JP5637513B2 - 摺動材料およびメカニカルシール - Google Patents

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Description

本発明は、メカニカルシールなどに用いて好適な摺動材料と、これを用いたメカニカルシールに関し、さらに詳しくは、密封性能を有しながら、更に潤滑性能を向上できる摺動材料およびこれを用いたメカニカルシールに関する。
従来、メカニカルシールで炭化珪素同士を組み合わせて摺動させると自己潤滑性が乏しいために、摺動面が摩耗したり、摩擦係数が変動し急激な温度上昇が起こることにより熱応力割れが発生するなど、その優れた材料特性を発揮させることが困難であった。これは高硬度である炭化珪素の場合、なじみができ難く、また摺動面に適正なうねりができにくいため、比較的早い時期に炭化珪素同士が直接接触し、摺動面が損傷に至る場合がある。
従って炭化珪素をメカニカルシールの摺動材料に使用する場合は、摺動面の潤滑性能を向上させることが不可欠である。炭化珪素摺動面の潤滑性を向上させる方法の一つとして、従来から摺動面に気孔を形成し、それを密封流体の液溜まりにして潤滑性能を向上させることが挙げられる。一方で、メカニカルシールの摺動面では漏れを抑止しなければならず、密封流体の連続流体膜を遮断する必要がある。
このように相互に矛盾する効果を、摺動面上で同時に成立させる為には、摺動面の回転円周方向、及び径方向に、不連続な流体膜を形成させなければならない。このようにメカニカルシール用摺動材料には、他の摺動材料に無い密封性能を保持することが要求されており、単純に摺動面に気孔を形成させても、気孔を透過して漏れ経路ができてしまう場合が多い。
特許文献1では、粒子径20μmから300μmのカーボン粒子を炭化珪素粉末に混合し燒結体を作り、それに摺動面を設け、カーボン粒子が露出している摺動面のみカーボン粒子を燃焼除去することで、カーボン粒子の表面に凹を形成しようとするものである。
しかしながら、そのカーボン粒子の粒径は、20μmから300μmと幅があり、一様に凹みの底にカーボンを残存させるように燃焼除去するのは非常に難しいことが容易に想像され、実際にはカーボン粒子が全て酸化して無くなるか、残ったとしても酸化されて強度が無くなっている可能性が高い。
また、燒結体表面のカーボン粒子どうしがいくつか連結している箇所を燃焼除去すると、そこが漏れ経路になり密封性能を低下させてしまう。更に、カーボン粒子を囲む炭化珪素周縁部が破損防止のために、炭化珪素周縁部にカーボンを残そうとしているが、燃焼する際は表面に近いほど温度が高いため除去され易く、カーボンが残存したとしても脆く脱落し易い。
このように、特許文献1に記載された、摺動面のカーボンを燃焼除去し、カーボン表面に凹みをつける造孔方法には問題があり、メカニカルシールの機能を向上させる技術として十分とは言えない。
また、中空を有するカーボンビーズを含有した炭化珪素焼結体を摺動部材に用いたメカニカルシールに関する従来技術として、特許文献2がある。しかしながら、カーボンビーズは化学結合様式や結晶構造などが多種多様であり、その性状によってはプレス成形時に球状カーボンが強度不足になるといった問題が発生する可能性がある。
また、単純に球状カーボンを炭化珪素組織中に分散させただけでは、炭化珪素とカーボン粒子間の結合が不十分なため、摺動面上に形成された球状カーボンが脱落する問題がある。
このように、メカニカルシール用摺動材料では、気孔の形成と密封性能を両立させるのは技術的に難しい課題とされており、潤滑効果を有する気孔分散摺動材料で、かつ密封性能を有するメカニカル用摺動材料が要求されている。
特開2004−116587号公報 特開2001−139376号公報
たとえば、炭化珪素の摺動面を鏡面仕上げにすると微小なうねりがとれて回転させても動的な圧力が発生せず、そのために固体どうしの強い接触が起こる。しかしながら、摺動面上にできる動的な圧力は、うねりや粗さが大きくなり過ぎると減少し、摺動面どうしがうねりの凸部で接触するようになる。
このように動的な圧力が発生し、しかも漏洩しないためには、摺動面にサブミクロンの極微小なうねりが必要であるが、メカニカルシールでは、摺動面に形成されたサブミクロンの極微小なうねりが、摺動性能と密封性能に大きく影響を与える。
従来のカーボン摺動材料では、この極微小なうねりが容易にできるため動圧とキャビテーションが発生し、密封性能が保持されたまま良好な潤滑性能が得られていた。ところが炭化珪素の場合は安定したサブミクロンの極微小なうねりができ難いため、漏れ発生や摺動面どうしが接触し破損に至ってしまう。
従来から、炭化珪素摺動材料は自己潤滑性が乏しいことについては言及されてきたが、それとは別に、炭化珪素摺動材料で密封性能と潤滑性能が良好に維持できないのは、適正なうねりが摺動面に形成されないために起きていることについて見逃されてきた。
本発明は、従来見逃されていた上記の知見に基づき、自己潤滑性が乏しいとされる炭化珪素同士を摺動させるメカニカルシールにおいて、密封性能を有しながら、更に潤滑性能を向上させることができる新しい技術として、摺動面にピーク気孔径(頻度が最大となる気孔径/以下、同様)が異なる複数の気孔群を形成した炭化珪素摺動材料を新たに提案する。
