JP3654861B2 - Cmp装置用ロータリジョイント - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、CMP(Chemical Mechanical Polishing)装置に装備されるロータリジョイントであって、気体,液体,スラリ流体(固液混合流体)等の正圧,負圧流体を相対回転部材間で流動させるためのCMP装置用ロータリジョイントに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
CMP装置による半導体ウエハの表面研摩処理は、ターンテーブルとトップリングとを、その間に半導体ウエハを挟圧させた状態で、別個独立して回転させることにより行われるが、かかる場合に、ターンテーブル又はトップリングから半導体ウエハや定盤の真空吸着のための真空吸引、エアスパウト,水スパウト等を行なうためのエア,水の供給や研磨剤,酸化剤,PH調整剤等の各種流体の供給等が行なわれる。このため、CMP装置にあっては、CMP装置本体とこれに回転自在に支持されたターンテーブル又はトップリングとの間に、かかる負圧,正圧流体をその漏れを生じることなく流動させるロータリジョイントを設けておく必要がある。
【0003】
而して、従来から、固定側部材であるCMP装置本体に形成した固定側流路と回転側部材であるターンテーブル又はトップリングに形成した回転側流路とを連結するロータリジョイントとして、固定側部材に取付けられるジョイント本体と回転側部材に取付けられる回転体とを相対回転自在に連結し、ジョイント本体に形成された流路と回転体に形成された流路とを、回転体に設けた第1密封環とジョイント本体に設けた第2密封環とで構成される端面接触形のメカニカルシールにより、一連の流体通路を構成すべく連通接続してなるものが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、CMP装置にあってはコンタミネーションに対する対策を講じておくことが極めて重要であり、これに使用されるロータリジョイントは汚染物質が混入しない構成としておく必要がある。特に、両流路間を連結するメカニカルシールにおいては、両密封環が相対回転摺接することから汚染物質(摩耗粉)が発生し易く、その対策を十分に講じておく必要がある。
【0005】
このため、従来にあっては、両密封環を耐腐食性等に加えて耐摩耗性に優れる炭化珪素(緻密質の炭化珪素焼結体)で構成して、摩耗粉の発生を防止するようにしておくことが提案されている。
【0006】
しかし、炭化珪素はカーボンのような自己潤滑性を有しないものであるから、両密封環間の摩擦係数が高いため、両密封環の相対回転摺接部分で相互の擦り合いによる騒音が発生する(一般に「鳴き」と呼ばれている現象であり、以下「鳴き」という)。このような鳴きの発生は、圧縮空気等の気体を流動させる場合や真空吸引を行なう場合のようなドライ条件下で著しく、特に、相対回転が開始された初期の段階で顕著である。また、両密封環を炭化珪素で構成した場合にも、ドライ条件下では、密封環の相対回転摺接部分において摩耗粉が発生するため、確実なコンタミネーション防止策を講じ得たとはいい難い。
【0007】
なお、従来からも、このような問題を解決するために、一方の密封環を、(イ)多孔質の炭化珪素焼結体で構成しておくこと、(ロ)多孔質炭化珪素で構成して、その気孔に油やフッ素樹脂等の低摩擦材を含浸させたり或いは銀,鉛,アンチモン等の低摩擦金属材を溶浸させておくこと、(ハ)微細な固体潤滑材(カーボン,黒鉛,窒化ホウ素,二硫化モリブデン等)を分散させた複合炭化珪素焼結体で構成しておくこと、といった試みが提案されているが、何れの場合にも、両密封環を緻密質の炭化珪素焼結体で構成した場合と同様の課題を残すものである。すなわち、(イ)の場合、多孔質炭化珪素製の密封環における摺動面(密封端面)のポーラスが一種のオイルポットとして機能し、他方の緻密質炭化珪素製の密封環との間に流体潤滑膜を形成,保持して、両密封環間の摺動性を向上させて摩耗粉の発生を防止することができるが、ドライ条件下ではこのようなオイルポット機能が発揮されないし、多孔質炭化珪素は強度的に劣るものであることから却って摩耗が促進される虞れがある。また、(ロ)の場合には、多孔質炭化珪素焼結体における炭化珪素同士の結合力が弱いため耐摩耗性に劣り、摺動体(密封環)としての耐久性に問題がある上、摺動面が摩擦熱により高温となると、摺動面から含浸材,溶浸材が蒸発分解して流体を汚染するため、コンタミネーション対策を必要とするCMP装置用ロータリジョイントには到底適用できない。また、(ハ)の場合には、焼結体全体に焼結挙動を妨げる潤滑材が分散しているため、密度,強度(曲げ強度)が低下して、耐摩耗性,耐久性に問題が生じる。また、黒鉛粒子等の潤滑材粒子は炭化珪素粒子と或る程度は結合するものの、その結合力(焼結力)が弱いことから、両者の境界部分において炭化珪素粒子が脱粒して、これが密封環間に介在して所謂砥石作用が働き、密封端面を摩耗,損傷させる虞れがある。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、特に密封環の材質を工夫することにより、使用する流体の性状(液体,気体等)や流動条件(正圧,負圧等の圧力条件)に拘わらず、相対回転部材間で当該流体を漏れを生じることなく良好に流動させることができ且つ十分なコンタミネーション対策を講じ得たCMP装置用ロータリジョイントを提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ジョイント本体に形成された流路とジョイント本体に回転自在に連結せる回転体に形成された流路とを、回転体に設けた炭化珪素製の第1密封環とジョイント本体に設けた炭化珪素製の第2密封環とで構成される端面接触形のメカニカルシールにより、一連の流体通路を構成すべく連通接続してなるCMP装置用ロータリジョイントにおいて、上記の目的を達成すべく、特に、第1及び第2密封環のうち少なくとも一方を、緻密な炭化珪素組織中に熱硬化樹脂を真球状にしたものを熱処理して得られた平均粒径5〜100μmの球状カーボンが炭化珪素に対して2〜30重量%の割合で散点状に配置されており且つ各球状カーボンとその周囲の炭化珪素組織との間には黒鉛化された中間層が形成された複合炭化珪素焼結体を構成材として、球状カーボン及び黒鉛化された中間層が固体潤滑材として機能するように構成しておくことを提案するものである。
