以下、図面に基づいて本発明の実施例1から実施例6を説明する。
図1は本発明の伸縮軸を有するステアリング装置の全体を示し、一部を切断した側面図であって、操舵補助部を有する電動パワーステアリング装置に適用した実施例を示す。図2は本発明の実施例1の伸縮軸の製造工程を示す縦断面図である。図3は図2のA−A拡大断面図を示し、(a)はスリーブを被覆した伸縮軸を示す拡大断面図、(b)は被覆部をコーティングした伸縮軸を示す拡大断面図である。
図4は本発明の実施例1の伸縮軸の雄シャフトを示す斜視図である。図5は本発明の実施例1の伸縮軸の製造工程を示し、図3(b)のP部拡大断面図である。図6は図5の後工程を示す図3(b)のP部拡大断面図である。図7は図2のQ矢視図を示し、図7(a)は折り曲げる方向の荷重を雄シャフトの円周方向の複数の角度位置から付与した例を示すQ矢視図、図7(b)は折り曲げる方向の荷重の向きを雄シャフトの円周方向に連続的に変化させた例を示すQ矢視図である。
図1に示すように、本発明の実施例の伸縮軸を有するステアリング装置は、車体後方側(図1の右側)にステアリングホイール11を装着可能なステアリングシャフト12と、このステアリングシャフト12を挿通したステアリングコラム13と、ステアリングシャフト12に補助トルクを付与する為のアシスト装置(操舵補助部)20と、ステアリングシャフト12の車体前方側(図1の左側)に、図示しないラック/ピニオン機構を介して連結されたステアリングギヤ30とを備える。
ステアリングシャフト12は、アウターシャフト12Aとインナーシャフト12Bとを、回転トルクを伝達自在に、かつ軸方向に関して相対変位可能に組み合わせて成る。すなわち、インナーシャフト12Bの車体後方側外周には、複数の雄スプラインが形成されている。アウターシャフト12Aの車体前方側内周には、複数の雌スプラインが、雄スプラインと同一位相位置に形成されている。アウターシャフト12Aの雌スプラインがインナーシャフト12Bの雄スプラインと所定の隙間を有して外嵌し、回転トルクを伝達自在に、かつ軸方向に関して相対変位可能に係合している。従って、上記アウターシャフト12Aとインナーシャフト12Bとは、衝突時に、この係合部が相対摺動して、全長を縮めることができる。
また、上記ステアリングシャフト12を挿通した筒状のステアリングコラム13は、アウターコラム13Aとインナーコラム13Bとをテレスコピック移動可能に組み合わせており、衝突時に軸方向の衝撃が加わった場合に、この衝撃によるエネルギを吸収しつつ全長が縮まる、所謂コラプシブル構造としている。
そして、上記インナーコラム13Bの車体前方側端部を、ギヤハウジング21の車体後方側端部に圧入嵌合して固定している。また、上記インナーシャフト12Bの車体前方側端部を、このギヤハウジング21の内側に通し、アシスト装置20の図示しない入力軸の車体後方側端部に結合している。
ステアリングコラム13は、その中間部を支持ブラケット14により、ダッシュボードの下面等、車体18の一部に支承している。また、この支持ブラケット14と車体18との間に、図示しない係止部を設けて、この支持ブラケット14に車体前方側に向かう方向の衝撃が加わった場合に、この支持ブラケット14が上記係止部から外れ、車体前方側に移動するようにしている。
また、上記ギヤハウジング21の上端部も、上記車体18の一部に支承している。また、本実施例の場合には、チルト機構及びテレスコピック機構を設けることにより、上記ステアリングホイール11の車体前後方向位置、及び、高さ位置の調節を自在としている。このようなチルト機構及びテレスコピック機構は、従来から周知であり、本発明の特徴部分でもない為、詳しい説明は省略する。
上記ギヤハウジング21の車体前方側端面から突出した出力軸23は、自在継手15を介して、中間シャフト16の雄中間シャフト(以下雄シャフトと呼ぶ)16Aの後端部に連結している。また、この中間シャフト16の雌中間シャフト(以下雌シャフトと呼ぶ)16Bの前端部に、別の自在継手17を介して、ステアリングギヤ30の入力軸31を連結している。
雄シャフト16Aは、雌シャフト16Bに対して、軸方向に相対摺動可能に、かつ、回転トルクを伝達可能に結合している。図示しないピニオンが、この入力軸31の前端部に形成されている。また、図示しないラックが、このピニオンに噛み合っており、ステアリングホイール11の回転が、タイロッド32を移動させて、図示しない車輪を操舵する。
アシスト装置20のギヤハウジング21には、電動モータ26のケース261が固定されている。ステアリングホイール11からステアリングシャフト12に加えられるトルクの方向と大きさを、トルクセンサで検出する。この検出信号に応じて、電動モータ26を駆動し、図示しない減速機構を介して、出力軸23に、所定の方向に所定の大きさで補助トルクを発生させる。
図2に示すように、本発明の実施例1の伸縮軸は、中間シャフト16の雄シャフト16Aと雌シャフト16Bに適用した例を示す。雄シャフト16Aの車体前方側(図2の左端)が、雌シャフト16Bの車体後方側(図2の右端)に内嵌して連結されている。
図2、図3(a)、(b)に示すように、炭素鋼またはアルミニウム合金で成形された雌シャフト16Bは中空筒状に形成されており、その内周には、雌シャフト16Bの軸心から放射状に、複数の軸方向の溝41が、伸縮範囲(伸縮ストローク)の全長にわたって、等間隔に形成されている。
