JP5634160B2 - 内燃機関のクランクシャフトの支持構造 - Google Patents
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Description
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、内燃機関のクランクシャフトの支持構造において、滑り軸受を用いて内燃機関の小型化を図りつつ、オイルポンプを小型化できるようにすることを目的とする。
この構成によれば、クランクシャフトの両端を支持する両クランク軸受を滑り軸受とする一方で、コンロッド大端の軸受を転がり軸受としたため、コンロッド大端の転がり軸受の給油量を低減できる。このため、両クランク軸受を滑り軸受として小型化を図りつつ、必要な給油量を低減でき、オイルポンプを小型化できる。また、滑り軸受に支持される両端の軸受部の表面の超仕上げ加工を、組立て式のクランクシャフトの組立て前に行なうため、組立て後の比較的大きなクランクシャフトに超仕上げ加工を行なう必要が無く、加工設備を小型化できるとともに、生産性を向上できる。
また、本発明は、クランクシャフト(41)の軸方向の両側から結合されてクランクシャフト(41)を挟む左右割りクランクケース(25)に支持される内燃機関のクランクシャフトの支持構造において、クランクシャフト(41)の両端を支持する両クランク軸受を滑り軸受(111)とする一方で、コンロッド大端(42A)の軸受を転がり軸受(112)とし、前記滑り軸受(111)は2分割で構成され、クランク軸線(G)を通る割り面(145)及び滑り軸受(111)の軸方向の両側面(146A,146B)を平坦な形状とし、前記クランクケース(25)における軸受圧入孔(110)には、該クランクケース(25)の材料に対して剛性が高いブッシュ(130)を配置し、前記ブッシュ(130)は内周(131)が平坦な溝なし形状で、外周(132)の幅方向の中央部をリング状の拡径部(132A)とし、両側部に周方向に不連続な回り止め部(132B)を設けたことを特徴とする。
この構成によれば、ブッシュの内周が平坦な溝なし形状であり、外周の幅方向の中央部をリング状の拡径部としたため、ブッシュの剛性を高めることができるとともに、ブッシュの熱膨張を均一化でき、クランクケースへの結合強度を高めることができる。また、回り止め部によってクランクケースへの結合強度を高めることができる。
また、本発明は、クランクシャフト(41)の軸方向の両側から結合されてクランクシャフト(41)を挟む左右割りクランクケース(25)に支持される内燃機関のクランクシャフトの支持構造において、クランクシャフト(41)の両端を支持する両クランク軸受を滑り軸受(111)とする一方で、コンロッド大端(42A)の軸受を転がり軸受(112)とし、前記滑り軸受(111)は2分割で構成され、クランク軸線(G)を通る割り面(145)及び滑り軸受(111)の軸方向の両側面(146A,146B)を平坦な形状とし、前記クランクケース(25)における軸受圧入孔(110)には、該クランクケース(25)の材料に対して剛性が高いブッシュ(130)を配置し、オイルポンプ(86)は前記クランクシャフト(41)の軸方向における一側寄りに配置され、該オイルポンプ(86)から一方のオイルがクランク軸端(108)を経由して軸内を通るオイル通路(113)により前記コンロッド大端(42A)にオイルが導かれ、他方のオイルがクランクケース(25)の支持部材(23A)側から前記滑り軸受(111)に導かれることを特徴とする。
この構成によれば、コンロッド大端に導かれる一方のオイルが、クランクケースの支持部材側から滑り軸受に導かれる他方のオイルとは別に、クランク軸端を経由して軸内を通るオイル通路を通るため、このオイル通路の給油量をコンロッド大端の転がり軸受に最適な給油量に減らすことができる。これにより、コンロッド大端の転がり軸受がオイル過多になることを防止でき、フリクションを低減することができる。