【0010】
上記した複合炭化珪素焼結体にあって、炭化珪素組織は、焼成時において、炭化珪素粒子同士の結合及び自己収縮が生じて、緻密化する。一方、炭化珪素組織中に配置された球状カーボンについては、炭化珪素粒子で囲繞されるが、その炭化珪素粒子の結合,収縮挙動を均等に受けることになる。すなわち、炭化珪素組織をなす部分は焼結時において大きく収縮する(一般に、炭化珪素は焼結時において約1/2程度の容積減となる)ことから、球状カーボンはこれを囲繞している炭化珪素組織部分の収縮力によって強力に圧縮されることになる。そして、その圧縮力は、球状カーボンが球形をなしていることから、球状カーボンの外周面に均等に作用することになる。その結果、球状カーボンと炭化珪素粒子との結合力は、上記した炭化珪素組織部分の収縮による外周側からの圧縮作用によって大幅に増大することになる。特に、収縮による圧縮力が球状カーボンに均等に作用することから、収縮による球状カーボンの保持力は極めて強大となり、物理的な結合力は極めて大きくなる。
【0011】
これらのことから、球状カーボンは、緻密な炭化珪素組織中に強固に保持されることになる。その結果、容易に脱落することなく、ドライ運転のような過酷な条件下においても良好且つ安定した潤滑機能(摺動機能)を発揮することができる。すなわち、炭化珪素本来の特性を損なうことなく、潤滑性を向上させ得るものである。
【0012】
また、上記複合炭化珪素焼結体にあっては、焼成時に、球状カーボンと炭化珪素組織部分との境界領域にSiC−C結合と考えられる中間層が形成されることになる。すなわち、各球状カーボンとその周囲の炭化珪素組織との間には黒鉛化された中間層が形成されることになる。黒鉛化が進行した中間層にあっては、ラマンシフト1590cm-1付近において、黒鉛のSP2散乱を示すラマンスペクトル強度が球状カーボンの中心部における当該強度より高くなっており、三次元的なSP3構造(ダイヤモンド構造)色の強いアモルファス状態から二次元的なSP2構造(黒鉛構造)色の強いアモルファス状態へ移行したものと推察される。したがって、球状カーボンの周縁にかかる中間層が形成されることにより、摺動特性が更に向上することになる。そして、かかる中間層の存在による摺動特性の顕著な向上が図られるためには、中間層の厚みが少なくとも1μmであることが必要であり、4〜10μmであることがより好ましい。
【0013】
ところで、球状カーボンは、熱硬化樹脂(フェノール樹脂,メラミン樹脂,尿素樹脂,エポキシ樹脂等)を真球状にしたものを熱処理して得られるものであり、摺動性に富むものである。好ましくは、球状カーボンとして、フェノール樹脂を真球状にしたものを熱処理して得られたものであって、グラッシカーボン組成をなすものが使用される。この球状カーボンの平均粒径(以下「カーボン径」という)が5μm未満である場合又は球状カーボンの炭素珪素に対する含有率(この含有率は、(球状カーボンの含有量/炭化珪素の含有量)×100で与えられるものであり、以下「カーボン含有率」という)が2重量%未満である場合には、球状カーボンによる潤滑性(摺動性)の向上機能が十分に発揮されない。かかる球状カーボンによる潤滑性の向上機能が十分に発揮されるためには、カーボン径が5μm以上であり且つカーボン含有率が2重量%以上であることが必要である。特に、カーボン径が10μm以上であり且つカーボン含有率が5重量%以上である場合には、球状カーボンによる潤滑性の向上機能が顕著に発揮される。しかし、カーボン径が100μmを超える場合又はカーボン含有率が30重量%を超える場合には、上記した炭素珪素組織部分による球状カーボンの保持性や炭化珪素組織の緻密性を図ることができない。かかる球状カーボンの保持性や炭化珪素の緻密性を図るためには、カーボン径が100μm以下であり且つカーボン含有率が30重量%以下であることが必要である。特に、カーボン径が50μm以下であり且つカーボン含有率が20重量%以下である場合には、炭素珪素組織部分による球状カーボンの保持が極めて強力となり且つ炭化珪素組織を十分に緻密化させることができる。したがって、炭化珪素本来の特性を損なうことなく潤滑性の向上を図るためにはカーボン径が5〜100μmであり且つカーボン含有率が2〜30重量%であることが好ましく、カーボン径が20〜50μmであり且つカーボン含有率が5〜20重量%であることがより好ましい。
【0014】
また、本発明のロータリジョイントにあっては、第1及び第2密封環の一方を上記した複合炭化珪素焼結体で構成しておく(他方の密封環は一般的な緻密質の炭化珪素焼結体で構成しておく)ことによって、密封環間の摩擦係数を大幅に低減し得て、ドライ条件下においても鳴きや摩耗粉を発生することなく第1及び第2流路間のシールを良好に行なうことができるが、かかる効果は、両密封環を共に前記複合炭化珪素焼結体で構成しておくことによって、より顕著に奏せられることになる。したがって、CMP装置におけるコンタミネーション対策上、両密封環を上記した複合炭化珪素焼結体で構成しておくことが最良である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図4に基づいて具体的に説明する。
【0016】