図3(a)の例は、炭素鋼またはアルミニウム合金で成形された雄シャフト(雄スプライン軸)16Aの歯51に、雌シャフト(雌スプライン筒)16Bの溝41との間の摺動抵抗を減少させる被覆部61として、スリーブを被覆した伸縮軸の例を示す。
すなわち、回転トルクを伝達するための非円形の外周形状として、4個の軸方向の歯51を有する雄シャフト16Aには、歯51の軸方向の全長に、雌シャフト16Bの溝41との間の摺動抵抗を減少させる被覆部61として、スリーブが被覆されている。
また、図3(b)の例は、雄シャフト(雄スプライン軸)16Aの歯51に、雌シャフト(雌スプライン筒)16Bの溝41との間の摺動抵抗を減少させる被覆部61をコーティングした伸縮軸の例を示す。すなわち、回転トルクを伝達するための非円形の外周形状として、18個の軸方向の歯51を有する雄シャフト16Aには、歯51の軸方向の全長に、雌シャフト16Bの軸方向の溝41との間の摺動抵抗を減少させる被覆部61がコーティングされている。
図3(a)、(b)の被覆部61の材質は、ゴム、例えば、天然ゴム、合成ゴム、または、天然ゴムと合成ゴムの混合物のうちの少なくともいずれか一つで構成することが好ましい。また、被覆部61の材質は、二硫化モリブデン、グラファイト、フッ素化合物のうちの少なくともいずれか一つの固体潤滑剤で構成してもよい。
さらに、被覆部61の材質は、天然ゴム、合成ゴム、または、天然ゴムと合成ゴムの混合物のうちの少なくともいずれか一つに、二硫化モリブデン、グラファイト、フッ素化合物のうちの少なくともいずれか一つの固体潤滑剤を含有させた材質で構成してもよい。
また、上記被覆部61の材質は、ポリテトラフルオロエチレン、フェノール樹脂、アセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテル・エーテルケトン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂のうちの少なくともいずれか一つの高分子材料で構成することが好ましい。
さらに、上記被覆部61の材質は、ポリテトラフルオロエチレン、フェノール樹脂、アセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂のうちの少なくともいずれか一つの高分子材料に、二硫化モリブデン、グラファイト、フッ素化合物のうちの少なくともいずれか一つの固体潤滑剤を含有させた材質で構成してもよい。
図5(a)に示すように、雄シャフト16Aの歯51の軸方向の全長に、雌シャフト16Bの溝41との間の摺動抵抗を減少させる被覆部61を形成した後、図2に示すように、雄シャフト16Aの歯51の軸方向の全長に雌シャフト16Bの溝41を外嵌する。被覆部61の厚さは、中間シャフト16の慣らし前の摺動抵抗が、所定の摺動抵抗の許容範囲の下限値よりも大きな摺動抵抗になるように厚く形成し、溝41の側面411と被覆部61が締め代を有するように設定する。雌シャフト16Bの溝41と被覆部61の外周との間には、所定の硬さ(ちょう度)のグリースを所定量だけ充填する。
次ぎに、図2に示すように、雌シャフト16Bの外周を加工治具71で固定した状態で、雄シャフト16Aの右端に、雄シャフト16Aの中心軸線161Aに直交する方向の荷重(白矢印で示す横荷重)Pを付与する。その結果、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを相対的に折り曲げることになる。雄シャフト16Aを加工治具71で固定し、雌シャフト16Bの左端に、雌シャフト16Bの中心軸線161Bに直交する方向の荷重を付与してもよい。
雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを相対的に折り曲げる方向の荷重は、雄シャフト16Aの円周方向の一つの角度位置から付与する例に限定されるものではない。すなわち、図7(a)に示すように、雄シャフト16Aの円周方向の複数の角度位置から荷重P1、P2を付与することが好ましい。荷重を付与する回数は、一回に限定されるものではなく、一つの角度位置について複数回荷重を付与してもよい。また、図7(b)の白矢印P1、P2、P3、P4に示すように、雄シャフト16Aの円周方向に荷重の向きを連続的に変化させてもよい。
雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを相対的に折り曲げる方向の荷重を付与しながら、図2の白矢印Rに示すように、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを相対的に軸方向に所定回数だけ往復摺動させる。雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させる距離は、車体組付け時に雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させる距離と同一に設定する。
また、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させる範囲は、車体組付け時に雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させる範囲と同一に設定する。雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させると、溝41の側面411と被覆部61の摩擦熱によって、被覆部61が加熱される。