さらに、本発明は、クランクシャフト(41)の軸方向の両側から結合されてクランクシャフト(41)を挟む左右割りクランクケース(25)に支持される内燃機関のクランクシャフトの支持構造において、クランクシャフト(41)の両端を支持する両クランク軸受を滑り軸受(111)とする一方で、コンロッド大端(42A)の軸受を転がり軸受(112)とし、前記滑り軸受(111)は2分割で構成され、クランク軸線(G)を通る割り面(145)及び滑り軸受(111)の軸方向の両側面(146A,146B)を平坦な形状とし、前記クランクケース(25)における軸受圧入孔(110)には、該クランクケース(25)の材料に対して剛性が高いブッシュ(130)を配置し、当該ブッシュ(130)の幅は、前記滑り軸受(111)の幅よりも大きいことを特徴とする。
この場合、滑り軸受の割り面及び軸方向の両側面を平坦な形状とし、滑り軸受を軸受圧入孔に圧入する際の押し面と合わせ面の面積を確保したため、組立ての作業性を向上できる。また、軸受圧入孔にクランクケースの材料に対して剛性が高いブッシュを配置したため、圧入の締め代を高くでき、滑り軸受をより確実に固定できる。
この場合、一方のオイル通路が動弁系への給油通路から絞り部を設けて分岐された通路であるため、他方のオイルが流れる滑り軸受及び動弁系への給油量を確保しつつ、コンロッド大端側への給油量を簡単な構造で減らすことができる。また、給油量を減らすことができるため、オイルポンプを小型化することができる。
この場合、滑り軸受への給油が、ブッシュにクランクケース内通路と同軸加工された径方向の貫通孔を通して行われるため、クランクケース内通路とブッシュの貫通孔とを同軸に合わせる作業を無くすことができ、生産性を向上できる。
この場合、ブッシュが、周壁より幅広でブッシュの厚さ以上の厚さのブッシュ支え部によって支持されるため、ブッシュを安定して支持できるとともに、周壁から受けるブッシュへの熱影響や歪の影響を分散して緩和できる。
この場合、幅広両覆い部のコンロッド側の側部に形成されたクランクシャフトのスラスト受けを、滑り軸受から漏れ出たオイルで潤滑する場合に、反コンロッド側の覆い部の油溜り壁によってオイルの外側への漏れ量を制限できるため、オイル量を適切にして効率良く潤滑できる。
また、滑り軸受の割り面及び両側面を平坦な形状とし、滑り軸受を圧入する際の押し面と合わせ面の面積を確保したため、組立ての作業性を向上できる。また、軸受圧入孔にクランクケースの材料に対して剛性が高いブッシュを配置したため、圧入の締め代を高くでき、滑り軸受をより確実に固定できる。
さらに、ブッシュの内周が平坦な溝なし形状であり、外周の幅方向の中央部をリング状の拡径部としたため、ブッシュの剛性を高めることができるとともに、ブッシュの熱膨張を均一化でき、クランクケースへの結合強度を高めることができる。また、回り止め部によってクランクケースへの結合強度を高めることができる。
また、一方のオイル通路が動弁系への給油通路から絞り部を設けて分岐された通路であるため、他方のオイルの給油量を確保しつつ、コンロッド大端側への給油量を簡単な構造で減らすことができる。また、給油量を減らすことができるため、オイルポンプを小型化することができる。
さらに、ブッシュが、周壁より幅広でブッシュの厚さ以上の厚さのブッシュ支え部によって支持されるため、ブッシュを安定して支持できるとともに、周壁から受けるブッシュへの熱影響や歪の影響を分散して緩和できる。
また、クランクシャフトのスラスト受けを、滑り軸受から漏れ出たオイルで潤滑する場合に、反コンロッド側の覆い部の油溜り壁によってオイルの外側への漏れ量を制限できるため、オイル量を適切にして効率良く潤滑できる。
図1は、本発明の実施の形態に係る自動二輪車を示す右側面図である。
自動二輪車1の車体フレームFは、車両の前部に設けられたヘッドパイプ17と、ヘッドパイプ17から後下がりに延びるメインフレーム18と、メインフレーム18よりも下方でヘッドパイプ17に連接されるとともにメインフレーム18よりも急角度で後下がりに延びるダウンフレーム19と、メインフレーム18の後部の左右両側及びダウンフレーム19の下端部の左右両側の間を結ぶ左右一対のロアフレーム20と、メインフレーム18の後部に連接されて後方に延びる左右一対のシートレール21と、ロアフレーム20とシートレール21との後部とを結ぶ左右一対のリヤフレーム22とを備えている。
