JP5654727B2 - ポリカーボネート共重合体およびその製造方法、樹脂組成物ならびに成形品 - Google Patents
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Description
例えば、流動性を改良する方法として、共重合、分子鎖末端の変性などを行うことによりPC共重合体の構造を変える方法が報告されている。例えば、分子鎖末端を長鎖アルキル基で変性したPC共重合体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、この方法によって得た末端変性PC共重合体は、流動性向上に働く部位が分子鎖末端部だけであるため、長鎖アルキル基の導入量に限界があり、流動性向上の大きさが十分とは言えないレベルであった。
また、特許文献2にはポリテトラメチレングリコール-ビス(4-ヒドロキシベンゾエート)を共重合したポリカーボネート共重合体が知られている。この共重合体は成形時の流動性が著しく改良されている上に、熱安定性に優れるため、成形原料として幅広い成形条件に対応でき、結果として良好な光学成形品を得ることが可能なことが知られている。
しかしながら、上記特許文献2に記載されているポリテトラメチレングリコール-ビス(4-ヒドロキシベンゾエート)を共重合によりポリカーボネート共重合体を連続的に製造し、この共重合体を320℃を超える高温の成形条件下で使用したときに黄変が生じる問題がある。
一般に各種のポリカーボネート共重合体の黄変原因はコモノマーに由来する不純物がポリカーボネート共重合体に残留することが原因であることが多い。しかし、各共重合体ごとに使用するコモノマーやその使用状況が異なるため、原因となる不純物や使用方法もコモノマー毎に異なり、それが各種のポリカーボネート共重合体の黄変課題解決を困難としている(特許文献3〜6)。
(1)下記一般式(I)および(II)
で表される繰り返し単位を有し、スズ含有量(元素として)が0.5ppm以下であることを特徴とするポリカーボネート共重合体、
(2)スズ系触媒の存在下で合成し、リン酸水溶液または固形吸着剤で処理したフェノール変性ジオールをコモノマーとして用いることを特徴とする上記(1)に記載のポリカーボネート共重合体の製造方法、
(3)前記フェノール変性ジオール中のスズ含有量(元素として)が10ppm以下である上記(2)に記載のポリカーボネート共重合体の製造方法。
(4)上記(1)のポリカーボネート共重合体100質量部および酸化防止剤0.01〜0.5質量部を含むポリカーボネート樹脂組成物、
(5)成形品のイエローインデックス(YI)が1.5以下である上記(4)に記載のポリカーボネート樹脂組成物および
(6)上記(4)又は(5)に記載の樹脂組成物を成形してなる成形品を提供する。
具体的には、例えば、塩化メチレンなどの不活性溶媒中において、公知の酸受容体や分子量調節剤の存在下、さらに必要に応じて触媒や分岐剤を添加し、二価フェノール、フェノール変性ジオール及びホスゲン等のカーボネート前駆体を反応させる。PC共重合体は、下記一般式(I)及び(II)で表わされる繰り返し単位を有する。
R3およびR4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基を挙げることができる。
さらに、R1およびR2はそれぞれ独立してシクロペンチル基やシクロヘキシル基のような環状の炭化水素基であってもよい。
Xの炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチリレン基、ヘキシレン基などが挙げられる。
Xの炭素数2〜8のアルキリデン基としては、例えばエチリデン基、イソプロピリデン基などが挙げられる。
Xの炭素数5〜15のシクロアルキレン基としては、例えばシクロペンチレン基、シクロヘキシレン基などが挙げられる。Xの炭素数5〜15のシクロアルキリデン基としては、例えばシクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基などが挙げられる。