上記目的を達成するために、本発明に係る摺動材料は、
摺動面上に気孔が形成された摺動材料であって、
頻度が最大となる気孔径が0.05〜0.1mmの範囲にある気孔の集合をマクロドメインとし、頻度が最大となる気孔径が前記マクロドメインの頻度が最大となる気孔径を示す値の0.2〜0.5倍である気孔の集合をミクロドメインとしたとき、
前記マクロドメインが前記摺動面上に占める面積の割合を示すマクロドメイン面積率が2.0〜10.0%であり、
前記ミクロドメインが前記摺動面上に占める面積の割合を示すミクロドメイン面積率が、前記マクロドメイン面積率の0.5〜3倍である。
好ましくは、前記摺動面上において、前記マクロドメインおよび前記ミクロドメインに属する気孔の全周囲が、前記摺動材料を構成する材質よりも軟質な材質で覆われている。
好ましくは、前記摺動材料を構成する材質が炭化珪素を含む。
好ましくは、前記軟質な材質が炭素質を含む。
本発明では、摺動面上に形成された気孔は、ピーク気孔径を積極的に変えた複数の気孔群であるマクロドメイン、及びミクロドメインから成る。そして、相対的に気孔断面の面積が大きいマクロドメインに保持された密封液が、軸に固定されたシール回転環の回転により摺動面に発生する動的圧力により負荷容量が得られると同時に、気孔外の摺動面に流出して潤滑状態を良化させる効果を発生させる。
したがって、メカニカルシール摺動面のマクロドメインに保持されていた密封液は、動的圧力の発生と共に気孔内から押し出され、相対的に気孔径が小さいミクロドメインに吸収されて密封液が機外側へ漏れるのを防ぐ働きをする。
その結果、マクロドメインとミクロドメイン間を双方向に移動する際、密封流体が摺動面上に存在し液体膜を形成して潤滑効果を成し、空の気孔内ではキャビテーションが発生することにより液体膜は遮断されるため密封効果が得られる。
また、自己潤滑性が乏しい摺動材料、特に炭化珪素摺動材料のどちらか片方の摺動面上に、難黒鉛炭素から成る外殻により外部から遮断され内部に一つの気孔を有する中空球状炭素質粒子の切断面にできる半球を、上記の気孔とすることが好ましい。
本発明では、このように同一摺動面上において相矛盾する潤滑性能の向上と、長期間安定したシール性能の維持を可能にしたものである。その特徴は、炭化珪素焼結体中に偶然出来上がる気孔ではなく、気孔の大きさや分布を制御して目的の気孔を定量的に作ることにあり、その結果として良好な摺動性能と、密封性能の維持を可能にした。
本発明に係るメカニカルシールは、上記のいずれかに記載の摺動材料を、固定用密封環および/または回転用密封環として有する。このようにすることで、密封性および摺動性に優れたメカニカルシールを得ることができる。なお、本発明に係るメカニカルシールにおいては、本発明の摺動材料を、固定用、回転用の双方の密封環として用いてもよい。あるいは、固定用密封環として用いてもよいし、回転用密封環として用いてもよい。
図1は、本発明の一実施形態に係る摺動材料の摺動面近傍の断面模式図である。 図2(A)〜(C)は、摺動面上に存在する流体の摺動時の挙動を説明するための摺動面の断面模式図である。 図3(A)および(B)は、図2の続きを示す摺動面の断面模式図である。 図4(A)および(B)は、マクロドメインおよびミクロドメインの気孔径の分布を示す模式図である。 図5は、マクロドメインおよびミクロドメインに属する気孔の全周囲が炭素質の材料で覆われている摺動材料の摺動面の断面模式図である。 図6は、本発明の一実施形態に係る摺動材料を用いたメカニカルシールおよびその試験装置の概略断面図である。 図7は、実施例1〜3、比較例1〜3および7の摺動リングを用いたメカニカルシールおよびその性能試験装置の概略断面図である。 図8(A)は、実施例1〜3の摺動リングを密封回転環として用いたメカニカルシール性能試験において、摺動面の比摩耗量と、G値と、の関係を示すグラフであり、図8(B)は、比較例1〜3および7の摺動リングを密封回転環として用いたメカニカルシール性能試験において、摺動面の比摩耗量と、G値と、の関係を示すグラフである。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
摺動材料
本実施形態の摺動材料は、摺動面上に特定の気孔径を有する気孔が特定の割合で形成されたものである。
本実施形態の摺動材料を構成する材料としては、特に制限されないが、たとえば、アルミナ(Al)、炭化珪素(SiC)、超硬合金等の硬質な材料であることが好ましい。本実施形態では、摺動材料は炭化珪素で構成される。
先ず、図1に示すように、摺動材料(炭化珪素)において、単位面積あたりの摺動面50に形成された気孔(マクロ気孔61、ミクロ気孔62)に着目する。図2(B)および(C)に示すように、マクロ気孔61の中にある密封液体80は、摺動面50の回転により動的な圧力が発生して正の圧力になることにより、マクロ気孔61の外へ放出される。そうすると、マクロ気孔内は密封液体が減ったため負圧になり、気孔内にキャビテーションが発生する。しかし、マクロ気孔内が飽和蒸気圧以下になると、図2(A)および図3(B)に示すように、周囲からの密封流体80の流れ込みによりキャビテーションは消滅し、マクロ気孔61内は再び密封液体80で満たされる。
