以下、本発明のフィルム巻取装置及びこの装置を用いたフィルムの製造方法の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明のターレット式のフィルム巻取装置10を、フィルム12の製膜ライン14に組み込んだ概念図である。
図1に示すように、製膜ライン14で製造されたフィルム12は、フィルム巻替装置16を介してターレット式のフィルム巻取装置10に巻き取られる。本実施の形態では、巻取軸が2軸の2軸ターレット式のフィルム巻取装置の例で説明するが、2軸以上であってもよい。製膜ライン14としては、例えば原料樹脂を溶剤に溶解又は分散したドープを、支持体上に薄膜状に流延する溶液製膜法、あるは原料樹脂を押出機で溶融した溶融樹脂をダイから冷却ドラム上に薄膜状に押し出す溶融製膜法を採用することができる。
また、フィルム巻替装置16は、2軸のうちの一方の巻取軸が満巻きになってターレットが旋回し、巻取り位置に空の巻取軸が位置したときに、フィルム12の巻取りを満巻きの巻取軸から空の巻取軸に切り替える装置である。フィルム巻替装置16の詳しい説明は本発明の趣旨ではないので省略するが、例えば特開2008−230723号公報に記載されるフィルム巻替装置を好適に使用することができる。
フィルム巻取装置10の巻取りを駆動制御する巻取り駆動制御部10A、及びフィルム巻替装置16の巻替えを駆動制御する巻替え駆動制御部16Aは、コントローラ18からの指令によって制御を行う。
図2及び図3に示すように、2軸ターレット式のフィルム巻取装置10は、主として、架台20に回動自在に設けられたターレット22と、ターレット22と一緒に旋回するエア噴出ユニット24と、で構成される。なお、図2及び図3では、フィルム巻取り中におけるターレット22の姿勢が図1の水平状態に比べて傾斜しているが、姿勢については特に限定されない。
架台20は、底板20Aと、フィルム12の幅よりも離間して対向配置された一対の側板20B,20Bとで断面凹形状に形成される。また、一対の側板20B,20Bの上端部に設けられた一対の軸受(図示せず)に旋回軸(回転軸)26が回転自在に支持される。ターレット22は、平行に対向する一対のアーム板28,28で構成されると共に、一対のアーム板28,28の中心部が旋回軸26に支持される。旋回軸26は図示しない回転駆動源に連結される。これにより、ターレット22は、旋回軸26が回転することによって旋回される。本実施の形態では、ターレット22をアーム状のターレットの例で説明するが、平行な一対の円板で構成された円板状のターレットを用いるようにしてもよい。
平行に対向する一対のアーム板28,28の両端部内側にはボス30、30が突起しており、この一対のボス30,30に中空な巻き芯31が嵌合支持される。これにより、フィルム12を巻き取る巻取軸32が形成される。なお、フィルム巻替装置16に近い巻取り位置にあって巻取りを行っている巻取軸32を第1巻取軸32Aと言う。また、次の巻取りのために、フィルム巻替装置16から遠い待機位置で待機している空の巻取軸32を第2巻取軸32Bと言う。
そして、巻取り駆動制御部10Aは、コントローラ18からの指令に基づいてターレット22の間欠回転(180度ずつ)及び巻取軸32A,32Bの回転をそれぞれ駆動制御する。
また、巻取り位置近傍には、第1巻取軸32Aに巻き取られた巻回ロール34の巻き径を計測する巻き径センサー(図示せず)が設けられ、検出信号がコントローラ18に送られる。コントローラ18は、巻き径センサの検出信号から巻回ロール34の巻き径を随時演算すると共に、巻き径が満巻きになるとフィルム巻取装置10及びフィルム巻替装置16に巻替え指令を出力する。
ターレット22と一体的に設けられたエア噴出ユニット24は、巻回ロール34の表面をエアプレスして、巻き取られるフィルム12に同伴される同伴空気が巻回ロール34へ巻き込まれるのを防止するものであり、第1及び第2の巻取軸32A、32Bごとに設けられる。即ち、エア噴出ユニット24は、巻回ロール34の表面にエアを吹き付けてエアプレスするエアノズル36と、旋回軸26を中空に形成すると共に、該旋回軸26を介してエアをエアノズル36に導入するエア導入ライン38と、巻回ロール34の巻き径の変化に追従してエアノズル36を移動させる移動手段40と、で構成される。このエア噴出ユニット24は、ターレット22の旋回と一緒に旋回するように、ターレット22と一体的に設けられる。このように構成されたエア噴出ユニット24は、ターレット22の旋回軌道S内に設けられることが好ましい。ターレット22の旋回軌道Sとは、図3に示すように、ターレット22の旋回軸26の中心Oから最も距離の長い巻回ロール34の最外縁が描く軌跡(2点鎖線)を言う。