上記一般式(Ia)で表される二価フェノールとしては、様々なものがあるが、特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[通称:ビスフェノールA]が好適である。ビスフェノールA以外のビスフェノールとしては、例えば、ビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、ビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、ジヒドロキシアリールエーテル類、ジヒドロキシジアリールスルフィド類、ジヒドロキシジアリールスルホキシド類、ジヒドロキシジアリールスルホン類、ジヒドロキシジフェニル類、ジヒドロキシジアリールフルオレン類、ジヒドロキシジアリールアダマンタン類、その他、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、10,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロン、1,5−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−2,3−ジオキサペンタエン及びα,ω−ビスヒドロキシフェニルポリジメチルシロキサン化合物などが挙げられる。これらの二価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において用いられるフェノール変性ジオールは、下記一般式(IIa)で表わされる。
R3およびR4で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。R3が複数ある場合、複数のR3は互いに同一でも異なっていてもよく、R4が複数ある場合、複数のR4は互いに同一でも異なっていてもよい。Yで示される炭素数2〜15の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基及びイソペンチレン基などのアルキレン基、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基及びイソペンチリデン基などのアルキリデン残基が挙げられる。nは2〜200であることが好ましく、より好ましくは6〜70である。
上記一般式(IIa)で表されるフェノール変性ジオールは下記一般式(IV)または一般式(V)
上記一般式(V)および一般式(IV)中、R3は炭素数1〜3のアルキル基を示す。cは0〜4の整数である。炭素数1〜3のアルキル基は前記のものである。
一般式(V)中、R4は、炭素数1〜3のアルキル基を示し、R5は炭素数1〜10のアルキル基を示す。dは0〜4の整数である。炭素数1〜10のアルキル基としては、上述した炭素数1〜3のアルキル基に加えて、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基などが挙げられる。
上記一般式(IV)で表されるヒドロキシ安息香酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸(サリチル酸)、及びそれらベンゼン環上に炭素数1〜3のアルキル基が置換したものなどが挙げられる。
上記一般式(V)で表わされるヒドロキシ安息香酸のアルキルエステルは、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル及びp−ヒドロキシ安息香酸n−プロピルエステルなどが代表例である。
ポリエーテルジオールのエーテル部の繰返し数nは2〜200、好ましくは6〜70であるものが好ましい。nが2以上であると、フェノール変性ジオールを共重合する際の効率が良く、nが70以下であると、PC共重合体の耐熱性の低下が小さいという利点がある。
スズ系触媒の使用量は、ヒドロキシ安息香酸類またはヒドロキシ安息香酸アルキルエステル類に対して、通常、0.01〜10質量%程度であり、好ましくは0.05〜5質量%程度、さらに好ましくは0.1〜3質量%程度である。0.01質量%以上とすることにより充分な反応活性が得られ、10質量%以下とすることにより副反応を抑制し、かつ、後で述べるリン酸水溶液または固形吸着剤の使用量を少なくすることができ、得られるフェノール変性ジオール中のスズ含有量をより少なくすることができる。
