JP5652831B2 - ポリ乳酸微粒子の製造方法、ポリ乳酸微粒子、並びにこれを用いた結晶核剤、成形体、及び表面改質剤 - Google Patents

ポリ乳酸微粒子の製造方法、ポリ乳酸微粒子、並びにこれを用いた結晶核剤、成形体、及び表面改質剤 Download PDF

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Description

本発明は、ポリ乳酸微粒子の製造方法、ポリ乳酸微粒子、並びにこれを用いた結晶核剤、成形体、及び表面改質剤に関する。
近年、石油から合成される従来の合成樹脂に対して、植物成分を原料としたバイオマス樹脂が注目され、種々の検討が行われている。このような植物由来樹脂は廃棄時に焼却しても、発生する二酸化炭素を再び植物が光合成し、原料となる点でカーボンニュートラルであり、これを従来の合成樹脂に置き換えていくことは地球温暖化の防止に繋がると期待される材料である。このような生物由来樹脂としては、例えば、ポリヒドロキシブチレートやポリ乳酸等が知られている。なかでもポリ乳酸は、トウモロコシ等の植物原料から得られる乳酸あるいはラクチドなどを原料にできる点、熱可塑性であるので溶融成形が可能である点などの利点があり、注目されている。
しかしながら、植物原料由来のポリ−L−乳酸(以下、「PLLA」と称する場合がある)から得られるα晶は、融点が170℃と低温であり、樹脂成形体や合成繊維として応用するために耐熱性の向上が求められている。また、α晶は、加水分解性が高いことからも、部材として用いる際の課題となっている。
一方、ポリ乳酸としては、光学異性体であるL−乳酸単位のみからなる上記PLLAと、D−乳酸単位のみからなるポリ−D−乳酸(以下、「PDLA」と称する場合がある)が存在する。そして、PLLAとPDLAとが1:1で交互にパッキングしたステレオコンプレックス晶(以下、「Sc晶」と称する場合がある)は、融点230℃と顕著に高く、耐加水分解性を有しており、エンジニアリングプラスチックとしての可能性を有している。上記Sc晶は、例えば、PLLAとPDLAとを、溶液あるいは溶融状態で混合することにより形成されることが知られている(特許文献1、非特許文献1および2参照)。また、上記Sc晶を、ポリ−L−乳酸の結晶化を促進する結晶核剤として用いる試みもなされている(例えば特許文献2参照)。
特開昭63−241024号公報 特開2005−290257公報
Macromolecules, 第24巻,P5651−5656 (1991年) Polymer 第49巻、P5670−5675 (2008年)
上記のように、ポリ乳酸のステレオコンプレックス晶の粒子を結晶核剤として用いる場合、均一に結晶化され、強靭で、かつ、透明度の高い結晶を形成するためには、粒径が小さく、かつ、上記ステレオコンプレックス晶の割合が高いポリ乳酸粒子を結晶核剤として用いることが望まれる。しかしながら、例えばポリ−L−乳酸及びポリ−D−乳酸を等量で溶解させた溶液を、ポリ乳酸に対する貧溶媒(後述)中に滴下してステレオコンプレックス晶を得る方法では、形成された粒子の粒径は1μm以上となってしまう上に、上記ステレオコンプレックス晶の割合が高い粒子を直接得ることは難しい。このように、従来の方法では粒径の小さく、かつ、上記ステレオコンプレックス晶の割合が高いポリ乳酸微粒子を得ることが困難であった。
本発明は、粒径が小さく、かつ、ポリ−L−乳酸及びポリ−D−乳酸のステレオコンプレックス晶を多く含むポリ乳酸の微粒子を製造できるポリ乳酸微粒子の製造方法が求められる。また、ポリ−L−乳酸及びポリ−D−乳酸のステレオコンプレックス晶を含むポリ乳酸微粒子を原料とすることにより透明度や強度が高いポリ乳酸成形体が得られるポリ乳酸微粒子、並びにこれを用いた結晶核剤、成形体、及び表面改質剤を提供することが求められる。
上記課題は、以下の手段によって解決される。すなわち、
請求項1に係る発明は、
直径が0.5nm以上500nm以下の細孔を有する透過膜で区画された2つの液体収容部を有する透過装置の、一方の液体収容部に、L−乳酸に由来する構造単位及びD−乳酸に由来する構造単位を含む高分子化合物を第1の溶媒に溶解してなる高分子化合物溶液を収容し、他方の液体収容部に、前記高分子化合物に対する貧溶媒である第2の溶媒を収容する準備工程と、
前記一方の液体収容部に収納された前記高分子化合物溶液を、1×10−3mL/(min・cm)以上10000mL/(min・cm)以下の流速で前記透過膜を透過させることで、前記高分子化合物溶液を前記第2の溶媒に接触させる透過工程と、を有するポリ乳酸微粒子の製造方法。
である。
請求項2に係る発明は、
さらに、前記準備工程に先立って、前記透過膜を予め液体に接触させ、前記透過膜の前記細孔内の気体を液体に置換する透過膜湿潤工程を有する、請求項1に記載のポリ乳酸微粒子の製造方法である。
請求項3に係る発明は、
前記高分子化合物が、ポリ−L−乳酸の単独重合体とポリ−D−乳酸の単独重合体との混合物である、請求項1又は請求項2に記載のポリ乳酸微粒子の製造方法である。
請求項4に係る発明は、
ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とのステレオコンプレックス結晶の成分を含み、ポリ乳酸の全結晶成分に対する前記ステレオコンプレックス結晶の成分の割合が50%以上100%以下であり、かつ、個数平均粒径が0.5nm以上500nm以下である、ポリ乳酸微粒子である。
請求項5に係る発明は、
ポリ乳酸の非晶成分及び前記全結晶成分の合計に対する前記全結晶成分の割合が10%以上である、請求項4に記載のポリ乳酸微粒子である。
請求項6に係る発明は、
請求項4又は請求項5に記載のポリ乳酸微粒子からなる結晶核剤である。
請求項7に係る発明は、
請求項4又は請求項5に記載のポリ乳酸微粒子を含む成形体である。
請求項8に係る発明は、
請求項4又は請求項5に記載のポリ乳酸微粒子を含む表面改質剤である。
請求項9に係る発明は、
直径が0.5nm以上500nm以下の細孔を有する透過膜で区画された2つの液体収容部を有する透過装置の、一方の液体収容部に、L−乳酸に由来する構造単位及びD−乳酸に由来する構造単位を含む高分子化合物を第1の溶媒に溶解してなる高分子化合物溶液を収容し、他方の液体収容部に、前記高分子化合物に対する貧溶媒である第2の溶媒を収容して、前記一方の液体収容部に収納された前記高分子化合物溶液を、1×10−3mL/(min・cm)以上10000mL/(min・cm)以下の流速で前記透過膜を透過させることで、前記高分子化合物溶液を前記第2の溶媒に接触させて成り、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とのステレオコンプレックス結晶の成分がポリ乳酸の全結晶成分に対して50%以上100%以下であり、かつ、個数平均粒径が0.5nm以上500nm以下である、ポリ乳酸微粒子である。
請求項10に係る発明は、
請求項9に記載のポリ乳酸微粒子からなる結晶核剤である。
請求項10に係る発明は、
請求項9に記載のポリ乳酸微粒子を含む成形体である。
請求項11に係る発明は、
請求項9に記載のポリ乳酸微粒子を含む表面改質剤である。
本発明によれば、粒径が小さく、かつ、ポリ−L−乳酸及びポリ−D−乳酸のステレオコンプレックス晶を多く含むポリ乳酸の微粒子を製造できるポリ乳酸微粒子の製造方法が提供される。さらに、本発明によれば、ポリ−L−乳酸及びポリ−D−乳酸のステレオコンプレックス晶を含むポリ乳酸微粒子を原料とすることにより、強度や透明度が高いポリ乳酸成形体が得られるポリ乳酸微粒子、並びにこれを用いた結晶核剤、成形体、及び表面改質剤が提供される。
図1は、ポリ乳酸微粒子の製造方法に用いる装置の一例を模式的に示す模式図である。 図2は、ポリ乳酸微粒子からなるフィルムの製造方法の一例を表す概念図である。 図3は、実施例1で得られたポリ乳酸微粒子のSEM画像である。 図4aは、実施例2で得られたポリ乳酸微粒子のSEM画像である。 図4bは、実施例2で得られたポリ乳酸微粒子のSEM画像である。 図4cは、実施例2で得られたポリ乳酸微粒子のSEM画像である。 図4dは、実施例2で得られたポリ乳酸微粒子の粒度分布を表す棒グラフである。 図5aは、実施例3で得られたポリ乳酸微粒子のSEM画像である。 図5bは、実施例3で得られたポリ乳酸微粒子のSEM画像である。 図5cは、実施例3で得られたポリ乳酸微粒子の粒度分布を表す棒グラフである。 図6aは、比較例1で得られたポリ乳酸微粒子のSEM画像である。 図6bは、比較例1で得られたポリ乳酸微粒子のSEM画像である。 図6cは、比較例1で得られたポリ乳酸微粒子のSEM画像である。 図7aは、実施例4で得られたポリ乳酸微粒子のSEM画像である。 図7bは、実施例4で得られたポリ乳酸微粒子のSEM画像である。 図7cは、実施例4で得られたポリ乳酸微粒子の粒度分布を表す棒グラフである。 図8aは、実施例5で得られたポリ乳酸微粒子のSEM画像である。 図8bは、実施例5で得られたポリ乳酸微粒子のSEM画像である。 図8cは、実施例5で得られたポリ乳酸微粒子のSEM画像である。 図8dは、実施例5で得られたポリ乳酸微粒子の粒度分布を表す棒グラフである。 図9は、実施例6で得られたポリ乳酸微粒子のSEM画像である。 図10は、実施例7で得られたポリ乳酸微粒子のSEM画像である。 図11は、実施例8で得られたポリ乳酸微粒子のSEM画像である。 図12は、実施例9で得られたポリ乳酸微粒子のSEM画像である。 図13は、実施例2で得られたフィルム1及び実施例5で得られたポリ乳酸微粒子のDSC融解曲線である。 図14は、実施例10で得られた表面コート層のWAXD曲線である。
以下、本発明を詳細に説明する。
[ポリ乳酸微粒子の製造方法]