一方、マクロ気孔61から放出された密封液体80は、図2(C)および図3(A)に示すように、回転方向に引きずられながら負圧になっている周囲のミクロ気孔62に吸い込まれる。このときマクロ気孔61から放出された密封流体80は摺動面間に液膜として存在して移動するため、摺動面間で潤滑効果の働きをするため摩擦係数を低下させる。また、マクロ気孔61内が正の圧力になった瞬間、圧力上昇により負荷容量が上昇するため固体どうしの接触を緩和させる。更に、気孔を摺動面上に配置することにより、上述したメカニカルシールの密封性能の維持に不可欠なキャビテーションが積極的に発生する。
平均気孔径が異なることの幾何学的な意味を説明すると、例えばマクロ気孔の半径が1/2に減じると、気孔内の体積は1/8に減る。マクロ気孔とそれを取り囲む近傍のミクロ気孔に限ると、両方の気孔から押し出される流量は同じであるが、体積が小さいミクロ気孔の方が早く枯渇する。すなわちこの作用によってマクロ気孔とミクロ気孔間のサイクルモードに時間差を持たせることが可能になる。
積極的にピーク気孔径が異なる気孔群を同一摺動面に形成することで、以下のような効果が得られる。マクロ気孔に密封流体が流れ込み、それを放出し、再度取り込む一連のサイクルモードに時間差を発生させることにある。相対的に見て気孔体積が大きいマクロドメインよりも、相対的に気孔体積が小さいミクロドメインの方が応答は速い。
したがって、マクロ気孔61に動的な圧力が発生し正圧になったとき、マクロ気孔61近傍のミクロ気孔62では、一足早く負圧となりキャビテーションが起っており、図2(C)に示すように、マクロ気孔61から放出された密封流体80を吸収するため機外へ漏洩するのを防ぐ働きをする。
図3(A)および図3(B)に示すように、そしてミクロ気孔62が吸収した密封流体が動的な圧力により流出するのもマクロ気孔61よりも早く発生し、密封流体80はミクロ気孔62から、キャビテーションが起きているマクロ気孔61へと流れ込む。このように密封流体80がマクロ気孔61から近傍のミクロ気孔62へ、そしてミクロ気孔62から近傍のマクロ気孔61へと摺動面上を移動するとき、摺動面上に液膜を形成するため潤滑効果が得られることになる。
しかしながら、従来技術のように、頻度が最大となる気孔径(ピーク気孔径)が単一の気孔を摺動面に形成すると、密封流体が近くの気孔に流れ込んで止まってしまい、摺動面上に広がらず潤滑効果が期待できないか、または、流出した密封流体が摺動面に広がり過ぎて機外に漏洩する懸念がある。例えば気孔径が0.2mm の気孔に満たされている密封流体が全て摺動面に放出されて広がったとすると約10mm2 にも達する。したがって従来の単一のピーク気孔径を有する摺動面では、摺動面の回転で発生する動的な圧力上昇による負荷容量を増加するために気孔面積を単純に増やしてしまうと、上記のように摺動面上に密封流体膜が大きく広がり、摺動面に漏れ経路ができて機外へ漏洩する。
一方、比較的小さな気孔を摺動面全体に形成すると、機外への漏洩は無くなるものの、気孔から排出される密封流体が少な過ぎて摺動面上で潤滑効果が得られない問題がある。
本実施形態では、積極的にピーク気孔径を変えて気孔を形成した炭化珪素摺動面は、気孔径が異なる気孔群同士の間の比率が重要になる。マクロ気孔とミクロ気孔の比率は、ミクロ気孔径をマクロ気孔径の1/2から1/5の範囲とし、更に気孔面積の比を0.5から2.0にすることで、マクロ気孔に対し、前述の気孔径の範囲にあるミクロ気孔を摺動面に生成すると、潤滑性能と密封性能の両方が維持できる範囲である。
また、図4(A)に示すように、ピーク気孔径が0.05〜0.1mmの範囲にある気孔の集合がマクロドメインであり(マクロ気孔群)、ピーク気孔径がマクロドメインのピーク気孔径を示す値の0.2〜0.5倍の範囲にある気孔の集合がミクロドメインである(ミクロ気孔群)。
すなわち、ピーク気孔径が0.05mmのマクロドメインが存在する場合、本実施形態では、ミクロドメインの気孔径のピークは0.01〜0.025mmの範囲にあり、ピーク気孔径が0.1mmのマクロドメインが存在する場合、本実施形態では、ミクロドメインの気孔径のピークは0.02〜0.05mmの範囲にある。
なお、マクロドメインの気孔径の分布と、ミクロドメインの気孔径の分布と、が重なっている場合には、図4(B)に示すように、分布と分布との境界部分で分ける。
さらに、このマクロドメインが摺動面上に占める面積の割合(マクロドメイン面積率)は、2.0〜10.0%、好ましくは3.0〜7.0%である。また、ミクロドメインが摺動面上に占める面積の割合(ミクロドメイン面積率)は、マクロドメイン面積率の0.5〜3倍、好ましくは0.7〜1.5倍である。