また、ヘッドパイプ17には前輪WFを軸支する左右一対のフロントフォーク15が支持され、フロントフォーク15の上端部には操舵用のハンドル16が設けられている。
シリンダーヘッド27の後部には、エンジン24に空気を供給する吸気装置35が接続されている。
また、エンジン24の前方には、エンジン24の冷却水が循環するラジエータ82が設けられ、ラジエータ82はダウンフレーム19に支持されている。
さらに、エンジン24の上方でメインフレーム18上には、燃料タンク29が搭載され、燃料タンク29の後方には、シートレール21によって支持される乗員用のシート30が配置されている。
図2に示すように、クランクケース25内には、自動二輪車1の車幅方向に水平に延びる軸線G(クランク軸線)(図3参照)を有するクランクシャフト41が配置されている。
また、クランクケース25内には、クランクシャフト41に対しそれぞれ平行に配置されるメイン軸65、カウンタ軸66、及び、バランサ軸67が設けられている。クランクシャフト41を含むこれらの軸65,66は、クランクシャフト41の回転をメイン軸65、カウンタ軸66の順に伝達する歯車伝達機構を構成している。また、メイン軸65の下方には、変速操作を行なうシフトドラム78及びシフトフォーク79が設けられている。
シリンダーヘッド27には、燃焼室44の中央に臨むようにして点火プラグ51(図3参照)が取り付けられている。
また、シリンダーヘッド27の後部側壁27aには、吸気ポート45に連通する吸気装置35が接続され、前部側壁27bには排気ポート46に連通する排気管37(図1参照)が接続される。
吸気弁47はシリンダーヘッド27との間に設けられる弁ばね49によって閉弁方向に付勢され、排気弁48はシリンダーヘッド27との間に設けられる弁ばね49によって閉弁方向に付勢されている。
排気側動弁装置54Eは、点火プラグ51(図3参照)を挟んでシリンダーヘッド27の前部側に設けられ、吸気側動弁装置54Iは、点火プラグ51を挟んで後部側に設けられている。
吸気カムシャフト55I及び排気カムシャフト55Eは互いに平行に配置され、図3に示すように、その軸方向の一端側(本実施の形態ではエンジン24の右側面側)に被動スプロケット61をそれぞれ有している。吸気カムシャフト55I及び排気カムシャフト55Eは、クランクシャフト41のチェーン駆動歯車64と両被動スプロケット61との間に巻き掛けられた無端状のカムチェーン62によって、クランクシャフト41の回転数の半分の回転数で回転させられる。シリンダーヘッド27及びシリンダーブロック26の一端側には、カムチェーン62が通るカムチェーン室63が上下に延びるように形成されている。
メイン軸65とカウンタ軸66との間には常時噛み合い式の変速歯車群77が跨って配置されている。詳述すると、メイン軸65には、6速分の駆動歯車列81が設けられ、カウンタ軸66には駆動歯車列81に対応する6速分の被動歯車列83が設けられている。変速動作は、シフトドラム78によって駆動されるシフトフォーク79により、駆動歯車列81及び被動歯車列83を軸方向にスライドさせ、所望の歯車対を動力伝達可能な状態に確立することで行なわれる。
図2に示すように、バランサ軸67はクランクシャフト41の前方に設けられ、バランサ軸67には、クランクシャフト41の回転に対して所定の位相差を有して回転しエンジン24の振動を低減するバランサ85が固定されている。
クランクケース25の上部においてシリンダーブロック26の後方には、クランクシャフト41を回転させてエンジン24を始動させるスタータモータ13が配置されている。
また、クランクシャフト41の下方にはエンジン24の各部に潤滑油としてのオイルを送出するオイルポンプ86が設けられている。クランクケース25の下部には、オイルが貯留されるオイルパン84が形成されている。
エンジン24は、シリンダボア40を一つ有する単気筒エンジンでありクランクシャフト41の長さが比較的小さいため、並列多気筒エンジンのようにクランクシャフトの上下でクランクケースを分割する上下割りのクランクケースではなく、左右割りのクランクケース25を用いることができる。