本発明におけるポリ乳酸微粒子の製造方法は、直径が0.5nm以上1000nm以下の細孔を有する透過膜で区画された2つの液体収容部を有する透過装置の、一方の液体収容部に、L−乳酸に由来する構造単位(以下、「L−乳酸単位」と称する場合がある)及びD−乳酸に由来する構造単位(以下、「D−乳酸単位」と称する場合がある)を含む高分子化合物を第1の溶媒に溶解してなる高分子化合物溶液を収容し、他方の液体収容部に、前記高分子化合物に対する貧溶媒である第2の溶媒を収容する準備工程と、前記一方の液体収容部に収納された前記高分子化合物溶液を、1×10−3mL/(min・cm)以上10000mL/(min・cm)以下の流速で前記透過膜を透過させることで、前記高分子化合物溶液を前記第2の溶媒に接触させる透過工程と、を有し、必要に応じてその他の工程を有していてもよい。
上記本発明の製造方法を用いることにより、粒径が小さく、かつ、ポリ−L−乳酸(以下、「PLLA」と称する場合がある)及びポリ−D−乳酸(以下、「PDLA」と称する場合がある)のステレオコンプレックス晶(以下、「Sc晶」と称する場合がある)を多く含むポリ乳酸の微粒子が形成される。そして、一般的に粒径の小さな微粒子は、粒径の大きな粒子に比べて単位体積(又は単位質量)当たりの比表面積が大きく、結晶成分の割合が小さくなりやすいものである。しかし本発明の製造方法を用いれば、粒径が小さいにもかかわらず、結晶成分の割合(すなわち、非晶成分及び結晶成分の合計に対する結晶成分の割合)が高いポリ乳酸微粒子を製造できる。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
上記透過工程では、透過膜の細孔内、すなわち、直径が上記範囲の空間内に仕切られた高分子化合物溶液中の上記高分子化合物が、上記範囲の透過速度で透過膜を透過することで貧溶媒に接触し、結晶化される。そのため、細孔の狭い空間内に上記高分子化合物の分子が閉じ込められ、上記高分子化合物に含まれるL−乳酸単位とD−乳酸単位とが接触しやすくなると考えられる。そして、上記狭い空間内でL−乳酸単位とD−乳酸単位とが接触した状態で結晶化が開始することにより、PLLAとPDLAとのSc晶が形成しやすくなると推測される。また、それに加えて、上記のように細孔の狭い空間内に上記高分子化合物の分子が閉じ込められた状態で結晶化が開始されることにより、細孔の直径が反映された小さな粒径のポリ乳酸微粒子が形成されると推測される。以上のような理由により、本発明の製造方法を用いることで、粒径が小さく、かつ、Sc晶を多く含むポリ乳酸の微粒子が形成されると考えられる。そして、上記のように効率的にSc晶が形成されることにより、結晶成分の割合も高いポリ乳酸微粒子が形成される。
特に、透過工程において、透過膜における他方の液体収容部側の面に第2の溶媒が接触している場合、高分子化合物溶液が第2の溶媒に接触しながら透過するため、高分子化合物溶液が上記空間内に仕切られた状態で高分子化合物の結晶化が開始され、Sc晶を多く含み、かつ、細孔の直径が反映された小さな粒径のポリ乳酸微粒子が、より形成されやすいと考えられる。
上記本発明の製造方法では、さらに、前記準備工程に先立って、前記透過膜を予め液体に接触させ、前記透過膜の前記細孔内の気体を液体に置換する工程を有することが好ましい。予め透過膜の細孔内の気体を液体に置換することで、透過工程の初めから前記高分子化合物溶液と第2の溶液が接触するので、効率よくポリ乳酸微粒子が得られる。
L−乳酸単位及びD−乳酸単位を含む高分子化合物としては、例えば、1分子中にL−乳酸単位及びD−乳酸単位を含むポリ乳酸の分子を含有する高分子化合物や、1分子中にL−乳酸単位を含みD−乳酸単位を含まないポリ乳酸の分子と1分子中にD−乳酸単位を含みL−乳酸単位を含まないポリ乳酸の分子とを含有する形態が挙げられる。
また、1分子中にL−乳酸単位及びD−乳酸単位を含む高分子化合物としては、例えば、PLLAとPDLAとの共重合体や、PLLAとPDLAとポリ乳酸以外の高分子化合物との共重合体等が挙げられる。
そして、1分子中にL−乳酸単位を含みD−乳酸単位を含まない高分子化合物としては、例えば、PLLAの単独重合体や、PLLAとポリ乳酸以外の高分子化合物との共重合体(以下、「PLLA共重合体」と称する場合がある)等が挙げられ、同様に、1分子中にD−乳酸単位を含みL−乳酸単位を含まない高分子化合物としては、例えば、PDLAの単独重合体や、PDLAとポリ乳酸以外の高分子化合物との共重合体(以下、「PDLA共重合体」と称する場合がある)等が挙げられる。
L−乳酸単位及びD−乳酸単位を含む高分子化合物としては、上記の中でも特に、PLLAの単独重合体とPDLAの単独重合体との混合物であることが好ましい。
PLLAの単独重合体とPDLAの単独重合体との混合物を用いて、上記本発明の製造方法によりポリ乳酸微粒子を製造することにより、例えば、全結晶成分中におけるSc晶の割合が100%であり、α晶を含まないポリ乳酸微粒子を製造することも可能になる。そして、上記の通り、本発明の製造方法を用いれば粒径が小さいにもかかわらず、結晶成分の割合が高いポリ乳酸微粒子を製造できる。
以下、本発明におけるポリ乳酸微粒子の製造方法の各工程について、詳細に説明する。
<準備工程>
準備工程においては、直径が0.5nm以上1000nm以下の細孔を有する透過膜で区画された2つの液体収容部を有する透過装置の、一方の液体収容部に、L−乳酸単位及びD−乳酸単位を含む高分子化合物を第1の溶媒に溶解してなる高分子化合物溶液を収容し、他方の液体収容部に、前記高分子化合物に対する貧溶媒である第2の溶媒を収容する。
−L−乳酸単位及びD−乳酸単位を含む高分子化合物−
L−乳酸単位及びD−乳酸単位を含む高分子化合物は、高分子化合物中にL−乳酸単位及びD−乳酸単位が含まれていれば特に限定されず、上記の通り、高分子化合物1分子中にL−乳酸単位及びD−乳酸単位の両方を含む形態であってもよいし、L−乳酸単位のみを含む分子とD−乳酸単位のみを含む分子との混合物であってもよい。
すなわち、上記高分子化合物は、L−乳酸とD−乳酸の両方のモノマー単位を共重合したポリ乳酸でもよいし、PLLA又はPDLAのいずれか一方のみでもよいし、上記のようにPLLA及びPDLAの混合物であってもよい。
上記PLLAは、L−乳酸単位を主成分とする重合体であり、好ましくは、不可避の不純物をのぞいてL−乳酸単位100%からなる重合体(すなわちPLLAの単独重合体)である。
上記PDLAは、PLLAと同様に、D−乳酸単位を主成分とする重合体であり、好ましくは、不可避の不純物をのぞいてD−乳酸単位100%からなる重合体(すなわちPDLAの単独重合体)である。
PLLA及びPDLAは、その末端が末端封止基で封止されたものであってもよい。このような末端封止基としては、アセチル基、エステル基、エーテル基、アミド基、ウレタン基、ヒドロキシル基などが挙げられる。
PLLA及びPDLAは、公知のポリ乳酸の重合方法により製造することができ、製造方法としては、例えば、ラクチドの開環重合、乳酸の脱水縮合、又はこれらと固相重合とを組み合わせて行い、その後、溶融固化させる方法等を挙げることができる。より具体的な製造方法としては、Makromol.Chem.第191巻,P481−488(1990年)或いは、特開平1−225622号公報に記載の如き、乳酸の環状二量体であるラクチドのリビング段階重合法、特開2003−64174号公報記載の如き、特定の立体選択重合触媒を用いたラセミ体ラクチドの直接開環重合法、又は乳酸からの溶融重合法やラクチドの開環重合法等が挙げられる。
また、PLLA及びPDLAは、熱安定性を損なわない範囲で、重合に関わる触媒を含有していてもよい。該触媒としては、各種のアルミ化合物、リチウム化合物、スズ化合物、チタン化合物、カルシウム化合物、有機酸類、無機酸類などを挙げることができ、さらにこれらを不活性化する安定剤を共存させていてもよい。
高分子化合物としてPLLA及びPDLAの混合物を用いる場合、PLLA及びPDLAの混合比としては、質量比で、1:99から99:1までの範囲で適宜選択されるが、Sc晶の製造効率の観点からは、10:90から90:10の範囲が好ましく、両者が等量(50±5:50±5)となるように調製することがより好ましい。
上記PLLA及びPDLAの混合物は、PLLA及びPDLA以外にその他の高分子化合物を含んでもよいが、不可避の不純物を除きその他の高分子化合物が含まない方が好ましい。
前記の通り、高分子化合物としてポリ乳酸の共重合体を用いてもよい。ポリ乳酸の共重合体としては、L−乳酸単位及びD−乳酸単位の少なくとも一方を含むものであれば特に限定されないが、具体的には、例えば、PLLAとPDLAとの共重合体、PLLA共重合体、PDLA共重合体が挙げられる。
また高分子化合物として、PLLAとPDLAとの共重合体、PLLA共重合体とPDLA単独重合体との混合物、PLLA単独重合体とPDLA共重合体との混合物、又はPLLA単独重合体とPDLA単独重合体との混合物を用いる形態が、Sc晶の多いポリ乳酸微粒子を製造する観点で好ましい。上記の中でも特に、共重合体としてブロック共重合体を用いる形態又はPLLA単独重合体とPDLA単独重合体との混合物を用いる形態がより好ましく、PLLA単独重合体とPDLA単独重合体との混合物を用いる形態がさらに好ましい。
上記PLLA共重合体又はPDLA共重合体に含まれる「ポリ乳酸以外の高分子化合物」としては、例えば、ポリ乳酸と共通の溶媒に溶解することのできるものが挙げられる。具体的には、例えば、ポリスチレン、ポリスチレンスルホン酸、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンオキシド、ポリε−カプロラクトン、ポリブタジエン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリノルボルネニルエチルスチレン、ポリノルボルネニルエチルスチレン-s-スチレン、ポリノルボルネン、ポリヘキサメチルカーボネート、ポリヘキシルノルボルネン、ポリ-n-プロピル-p-スチレンスルホン酸、ポリブチルサクシネート、ポリジシクロペンタジエン、ポリジメチルアクリルアミド、ポリシクロヘキシルエチレン、ポリ−1,5−ジオキセパン−2−オン、ポリメンチド、ポリアクリルアミド、ポリ4−ビニルピリジン、ポリジメチルアクリルアミド、ポリN−イソプロピルアクリルアミド、ポリイソプレン、ポリ3−アルキルチオフェン、ポリジオキサノン、ポリN,N−ジメチルアミノ−2−エチルメタルリレート、ポリ3−ヒロドキシブチレート、ポリ−2−ヒドロキシメタクリレートおよびこれらの誘導体などが挙げられる。