これらの方法により得られるフェノール変性ジオールを精製してスズ含有量を低減させることが必要である。具体的には、フェノール変性ジオールを含む反応粗液をリン酸水溶液または固形吸着剤で洗浄する精製方法により、フェノール変性ジオール中のスズ含有量を低減させることができ、このフェノール変性ジオールを用いた前記のような界面重合法によりスズ含有量(元素として)が0.5ppm以下の本発明のポリカーボネート共重合体を得ることができる。
リン酸水溶液による処理においては、エステル化反応またはエステル交換反応で得られた粗反応生成物をリン酸と非混和性の有機溶媒、たとえば塩化メチレンのような有機溶媒で希釈し、液−液抽出によりスズ系触媒由来のスズ化合物のような不純物をリン酸層に抽出させることにより目的化合物中の含有量を低減させることができる。リン酸水溶液の濃度は0.5〜40質量%とするのが好ましく、さらに好ましくは1.0〜10質量%、最も好ましくは2〜5質量%である。リン酸濃度を0.5質量%以上とすることによりスズ化合物のような不純物の抽出効率が確保される。リン酸濃度を10質量%以下とすることにより高濃度のリン含有排水が生じるのを防止して環境保護に配慮し、かつ、リン酸水溶液を必要以上に使用することによる経済性の低下を防止する。
使用するリン酸水溶液の容量は、全容量中、26容量%以下が好ましい。26容量%以下とすることにより、液−液抽出時に有機層が分散相、リン酸水溶液が連続相となることによりスズ系触媒由来のスズ化合物の抽出効率が低下するのを防止する。フェノール変性ジオール中のスズ含有量(元素として)は10ppm以下、好ましくは5ppm以下である。
固形吸着剤としては、活性白土、酸性白土、イオン交換樹脂、キレート樹脂、活性炭、シリカ・マグネシア・アルミナ等から成る複合吸着剤が使用可能である。
吸着剤の市販品としては、例えば、ミズカライフF−2G〔水澤化学工業(株)製、シリカ・マグネシア系吸着剤〕、ミズカライフP−1〔同社製、シリカ・マグネシア系吸着剤〕、ガレオンアースV2〔同社製、活性白土系吸着剤〕、ミズカソーブC−1〔同社製、シリカ系吸着剤〕、SA−1〔日本活性白土社製、活性白土系吸着剤〕、R15〔日本活性白土社製、活性白土系吸着剤〕、キョーワードKW700SL〔協和化学工業社製、シリカアルミナ系吸着剤〕、白鷺A〔日本エンバイロケミカルズ社製、活性炭系吸着剤〕、CR11〔日本錬水社製、キレート樹脂〕が挙げられる。特に、ミズカライフF−2G〔水澤化学工業(株)製〕、ミズカライフP−1〔同〕がスズ化合物の吸着性能に優れるため好ましい。
固形吸着剤による処理操作の場合は、固形吸着剤を塔内に充填し、その充填層中に粗反応生成物を通過させてスズ系触媒由来のスズ化合物のような不純物を吸着させて行なってもよい。
また、不純物であるヒドロキシ安息香酸類を効率よく除去するため、上記リン酸水溶液による処理操作または固形吸着剤による処理操作の前処理として弱アルカリ水溶液による抽出を行なってもよい。
弱アルカリ水溶液はpHが8〜11、好ましくは8〜10のものを用いることが好ましい。pHが8より小さいとヒドロキシ安息香酸類の抽出が不足し、pHが11より大きいとコモノマーが加水分解する。
上記弱アルカリ性水溶液としては、アルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)やアルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウムなど)の水酸化物や炭酸塩、炭酸水素塩などの水溶液を用いることができる。
PC共重合体において、フェノール変性ジオールの共重合量を増やせば流動性は改善されるが耐熱性が低下する。したがって、フェノール変性ジオールの共重合量は所望の流動性と耐熱性のバランスにより選択することが好ましい。フェノール変性ジオール共重合量が40質量%を超えると特開昭62−79222号公報に示されるように、エラストマー状となり、一般のPC樹脂と同様の用途への適用ができなくなるおそれがある。100℃以上の耐熱性を保持するにはPC共重合体中に含まれるフェノール変性ジオール残基の量は、本発明においては1〜30質量%であり、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは1〜15質量%である。