また、従来技術では気孔をそのまま炭化珪素摺動面に形成しているため、気孔の淵が鋭利にできあがり、この部分にせん断応力により欠ける事がある。欠けて脱落した炭化珪素の微細なかけらが摺動面にそのまま残留し、摺動面を摩耗させ損傷させる場合があるが、これを防ぐ最良の方法は、炭化珪素どうしの摺動面に微細な炭化珪素のかけらが生じさせないことが大事である。
そこで、本実施形態では、図5に示すように、摺動時に炭化珪素摺動面50に形成された気孔61,62の淵は中空球状炭素質粒子70で覆われていて、応力集中が起きない構造にしているため、炭化珪素片の脱落を防止することができる。そして更に、各気孔は中空球状炭素質粒子70から成る気孔の中央にあるため、気孔どうしは最短でも炭素外殻で隔てられており、そのため摺動面には独立した気孔が形成され、気孔どうしがつながって漏れ経路が形成されることが無い大きな利点がある。
また、メカニカルシール用の摺動材料の気孔の場合、密封性能を保持するために気孔どうしが独立し連通していないことが大変重要である。更に、摺動面に形成された気孔の周囲が欠けて微小炭化珪素片が離脱し炭化珪素摺動面を損傷することがある。この微小炭化珪素片は摺動面から排出させるのは難しく、摺動面に入り込むとアブレシブ摩耗を引き起こすが、そもそも破壊靭性値が小さい炭化珪素の場合には摺動面を局所的に強く接触させない事と、応力集中が起き易い鋭利な角を作らないようにする必要がある。
メカニカルシール
メカニカルシールの構造を限定するものではないが、一般産業用ポンプに装着されるメカニカルシール100の半断面を図6に示す。図6において、密封回転環110は、回転軸1にセットスクリュー112で締結固定されたシールケース113に組み込まれ、軸と一体で回転し、その片側端面にシール面52を有し、密封回転環110の内周段部で軸1との間に二次シール2を組み込むことにより液漏れを封止する。
更に密封回転環110は、シールケース113によって軸線方向の移動が制限され、かつ軸線方向に押し付け力を付与するばね115の弾発力が、押えリング117を介して軸方向に移動可能である密封回転環110を、非回転の固定密封環120方向に押し付けるように構成されている。
そして、密封回転環110に対面する位置にある固定密封環120の片側端面のシール面53が、密封回転環シール面52に接触しながら回転摺動する。固定密封環120の外周段部とポンプケーシング5との間に、二次シール3を装着し液漏れを封止する。固定密封環120は、ポンプケーシング5の内周に設けた回り止め防止の固定ピン6を介して回転を拘束される。
このように構成されたメカニカルシール100は、密封回転環110と、固定密封環120が回転しながら回転摺動し、高圧側被密封流体P1を封止する作用を有するものである。
本実施形態では、密封回転環110及び、固定密封環120が炭化珪素で構成されるか、または、密封回転環110、固定密封環120のどちらか片方が、炭素、黒鉛、炭素黒鉛混合など軟質摺動材料で形成され、密封回転環110のシール面52、または、固定密封環120のシール面53のどちらか片方に気孔を生成する。
摺動材料の製造方法
本実施形態に係る摺動材料を製造する方法としては特に制限されないが、たとえば以下に示す方法により製造すればよい。
原料としては、炭化珪素粉末を準備する。
摺動面に気孔を形成するための造孔材としては、球状炭素質粒子を準備する。この球状炭素質粒子は、入手可能な既存のものを使用すればよく、フエノール樹脂、コールタールピッチなども入手できるが、本実施形態では、カーボンブラックを原料とする中空球状炭素質粒子を用いる。
本実施形態において、中空球状炭素質粒子を造孔材に用いる理由は、1.中空球状炭素質粒子が鋭利な角ができ易い摺動面上にある気孔周辺の淵を炭素粒子で覆うことで炭化珪素片の脱落を防げる。また、2.中空球状炭素質粒子の外周にある炭素の殻によってそれぞれの気孔が隔てられるため、気孔どうしが連通することなく独立気孔が形成され、3.樹脂ビーズを使用した場合に比べて、焼成過程で生じる分解ガスが極めて少ないため、セラミックス部材の強度を低下させるような亀裂の発生を回避できるからである。
一方、中空造孔材に要求される好ましい物理化学的性質として、1.融点が焼結温度よりも高く、焼結温度においても強度が低下せず安定であること、2.中空を有する球形状を保持したままで、かつ摩擦係数を低下させる効果があること、3.炭化珪素の焼結を妨げないこと、4.摺動時に脱落しないため炭化珪素と強固に結合すること、 5.耐食性があること、そして、6.熱膨張率が炭化珪素と同じであることが挙げられる。
これらの条件をほぼ満たし安価で入手可能な材料としてカーボンと黒鉛がある。黒鉛は優れた自己潤滑性を有するが、黒鉛を中空球状粒子にした場合次のような欠点がある。先ず、黒鉛の機械的性質が異方性材料であるため圧縮率が層状方向で異なっており均等に圧縮せず、炭化珪素燒結中に仮に周囲から均等に圧縮力を受けたとしても中空を保持したまま球形を維持するのは難しい。
また、黒鉛は強度が低く容易にへき開し易く、また黒鉛は結晶性が高い炭素六方網面であるため炭化珪素と強い結合ができにくく、摺動中に中空黒鉛粒子が脱落する恐れがある。カーボンと黒鉛の材料強度を比較すると、ヤング率はカーボンが約2倍、曲げ強さと圧縮強さもカーボンの方が約1.5倍大きく黒鉛よりも勝っている。また、黒鉛は炭素に比べ焼結中において炭化珪素粒子の粒成長を抑制する効果が小さい。以上の理由により、本実施形態では炭素を使った中空球状炭素質粒子とする。