上記ポリ乳酸以外の高分子化合物の重量平均分子量は、10,000以上1,000,000以下であることが好ましく、10,000以上500,000以下であることがより好ましい。また、分子量分布は、1以上10以下であることが好ましく、1以上2以下であることがより好ましく、1以上1.5以下であることがさらに好ましい。
前記PLLAとポリ乳酸以外の高分子化合物とのブロック共重合体におけるPLLAとポリ乳酸以外の高分子化合物との含有比率は、質量比で、1:99から99:1までの範囲で適宜選択され、好ましくは、10:90から90:10の範囲であることがSc晶をより多く部材中に含ませることができる点で好ましい。前記PDLAとポリ乳酸以外の高分子化合物とのブロック共重合体におけるPDLAとポリ乳酸以外の高分子化合物との含有比率についても、上記と同様である。
ブロック共重合体の合成は常法により、行うことができる。具体的には、例えば、これら重合体を、得ようとするブロック共重合体に応じた、予め定められた割合で、溶融混合または溶液混合した後、固化させ、さらに固相重合することにより製造することができる。または、PLLA重合体をあらかじめ合成し、その分子末端にポリ乳酸以外の高分子化合物のモノマーを逐次的に重合成長させることにより製造することができる。逆に、ポリ乳酸以外の高分子化合物をあらかじめ合成し、その分子末端にL−乳酸単位を逐次的に重合成長させることにより製造することができる。
ポリ乳酸微粒子に用いる前記高分子化合物の重量平均分子量は、10,000以上1,000,000以下であることが好ましく、10,000以上500,000以下であることがより好ましい。また、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量の値)は、1以上10以下であることが好ましく、1以上5以下であることがより好ましく、1以上3以下であることがさらに好ましい。また前記高分子化合物が共重合体である場合は、重量平均分子量が20,000以上2,000,000以下であってもよい。
なお、本発明においてポリマーの重量平均分子量及び分子量分布は、溶媒としてクロロホルムを用いた排除クロマトグラフィー法により求めた値を採用している。
−第1の溶媒−
第1の溶媒としては、用いる前記高分子化合物を溶解させるものであれば特に限定されないが、用いる高分子化合物に対する良溶媒であることが好ましい。ここで、高分子化合物に対する良溶媒とは、溶解度パラメーターの値が該高分子化合物のそれに近いものを言う。好ましくは、それらの差が1以下である組み合わせが挙げられる。例えば、ポリ乳酸のうち、PLLAの単独重合体における溶解度パラメーターは19.0であり、クロロホルムの溶解度パラメーターは19.0であるため、クロロホルムは前記ポリ乳酸に対する良溶媒である(特開2007−332187公報参照)。
L−乳酸単位及びD−乳酸単位を含む高分子化合物に対する良溶媒としては、例えば、クロロホルム、テトラヒドロフラン、キシレン、トルエン、ベンゼン、エチルベンゼン、ジクロロエタン、四塩化炭素、トリクロロエタン、ジクロロメタン、クロロベンゼン、メチルエチルケトン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどが好適なものとして挙げられる。これらは1種を用いてもよく、目的に応じて2種以上混合し、混合溶媒として用いることもできる。また、混合溶媒とする場合には、上記溶媒に加えて、例えば、メタノールやエタノールなどの第1の溶媒と混和する貧溶媒を混合してもよい。ここで言う「混和」とは、長時間静置しても1相のままで分離しないことを示す。
−高分子化合物溶液−
高分子化合物溶液は、前記高分子化合物が前記第1の溶媒に溶解した溶液である。ここで「溶解した」とは、高分子化合物溶液に含まれる高分子化合物の固形分が目視により確認できない状態をいう。
高分子化合物溶液中における高分子化合物の濃度は、用いる高分子化合物、第1の溶媒、及び第2の溶媒の種類、用いる透過膜の種類、並びに透過速度等に応じて適宜設定される。例えば、高分子化合物としてPLLA単独重合体及びPDLA単独重合体の混合物を用いる場合、高分子化合物の濃度としては、高分子化合物溶液全体に対し、0.01質量%以上50質量%以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは、0.01質量%以上20質量%以下の範囲である。
高分子化合物溶液の調製は、例えば、室温(25℃)において、第1の溶媒に高分子化合物を添加し、撹拌等により高分子化合物を第1の溶媒に溶解させることで行う。
高分子化合物が混合物である場合、それぞれの高分子化合物をそれぞれ溶媒に溶解した後に混合してもよく、まず一方を溶媒に混合した後、他方を加えて溶解させてもよい。溶液の調製は室温(25℃)で行ってもよいが、所望により25℃から用いる溶媒の沸点まで加熱してもよい。
−第2の溶媒−
第2の溶媒としては、用いる高分子化合物に対する貧溶媒であれば特に限定されない。ここで、高分子化合物に対する貧溶媒とは、溶解度パラメーターの値が該高分子化合物のそれから遠いものを言う。好ましくは、それらの差が5以上である組み合わせが挙げられる。例えば、ポリ乳酸のうち、PLLAの単独重合体における溶解度パラメーターは19.0であり、メタノールは29.7であるため、メタノールは前記ポリ乳酸に対する貧溶媒である(特開2007−332187公報参照)。
高分子化合物としてPLLA単独重合体及びPDLA単独重合体の混合物を用い、第1の溶媒としてクロロホルムを用いる場合、第2の溶媒としては、第1の溶媒と混和し、かつ、用いる高分子化合物に対する貧溶媒である溶媒が好適なものとして挙げられ、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどが挙げられる。これらは1種を用いてもよく、目的に応じて2種以上混合し、混合溶媒として用いることもできる。
なお、上記の第1の溶媒および第2の溶媒のいずれか一方、または第1の溶媒および第2の溶媒の両方に、必要に応じて、酸化防止剤、安定剤、耐光剤、静電気除去剤、滑剤、難燃剤、相容化剤、分散剤、界面活性剤などの各種の添加剤を加えてもよい。これらの添加剤は、複数を組み合わせて用いてもよい。
第1の溶媒と、第2の溶媒とに、添加剤を加える場合、同じ添加剤を加えてもよいし、互いに異なる添加剤を加えてもよい。また、第1の溶媒と、第2の溶媒とに、加える添加剤の添加量は同じであっても、異なっていてもよい。
−透過膜−
透過膜は、透過装置における2つの液体収容部を区画する、直径が前記範囲の細孔を有する膜である。透過膜は、高分子化合物溶液が前記細孔を通じて透過膜を透過するものであれば特に限定されない。すなわち透過膜においては、例えば、高分子化合物溶液が透過する方向である透過方向に、前記細孔が膜厚方向に垂直に貫通していてもよいし、透過膜内において前記細孔が網目状に広がっていてもよいし、屈曲したり枝分かれしたりしていることで膜厚方向に連通してもよい。
また、膜の形状は平面状の平面膜であってもよいし、筒状の中空糸膜あるいはチューブ状膜であってもよい。また、これらを積層または集積した(束ねた)ものであってもよい。
ここで細孔の直径とは、高分子化合物溶液の透過方向と垂直な断面における細孔の断面のうち、最も面積の小さな断面において、当該面積と同じ面積を有する円の直径を意味する。
透過膜に存在する細孔の直径が前記範囲であると、前記範囲よりも大きい場合に比べて、Sc晶を効率よく形成し、かつ、より小さなポリ乳酸の微粒子を形成することができる。そして、細孔の直径が前記範囲であると、前記範囲よりも小さい場合に比べて高分子化合物の結晶化に起因する目詰まり等が起こりにくい。
また、透過膜に存在する細孔の直径は、0.5nm以上1000nm以下が好ましく、1nm以上500nm以下がさらに好ましい。なお、直径が前記範囲よりも大きな孔は、存在しないか、又は高分子化合物溶液が透過できない構造になっていることが好ましい。
透過膜に存在する細孔の密度は特に限定されないが、例えば空隙率(空孔が全膜体積に占める割合)が10%以上90%以下の範囲が挙げられる。前記細孔の形状は、特に限定されず、高分子化合物溶液が透過する方向に直線的に貫通した形状であってもよく、網目状に広がっていてもよいし、細孔が屈曲していてもよいし、分岐していてもよい。
透過膜の材質は用いる溶媒に溶解あるいは膨潤しなければよく、具体的には、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等の有機材料、アルミナ、シリカ、ガラス等の無機材料、セルロース製ろ紙などが挙げられる。
透過膜の厚さは特に限定されないが、具体的には、例えば、0.1μm以上1000μm以下の範囲が挙げられ、1μm以上500μm以下の範囲がより好ましい。
<透過膜湿潤工程>
上記の通り、さらに、前記準備工程に先立って、前記透過膜を予め液体に接触させ、前記透過膜の前記細孔内の気体を液体に置換する透過膜湿潤工程を有していてもよい。
前記液体は、特に限定されず、前記高分子化合物溶液、前記第1の溶媒、前記第2の溶媒、その他の溶媒いずれでもよいが、前記高分子化合物溶液又は前記第2の溶媒が好ましく、前記第2の溶媒がより好ましい。
<透過工程>
透過工程においては、高分子化合物溶液を、前記範囲の流速で前記細孔を通じて透過膜を透過させる。流速が前記範囲であることにより、前記範囲よりも大きい場合に比べて、ポリ乳酸微粒子が凝集しにくいためμmサイズになりにくく、かつSc晶の割合が多いポリ乳酸の微粒子が形成されやすい。また流速が前記範囲であることにより、前記範囲よりも小さい場合に比べて、高分子化合物粒子が細孔内で成長しすぎることに起因する目詰まり等が起こりにくい。また流速は、1×10−3mL/(min・cm)以上10000mL/(min・cm)以下が好ましく、1×10−2mL/(min・cm)以上1000mL/(min・cm)以下がより好ましい。