本発明のPC共重合体は、280℃における流れ値(Q値)が30×10-2mL/秒以上であることが好ましく、40×10-2mL/秒以上がより好ましい。流れ値(Q値)とは、JIS K7210に準拠し、高架式フローテスターで測定した溶融粘度であり、流れ値(Q値)が30×10-2mL/秒以上であると、PC共重合体の溶融粘度が高くなりすぎることがない。後述するPC共重合体組成物においても同様である。
酸化防止剤としては、アリールホスフィン系、亜リン酸エステル系、リン酸エステル系、ヒンダードフェノール系等が挙げられる。
さらに、本発明のPC共重合体組成物は、スズ含有量(元素として)が0.5ppm以下の他のPC樹脂を混合した組成物としてもよい。
また、これらのPC共重合体組成物を導光板や光学レンズなどに用いるときは、光線透過率を上げる目的で、分子量が1000〜10万程度のアクリル系樹脂を配合することが好ましく、このアクリル系樹脂に加えて、脂環式エポキシ化合物又はアルコキシ基、ビニル基及びフェニル基から選ばれる一種以上を有するポリシロキサン化合物を配合したPC系樹脂組成物とすることがより好ましい。
本発明のPC共重合体に配合する他のPC樹脂としては、市販されているスズ含有量(元素として)が0.5ppm以下のPC樹脂を用いることができる。他のPC樹脂の配合量は、本発明の効果を損なわない点から、PC共重合体100質量部に対し300質量部以下が好ましく、10〜200質量部がより好ましい。
アクリル系樹脂は、分子量が1000〜10万程度であり、好ましくは2万〜6万である。分子量が1000〜10万であると、成形時に、PC共重合体及び他のPC樹脂と、アクリル系樹脂間の相分離が速くなりすぎることがないので、成形品において十分な透明性が得られる。ポリメタクリル酸メチル(PMMA)としては公知のものを使用することができるが、通常、過酸化物、アゾ系の重合開始剤の存在下、メタクリル酸メチルモノマ−を塊状重合して製造されたものが好ましい。
アクリル系樹脂の配合量は、本発明のPC共重合体、又は本発明のPC共重合体に他のPC樹脂を混合したPC共重合体組成物100質量部に対し、通常0.01〜1質量部程度であり、好ましくは0.05〜0.5質量部、より好ましくは0.1〜0.3質量部である。アクリル系樹脂の配合量が0.01質量部以上であると、成形品の透明性が向上し、1質量部以下であると、他の所望物性を損なうことなく透明性を保持することができる。
撹拌機、温度計、還流冷却器、原料供給口、ガス導入管を有する反応容器中に窒素を導入し、ポリテトラメチレングリコール〔PTMG、Mn(数平均分子量)=2000〕100質量部とp−ヒドロキシ安息香酸メチル15.8質量部およびスズ系触媒としてジブチル錫オキシド0.05質量部を供給して220℃に加熱し、生成するメタノールを留去しながらエステル交換反応を行った。反応終了後、反応系内を減圧にし、過剰のp−ヒドロキシ安息香酸メチルを留去して粗反応生成物を得た。
粗反応生成物を塩化メチレンに溶解し濃度20質量%の溶液とした。この塩化メチレン溶液80容量部に0.1モル%炭酸水素ナトリウム水溶液20容量部を加え、バッフル付攪拌槽にて20℃で30分間攪拌混合し、反応で生成した不純物であるp−ヒドロキシ安息香酸を水相に抽出した後、静置分離により塩化メチレン相を採取した。
塩化メチレン相75容量部に3.5質量%リン酸水溶液25容量部を加え、バッフル付攪拌槽にて20℃で180分間攪拌しながら混合し、スズ系触媒由来のスズ化合物を水相に抽出した後、静置分離により塩化メチレン相を採取した。
再度、塩化メチレン相75容量部に3.5質量%リン酸水溶液25容量部を加え、バッフル付攪拌槽にて20℃で180分間攪拌混合し、スズ系触媒由来のスズ化合物を水相に抽出した後、静置分離により塩化メチレン相を採取した。
塩化メチレン相中の微量リン酸を除去するため、塩化メチレン相75容量部に純水25容量部を加え、バッフル付攪拌槽にて20℃で60分間攪拌混合しリン酸を水相に抽出した後、静置分離により塩化メチレン相を採取した。