被覆部61が加熱されると、図5(b)の二点鎖線に示すように、被覆部61が雄シャフト16Aの歯51の軸方向の全長にわたって膨張する。そのため、図4の一点鎖線の楕円T1、T2、及び、図6(a)に示すように、歯51の軸方向の全長にわたって、被覆部61は、溝41の側面411と歯51の側面511、511との間の締め代が大きくなり、塑性変形して圧縮歪を起こす。
雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させることで、雌シャフト16Bの溝41と雄シャフト16Aの歯51が軸方向の全長にわたって均等に当たり、摺動抵抗が摺動範囲(摺動ストローク)の全長にわたって一定になる。また、被覆部61の温度が高い状態で被覆部61が大きな圧縮応力を受けるため、時間の経過に伴って、クリープ現象によって被覆部61の圧縮歪が増大する。
雌シャフト16Bに対する雄シャフト16Aの往復摺動が完了すると、中間シャフト16は放熱し、被覆部61が常温に戻ると、図6(b)に示すように、被覆部61は収縮する。その結果、被覆部61は、溝41の側面411と歯51の側面511、511との間の締め代が小さくなり、慣らし後の中間シャフト16の摺動抵抗が所定の大きさになる。
雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを相対的に折り曲げる方向の荷重を付与しながら、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させると、被覆部61が大きな圧縮応力を受け、被覆部61の圧縮歪が増大するため、摺動抵抗を所定の大きさにするための製造時間を短縮することができる。雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを相対的に折り曲げる方向の荷重を付与せずに、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させてもよい。
次に本発明の実施例2について説明する。以下の説明では、上記実施例と異なる構造部分と作用についてのみ説明し、重複する説明は省略する。また、上記実施例と同一部品には同一番号を付して説明する。実施例2は、実施例1の変形例であり、被覆部61と雌シャフト16Bの内周との間に硬いグリースを充填して、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを相対的に軸方向に往復摺動させるようにした例である。
すなわち、実施例1と同様に、雄シャフト16Aの歯51の軸方向の全長に、雌シャフト16Bの溝41との間の摺動抵抗を減少させる被覆部61を形成した後、雄シャフト16Aの歯51の軸方向の全長に雌シャフト16Bの溝41を外嵌する。
被覆部61の厚さは、中間シャフト16の慣らし前の摺動抵抗が、所定の摺動抵抗の許容範囲の下限値よりも大きな摺動抵抗になるように厚く形成し、溝41の側面411と被覆部61が締め代を有するように設定する。雌シャフト16Bの溝41と被覆部61の外周との間には、実施例1よりも硬い(ちょう度が小さい)グリースを所定量だけ充填する。
次ぎに、実施例1と同様に、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを相対的に軸方向に所定回数だけ往復摺動させる。実施例1と同様に、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを相対的に折り曲げる方向の荷重を付与しながら、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させてもよい。
雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させると、実施例1よりも硬いグリースを充填しているため、溝41の側面411と被覆部61との間に発生する摩擦熱が多くなり、被覆部61が短時間で加熱される。
被覆部61が加熱されると被覆部61が膨張し、被覆部61は、溝41の側面411と歯51の側面511、511との間の締め代が大きくなり、塑性変形して圧縮歪を起こす。雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させることで、雌シャフト16Bの溝41と雄シャフト16Aの歯51が軸方向の全長にわたって均等に当たり、摺動抵抗が摺動範囲(摺動ストローク)の全長にわたって一定になる。
雌シャフト16Bに対する雄シャフト16Aの往復摺動が完了すると、中間シャフト16は放熱し、被覆部61が常温に戻ると、被覆部61は収縮する。その結果、被覆部61は、溝41の側面411と歯51の側面511、511との間の締め代が小さくなり、慣らし後の中間シャフト16の摺動抵抗が所定の大きさになる。実施例2では、被覆部61が短時間で加熱され、摺動抵抗を所定の大きさにするための製造時間を短縮することができる。
次に本発明の実施例3について説明する。図8は本発明の実施例3の伸縮軸の製造工程を示す縦断面図である。図9は図8のR矢視図を示し、図9(a)は中心軸線をずらす方向の荷重を雄シャフトの円周方向の複数の角度位置から付与した例を示すR矢視図、図9(b)は中心軸線をずらす方向の荷重を雄シャフトの円周方向に連続的に変化させた例を示すR矢視図である。以下の説明では、上記実施例と異なる構造部分と作用についてのみ説明し、重複する説明は省略する。また、上記実施例と同一部品には同一番号を付して説明する。
