JP5669618B2 - β−グルコピラノシドチオカルボニルエステル化合物の製造方法 - Google Patents

β−グルコピラノシドチオカルボニルエステル化合物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、β−グルコピラノシドチオカルボニルエステル化合物の新規な製造方法に関する。
ピラノシド化合物に代表される糖類は、多糖類の合成、天然物の全合成、あるいは生理活性物質の合成、さらにはコンビナトリアルライブラリー構築の鍵となる重要な化合物である。
これらの糖類は、いずれも天然に由来する糖であるが、もし非天然の糖を出発物質にすることができれば、様々な生理活性物質の合成に寄与できる。非天然の糖としては、天然由来の糖を分子内に有し、水酸基の幾つかを水素原子に変換したデオキシ糖がよく知られた化合物である。
該糖において、水酸基を水素原子に変換する方法としては、水酸基をチオカルボニルステルに変換した後、アルキル錫ハイドライドで還元する方法がよく知られた方法である。上記反応を用いて、糖をデオキシ糖に変換して生理活性物質合成のための出発物質として使用するためには、糖が分子内に有する複数の水酸基の中から特定の位置の水酸基のみを選択的に水素原子に変換する必要がある。
糖の特定の位置の水酸基を水素原子に選択的に変換する方法としては、具体的には、以下の方法が知られている。先ず、β−ピラノシド化合物をメタノール中、ジブチル錫オキサイド化合物と反応させて、環状錫化合物を合成した後、クロロチオノ蟻酸フェニルを反応させて6位の水酸基を選択的にフェノキシチオカルボニル基で保護する。次いで、トリブチル錫ハイドライドを反応させてフェノキシチオカルボニル基で保護された水酸基を水素原子に変換する方法である(非特許文献1)。
ケミカル・ファーマシューティカル・ブレチン 35巻 3号 1016−1029頁(1987年)
上記方法において、メチル β−D−グルコピラノシドを原料としてメチル β−D−グルコピラノシドモノチオカルボニルエステルを製造すると、収率84.8%、6位の水酸基への選択率100%で取得できる。しかしながら、選択率の高さは申し分ないものの、収率の高さが不十分であるため、より収率を高くすることが望まれていた。
さらに、上記方法では、6位の水酸基を選択的に保護するために、基質である糖に対して1.5当量のジブチル錫オキサイドを使用する必要があった。一般に、錫原子は、酸素、硫黄、窒素に対して強い親和力を持つため、有機錫化合物の使用は制限される傾向にある。このため、錫化合物の使用量を触媒量に抑え、6位の水酸基を選択的にフェノキシチオカルボニル基に変換する方法の開発が強く望まれていた。
したがって、本発明の目的は、6位の水酸基が選択的にチオカルボニル基で保護されたβ−グルコピラノシドチオカルボニルエステル化合物を、高い収率と選択率で製造できる方法を提供することにある。さらには、有機錫化合物の使用量を低減しても、高い選択率で該β−グルコピラノシドチオカルボニルエステル化合物を製造できる方法を提供することにある。
かかる事実に鑑み、本発明者らは鋭意検討を行ったところ、ジアルキル錫化合物と有機塩基とを併用して、β−グルコピラノシド化合物とクロロチオノ蟻酸アリール化合物とを反応させることで、6位の水酸基が選択的に保護されたβ−グルコピラノシドチオカルボニルエステル化合物が高い選択率で合成できることを見出した。さらには、有機塩基を使用することにより、ジアルキル錫化合物の使用量を低減しても、該β−グルコピラノシドチオカルボニルエステル化合物が高い選択率で合成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち本発明は、
下記一般式(I)
Figure 0005669618
(式中、Rは、アルキル基、又はアリール基である。)
で示されるβ−グルコピラノシド化合物と、
下記一般式(II)
Figure 0005669618
(式中、Rは、アルキル基、ニトロ基、ハロゲン原子であり、
aは、0〜5の整数であり、
が複数存在する場合には、Rは、同一の基であっても、異なる基であってもよい。)
で示されるクロロチオノ蟻酸アリール化合物とを、ジアルキル錫化合物、及び有機塩基の存在下で反応させることを特徴とする、下記一般式(III)
Figure 0005669618
(式中、Rは、前記一般式(I)におけるものと同義であり、
、及びaは、前記一般式(II)におけるものと同義である。)
で示されるβ−グルコピラノシドチオカルボニルエステル化合物の製造方法である。
本発明においては、前記有機塩基として、三級アミンを使用することが好ましい。
さらに、本発明においては、高い選択率を維持し、収率をより高くするためには、ハロゲン化四級アンモニウム塩の存在下で実施することが好ましい。
本発明によれば、有機合成上極めて有用なβ−グルコピラノシドチオカルボニルエステル化合物を、高い選択率で収率よく製造することができる。しかも、本発明は、有機錫化合物の使用量を低減しても、高選択率、高収率でβ−グルコピラノシドチオカルボニルエステル化合物を得ることができるため、工業的利用価値は高い。
