JP5652086B2 - 回転電機用のロータに用いるロータコアの製造方法 - Google Patents
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Description
また、空隙部とロータコアの外周面との間、空隙部同士の間には、ロータコアの一部からなるブリッジ部が形成されている。このブリッジ部には、磁石のN極からS極への漏れ磁束が通過することになる。そのため、ブリッジ部の幅は極力小さくすることが考えられる。
また、例えば、特許文献2のロータコア鋼板の製造方法においては、プレスによる塑性加工処理又は油中におけるレーザーピーニング処理を行って、ブリッジ部の一部を加工硬化させた後、所定温度で加熱処理することが開示されている。これにより、ロータコアの低鉄損化を図っている。
また、レーザーピーニング処理によると、加工硬化層が約200μm程度であり、ブリッジ部において占める透磁率の低下部分が狭く、ブリッジ部への漏れ磁束を低減する効果として十分ではない。
上記磁石における磁極形成側面以外の側面のうち径方向外周側に位置する外周側側面には、上記磁石配置開口穴の一部によって外周側空隙部が隣接して形成されており、
該外周側空隙部と上記ロータコアの外周面との間には、該ロータコアの一部によって外周側ブリッジ部が形成されており、
上記外周側空隙部において上記外周側ブリッジ部を形成するコア側面には、上記ロータコアの一部が溶融した後に凝固してなる凝固層が形成されていることを特徴とする回転電機用のロータにある。
上記電磁鋼板に対して打抜き加工を行うことにより、上記スリット状穴に繋がる残りの部分を打ち抜いて、上記スリット状穴のコア側面と打抜き加工によって形成された打抜き面とによって上記磁石配置開口穴を形成することを特徴とするロータコアの製造方法にある(請求項1)。
第3の発明は、回転電機用のロータに用いるロータコアの製造方法において、上記ロータコアを構成する電磁鋼板に対して、レーザー加工用の加工代を残して打抜き加工を行うことにより、打抜き開口穴を形成し、
上記レーザー加工用の加工代に対してレーザー加工を行い、レーザー光によって上記電磁鋼板の一部を溶融させると共に、該溶融した部分をガスによって吹き飛ばす、又は吸引装置によって吸引することによって、上記レーザー加工が行われた部分に上記凝固層を形成して、該レーザー加工が行われた部分と上記打抜き開口穴の一部とによって上記磁石配置開口穴を形成することを特徴とするロータコアの製造方法にある(請求項2)。
具体的には、外周側空隙部において外周側ブリッジ部を形成するコア側面には、ロータコアの一部が溶融した後に凝固してなる凝固層を形成している。この凝固層の形成により、電磁鋼板の平面方向であって外周側ブリッジ部における凝固層の形成方向に引張応力を作用させることができると共に、凝固層に隣接する部分において、電磁鋼板の平面方向であって外周側ブリッジ部の形成方向に圧縮応力を作用させることができる。
また、凝固層を形成した外周側ブリッジ部においては、磁束が流れる方向と同一方向に圧縮応力が付与されるため、磁束が通過し難い性質が強く、従来のレーザーピーニング処理を行った場合に比べて、発生する漏れ磁束を格段に低減させることができる。
また、凝固層の形成によって漏れ磁束の発生を低減させていることにより、外周側ブリッジ部の幅を、大幅に狭くする必要がなくなり、その強度を確保するために必要な適切な幅にすることができる。
第1の参考発明において、上記磁極形成側面とは、磁石のN極又はS極の磁極を形成する側面のことをいう。
上記外周側空隙部(及び後述する内周側空隙部)には、樹脂等の非磁性の材料を充填することができる。外周側空隙部及び内周側空隙部は、軟磁性のロータコア(電磁鋼板)に対して非磁性部分として機能する。
この場合には、ロータにおける磁石の配置が適切であり、一対の磁石組の配置によって適切な磁路を形成することができる。
この場合には、凝固層の形成により、電磁鋼板の平面方向であって内周側ブリッジ部における凝固層の形成方向に引張応力を作用させることができると共に、凝固層に隣接する部分において、電磁鋼板の平面方向であって内周側ブリッジ部の形成方向に圧縮応力を作用させることができる。
また、凝固層を形成した内周側ブリッジ部は、磁束が流れる方向と同一方向に圧縮応力が付与されるため、磁束が通過し難い性質が強く、従来のレーザーピーニング処理を行った場合に比べて、発生する漏れ磁束を格段に低減させることができる。
また、凝固層の形成によって漏れ磁束の発生を低減させていることにより、内周側ブリッジ部の幅を、大幅に狭くする必要がなくなり、その強度を確保するために必要な適切な幅にすることができる。