透過方法としては、例えば、透過膜の一方の面と他方の面との間に圧力差を設ける方法が挙げられ、物理的な加圧や遠心力を用いた加圧等によって高分子化合物溶液側に圧力をかけて透過膜を透過させてもよく、第2の溶媒側を減圧してもよい。圧力差は、透過膜の厚さ、透過膜に存在する細孔の径や密度、空隙率等に応じて選択する。
透過工程においては、上記の通り、透過膜における他方の液体収容部側の面に第2の溶媒が接触していることが好ましい。
このとき、高分子化合物溶液および第2の溶媒の両方あるいはいずれか片方をそれぞれの液体収容部に連続的あるいは間欠的に流入あるいは液体収容部から連続的あるいは間欠的に流出させることで、連続的あるいは間欠的にポリ乳酸微粒子を製造してもよい。
以上の工程を経ることにより、粒径が小さいにもかかわらず、Sc晶の割合が大きなポリ乳酸微粒子が形成される。この際、得られる微粒子の形状は、球状であることが望ましいが、楕円状あるいは糸状であってもよい。
さらにポリ乳酸のSc晶の微粒子については、例えば粒径の大きなSc晶のポリ乳酸粒子を形成した後に、高分子化合物の微粒子化法として知られている良溶媒に溶解した後にこれに貧溶媒を混合して高分子化合物の微粒子を得る方法(特開2004−67883公報)や高分子化合物溶液を激しく撹拌した貧溶媒中に滴下する再沈殿法(特開平6−79168号公報)により微細化しようとすると、せっかく製造したSc晶を再び分解してしまうことになり、効率が悪く、Sc晶の割合を維持できないという問題がある。しかしながら前記本発明の製造方法を用いると、小さな粒径と大きなSc晶の割合とを両立したポリ乳酸微粒子が得られる。
<その他の工程>
本発明におけるポリ乳酸微粒子の製造方法は、上記工程のほかに、必要に応じてその他の工程を有していてもよい。
その他の工程としては、例えば、前記準備工程に先立って行われる、高分子化合物を合成する工程、原料(すなわち、第1の溶媒、高分子化合物、及び第2の溶媒)を精製する工程、高分子化合物としてポリ乳酸を用いる場合において、精製されたポリ乳酸にビタミンEやカルボジイミドを混合することで抗酸化処理あるいは耐加水分解処理する工程等が挙げられる。また、前記透過工程の後に行われる、透過工程によって得られたポリ乳酸微粒子をサイズ別に分別するための遠心分離等の分画工程や、ポリ乳酸微粒子を分散させる超音波処理や、ポリ乳酸微粒子を凝集させることなく乾燥させる凍結乾燥等の公知の工程等や、得られたポリ乳酸微粒子に抗酸化処理や抗菌処理を施す工程が挙げられる。さらに、得られたポリ乳酸微粒子の表面をシランカップリング剤等の化学修飾剤によって表面処理を施す工程も挙げられる。あるいは、ポリ乳酸物微粒子の表面にポリエチレングリコール等の親水性の分子を物理吸着させることで、親水化(親水性の分子の代わりに疎水性の分子を用いる場合は「疎水化」)する工程等が挙げられる。また、これら両成分(すなわち親水性の成分及び疎水性の成分)を含む界面活性剤や分散剤でポリ乳酸微粒子の表面処理を行う工程等も挙げられる。
<ポリ乳酸微粒子の製造装置>
図1は、上記ポリ乳酸微粒子の製造方法に用いる装置の一例を模式的に示す模式図である。
図1の製造装置100は、高分子化合物溶液10を貯留する第1貯留器12(一方の液体収容部)と、第2の溶媒20を貯留する第2貯留器22(他方の液体収容部)と、前述した直径が前記範囲の細孔を有する透過膜30と、第2貯留器22から排出された第2の溶媒20を貯留する第3貯留器40と、製造装置100内の圧力を調整する圧力調整手段50と、製造装置100の内部を減圧する減圧手段60と、で構成されている。
上記第1貯留器12と第2貯留器22とは、透過膜30により区画されており、第1貯留器12、第2貯留器22、及び透過膜30で透過装置を構成している。
第1貯留器12に貯留された高分子化合物溶液10及び第2貯留器22から排出管44を通して第3貯留器40の下部(図1に示す液面)まで貯留された第2の溶媒20は、それぞれ透過膜30の一方の面及び他方の面に直接接触した状態で貯留されている。そして透過膜30における細孔の内部において、高分子化合物溶液10と第2の溶媒20とが直接接触している。
減圧手段60が作動すると、圧力調整手段50によって調整された圧力まで製造装置100の内部が減圧され、高分子化合物溶液10が透過膜30を透過する。具体的には、まず第3貯留器40内の空気が排出口46から排出管54に排出されることで、第3貯留器40内が減圧される。一方、第1貯留器12には開口部16が設けられており、開口部16から第1貯留器12の内部に外気が取り込まれることで外気圧と同じになっている。その圧力差によって、第2貯留器22内の第2の溶媒20が排出管44を通じて第3貯留器40内に導入されると共に、高分子化合物溶液10が透過膜30を透過する。そして、透過膜30の細孔における仕切られた空間の中で高分子化合物溶液10に溶解した高分子化合物が第2の溶媒20と接触して結晶化した後に、結晶化した高分子化合物が第2貯留器22に押し出され、結晶化したポリ乳酸の微粒子が形成される。
なお、製造装置100では、第1貯留器12及び第2貯留器22にそれぞれ温度調整手段18及び28が設けられており、温度調整手段18及び28の内部に液体を流すことで、貯留された高分子化合物10及び第2の液体20温度をそれぞれ調整することができる。
以上のようにして、図1の製造装置100を用いたポリ乳酸微粒子の製造が行われる。ただし本発明は、上記製造装置100を用いた製造方法に限定されるものではない。
[ポリ乳酸微粒子]
本発明のポリ乳酸微粒子は、PLLAとPDLAとのSc晶の成分を含み、ポリ乳酸の全結晶成分に対する前記ステレオコンプレックス結晶の成分の割合が50%以上100%以下であり、かつ、個数平均粒径が0.5nm以上1000nm未満のポリ乳酸微粒子である。
本発明のポリ乳酸微粒子は、上記構成であるため、透明性が高い。すなわち、ポリ乳酸微粒子の粒径が小さく、かつ、Sc晶の割合が多いため、例えばポリ乳酸微粒子を用いて製造された成形体(例えばフィルム等)においては、粒子界面における光散乱に起因する光透過性の低下が抑制される。また本発明のポリ乳酸微粒子は、上記構成であるため、結晶核剤として用いることに適している。すなわち、粒径が小さく、かつSc晶の割合が大きな上記本発明のポリ乳酸微粒子を結晶核剤として用いて高分子化合物の結晶化を促進させることで、高分子化合物が均一に結晶化されることにより、強靭で、かつ透明性の高い高分子化合物の成形体が製造できる。
本発明のポリ乳酸微粒子は、ポリ乳酸微粒子の単独重合体であることが好ましい。ここでポリ乳酸単独重合体とは、重合体を構成する構成単位がすべて乳酸(L−乳酸及びD−乳酸)に由来する構成単位であることをいう。すなわち本発明のポリ乳酸微粒子は、PLLAの単独重合体及びPDLAの単独重合体の混合物を含むものであることが好ましく、不可避の不純物以外にPLLAの単独重合体及びPDLAの単独重合体以外のその他の成分を含まないことが好ましい。また、ポリ乳酸微粒子に含まれるPLLAの単独重合体とPDLAの単独重合体との質量比が10:90〜90:10の範囲であることが好ましい。
ポリ乳酸微粒子の個数平均粒径は、上記範囲であり、0.5nm以上1000nm未満の範囲が好ましく、1nm以上500nm以下の範囲がより好ましい。上記個数平均粒径は、ポリ乳酸微粒子をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察して100個のポリ乳酸微粒子について粒径を測定し、100nm毎の区分(0〜100nm、100〜200nm、200〜300nm、・・・・これ以上も同様)に対応する粒子の数を計測して棒グラフにし、そのうち、最も出現頻度の高い3つの区分について粒径を平均した値である。また前記粒径は、SEMの観察で得られた1個のポリ乳酸微粒子の投影面の形状が円形の場合、その円形の直径を意味する。また前記粒径は、前記投影面の形状が楕円状にひずんでいる場合はその楕円の短軸を意味し、ポリ乳酸微粒子が糸状(繊維状)である場合は繊維の太さが最も太い部分の径(すなわち、投影面における幅が最も広い部分の幅)を意味する。なお、ポリ乳酸微粒子は、上記のように投影面が円形のもの、楕円形のもの、及び繊維状のものに限定されず、これらが組み合わさった形状でもよい。その場合、円形の直径、楕円の短軸、及び繊維の太さのうち最も距離の大きなものを採用して上記「粒径」とする。
本発明のポリ乳酸微粒子は、Sc晶を含んでいれば限定されないが、全結晶成分におけるSc晶の割合が50〜100%であることが好ましい。具体的には、ポリ乳酸の結晶は一般的に、PLLA及びPDLAのSc晶と、PLLA又はPDLAが単独で結晶化したα晶とが存在しうるが、その全結晶成分のうちSc晶が100%である(すなわちα晶を含まない)ことが特に好ましい。上記全結晶成分におけるSc晶の割合が50〜100%であることにより、ポリ乳酸微粒子の耐熱性及び耐加水分解性が向上する。そのため本発明のポリ乳酸微粒子は、例えば、耐熱性や耐加水分解性が要求される部材の原料として適しているほか、本発明のポリ乳酸微粒子を結晶核剤として用いる場合、α晶の融点(170℃)以上の高温下における溶融混練などの後処理が可能となるという利点等がある。
ここで、上記Sc晶の割合は、試料中でSc晶が占める重量分率(Sc晶分率)とα晶が占める重量分率(α晶分率)の合計値(結晶化度)でSc晶分率を割った値である。なお、α晶分率は、ポリ乳酸微粒子のDSC測定(示差走査熱量測定)を行い、150℃から180℃にかけて現れるα晶に起因する融解ピーク面積(融解熱)を100%α結晶の融解熱(94J/g)で割った%値であり、Sc晶分率は190℃から230℃にかけて現れるSc晶に起因する融解ピーク面積(融解熱)を100%α結晶の融解熱(155J/g)で割った%値である。