なお、中空球状炭素質粒子が炭化珪素の焼結過程において黒鉛化する可能性がある。しかしながら、黒鉛化の主要因子は圧力と加熱温度であり、常圧下では約2500℃以上の高温熱処理が必要であると言われている。また、いかなるカーボンでも加熱することにより黒鉛化するのではなく、カーボンの性状により難黒鉛化性(GC)のものと、易黒鉛性カーボンとがある。
易黒鉛化カーボンとしては、メゾフェースカーボン、コークス、熱分解炭素などが知られている。一方、難黒鉛化性カーボンは、カーボンブラック、またはフエノール樹脂やフラン樹脂を1000℃付近で熱処理すると難黒鉛化性カーボンの生成が可能である。
これら難黒鉛化性カーボンにつき検討した結果、中空球状炭素質粒子材として熱処理しても炭素層面の発達が制約されるために難黒鉛化性を強く有するカーボンブラックが好ましいことが分かり、本実施形態では、カーボンブラックを原料とする中空球状炭素質粒子とする。
また、摺動材料の原料として、炭化珪素粉末に加え、焼結助剤として硼素微粉末、あるいは炭化珪素の粒成長を抑え微細でち密な組織を生成させるための炭素粉末やカーボンブラック微粉末を添加してもよい。この場合、炭素微粉末やカーボンブラック微粉末は焼結助剤として働き、炭化珪素粉末中にあるSiO2被覆を還元除去し、炭化珪素粉末粒子間の原子拡散を増長させる効果がある。
一方、硼素は焼結過程の初期に炭化珪素粉末の表面に拡散し、炭化珪素粉末の表面エネルギーを低下させて炭化珪素の蒸発、および表面拡散を抑制し、炭化珪素の緻密化を促進させる効果がある。本実施形態では、焼結助剤としてB4Cを0.10重量%〜1.0重量%加えることが好ましい。
また、気孔形成材として入れたカーボンブラック粉末から作った中空球状炭素質粒子は、炭化珪素の結晶粒の粗大化を抑制する働きを持つ。これは、中空球状炭素質粒子を炭化珪素の粒界に分散させておくと、焼結が進み炭化珪素粒子が成長して中空球状炭素質粒子に衝突すると、そこで成長が抑制されるため異常粒成長を抑制する。この効果により、中空球状炭素質粒子の周りには緻密な炭化珪素粒子が形成されるようになり、焼結の進行に伴い均一な圧縮力を受けて強固に結合される。
中空球状炭素質粒子が内包する1つの気孔径と、中空球状炭素質粒子の外径間には相関があるので、中空球状炭素質粒子を投入する前に、スクリーニングを行うことにより目的とする範囲の粒径分布が得られる。
さらに、本実施形態では、炭化珪素粉末100重量%に対し、平均粒子径が1.0×10-2μmから3.0×10-1μmの微細炭化珪素粉末を1.0重量%から8.0重量%添加することが好ましい。球形に近い粒子の比表面積(表面積/体積)は粒子径に反比例し、粒子径が小さくなるほど比表面積が大きくなり、粒子表面での吸着や反応が活発化して焼結助剤が多く付着するため、炭化珪素の焼結を進行させる効果がある。
この微細炭化珪素粉末を添加分散させると、反応性が高い微細炭化珪素粉末と隣り合う炭化珪素粒子の表面エネルギーを低下させ、焼結を進み易くし高密度の炭化珪素焼結体が得られ易くなる。本実施形態では、炭化珪素燒結体の組織に中空球状炭素質粒子を分散させているため、強度を維持するために密度を高くする必要がある。更に中空球状炭素質粒子が炭化珪素組織から脱落しないように物理的に強固に結合させる必要もある。
微細炭化珪素粉末を添加分散させると高密度の炭化珪素焼結体が得られ、中空球状炭素質粒子は周囲の炭化珪素粒子が焼結に伴う収縮力を受け、炭化珪素粒子との境界で固体力学的な収縮力により強固に結合される。
ここで微細炭化珪素粉末の平均粒子径を1.0×10-2μm以上とするのが好ましいのは、粒径が細かくなるほど凝集してしまい、微粒子のまま添加するのが難しくなるためで、平均粒子径をこれ以下にすると、分散材として例えば濃厚コロイド系を使用しても一次粒子かそれに近い粒径まで分散させることが困難となる傾向にある。
また、微細炭化珪素粉末の平均粒子径の上限を3.0×10-1μmとするのが好ましいのは、これより大きい微細炭化珪素粉末を添加すると分散性は格段に良くなるが、中空球状炭素質粒子と周囲を取り囲む炭化珪素粒子近傍を観察で結晶密度の良化があまり見られなかったことによる。
上述した炭化珪素粉末、微細炭化珪素粉末および焼結助剤(BC等)に対し、結合剤として有機系の樹脂、例えばアクリル樹脂、フェノール樹脂、コールタールピッチ、ポリイミド、エポキシ樹脂のうちの1種類を、2.0重量%から5.0重量%添加することが好ましい。これら有機物質は有機溶媒中に溶けるが、環境配慮から水溶性フェノール樹脂が好ましく、150℃以下の加熱で硬化することが望ましい。
更に、水溶性ポリビニルアルコールを好ましくは1.5重量%から3.0重量%と、中空球状炭素質粒子、それにイオン交換水を加えその中に界面活性剤を加えてスラリーを作る。スラリーをボールミルで十分攪拌した後、スプレードライヤでスラリーを乾燥させて顆粒化する。