他側ケース92の外側にはジェネレータカバー93が取り付けられ、クランクシャフト41の左部及び発電機72は、ジェネレータカバー93によって覆われている。
一側ケース91の外側にはクラッチカバー94が取り付けられ、クランクシャフト41の右部及びクラッチ機構68は、クラッチカバー94によって覆われている。
図4に示すように、クランクシャフト41の駆動歯車71の下方にはオイルポンプ86が設けられ、オイルポンプ86は、一側ケース91に支持される軸部86Aと、軸部86Aに設けられて駆動歯車71に噛み合うドリブンギヤ86Bと、軸部86Aに固定されるロータ86Cとを有するトロコイド式のポンプである。ロータ86Cはクランクシャフト41と一体に回転する駆動歯車71によってドリブンギヤ86B及び軸部86Aを介して回転され、オイルパン84(図2参照)に貯留されているオイルを送出する。オイルポンプ86は、クランクシャフト41の軸方向における一側寄りに設けられている。
オイルポンプ86の吐出側には、オイル中の異物等を捕集するオイルフィルタ87が設けられている。オイルフィルタ87は、クラッチカバー94に設けられたフィルタ収容部94Aに収容される。
オイルフィルタ87におけるオイルの出口は、クラッチカバー94に形成された分岐油路95に接続されている。分岐油路95はクラッチカバー94中を上下の2方向に分岐して延在し、上方へ分岐する上側油路95A(動弁系への給油通路)は、クランクシャフト41の軸端側支持部108(クランク軸端)側に繋がるクランク側油路96、及び、一側ケース91の上部に形成されて動弁側に繋がる上部油路97に接続されている。上部油路97は2股に分岐し、シリンダーヘッド27の動弁室53側に延びるヘッド側油路97Aと、変速歯車群77に延びる変速機側油路97Bとに接続されている。
クランクシャフト41は両端部がクランクピン103(クランクピン部)と分離して製造された組立て式のクランクシャフトであり、一側ケース91に支持される一側シャフト101と、他側ケース92に支持される他側シャフト102と、一側シャフト101及び他側シャフト102を連結するクランクピン103とを備えている。
クランクピン103には、コンロッド42の大端部42A(コンロッド大端)が、転がり軸受としてのローラベアリング112(転がり軸受)を介して連結されている。コンロッド42の小端部42Bには、ピストン39が連結される。
また、クランクウェブ107Aの径方向の端には、クランクピン103の一端が結合されるピン圧入孔109Aが形成されている。さらに、クランクウェブ107Aにおけるクランクシャフト41の軸方向の外側面には、保持壁23Aに摺動自在に当接してクランクシャフト41の軸方向の移動を規制するスラスト面119が形成されている。
一側シャフト101は、軸端側支持部108から基端部側に延びる軸内油路113(軸内を通るオイル通路)を有し、軸内油路113はクラッチカバー94のクランク側油路96に連通している。
また、クランクウェブ107Bの径方向の端には、クランクピン103の他端が結合されるピン圧入孔109Bが形成されている。さらに、クランクウェブ107Bにおけるクランクシャフト41の軸方向の外側面には、保持壁23Aに当接してクランクシャフト41の軸方向の移動を規制するスラスト面119が形成されている。
このように、ジャーナル部104A,104Bの両外側でジャーナル部104A,104Bより小径の結合部105A,105Bを上記治具により支持して組み立てを行なうことにより、組み付け作業の際に上記治具がジャーナル部104A,104Bの表面に接触して超仕上げ加工された面が傷付くことが防止される。これにより、組み立て作業の前にジャーナル部104A,104Bの超仕上げ加工を仕上げておくことができ、組立て後に比較的大きなサイズとなったクランクシャフト41に対して超仕上げ加工を行なう必要が無いため、超仕上げ加工の加工設備を小型で簡易なものにできるとともに、生産性を向上できる。