また本発明のポリ乳酸微粒子は、全成分に対する結晶成分の割合が10%以上であることが好ましい。すなわちポリ乳酸は一般的に、上記結晶の成分(すなわち、Sc晶の成分及びα晶の成分)のほか、PLLA及びPDLAを含む非晶の成分が存在しうるが、結晶成分及び非晶性分の合計に対し、結晶成分の割合が上記範囲であることが好ましい。結晶成分の割合が上記範囲のポリ乳酸微粒子のように、結晶化度の高いポリ乳酸微粒子は、より結晶核剤として適しており、これを用いて結晶化を行うことにより、さらに強度や透明性の高い成形体の製造が可能となる。また上記結晶成分の割合は、10%以上100%以下がより好ましく、20%以上100%以下がさらに好ましい。
本発明のポリ乳酸微粒子の製造方法としては、特に限定されないが、例えば従来のように、ポリ乳酸溶液をポリ乳酸溶液に対する貧溶媒に滴下して撹拌する方法では、前記のようにSc晶をより多く含み、かつ、粒径が小さいポリ乳酸微粒子を製造することはできない。
一方、前述した本発明のポリ乳酸微粒子の製造方法は、前記の通り粒径が小さく、かつSc晶の割合が多いポリ乳酸微粒子を製造することが可能であるため、本発明のポリ乳酸微粒子の製造に適した製造方法である。また前記の通り、前述した本発明のポリ乳酸微粒子の製造方法を用い、高分子化合物としてPLLAの単独重合体とPDLAの単独重合体との混合物を用いることで、前記Sc晶の割合が100%のポリ乳酸微粒子が形成され、また結晶化度の高いポリ乳酸微粒子を製造することも可能であるため、本発明のポリ乳酸微粒子の製造に適している。そのため、本発明のポリ乳酸微粒子は、上記本発明の製造方法により製造されたものであることが好ましい。
[結晶核剤]
本発明の結晶核剤は、上記本発明のポリ乳酸微粒子からなるものであり、高分子化合物の結晶を促進する働きを有する。前記の通り、上記本発明のポリ乳酸微粒子は結晶核剤に適しており、結晶核剤として用いることで、強靭で透明性の高い結晶が形成される。
本発明の結晶核剤を用いて結晶化を促進させる上記高分子化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸、ポリ−L−乳酸及びポリ−D−乳酸の共重合体、ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸の片方あるいは両方を構成成分に含む共重合体や誘導体、およびこれらの混合物等が挙げられる。また、ポリ−3−ヒドロキシブチレート、ポリε−カプロラクタム、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、あるいは他の脂肪族ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、あるいは他の芳香族ポリエステル、およびこれらを片方あるいは両方を構成成分に含む共重合体や誘導体、およびこれらの混合物等が挙げられる。また、その他、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンアジペート、ポリ−p−ビニルフェノール、ポリビニルアセテート、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテンあるいは他のポリオレフィン、ポリジメチルシロキサン、ポリトリメチル−p−シルフェニレンシロキサンあるいは他のシリコーン類、ポリフッビニリデン等のフッ素系高分子、ポリスチレン、ポリブチレンアジぺートテレフタレートおよびこれらを片方あるいは両方を構成成分に含む共重合体や誘導体、およびこれらの混合物等が挙げられる。
本発明の結晶核剤を用いて高分子化合物の結晶化を促進させる方法としては、例えば、本発明の結晶核剤と目的の高分子化合物との混合物を、前記高分子化合物の融点以上前記結晶核剤の融点未満の温度に加熱しながら、混錬する方法や、前記高分子化合物を本発明の方法あるいは他の方法で微粒子あるいは粉末にしたものと該結晶核剤をこれら両方の融点以下でドライ・ブレンド(微粒子あるいは粉末状態で混ぜ合わせる)する方法等が挙げられる。あるいは、本発明の結晶核剤の分散液と前記高分子化合物を本発明の方法あるいは他の方法で分散液や微粒子あるいは粉末にしたものを混合する方法が挙げられる。この際、必要に応じて、酸化防止剤、安定剤、耐光剤、静電気除去剤、滑剤、難燃剤、相容化剤、分散剤、界面活性剤などの添加剤を加えてもよい。
また、上記結晶核剤を目的の高分子化合物と混合後、乾燥工程、キャスト工程、繊維化工程、フィルム化工程や一軸延伸工程、二軸延伸工程、熱処理工程などによって成形体を形成させてもよい。この際、必要に応じて、酸化防止剤、安定剤、耐光剤、静電気除去剤、滑剤、難燃剤、相容化剤、分散剤、界面活性剤などの添加剤を加えてもよく、また、成形物に表面処理等の後処理を施してもよい。
[成形体]
本発明の成形体は、前記本発明のポリ乳酸微粒子を含有する。前記本発明のポリ乳酸微粒子は単独で成形樹脂として用いてもよいし、前記ポリ乳酸微粒子からなる結晶核剤を用いて結晶化された高分子化合物を成形樹脂として用いてもよいし、前記本発明のポリ乳酸微粒子と他の高分子化合物とを混合したものを成形樹脂として用いてもよい。また、本発明の成形体は、前記本発明のポリ乳酸微粒子及び他の高分子化合物の他に、添加剤等のその他の成分を含むものであってもよい。
上記他の高分子化合物は、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、軟質熱可塑性樹脂などが挙げられる。
上記添加剤としては、例えば、補強剤としてのフィラー等が挙げられ、無機フィラー、有機フィラーのいずれも用いることができる。
無機フィラーとしては、ガラス繊維、グラファイト繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ、金属繊維、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、マグネシウム系ウィスカー、珪素系ウィスカー、ワラステナイト、セピオライト、ゾノライト、エレスタダイト、ゼオライト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、ガラスフレーク、非膨潤性雲母、グラファイト、金属箔、タルク、クレイ、マイカ、セリサイト、ベントナイト、カオリン、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、石膏およびドーソナイト等が挙げられる。
また、有機フィラーとしては、天然繊維、パラ型アラミド繊維、ポリアゾール繊維、ポリアリレート、ポリオキシ安息香酸ウィスカー、ポリオキシナフトイルウィスカーおよびセルロースウィスカー等が挙げられる。
これらのフィラーは、繊維状、板状または針状のものを用いることができる。これらのフィラーの中で、繊維状の無機フィラーが好ましく、特にガラス繊維が好ましい。また、フィラーのアスペクト比は5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。特に好ましいのは100以上である。アスペクト比とは、繊維状フィラーの場合は、繊維長を繊維直径で除したもので、板状の場合は、長周期方向の長さを厚さで除したものを指す。
上記フィラーの弾性率は、50GPa以上であることが好ましい。
フィラーとして繊維状のものを用いる場合には、単繊維としての強度が200MPa以上のものが好ましく、300MPa以上であることがより好ましい。この範囲であれば得られた成形体が十分な力学物性を持ち、混合するフィラーの量が少なくても十分な補強効果をえることができるため、フィラーの添加量を少なくすることで成型体表面の外観を損ねないようにすることができる。
繊維状のフィラーとしては、例えば、繊維の直径が0.1μmから1mmの範囲のものが挙げられ、好ましくは1μmから500μmの範囲である。その繊維と直径の比からなるアスペクト比(長さ÷直径)が50以上であることが好ましい。この範囲であれば、樹脂と繊維との混合を良好に行うことができ、さらに複合化によって良好な物性の成型品を得ることができる。より好ましいアスペクト比は100〜500であり、さらに好ましくは100〜300である。
また、成形体には、前記フィラー以外にも、公知の添加剤、例えば、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、滑剤、離形剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤、充填剤、抗菌・抗カビ剤、核形成剤、染料、顔料を含む着色剤などの1種あるいは2種以上を目的に応じて含有することができる。
さらに、成形体をイオン伝導体として用いる場合には、ポリ乳酸とともに、イオン伝導性を有する物質、例えば、リチウム等の金属あるいはその酸化物、塩化物、フッ物、錯体等の金属化合物を含んでもよい。
得られた成形体は、さらに熱処理工程を行ってもよい。熱処理は、DSC測定用の試料パンに入れ、DSC炉内で行ってもよく、また、一定温度に設定可能であれば、オーブン、プレス成形機、空気恒温槽、オイルバス、などを用いて行ってもよい。熱処理温度は、100℃以上300℃以下で行うことができ、より好ましくは150℃以上250℃以下である。熱処理時間は、1分間〜72時間とすることが好ましく、1時間〜24時間とすることがより好ましい。
成形方法の態様としては、例えば、プレス成形品、射出成形品、押出成形品、真空圧空成形品、ブロー成形品等の成形体が挙げられる。また成形体の形態としては、例えば、フィルム、シート、板状体、構造体、不織布、繊維、布、他の材料との複合体等が挙げられる。また成形体の用途としては、例えば、農業用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品、各種容器、その他の成形体等が挙げられる。
また、得られたポリ乳酸成形体と、他の部材とを組み合わせて複合化し、複合体としてもよい。
複合体としては、例えば、本発明の成形体に対して、フィルム状、シート状等の膜状の部材を積層した積層体とすることが挙げられる。本発明の成形体と、膜状の他の部材との積層方式としては、両者を加熱、加圧して接着するラミネート方式や、本発明の成形体と、膜状の他の部材とを貼り合わせる方式等が挙げられる。