この実施の形態における本発明に係るCMP装置用ロータリジョイントRは、図1に示す如く、固定側部材(例えば、CMP装置本体)に取付けられるジョイント本体1と、回転側部材(例えば、CMP装置のトップリング又はターンテーブル)に取付けられる回転体2と、両体1,2間に介装されたメカニカルシール3と、両体1,2にメカニカルシール3を介して形成された一連の流体通路4とを具備する。なお、以下の説明において、上下とは図1における上下を意味するものとする。
【0017】
ジョイント本体1は、図1に示す如く、上端部を閉塞した筒形状をなすもので、円形の内周部を有する筒状の側部壁6と、その上端部にこれを閉塞すべく取着された端部壁7とからなる。なお、側部壁6は上下分割構造をなしている。
【0018】
回転体2は、図1に示す如く、下端部を除いてジョイント本体1の側部壁6内に同心状に配置された円柱形状をなすもので、側部壁6の下端部に上下一対のベアリング8,8を介して回転自在に連結されている。ジョイント本体1から突出する回転体2の下端部には、回転側部材に連結するためのOリング9及びねじ部10が設けられている。
【0019】
メカニカルシール3は、図1及び図2に示す如く、回転体2の上端部に設けられた第1密封環11と、ジョイント本体1の下端部に設けられた第2密封環12と、第2密封環12とジョイント本体1との間に介装された回転阻止手段13,14及びスプリング部材15とを具備するものである。
【0020】
第1密封環11は、図1及び図2に示す如く、円環状の本体部16とその下端部に一体形成された円筒状の嵌合部17とからなるものであり、嵌合部17を回転体2の上端部である被嵌合部18に嵌合させることにより、回転体2にその回転軸線と同心状に嵌合固定されている。本体部16の上面は、軸線に直交する平滑な環状平面である密封端面(以下「摺動面」ともいう)11aとされている。嵌合部17と被嵌合部18とは、Oリング19及びドライブピン20を介して、相対回転不能に連結されている。
【0021】
第2密封環12は、図1及び図2に示す如く、円環状の本体部21とその上端部に一体形成された円筒状の保持部22とからなるものであり、保持部22を端部壁7に設けた保持孔(後述する第2通路29の内部側流路口を構成する)29aに嵌合させることにより、第1密封環11と同心対向状をなしてジョイント本体1に軸線方向移動可能に保持されている。保持部22と保持孔29aとの嵌合部分は、保持孔29aの内周部に保持させたOリング24により二次シールされている。本体部21の外周部は、保持部22の外周部から径方向に突出している。第2密封環12の下端部(本体部21の下端部)は、図2に示す如く、その外周面を下窄まりのテーパ面に形成すると共にその内周面を下拡がりのテーパ面に形成することによって尖端形状に形成されていて、その先端面(下端面)を微小幅Wの円環状面をなす密封端面(以下「摺動面」ともいう)12aに構成してある。すなわち、第2密封環12の密封端面12aは、第1密封環11の密封端面11aに同心状をなして接触しうる尖端形状に構成されている。なお、密封端面12aの径方向幅Wは、強度及び相手密封端面11aとの接触圧等を考慮して、一般に、0.1〜4.0mm(より好ましくは0.4〜2.0mm)としておくことが好ましい。
【0022】
回転阻止手段は、図1及び図2に示す如く、ジョイント本体1の端部壁7の下端部に、保持孔29aの外周領域に配して、一又は複数の係止ピン13を下方に向けて突設すると共に、第2密封環12の本体部21の外周部に一又は複数の係合凹部14を形成して、係止ピン13を係合凹部14に係合させることにより、第2密封環12をジョイント本体1に対して軸線方向移動を許容しつつ相対回転不能に係止保持するものである。
【0023】
スプリング部材15は、図1及び図2に示す如く、第2密封環12の本体部21の外周部とこれに対向するジョイント本体1の端部壁7の下端部との間に介装された複数のコイルスプリングで構成されており、第2密封環12を、両密封端面11a,12aが相互に押圧接触せしめられるべく、第1密封環11へと押圧附勢するものである。
【0024】
このように構成されたメカニカルシール3は、回転体2の回転に伴う密封端面11a,12aの相対回転摺接作用により、その相対回転摺接部分の内周側領域(密封環11,12の中心孔26,28内)と外周側領域とをシールするものであり、周知の端面接触形メカニカルシールと同様のシール機能を発揮するものである。なお、両体1,2間には、メカニカルシール3が配置された領域とベアリング8,8が配置された領域とを区画するオイルシール30が設けられている。また、ジョイント本体1の側部壁6には、メカニカルシール3が配置された領域に開口するドレン路31が形成されている。
【0025】
流体通路4は、図1及び図2に示す如く、回転体2にその軸心部を貫通して形成されており、回転体2の上端部に開口する内部側流路口27aを第1密封環11の中心孔(本体部16の中心部に形成される貫通孔)26に連通させた第1流路27と、ジョイント本体1にその端部壁7を貫通して形成されており、端部壁7の下面中心部に開口する内部側流路口29aを第2密封環12の中心孔(本体部21及び保持部22の中心部に形成される貫通孔)28に連通させた第2流路29とを、前記メカニカルシール3により一連に連通接続してなる。すなわち、流体通路4は、第1流路27の内部側流路口27aと第2流路29の内部側流路口29aとの間を、両密封環11,12により、相対回転自在に連通接続させた一連のものに構成されていて、気体,液体,スラリ流体等の正圧流体5a又は負圧流体(真空吸引等によりロータリジョイントR内を負圧にした状態で正圧流体5aとは逆方向に流れる気体等である)5bを両流路27,29間で漏れを生じることなく流動させ得るようになっている。
【0026】