実施例3は、実施例1の変形例であり、雌シャフト16Bの中心軸線に対して雄シャフト16Aの中心軸線をずらす方向の荷重を付与しながら、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを相対的に軸方向に往復摺動させるようにした例である。
すなわち、実施例1と同様に、雄シャフト16Aの歯51の軸方向の全長に、雌シャフト16Bの溝41との間の摺動抵抗を減少させる被覆部61を形成した後、雄シャフト16Aの歯51の軸方向の全長に雌シャフト16Bの溝41を外嵌する。
被覆部61の厚さは、中間シャフト16の慣らし前の摺動抵抗が、所定の摺動抵抗の許容範囲の下限値よりも大きな摺動抵抗になるように厚く形成し、溝41の側面411と被覆部61が締め代を有するように設定する。雌シャフト16Bの溝41と被覆部61の外周との間には、実施例1と同様に、所定の硬さ(ちょう度)のグリースを所定量だけ充填する。
次ぎに、図8に示すように、雌シャフト16Bの外周を加工治具71で固定した状態で、雌シャフト16Bの中心軸線161Bに対して雄シャフト16Aの中心軸線161Aをずらす方向の荷重(白矢印で示す横荷重)Pを、雄シャフト16Aに付与する。雄シャフト16Aを加工治具で固定し、雄シャフト16Aの中心軸線161Aに対して雌シャフト16Bの中心軸線161Bをずらす方向の荷重を、雌シャフト16Bに付与してもよい。
雌シャフト16Bの中心軸線161Bに対して雄シャフト16Aの中心軸線161Aをずらす方向の荷重は、雄シャフト16Aの円周方向の一つの角度位置から付与する例に限定されるものではない。すなわち、図9(a)に示すように、雄シャフト16Aの円周方向の複数の角度位置から荷重P1、P2を付与することが好ましい。荷重を付与する回数は、一回に限定されるものではなく、一つの角度位置について複数回荷重を付与してもよい。また、図9(b)の白矢印P1、P2、P3、P4に示すように、雄シャフト16Aの円周方向に荷重の向きを連続的に変化させてもよい。
雌シャフト16Bの中心軸線161Bに対して雄シャフト16Aの中心軸線161Aをずらす方向の荷重を付与しながら、図8の白矢印Rに示すように、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを相対的に軸方向に所定回数だけ往復摺動させる。雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させる距離は、車体組付け時に雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させる距離と同一に設定する。
また、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させる範囲は、車体組付け時に雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させる範囲と同一に設定する。雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させると、溝41の側面411と被覆部61の摩擦熱によって、被覆部61が加熱される。
被覆部61が加熱されると被覆部61が膨張し、被覆部61は、溝41の側面411と歯51の側面511、511との間の締め代が大きくなり、塑性変形して圧縮歪を起こす。雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させることで、雌シャフト16Bの溝41と雄シャフト16Aの歯51が軸方向の全長にわたって均等に当たり、摺動抵抗が摺動範囲(摺動ストローク)の全長にわたって一定になる。
雌シャフト16Bに対する雄シャフト16Aの往復摺動が完了すると、中間シャフト16は放熱し、被覆部61が常温に戻ると、被覆部61は収縮する。その結果、被覆部61は、溝41の側面411と歯51の側面511、511との間の締め代が小さくなり、慣らし後の中間シャフト16の摺動抵抗が所定の大きさになる。
雌シャフト16Bの中心軸線161Bに対して雄シャフト16Aの中心軸線161Aをずらす方向の荷重を付与しながら、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させると、被覆部61が大きな圧縮応力を受け、被覆部61の圧縮歪が増大するため、摺動抵抗を所定の大きさにするための製造時間を短縮することができる。
次に本発明の実施例4について説明する。図10は本発明の実施例4の伸縮軸の製造工程を示す縦断面図である。図11は図10のS矢視図を示し、図11(a)は回転トルクを時計方向に付与した後、反時計方向に付与した例を示すS矢視図、図11(b)は回転トルクを時計方向と反時計方向に交互に反復して付与した例を示すS矢視図である。以下の説明では、上記実施例と異なる構造部分と作用についてのみ説明し、重複する説明は省略する。また、上記実施例と同一部品には同一番号を付して説明する。
実施例4は、実施例1の変形例であり、雌シャフト16Bと雄シャフト16Aとの間に回転トルクを付与しながら、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを相対的に軸方向に往復摺動させるようにした例である。
すなわち、実施例1と同様に、雄シャフト16Aの歯51の軸方向の全長に、雌シャフト16Bの溝41との間の摺動抵抗を減少させる被覆部61を形成した後、雄シャフト16Aの歯51の軸方向の全長に雌シャフト16Bの溝41を外嵌する。