エアノズル36は、フィルム12の幅と同等幅に形成されたスリット状の吹出口36Aを有し、エア導入ライン38から供給されたエアが吹出口36Aから巻回ロール34の表面に向けて吹き付けられる。
エア導入ライン38は、エアノズル36の幅方向に形成された複数のエア取入口38Aに一方端が接続された複数本のフレキシブルホース38Bと、複数本のフレキシブルホース38Bの他方端が接続されるヘッダー管38Cと、ヘッダー管38Cと連通する中空な旋回軸26と、で構成される。そして、旋回軸26に設けられたロータリージョイント38Dに、エアのエア発生装置(図示せず)までのエア配管42が接続される。これにより、ターレット22の旋回と一緒にエア噴出ユニット24が旋回しても、エア導入ライン38が捩れてしまうことがない。
複数本のフレキシブルホース38B及びヘッダー管38Cはエアノズル36ごとに設けられると共に、それぞれのヘッダー管38C内には開閉バルブ(図示せず)が設けられる。各開閉バルブはコントローラ18からの指示によって開閉動作を行う。即ち、フィルム巻取り中のエアノズル36にエアを送るヘッダー管38Cの開閉バルブは開成され、他方のヘッダー管38Cの開閉バルブは閉成される。
これにより、エア発生装置からのエアは、エア配管42、ロータリージョイント38D、中空な旋回軸26、開閉バルブが開成されているヘッダー管38C及び複数本のフレキシブルホース38Bを通ってエアノズル36に供給される。エアノズル36からのエアで巻回ロール34の表面をエアプレスする圧力は5〜30kPaの範囲であることが好ましい。エアプレスする圧力が5kPa未満では、同伴エアを排除する効果が小さく、巻取り故障の原因になると共に、圧力が30kPaを超えると、エアプレスの圧力が強過ぎて硬巻きになりすぎるので、黒帯等の巻き取り故障になる虞がある。
移動手段40は、巻回ロール34の表面との所定距離を維持しながらエアノズル36を巻回ロール34表面に対して進退移動するものであり、次のように構成される。即ち、対向する一対のアーム板28,28には、その両端部から互いに逆方向に延設板28A,28Aが延設されており、アーム板28がN字形状に形成される。そして、対向する延設板28A,28Aの内側には、第1又は第2の巻取軸32A,32Bの軸芯に対して直交する方向にそれぞれリニアガイドのレール44が2本平行に敷設される。また、対向するレール44にブロック46及びスライドブロック(ナット部材)48を介してエアノズル36の両端部が支持される。また、スライドブロック48には、ボールネジ50が螺合されると共に、ボールネジ50の一方端が延設板28Aに支持されたモータ52の回転軸に連結される。
そして、コントローラ18は、巻き径センサからの検出信号によって演算される巻回ロール34の巻き径に基づいてモータ52の回転数を制御する。これにより、図4(A),(B)に示すように、エアノズル36の吹出口36Aと、巻回ロール34の表面との距離Lを所定距離に維持しながら、巻回ロール34の巻き径の変化に追従してエアノズル36を移動させることができる。図4(A)は巻き径が細い状態、図4(B)は巻き径が太い状態である。
エアノズル36の吹出口36Aと巻回ロール34の表面との距離Lは、2mm〜15mmの範囲であることが好ましい。2mm未満では吹出口36Aが巻回ロール34の表面に接触する虞れがあると共に、15mmを超えると巻回ロール34の表面をエアプレスする圧力が同伴空気を排除する上で不十分になる。また、リニアガイド(レール44とブロック46)とボールネジ50には、防塵カバー(図示せず)をして発塵した塵が飛散しないようにすることが好ましい。