オイルパン84のオイルは、エンジン24の稼働に伴ってオイルポンプ86により吐出され、オイルフィルタ87を通り分岐油路95に流れる。オイルが高圧になった場合、上記リリーフバルブによって一部のオイルはオイルポンプ86の吸込み側に戻される。次いで、分岐油路95のオイルは、上側油路95Aへ流れ、このオイルは、クランク側油路96へ供給されると共に、ヘッド側油路97A及び変速機側油路97Bを通って動弁室53及び変速歯車群77に供給される。
また、分岐油路95に流入した残りのオイルは、下側油路95Bを通って下方へ流れ、底部油路98及びジャーナル油路99,99を通って滑り軸受111に供給される。そして、各部を潤滑したオイルは、エンジン24内を下方に移動し、オイルパン84に戻る。
すなわち、クランクシャフト41には、クランク側油路96を経て軸内油路113から大端部42Aのローラベアリング112へ流れる一方のオイル、及び、各保持壁23Aのジャーナル油路99,99から滑り軸受111に流れる他方のオイルが供給されている。
さらに、大端部42Aに導かれる一方のオイルが、各保持壁23Aのジャーナル油路99,99側から滑り軸受111に導かれる他方のオイルとは別に、軸端側支持部108を経由して軸内油路113を通るため、他方のオイルとは別に小孔96Aによって一方のオイルのオイル量を制限し、軸内油路113の給油量を大端部42Aのローラベアリング112に最適な給油量に減らすことができる。
以下、滑り軸受111によるクランクシャフト41の支持構造について詳述するが、一側ケース91及び他側ケース92では、図4に示すように、この支持構造はシリンダ軸線Cを基準にして略左右対称に形成されているため、ここでは一側ケース91側について主に説明し、他側ケース92側の詳細な説明は省略する。
側面板部120には、一側シャフト101を支持するクランクシャフト支持孔110、メイン軸65の一端を支持するメイン軸支持孔123、カウンタ軸66の一端を支持するカウンタ軸支持穴124、バランサ軸67の一端を支持するバランサ軸支持孔125、及び、シフトドラム78の一端を支持するシフトドラム支持孔126が設けられている。
ブッシュ130は、側面板部120において周囲の板厚よりも厚く形成された保持壁23Aに鋳込まれている。保持壁23Aは、図7及び図8に示すように、ブッシュ130より大径でクランクシャフト支持孔110と略同軸の円板状に形成されている。
このように、ブッシュ130を板厚が厚く強度が高い保持壁23Aに設けることで、クランクシャフト41の支持剛性を向上させることができる。
図9に示すように、ブッシュ130は、滑り軸受111が圧入される内周面131(内周)、及び、保持壁23Aに結合される外周面132(外周)を有している。内周面131は、溝が形成されていない平坦な面である。また、ブッシュ130の両側面部133A,133B(ブッシュの両側面)は、ブッシュ130の軸方向に対し略垂直に形成されている。
図8及び図10に示すように、一側ケース91の保持壁23Aは、ブッシュ130の外周面132に結合される内周結合面127Aと、ブッシュ130の両側面部133A,133Bを覆う幅広両覆い部128A,128Bと、ブッシュ130の外周面132側に位置し、側面板部120より幅広で且つ幅広両覆い部128A,128Bよりも幅狭のブッシュ支え部137とが形成されている。
幅広両覆い部128A,128Bにおいてコンロッド42側の側部である幅広両覆い部128Bの側面には、クランクウェブ107Aのスラスト面119に当接するスラスト受け面147(スラスト受け)が形成されている。
滑り軸受111に供給されたオイルは、ジャーナル部104Aとブッシュ130との隙間を通って流下し、この流下するオイルの一部は、スラスト面119及びスラスト受け面147に供給される。本実施の形態では、反コンロッド側に油溜り壁139を形成し、反コンロッド側から漏れるオイル量を制限しているため、コンロッド側のスラスト面119及びスラスト受け面147に適切な量のオイルを供給することができる。
また、各切り欠き溝134が、ブッシュ130の外周面132から離れた幅広両覆い部128Aの内周側の先端部に位置しており、ブッシュ130に加わる応力が各切り欠き溝134に作用しにくいため、各切り欠き溝134の近傍の幅広両覆い部128Aの欠け等を防止することができる。