本発明の成形体と、膜状の他の部材との貼り合わせにおいては、本発明の成形体と、膜状の他の部材との少なくとも一方に、接着剤を付与してもよい。
本発明の成形体との複合化に用いる他の部材の形状は、膜状に制限されず、ペレット状、ブロック状等の塊状であってもよい。
本発明の成形体の形状も特に制限されず、フィルム状、シート状等の膜状であってもよいし、ペレット状、ブロック状等の塊状であってもよい。
また、本発明の成形体の形状と、他の部材の形状とは、同じであっても、異なっていてもよい。
成形は常法により行うことができるが、特に成形方法に制限はない。成形方法の一例として、以下に前記本発明のポリ乳酸微粒子からなるフィルムの製造方法の具体例について説明するが、これに限定される物ではない。
<ポリ乳酸微粒子からなるフィルムの製造方法の一例>
具体的には、例えば、まずポリ乳酸微粒子のメタノール分散液を室温(25℃)にて、
テフロン(登録商標)シャーレ上にキャストし、乾燥させて溶媒を除去する。さらに、24時間減圧乾燥を行って、ポリ乳酸微粒子の集合体を得る(減圧条件:1Pa)。
次に、図2に示すように、直径110mφ×厚さ2mmの円盤状ステンレス板1の上に厚さ125μmの離型用ポリイミド膜2を置き、次に直径110mmφ×厚さ0.1mmの円盤状ステンレス板に30mm×30mmの矩形窓をくり抜いたもの(矩形窓ありステンレス薄板)3を置き、その矩形窓内に前記ポリ乳酸微粒子の集合体を0.2g置く。その上に、厚さ125μmの離型用ポリイミド膜5を置き、さらにその上に直径110mmφ×厚さ2mmの円盤状ステンレス板6を置く。
これらの積層体全体を室温(25℃)にて真空チャンバー内に設置されたプレス機(株式会社ボールドウィン製)中の上下板の間に置き、1.33×10−1Paまでロータリーポンプで減圧後、上下のプレス板の間隔を応力がかからないようになるべく近付け、200℃に加熱し、200℃のまま5分間保持し、その後、4.5MPa (シリンダー圧力60Pa)の圧力でプレスしたままヒーター電源を切って減圧状態で室温まで徐冷する。その後、真空チャンバーを開けて成形されたフィルム4を取り出す。
成形体は、例えば、前記ポリ乳酸微粒子の集合体を直接、ロール圧延(延伸)してもよいし、上記方法によって得られた成形体に、一軸延伸や同時二軸延伸、逐次二軸延伸、ロール圧延(延伸)、押し出し延伸等の分子配向を付与する延伸加工を行ってもよい。
成形体の用途としては、上記用途とともに、例えば、強度や耐熱性を必要とする構造部材、建築材料、建具材料、建設仮設材、各種自動車部品、内装材、シート、マットなども挙げられる。本発明の成形体は広範な用途に好適に使用され、その応用範囲は広い。
以下に、本発明の成形体において、特に好ましい態様について説明する。
<合成繊維>
本発明の成形体は、一般的な合成繊維材料と同様に、溶融紡糸などにより容易に単繊維状に成形され、汎用の装置によりそのまま繊維状に加工することができる。さらに、紡糸金型を選択することで異形断面繊維などを容易に形成することもできる。
また、これら繊維に対して、一軸延伸、ロール圧延(延伸)や押し出し延伸等の分子配向を付与する延伸加工を行ってもよい。
本発明の合成繊維の直径は、0.1μmから1mmの範囲で任意に選択され、好ましくは1μmから500μmの範囲である。
また、上記合成繊維を用いて、新たな成形体を製造してもよい。この態様としては、本発明の合成繊維により得られる織布、不織布を用いた成形体などが挙げられる。
<多孔体>
本発明の成形体は、ポリ乳酸を含む高分子混合物、成形体あるいは合成繊維からポリ乳酸以外の成分を分解除去することによって得られる多孔体であってもよい。
多孔体は、例えば、前記本発明の成形体を調製・製造し、その後、該成形体に含まれるポリ乳酸以外の成分を、酸エッチング処理や溶媒中で超音波処理する等の手段によってその少なくとも一部を除去することで得られる。
ポリ乳酸以外の成分が除去された部分が空隙となり、内部に多数の微細な空隙を有するポリ乳酸の多孔体が形成される。他の成分の除去手段としては、前記酸エッチング処理、超音波処理のいずれでもよく、これらを組み合わせて行ってもよい。複数の手段を組み合わせる場合、その順番は任意である。また、これら複数の処理を同時に行ってもよい。
また、得られた多孔体に対し、さらに、一軸延伸や同時二軸延伸、逐次二軸延伸、ロール圧延(延伸)、押し出し延伸等の分子配向を付与する延伸加工を行ってもよい。これらの延伸加工は前記のポリ乳酸以外の成分を分解除去する前に行ってもよい。
[表面改質剤]
本発明の表面改質剤は、本発明のポリ乳酸微粒子を含んで構成される。

本発明のポリ乳酸微粒子を含む本発明の表面改質剤を用いて、各種基材の表面の全部又は一部を覆う層(「表面改質層」ともいう)を形成することにより、表面改質層は保護層として機能し、基材表面を、耐磨耗性や耐傷付き性に優れた表面に改質することができる。
さらに、本発明のポリ乳酸微粒子はSc晶の割合が多い。従って、基材表面には、ポリ乳酸のSc晶が多く付着している。ポリ乳酸のSc晶は、通常のα晶および非晶に比べて、耐加水分解性に優れることが知られている〔H. Tsuji, Polymer, Volume 41, pp.3621 (2000)〕。従って、表面改質層は、耐磨耗性および耐傷付き性に加え、耐加水分解性に優れた保護層として機能する。換言すれば、本発明の表面改質剤を用いることで、基材表面を、耐加水分解性に優れた表面に改質することができる。
本発明のポリ乳酸微粒子は、高率でSc晶を含むため、このような表面改質剤として好適に利用することができる。
また、本発明のポリ乳酸微粒子は、粒径が小さく、1000nm未満のナノオーダーである。従って、Sc晶を含むが、粒径が1μm以上であったマイクロオーダーのポリ乳酸粒子で形成される従来の表面改質層よりも、薄い層厚の表面改質層を、基材表面に形成することができる。基材表面に形成する表面改質層を、より薄くすることで、基材表面からはがれ難い層とすることができる。
特に、表面改質剤の適用対象である基材が、ポリ乳酸を含むフィルム、シート等の薄膜部材であると、表面改質剤よりもポリ乳酸との親和性に優れるため、これら基材とより強固に接着した保護層を形成することができる。
現在、ポリ乳酸フィルムやシートのコート剤には、ポリエチレンテレフタレートの表面改質に用いられるシリコーン塗布剤が用いられているが、基材ポリ乳酸との親和性が乏しいために長時間使用すると脱離してしまうという問題点を有している。この点で、本発明のポリ乳酸微粒子は、はがれ難い表面改質剤としてより好適に利用できる。
また、ポリ乳酸Sc晶は、通常のα晶および非晶に比べて高融点かつ機械強度に優れるため、本発明の表面改質剤を用いて形成される層は、耐熱性および耐傷付き性に更に優れた表面保護層となる。
このように、本発明のポリ乳酸微粒子を含んで構成される表面改質剤により、基材表面にSc晶を含む層を形成することができれば、ポリ乳酸成形体全部をSc晶とするよりもはるかに少ない量で、耐加水分解性、耐熱性、耐傷付き性等のSc晶特有の優れた性能を基材に付与することが可能となり、製造コストの面からも、工業的に有用である。
本発明の表面改質剤は、本発明のポリ乳酸微粒子を含む構成であれば特に制限されず、
本発明のポリ乳酸微粒子のみで構成される微粒子集合体であってもよいし、さらに本発明のポリ乳酸微粒子を分散する分散媒体を含んで構成されるポリ乳酸微粒子分散組成物であってもよい。
本発明のポリ乳酸微粒子を分散する分散媒体としては、液体であっても、ゲルであっても、エアロゾルであってもよい。また、分散媒体が液体またはゲルである場合、液体およびゲルを構成する液体としては、前記第1の溶媒、前記第2の溶媒等が挙げられる。既述のように、前記第1の溶媒は、L−乳酸単位及びD−乳酸単位を含む高分子化合物に対する良溶媒である。前記第2の溶媒は、L−乳酸単位及びD−乳酸単位を含む高分子化合物に対する貧溶媒である。これらの溶媒は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
中でも、本発明のポリ乳酸微粒子の機能を保ち、ポリ乳酸微粒子の分散性を向上する観点からは、前記第2の溶媒を用いることが好ましい。
また、本発明の表面改質剤は、ポリ乳酸微粒子の分散性を向上するために、界面活性剤を含んでいてもよいし、ポリ乳酸微粒子が基材表面に付着し易いように、接着剤や粘着剤、溶媒等を含んでいてもよい。さらには、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
本発明の表面改質剤の使用方法は、特に制限されず、例えば、基材表面に本発明のポリ乳酸微粒子を直接撒く方法でもよいし、本発明のポリ乳酸微粒子を、分散媒に分散して、分散液を基材表面に塗付(コート)する方法でもよい。分散液を基材表面に塗付(コート)する方法は、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、ブレードコート法、浸漬塗布法、スプレー塗布等が挙げられる。
以上のように、本発明の表面改質剤の形態は、微粒子集合体、エアロゾル等の散布剤、微粒子分散液ないし微粒子分散ゲル等の表面コート剤であってもよい。
本発明の表面改質剤を付着する基材としては、特に限定されるものではないが、次の化合物を用いて構成される基材が挙げられる。
例えば、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸、ポリ−L−乳酸及びポリ−D−乳酸の共重合体、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の少なくとも一方を構成成分に含む共重合体またはその誘導体、並びに、これらの混合物等のポリ乳酸由来の化合物が挙げられる。