この場合には、ロータコアを製造する際に、レーザー加工を行う工程を、プレスにより打抜き加工を行う工程から分離して設置することができる。
この場合には、打抜き開口穴における所定箇所からレーザー加工を開始することができ、レーザー光によって電磁鋼板に貫通口を形成しなくてもよくなる。そのため、レーザー加工に要するレーザー光の照射強度を低くすることができ、小さな加工エネルギーで凝固層を有する磁石配置開口穴を形成することができる。
(参考例)
本例の回転電機用のロータ1は、図2に示すごとく、電磁鋼板21を軸方向に積層して形成したロータコア2と、ロータコア2に設けた磁石配置開口穴22に対して、径方向Rに対して斜めに磁極形成側面41が位置する状態で埋設した磁石4とを備えている。磁極形成側面41とは、磁石4のN極又はS極の磁極を形成する側面のことをいう。
図1に示すごとく、磁石4における磁極形成側面41以外の側面のうち径方向外周側に位置する外周側側面42には、磁石配置開口穴22の一部によって外周側空隙部23が隣接して形成されている。外周側空隙部23とロータコア2の外周面20との間には、ロータコア2の一部によって外周側ブリッジ部24が形成されている。外周側空隙部23において外周側ブリッジ部24に接するコア側面221には、ロータコア2の一部が溶融した後に凝固してなる凝固層31が形成されている。同図において、凝固層31を太線によって示す。
本例のロータ1は、ステータの内周側に配置して回転するインナーロータである。また、本例のロータ1は、3相の回転電機に用いられるものである。
図3に示すごとく、磁石配置開口穴22における凝固層31は、軟磁性を有する各電磁鋼板21に対してそれぞれ形成されたものであり、ロータコア2は、凝固層31を形成した電磁鋼板21を軸方向に積層して形成されている。なお、ロータコア2の軸方向は、図3において、紙面に垂直な方向である。
図2に示すごとく、本例の磁石4は、ロータコア2に対し、一対の磁石組Aを構成して、外周側に向けて磁極形成側面41同士の間の間隔が広がるV形状に配置されている。そして、ロータ1は、ロータコア2に対して一対の磁石組Aを周方向Cに等間隔に配置して形成されている。
外周側空隙部23及び内周側空隙部25における凝固層31は、プレスによって打抜き加工を行う磁石配置開口穴22の一部に形成したものであり、磁石配置開口穴22の形成前又は形成後のいずれの時期に形成することもできる。磁石配置開口穴22において、凝固層31を形成した部分以外の部分には、打抜き加工による打抜き面32が形成されている。
本例の外周側ブリッジ部24は、ロータコア2の外周面20に沿って略均一な幅で形成されており、内周側ブリッジ部26は、内周側空隙部25同士の間において径方向Rに向けて略均一な幅で形成されている。
本例の一対の磁石組Aは、各磁石4のN極が外周側に位置して配置されている。各磁石4のN極から生じる磁束Xは、ロータコア2における一対の磁石4の間の領域を通過した後ステータコア5を通過し、ステータコア5からロータコア2を通過した後、各磁石4のS極へ復帰して、磁路を形成する。なお、各磁石4は、N極を内周側に、S極を外周側に配置することもできる。
具体的には、外周側空隙部23において外周側ブリッジ部24に接するコア側面221及び内周側空隙部25において内周側ブリッジ部26に接するコア側面222には、ロータコア2の一部が溶融した後に凝固してなる凝固層31を形成している。この凝固層31の形成により、図4に示すごとく、電磁鋼板21の平面方向であって各ブリッジ部24、26における凝固層31の形成方向Lに引張応力σ1を作用させることができると共に、凝固層31に隣接する部分311において、電磁鋼板21の平面方向であって各ブリッジ部24、26の形成方向Lに圧縮応力σ2を作用させることができる。
図6は、プレスによる打抜き加工によって形成された打抜き面32の表面の写真を示す。打抜き面32においては、打抜き加工の打抜き前半部分に剪断面321が形成され、後半部分に破断面322が形成されている。
図7は、レーザー加工によって凝固層31を形成したコア側面221及びコア側面222の表面の写真を示す。凝固層31の表面は、打抜き加工を行った場合と比べて大きく異なることがわかる。
また、本例の凝固層31を形成した各ブリッジ部24、26は、磁束Xが流れる方向と同一方向に圧縮応力σ2が付与されるため、磁束が通過し難い性質が強く、従来のレーザーピーニング処理を行った場合に比べて、発生する漏れ磁束Yを格段に低減させることができる。