本発明は、β−グルコピラノシド化合物とクロロチオノ蟻酸アリール化合物とを、ジアルキル錫化合物、及び有機塩基の存在下で反応させてβ−グルコピラノシドチオカルボニルエステル化合物を製造する方法である。各成分について説明する。
(β−グルコピラノシド化合物)
本発明のβ−グルコピラノシド化合物は、下記一般式(I)で示される。
Figure 0005669618
(式中、Rは、アルキル基、又はアリール基である。)。
前記一般式(I)において、Rは、アルキル基、又はアリール基である。
アルキル基としては、特に制限されるものではないが、炭素数が1〜10であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
アリール基としては、特に制限されるものではないが、炭素数が6〜12であることが好ましい。また、該アリール基は、置換基を有してもよい。具体的なアリール基を例示すれば、フェニル基、4−フルオロフェニル基、4−クロロフェニル基、4−ブロモフェニル基、4−ニトロフェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基等を挙げることができる。これらのアリール基の中でも、原料入手の容易さの観点からフェニル基が好適に用いられる。
前記一般式(I)で示される好適なβ−グルコピラノシドエステル化合物を例示すると、具体的には、メチル β−D−グルコピラノシド、エチル β−D−グルコピラノシド、プロピル β−D−グルコピラノシド、イソプロピル β−D−グルコピラノシド、イソブチル β−D−グルコピラノシド、オクチル β−D−グルコピラノシド、
ノニル β−D−グルコピラノシド、デシル β−D−グルコピラノシド、シクロペンチル β−D−グルコピラノシド、シクロヘキシル β−D−グルコピラノシド、
フェニル β−D−グルコピラノシド、4−クロロフェニル β−D−グルコピラノシド、4−フルオロフェニル β−D−グルコピラノシド、4−ニトロフェニル β−D−グルコピラノシド、4−メチルフェニル β−D−グルコピラノシド、4−メトキシフェニル β−D−グルコピラノシド、等を挙げることができる。これらのβ−グルコピラノシドジエステル化合物の中でも、特に高い選択率が期待できるメチル β−D−グルコピラノシド、エチル β−D−グルコピラノシド、プロピル β−D−グルコピラノシド、オクチル β−D−グルコピラノシド、フェニル β−D−グルコピラノシド、4−クロロフェニル β−D−グルコピラノシド、4−フルオロフェニル β−D−グルコピラノシド、4−ニトロフェニル β−D−グルコピラノシド等であることが好ましい。
(クロロチオノ蟻酸アリール化合物)
本発明において、クロロチオノ蟻酸アリール化合物は、下記式(II)で示される化合物である。
Figure 0005669618
(式中、Rは、アルキル基、ニトロ基、ハロゲン原子であり、
aは、0〜5の整数であり、
が複数存在する場合には、Rは、同一の基であっても、異なる基であってもよい。)。
前記一般式(II)において、Rは、アルキル基、ニトロ基、ハロゲン原子である。アルキル基としては、特に制限されるものではないが、炭素数が1〜10のものが好ましく、特にメチル基が好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、沃素原子が挙げられ、特に、フッ素原子、塩素原子が好ましい。
aは、基Rの数を表すが、0〜5の整数である。aが0の場合は、置換基が存在せず、前記一般式(II)で示される化合物は、クロロチオノ蟻酸フェニルとなる。また、aが2以上の場合には、Rは、同一の基であっても、異なる基であってよい。
前記一般式(II)で示される好適なクロロチオノ蟻酸アリール化合物を具体的に例示すると、クロロチオノ蟻酸フェニル、クロロチオノ蟻酸4−フロロフェニル、クロロチオノ蟻酸4−クロロフェニル、クロロチオノ蟻酸4−メチルフェニル、クロロチオノ蟻酸4−ニトロフェニル、クロロチオノ蟻酸2,3,4,5,6−ペンタクロロフェニル、クロロチオノ蟻酸2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル等を挙げることができる。
本発明において、上記一般式(II)で示されるクロロチオノ蟻酸アリール化合物の使用量は、上記一般式(I)で示されるβ−グルコピラノシド化合物とチオカルボニル化したい水酸基とは化学量論的に反応するため、あまり量が少ないと未反応物が多く残り収率の低下を招き、あまり量が多いと反応の選択率が低下する傾向にある。そのため、通常、クロロチオノ蟻酸アリール化合物の使用量は、上記一般式(I)で示されるβ−グルコピラノシドエステル化合物1モルに対して、好ましくは0.8〜2モル、より好ましくは0.9〜1.5モルである。
(ジアルキル錫化合物)