塩化メチレン相を減圧下で濃縮し、フェノール変性ジオールであるポリテトラメチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)〔以下、PTMG-BHBと略して記載する〕を得た。
下記のHPLC(高速液体クロマトグラフィー)による定量、スズの定量およびリン酸イオンの定量により、PTMG-BHB中のp−ヒドロキシ安息香酸は10質量ppm未満、p−ヒドロキシ安息香酸メチルは0.2質量%、スズ(元素として、以下同じ)は2ppm未満、リン(元素として、以下同じ)は3ppmであることが確認された。
Mn=2000のPTMGの代わりに、ポリテトラメチレングリコール(Mn=1000)を用い、p−ヒドロキシ安息香酸メチルを31.6質量部とした以外は、それぞれ製造例1と同様にして、PTMG-BHBを得た。下記のHPLC(高速液体クロマトグラフィー)による定量、スズの定量およびリン酸イオンの定量により、PTMG-BHB中のp−ヒドロキシ安息香酸は10質量ppm未満、p−ヒドロキシ安息香酸メチルは0.2質量%、スズは2ppm未満、リンは2ppm未満であることが確認された。
3.5質量%リン酸水溶液の代わりに1.0質量%リン酸水溶液とした以外は、製造例1と同様にして、PTMG-BHBを得た。下記のHPLC(高速液体クロマトグラフィー)による定量、スズの定量およびリン酸イオンの定量により、PTMG-BHB中のp−ヒドロキシ安息香酸は10質量ppm未満、p−ヒドロキシ安息香酸メチルは0.2質量%、スズは10ppm、リンは2ppm未満であることが確認された。
3.5質量%リン酸水溶液の代わりに5.0質量%リン酸水溶液とした以外は、それぞれ製造例1と同様にして、PTMG-BHBを得た。下記のHPLC(高速液体クロマトグラフィー)による定量、スズの定量およびリン酸イオンの定量により、p−ヒドロキシ安息香酸は10質量ppm未満、p−ヒドロキシ安息香酸メチルは0.2質量%、スズは5ppm、リンは4ppmであることが確認された。
過剰のp−ヒドロキシ安息香酸メチルを留去するまでは実施例1と同様に行って粗反応生成物を得た。
粗反応生成物を塩化メチレンに溶解し濃度20質量%の溶液とし、これにミズカライフF−2G〔水澤化学工業(株)製〕5質量%を加え、20℃で3時間攪拌しながら混合してスズ化合物を吸着させた後、孔径0.2μmのメンブランフィルターを用いて減圧ろ過によりF−2Gをろ別した。
得られた塩化メチレン溶液80容量部に0.1モル%炭酸水素ナトリウム水溶液20容量部を加え、バッフル付攪拌槽にて20℃で30分間攪拌混合し、反応で生成した不純物であるp−ヒドロキシ安息香酸を水相に抽出した後、静置分離により塩化メチレン相を採取した。
塩化メチレン相中の微量のナトリウムを除去するため、塩化メチレン相75容量部に純水25容量部を加え、バッフル付攪拌槽にて20℃で60分間攪拌混合しナトリウムを水相に抽出した後、静置分離により塩化メチレン相を採取した。
塩化メチレン相を減圧下で濃縮し、フェノール変性ジオールであるPTMG-BHBを得た。下記のHPLC(高速液体クロマトグラフィー)による定量およびスズの定量により、PTMG-BHB中のp−ヒドロキシ安息香酸は10質量ppm未満、p−ヒドロキシ安息香酸メチルは0.2質量%、スズは5ppmあることが確認された。
リン酸水溶液によるスズ系触媒由来のスズ化合物の抽出を行なわない以外は、それぞれ製造例1と同様にして、PTMG-BHBを得た。下記のHPLC(高速液体クロマトグラフィー)による定量およびスズの定量により、PTMG-BHB中のp−ヒドロキシ安息香酸は10質量ppm未満、p−ヒドロキシ安息香酸メチルは0.3質量%、スズは190ppmあることが確認された。
3.5質量%リン酸水溶液の代わりに0.5質量%リン酸水溶液とした以外は、それぞれ製造例1と同様にして、PTMG-BHBを得た。下記のHPLC(高速液体クロマトグラフィー)およびスズの定量により、PTMG-BHB中のp−ヒドロキシ安息香酸は10質量ppm未満、p−ヒドロキシ安息香酸メチルは0.3質量%、スズは70ppm、リンは2ppm未満であることが確認された。