なお、密封環11,12を除いて、流体5a,5bが接触する部分は、流体5a,5bとの接触によりコンタミネーションが発生しない材質のもので構成されている。すなわち、流路27,29が形成される回転体2及び端部壁7は、流体5a,5bの性状等のジョイント使用条件によるが、流体5a,5bとの接触により金属成分等の溶出や摩耗粉等の発塵を生じたりすることがなく、また耐熱性や耐食性ないし耐薬品性を有するプラスチックで構成しておくことが好ましく、一般には、流体5a,5bとの接触によりパーティクルを発生させることがなく且つ加工による寸法安定性,耐熱性等に優れたPEEK,PES,PC等のエンジニアリングプラスチックや耐食性,耐薬品性等に優れたPTFE,PFA,FEP,PVDF等の弗素系プラスチックで構成されている。また、流体5a,5bが接触する虞れのあるOリング19,24についても、一般的なゴム製のものの他、流体5a,5bの性状によっては(例えば、腐食性流体である等の場合には)弗素系樹脂又は弗素ゴム(例えば、デュポン社製の「バイトン」又は「カルレッツ」)で構成されたものを使用することが好ましい。この例では、回転体2及び端部壁7をPEEKで構成し、端部壁7以外のジョイント本体部分は金属で構成し、Oリング19,24を含むすべてのOリングをフッ素ゴムで構成してある。
【0027】
ところで、メカニカルシール3にあって、シール機能が良好に発揮されるためには、両密封端面11a,12aが適正な接触状態に保持されることが必要であるが、流体5a,5bの流動条件(正圧,負圧の切り替え等)により流体通路4内が圧力変動する場合にも密封端面11a,12aが適正な接触状態に保持されるように、メカニカルシール3のバランス比κを0≦κ≦0.6となるように設定しておくことが好ましい。
【0028】
メカニカルシール3のバランス比κは、図2に示す如く、第2密封環12の密封端面12aの内外径D1 ,D2 と第2密封環12の保持部22の外径D0 とで特定され、設計上、κ=((D0 2 −(D1 2 )/((D2 2 −(D1 2 )とすることができる。すなわち、両密封環11,12の相対回転摺接部分に作用する見掛け上の面圧(推力)Paは、軸線方向に移動可能な第2密封環12にこれを第1密封環11へと押圧すべく作用する流体による圧力(背圧)Pとスプリング部材15による圧力(スプリング圧)Fとによって得られ、Pa=(π/4)((D0 2 −(D1 2 )P/(π/4)((D2 2 −(D1 2 )+(π/4)((D2 2 −(D1 2 )F/(π/4)((D2 2 −(D1 2 )=(((D0 2 −(D1 2 )/((D2 2 −(D1 2 ))P+Fで与えられることになり、この式における背圧Pの係数((D0 2 −(D1 2 )/((D2 2 −(D1 2 )がバランス比κである。而して、D0 ,D1 ,D2 を0≦κ≦0.6となるように設計しておくことにより、流体通路4内が圧力変動する場合にも、両密封環11,12の相対回転摺接部分における推力Paが大きく変動せず、両密封端面11a,12aの接触圧を適正に保持しておくことができる。κ<0であると、スプリング圧力Fを必要以上に高くしておく等の問題があり、κ>0.6であると、負圧状態において逆圧により密封端面11a,12aの接触圧が不足する虞れがあるが、0≦κ≦0.6としておくと、逆圧が作用する負圧状態も含めた流体通路4内の圧力変動に拘わらず、密封端面11a,12aの接触圧を適正に保持することができる。図2に示す例では、密封端面12aの内径D1 と背圧Pが作用する保持部端面の外径D0 とを同一として、κ=0に設定してある。
【0029】
而して、上記構成のロータリジョイントRにあっては、CMP装置に装着された場合にメカニカルシール3におけるコンタミネーション発生を効果的に防止すべく、第1及び第2密封環11,12の少なくとも一方を、本発明に従って、緻密な炭化珪素組織中に球状カーボンを散点状に配置した複合炭化珪素焼結体で構成してある。なお、両密封環11,12の一方のみを当該複合炭化珪素焼結体で構成する場合においては、他方の密封環は一般的な緻密質の炭化珪素焼結体で構成される。
【0030】
かかる複合炭化珪素焼結体で構成される密封環(第1密封環11及び/又は第2密封環12)は、例えば、次のような焼結原料混合工程,造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程により製作される。
【0031】
[焼結原料混合工程]
主材である平均粒子径0.7μmのα型炭化珪素(α−SiC)粉末100gと、焼結助剤としての炭化ホウ素(B4 C)粉末0.5gと、カーボン源としてのフェノール樹脂(残炭率50%)4gと、成形助剤としての平均分子量6000のポリエチレングリコール(PEG#6000)2g及びステアリン酸1gとを基本配合として、この基本配合材料に更に球状カーボンを添加し、これらをメタノール溶剤と混合させて、ボールミルにより24時間混合し、焼結原料(混合スラリ)を得る。球状カーボンとしては、例えば、フェノール樹脂を真球状にしたものを熱処理して得られたものが使用されるが、一般に、グラッシカーボン(Glassy Carbon)組成をなす平均粒径5〜100μm(好ましくは20〜50μm)のものが好適する。また、焼結原料におけるカーボン含有率(=(球状カーボンの含有量/炭化珪素の含有量)×100)は、2〜30重量%(好ましくは5〜30重量%)とする。
【0032】
[造粒工程]
焼結原料混合工程で得られた焼結原料をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒(顆粒化)して、球状の造粒材(顆粒)を得る。
【0033】
[予備成形工程]
造粒工程で得られた造粒材を所定の金型に充填した上、成形面圧1500kg/cm2で冷間プレス成形して、密封環11,12に対応する環状形態をなす予備成形体を得る。なお、予備成形体の形状は、焼結時における収縮を考慮して設定される。
【0034】
[焼成工程]