本発明において、上記ジアルキル錫化合物は、二つのアルキル基が直接錫と結合している化合物であれば、特に限定されないが、選択性の観点から、該二つのアルキル基は炭素数1〜10のアルキル基であるのが好適である。その中でも、ハロゲン化物、酸化物、アルコキシ基を有するもの、カルボキシ化物、スルホニルオキシ化物であることが好ましい。これらのジアルキル錫化合物を具体的に例示すると、ジメチルジクロロ錫、ジメチルジブロモ錫、ジエチルジクロロ錫、ジエチルジブロモ錫、ジブチルジクロロ錫、ジブチルジブロモ錫、ジオクチルジクロロ錫、ジオクチルジブロモ錫、ジノニルジクロロ錫、ジデシルジクロロ錫、ジメチル錫オキサイド、ジメチル錫チオキサイド、ジエチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫チオキサイド、ジブチルジメトキシ錫、ジブチルジ酢酸錫、ジブチルビストリフルオロメタンスルホン酸錫、ジブチルジラウリン酸錫等を挙げることができる。
これらのジアルキル錫化合物の中でも、ジメチルジクロロ錫、ジエチルジクロロ錫、ジブチルジクロロ錫、ジブチルジブロモ錫、ジオクチルジクロロ錫、ジメチル錫オキサイド、ジメチル錫チオキサイド、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジブチルビストリフルオロメタンスルホン酸錫は、高い反応収率を示すため特に好適に使用される。
本発明において、ジアルキル錫化合物の使用量は、特に制限されるものではない。本発明においては、有機塩基を使用するため、従来技術と比較して、ジアルキル錫化合物の使用量を低減することができる。そのため、本発明において、ジアルキル錫化合物の使用量は、前記一般式(I)で示されるβ−グルコピラノシド化合物1モルに対して、0.3モル以下としても、十分にその効果を発揮することができる。中でも、後処理を容易にし、高い反応速度で反応を実施するためには、ジアルキル錫化合物の使用量は、前記一般式(I)で示されるβ−グルコピラノシド化合物1モルに対して、好ましくは0.0001〜0.3モル、より好ましくは0.001〜0.2モルである。
(有機塩基)
本発明の方法において、最大の特徴は、有機塩基を使用することである。有機塩基を使用することにより、優れた効果が発揮される理由は明らかではないが、クロロチオノ蟻酸アリール化合物が反応した際に発生する塩素イオンを捕捉する効果があるため、反応が効率よく進み、高い選択率で目的とするβ−グルコピラノシドチオカルボニルエステル化合物を製造できるものと考えられる。
本発明において、有機塩基としては、脂肪族アミン、芳香族アミン、環状有機塩基等を使用することができ、第三級アミンの化合物を好適に使用することができる。
第三級アミンを具体的に例示すると、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1−メチルモルホリン、1−エチルモルホリン、1−メチルピロリジン、1−エチルピロリジン、1−メチルピペリジン、1−エチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、1−エチル−2,2,6,6、−テトラメチルピペリジン、1,3,5−トリメチルヘキサハイドロ−1,3,5−トリアジン等の脂肪族三級アミン化合物、ピリジン、4−N,N−ジメチルピリジン、2−N,N−ジメチルピリジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルイミダゾール、1,2,5−トリメチルピロール等の芳香族三級アミン化合物を挙げることができる。
これらの第三級アミンの中でも、特に、トリブチルアミン、ジイソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、1−エチル−2,2,6,6、−テトラメチルピペリジン、1,3,5−トリメチルヘキサハイドロ−1,3,5−トリアジン等の脂肪族三級アミン等が高い選択性と収率を示すため、好適に採用される。
なお、これらの有機塩基は、単独のものを使用することものできるし、2種類以上のものを使用することもできる。
本発明において、有機塩基の使用量は、特に制限されるものではない。中でも、反応により生じた塩素イオンを効率よく捕捉するためには、前記一般式(II)で示されるクロロチオノ蟻酸アリール化合物に1モルに対して、1モル以上とすることが好ましい。その中でも、特に、後処理、目的物の分解を防止することを考慮すると、好ましくは1〜4モル、より好ましくは1〜3モルである。
(ハロゲン化四級アンモニウム塩)
本発明においては、反応の進行を容易にし、収率を高めるためには、ハロゲン化四級アンモニウム塩を反応系に予め存在させることもできる。このハロゲン化四級アンモニウムとしては、脂肪族四級アンモニウム塩、芳香族四級アンモニウム塩等が挙げられる。中でも、ハロゲン原子が臭素原子、または沃素原子であるものが好ましく、特に、ハロゲン原子が沃素原子であって、脂肪族四級アンモニウム塩であることが好ましい。
