JP5646860B2 - ポリアミド繊維およびエアバッグ用織物 - Google Patents
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(2)引張速度が10m/秒である高速引張試験において、引張強度が11.0cN/dtex以上であることを特徴とする上記(1)項に記載のポリアミド繊維。
(3)沸騰水収縮率Sが4〜11%であり、熱収縮応力σが0.25〜0.66cN/dtexであり、これらの関係が次式を満たすことを特徴とする上記(1)項または(2)項に記載のポリアミド繊維。
(0.0569×S+0.013)<σ<(0.0569×S+0.033)
(4)以下の式で表されるポリマー鎖切断指数DGが4〜15の範囲であることを特徴とする上記(1)〜(3)項のいずれか一項に記載のポリアミド繊維。
DG=exp(1.613×102/(N+C)+2.715)−VR
ただし、N:繊維の末端アミノ基濃度(mmol/kg)
C:繊維の末端カルボキシル基濃度(mmol/kg)
VR:繊維の蟻酸相対粘度
(5)上記(1)〜(4)項のいずれか一項に記載のポリアミド繊維から構成されていることを特徴とするエアバッグ用織物。
(6)ポリアミドポリマーを溶融紡出し、引張強度が9.0〜11.5cN/dtexのポリアミド繊維を得る多段延伸において、紡出糸を前段で150℃未満の温度で全延伸倍率の25〜60%の延伸倍率で延伸し、引き続く後段で150℃以上の温度で残りの延伸を行い、次いで、熱弛緩処理を行って巻き取ることを特徴とする上記(1)項記載のポリアミド繊維の製造方法。
(0.0569×S+0.013)<σ<(0.0569×S+0.033)
これらの特性は原糸の熱処理を伴う後加工における寸法安定性に関係し、製織した際には、得られる織物の形態、機械的特性、低通気性、並びに織構造が任意の方向に引張られた際の経糸と緯糸のずれ、および織糸と縫糸間の目開きといったエアバッグの展開作動時の各種挙動に関係する。熱応力が低すぎなければ、沸水収縮率によって、加工後の織糸のクリンプがつきすぎて織物の応力に対する歪応答が大きくなりすぎたり、そのために織物の低通気が阻害されるようなことがなく、また、縫目の開きが大きくなったり、縫目の通気が大きくなるような事象になることがないため、エアバッグの耐圧性が低下するようなことが無い。また、熱応力が高すぎなければ、沸水収縮率によって、織物加工中に経緯のクリンプバランスが大きく崩れて、経緯の一方向に応力集中し、縫目部分の一方向が破断してエアバッグの耐圧性が低下するようなことがない。
溶融紡糸機に設けられた紡糸口金パック1から紡出された糸条2は直ちに冷風筒3から供給される0.5〜1.2m/秒の冷風により、冷却固化される。
DG=exp(1.613×102/(N+C)+2.715)−VR
ただし、N:繊維の末端アミノ基濃度(mmol/kg)
C:繊維の末端カルボキシル基濃度(mmol/kg)
VR:繊維の蟻酸相対粘度
(1)蟻酸相対粘度VR
繊維をジクロロメチレンで脱脂し、試料4.5gを濃度8.4wt%になるように、90%蟻酸に十分溶解した後、ウベローデ粘度計を用いて、水温25℃の環境下に10分放置後、該溶液の落下時間を測定した。溶媒の落下時間を同一の方法にて評価し、以下の式に基づいてVRを求めた。
VR=試料の落下時間(秒)/溶媒の落下時間(秒)
繊維をジクロロメチレンで脱脂し、試料6gを小数点以下3桁まで正確に秤量し、これを90%フェノール水溶液50ccに溶解する。完全溶解後、溶液温度を25℃に安定させ、0.05N−塩酸水溶液でpH3まで滴定する。この時の0.05N塩酸水溶液の滴下量を記録し、以下の計算式にてポリマー1kg当たりの末端アミノ基濃度(mmol/kg)を算出する。
末端アミノ基濃度=A×F×50/B
A:滴定に要した0.05N−塩酸水溶液(ml)
F:0.05N−塩酸水溶液のファクター
B:ポリマー重量(g)
繊維をジクロロメチレンで脱脂し、試料6gを小数点以下3桁まで正確に秤量し、これを170℃のベンジルアルコール50ccに溶解する。完全溶解後、ベンジルアルコール1リットル、フェノールフタレイン5g、酢酸銅0.5g、二酸化チタン12gから調整された指示薬を0.3ml添加する。その後、0.1N−NaOHエチレングリコール溶液を滴下し、液色が紅色を呈した時点で終了する。この時の0.1N−NaOHエチレングリコール溶液滴下量を記録し、以下の計算式にてポリマー1Kg当たりの末端カルボキシル基濃度(mmol/kg)を算出する。