以上のポリ乳酸由来の化合物のほか、ポリ−3−ヒドロキシブチレート、ポリε−カプロラクタム、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等の脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンアジペート、ポリ−p−ビニルフェノール、ポリビニルアセテート、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン等のポリオレフィン、ポリジメチルシロキサン、ポリトリメチル−p−シルフェニレンシロキサン等のシリコーン類、ポリフッビニリデン等のフッ素系高分子、ポリスチレン、ポリブチレンアジペートテレフタレート等を用いてもよい。
なお、上記化合物を共重合した共重合体やその誘導体、およびこれらの混合物によって基材を構成してもよい。
さらには、ポリイミドのようなエンジニアリングプラスチック、各種の金属材料やセラミックス等の無機材料により構成される基材を用いてもよい。
基材の形状としては、本発明の表面改質剤を付着可能な形状であれば、特に制限されず、フィルム状、シート状等の膜状であってもよいし、ペレット状、ブロック状等の塊状など、どのような形状であってもよい。
基材表面は、表面改質剤に含まれる本発明のポリ乳酸微粒子が、基材表面に付着し易くなるように、表面改質剤の適用前に、プラズマ処理、コロナ放電処理、化学修飾処理、酸エッチング処理、超音波処理等の表面改質処理を施してもよい。
あるいは、基材表面に粉末を接触させることで表面をポリ乳酸微粒子で覆うことができる。この際、ポリ乳酸微粒子を基材表面に付着させやすくするために、適宜、溶媒あるいは接着剤等を塗布してもよい。
また、本発明のポリ乳酸微粒子を予めフィルム状、シート状等の膜状に成形し、これを基材に対して積層してもよい。
このようにして各種基材に本発明の表面改質剤を付着させた成形体に対して、上記のフィルム成形に用いたプレス成形の他、ロール成形、射出成形、ブロー成形等の公知の各種成形法を施してもよい。さらに、一軸延伸や同時二軸延伸、逐次二軸延伸、ロール圧延(延伸)、押し出し延伸等の分子配向を付与する延伸加工を行ってもよい。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に何ら制約されるものではない。
[実施例1]
図1に示す製造装置100を用い、以下のようにしてポリ乳酸微粒子の製造を行った。
<ポリ乳酸微粒子の製造>
−準備工程−
高分子化合物として、PLLA(三井化学(株)製、製品名:レイシア、Mw=2.3×10)及びPDLA(PURAC社製、Mw=2.3×10)を使用した。上記PLLA及びPDLAを、ジクロロメタンに溶解させた後、メタノールで再沈殿させてオリゴマーを除去した後、抗酸化処理(具体的には、ビタミンEやカルボジイミドを添加する処理)を行うことで精製PLLA及び精製PDLAを得た。
精製PLLA及び精製PDLAを、それぞれ0.5質量%の濃度になるように(すなわち精製PLLAと精製PDLAが等量になるように)クロロホルムに溶解させ、PLLA及びPDLAのクロロホルム溶液(高分子化合物溶液1)を得た。
第2の溶媒としては、メタノールを用いた。
なお、ポリ乳酸、クロロホルム、メタノールの溶解度パラメーターは19.0、19.0、29.7である(特開2007−332187公報)。
−接触工程−
透過膜30として、孔径(細孔の直径)が100nmのメンブレンフィルター(アドバンテック社製、製品名:親水性PTFEタイプメンブレンフィルター(品番H010A)、材質:PTFE、膜厚:35μm、空隙率:71%)を用いた。なお、上記メンブレンフィルター中における細孔は、直線状ではなくメンブレンフィルター内において網目状に広がった形状となっている。
透過膜30の貯留器22側からメタノールを注入し、透過膜30をメタノールで湿らせた後、貯留器12に上記高分子化合物溶液1を注入し、貯留器22にメタノールを注入することで、透過膜30の細孔内に存在する気体を除去し、高分子化合物溶液1とメタノールとを直接接触させた。
−透過工程−
次に、減圧手段60を作動した。このとき、高分子化合物溶液1が流速0.41mL/(min・cm)で透過膜30を透過するように、圧力調整手段50で製造措置100内の圧力を調整した。
以上のようにして、ポリ乳酸微粒子1を得た。
<ポリ乳酸微粒子の評価>
得られたポリ乳酸微粒子1がメタノールに分散した分散液を、へき開したマイカ板の上に滴下して乾燥させ、SEM(日立ハイテク製、型番:S−4800)でポリ乳酸微粒子1の観測を行った。その結果得られた画像を図3に示す。
ポリ乳酸微粒子1の個数平均粒径、全結晶成分中におけるSc晶の割合、及び全成分における全結晶成分の割合を上記方法により求めた結果を表2に示す。
なお、上記Sc晶の割合を求めるためのDSC測定については、具体的には、得られたポリ乳酸微粒子1のメタノール分散液を乾燥(乾燥温度25℃)させ、DSC測定装置(パーキンエルマー社製、型番:Pyris 1 DSC)を用いて、温度を100℃から240℃まで10℃/分の昇温速度で上昇させて、測定を行った。そして、200℃から225℃にかけて現れるSc晶に起因する融解ピーク面積から求めたSc晶分率および150℃から180℃にかけて現れるα晶に起因する融解ピーク面積から求めたα晶分率を元に、全結晶成分における「Sc晶の割合」および試料中における「全結晶成分の割合」(結晶化度)を算出した。
[実施例2]
流速を0.82mL/(min・cm)とした以外は、ポリ乳酸微粒子1と同様にして、ポリ乳酸微粒子2を得た。
ポリ乳酸微粒子1と同様にして、得られたポリ乳酸微粒子2をSEMにより観察を行った。観察の結果得られた画像を図4aに示す。また、図4aとは別の位置における低倍率のSEM画像を図4bに示し、高倍率のSEM画像を図4cに示す。
またポリ乳酸微粒子1と同様にして、ポリ乳酸微粒子2の個数平均粒径、全結晶成分中におけるSc晶の割合、及び全成分における全結晶成分の割合を求めた。結果を表2に示す。さらに、ポリ乳酸微粒子2の粒度分布を、図4dに示す。
−フィルムの製造−
得られたポリ乳酸微粒子2を用いて、前記ポリ乳酸微粒子からなるフィルムの製造方法の一例(図2)と同様の方法により、フィルム1を得た。
得られたフィルム1は自立した膜状であり、手に持っても破壊することなく、実用的な強度を有していた。また、このフィルム1について、JIS K7105「プラスチックの光学的特性試験方法」に従ってヘーズ(曇度、単位:%)を室温(25℃)で測定した。その結果、12.5であった。
さらに、フィルム1をHitachi U−1800の光路上に置いて、透過率を250〜800nmの範囲で、室温にて測定して求めた。表1に測定値を示す。
これらの結果から、本発明のポリ乳酸微粒子を用いて作製したフィルムは透明性に優れることがわかった。
[実施例3]
透過膜30として、メンブレンフィルターの代わりに、アルミナポーラス膜(Whatman社製、製品名:Anodisc Membrane Filter 25、材質:アルミナ、膜厚:60μm、空隙率:25〜50%)を用い、流速を2×10−2mL/(min・cm)とした以外は、ポリ乳酸微粒子1と同様にして、ポリ乳酸微粒子3を得た。
なお、上記アルミナポーラス膜の細孔は、第1貯留器12側の面における直径が200nm、第2貯留器22側の面における直径が20nmであり、第1貯留器12側の面から第2貯留器22側の面に向かって直径が小さくなる構造となっている。またアルミナポーラス膜の細孔は、高分子化合物溶液が透過する方向に直線的に貫通した形状となっている。
ポリ乳酸微粒子1と同様にして、得られたポリ乳酸微粒子3をSEMにより観察を行った。観察の結果得られた画像を図5aに示す。また、図5aとは別の位置におけるSEM画像を図5bに示す。
また、ポリ乳酸微粒子1と同様にして、ポリ乳酸微粒子3の個数平均粒径、全結晶成分中におけるSc晶の割合、及び全成分における全結晶成分の割合を求めた。結果を表2に示す。さらに、ポリ乳酸微粒子3の粒度分布を、図5cに示す。
[比較例1]
メタノール80mLに、フッ素樹脂コート撹拌子(長さ1.5cm、直径4mm)により速度200rpmで撹拌を行いながら、20mLの上記高分子化合物溶液1を、0.1mL/secで滴下し、ポリ乳酸微粒子4を得た。なお、これらの溶液量は、実施例1で用いた第2の溶媒の容量および高分子化合物溶液の容量と同じであり、以下の実施例及び比較例についても同様である。
ポリ乳酸微粒子1と同様にして、得られたポリ乳酸微粒子4をSEMにより観察を行った。観察の結果得られた画像を図6aに示す。また、図6aとは別の位置における低倍率のSEM画像を図6bに示し、高倍率のSEM画像を図6cに示す。
またポリ乳酸微粒子1と同様にして、ポリ乳酸微粒子4の個数平均粒径、全結晶成分中におけるSc晶の割合、及び全成分における全結晶成分の割合を求めた。結果を表2に示す。
[実施例4]
流速を4mL/(min・cm)とした以外は、ポリ乳酸微粒子1と同様にして、ポリ乳酸微粒子5を得た。
ポリ乳酸微粒子1と同様にして、得られたポリ乳酸微粒子5をSEMにより観察を行った。観察の結果得られた画像を図7aに示す。また、図7aとは別の位置における低倍率のSEM画像を図7bに示し、高倍率のSEM画像を図7cに示す。
またポリ乳酸微粒子1と同様にして、ポリ乳酸微粒子5の個数平均粒径、全結晶成分中におけるSc晶の割合、及び全成分における全結晶成分の割合を求めた。結果を表2に示す。さらに、ポリ乳酸微粒子5の粒度分布を、図7dに示す。
[実施例5]
流速を0.28mL/(min・cm)とした以外は、ポリ乳酸微粒子1と同様にして、ポリ乳酸微粒子6を得た。
ポリ乳酸微粒子1と同様にして、得られたポリ乳酸微粒子6をSEMにより観察を行った。観察の結果得られた画像を図8aに示す。また、図8aとは別の位置における低倍率のSEM画像を図8bに示し、高倍率のSEM画像を図8cに示す。
またポリ乳酸微粒子1と同様にして、ポリ乳酸微粒子6の個数平均粒径、全結晶成分中におけるSc晶の割合、及び全成分における全結晶成分の割合を求めた。結果を表2に示す。さらに、ポリ乳酸微粒子6の粒度分布を、図8dに示す。
[実施例6]