これらハロゲン化四級アンモニウム塩を具体的に例示すると、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラペンチルアンモニウム、臭化テトラヘキシルアンモニウム、臭化テトラヘプチルアンモニウム、臭化テトラオクチルアンモニウム、沃化テトラメチルアンモニウム、沃化テトラエチルアンモニウム、沃化テトラプロピルアンモニウム、沃化テトラブチルアンモニウム、沃化テトラペンチルアンモニウム、沃化テトラヘキシルアンモニウム、沃化テトラヘプチルアンモニウム、沃化テトラオクチルアンモニウム等の脂肪族四級アンモニウム塩、臭化トリメチルベンジルアンモニウム、
臭化トリエチルベンジルアンモニウム、沃化トリメチルベンジルアンモニウム、沃化トリエチルベンジルアンモニウム、臭化N−メチルピリジン、臭化N−エチルピリジン、沃化N−メチルピリジン、沃化N−エチルピリジン等の芳香族四級アンモニウム塩等を挙げることができる。この中でも、特に、沃化テトラプロピルアンモニウム、沃化テトラブチルアンモニウム、沃化テトラペンチルアンモニウム、沃化テトラヘキシルアンモニウム、沃化テトラヘプチルアンモニウム、沃化テトラオクチルアンモニウム等が高い選択性と収率を示すため、好適に採用される。
これらハロゲン化四級アンモニウム塩は、単独のものを使用することもできるし、2種類以上のものを使用することもできる。
本発明において、ハロゲン化四級アンモニウム塩の使用量は、特に制限されるものではない。ただし、後処理を容易にし、優れた効果を発揮するためには、ハロゲン化四級アンモニウム塩の使用量は、前記一般式(I)で示されるβ−グルコピラノシド化合物1モルに対して、好ましくは0.001〜0.3モル、より好ましくは0.01〜0.2モルである。
(反応方法、反応条件、及び精製方法)
本発明の製造方法では、ジアルキル錫化合物、及び有機塩基の存在下において、前記一般式(I)で示されるβ−グルコピラノシドエステル化合物と前記一般式(II)で示されるクロロチオノ蟻酸アリール化合物とを反応させる。この時の反応は、特に限定されず、例えば有機溶媒中でこれら化合物を混合・攪拌することにより好適に実施することができる。
本発明において、使用する有機溶媒は、特に制限されるものではなく、試薬、又は工業原料として入手可能な溶媒を使用することができる。具体的には、テトラハイドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル等のエーテル類、tert−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール等のアルコール類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、ジメチルカーボネート等のカーボネート類、ジメチルスルホキシド等を挙げることができる。これらの有機溶媒の中でも、特に高い収率が期待できる、テトラハイドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、アセトニトリル等のニトリル類、アセトン等のケトン類が好適に採用される。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2種類以上の溶媒を混合して用いることもできる。
上記有機溶媒は、乾燥処理等の精製を行い使用してもよいし、市販のものをそのまま使用することもできる。ただし、該有機溶媒中に含まれる水分は、前記一般式(II)で示されるクロロチオノ蟻酸アリール化合物と反応するため、あまり量が多いと本発明の収率が低下する傾向にある。そのため、有機溶媒中に含まれる水分量は、本発明に使用される上記一般式(II)で示されるクロロチオノ蟻酸アリール化合物1モルに対して、50モル以下とすることが好ましい。
なお、該有機溶媒中の水分量の下限値は、乾燥した有機溶媒を使用することもできるため、前記一般式(II)で示されるクロロチオノ蟻酸アリール化合物1モルに対して、0モルである。
本発明において、上記有機溶媒の使用量は、特に制限はないが、あまり量が多いとバッチあたりの収量が減少するため経済的ではなく、あまり量が少ないと攪拌等に支障をきたすおそれがある。そのため、通常、有機溶媒の使用量は、反応溶媒(有機溶媒)中の前記一般式(I)で示されるβ−グルコピラノシド化合物の濃度が、好ましくは0.1〜70質量%、より好ましくは1〜60質量%となる量である。
本発明において、ジアルキル錫化合物、及び有機塩基の存在下、前記一般式(I)で示されるβ−グルコピラノシド化合物と前記一般式(II)で示されるクロロチオノ蟻酸アリール化合物とを反応させる際の各化合物の添加順序については、特に制限されるものではない。ただし、ジアルキル錫化合物、及び有機塩基の存在下で前記β−グルコピラノシド化合物と前記クロロチオノ蟻酸アリール化合物とを反応させるため、ジアルキル錫化合物を反応系に添加する前に、β−グルコピラノシド化合物とクロロチオノ蟻酸アリール化合物が接触しないようにすることが好ましい。各化合物を添加する順序として、特に好ましい方法としては、ジアルキル錫化合物、及びβ−グルコピラノシド化合物を有機溶媒中で混合した混合溶液を準備し、次いで、クロロチオノ蟻酸アリール化合物を該混合溶液に添加し、最後に有機塩基を該混合溶液に添加する方法が好適である。この方法を採用することにより、特に、高選択率、高収率を達成できる。