また、図3に示すように、ターレット22には、該ターレット22が旋回する際に巻回ロール34に巻き取られる直前のフィルム12がエア噴出ユニット24、特にエア導入ライン38のフレキシブルホース38Bや移動手段40に接触しないようにフィルム12の走行経路を規制するガイドローラ54を備えることが好ましい。即ち、図3に示すように、延設板28Aから支持アーム56がフレキシブルホース38Bの外側に、湾曲状に延設される。この支持アーム56の先端部と中央部にそれぞれガイドローラ54が回転自在に支持される。これにより、ターレット22の旋回時にターレット22と一緒に旋回して巻回ロール34に巻き取られるフィルム12がラップするガイドローラ54が設けられると共に、該ガイドローラ54にラップしたフィルム12の走行経路内にエア噴出ユニット24が配置された構成が形成される。
なお、ガイドローラ54の数は2個に限定されない。また、図3では、延設板28Aから延設した支持アーム56にガイドローラ54を支持するようにしたが、上記した円板状のターレットを採用することで、ガイドローラ54の支持部分を形成してもよい。要は、ガイドローラ54もターレット22の旋回と一緒に旋回する構成であればよい。これにより、ターレット22が旋回する際に巻回ロール34に巻き取られる直前のフィルム12がエア噴出ユニット24に接触しないようにできるので、接触によってフィルム12面が損傷することがない。
次に、上記の如く構成されたフィルム巻取装置10の作用について説明する。
図5(A)に示すように、巻取り位置において、第1巻取軸32Aにフィルム12が巻き取られると共に、巻回ロール34の表面はエアノズル36から吹き出されるエアによってエアプレスされる。これにより、フィルム12の走行に同伴される同伴空気が巻回ロール34に巻き込まれて上記した巻取り故障が発生するのを防止する。
次に、図示しない巻き径センサからの検知信号によって、コントローラ18が巻き取られるフィルム12の巻き径が満巻きになったことを検知すると、コントローラ18は巻替え指令をフィルム巻取装置10の巻取り駆動制御部10Aと、フィルム巻替装置16の巻替え駆動制御部16Aに送る。例えば、第1巻取軸32Aにフィルム12を4000m巻き取る場合、コントローラ18は3800m巻き取った時の巻き径で満巻きになったと判断し、巻替え指令を発する。
巻替え指令に基づいて巻取り駆動制御部10Aは、図5(C)に示すように、ターレット22を180度旋回して、待機位置に位置していた第2巻取軸32Bを巻取り位置に移動させる。一方、満巻きなった巻回ロール34は待機位置に移動し、フィルム巻替装置16でのフィルム12の巻き替えが終了するまで(4000m巻き取るまで)、フィルム12の巻取りを続行する。
かかる、フィルム巻替えのためのターレット22の旋回において、エアノズル36を含むエア噴出ユニット24は、ターレット22と一体的に設けられているので、ターレット22の旋回と一緒に旋回する。これにより、ターレット方式のフィルム巻取装置10にエアプレス方式を適用する場合であっても、ターレット旋回時にエアノズル36を旋回軌道Sの外に退避させる必要がない。したがって、第1巻取軸32Aへのフィルム巻取りの開始から終了まで巻回ロール34表面へのエアプレスを継続して行うことができる。特に、ターレット旋回による巻き替え開始から終了まで(3800mから4000mの間)の間も巻回ロール34表面には、エアノズル36からのエアによるエアプレスが行われるので、従来のターレット式の巻取装置のように、巻き替え開始以降(即ち、巻取ロールの外周部)において巻取り故障が発生することがない。
更に、本発明の実施の形態では、ターレット22と一緒に旋回するガイドローラ54を設けたので、巻回ロール34に巻き取られる直前のフィルム12がエア噴出ユニット24に接触して、傷等の故障を発生することがない。
このことを図5で説明すると、図5(A)の状態からターレット22が90度旋回すると、図5(B)の状態になる。図5(B)から分かるように、フレキシブルホース38Bや移動手段40が巻取り直前のフィルム12に接触する前に、ガイドローラ54がフィルム12にラップして従動回転する。そして、図5(C)に示すように、ターレット22が180度旋回すると、フレキシブルホース38Bや移動手段40の外側をフィルム12が走行するように走行経路を形成する。これにより、ターレット22の旋回時に巻回ロール34に巻き取られる直前のフィルム12がエア噴出ユニット24に接触することを防止できる。