被覆部61の厚さは、中間シャフト16の慣らし前の摺動抵抗が、所定の摺動抵抗の許容範囲の下限値よりも大きな摺動抵抗になるように厚く形成し、溝41の側面411と被覆部61が締め代を有するように設定する。雌シャフト16Bの溝41と被覆部61の外周との間には、実施例1と同様に、所定の硬さ(ちょう度)のグリースを所定量だけ充填する。
次ぎに、図10に示すように、雌シャフト16Bの外周を加工治具71で固定した状態で、雄シャフト16Aに回転トルクTを付与する。雄シャフト16Aを加工治具で固定し、雌シャフト16Bに回転トルクTを付与してもよい。
雌シャフト16Bと雄シャフト16Aとの間に付与する回転トルクは、時計方向または反時計方向のいずれか一方向に限定されるものではない。すなわち、図11(a)に示すように、時計方向の回転トルクT1を付与した後、反時計方向の回転トルクT2を付与してもよい。また、図11(b)に示すように、時計方向の回転トルクT1と反時計方向の回転トルクT2を、短時間で交互に反復して付与してもよい。
雌シャフト16Bと雄シャフト16Aとの間に回転トルクTを付与しながら、図10の白矢印Rに示すように、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを相対的に軸方向に所定回数だけ往復摺動させる。雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させる距離は、車体組付け時に雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させる距離と同一に設定する。
また、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させる範囲は、車体組付け時に雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させる範囲と同一に設定する。雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させると、溝41の側面411と被覆部61の摩擦熱によって、被覆部61が加熱される。
被覆部61が加熱されると被覆部61が膨張し、被覆部61は、溝41の側面411と歯51の側面511、511との間の締め代が大きくなり、塑性変形して圧縮歪を起こす。雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させることで、雌シャフト16Bの溝41と雄シャフト16Aの歯51が軸方向の全長にわたって均等に当たり、摺動抵抗が摺動範囲(摺動ストローク)の全長にわたって一定になる。
雌シャフト16Bに対する雄シャフト16Aの往復摺動が完了すると、中間シャフト16は放熱し、被覆部61が常温に戻ると、被覆部61は収縮する。その結果、被覆部61は、溝41の側面411と歯51の側面511、511との間の締め代が小さくなり、慣らし後の中間シャフト16の摺動抵抗が所定の大きさになる。
雌シャフト16Bと雄シャフト16Aとの間に回転トルクTを付与しながら、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させると、被覆部61が大きな圧縮応力を受け、被覆部61の圧縮歪が増大するため、摺動抵抗を所定の大きさにするための製造時間を短縮することができる。
次に本発明の実施例5について説明する。図12は本発明の実施例5の伸縮軸の製造工程を示す縦断面図である。図13は図12のT矢視図である。以下の説明では、上記実施例と異なる構造部分と作用についてのみ説明し、重複する説明は省略する。また、上記実施例と同一部品には同一番号を付して説明する。
実施例5は、実施例1の変形例であり、雌シャフト16Bの内周を縮径する方向の荷重を付与しながら、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを相対的に軸方向に往復摺動させるようにした例である。
すなわち、実施例1と同様に、雄シャフト16Aの歯51の軸方向の全長に、雌シャフト16Bの溝41との間の摺動抵抗を減少させる被覆部61を形成した後、雄シャフト16Aの歯51の軸方向の全長に雌シャフト16Bの溝41を外嵌する。
被覆部61の厚さは、中間シャフト16の慣らし前の摺動抵抗が、所定の摺動抵抗の許容範囲の下限値よりも大きな摺動抵抗になるように厚く形成し、溝41の側面411と被覆部61が締め代を有するように設定する。雌シャフト16Bの溝41と被覆部61の外周との間には、実施例1と同様に、所定の硬さ(ちょう度)のグリースを所定量だけ充填する。
次ぎに、図12に示すように、雌シャフト16Bの外周を加工治具71で固定した状態で、雌シャフト16Bの内周を縮径する方向の荷重Pを付与する。図13に示すように、雌シャフト16Bの外周の4箇所をプレス72で押圧して、雌シャフト16Bの内周を均等に縮径する。雌シャフト16Bの内周を縮径する範囲は、車体組付け時に雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させる範囲全体が好ましいが、車体組付け時に雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させる範囲の一部でもよい。