末端カルボキシル基濃度=C×F×100/B
C:滴定に要した0.1N−NaOHエチレングリコール溶液(ml)
F:0.05N−塩酸水溶液のファクター
B:ポリマー重量(g)
JIS L 1017 8.3記載の方法で測定した。
(5)単糸繊度
JIS L 1017 8.3記載の方法で求めた総繊度を、糸条を構成する単糸フィラメントの本数で除して求めた。
(6)引張強度
JIS L 1017 8.5記載の方法で測定した引張強さを総繊度で除して求めた。
島津製作所製高速引張試験機ハイドロショットHITS−T10を用い、引張速度10m/秒、試料長125mmにて引張強さを測定した。得られた引張強さを総繊度で除して高速引張強度を求めた。なお、試料の準備については、JIS L 1017 6記載の方法にて実施した。
JIS L 1013 8.7記載の方法で測定した引掛強さを総繊度で除して求めた。
(9)押し曲げ柔軟度
図2に示すように、繊維糸条を0.5g/dtexの張力下で同一平面に11cm幅に並列に並べて両端を固定した試料を作った。総繊度が235dtexの場合では100本程度である。把持長30mmで糸条の両端を把持して垂直に圧縮試験機に保持し、糸条の上端を把持するクロスヘッドを2mm/秒で押し下げて糸条の両端を繊維軸方向で接近させた。接近による繊維の屈曲の応力を最大荷重0.5Nのロードセルで測定し、糸条が屈曲した際の降伏圧力を並べた本数と総繊度との積にて除した値を押し曲げ柔軟度(cN/dtex)とし、柔軟度の指標とした。試行は5回行い、その平均値を用いた。
JIS L 1017 8.14記載の方法で測定した。
(11)熱収縮応力σ
東洋精機製作所製コードレオテスターを用い、昇温に伴う収縮応力を測定した。試料長は250mm、昇温は25℃から250℃まで行った。なお、昇温速度80℃/分にて実施した。測定における最大収縮応力をσとした。
直径30cmが確保できる円形状に織物を裁断し、これを2枚貼りあわせるかたちで模擬バッグを縫製した。図3(a)に示すように、該バッグには100mm×80mmのガス導入口を設け、導入口のバッグ貼りあわせ箇所の一部を筒状になったガス噴出口に挿入し、ガスが漏れないように密閉固定した。次に、図3(b)〜(d)に示すように、ガス導入口を中心とし、左右に半円状に広がる模擬バッグを中心に向かいそれぞれが重ならないように畳んだ後、ガス導入口の反対側から導入口側に向かい10cm間隔で3回折り畳んだ。展開性評価は、バッグ内に7.5MPaの圧縮ヘリウムガスを一気に導入させた際のバッグ内圧が最大となった時点を展開完了点とし、その到達時間から展開性を評価した。なお、試行は3回とし、展開完了時間はその平均値を用いた。
展開性評価を15MPaの高圧圧縮ガスで実施し、バッグを概観検査した結果、次の基準にて耐バースト性を評価した。
○:バースト(破裂)、縫製目開きともになし
△:縫製目開きあり
×:バースト
蟻酸相対粘度VRが82であるペレット状のナイロン66ポリマーを温度295℃にてエクストルーダー式押出機を用いて融解させ、その後、図1に示した製造設備を用いて紡糸した。スピンヘッドにて溶融ポリマーを300℃に均温化させた後、スピンヘッドから表1に示す総繊度となるようにギアポンプにて計量し、紡糸口金パックより紡出させた。紡出されたポリマーは冷風により冷却固化され、糸条を形成させた。固化した糸条に油剤を付与した後、一旦巻き取ることなく引取りローラで引取った。引取った糸条を引取りローラと第1延伸ロール間で1%ストレッチをかけ、第1延伸ロールと第2延伸ローラ間で2.0倍の1段目の延伸を、第2延伸ロールと第3延伸ローラ間でさらに2.65倍の2段目の延伸を行った。延伸後の糸条は第3延伸ローラとリラックスローラ間で3%弛緩処理を施した後、交絡付与装置にて適度な交絡を付与した後、巻取り機にて巻取った。引取りロール、第1延伸ロール、第2延伸ロール、第3延伸ロール、リラックスロールの温度はそれぞれ、非加熱、60℃、210 ℃、220℃、150℃であり、糸条のローラへの捲回数は1 回、2 回、3 回、3 回、4 回とした。この時の総延伸倍率は5.3倍である。得られたナイロン66原糸の評価結果を表1に示した。