一方、巻替え駆動制御部16Aは、ターレット22が旋回して巻取り位置に第2巻取軸32Bが移動されたら、第1巻取軸32Aに巻き取られているフィルム12を切断して、切断したフィルム12の先端部を第2巻取軸32Bに貼着する。貼着と同時に巻取り駆動制御部10Aによって第2巻取軸32Bが回転し、第2巻取軸32Bへの巻取りが開始される。これにより、走行するフィルム12は、第1巻取軸32Aから第2巻取軸32Bへ巻き替えられ、フィルム12の巻取りが連続的に行われる。
この巻き替え終了と略同時に、コントローラ18は、第1巻取軸32A側のヘッダー管38Cの開閉弁を閉成し、第2巻取軸32B側のヘッダー管32Cを開成する。これにより、第2巻取軸32Bに巻き取られる巻回ロール34表面にエアノズル36からエアが吹き付けられ、フィルム12に同伴する同伴空気が排除される。
開閉弁が切り換わるタイミングとしては、早ければ早い方が良いが、好ましくは巻き替え終了から3秒以内であれば巻取り故障の発生を防止でき、問題ない。
このように、本実施の形態のフィルム巻取装置10によれば、ターレット方式の巻取装置にエアプレス方式を適用する場合であっても、ターレット旋回時にエアノズル36を退避させる必要がなく、巻取りの開始から終了まで巻回ロール34へのエアプレスを行うことができるので、同伴空気を効率的に排除することができる。これにより、巻取り故障を確実に防止できる。
上記説明したフィルム巻取装置10では、巻取り中の巻回ロール34に対してエアを上向きに吹き付けてエアプレスするようにエア噴出ユニット24を配置した。しかし、図6のように巻回ロール34に対してエアを横向き吹き付けるようにエア噴出ユニット24を配置してもよく、図示しないが、下向きに吹き付けるようにしてもよい。このように、横向き又は下向きにエアを巻回ロールに吹き付けることで、巻取り時に発生する塵埃が舞い上がりにくくなるので、塵埃が巻回ロール表面に再付着するのを抑制できる。
上記のフィルム巻取装置10では、製膜されたフィルムをそのまま巻き取る、例えば偏光板の保護フィルム等を製造する際の巻取りの例で説明したが、次に、図7により、上記の如くフィルム巻取装置10に巻き取ったフィルム12に更に塗布・乾燥等の処理を施して光学フィルムを製造する製造方法の一例を説明する。光学フィルムの一例として光学補償フィルムの例で説明する。
尚、本発明のフィルム巻取装置は、上記説明したフィルムそのものを偏光板の保護フィルムとして使用する際の巻取りに有効である以外に、このフィルムに機能性塗布液を付与した光学フィルムの巻取りにも有効であることは勿論である。
ここでは、機能性塗布液を付与した光学フィルムの例として、光学補償フィルムの場合について説明するが、光学フィルムは光学補償フィルムに限られず、帯状のフィルム上に硬化性塗布液を塗布した後に乾燥ゾーンで加熱風により塗布層を乾燥させ、硬化ゾーンで乾燥させた塗布層を硬化させる各種光学フィルム、例えば、防眩フィルム、反射防止フィルム等の製造方法にも適用できる。
図7は、光学補償フィルムの製造装置100の全体構成を示す概略図である。
図7に示すように、予め配向膜形成用の透明樹脂層が形成された帯状のフィルム12が、ターレット式の送出機112から送り出される。なお、符号114は、旧ロールのフィルム12後端部と、新ロールのフィルム12先端部を自動接合するフィルム接合装置である。
フィルム接合装置114を介して送出機112から送出されたフィルム12は、ガイドローラ116によってガイドされながら下流側に配されたラビング処理装置118に送りこまれ、ラビングローラ120によって透明樹脂層がラビング処理される。これにより、配向膜が形成される。
ラビング処理装置118では、ラビングローラ120がフィルム12の連続搬送工程内にある2つの搬送用ロール間に配されている。そして、フィルム12が回転するラビングローラ120にラップされて搬送されることにより、連続的にラビング処理される。この場合、ラビングローラ120は、その回転軸がフィルム12の搬送方向に対して傾くように配されてもよい。
ラビング処理装置118の下流側には除塵機122が配されており、フィルム12面に付着した塵が取り除かれる。さらに、除塵機122の下流側にはグラビア塗布装置124が配され、液晶性化合物を含む塗布液がフィルム12の配向膜上に塗布される。液晶性化合物としては、架橋性官能基を有する液晶性ディスコティック化合物が好ましく用いられる。