予備成形工程で得られた予備成形体を、加圧することなく、アルゴン雰囲気中において所定温度(以下「焼成温度」という)で所定時間(以下「焼成時間」という)保持することにより焼成して、密封環11,12に相当する環体形状をなす複合炭化珪素焼結体を得る。焼成条件、特に焼成温度及び焼成時間は、後述するように、焼成により球状カーボンと緻密質炭化珪素との間に黒鉛化した中間層が形成されるように設定される。
【0035】
[仕上げ工程]
焼成工程で得られた複合炭化珪素焼結体の端面をRa=0.05の鏡面に表面研磨(ラップ)する等により、当該研磨面を密封端面11a,12aとする密封環11,12を得る。
【0036】
このような工程を経て得られた密封環11,12のラップ表面(密封端面11a,12a)の組織を光学顕微鏡で観察してみると、図3に示す如く、グラッシカーボン組成をなす球状カーボンXが、炭化珪素粒子同士が結合した緻密な炭化珪素組織Y中に、散点状に分散配置されており、球状カーボンXとその周囲の炭化珪素組織Yとの境界に中間層Zが形成されている。
【0037】
炭化珪素組織Yにおいては、焼成により炭化珪素粒子同士の結合及び自己収縮が生じて、緻密化する。一方、炭化珪素組織Y中に配置された球状カーボンXについては、その周囲における炭化珪素粒子の結合,収縮挙動を均等に受けることになり、炭化珪素組織Yとの物理的な結合力は極めて大きくなる。その結果、接触状態にある密封環11,12の相対運動(相対回転摺接)によって、炭素珪素粒子や球状カーボンXが脱落,離脱することがない。したがって、かかる構成の複合炭化珪素焼結体は、固体潤滑材たる球状カーボンXを含有しているに拘わらず、固体潤滑材を含有しない緻密質の炭化珪素焼結体と同等の物理的特性(機械的強度,密度等)を有するものである。しかも、当該複合炭化珪素焼結体で構成された密封環11,12にあっては、密封端面11a,12aに分散配置された固体潤滑材たる球状カーボンXの存在によって、緻密質の炭化珪素焼結体で構成された密封環に比して、摺動特性が大幅に向上する。
【0038】
また、球状カーボンXの中央部及びその周縁部の中間層Zを、レーザラマン分光装置によりラマンスペクトル分光分析してみると、図4に示す如く、1333cm-1付近にダイヤモンドSP3散乱によるピークが、また1590cm-1付近に黒鉛SP2散乱によるピークが、夫々顕著に現われている。そして、黒鉛SP2散乱によるピーク(1590cm-1付近のピーク)は、図4(a)に示す球状カーボンXの中央部におけるラマンスペクトルと同図(b)に示す中間層Zにおけるラマンスペクトルとを比較すれば明らかなように、中間層Zにおいて顕著に強度増加しており、球状カーボンXはその周縁部において構造改質され、黒鉛化されていることが理解される。すなわち、球状カーボンXの周縁部に形成される中間層Zは、三次元的なSP3構造(ダイヤモンド構造)色の強いアモルファス状態から二次元的なSP2構造(黒鉛構造)色の強いアモルファス状態へ移行したものと推察される。翻れば、ラマンスペクトルにおける1590cm-1付近のピーク強度の変動が、中間層Zの構造改質(黒鉛化)を示す指標となると理解される。
【0039】
したがって、球状カーボンXを含有する複合炭化珪素焼結体で構成された密封環11,12にあっては、上記した球状カーボンXによる潤滑性に、球状カーボンXの周縁に形成される中間層Zによる黒鉛特有の潤滑性が加味されることによって、密封端面11a,12a全体の摺動特性が大幅に向上することになる。
【0040】
このように、球状カーボンXを含有させた複合炭化珪素焼結体で構成された密封環11,12にあっては、球状カーボンX及びこれと緻密質炭化珪素粒子との間に形成された黒鉛化層Zが固体潤滑材として働き、密封端面11a,12a間の摩擦係数の大幅な低減を実現できると共に、密封端面11a,12a間の発熱温度を低く(100℃前後)抑えることができ、ドライ条件下でも、密封端面11a,12a間に介在する空気中水分の蒸発を生ずることがなく、これにより密封端面の焼きつきを生じて異常摩耗することなく、低い摩擦係数を安定的に維持することができ、鳴き現象も発生しない。また、球状カーボンXを緻密質炭化珪素マトリックスY中に強固に保持された状態(つまり、焼結過程での炭化珪素マトリックスYの収縮による物理的な包抱作用及び球状力―ボンXとこれに隣接する炭化珪素粒子との間で化学的な結合作用が生じた状態)での高い相対密度の複合炭化珪素焼結体の形成が可能となり、球状カーボン粒子の脱落を可及的に防止できると共に、脱落後の跡孔に起因する早期摩耗や異常摩耗を防止できる。なお、黒鉛粒子を炭化珪素組織中に分散配置させた複合炭化珪素焼結体にあっては、黒鉛粒子自体が結晶性が高く反応性に乏しいため、炭化珪素粒子とは化学的な結合を生じず且つ黒鉛粒子に存在する微細な空隙により緻密な焼結が阻害されて、高い相対密度が得られず、黒鉛粒子への物理的な包抱作用も小さく、摩耗進行も速く、摩耗量も多い。
【0041】
したがって、密封環11,12の少なくとも一方を、上記した如く、球状カーボンXが緻密な炭化珪素組織Yに分散配置されており且つ球状カーボンXの周縁部に黒鉛化された中間層Zが形成される複合炭化珪素焼結体で構成しておくことにより、流体5a,5bが液体である場合には勿論、気体である場合つまりドライ条件下においても、鳴きによる騒音,振動の発生、密封端面11a,11bの異常摩耗,焼き付きによる寿命低下及び摩耗粉,脱落粒子によるコンタミネーションを防止して、メカニカルシール3ないしロータリジョイントRとしての機能を良好に発揮させることができる。