この顆粒をメカニカルシール形状にほぼ近い金属金型プレス、またはラバープレスで圧縮成形し、更に結合剤を硬化させるために、120℃付近で1〜2時間成形体を加熱し硬化を完了させる。これをメカニカルシールの部品寸法に機械加工する。焼成は、無加圧下でアルゴン、または真空雰囲気中で好ましくは2050℃〜2150℃で行えばよい。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
実施例1
まず平均粒子径1μmに粉砕した炭化珪素粉末100重量%に対し、以下の成分を混合しスラリーにした。0.3μm以下の微細炭化珪素粉末を4.0重量%添加し、焼結中に起きる炭化珪素の結晶成長を抑えるために3重量%のカーボンブラックを添加し、焼結助剤としてB4Cを0.15重量%添加した。更に結合剤として水溶性フェノール樹脂を4.0重量%、ポリビニルアルコールを2.5重量%添加した。
中空球状炭素質粒子は、中空部分の平均気孔径が0.1mmのものを1.1重量%と、中空部分の平均気孔径が0.02mmのものを0.2重量%とを用い、これにイオン交換水を加え濃度40%のスラリーにし、次に中空球状炭素質粒子をスラリー中に均一に分散させるためにボールミルで20時間混合攪拌し、スプレードライヤにより噴霧乾燥して顆粒体にした。
この顆粒体を金属型に充填し100MPaで加圧成形し、更に結合剤を硬化させるために、120℃付近で1〜2時間成形体を加熱し硬化を完了させたあと、試験用摺動リングの寸法に機械加工し、アルゴン雰囲気中にて2150℃で焼結した。
焼結摺動リング組織の確認は、研摩・ラップ後の摺動面を光学顕微鏡、またはデジタルマイクロスコープで、50倍から100倍の範囲で撮影した摺動面写真を画像解析専用のソフトウェアに取り込み、計測領域の指定、画質改善フィルターによる補正と、画素長を1.000μm/dotに設定し、気孔径、気孔面積を測定した。
測定結果は、任意の摺動面積10mm2中において、ピーク気孔径が0.086mmで、その標準偏差が0.026mmである気孔群、そしてピーク気孔径が0.018mmで標準偏差が0.008mmである気孔群が存在しており、全体の面積気孔率は11.7%であった。また、ラップ後の摺動面仕上げ粗さRaは0.03〜0.05μmであった。上記炭化珪素密封摺動環をM01とし、JIS R 1601に従う曲げ強さ試験用の抗折試験片をT01とする。
実施例2
中空球状炭素質粒子として、中空部分の平均気孔径が0.1mmのものを1.1重量%と、中空部分の平均気孔径が0.05mmのものを1.0重量%とを添加した以外は、実施例1と同様にして、焼結摺動リングを作製した。また、焼結摺動リングの組織の確認は、実施例1と同様にした。
測定結果は、任意の摺動面積10mm2中において、ピーク気孔径が0.092mmで、その標準偏差が0.023mmである気孔群、そしてピーク気孔径が0.053mmで標準偏差が0.02mmである気孔群が存在しており、全体の面積気孔率は22.8%であった。また、ラップ後の摺動面仕上げ粗さRaは0.03〜0.05μmであった。上記炭化珪素密封摺動環をM02とし、JIS R 1601に従う曲げ強さ試験用の抗折試験片をT02とする。
実施例3
中空球状炭素質粒子として、中空部分の平均気孔径が0.05mmのものを3.3重量%と、中空部分の平均気孔径が0.01mmのものを3.3重量%とを添加した以外は、実施例1と同様にして、焼結摺動リングを作製した。また、焼結摺動リングの組織の確認は、実施例1と同様にした。
測定結果は、摺動面積10mm2中において、ピーク気孔径が0.050mmで、その標準偏差が0.015mmである気孔群、そしてピーク気孔径が0.009mmで、標準偏差が0.003mmである気孔群が存在しており、全体の面積気孔率が7.7%であった。また、ラップ後の摺動面仕上げ粗さRaは0.03〜0.05μmであった。上記炭化珪素密封摺動環をM03とし、JIS R 1601に従う曲げ強さ試験用の抗折試験片をT03とする。
比較例1
中空球状炭素質粒子として、中空部分の平均気孔径が0.1mmのものを7.2重量%添加した以外は、実施例1と同様にして、焼結摺動リングを作製した。また、焼結摺動リングの組織の確認は、実施例1と同様にした。
測定結果は、任意の摺動面積10mm2中に、ピーク気孔径が0.098mm、その標準偏差が0.019mmであり、面積気孔率が8.8%であった。また、研摩・ラップ後の摺動面仕上げ粗さRaは0.03〜0.05μmであった。上記炭化珪素密封摺動環をS01とする。
比較例2
中空球状炭素質粒子として、中空部分の平均気孔径が0.05mmのものを13.0重量%添加した以外は、実施例1と同様にして、焼結摺動リングを作製した。また、焼結摺動リングの組織の確認は、実施例1と同様にした。
測定結果は、任意の摺動面積10mm2中において、ピーク気孔径が0.052mm、その標準偏差が0.018mmであり、面積気孔率が19.0%であった。研摩・ラップ後の摺動面仕上げ粗さRaは0.03〜0.05μmであった。上記炭化珪素密封摺動環をS02とする。
比較例3
中空球状炭素質粒子として、中空部分の平均気孔径が0.05mmのものを7.3重量%添加した以外は、実施例1と同様にして、焼結摺動リングを作製した。また、焼結摺動リングの組織の確認は、実施例1と同様にした。