グラビア塗布装置124は、グラビアローラ126と、該グラビアローラ126の下方に配され、液晶性化合物を含む塗布液が満たされた液受けパン128と、を備えており、グラビアローラ126の約下半分は塗布液に浸漬されている。また、グラビアローラ126の約10時の位置にブレード129が配されている。これにより、グラビアローラ126面のセルに塗布液が供給され、ブレード129で余分な塗布液が掻き落とされた後、フィルム12の配向膜面に塗布される。塗布液の塗布量は、10mL/m2以下であること
が好ましい。
上流ガイドローラ117及び下流ガイドローラ119は、グラビアローラ126と略平行な状態で配されている。また、上流ガイドローラ117及び下流ガイドローラ119は、その両端部が図示しない軸受部材(ボール軸受等)により回動自在に支持され、駆動機構を有していないことが好ましい。グラビア塗布装置124は、クリーンルーム等の清浄な雰囲気に設けられることが好ましい。清浄度は、クラス1000以下が好ましく、クラス100以下がより好ましく、クラス10以下が更に好ましい。
塗布装置としては、図7では、グラビア塗布装置124の例を示したが、これに限定されない。例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、マイクログラビア法やエクストルージョンコート法等の方法を適宜使用することができる。フィルム12の搬送速度は、5〜200m/分が好ましい。また、フィルム12に形成される塗布層の幅は、0.5〜3mであることが好ましい。
液晶性化合物を含む塗布層が形成されたフィルム12は、すぐ下流側に設けられた初期乾燥ゾーン130により乾燥される。さらに、初期乾燥ゾーン130の下流側には乾燥ゾーン132が設けられ、乾燥されたフィルム12の塗布層が更に乾燥される。そして、乾燥ゾーン132の下流側には硬化ゾーン136が設けられ、乾燥されたフィルム12の塗布層が硬化される。
この場合、乾燥ゾーン132と硬化ゾーン136との間に、乾燥ゾーン132の温度と硬化ゾーン136の温度の何れよりも低くなるように制御された中間ゾーン134を設けることが好ましい。中間ゾーン134を有しないで乾燥ゾーン132から直に硬化ゾーン136に塗布層が搬送されると、乾燥ゾーン132で加熱されたフィルム12及び塗布層から蒸発した低分子量化合物が乾燥ゾーン132よりも温度の低い硬化ゾーン136において結露することがある。結露により析出した析出物(結露物)がフィルム12裏面及び塗布層面に付着して汚染する。また、硬化ゾーン136の壁面等で結露した結露物が帯状フィルム12裏面及び塗布膜面に落下付着して汚染する。尚、ここで、低分子量化合物とは、分子量が1000以下のものをいう。
光学補償フィルムの製造において、この低分子量化合物としては、例えば、可塑剤として、トリフェニル・フォスフェイト(TPP)、ビフェニル・ジフェニル・フォスフェイト(BPP)が、硬膜剤として、イルガキュア184、シランカプリング剤として、アクロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等がある。
そして、硬化ゾーン136を経て製造された光学補償フィルム13は、巻取テンション制御装置138を経由し、上記説明したフィルム巻替装置16を介してターレット式のフィルム巻取装置10に巻き取られる。なお、符号138Aはダンサーローラである。
このように、フィルム12の巻取りと、フィルム12に塗布・乾燥等の処理を行って製造した光学補償フィルム13の巻取りとの両方に、本発明のターレット式のフィルム巻取装置10を使用することで、巻取り時の巻きズレ、巻き皺、スリキズ(50μ〜100μ程度の微小キズ含む)、フィルム中央部のベコ変形、フィルム端部(通称、耳部)の変形(ナーリング部ベコや伸び)等の巻取り故障のない高度な面状性能を有する光学フィルムを製造できる。
次に、本実施の形態の光学フィルムの製造に使用される各種材料について説明する。
本実施形態で用いられるディスコティック化合物(液晶性化合物)としては、特開平7−267902号、特開平7−281028号、特開平7−306317号の各公報に記載のものが使用できる。これらによると、光学異方層(液晶性化合物を含む塗布層)は、ディスコティック構造単位を有する化合物から形成される層である。すなわち、光学異方層は、モノマー等の低分子量の液晶性ディスコティック化合物層、又は重合性の液晶性ディスコティック化合物の重合(硬化)により得られるポリマー層である。