さらに、得られたナイロン66原糸を500m/分の速度で整経し、次いで津田駒製ウォータージェットルーム(ZW303)を用いて、経糸及び緯糸の織密度を73本×73本に合わせ、回転速度800rpmで製織し織物を得た。得られた織物はそのまま100℃の乾燥ゾーンを通過させた。得られた織物に公知の方法にて20g/m2となるように、シリコーンコートを施した後エアバッグを縫製し、展開試験ならびに耐バースト試験等に用いた。得られた結果を表1に併せて示す。
蟻酸相対粘度VRが85であるペレット状のナイロン66ポリマーを表1に示す総繊度となるよう実施例1と同様に溶融紡糸した。引取った糸条を引取りローラと第1延伸ロール間で1%ストレッチをかけ、第1延伸ロールと第2延伸ローラ間で2.0倍の1段目の延伸を、第2延伸ロールと第3延伸ローラ間で2.57倍の2段目の延伸を行った。延伸後の糸条は第3延伸ローラとリラックスローラ間で7%弛緩処理を施した後、交絡付与装置にて適度な交絡を付与した後、巻取り機にて巻取った。引取りロール、第1延伸ロール、第2延伸ロール、第3延伸ロール、リラックスロールの温度はそれぞれ、非加熱、60℃、210 ℃、220℃、180℃であり、糸条のローラへの捲回数は実施例1と同様にした。この時の総延伸倍率は5.14倍である。得られたナイロン66原糸の評価結果を表1に示した。
さらに、得られたナイロン66原糸を用いて、経糸及び緯糸の織密度は60本×60本としたことを除いて実施例1と同様に製織し、織物を得た。得られた織物を用いて、実施例1と同様にエアバッグを縫製し、展開試験ならびに耐バースト試験等を行なった。得られた結果を表1に併せて示す。
表1に示す総繊度となるように、実施例2と同様の溶融紡糸をした。第3延伸ローラの温度を160℃にし、リラックスローラ間で5%弛緩処理を施した以外は実施例1と同様の延伸処理を行った。得られたナイロン66原糸の評価結果を表1に示した。
さらに、得られたナイロン66原糸を用いて、経糸及び緯糸の織密度は49本×49本としたことを除いて実施例1と同様に製織し、織物を得た。得られた織物を用いて、実施例1と同様にエアバッグを縫製し、展開試験ならびに耐バースト試験等を行なった。得られた結果を表1に併せて示す。
蟻酸相対粘度VRが85であるペレット状のナイロン66ポリマーを表1に示す総繊度となるように、実施例1と同様に溶融紡糸した。第1延伸ロールと第2延伸ローラ間で3.4倍の1段目の延伸を、第2延伸ロールと第3延伸ローラ間で1.56倍の2段目の延伸を行い、第3延伸ローラとリラックスローラ間で7%弛緩処理を施し、第3延伸ロール温度が230℃で、リラックスロール温度が210℃としたことを除いて、実施例1と同様の延伸処理を行なった。この時の総延伸倍率は5.30倍である。得られたナイロン66原糸の評価結果を表1に示した。
さらに、得られたナイロン66原糸を用いて実施例1と同様に製織し、織物を得た。得られた織物を用いて、実施例1と同様にエアバッグを縫製し、展開試験ならびに耐バースト試験等を行なった。得られた結果を表1に併せて示す。展開速度が遅く、沸騰水収縮率に比べ熱収縮応力が高くバランスが悪いため、耐バースト性評価後のバッグには縫製部の目開きが観察された。
蟻酸相対粘度VRが94であるペレット状のナイロン66ポリマーを温度295℃にてエクストルーダー式押出機を用いて融解させ、その後、スピンヘッドにて310℃に均温化させた。スピンヘッドから表1に示す総繊度となるようにギアポンプにて計量し、紡糸口金パックより紡出させた。紡出されたポリマーは、冷風により、冷却固化され、糸条を形成させた。固化した糸条に油剤を付与した後、一旦巻き取ることなく引取りローラで引取った。引取った糸条を引取りローラと第1延伸ロール間で3%ストレッチをかけ、第1延伸ロールと第2延伸ローラ間で3.8倍の1段目の延伸を、第2延伸ロールと第3延伸ローラ間でさらに1.4倍の2段目の延伸を行った。延伸後の糸条は第3延伸ローラとリラックスローラ間で3%弛緩処理を施した後、交絡付与装置にて適度な交絡を付与した後、巻取り機にて巻取った。引取りロール、第1延伸ロール、第2延伸ロール、第3延伸ロール、リラックスロールの温度はそれぞれ、非加熱、60℃、210 ℃、210℃、150℃であり、糸条のローラへの捲回数は1 回、2 回、3 回、3 回、4 回とした。この時の総延伸倍率は5.32倍である。得られたナイロン66原糸の評価結果を表1に示した。