さらに、反コンロッド側に流れたオイルの内の余分なオイルを切り欠き溝134を通して排出でき、スラスト面119側へのオイルの供給量を適切に調整できる。
図11に示すように、一側ケース91において、底部油路98はクランクシャフト支持孔110の下方に位置し、一側ケース91を車幅方向に貫通している。底部油路98はジャーナル油路99に連通し、ジャーナル油路99は側面板部120内を上方に延びている。ジャーナル油路99の上端は、ブッシュ130を径方向に貫通するブッシュ油路135(径方向の貫通孔)に連通している。
また、ブッシュ130の内径は、ブッシュ130を鋳込む前には仕上げられておらず、ブッシュ130が鋳込まれた後に、滑り軸受111の圧入寸法に合わせて高精度に仕上げ加工される。
本実施の形態では、クランクケース25を上下割りではなく左右割りとして円環状のブッシュ130を鋳込んだため、ブッシュ130の内周面131に分割面が無く、内周面131を容易に高精度な円形に加工することができ、生産性が良い。
滑り軸受111は、クランクシャフト41の軸線G(図3参照)を通る平面でリングを半円状に2等分するようにして形成された一対の半割り体140,140(図7及び図12参照)によって構成されている。ここで、図12では、滑り軸受111の1個の半割り体140が示されている。
受け面141の幅方向の中央には、受け面141の周方向の全体に亘って延びるオイル溝143が形成されている。オイル溝143には、半割り体140を貫通するオイル孔144が2箇所に形成されている。一対の半割り体140,140は、同一部品である。
ここで、半割り体140は、ベースとなる円弧状の鋼材の内周面に銅合金をコーティングし、さらにこの銅合金の層の表面に錫メッキを施した、いわゆるメタル軸受の半割り体である。
割り面145は、切削或いは研削等の機械加工によって平坦に加工されている。このため、半割り体140,140同士を合わせた状態における割り面145の接触面積を大きく確保でき、組み付け作業性を向上できるとともに、半割り体140,140をより安定した状態で合わせることができる。
また、半割り体140の幅方向の両側面146A,146B(滑り軸受の軸方向の両側面)は、滑り軸受111の軸線に略直交する面であり、平坦な面に仕上げられている。
さらに、滑り軸受111の幅がブッシュ130の幅よりも小さく、滑り軸受111の両側面146A,146Bが一側ケース91の幅広両覆い部128A,128Bから逃げており、エンジン24の熱による熱膨張によって幅広両覆い部128A,128Bが滑り軸受111に接触することを防止できるため、滑り軸受111の組み付け位置を正しい位置に維持することができる。
本実施の形態では、割り面145がシリンダ軸線Cに対して略直交する向きとなるように半割り体140を配置し、割り面145にピストン39の上下動に伴う力が大きく作用することを防止できるため、滑り軸受111によってクランクシャフト41をより安定的に支持できる。
オイルポンプ86によってジャーナル油路99に供給されたオイルは、ブッシュ油路135及びオイル孔144を通って半割り体140の内周側のオイル溝143に供給される。そして、ジャーナル部104A,104Bは、ジャーナル部104A,104Bの全周に亘って設けられたオイル溝143を介して潤滑される。
クランクシャフト41は、滑り軸受111がそれぞれ圧入された一側ケース91及び他側ケース92を、クランクシャフト41の軸方向の両側から嵌め込んで、各滑り軸受111内にジャーナル部104A,104Bを嵌合させることでクランクケース25に組み付けられる。
さらに、ブッシュ130の内周面131が平坦な溝なし形状であり、外周の幅方向の中央部をリング状の拡径部132Aとしたため、ブッシュ130の剛性を高めることができるとともに、ブッシュ130の熱膨張を均一化でき、ブッシュ130のクランクケース25への結合強度を高めることができる。また、回り止め部132Bによってクランクケース25への結合強度を高めることができる。