ディスコティック(円盤状)化合物としては、例えば、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physicslett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクル等が挙げられる。
上記ディスコティック(円盤状)化合物は、一般的にこれらを分子中心の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等がその直鎖として放射線状に置換された構造であり、液晶性を示し、一般的にディスコティック液晶とよばれるものが含まれる。ただし、分子自身が負の一軸性を有し、一定の配向を付与できるものであれば上記記載に限定されるものではない。また、前記公報において、円盤状化合物から形成したとは、最終的にできた物が前記化合物である必要はなく、例えば、前記低分子ディスコティック液晶が熱、光等で反応する基を有しており、結果的に熱、光等で反応により重合又は架橋し、高分子量化し液晶性を失ったものも含まれる。さらに、ディスコティックネマティック相又は一軸性の柱状相を形成し得る、円盤状化合物の少なくとも一種を含有し、かつ光学異方性を有する化合物を用いることが好ましい。また、円盤状化合物がトリフェニレン誘導体であることが好ましい。ここで、トリフェニレン誘導体が、特開平7−306317号公報に記載の(化2)で表される化合物であることが好ましい。
配向膜層の支持体となるフィルム12としては、TAC等のセルロースアシレートフィルムが好ましく用いられる。具体的には、特開平9−152509号公報に詳細に記載されているものが使用できる。すなわち、配向膜はセルロースアシレートフィルム上又はそのセルロースアシレートフィルム上に塗設された下塗層上に設けられる。配向膜は、その上に設けられる液晶性ディスコティック化合物の配向方向を規定するように機能する。ここで配向膜は、光学異方層に配向性を付与できるものであれば、どのような層でもよい。
配向膜の好ましい例としては、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理された層、無機化合物の斜方蒸着層、及びマイクログルーブを有する層、更にω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド及びステアリル酸メチル等のラングミュア・ブロジェット法(LB膜)により形成される累積膜、或いは電場あるいは磁場の付与により誘電体を配向させた層を挙げることができる。
配向膜用の有機化合物としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリカーボネート等のポリマー及びシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。好ましいポリマーの例としては、ポリイミド、ポリスチレン、スチレン誘導体のポリマー、ゼラチン、ポリビルアルコール及びアルキル基(炭素原子数6以上が好ましい)を有するアルキル変性ポリビルアルコールが挙げられる。
中でも、アルキル変性のポリビニルアルコールは特に好ましく、液晶性ディスコティック化合物を均一に配向させる能力に優れている。これは、配向膜面のアルキル鎖とディスコティック液晶のアルキル側鎖との強い相互作用のためと推察される。また、アルキル基は、炭素原子数6〜14が好ましく、更に、−S−、−(CH3)C(CN)−又は−(C2H5 )N−CS−S−を介してポリビニルアルコールに結合していることが好ましい。上記アルキル変性ポリビニルアルコールは、未端にアルキル基を有するものであり、ケン化度80%以上、重合度200以上が好ましい。また、上記側鎖にアルキル基を有するポリビニルアルコールは、クラレ(株)製のMP103、MP203、R1130などの市販品を利用することができる。
また、液晶表示装置(LCD)の配向膜として広く用いられているポリイミド膜(好ましくはフッ素原子含有ポリイミド)も有機配向膜として好ましい。これは、ポリアミック酸(例えば、日立化成(株)製のLQ/LXシリーズ、日産化学(株)製のSEシリーズ等)をウエブ面に塗布し、100〜300℃で0.5〜1時間焼成した後、ラビングすることにより得られる。
