JP5633617B1 - 反射防止物品、画像表示装置、反射防止物品の製造用金型、反射防止物品の製造方法及び反射防止物品の製造用金型の製造方法 - Google Patents
反射防止物品、画像表示装置、反射防止物品の製造用金型、反射防止物品の製造方法及び反射防止物品の製造用金型の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】モスアイ構造の反射防止物品に関して、視野角方向における反射防止を図る特性を種々に設定する。【解決手段】微小突起が密接して配置され、隣接する前記微小突起の間隔が、反射防止を図る電磁波の波長帯域の最短波長以下である反射防止物品において、微小突起の基材表面の法線方向に対する傾きの分布の中心が、前記法線方向とは異なる方向に設定された。【選択図】図13
Description
本発明は、反射防止を図る電磁波の波長帯域の最短波長以下の間隔で多数の微小突起を密接配置して反射防止を図る反射防止物品に関するものである。
近年、フィルム形状の反射防止物品である反射防止フィルムに関して、透明基材(透明フィルム)の表面に多数の微小突起を密接して配置することにより、反射防止を図る方法が提案されている(特許文献1〜3参照)。この方法は、いわゆるモスアイ(moth eye(蛾の目))構造の原理を利用したものであり、入射光に対する屈折率を基板の厚み方向に連続的に変化させ、これにより屈折率の不連続界面を消失させて反射防止を図るものである。
このモスアイ構造に係る反射防止物品では、隣接する微小突起の間隔dが、反射防止を図る電磁波の波長帯域の最短波長Λmin以下(d≦Λmin)となるように、微小突起が密接して配置される。また各微小突起は、透明基材に植立するように、さらに透明基材より先端側に向かうに従って徐々に断面積が小さくなるように(先細りとなるように)作製される。
かかる反射防止物品には各種用途が提案されている。例えば、各種画像表示裝置の出光面上に配置して画面における日光等の外光反射を低減して画像視認性を向上させたり、シート又は板状の透明基材上に該微小突起群を形成し、更に該微小突起群上にITO(酸化インジウム錫)等の透明導電膜を形成した電極を用いてタッチパネルを構成することにより、該タッチパネル電極とこれと隣接する各種部材との間の光反射を防止して、干渉縞、ゴースト像等の発生を低減させること等が提案されている。
ところでこの種の反射防止物品において、視野角方向における反射防止を図る特性を種々に設定することができれば、例えば使用目的に応じて所望の光学特性を確保することができると考えられ、便利であると考えられる。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、モスアイ構造の反射防止物品に関して、視野角方向における反射防止を図る特性を種々に設定できるようにすることを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ね、微小突起の傾きの分布中心を正面方向から異ならせる、との着想に至り、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明では、以下のようなものを提供する。
(1) 微小突起が密接して配置され、隣接する前記微小突起の間隔が、反射防止を図る電磁波の波長帯域の最短波長以下である反射防止物品において、
前記微小突起の基材表面の法線方向に対する傾きの分布の中心が、前記法線方向から異なる方向に設定された。
前記微小突起の基材表面の法線方向に対する傾きの分布の中心が、前記法線方向から異なる方向に設定された。
(1)によれば、反射防止を図る方向の中心を、傾きの分布の中心の方向とすることができ、これによりモスアイ構造の反射防止物品に関して、視野角方向における反射防止を図る特性を種々に設定することができる。
(2) (1)において、
前記基材表面に係る2次元座標により前記傾きの分布を表現した場合、前記傾きの分布に係る領域が、楕円形形状の領域である。