また、本発明において、ハロゲン化四級アンモニウム塩を使用する場合、該塩を反応系に添加する順序も、特に制限されるものではない。中でも、操作性を高くし、高選択率、高収率を達成するためには、ジアルキル錫化合物、β−グルコピラノシド化合物、及び該ハロゲン化四級アンモニウム塩を前記有機溶媒中で混合した混合溶液を準備し、次いで、クロロチオノ蟻酸アリール化合物を該混合溶液に添加し、最後に有機塩基を該混合溶液に添加する方法を採用することが好ましい。
本発明において、反応温度は、使用するβ−グルコピラノシド化合物、有機塩基、及びクロロチオキシ蟻酸アリール化合物の種類によって異なるため、一概限定することはできない。ただし、あまり温度が低いと反応速度が著しく小さくなり、あまり温度が高いと副反応を助長する傾向にあるため、反応温度は、好ましくは−10〜50℃、より好ましくは0〜40℃である。
また、反応時間も、使用するβ−グルコピラノシド化合物、有機塩基、及びクロロチオノ蟻酸アリール化合物の種類によって異なるため、一概限定することはできないが、好ましくは0.1〜100時間である。
また、反応時の圧力、および雰囲気は、常圧、減圧、加圧の何れの状態でも実施可能であり、また空気雰囲気下、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下等の不活性気体雰囲気下の何れの状態でも実施可能である。
上記のような反応条件により下記一般式(III)で示されるβ−グルコピラノシドチオカルボニルエステル化合物を製造することができる。
Figure 0005669618
(式中、Rは、前記一般式(I)におけるものと同義であり、
、及びaは、前記一般式(II)におけるものと同義である。)
当然のことながら、このβ−グルコピラノシドチオカルボニルエステル化合物は、使用するβ−グルコピラノシド化合物、及びクロロチオノ蟻酸アリール化合物によって、その構造が決定される。
前記反応条件により製造したβ−グルコピラノシドチオカルボニルエステル化合物は、以下の方法に従って単離精製できる。具体的には、反応終了後、例えば、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて、触媒であるジアルキル錫化合物を失活させた後、酢酸エチル等の水に相溶しない有機溶媒で抽出した後、有機溶媒を留去、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー等によって分離精製することができる。
本発明によれば、高い選択率で6位の水酸基が保護された前記一般式(III)で示されるβ−グルコピラノシドチオカルボニルエステル化合物を製造することができる。しかも、収率が高く、従来技術と比較して、ジアルキル錫化合物の使用量も低減することができる。
以下、実施例を掲げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。
実施例1
30mlの茄子型フラスコに、メチルβ−D−グルコピラノシド194.2mg(1.0mmol)、ジメチルジクロロ錫22.0mg(0.10mmol)、テトラハイドロフラン10mlを加え、攪拌した。この混合溶液にクロロチオノ蟻酸フェニル0.175ml(1.3mmol)を加え、次いで、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン0.271ml(1.5mmol)を加えて、20℃で6時間反応させた。反応終了後、反応溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液20mlを加え、次いで、酢酸エチル20mlで三回抽出操作を行った。有機相(酢酸エチル相)を水20ml、塩化ナトリウム水溶液20mlで洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、溶媒(酢酸エチル)を減圧留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製(展開溶媒 n−ヘキサン:酢酸エチル=5:1)したところ、メチル 6−O−フェノキシチオカルボニル−β−D−グルコピラノシドを314.5mg(収率95%)で取得した。6位以外の水酸基がフェノキシチオカルボニル化されたβ−D−グルコピラノシドは取得できなかったため、6−O−フェノキシチオカルボニル−β−D−グルコピラノシドの選択率は100%であった。
実施例2〜4
1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンに代えて表1に示した有機塩基を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果を表1に示した。