さらに、セルロースアシレートフィルムに適用される配向膜は、上記ポリマーに反応性基を導入することにより、或いは上記ポリマーをイソシアネート化合物及びエポキシ化合物などの架橋剤と共に使用して、これらのポリマーを硬化させることにより得られる硬化膜であることが好ましい。
配向膜に用いられるポリマーと、光学異方層の液晶性化合物とが、これらの層の界面を介して化学的に結合していることが好ましい。配向膜のポリマーが、ビニル部分、オキシラニル部分又はアジリジニル部分を有する基で、少なくとも1個のヒドロキシル基が置換されたポリビニルアルコールから形成されていることが好ましい。ビニル部分、オキシラニル部分又はアジリジニル部分を有する基が、エーテル結合、ウレタン結合、アセタール結合又はエステル結合を介してポリビニルアルコール誘導体のポリマー鎖に結合していることが好ましい。ビニル部分、オキシラニル部分又はアジリジニル部分を有する基が、芳香族環を持たないことが好ましい。上記ポリビニルアルコールが、特開平9−152509号公報に記載の(化22)であることが好ましい。
前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を利用することができる。すなわち、配向膜の面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さ及び太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
また、無機斜方蒸着膜の蒸着物質としては、SiOを代表とし、TiO2、ZnO2等の金属酸化物、又はMgF2等のフッ化物、Au、Al等の金属が挙げられる。なお、金属酸化物は、高誘電率のものであれば斜方蒸着物質として使用でき、上記に限定されるものではない。無機斜方蒸着膜は、蒸着装置を用いて形成することができる。ウエブを固定して蒸着するか、又は長尺ウエブを移動させて連続的に蒸着することにより無機斜方蒸着膜を形成できる。配向膜を使用せずに光学異方層を配向させる方法として、ウエブ上の光学異方層を、ディスコティック液晶層を形成し得る温度に加熱しながら、電場又は磁場を付与する方法が挙げられる。
セルロースアシレートフィルム上に光学異方層が形成された光学補償フィルムの液晶表示装置への適用方法としては、偏光板の片側に上記光学補償フィルムを粘着剤を介して貼り合わせる、もしくは、偏光素子の片側に保護フィルムとして、上記光学補償フィルムを接着剤を介して貼り合わせることが好ましい。光学異方素子は、少なくともディスコティック構造単位(ディスコティック液晶が好ましい)を有することが好ましい。
また、上記ディスコティック構造単位の円盤面が、セルロースアシレートフィルム面に対して傾いており、且つディスコティック構造単位の円盤面とセルロースアシレートフィルムとのなす角度が光学異方層の深さ方向において変化していることが好ましい。
また、上記光学補償フィルムは、特に透過型液晶表示装置に好ましく用いられる。透過型液晶表示装置は、液晶セル及びその両側に配置された二枚の偏光板からなる。液晶セルは、二枚の電極基板の間に液晶を担持している。光学補償フィルムは、液晶セルと一方の偏光板との間に、一枚配置されるか、又は液晶セルと双方の偏光板との間に二枚配置される。液晶セルのモードは、VAモード、TNモード、又はOCBモードであることが好ましい。
ターレット式のフィルム巻取装置によって、図1の製膜ラインで製膜した幅2000mm、厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルムを巻取軸に4000m巻き取ると共に、3800m巻き取ったときにターレットを旋回してフィルムの巻き替えを行った。
そして、下記の実験1〜3の巻取り条件でフィルムを巻き取ったときの、巻取りフィルムの品質を調べた。
(巻取り条件)
実験1…エアプレスをせずにフィルム巻取りテンションを高くすることで巻回ロールに巻き込まれる同伴空気を排除する従来のフィルム巻取装置であり、ターレットの旋回前及び旋回後ともに550(N)の巻取りテンションで行った。
実験2…エアプレスにより同伴空気を排除する方式であるが、エアノズルがターレットと一体でないことから、ターレット旋回時にはエアノズルを旋回軌道外に退避させる必要があるため、旋回後は巻取りテンションを高めて同伴空気を排除する従来のフィルム巻取装置である。即ち、ターレット旋回前の巻取りテンションを400(N)とし、旋回後の巻取りテンションを550(N)に高めた。また、ターレット旋回前のエアプレス圧力を8.0(kPa)であるが、旋回後はエアノズルを退避させるために、0.0(kPa)となった。