また、凝固層31の形成によって漏れ磁束Yの発生を低減させていることにより、各ブリッジ部24、26の幅を、大幅に狭くする必要がなくなり、その強度を確保するために必要な適切な幅にすることができる。
図8は、横軸に、切断端面(コア端面)からの幅方向位置(mm)をとり、縦軸に、残留応力(MPa)をとって、幅方向W(凝固層31の形成方向Lに直交する平面方向)(図4参照)における残留応力の分布を推定したグラフを示す。凝固層31の形成部分には引張応力σ1が作用し、凝固層31に隣接する部分(母材)311には圧縮応力σ2が作用していると考える。
図9は、横軸に、切断端面(コア端面)からの幅方向位置(mm)をとり、縦軸に、残留応力(MPa)をとって、幅方向Wにおける残留応力の分布を実測した結果を示す。同図より、凝固層31に近い部分には、凝固層31の形成方向Lに向けて引張応力σ1が作用し、凝固層31に隣接する部分311には、凝固層31の形成方向Lに向けて圧縮応力σ2が作用していることがわかる。
上記磁石配置開口穴22及び磁石4の配置構造は、上述した構造以外の種々の構造とすることができる。
例えば、図10に示すごとく、一対の磁石組Aの内周側にも、一対の内周側磁石組Bとして、一対の磁石組Aにおける各磁石4と平行に内周側磁石4Aを配置することができる。そして、内周側磁石4Aを配置する磁石配置開口穴22についても、外周側空隙部23及び内周側空隙部25を形成すると共に、ブリッジ部に接するコア側面に凝固層31を形成することができる。また、内周側磁石4Aに隣接する内周側空隙部25同士の間には、中間空隙部27を形成することができる。そして、中間空隙部27においてブリッジ部26に接するコア側面にも、凝固層31を形成することができる。
この場合には、磁束Xを、各内周側磁石4AのN極から各磁石4のS極へ通過させ、各磁石4のN極からロータコア2、ステータコア5、ロータコア2を通過させて、各内周側磁石4AのS極へ復帰させることができる。なお、各磁石4、4Aの磁極は反対向きにすることもできる。
この場合には、磁束Xを、一対の磁石4のN極から内周側包囲空隙部250の外周側に隣接するロータコア2の部分、ステータコア5、一対の磁石4の外周側に位置するロータコア2の部分を通過させて、一対の磁石4のS極へ復帰させることができる。なお、各磁石4、4Aの磁極は反対向きにすることもできる。
本例は、上記参考例に示したロータコア2を製造する方法について示す例である。
本例においては、ロータコア2を構成する電磁鋼板21に対してレーザー加工を行うことにより、ロータコア2の一部が溶融した後に凝固してなる凝固層31を形成する。より具体的には、レーザー光によって電磁鋼板21の一部を溶融させて、溶融した部分をガスによって吹き飛ばす、又は吸引装置によって吸引し、電磁鋼板21に残った部分によって凝固層31を形成する。
発振器から複数本のファイバーケーブルを引き出し、各ファイバーケーブルの先端をそれぞれロボットのエンドエフェクタ部に支持しておくことにより、各ロボットによって異なる電磁鋼板21に対して同時期にかつパラレルにレーザー加工を行うことができる。
また、スリット状穴220は、磁石配置開口穴22において、外周側ブリッジ部24を形成する部分と内周側ブリッジ部26を形成する部分とに形成する。そして、レーザー加工を行ったことにより、スリット状穴220のコア側面には凝固層31が形成される。
こうして、磁石配置開口穴22のうち凝固層31を形成しないコア側面は、打抜き加工による打抜き面32として形成される。打抜き面32は、剪断面及び破断面の混在する面として形成される。
また、本例においては、ロータコア2を製造する際に、レーザー加工を行う工程を、プレスにより打抜き加工を行う工程から分離して設置することができる。その他、本例のロータコア2については上記参考例と同様である。
本例は、上記参考例に示したロータコア2を製造する他の方法について示す例である。
本例においても、ロータコア2を構成する電磁鋼板21に対してレーザー加工を行うことにより、ロータコア2の一部が溶融した後に凝固してなる凝固層31を形成する。
本例においては、コイル状に巻かれた電磁鋼板21の母材を直線状に伸ばして、複数のプレスに順次送り込み、この母材に対して複数のプレスによって段階的に打抜き加工を行う途中においてレーザー加工を行って、ロータコア2用の電磁鋼板21を形成する。
次いで、電磁鋼板21の母材におけるレーザー加工用の加工代226に対してレーザー加工を行い、打抜き開口穴225を拡大して磁石配置開口穴22を形成する(図3参照)。このとき、磁石配置開口穴22において、外周側ブリッジ部24を形成する部分と内周側ブリッジ部26を形成する部分とに凝固層31が形成される。