【0042】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されず、本発明の基本原理を逸脱しない範囲において適宜に改良,変更することができる。例えば、流路27,29及びメカニカルシール3で構成される流体通路4の形成数は任意であり、ロータリジョイントRに、例えば、特開2001−4083,特開2001−141150公報に開示される如く、複数の独立した流体通路4を形成するようにすることが可能である。複数の流体通路4を形成する場合、メカニカルシール3も複数設けられるが、各メカニカルシール3における密封環11,12の少なくとも一方は上記した複合炭化珪素焼結体で構成されることは勿論である。
【0043】
【実施例】
実施例1として、表1に示した点(焼結原料混合工程における球状カーボンの平均粒径、添加量及びカーボン含有率(表1では「含有率」と表示している)並びに焼成工程における焼成条件たる焼成温度及び焼成時間)を除いて、上記した実施の形態で示した製作工程(以下「基準製作工程」という)と同一の工程(焼結原料混合工程,造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程)により、図1に示す第1及び第2密封環11,12と同一形状をなす第1密封環A1〜A11及び第2密封環a1〜a11を得た上、表2に示す如く、これらの密封環A1〜A11,a1〜a11を使用した図1に示す構成のロータリジョイントNo.1〜No.11を製作した。各ロータリジョイントNo.1〜No.11において使用される第1及び第2密封環は同材質であり、各密封環A1〜A11,a1〜a11における相対密度は表1に示す通りである。なお、第1密封環A1〜A11は、実施例2で使用するものを含めて、各々2個製作した。
【0044】
実施例2として、まず、焼結原料混合工程において主材として平均粒子径0.6μmのβ型炭化珪素(β−SiC)粉末100gを使用した点及び基本配合材料に球状カーボンを添加しない点並びに焼成工程における焼成条件(焼成温度及び焼成時間)を表1に示す如く設定した点を除いて、前記基準製作工程と同一の工程(造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程)により、図1に示す第2密封環12と同一形状をなす第2密封環b1を得た。この第2密封環b1の構成材は一般的な緻密質の炭化珪素焼結体と同質である。なお、第2密封環b1は、後述する比較例1〜3で使用するものを含めて14個製作した。
【0045】
そして、表3に示す如く、この第2密封環b1と実施例1において得た第1密封環A1〜A11とを使用して、実施例1と同一構成のロータリジョイントNo.12〜No.22を製作した。
【0046】
また、比較例1として、表2又は表3に示す如く、実施例2において得た第2密封環b1と、これと同一工程により得た第1密封環B1とを使用して、実施例1,2と同一構成をなすロータリジョイントNo.23を製作した。第1密封環B1は、図1に示す第1密封環11と同一形状をなすものであり、第2密封環b1と同質のもの(緻密質の炭化珪素焼結体)である。
【0047】
また、比較例2として、焼結原料混合工程における基本配合材料に混合させる固体潤滑材として球状カーボンに代えて鱗片黒鉛(平均粒径、添加量及び含有率((鱗片黒鉛の含有量/主材たる炭化珪素の含有量)×100)は表1に示す通りである)を使用した点並びに焼成工程における焼成条件たる焼成温度及び焼成時間を表1に示す如く設定した点を除いて、前記基準製作工程と同一の工程(焼結原料混合工程,造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程)により、図1に示す第1密封環11と同一形状をなす第1密封環B2を得た上、表3に示す如く、この第1密封環B2と実施例2で得た第2密封環b1とを使用して、実施例1,2ないし比較例1と同一構成をなすロータリジョイントNo.24を製作した。
【0048】
さらに、比較例3として、鱗片黒鉛の粒径,添加量,含有率を表1に示す如くした点を除いて、比較例2の第1密封環B2と同一工程により同一形状の第1密封環B3を得た上、表3に示す如く、この第1密封環B3を使用した点を除いて比較例2と同一構成をなすロータリジョイントNo.25を製作した。
【0049】
ところで、固体潤滑材として球状カーボンを使用した密封環A1〜A11(a1〜a11)の相対密度は、表1に示す如く、固体潤滑材として鱗片黒鉛を使用した密封環B2,B3に比して極めて高く、固体潤滑材を含有しない緻密質炭化珪素焼結体からなる密封環B1,b1の相対密度に近い値となっており、このことから、固体潤滑材を含有させてもそれがカーボン組成(グラッシカーボン組成)をなす球状体(球状カーボン)であるときには、全体として十分に緻密化された高密度,高強度の焼結体が得られることが理解される。
【0050】
また、球状カーボンを含有させた各密封環A1〜A11(a1〜a11)のラップ面(密封端面)を光学顕微鏡を使用して画像処理し、球状カーボンの周縁部に形成された中間層(黒鉛化層)の厚みを測定したところ、表1に示す如く、すべて1μm以上であり、焼成温度が高いもの又は焼成時間が長いもの程、中間層の厚みが大きいことが判明した。このことから、所定範囲内で焼成温度又は焼成時間を増加するに従って中間層の成長が促進されることが理解される。また、各密封環A1〜A11(a1〜a11)のラップ面における表面組織を光学顕微鏡により観察したところ、炭化珪素組織と球状カーボンとの境界には全く隙間が認められず、両者が密に接着していることが確認された。さらに、炭化珪素組織から球状カーボンが脱落した部分も全く認められず、炭化珪素粒に沿って球状カーボンが破断していることが観察された。これは、焼結工程での炭化珪素マトリックスの収縮による物理的な包抱作用、及び球状カーボンとその周囲の炭化珪素との間で生じた化学的な結合作用により、球状カーボンが緻密質炭化珪素マトリックス中に強固に保持された状態となっているためであり、球状カーボン粒子の脱落を防止できるとともに、脱落後の跡孔に起因する早期摩耗や異常摩耗の防止もできることが理解される。