下記の条件のHPLC(高速液体クロマトグラフィー)により、p−ヒドロキシ安息香酸及びp−ヒドロキシ安息香酸メチルの標準品により作成した検量線に基づいて定量した。
カラム:GLサイエンス社製ODS−3
カラム温度:40℃
溶媒:0.5質量%リン酸水溶液とアセトニトリルの混合液(容量比1:2)
流速:1.0ミリリットル/分
(1)試料の前処理
白金るつぼにPTMG-BHBの1.0グラムを秤量し、これに濃硫酸0.8ミリリットルを添加し加熱乾固させた後、550℃で10時間処理して灰化した。
硫酸水素カリウム 0.5グラムを加えてバーナーで加熱した後、6モル/リットルの塩酸3ミリリットルを加えて加温し灰分を酸分解溶解した。
(2)測定
上記酸分解溶液を放冷後、溶液を25ミリリットルに定容し、これを更に5倍に希釈した溶液をICP−OES(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析)装置〔エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、SPS5100〕で定量した。発光分光分析はJIS K0116に準拠している。
<ポリカーボネート中のスズの定量>
(1)試料の前処理
白金皿にポリカーボネート3.0グラムを秤量し、これに濃硫酸3.0ミリリットルを添加し加熱乾固させた後、550℃で10時間処理して灰化した。
四ほう酸リチウム無水物とフッ化リチウムを質量比9:1で配合した配合物を0.1グラム加えて930℃で30分処理した後、酒石酸の硝酸水溶液(酒石酸5グラム、硝酸40ml、水500mlを混合溶解し、これにさらに水を加えて全体を1000mlに定容したもの)15mlを加えて加熱撹拌し、アルカリ融解溶液を調製した。
(2)測定
上記アルカリ溶液を放冷後25mlに定容し、これを更に2.5倍に希釈した溶液をICP−OES装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製 SPS5100)で定量した。発光分光分析はJIS K0116に準拠している。
PTMG-BHBの10gを、容量200mlのテフロン(登録商標)製スキーブロートに秤量採取した。
100mlの精製メチレンクロライド(※1)を加えて、振とうによりPTMG-BHBを溶解した。これに純水10mlを加えて、振とう機を使用し240回/分の速さで30分間振とうし、試料中のリン酸イオンを水中に抽出した。
静置して有機層と水層に分離した後、水層を採取し、イオンクロマトグラフ装置〔Dionex corp.製、DX−120〕でリン酸イオン量を定量した。標準液にはリン酸標準液を使用した。
イオンクロマトグラフはJIS K0127に準拠している。
※精製メチレンクロライド:メチレンクロライドと純水をテフロン(登録商標)製スキーブロートにとり振とうによりメチレンクロライドを純水で洗浄した。この操作は抽出後の純水をイオンクロマトグラフ装置にて分析しリン酸イオンが検出されなくなるまで実施した。得られたメチレンクロライドを精製メチレンクロライドとして使用した。
(1)ポリカーボネート(PC)オリゴマー合成工程
濃度5.6質量%水酸化ナトリウム水溶液に、後に溶解するビスフェノールA(BPA)に対して2000質量ppmの亜二チオン酸ナトリウムを加え、ここにBPA濃度が13.5質量%になるようにBPAを溶解し、BPAの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。内径6mm、管長30mの管型反応器に、上記BPAの水酸化ナトリウム水溶液を40リットル/時及び塩化メチレンを15リットル/時の流量で連続的に通すと共に、ホスゲンを4.0kg/時の流量で連続的に通した。管型反応器はジャケット部分を有しており、ジャケットに冷却水を通して反応液の温度を40℃以下に保った。
管型反応器から送出された反応液は、後退翼を備えた内容積40リットルのバッフル付き槽型反応器へ連続的に導入され、ここにさらにBPAの水酸化ナトリウム水溶液を2.8リットル/時、25質量%水酸化ナトリウム水溶液を0.07リットル/時、水を17リットル/時、1質量%トリエチルアミン水溶液を0.64リットル/時の流量で供給し、29〜32℃で反応を行った。槽型反応器から反応液を連続的に抜き出し、静置することで水相を分離除去し、塩化メチレン相を採取した。このようにして得られたポリカーボネートオリゴマー溶液は、オリゴマー濃度329g/リットル、クロロホーメート基濃度0.74モル/リットルであった。