前記基材表面に係る2次元座標により前記傾きの分布を表現した場合、前記傾きの分布に係る領域が、楕円形形状の領域である。
(2)によれば、反射防止を図る機能を、楕円形形状の領域の長軸方向と短軸方向とで異ならせることができ、一段と視野角方向における反射防止を図る特性を種々に設定することができる。
(3) (2)において、全体形状が長方形形状により形成され、
前記楕円形形状の長軸方向が前記長方形形状の長辺方向に設定される。
前記楕円形形状の長軸方向が前記長方形形状の長辺方向に設定される。
(3)によれば、長手方向である長辺方向では、広い視野角で十分な反射防止を図ることができ、例えば画像表示装置に適用して好適な特性を確保することができる。
(4) (1)、(2)、又は(3)に記載の反射防止物品を画像表示パネルのパネル面に配置する。
(4)によれば、例えば表示画面の左右方向に反射防止を図る範囲を拡大する等、画像表示装置に要求される反射防止機能を確保することができる。
(5) 反射防止物品の製造に供する反射防止物品の製造用金型であって、
前記反射防止物品は、
微小突起が密接して配置され、
隣接する前記微小突起の間隔が、反射防止を図る電磁波の波長帯域の最短波長以下であり、
前記微小突起の基材表面の法線方向に対する傾きの分布の中心が、前記法線方向とは異なる方向であり、
前記反射防止物品の製造用金型は、
前記微小突起に対応する微細穴が密接して作製された。
前記反射防止物品は、
微小突起が密接して配置され、
隣接する前記微小突起の間隔が、反射防止を図る電磁波の波長帯域の最短波長以下であり、
前記微小突起の基材表面の法線方向に対する傾きの分布の中心が、前記法線方向とは異なる方向であり、
前記反射防止物品の製造用金型は、
前記微小突起に対応する微細穴が密接して作製された。
(5)によれば、視野角方向における反射防止を図る特性を種々に設定した反射防止物品を、賦型処理により作製することができる。
(6) 微小突起が密接して配置され、隣接する前記微小突起の間隔が、反射防止を図る波長帯域の最短波長以下である反射防止物品の製造方法において、
前記反射防止物品は、
前記微小突起の基材表面の法線方向に対する傾きの分布の中心が、前記法線方向とは異なる方向であり、
前記反射防止物品の製造用金型は、
前記微小突起に対応する微細穴が密接して作製されており、
前記反射防止物品の製造方法は、
陽極酸化処理とエッチング処理との交互の繰り返しにより前記微細穴を作製して、前記微小突起の賦型に供する製造用金型を作製する金型作製工程と、
前記製造用金型に基材を押圧して前記製造用金型に形成された凹凸形状を前記基材に賦型することにより、前記基材に前記微小突起を作製する賦型工程とを備え、
前記金型作製工程は、
陽極酸化処理時における母材に対する相対的な薬液流の制御により、前記傾きの分布に対応するように、前記微細穴の傾きの分布を作製する。
前記反射防止物品は、
前記微小突起の基材表面の法線方向に対する傾きの分布の中心が、前記法線方向とは異なる方向であり、
前記反射防止物品の製造用金型は、
前記微小突起に対応する微細穴が密接して作製されており、
前記反射防止物品の製造方法は、
陽極酸化処理とエッチング処理との交互の繰り返しにより前記微細穴を作製して、前記微小突起の賦型に供する製造用金型を作製する金型作製工程と、
前記製造用金型に基材を押圧して前記製造用金型に形成された凹凸形状を前記基材に賦型することにより、前記基材に前記微小突起を作製する賦型工程とを備え、
前記金型作製工程は、
陽極酸化処理時における母材に対する相対的な薬液流の制御により、前記傾きの分布に対応するように、前記微細穴の傾きの分布を作製する。
(6)によれば、薬液流の方向に微細穴の向きを傾けることができ、反射防止物品の微小突起は、この微細穴の傾き向きに微小突起の傾きが設定されることになる。これにより反射防止物品は、反射防止を図る方向の中心を、傾きの分布の中心の方向とすることができ、モスアイ構造の反射防止物品に関して、視野角方向における反射防止を図る特性を種々に設定することができる。