【0051】
【表1】
Figure 0003654861
【0052】
而して、第1実施例のロータリジョイントNo.1〜No.11及び比較例1のロータリジョイントNo.23を使用して、次のようなシール試験(以下「第1シール試験」という)を行った。
【0053】
すなわち、第1シール試験では、▲1▼回転体2を停止させた状態(ジョイント本体1は固定された常態にある)で10秒間通水(大気圧条件下で流体通路4に清水を連続供給することによる通水)した上、▲2▼引き続き回転体2を停止させた状態で10秒間通気(流体通路4に0.3MPaの圧縮空気を連続供給することによる通気)し、▲3▼この通気状態を維持しつつ回転体2を580秒間回転させ(回転数:150min-1)、かかる工程▲1▼〜▲3▼を1サイクル(10分)として5サイクル(50分)繰り返した。そして、メカニカルシール3の摺動面(密封端面)の摩擦係数(トルク)及び摺動面近傍の温度(以下「摺動面温度」という)を測定した。その結果は、実施例1のロータリジョイントNo.1については図5(摩擦係数は実線で、摺動面温度は破線で示す)に示す通りであり、比較例1のロータリジョイントNo.23については図7(摩擦係数は実線で、摺動面温度は破線で示す)に示す通りであった。図5はロータリジョイントNo.1についての摩擦係数及び摺動面温度を示したものであるが、他のロータリジョイントNo.2〜No.11についても図5と略同一の摩擦係数,摺動面温度の値及びその変動パターンを示した。したがって、図5はこれらのロータリジョイントNo.2〜No.11の第1シール試験の結果とみなすことができる。なお、図5及び図7に示す摩擦係数は直接測定したものでなく、トルクを測定して、その値を摩擦係数に換算したものである。
【0054】
図5を参照すれば明らかなように、本発明に係るロータリジョイントNo.1〜No.11では、回転体2の回転初期段階においても摩擦係数及び摺動面温度の上昇が殆どみられず、摩擦係数及び摺動面温度が略一定であり安定したメカニカルシール機能が発揮されていることが理解される。これに対して、一般的な緻密質の炭化珪素焼結体からなる両密封環B1,b1を使用した比較例1のロータリジョイントNo.23では、図7に示す如く、回転初期段階で摩擦係数が急激に上昇しており、初期トルクが極めて高い。また、密封環B1,b1の回転が繰り返されることにより摩擦係数は低下しているが、これは密封環B1,b1の接触面(密封端面)が回転により摩耗して馴染んだ結果であり、コンタミネーションの発生を伴うものである(このことは、後述する摺動面のプロファイルからも確認される)。
【0055】
また、第1シール試験において鳴きの発生を確認したが、ロータリジョイントNo.1〜No.11の何れについても、表2に示す如く、5回の工程▲3▼において鳴きが全く生じなかった。このことから、ロータリジョイントNo.1〜No.11を使用したCMP装置では、騒音(鳴き)のない静寂な運転が行われることが理解される。一方、第1比較例のロータリジョイントNo.23については、回転初期段階において明瞭な鳴きが発生した。なお、表2においては、鳴きが全く生じなかったものを「○」で、また鳴きが僅かでも生じたものを「×」で示した。
【0056】
また、第1シール試験の終了後、ロータリジョイントNo.1から密封環A1,a1を取り外して、それらの摺動面をプロファイリングした。その結果、図6に示す如く、何れの密封環A1,a1の摺動面においても摩耗傷(後述する環状痕等)は認められず、シール試験前と変わりないプロファイルを維持していることが確認された。また、表2に示す如く、摩耗粉の発生も全く認められなかった。これらのことは、他のロータリジョイントNo.2〜No.11についても同様であった。一方、比較例1のロータリジョイントNo.23では、図8に示す如く、第1シール試験後の摺動面において摩耗傷が認められ、特に第1密封環B1の摺動面においては、同図(a)に示す如く、顕著な環状痕(レコード溝状の環状溝であり、深さδは4μmであった)が認められた。また、ロータリジョイントNo.23では、表2に示す如く、摩耗粉の発生も認められた。なお、表2においては、摩耗粉が全く発生しなかったものを「○」で、また摩耗粉が発生したものを「×」で示した。
【0057】
【表2】
Figure 0003654861
【0058】
以上の第1シール試験の結果(図5〜図8及び表2)から明らかなように、本発明に係るロータリジョイントNo.1〜No.11によれば、一般的な緻密質の炭化珪素焼結体からなる密封環B1,b1を使用したロータリジョイントNo.23に比して、CMP装置における相対回転部材間での流体輸送をコンタミネーションを生じることなく良好且つ静寂に行ないうることが理解される。
【0059】
また、実施例2のロータリジョイントNo.12〜No.22及び比較例のロータリジョイントNo.23〜No.25を使用して、次のようなシール試験(以下「第2シール試験」という)を行なった。
【0060】
すなわち、第2シール試験にあっては、メカニカルシール3の負荷圧力0.1MPa、周速:2m/sのドライ条件下で2時間連続運転して、摺動面(密封端面)の摩耗量、摩擦係数及び摺動面温度を求めると共に、鳴き発生の確認及び摺動面状態の判定を行った。その結果は、表3に示す通りであった。なお、表3においては、鳴きが全く発生しなかったものを「○」で、また鳴きを発生したものを「×」で示した。また、摺動面状態の判定は、第2シール試験の終了後において密封環を取り外して、その摺動面における環状痕及び摩耗粉の発生度を目視観察することにより、行った。環状痕については、表3において、環状痕(レコード溝状の環状溝)が明瞭に目視観察されたものについては「×」を付し、環状痕が目視によっては全く認められなかったものには「○」を付した。また、摩耗粉については、表3において、摩耗粉が大量に発生したものには「×」を付し、摩耗粉が僅かに発生したものには「△」を付し、摩耗粉が全く発生していないものには「○」を付した。