また、オイルポンプ86からクランクシャフト41に供給される一方のオイルが流れる軸内油路113が、動弁室53側の動弁系への上側油路95Aから小孔96Aを設けて分岐された通路であるため、他方のオイルが流れる滑り軸受111及び動弁系への給油量を確保しつつ、大端部42A側への給油量を簡単な構造で減らすことができる。また、給油量を減らすことができるため、オイルポンプ86を小型化することができる。
さらに、ブッシュ130が、側面板部120より幅広でブッシュ130の径方向の厚さt2以上の厚さt1を有するブッシュ支え部137によって支持されるため、ブッシュ130を安定して支持できるとともに、側面板部120から受けるブッシュ130への熱影響や歪の影響を分散して緩和できる。
また、幅広両覆い部128Bのコンロッド42側の側部に形成されたスラスト受け面147を、滑り軸受111から漏れ出たオイルで潤滑する場合に、反コンロッド側の幅広両覆い部128Aの油溜り壁139によってオイルの外側への漏れ量を制限できるため、オイル量を適切にして効率良くスラスト受け面147を潤滑できる。
上記実施の形態では、滑り軸受111は、2等分された一対の半割り体140,140によって構成されているものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、滑り軸受は、一体に形成された管状のものであっても良い。また、その他の自動二輪車1の細部構成についても任意に変更可能であることは勿論である。
25 クランクケース
41 クランクシャフト
42A 大端部(コンロッド大端)
86 オイルポンプ
95A 上側油路(動弁系への給油通路)
96A 小孔(絞り部)
99,99 ジャーナル油路(クランクケース内通路)
103 クランクピン(クランクピン部)
104A,104B ジャーナル部(軸受部)
108 軸端側支持部(クランク軸端)
110 クランクシャフト支持孔(軸受圧入孔)
111 滑り軸受(クランク軸受)
112 ローラベアリング(転がり軸受)
113 軸内油路(軸内を通るオイル通路)
120 側面板部(周壁)
128A,128B 幅広両覆い部
130 ブッシュ
131 内周面(内周)
132 外周面(外周)
132A 拡径部
132B 回り止め部
133A,133B 両側面部(ブッシュの両側面)
135 ブッシュ油路(径方向の貫通孔)
137 ブッシュ支え部
139 油溜り壁
145 割り面
146A,146B 側面(滑り軸受の軸方向の両側面)
147 スラスト受け面(スラスト受け)
G 軸線(クランク軸線)
Claims (9)
- クランクシャフト(41)の軸方向の両側から結合されてクランクシャフト(41)を挟む左右割りクランクケース(25)に支持される内燃機関のクランクシャフトの支持構造において、
クランクシャフト(41)の両端を支持する両クランク軸受を滑り軸受(111)とする一方で、コンロッド大端(42A)の軸受を転がり軸受(112)とし、
前記クランクシャフト(41)は、両端部がクランクピン部(103)と分離して製造された組立て式のクランクシャフトであり、前記滑り軸受(111)に支持される両端の軸受部(104A,104B)の径をその両側よりも大径に形成し、該軸受部(104A,104B)の表面の超仕上げ加工を前記クランクシャフト(41)の組み立て前に行って製造されていることを特徴とする内燃機関のクランクシャフトの支持構造。 - クランクシャフト(41)の軸方向の両側から結合されてクランクシャフト(41)を挟む左右割りクランクケース(25)に支持される内燃機関のクランクシャフトの支持構造において、
クランクシャフト(41)の両端を支持する両クランク軸受を滑り軸受(111)とする一方で、コンロッド大端(42A)の軸受を転がり軸受(112)とし、
前記滑り軸受(111)は2分割で構成され、クランク軸線(G)を通る割り面(145)及び滑り軸受(111)の軸方向の両側面(146A,146B)を平坦な形状とし、前記クランクケース(25)における軸受圧入孔(110)には、該クランクケース(25)の材料に対して剛性が高いブッシュ(130)を配置し、