Figure 0005669618
実施例5〜10
ジメチルジクロロ錫に代えて表2に示したジアルキル錫化合物を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果を表2に示した。
Figure 0005669618
実施例11
テトラハイドロフランに代えてアセトンを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、6−O−フェノキシチオカルボニル−β−D−グルコピラノシドを304.6mg(収率92%)を取得し、選択率は100%であった。
実施例12
30mlの茄子型フラスコに、メチルβ−D−グルコピラノシド194.2mg(1.0mmol)、ジメチルジクロロ錫22.0mg(0.10mmol)、沃化テトラブチルアンモニウム36.9mg(0.10mmol)、テトラハイドロフラン10mlを加え、攪拌した。この混合溶液にクロロチオノ蟻酸フェニル0.175ml(1.3mmol)を加え、次いで、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン0.271ml(1.5mmol)を加えて、20℃で6時間反応させた。反応終了後、反応溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液20mlを加え、酢酸エチル20mlで三回抽出操作を行った。有機相(酢酸エチル相)を水20ml、塩化ナトリウム水溶液20mlで洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、溶媒(酢酸エチル)を減圧留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製(展開溶媒 n−ヘキサン:酢酸エチル=5:1)したところ、メチル 6−O−フェノキシチオカルボニル−β−D−グルコピラノシドを331.05mg(収率100%)で取得した。6位以外の水酸基がフェノキシチオカルボニル化されたβ−D−グルコピラノシドは取得できなかったため、6−O−フェノキシチオカルボニル−β−D−グルコピラノシドの選択率は100%であった。
実施例13〜15
沃化テトラブチルアンモニウムに代えて、表3に示したハロゲン化四級アンモニウム塩を用いた以外は実施例12と同様の操作を行った。その結果を表3に示した。
Figure 0005669618
実施例16〜18
メチル β−D−グルコピラノシドに代えて、表4に示したβ−グルコピラノシド化合物を用いた以外は実施例12と同様の操作を行った。その結果を表4に示した。
Figure 0005669618
実施例19〜21
クロロチオノ蟻酸フェニルに代えて、表5に示したクロロチオノ蟻酸アリール化合物を用いた以外は、実施例12と同様の操作を行った。その結果を表5に示した。
Figure 0005669618
比較例1
1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンを用いなかった以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、6−O−フェノキシチオカルボニル−β−D−グルコピラノシドを取得することはできなかった。
比較例2
ジメチルジクロロ錫を用いなかった以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、6−O−フェノキシチオカルボニル−β−D−グルコピラノシドを取得することはできなかった。

Claims (3)

  1. 下記一般式(I)
    Figure 0005669618
    (式中、Rは、アルキル基、又はアリール基である。)
    で示されるβ−グルコピラノシド化合物と、
    下記一般式(II)
    Figure 0005669618
    (式中、Rは、アルキル基、ニトロ基、ハロゲン原子であり、
    aは、0〜5の整数であり、
    が複数存在する場合には、Rは、同一の基であっても、異なる基であってもよい。)
    で示されるクロロチオノ蟻酸アリール化合物とを、ジアルキル錫化合物、及び有機塩基の存在下で反応させることを特徴とする、下記一般式(III)
    Figure 0005669618
    (式中、Rは、前記一般式(I)におけるものと同義であり、
    、及びaは、前記一般式(II)におけるものと同義である。)
    で示されるβ−グルコピラノシドチオカルボニルエステル化合物の製造方法。
  2. 前記有機塩基として、三級アミンを使用することを特徴とする請求項1に記載のβ−グルコピラノシドチオカルボニルエステル化合物の製造方法。
  3. ハロゲン化四級アンモニウム塩の存在下で反応を行うことを特徴とする請求項1に記載のβ−グルコピラノシドチオカルボニルエステル化合物の製造方法。
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