧縮機(1)を保護するために電動機(15)への通電が強制的に遮断される。
また、従来は、電動機(15)の過昇温を未然に防ぐため、スクリュー圧縮機(1)の運転可能領域は、図14における直線ABの右側の領域(即ち、同図の点A,B,C,D,Eで示された領域)に制限されていた。これに対し、本参考技術のスクリュー圧縮機(1)では、スクリュー圧縮機(1)の運転状態が同図における直線ABの左側の領域に入ると、コントローラ(90)が調節弁(59)を開き、液供給通路(50)から上流側空間(5)へ液冷媒が供給される。このため、本参考技術のスクリュー圧縮機(1)の運転可能領域は、図14の点A',B',C,D,Eで示された領域にまで拡大する。
《発明の実施形態3》
本発明の実施形態3について説明する。本実施形態のスクリュー圧縮機(1)は、参考技術1のスクリュー圧縮機(1)において、流通制御部(55)の構成を変更したものである。
参考技術1のスクリュー圧縮機(1)の流通制御部(55)は、上流側温度センサ(91)及び下流側温度センサ(92)を備えている。それに対し、本実施形態の流通制御部(55)は、上流側温度センサ(91)及び下流側温度センサ(92)に代えて、スライドバルブ(70)の位置を検出する位置センサを備えている。本実施形態の流通制御部(55)のコントローラ(90)は、この位置センサの計測値に基づいて調節弁(59)の開度を制御するように構成される。
具体的に、本実施形態のコントローラ(90)は、スクリュー圧縮機(1)の運転容量が最大となる位置からのスライドバルブ(70)の移動量が所定値に達すると調節弁(59)を開き、その後は、スライドバルブ(70)の移動量が増えるに従って調節弁(59)の開度を拡大してゆく。
《その他の実施形態》
−第1変形例−
実施形態2のスクリュー圧縮機(1)では、電動機(15)が一定の回転速度で駆動されており、その運転容量はスライドバルブ(70)を移動させることによって調節される。これに対し、実施形態2のスクリュー圧縮機(1)では、インバータを用いて電動機(15)の回転速度を可変とし、電動機(15)の回転速度を変化させることによってスクリュー圧縮機(1)の運転容量を調節するようにしてもよい。なお、参考技術1〜3のスクリュー圧縮機(1)においても、インバータを用いて電動機(15)の回転速度を可変とし、電動機(15)の回転速度を変化させることによってスクリュー圧縮機(1)の運転容量を調節するようにしてもよい。
−第2変形例−
実施形態1,2のスクリュー圧縮機(1)は、一つのスクリューロータ(40)と複数のゲートロータ(45)を備えるシングルスクリュー圧縮機であるが、本発明の適用対象はシングルスクリュー圧縮機には限定されない。つまり、本発明は、互いに噛み合わされた二つのスクリューロータによって流体室が形成されるツインスクリュー圧縮機に適用することも可能である。なお、参考技術1〜3をツインスクリュー圧縮機に適用することも可能である。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。