上記合成工程で得られたPCオリゴマー20リットル/時、塩化メチレン12リットル/時、合成例1で得られたPTMG-BHBの40質量%塩化メチレン溶液868kg/時、3質量%トリエチルアミン水溶液400ミリリットル/時及び6.4質量%水酸化ナトリウム水溶液2.3kg/時の流量で、T.Kパイプラインホモミクサー2SL型〔プライミクス(株)製〕に供給し、3000rpmの回転下で予備重合を行い、予備重合液を得た。
続いて、この予備重合液とPTBP(p-tert-ブチルフェノール)の20質量%塩化メチレン溶液960g/時、6.4質量%水酸化ナトリウム水溶液にBPAを溶解して8.8質量%の濃度にした水溶液14.1kg/時を、T.Kパイプラインホモミクサー2SL型[プライミクス(株)製]に供給し、3000rpmの回転下で乳化させ、乳化液を得た。続いて、この乳化液を第二反応器である直径0.8mmの孔3個を有するオリフィスプレート2枚を19.05mm(3/4インチ)の配管に挿入したジャケット付きオリフィスミキサーに導入し、さらに第三反応器としてジャケット付きの50リットルのパドル翼三段の塔型攪拌槽に供給し、重合を行った。ジャケットには15℃の冷却水を流し、重合液の出口温度を30℃とした。
パドル型攪拌翼を備えた50リットルの希釈槽に、上記塔型反応器から溢れ出る重合液、及び希釈のための塩化メチレンを11リットル/時で連続供給した。続いて、希釈槽から得られるエマルジョンをK.C.C遠心抽出機〔商品名、川崎重工(株)製、内容積4リットル、ローター径430mm〕に導入して回転数3000rpmで遠心抽出を行い、水層と有機層とを分離した。
上記遠心抽出機から得られた有機層及び0.03モル/リットル水酸化ナトリウム水溶液7.8リットル/時をT.Kパイプラインホモミクサー2SL型[プライミクス(株)製]に供給し、3000rpmで攪拌混合を行った。ホモミクサー出口からの混合液を遠心抽出機に導入して回転数3000rpmで遠心抽出を行い、水層と有機層とを分離した。続いて、希釈槽から得られるエマルジョンをK.C.C遠心抽出機[商品名、川崎重工(株)製、内容積4リットル、ローター径430mm]に導入して回転数3000rpmで遠心抽出を行い、水層と有機層とを分離し、有機層は続く酸洗浄工程へ供給した。
アルカリ洗浄工程の遠心抽出機から得られた有機層及び0.2モル/リットルの塩酸水溶液7.8リットル/時をT.Kパイプラインホモミクサー2SL型〔プライミクス(株)製〕に供給し、3000rpmで攪拌混合を行った。ホモミクサー出口からの混合液は静置分離槽に導入し、水層と有機層とを分離し、有機層は続く第一水洗工程へ供給した。
遠心抽出機から得られる有機層及び純水7.8リットル/時をT.Kパイプラインホモミクサー2SL型〔プライミクス(株)製〕に供給し、3000rpmで攪拌混合を行った。ホモミクサー出口からの混合液を遠心抽出機に導入して回転数3000rpmで遠心抽出を行い、水層と有機層を分離し、有機層は続く第二水洗工程へ供給した。
遠心抽出機から得られる有機層及び純水7.8リットル/時をT.Kパイプラインホモミクサー2SL型〔プライミクス(株)製〕に供給し3000rpmで攪拌混合を行った。ホモミクサー出口からの混合液を遠心抽出機に導入して回転数3000rpmで遠心抽出を行い、水層と有機層とを分離し、精製ポリカーボネート塩化メチレン溶液(有機層)を得た。
精製ポリカーボネート塩化メチレン溶液を濃縮・粉砕し、得られたフレークを減圧下105℃で乾燥させた。得られたポリカーボネート共重合体の性状は下記の通りであった。NMRにより求めたPTMG-BHB残基の量は、4.0質量%であった。ISO1628−4(1999)に準拠して測定した粘度数は37.0(Mv=13100)であった。
製造例1で得られたPTMG-BHBの40質量%塩化メチレン溶液868kg/時の代わりに製造例2で得られたPTMG-BHBの40質量%塩化メチレン溶液434kg/時とした以外は実施例P−1と同様にしてポリカーボネート共重合体を得た。