【0061】
【表3】
Figure 0003654861
【0062】
表3に示す第2シール試験の結果から明らかなように、実施例2のロータリジョイントNo.12〜No.22では、その何れについても、比較例1〜3のロータリジョイントNo.23〜No.25に比して、摩擦係数が非常に低くなり、鳴きが生じず、摺動面温度(発熱)も抑制され、著しく摩耗が減少していることが理解される。これは、主として、球状カーボン及び黒鉛化された中間層が固体潤滑材として機能する等により密封環の摺動性が大幅に向上したことによるものである。ところで、球状カーボン及び中間層を有する複合炭化珪素焼結体で両密封環を構成する実施例1のロータリジョイントNo.1〜No.11について第2シール試験を行った場合、一方の密封環(第1密封環)のみを当該複合炭化珪素焼結体で構成した実施例2のロータリジョイントNo.12〜No.22より更に良好な結果が得られることはいうまでもない。
【0063】
【発明の効果】
以上の説明から理解されるように、本発明のCMP装置用ロータリジョイントによれば、密封環の相対回転摺接による流体のコンタミネーションや鳴き等の発生を効果的に防止し得て、CMP装置の相対回転部材間における流体輸送を漏れを生じることなく長期に亘って良好に行なうことができる。かかる効果は、特に、メカニカルシールの両密封環を前記した複合炭化珪素焼結体で構成しておくことにより、より顕著に発揮される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るロータリジョイントの実施の形態を示す縦断側面図である。
【図2】図1の要部を拡大した詳細図である。
【図3】当該ロータリジョイントの密封環であって、複合炭化珪素焼結体で構成された密封環のラップ表面(密封端面)の組織図である。
【図4】当該密封端面のラマンスペトル図であり、(a)図は球状カーボンの中央部におけるラマンスペクトルを示し、(b)図は当該球状カーボンの周縁部である中間層におけるラマンスペクトルを示している。
【図5】実施例1のロータリジョイントを使用した第1シール試験における摩擦係数及び摺動面温度の経時的変化を示す曲線図である。
【図6】実施例1のロータリジョイントにおける第1シール試験終了後の密封環摺動面のプロファイル図であり、(a)図は第1密封環の摺動面のプロファイルを示し、(b)図は第2密封環の摺動面のプロファイルを示している。
【図7】比較例1のロータリジョイントを使用した第1シール試験における摩擦係数及び摺動面温度の経時的変化を示す曲線図である。
【図8】比較例1のロータリジョイントにおける第1シール試験終了後の密封環摺動面のプロファイル図であり、(a)図は第1密封環の摺動面のプロファイルを示し、(b)図は第2密封環の摺動面のプロファイルを示している。
【符号の説明】
1…ジョイント本体、2…回転体、3…メカニカルシール、4…流体通路、11…第1密封環、11a,12a…密封端面、12…第2密封環、27…第1流路(回転体に形成された流路)、29…第2流路(ジョイント本体に形成された流路)、R…ロータリジョイント、X…球状カーボン、Y…炭化珪素組織、Z…中間層。

Claims (7)

  1. ジョイント本体に形成された流路とジョイント本体に回転自在に連結せる回転体に形成された流路とを、回転体に設けた炭化珪素製の第1密封環とジョイント本体に設けた炭化珪素製の第2密封環とで構成される端面接触形のメカニカルシールにより、一連の流体通路を構成すべく連通接続してなるロータリジョイントにおいて、
    第1及び第2密封環のうち少なくとも一方を、緻密な炭化珪素組織中に熱硬化樹脂を真球状にしたものを熱処理して得られた平均粒径5〜100μmの球状カーボン炭化珪素に対して2〜30重量%の割合で散点状に配置されており且つ各球状カーボンとその周囲の炭化珪素組織との間に黒鉛化された中間層が形成された複合炭化珪素焼結体を構成材として、球状カーボン及び黒鉛化された中間層が固体潤滑材として機能するように構成したことを特徴とするCMP装置用ロータリジョイント
  2. 第1及び第2密封環が、共に、前記複合炭化珪素焼結体で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載するCMP装置用ロータリジョイント。
  3. 前記球状カーボンが平均粒径20〜50μmのものであり且つその炭化珪素に対する含有率が5〜20重量%であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載するCMP装置用ロータリジョイント
  4. 前記球状カーボンが、フェノール樹脂を真球状にしたものを熱処理して得られたものであって、グラッシカーボン組成をなすものであることを特徴とする、請求項1、請求項2又は請求項3に記載するCMP装置用ロータリジョイント。
  5. 前記中間層は、ラマンシフト1590cm−1付近において、黒鉛のSP2散乱を示すラマンスペクトル強度が球状カーボンの中心部における当該強度より高くなっているものであることを特徴とする、請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載するCMP装置用ロータリジョイント。
  6. 前記中間層の厚みが少なくとも1μmであることを特徴とする、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5に記載するCMP装置用ロータリジョイント
  7. 前記中間層の厚みが4〜10μmであることを特徴とする、請求項6に記載するCMP装置用ロータリジョイント。
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