前記ブッシュ(130)は内周(131)が平坦な溝なし形状で、外周(132)の幅方向の中央部をリング状の拡径部(132A)とし、両側部に周方向に不連続な回り止め部(132B)を設けたことを特徴とする内燃機関のクランクシャフトの支持構造。 - クランクシャフト(41)の軸方向の両側から結合されてクランクシャフト(41)を挟む左右割りクランクケース(25)に支持される内燃機関のクランクシャフトの支持構造において、
クランクシャフト(41)の両端を支持する両クランク軸受を滑り軸受(111)とする一方で、コンロッド大端(42A)の軸受を転がり軸受(112)とし、
前記滑り軸受(111)は2分割で構成され、クランク軸線(G)を通る割り面(145)及び滑り軸受(111)の軸方向の両側面(146A,146B)を平坦な形状とし、前記クランクケース(25)における軸受圧入孔(110)には、該クランクケース(25)の材料に対して剛性が高いブッシュ(130)を配置し、
オイルポンプ(86)は前記クランクシャフト(41)の軸方向における一側寄りに配置され、該オイルポンプ(86)から一方のオイルがクランク軸端(108)を経由して軸内を通るオイル通路(113)により前記コンロッド大端(42A)にオイルが導かれ、他方のオイルがクランクケース(25)の支持部材(23A)側から前記滑り軸受(111)に導かれることを特徴とする内燃機関のクランクシャフトの支持構造。 - クランクシャフト(41)の軸方向の両側から結合されてクランクシャフト(41)を挟む左右割りクランクケース(25)に支持される内燃機関のクランクシャフトの支持構造において、
クランクシャフト(41)の両端を支持する両クランク軸受を滑り軸受(111)とする一方で、コンロッド大端(42A)の軸受を転がり軸受(112)とし、
前記滑り軸受(111)は2分割で構成され、クランク軸線(G)を通る割り面(145)及び滑り軸受(111)の軸方向の両側面(146A,146B)を平坦な形状とし、前記クランクケース(25)における軸受圧入孔(110)には、該クランクケース(25)の材料に対して剛性が高いブッシュ(130)を配置し、当該ブッシュ(130)の幅は、前記滑り軸受(111)の幅よりも大きいことを特徴とする内燃機関のクランクシャフトの支持構造。 - 前記滑り軸受(111)は2分割で構成され、クランク軸線(G)を通る割り面(145)及び滑り軸受(111)の軸方向の両側面(146A,146B)を平坦な形状とし、前記クランクケース(25)における軸受圧入孔(110)には、該クランクケース(25)の材料に対して剛性が高いブッシュ(130)を配置したことを特徴とする請求項1記載の内燃機関のクランクシャフトの支持構造。
- 前記一方のオイル通路(113)は動弁系への給油通路(95A)から絞り部(96A)を設けて分岐させた通路であることを特徴とする請求項3記載の内燃機関のクランクシャフトの支持構造。
- 前記滑り軸受(111)への給油は、前記ブッシュ(130)にクランクケース内通路(99,99)と同軸加工された径方向の貫通孔(135)を通して行われることを特徴とする請求項2記載の内燃機関のクランクシャフトの支持構造。
- 前記ブッシュ(130)を保持する前記クランクケース(25)の保持壁(23A)は、その周壁(120)に対してブッシュの両側面部(133A,133B)を覆う幅広両覆い部(128A,128B)と、前記ブッシュ(130)の外周面側で前記周壁(120)より幅広で且つ前記幅広両覆い部(128A,128B)より幅狭のブッシュ支え部(137)とを有し、該ブッシュ支え部(137)が前記ブッシュ(130)の厚さ以上の厚さとされたことを特徴とする請求項7記載の内燃機関のクランクシャフトの支持構造。
- 前記幅広両覆い部(128A,128B)における反コンロッド側の側部には、前記ブッシュ(130)の側面(133A)を覆う覆い部(128A)をさらに内周側に延出させた油溜り壁(139)を形成し、コンロッド(42)側の側部には前記クランクシャフト(41)のスラスト受け(147)を形成したことを特徴とする請求項8記載の内燃機関のクランクシャフトの支持構造。
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