そして、本例のロータコア2の製造方法によっても、必要な強度を確保することができると共に漏れ磁束Yが発生し難くすることができるブリッジ部24、26を容易に形成することができる。その他、本例においても、上記実施例2と同様の作用効果を得ることができる。また、本例のロータコア2については上記参考例と同様である。
2 ロータコア
20 外周面
21 電磁鋼板
22 磁石配置開口穴
221、222 コア側面
220 スリット状穴
225 打抜き開口穴
226 レーザー加工用の加工代
23 外周側空隙部
24 外周側ブリッジ部
25 内周側空隙部
26 内周側ブリッジ部
31 凝固層
32 打抜き面
4 磁石
41 磁極形成側面
42 外周側側面
43 内周側側面
A 一対の磁石組
Claims (4)
- 電磁鋼板を積層して形成したロータコアと、該ロータコアに設けた磁石配置開口穴に対して、径方向に対して斜めに磁極形成側面が位置する状態で埋設した磁石とを備え、
上記磁石における磁極形成側面以外の側面のうち径方向外周側に位置する外周側側面には、上記磁石配置開口穴の一部によって外周側空隙部が隣接して形成されており、
該外周側空隙部と上記ロータコアの外周面との間には、該ロータコアの一部によって外周側ブリッジ部が形成されており、
上記外周側空隙部において上記外周側ブリッジ部を形成するコア側面には、上記ロータコアの一部が溶融した後に凝固してなる凝固層が形成された回転電機用のロータに用いるロータコアの製造方法において、
上記ロータコアを構成する電磁鋼板に対してレーザー加工を行い、レーザー光によって上記電磁鋼板の一部を溶融させると共に、該溶融した部分をガスによって吹き飛ばす、又は吸引装置によって吸引することによって、上記磁石配置開口穴の一部となるスリット状穴を形成すると共に、該スリット状穴のコア側面に上記凝固層を形成し、
上記電磁鋼板に対して打抜き加工を行うことにより、上記スリット状穴に繋がる残りの部分を打ち抜いて、上記スリット状穴のコア側面と打抜き加工によって形成された打抜き面とによって上記磁石配置開口穴を形成することを特徴とするロータコアの製造方法。 - 電磁鋼板を積層して形成したロータコアと、該ロータコアに設けた磁石配置開口穴に対して、径方向に対して斜めに磁極形成側面が位置する状態で埋設した磁石とを備え、
上記磁石における磁極形成側面以外の側面のうち径方向外周側に位置する外周側側面には、上記磁石配置開口穴の一部によって外周側空隙部が隣接して形成されており、
該外周側空隙部と上記ロータコアの外周面との間には、該ロータコアの一部によって外周側ブリッジ部が形成されており、
上記外周側空隙部において上記外周側ブリッジ部を形成するコア側面には、上記ロータコアの一部が溶融した後に凝固してなる凝固層が形成された回転電機用のロータに用いるロータコアの製造方法において、
上記ロータコアを構成する電磁鋼板に対して、レーザー加工用の加工代を残して打抜き加工を行うことにより、打抜き開口穴を形成し、
上記レーザー加工用の加工代に対してレーザー加工を行い、レーザー光によって上記電磁鋼板の一部を溶融させると共に、該溶融した部分をガスによって吹き飛ばす、又は吸引装置によって吸引することによって、上記レーザー加工が行われた部分に上記凝固層を形成して、該レーザー加工が行われた部分と上記打抜き開口穴の一部とによって上記磁石配置開口穴を形成することを特徴とするロータコアの製造方法。 - 請求項1又は2に記載のロータコアの製造方法において、上記磁石は、一対の磁石組を構成して、外周側に向けて上記磁極形成側面同士の間の間隔が広がるV形状に配置されており、
上記ロータは、上記ロータコアに対して上記一対の磁石組を周方向に等間隔に配置して形成されていることを特徴とするロータコアの製造方法。 - 請求項3に記載のロータコアの製造方法において、上記磁石における磁極形成側面以外の側面のうち径方向内周側に位置する残りの内周側側面には、上記磁石配置開口穴の一部によって内周側空隙部が隣接して形成されており、
上記一対の磁石組を構成する上記磁石に対する上記内周側空隙部同士の間には、上記ロータコアの一部によって内周側ブリッジ部が形成されており、
上記内周側空隙部において上記内周側ブリッジ部を形成するコア側面には、上記ロータコアの一部が溶融した後に凝固してなる凝固層が形成されていることを特徴とするロータコアの製造方法。
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