さらに、得られたナイロン66原糸を500m/分の速度で整経し、次いで津田駒製ウォータージェットルーム(ZW303)を用いて、経糸及び緯糸の織密度を60本×60本に合わせ、回転速度800rpmで製織し織物を得た。得られた織物はそのまま100℃の乾燥ゾーンを通過させた。得られた織物に公知の方法にて20g/m2となるようシリコーンコートを施した後エアバッグを縫製し、展開試験ならびに耐バースト試験に用いた。得られた結果を表1に併せて示す。展開速度が遅く、耐バースト性評価後のバッグには縫製部を起点としたバーストが確認された。
比較例2と同様、表1に示す総繊度になるように、ナイロン66ポリマーを溶融紡糸した。引取りローラで引取った糸条を第1延伸ロールとの間で1%ストレッチをかけ、第1延伸ロールと第2延伸ローラ間で3.3倍の1段目の延伸を、第2延伸ロールと第3延伸ローラ間でさらに1.4倍の2段目の延伸を行った。この時の総延伸倍率は4.62倍である。延伸後の糸条は第3延伸ローラとリラックスローラ間で7%弛緩処理を施した後、交絡付与装置にて適度な交絡を付与した後、巻取り機にて巻取った。引取りロール、第1延伸ロール、第2延伸ロール、第3延伸ロール、リラックスロールの温度はそれぞれ、非加熱、60℃、210 ℃、230℃、200℃であり、糸条のローラへの捲回数は1 回、2 回、3 回、3 回、4 回とした。得られたナイロン66原糸の評価結果を表1に示した。
さらに、得られたナイロン66原糸を500m/分の速度で整経し、次いで津田駒製ウォータージェットルーム(ZW303)を用いて、経糸及び緯糸の織密度を49本×49本に合わせ、回転速度800rpmで製織し織物を得た。得られた織物はそのまま100℃の乾燥ゾーンを通過させた。得られた織物に公知の方法にて20g/m2となるようシリコーンコートを施した後エアバッグを縫製し、展開試験ならびに耐バースト試験に用いた。得られた結果を表1に併せて示す。展開速度が遅く、引張強力に劣るため高圧条件には耐えられずバッグバーストも確認された。
2 糸条
3 冷風筒
4 油剤付与ノズル
5 引取ロール
6 第1延伸ロール
7 第2延伸ロール
8 第3延伸ロール
9 リラックスロール
10 巻取り機
Claims (5)
- 総繊度が100〜700dtex、引張強度が9.0〜11.5cN/dtex、引掛強度が11.0cN/dtex以上、末端アミノ基濃度が20〜80(mmol/kg)、末端カルボキシル基濃度が40〜80(mmol/kg)、以下の式で表されるポリマー鎖切断指数DGが4〜15の範囲であるポリアミド繊維からなり、押し曲げ柔軟度が1.3×10-4cN/dtex以下であることを特徴とするポリアミド繊維。
DG=exp(1.613×102/(N+C)+2.715)−VR
ただし、N:繊維の末端アミノ基濃度(mmol/kg)
C:繊維の末端カルボキシル基濃度(mmol/kg)
VR:繊維の蟻酸相対粘度 - 引張速度が10m/秒である高速引張試験において、引張強度が11.0cN/dtex以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド繊維。
- 沸騰水収縮率Sが4〜11%であり、熱収縮応力σが0.25〜0.66cN/dtexであり、これらの関係が次式を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載のポリアミド繊維。
(0.0569×S+0.013)<σ<(0.0569×S+0.033) - 請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアミド繊維から構成されていることを特徴とするエアバッグ用織物。
- ポリアミドポリマーを溶融紡出し、押し曲げ柔軟度が1.3×10 -4 cN/dtex以下のポリアミド繊維を得る多段延において、紡出糸を前段で150℃未満の温度で全延伸倍率の25〜60%の延伸倍率で延伸し、引き続く後段で150℃以上の温度で残りの延伸を行い、次いで、熱弛緩処理を行って巻き取ることを特徴とする請求項1記載のポリアミド繊維の製造方法。
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