(7) 微小突起が密接して配置され、隣接する前記微小突起の間隔が、反射防止を図る波長帯域の最短波長以下である反射防止物品の製造用金型であって、賦型処理により前記微小突起を作製する前記微小突起に対応する微細穴を備えた反射防止物品の製造用金型の製造方法において、
前記反射防止物品は、
前記微小突起の基材表面の法線方向に対する傾きの分布の中心が、前記法線方向とは異なる方向であり、
前記反射防止物品の製造用金型の製造方法は、
陽極酸化処理とエッチング処理とにより、母材の表面に、前記微小突起に対応する微細穴を作製する微細穴作製工程を備え、
陽極酸化処理時における母材に対する相対的な薬液流の制御により、前記傾きの分布に対応するように、前記微細穴の傾きの分布を作製する。
前記反射防止物品は、
前記微小突起の基材表面の法線方向に対する傾きの分布の中心が、前記法線方向とは異なる方向であり、
前記反射防止物品の製造用金型の製造方法は、
陽極酸化処理とエッチング処理とにより、母材の表面に、前記微小突起に対応する微細穴を作製する微細穴作製工程を備え、
陽極酸化処理時における母材に対する相対的な薬液流の制御により、前記傾きの分布に対応するように、前記微細穴の傾きの分布を作製する。
(7)によれば、薬液流の方向に微細穴の向きを傾けることができ、反射防止物品の微小突起は、この微細穴の傾き向きに微小突起の傾きが設定されることになる。これにより反射防止物品は、反射防止を図る方向の中心を、傾きの分布の中心の方向とすることができ、モスアイ構造の反射防止物品に関して、視野角方向における反射防止を図る特性を種々に設定することができる。
モスアイ構造の反射防止物品に関して、視野角方向における反射防止を図る特性を種々に設定することができる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳述する。なお以下において、適宜、頂点を複数有する微小突起を多峰性微小突起と呼び、多峰性微小突起との対比により、頂点が1つのみの微小突起を単峰性の微小突起と呼ぶ。また多峰性の微小突起、単峰性の微小突起に係る各頂点を形成する各凸部を、適宜、峰と呼ぶ。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る反射防止物品を示す図(概念斜視図)である。この反射防止物品1は、全体形状がフィルム形状により形成された反射防止フィルムである。この実施形態に係る画像表示装置では、この反射防止物品1が画像表示パネルの視聴者側面(パネル面)に貼り付けられて保持され、この反射防止物品1により日光、電燈光等の外来光の画面における反射を低減して視認性を向上する。なお反射防止物品は、その形状を平坦なフィルム形状とする場合に限らず、平坦なシート形状、平板形状(相対的に厚みの薄い順に、フィルム、シート、板と呼称する)とすることもでき、また平坦な形状に代えて、湾曲形状、立体形状を呈したフィルム形状、シート形状、板形状とすることもでき、さらには各種レンズ、各種プリズム等の立体形状のものを用途に応じて適宜採用することができる。
図1は、本発明の第1実施形態に係る反射防止物品を示す図(概念斜視図)である。この反射防止物品1は、全体形状がフィルム形状により形成された反射防止フィルムである。この実施形態に係る画像表示装置では、この反射防止物品1が画像表示パネルの視聴者側面(パネル面)に貼り付けられて保持され、この反射防止物品1により日光、電燈光等の外来光の画面における反射を低減して視認性を向上する。なお反射防止物品は、その形状を平坦なフィルム形状とする場合に限らず、平坦なシート形状、平板形状(相対的に厚みの薄い順に、フィルム、シート、板と呼称する)とすることもでき、また平坦な形状に代えて、湾曲形状、立体形状を呈したフィルム形状、シート形状、板形状とすることもでき、さらには各種レンズ、各種プリズム等の立体形状のものを用途に応じて適宜採用することができる。