実験3…エアプレスにより同伴空気を排除する方式であり、エア噴出ユニットをターレットと一体に設けたことにより、ターレットの旋回前及び旋回後ともにエアプレスを行うことができる本発明のフィルム巻取装置である。即ち、ターレットの旋回前及び旋回後ともに巻取りテンションを400(N)とし、エアプレス圧力は8.0(kPa)とした。
(巻取りフィルムの品質評価方法)
上記実験1、2、3の巻取り条件で巻き取った各フィルムについて、巻取り品質を評価した。巻取り評価の方法としては、巻回ロール全体について「巻ズレ」、「黒帯」の2項目を目視にて評価した。また、ターレットの旋回前までの巻取り(巻取長3800mまでの巻回ロール。以後、内周側と表記する)と旋回後(巻取長3800〜4000mまで。以後、外周側と表記する)のそれぞれについて、「亀ベコ」、「角巻き」、「耳ベコ」の4項目を目視にて評価した。
(評価項目の評価基準)
〈巻ズレ〉巻回ロールの端面(側面)の揃い具合や乱れを○、△、×の3レベルで評価した。
○…巻回ロール端面のズレ量(最大凸と最大凹の差)が3mm未満であり、巻き姿が綺麗である。
△…巻回ロール端面のズレ量(最大凸と最大凹の差)が3mm〜10mmであり、巻きズレが見られる。
×…巻回ロール端面のズレ量(最大凸と最大凹の差)が10mmを超えており、巻き姿が悪い。
〈黒帯〉ブロッキングとも呼ばれ、巻回ロール内のフィルム層同士が密着した結果、フィルム同士が貼り付いて透き通るような外観となる部分が現れる巻取り故障を言う。これは巻取り半径方向の応力が大き過ぎる場合に悪化し、巻回ロールへの巻き込み空気が全くないために硬巻きに成りすぎた場合に生じる。黒帯故障についても○、△、×の3レベルで評価した。
○…巻回ロール表面のどこにも黒帯が発生していない。
△…巻回ロール表面の一部に黒帯が発生している。
×…巻回ロール表面の略全域に黒帯が発生している。
〈亀ベコ〉巻回ロール表面に亀の甲羅模様に見えるベコ変形が発生する巻取り故障であり、巻回ロールに巻き込まれた同伴空気が時間の経過で抜けることにより、巻回ロール表面が陥没することによって生じる。亀ベコ故障についても○、△、×の3レベルで評価した。
○…巻回ロール表面のどこにも亀ベコが発生していない。
△…巻回ロール表面の一部に弱い亀ベコが発生している。
×…巻回ロール表面の広範囲に強い亀ベコが発生している。
〈角巻き〉巻回ロールの径方向断面が綺麗な円形にならずに、ところどころに角張った変形箇所が見られる巻取り故障を言い、○、△、×の3レベルで評価した。
○…巻回ロールの径方向断面が綺麗な円形であり、角巻きが発生していない。
△…巻回ロールの径方向断面の一部に弱い角巻きが発生している。
×…巻回ロールの径方向断面の広範囲に強い角巻きが発生している。
〈耳伸び〉「耳ベコ」とも呼び、フィルム幅方向両端部のナーリングされている付近が、波うった状態になる巻取り故障を言う。巻取りテンションが高過ぎると発生し易く、○、△、×の3レベルで評価した。
○…巻回ロール表面の両端部に耳伸びが発生していない。
△…巻回ロール表面の両端部に弱い耳伸びが発生している。
×…巻回ロール表面の両端部に強い耳伸びが発生している。
(試験結果)
その結果、従来のフィルム巻取装置を用いた実験1は、巻回ロールの「巻ズレ」及び「黒帯」は○の評価であった。しかし、巻回ロールの内周側の「亀ベコ」「角巻き」「耳伸び」は全て△の評価であると共に、外周側は全て×の評価であった。
また、従来のエアプレス型のフィルム巻取装置を用いた実験2は、巻回ロールの「巻ズレ」が△の評価であり、「黒帯」は○の評価であった。また、巻回ロールの内周側の「亀ベコ」「角巻き」「耳伸び」は全て○の評価であった。しかし、エアプレスを行わずに巻取りテンションを上げることで同伴空気排除に対処した巻回ロールの外周側は、「亀ベコ」「角巻き」が×の評価であり、「耳伸び」が△の評価であった。
これに対して、本発明のエアプレス型のフィルム巻取装置を用いた実験3は、巻回ロールの「巻ズレ」及び「黒帯」の評価が○であった。更に、巻回ロールの内周側及び外周側ともに「亀ベコ」「角巻き」「耳伸び」が全て○の評価であった。