製造例1で得られたPTMG-BHBの代わりに製造例3〜7で得られたPTMG-BHBを用いた以外は実施例P−1と同様にしてポリカーボネート共重合体を得た。実施例P-1〜P-5および比較例P−1、P−2で得られたポリカーボネート共重合体の物性を表1に示した。
実施例P−1で得られたポリカーボネート共重合体100質量部、酸化防止剤としてアデカスタブPEP-36〔商品名、(株)ADEKA製〕を0.05質量部配合し、ベント付き40mmφの押出機によって樹脂温度260℃で造粒しペレットを得た。得られたペレットを用い、35mm×25mm×2mmの平板を下記の成形条件で射出成形した。
<成形条件>
成形機:東芝機械(株)製、EC40N(商品名)
成形機シリンダー温度:340℃
シリンダー内滞留時間:10分
13ショット目以降の成形品を5枚採取し、それぞれを用いてイエローインデックス(YI)を測定し、その平均値を求めた。結果を表2に示す。YIの測定方法は以下の通りである。
<YI>
射出成形により2.0mm厚の成形品を作製し、日本電色工業(株)製の分光測色計Σ90
で測定面積30φ、C2光源の透過法で測定した。
実施例P−2〜P−5で得られたポリカーボネート共重合体75質量部、タフロンFN1500〔商品名、出光興産(株)製のBis−Aポリカーボネート、VN=39.5〕を25質量部、酸化防止剤としてアデカスタブPEP-36〔商品名、(株)ADEKA製〕を0.05質量部配合し、ベント付き40mmφの押出機によって樹脂温度260℃で造粒しペレットを得た。その他は応用例1と同様にしてYIを測定した。
実施例P−1で得られたポリカーボネート共重合体の代わりに比較例P−1〜P−2で得られたポリカーボネート共重合を用いた以外は応用例1と同様に行い、ペレットを得てYIを測定した。
実施例P−1で得たポリカーボネート共重合体体75質量部とタフロンFN1500〔商品名、出光石油化学(株)製のBis−Aポリカーボネート、VN=39.5〕を25質量部、酸化防止剤としてアデカスタブPEP−36〔商品名、(株)ADEKA製〕を0.05質量部、ダイヤナールBR83〔商品名、三菱レーヨン(株)製、アクリル系樹脂、分子量40000〕0.1質量部、KR511(商品名、信越シリコーン(株)製、メトキシ基およびビニル基を有するオルガノシロキサン)0.1質量部、セロキサイド2021P〔商品名、ダイセル化学工業(株)製の前記式(1)で表わされる脂環式エポキシ樹脂〕0.05質量部を配合し、ベント付き40mmφの押出機によって樹脂温度260℃で造粒しペレットを得た。
得られたペレットを用い、応用例1と同様にYIを測定した。YIは0.9であった。
Claims (6)
- スズ系触媒の存在下(但し、チタン系触媒及びマグネシウム系触媒の不存在下)でのヒドロキシ安息香酸またはそのアルキルエステルとポリエーテルジオールとのエステル化反応またはエステル交換反応により得られる下記一般式(IIa)で表されるフェノール変性ジオール
で表される繰り返し単位を有し、スズ含有量(元素として)が0.5ppm以下であることを特徴とするポリカーボネート共重合体。 - スズ系触媒の存在下で合成し、リン酸水溶液または固形吸着剤で処理した一般式(IIa)で表されるフェノール変性ジオール
で表される繰り返し単位を有し、スズ含有量(元素として)が0.5ppm以下であるポリカーボネート共重合体の製造方法。 - 前記フェノール変性ジオール(IIa)中のスズ含有量(元素として)が10ppm以下である請求項2に記載のポリカーボネート共重合体の製造方法。
- 請求項1のポリカーボネート共重合体100質量部および酸化防止剤0.01〜0.5質量部を含むポリカーボネート樹脂組成物。
- 成形品のイエローインデックス(YI)が1.5以下である請求項4記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項4又は5に記載の樹脂組成物を成形してなる成形品。
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