雌シャフト16Bの内周を縮径する方向の荷重Pを付与しながら、図12の白矢印Rに示すように、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを相対的に軸方向に所定回数だけ往復摺動させる。雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させる距離は、車体組付け時に雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させる距離と同一に設定する。
また、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させる範囲は、車体組付け時に雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させる範囲と同一に設定する。雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させると、溝41の側面411と被覆部61の摩擦熱によって、被覆部61が加熱される。
被覆部61が加熱されると被覆部61が膨張し、被覆部61は、溝41の側面411と歯51の側面511、511との間の締め代が大きくなり、塑性変形して圧縮歪を起こす。雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させることで、雌シャフト16Bの溝41と雄シャフト16Aの歯51が軸方向の全長にわたって均等に当たり、摺動抵抗が摺動範囲(摺動ストローク)の全長にわたって一定になる。
雌シャフト16Bに対する雄シャフト16Aの往復摺動が完了すると、中間シャフト16は放熱し、被覆部61が常温に戻ると、被覆部61は収縮する。その結果、被覆部61は、溝41の側面411と歯51の側面511、511との間の締め代が小さくなり、慣らし後の中間シャフト16の摺動抵抗が所定の大きさになる。
雌シャフト16Bの内周を縮径する方向の荷重Pを付与しながら、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させると、被覆部61が大きな圧縮応力を受け、被覆部61の圧縮歪が増大するため、摺動抵抗を所定の大きさにするための製造時間を短縮することができる。
次に本発明の実施例6について説明する。図15は本発明の実施例6の伸縮軸の製造工程を示す縦断面図である。以下の説明では、上記実施例と異なる構造部分と作用についてのみ説明し、重複する説明は省略する。また、上記実施例と同一部品には同一番号を付して説明する。
実施例6は、実施例1の変形例であり、被覆部61を加熱装置によって加熱しながら、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを相対的に軸方向に往復摺動させ、雌シャフト16Bの内周に局部的に凸部があっても、凸部による摺動抵抗の局部的な増大を抑制するようにした例である。
すなわち、図15に示すように、実施例1と同様に、雄シャフト16Aの歯51の軸方向の全長に、雌シャフト16Bの溝41との間の摺動抵抗を減少させる被覆部61を形成した後、雄シャフト16Aの歯51の軸方向の全長に雌シャフト16Bの溝41を外嵌する。
被覆部61の厚さは、中間シャフト16の慣らし前の摺動抵抗が、所定の摺動抵抗の許容範囲の下限値よりも大きな摺動抵抗になるように厚く形成し、溝41の側面411と被覆部61が締め代を有するように設定する。雌シャフト16Bの溝41と被覆部61の外周との間には、実施例1と同様に、所定の硬さ(ちょう度)のグリースを所定量だけ充填する。
次ぎに、図15に示すように、雌シャフト16Bの外周を加工治具71で固定した後、雌シャフト16Bの外周に高周波コイル等の加熱装置73を外嵌する。加熱装置73に交流電流を流すと、電磁誘導によって雌シャフト16Bが加熱され、その熱が被覆部61に伝達され、被覆部61が所定の温度に加熱される。その結果、被覆部61が雄シャフト16Aの歯51の軸方向の全長にわたって膨張する。他の例として、雄シャフト16A側から被覆部61を加熱してもよい。
次ぎに、図15に示すように、雌シャフト16Bの外周を加工治具71で固定した状態で、雄シャフト16Aの右端に、雄シャフト16Aの中心軸線161Aに直交する方向の荷重(白矢印で示す横荷重)Pを付与しながら、白矢印Rに示すように、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを相対的に軸方向に所定回数だけ往復摺動させる。雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させると、溝41の側面411と被覆部61の摩擦熱によって、被覆部61が更に加熱される。荷重を付与する方向は、上記実施例1から実施例5で説明したどの方向でもよい。
被覆部61が加熱されると被覆部61が更に膨張し、被覆部61は、溝41の側面411と歯51の側面511、511との間の締め代が大きくなり、塑性変形して圧縮歪を起こす。雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させることで、雌シャフト16Bの溝41と雄シャフト16Aの歯51が軸方向の全長にわたって均等に当たり、摺動抵抗が摺動範囲(摺動ストローク)の全長にわたって一定になる。
交流電流を切って加熱装置73の加熱を停止し、雌シャフト16Bに対する雄シャフト16Aの往復摺動が完了すると、中間シャフト16は放熱し、被覆部61が常温に戻ると、被覆部61は収縮する。その結果、被覆部61は、溝41の側面411と歯51の側面511、511との間の締め代が小さくなり、慣らし後の中間シャフト16の摺動抵抗が所定の大きさになる。