透過膜30として、上記メンブレンフィルターの代わりに、孔径(細孔の直径)が500nmのメンブレンフィルター(アドバンテック社製、製品名:親水性PTFEタイプメンブレンフィルター(品番H050A)、材質:PTFE、膜厚:35μm、空隙率:79%)を用い、流速を0.41mL/(min・cm)とした以外は、ポリ乳酸微粒子1と同様にして、ポリ乳酸微粒子7を得た。
ポリ乳酸微粒子1と同様にして、得られたポリ乳酸微粒子7をSEMにより観察を行った。観察の結果得られた画像を図9に示す。
またポリ乳酸微粒子1と同様にして、ポリ乳酸微粒子7の個数平均粒径、全結晶成分中におけるSc晶の割合、及び全成分における全結晶成分の割合を求めた。結果を表2に示す。
[実施例7]
精製PLLA及び精製PDLAを、それぞれ0.1質量%の濃度になるように(すなわち精製PLLAと精製PDLAが等量になるように)クロロホルムに溶解させ、PLLA及びPDLAのクロロホルム溶液(高分子化合物溶液2)を得た以外は、ポリ乳酸微粒子5と同様にして、ポリ乳酸微粒子8を得た。
ポリ乳酸微粒子1と同様にして、得られたポリ乳酸微粒子8をSEMにより観察を行った。観察の結果得られた画像を図10に示す。
またポリ乳酸微粒子1と同様にして、ポリ乳酸微粒子8の個数平均粒径を求めた。結果を表2に示す。
[実施例8]
流速を0.82mL/(min・cm)とした以外は、ポリ乳酸微粒子8と同様にして、ポリ乳酸微粒子9を得た。
ポリ乳酸微粒子1と同様にして、得られたポリ乳酸微粒子9をSEMにより観察を行った。観察の結果得られた画像を図11に示す。
またポリ乳酸微粒子1と同様にして、ポリ乳酸微粒子9の個数平均粒径を求めた。結果を表2に示す。
[実施例9]
流速を0.21mL/(min・cm)とした以外は、ポリ乳酸微粒子8と同様にして、ポリ乳酸微粒子10を得た。
ポリ乳酸微粒子1と同様にして、得られたポリ乳酸微粒子10をSEMにより観察を行った。観察の結果得られた画像を図12に示す。
またポリ乳酸微粒子1と同様にして、ポリ乳酸微粒子10の個数平均粒径を求めた。結果を表2に示す。
表2に示す結果より、実施例では、上記本発明の製造方法を用いてポリ乳酸微粒子の製造を行っているため、比較例に比べ、粒径が小さいにもかかわらず、Sc晶の割合が大きなポリ乳酸微粒子が形成されていることが分かる。すなわち、実施例で得られたポリ乳酸微粒子は、Sc晶の割合が100%であり、小さな粒径と高いSc晶の割合が両立されていることが分かる。また、実施例で得られた粒径の小さなポリ乳酸微粒子は、得られたフィルムの光透過性が高いことが分かる。
また、実施例1〜9及び比較例1のSEM画像から、高分子化合物溶液1をメタノールに滴下し、ただ混ぜた比較例1のSEM画像に示される粒子よりも、メンブレンフィルターまたはアルミナポーラス膜を透過させた実施例の粒子の方が、均一なサイズのパーティクルが得られていることがわかった。
なお、実施例1〜9及び比較例1のSEM画像は、いずれも、膜透過した溶液を、マイカ板にキャストし、観察したものである。当該SEM画像を撮るにあたっては、ナノメートルサイズの粒子を観察するため、通常のSEM観察で用いられる金属蒸着処理は行わなかった。従って、試料観察中に試料が受けるダメージを防ぐため、加速電圧を500Vまで下げて、観察を行った。また、実施例1〜9及び比較例1のSEM画像は、低倍率では10,000倍、高倍率では70,000倍で撮影した。
次に、示差走査型熱量分析(DSC)装置〔パーキンエルマー社製、Pyris 1 DSC〕を用いて、得られた結晶に、Sc晶が含まれているかを調べた。なお、DSC測定は、実施例2で得たフィルム1および実施例5で得たポリ乳酸微粒子6について行い、窒素気流下、昇温速度10℃/分、走査温度範囲30〜250℃の測定条件でDSC融解曲線を得た。なお、温度ならびに熱量は標準試料(インジウムおよびスズ)の融点および融解熱を測定し、補正を行った。得られたDSC融解曲線を、図13に示す。
図13に示される2つの曲線のうち、下の曲線(曲線A)は、実施例2のフィルム1についてのDSC融解曲線であり、上の曲線(曲線B)は、実施例5のポリ乳酸微粒子6についてのDSC融解曲線である。
今までの研究より、ポリ乳酸のDSC測定においては、α晶のピークが170℃に、Sc晶のピークが220℃に、それぞれ観察されることがわかっている。
一方、メンブレンフィルターを用いて、ゆっくり、あるいは早く通過させて得られたナノ粒子を乾燥させた試料のDSC融解曲線(曲線Aおよび曲線B)は、220℃付近の領域にSc晶の融解ピークのみが観察され、170℃付近の領域には、Sc晶の融解ピークのような極大ピークは観察されなかった。
この結果より、細孔膜を用いた結晶化は、Sc結晶化に有効であり、効率的にSc晶のナノパーティクルを得られることが明らかになった。
[実施例10]
−表面コーティング−
表面改質剤として、ポリ乳酸微粒子6がメタノールに分散した分散液(ポリ乳酸微粒子の濃度約0.2質量%)を準備した。
表面改質剤をコートする基材として、PLLA単品〔三井化学(株)製、製品名:レイシア、Mw=2.3×10〕を原料として、前記ポリ乳酸微粒子からなるフィルムの製造方法の一例(図2)と同様の方法を用いて、フィルム2(PLLAフィルム)を得た。このPLLAのフィルム2の表面に、ポリ乳酸微粒子6の分散液5mLを、フィルム表面全体(おもて片面)に少しずつ均一に塗布して乾燥させる工程を繰り返して表面コート層を形成させた。乾燥温度は25℃とした。
得られた表面コート層の結晶構造を、リガク(株)製の表面X線測定装置、UltimaIIIにて解析した。測定の際のフィルム面に対するX線斜入射角度は、ポリ乳酸結晶の全反射角度(臨界角度)0.17°以下の0.05°とした。当該臨界角度以下でX線を入射することにより、ごく表面層(フィルム最表面からの深さ10nm程度)のみのX線回折プロファイルを得ることができる。
得られたX線回折プロファイル(WAXD曲線)を図14に示す。図14において、横軸は、X線の回折角度2θ(deg.)であり、縦軸は、相対強度を示す。Sc晶に由来する結晶反射のみが観察されている。なお、通常のα晶に由来する結晶反射は、2θ=16.5°および18.9°に観察されるが、図14では全く観察されておらず、α晶を含まないことがわかる。
以上の結果から、本発明のポリ乳酸微粒子をPLLA単品フィルム表面に塗布することにより、Sc晶の表面コート層が形成されることがわかる。このことから、本発明のポリ乳酸微粒子は表面改質剤として好適であることが示された。
日本出願2010−108575の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
1、6 円盤状ステンレス板
2、5 離型用ポリイミド膜
3 矩形窓ありステンレス薄板
4 フィルム
10 高分子化合物溶液
12 第1貯留器
16 開口部
18、28 温度調整手段
20 第2の溶媒
22 第2貯留器
30 透過膜
40 第3貯留器
44、54 排出管
46 排出口
50 圧力調整手段
60 減圧手段
100 製造装置

Claims (12)

  1. 直径が0.5nm以上500nm以下の細孔を有する透過膜で区画された2つの液体収容部を有する透過装置の、一方の液体収容部に、L−乳酸に由来する構造単位及びD−乳酸に由来する構造単位を含む高分子化合物を第1の溶媒に溶解してなる高分子化合物溶液を収容し、他方の液体収容部に、前記高分子化合物に対する貧溶媒である第2の溶媒を収容する準備工程と、
    前記一方の液体収容部に収納された前記高分子化合物溶液を、1×10−3mL/(min・cm)以上10000mL/(min・cm)以下の流速で前記透過膜を透過させることで、前記高分子化合物溶液を前記第2の溶媒に接触させる透過工程と、を有するポリ乳酸微粒子の製造方法。
  2. さらに、前記準備工程に先立って、前記透過膜を予め液体に接触させ、前記透過膜の前記細孔内の気体を液体に置換する透過膜湿潤工程を有する、請求項1に記載のポリ乳酸微粒子の製造方法。
  3. 前記高分子化合物が、ポリ−L−乳酸の単独重合体とポリ−D−乳酸の単独重合体との混合物である、請求項1又は請求項2に記載のポリ乳酸微粒子の製造方法。
  4. ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とのステレオコンプレックス結晶の成分がポリ乳酸の全結晶成分に対して50%以上100%以下であり、かつ、個数平均粒径が0.5nm以上500nm以下である、ポリ乳酸微粒子。
  5. ポリ乳酸の非晶成分及び前記全結晶成分の合計に対する前記全結晶成分の割合が10%以上である、請求項4に記載のポリ乳酸微粒子。
  6. 請求項4又は請求項5に記載のポリ乳酸微粒子からなる結晶核剤。
  7. 請求項4又は請求項5に記載のポリ乳酸微粒子を含む成形体。
  8. 請求項4又は請求項5に記載のポリ乳酸微粒子を含む表面改質剤。
  9. 直径が0.5nm以上500nm以下の細孔を有する透過膜で区画された2つの液体収容部を有する透過装置の、一方の液体収容部に、L−乳酸に由来する構造単位及びD−乳酸に由来する構造単位を含む高分子化合物を第1の溶媒に溶解してなる高分子化合物溶液を収容し、他方の液体収容部に、前記高分子化合物に対する貧溶媒である第2の溶媒を収容して、前記一方の液体収容部に収納された前記高分子化合物溶液を、1×10−3mL/(min・cm)以上10000mL/(min・cm)以下の流速で前記透過膜を透過させることで、前記高分子化合物溶液を前記第2の溶媒に接触させて成り、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とのステレオコンプレックス結晶の成分がポリ乳酸の全結晶成分に対して50%以上100%以下であり、かつ、個数平均粒径が0.5nm以上500nm以下である、ポリ乳酸微粒子。
  10. 請求項9に記載のポリ乳酸微粒子からなる結晶核剤。
  11. 請求項9に記載のポリ乳酸微粒子を含む成形体。
  12. 請求項9に記載のポリ乳酸微粒子を含む表面改質剤。
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