測定結果は、任意の摺動面積10mm2中において、ピーク気孔径が0.046mm、その標準偏差が0.017mmであり、面積気孔率が8.4%であった。また、研摩・ラップ後の摺動面仕上げ粗さRaは0.03〜0.05μmであった。上記炭化珪素密封摺動環をS03とする。
比較例4
平均粒子径1μmに粉砕した炭化珪素粉末100重量%に対し、0.3μm以下の微細炭化珪素粉末を3.0重量%添加し、3重量%のカーボンブラックを添加した。更に焼結助剤としてB4Cを0.15重量%添加した。更に結合剤として水溶性のフェノール樹脂を4.0重量%添加した。
次に、平均気孔径が0.01mmの市販のポリスチレンビーズを1.8重量%と、イオン交換水とを加え濃度40%のスラリーにし、次にポリスチレンビーズをスラリー中に均一に分散させるためにボールミルで24時間混合攪拌し、スプレードライヤで噴霧乾燥して顆粒体にした。この顆粒体を金属型に充填し加圧成形し、試験用摺動リングの寸法に機械加工したあと、アルゴン雰囲気中にて2150℃で焼結した。
焼結摺動リングの組織の確認は、実施例1と同様にした。測定結果は、任意の摺動面積10mm2中において、ピーク気孔径が0.01mm、標準偏差が0.006mmで、面積気孔率が5.6%であった。上記炭化珪素密封摺動環をS04とする。
比較例5
0.3μm以下の微細炭化珪素粉末を4.0重量%添加し、平均気孔径が0.01mmの市販のポリスチレンビーズを23重量%添加した以外は、比較例4と同様にして、焼結摺動リングを作製した。また、焼結摺動リングの組織の確認は、実施例1と同様にした。
測定結果は、任意の摺動面積10mm2中において、ピーク気孔径が0.009mm、標準偏差が0.004mmで、面積気孔率が20.5%であった。上記炭化珪素密封摺動環をS05とする。
比較例6
0.3μm以下の微細炭化珪素粉末を4.0重量%添加し、平均気孔径が0.20mmの市販のポリスチレンビーズを0.7重量%添加した以外は、比較例4と同様にして、焼結摺動リングを作製した。また、焼結摺動リングの組織の確認は、実施例1と同様にした。
測定結果は、任意の摺動面積10mm2中において、ピーク気孔径が0.196mm、標準偏差が0.028mmで、面積気孔率が4.6%であった。上記炭化珪素密封回転環をS06とする。
比較例7
0.3μm以下の微細炭化珪素粉末を4.0重量%添加し、造孔材を添加しなかった以外は、比較例4と同様にして、焼結摺動リングを作製した。得られた摺動環の摺動面を研摩・ラップし、表面粗さ(Ra)を0.02μm〜0.05μmに仕上げた。上記の炭化珪素密封回転環をS07とする。
比較例8
まず平均粒子径を1μmに粉砕した炭化珪素微粉末100重量%に対し、3重量%のカーボンブラックを添加し、焼結助剤としてB4Cを0.15重量%添加し、更に水溶性のフェノール樹脂を4.0重量%、ポリビニルアルコールを2.5重量%添加した。さらに、中空部分の平均気孔径が0.01mmの中空球状炭素質粒子を17.0重量%と、イオン交換水を加え濃度40%のスラリーにし、次に中空球状炭素質粒子がスラリー中に均一に分散させるためにボールミルで20時間混合攪拌し、スプレードライヤで噴霧乾燥して顆粒体にした。この顆粒体を金属型に充填し100MPaで加圧成形し、試験用摺動リングの寸法に機械加工したあと、アルゴン雰囲気中にて2150℃で焼結した。
焼結摺動リングの組織の確認は、実施例1と同様にした。測定結果は、任意の摺動面積10mm2中において、ピーク気孔径が0.009mm、標準偏差が0.003mmで、面積気孔率が18.0%であった。JIS R 1601に基づく曲げ強さ試験用の試験片をT08とする。
Figure 0005637513
Figure 0005637513
表1より、平均粒子径が異なる中空球状炭素質粒子を用いることにより、ピーク気孔径が異なる摺動材料が得られることが確認できた。
また、表2より、微細炭化珪素粉末を用いることで、気孔の形成に起因する焼結体強度の低下を抑制できることが確認できた。これに対し、微細炭化珪素粉末を用いなかった比較例8の焼結体は曲げ強度が大きく低下していることが確認できた。
メカニカルシール静止試験
図7に示すように試験機の組み込まれたメカニカルシールの密封固定環210に上述の炭化珪素固定環を装着し、対向する回転環にM01〜M06、及びS01〜S03を装着し、静止(非回転)時の漏れ試験をおこなった。試験方法は、図7に示すメカニカルシール試験機を回転させず静止状態にし、ハンドポンプにより7MPaに昇圧させた水を機内側50に供給し、そのまま30分間放置し大気側60への漏れの有無を目視で確認した。試験結果は、摺動面に気孔を有するM01〜M06、及びS01〜S03の供試回転環において漏れは確認されず、静止静圧状態で良好な密封性能を保持していることが確認された。
全ての試料(実施例1〜3および比較例1〜3、7)について、大気側への漏れが確認できず、良好な密封性能を示すことが確認できた。
メカニカルシール性能試験