被覆部61を加熱装置73で加熱しながら往復摺動させると、被覆部61が実施例1から実施例5よりも軟化する。従って、雌シャフト16Bの溝41の側面411に局部的に凸部があっても、凸部に接触した被覆部61が、局部的に大きな圧縮歪をおこし、摺動抵抗の局部的な増大を抑制することが可能となる。
また、被覆部61を加熱装置73で加熱しながら、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させると、被覆部61を短時間で加熱できるため、摺動抵抗を所定の大きさにするための製造時間を短縮することができる。実施例6では、加熱装置73による加熱を往復摺動の全時間に渡って実施しているが、所定の時間だけ、または、被覆部61が所定の温度になるまで実施してもよい。
上記した実施例1から実施例6では、製造時に雌シャフト16Bに対して雄シャフト166Aを往復摺動させる範囲は、車体組付け時に雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させる範囲と同一に設定している。図14(a)に示すように、製造時に雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させる範囲B1を、車体組付け時に雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させる範囲B2とは異なる範囲に設定してもよい。
製造時に雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させると、雌シャフト16Bの内周が摩耗してグリースの保持能力が低下するが、車体組付け時に雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させる範囲とは異なる範囲に設定すれば、グリースの保持能力の低下を抑制することができる。
また、上記した実施例1から実施例6では、製造時に雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させる距離は、車体組付け時に雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させる距離と同一に設定している。図14(b)に示すように、製造時に雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させる距離L1を、車体組付け時に雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させる距離L2とは異なる距離に設定してもよい。
製造時に雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させると、雌シャフト16Bの内周が摩耗してグリースの保持能力が低下するが、車体組付け時に雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させる距離とは異なる距離に設定すれば、グリースの保持能力の低下を抑制することができる。
また、上記した実施例1から実施例6において、製造時の雌シャフト16Bの内周の表面あらさを、車体組付け時に製品として使用する時の雌シャフト16Bの内周の表面あらさよりも大きく設定してもよい。製造時に雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させ、被覆部61を塑性変形させて所定の摺動抵抗にした時に、雌シャフト16Bの内周の表面あらさを所定の大きさにする。
製造時の雌シャフト16Bの内周の表面あらさを大きく設定すれば、溝41の側面411と被覆部61との間の摩擦抵抗が大きくなり、摩擦熱が多く発生する。従って、被覆部61を短時間で加熱でき、摺動抵抗を所定の大きさにするための製造時間を短縮できる。
また、上記した実施例1から実施例6において、製造時に雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させ、被覆部61を塑性変形させて所定の摺動抵抗にした後に、被覆部61と雌シャフト16Bの内周との間にグリースを追加して充填、または、被覆部61と雌シャフト16Bの内周との間に充填したグリースを入れ換えてもよい。
製造時に雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させると、雌シャフト16Bの内周が摩耗して金属粉がグリースに混入する恐れがある。グリースを追加して充填、または、グリースを入れ換えれば、金属粉の混入割合いを抑制することができる。
また、上記した実施例1から実施例6において、製造時に雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させる摺動速度は、100mm/sec以上であることが好ましい。摺動速度が100mm/sec以上であれば、被覆部61の加熱が効率的に行われ、摺動抵抗を所定の大きさにするための製造時間を短縮できる。
また、上記した実施例1から実施例6において、製造時に雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させる時の、単位時間当たりの往復摺動回数は、20回/sec以上であることが好ましい。往復摺動回数が20回/sec以上であれば、被覆部61の加熱が短時間で行われ、摺動抵抗を所定の大きさにするための製造時間を短縮できる。