図7に示すメカニカルの密封固定環210に、上述の炭化珪素固定環を装着し、対向する回転環100に実施例1〜3の供試摺動環M01〜M03を装着し、以下に示す条件で回転試験をおこない摺動性能とシール性能の確認をおこなった。
密封液は水道水、タービン油VG32、及びVG46を使用し、供給側入り口温度を20℃〜80℃、プロセス圧力を0.2MPa〜3MPa、回転数を500r/min〜3600r/minの範囲で調整し、試験中の回転側、及び静止側摺動面温度を摺動面直下1mm以下の位置に熱電対を挿入して計測を行い、この温度から密封液の粘度を求めた。
試験結果を図8(A)および(B)に示す。図8中に示す各点の試験試時間は、72時間〜100時間で、試験終了後に摩耗深さを測定し、そのあと再研摩・ラップして再使用した。試験後の摺動面2箇所を表面粗さ計で半径方向に5000倍でトレースして摩耗深さを求め、それを基に摩耗体積を算出し、荷重と摺動距離から比摩耗量を算出した。
メカニカルシールの漏れ性能試験の評価を、無次元特性数G値と摩擦係数fとの関係で表すf-Gグラフを用いて行う。このグラフでは、試験で漏れた点と漏れなかった点との間には明確に境界線(密封限界線)ができることを見つけ、その境界線は摩擦係数fに対し右肩上がりを示し、その境界線より上では漏れは無く、その境界線より下では漏れが認められることになる。上記のGは、以下の式1で与えられる。
G=(ZVb)/W …式1
ここで、G:無次元特性数、Z:摺動部近傍の流体の粘性係数、Vは速度、bはしゅう動面幅、wは荷重である。
一方、f-Gの関係を以下の式2に示すが、f-Gグラフの中において密封と漏れの境界線上の値Ψcが存在し、密封の限界はこのΨcによって決まる。メカニカルシールでは、f−Gグラフ中のΨが右肩上がりになると、流体潤滑領域である流体膜が形成されていることを示す。
Ψ=f/√G …式2
実施例1〜3の摺動性能試験の結果を図8(A)に示すが、全ての点で漏れは無かった。図8(A)および(B)に示すグラフは、縦軸に比摩耗量(fに比例)を、横軸に式1で定義される無次元特性数G値をとったものである。このG値の定性的な見方を表3に示すが、G値は荷重(W)が大きくなると小さくなり、温度上昇により粘度(Z)が下がると小さくなり、速度(V)が下がると小さくなる無次元数で、したがって、摺動条件が厳しくなるほどGは小さな値となる。
Figure 0005637513
メカニカルシール材料として、漏れが極微量でしかもG値がとる領域が広く、そしてG値が小さい領域であっても摩耗量が少ない摺動材料が最良となる。試験摺動リングの優劣の評価は、G値が下がり摩耗量が増加し始める限界のG値でおこなう。
図8(A)(実施例1〜3)の限界G値と、図8(B)(比較例1〜3)の限界G値を比較すると、明らかに図8(A)に示す実施例1〜3の限界G値の方が、図8(B)に示す比較例1〜3よりも小さい。すなわち、図8(A)に示す実施例1〜3は、図8(B)の比較例1〜3よりも厳しい摺動条件でも摩耗量が少なく、メカニカルシール摺動材料として優れた摺動性能を有していることが言える。
そして、マクロドメインとミクロドメインから成る気孔を形成した摺動面は、単一のピーク気孔径を有する摺動面よりも、より厳しい摺動条件でも良好な摺動性能と密封性能を有することも証明された。
また、図8(B)中に示す比較例7(気孔無し)は、G値が大きい領域、すなわち摺動条件が厳しくない領域では、比摩耗量が小さく良好な摺動性能を示すが、G値を下げていくと(摺動条件が厳しくなると)、急激に摩耗量が増え始めた。このように、気孔が無い炭化珪素摺動面は、G値が大きい領域であれば摺動性能に問題は無いが、摺動条件が厳しくなると途端に摺動性能が悪くなり摩耗を引き起こし漏れが発生する。
1…メカニカルシール
2…回転用密封環
3…固定用密封環
50…摺動面
61…マクロ気孔
62…ミクロ気孔
80…流体

Claims (5)

  1. 摺動面上に気孔が形成された摺動材料であって、
    頻度が最大となる気孔径が0.05〜0.1mmの範囲にある気孔の集合をマクロドメインとし、頻度が最大となる気孔径が前記マクロドメインの頻度が最大となる気孔径を示す値の0.2〜0.5倍である気孔の集合をミクロドメインとしたとき、
    前記マクロドメインが前記摺動面上に占める面積の割合を示すマクロドメイン面積率が2.0〜10.0%であり、
    前記ミクロドメインが前記摺動面上に占める面積の割合を示すミクロドメイン面積率が、前記マクロドメイン面積率の0.5〜3倍である摺動材料。
  2. 前記摺動面上において、前記マクロドメインおよび前記ミクロドメインに属する気孔の全周囲が、前記摺動材料を構成する材質よりも軟質な材質で覆われている請求項1に記載の摺動材料。
  3. 前記摺動材料を構成する材質が炭化珪素を含む請求項1または2に記載の摺動材料。
  4. 前記軟質な材質が炭素質を含む請求項2または3に記載の摺動材料。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の摺動材料を、固定用密封環および/または回転用密封環として有するメカニカルシール。
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