また、上記した実施例1から実施例6において、被覆部61と雌シャフト16Bの内周との間にグリースを充填せずに、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させ、被覆部61を塑性変形させて所定の摺動抵抗にした後に、被覆部61と雌シャフト16Bの内周との間にグリースを充填してもよい。
製造時に被覆部61と雌シャフト16Bの内周との間にグリースを充填しないと、溝41の側面411と被覆部61との間の摩擦抵抗が大きくなり、摩擦熱が多く発生する。従って、被覆部61が短時間で加熱され、摺動抵抗を所定の大きさにするための製造時間を短縮できる。
また、上記した実施例1から実施例6において、小さな摺動速度、小さな摺動面面圧、小さな摺動距離で、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを相対的に軸方向に複数回往復摺動させた後、摺動速度、摺動面面圧、摺動距離を変えて、再度、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを相対的に軸方向に複数回往復摺動させて所定の摺動抵抗にしてもよい。すなわち、複数の摺動条件で、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを往復摺動させてもよい。
また、上記した実施例1から実施例6において、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを相対的に軸方向に往復摺動させる時の単位時間当たりの往復摺動回数を多くして、被覆部61を加熱して溶融させ、所定の摺動抵抗にしてもよい。すなわち、単位時間当たりの往復摺動回数を200回/sec程度にすると被覆部61が溶融するため、小さな摺動面面圧で被覆部61を塑性変形させることができる。
往復摺動回数を200回/sec程度にするには、例えば、振動溶着用振動発生装置を使用すればよい。振動溶着用振動発生装置とは、一対の電磁石の間に磁性体で形成された振動体を配置し、励磁電流を所定の周期で一対の電磁石に交互に流し、振動体を一対の電磁石の間で往復振動させる装置である。
また、上記した実施例1から実施例6において、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを相対的に軸方向に所定回数往復摺動させた時の摺動抵抗の値に応じて、摺動速度、摺動面面圧、摺動距離を変えてもよい。すなわち、製造前の試験データを取得するために、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを所定回数(例えば1回〜10回程度の中から選択した特定の回数)往復摺動させた時の摺動抵抗の値を測定する。
測定した摺動抵抗を所定の大きさにするために、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを相対的に軸方向に往復摺動した時の、摺動回数と摺動抵抗の低下量との関係を予め試験して、データを取得しておく。往復摺動する時の摺動速度、摺動面面圧を変えて試験し、適切な摺動速度、摺動面面圧のデータを得ることが望ましい。
従って、製造時に、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを所定回数往復摺動させた時に、摺動抵抗の値を測定値し、この測定値に応じて、上記したデータから決定した摺動速度、摺動面面圧、摺動距離で雌シャフト16Bに対する雄シャフト16Aの往復摺動を行えば、慣らし後の摺動抵抗を所定の許容範囲に確実に収めることが可能となる。
また、別の例として、製造前の試験データを取得するために、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを所定回数(例えば1回〜10回程度の中から選択した特定の回数)往復摺動させた時の摺動抵抗の値と被覆部の温度の値の二つを測定する。測定した温度の時の摺動抵抗を所定の大きさにするために、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを相対的に軸方向に往復摺動した時の、摺動回数と摺動抵抗の低下量との関係を予め試験して、データを取得しておく。往復摺動する時の摺動速度、摺動面面圧を変えて試験し、適切な摺動速度、摺動面面圧のデータを得ることが望ましい。
従って、製造時に、雌シャフト16Bに対して雄シャフト16Aを所定回数往復摺動させた時に、摺動抵抗の値と被覆部の温度を測定値し、この測定値に応じて、上記したデータから決定した摺動速度、摺動面面圧、摺動距離で雌シャフト16Bに対する雄シャフト16Aの往復摺動を行えば、慣らし後の摺動抵抗を所定の許容範囲に確実に収めることが可能となる。
上記実施例では、雄シャフト16Aの歯51側に摺動抵抗を減少させる被覆部61を形成しているが、雌シャフト16Bの溝41側に摺動抵抗を減少させる被覆部61を形成してもよい。また、雄シャフト16Aの歯51と雌シャフト16Bの溝41の両方に、摺動抵抗を減少させる被覆部61を形成してもよい。さらに、雄シャフト16Aまたは雌シャフト16B全体を、摺動抵抗を減少させる被覆部61と同一の材質で成形してもよい。
また、上記実施例では、中間シャフト16に本発明を適用した例について説明したが、ステアリングシャフト12等、ステアリング装置を構成する任意の伸縮軸に適用することができる。