ここで反射防止物品1は、透明フィルムによる基材2の表面に多数の微小突起を密接配置して作製される。尚、密接配置された複数の微小突起を総称して微小突起群とも呼称する。ここで基材2は、例えばTAC(Triacetylcellulose)等のセルロース(纖維素)系樹脂、PMMA(ポリメチルメタクリレート)等のアクリル系樹脂、PET(Polyethylene terephthalate)等のポリエステル系樹脂、PP(ポリプロピレン)等のポリオレフィン系樹脂、PVC(ポリ塩化ビニル)等のビニル系樹脂、PC(PolycAPbonate)等の各種透明樹脂フィルムを適用することができる。なお上述したように反射防止物品の形状はフィルム形状に限らず、種々の形状を採用可能であることにより、基材2は、反射防止物品の形状に応じて、これらの材料の他に、例えばソーダ硝子、カリ硝子、鉛ガラス等の硝子、PLZT等のセラミックス、石英、螢石等の各種透明無機材料等を適用することができる。
反射防止物品1は、基材2上に、微小突起群からなる微細な凹凸形状の受容層となる未硬化状態の樹脂層(以下、適宜、受容層と呼ぶ)4を形成し、該受容層4を賦型処理して硬化せしめ、これにより基材2の表面に微小突起が密接して配置される。この実施形態では、この受容層4に、賦型処理に供する賦型用樹脂の1つであるアクリレート系紫外線硬化性樹脂が適用され、基材2上に紫外線硬化性樹脂層4が形成される。反射防止物品1は、この微小突起による凹凸形状により厚み方向に徐々に屈折率が変化するように作製され、モスアイ構造の原理により広い波長範囲で入射光の反射を低減する。
[隣接突起間距離]
なおこれにより反射防止物品1に作製される微小突起は、隣接する微小突起の間隔dが、反射防止を図る電磁波の波長帯域の最短波長Λmin以下(d≦Λmin)となるよう密接して配置される。この実施形態では、画像表示パネルに配置して視認性を向上させることを主目的とするため、この最短波長は、個人差、視聴条件を加味した可視光領域の最短波長(380nm)に設定され、間隔dは、ばらつきを考慮して100〜300nmとされる。またこの間隔dに係る隣接する微小突起は、いわゆる隣り合う微小突起であり、基材2側の付け根部分である微小突起の裾の部分が接している突起である。反射防止物品1では微小突起が密接して配置されることにより、微小突起間の谷の部位を順次辿るようにして線分を作製すると、平面視において各微小突起を囲む多角形状領域を多数連結してなる網目状の模様が作製されることになる。間隔dに係る隣接する微小突起は、この網目状の模様を構成する一部の線分を共有する突起である。
なおこれにより反射防止物品1に作製される微小突起は、隣接する微小突起の間隔dが、反射防止を図る電磁波の波長帯域の最短波長Λmin以下(d≦Λmin)となるよう密接して配置される。この実施形態では、画像表示パネルに配置して視認性を向上させることを主目的とするため、この最短波長は、個人差、視聴条件を加味した可視光領域の最短波長(380nm)に設定され、間隔dは、ばらつきを考慮して100〜300nmとされる。またこの間隔dに係る隣接する微小突起は、いわゆる隣り合う微小突起であり、基材2側の付け根部分である微小突起の裾の部分が接している突起である。反射防止物品1では微小突起が密接して配置されることにより、微小突起間の谷の部位を順次辿るようにして線分を作製すると、平面視において各微小突起を囲む多角形状領域を多数連結してなる網目状の模様が作製されることになる。間隔dに係る隣接する微小突起は、この網目状の模様を構成する一部の線分を共有する突起である。
なお微小突起に関しては、より詳細には以下のように定義される。モスアイ構造による反射防止では、透明基材表面とこれに隣接する媒質との界面における有効屈折率を、厚み方向に連続的に変化させて反射防止を図るものであることから、微小突起に関しては一定の条件を満足することが必要である。この条件のうちの1つである突起の間隔に関して、例えば特開昭50−70040号公報、特許第4632589号公報等に開示のように、微小突起が一定周期で規則正しく配置されている場合、隣接する微小突起の間隔dは、突起配列の周期P(d=P)となる。これにより可視光線帯域の最長波長をλmax、最短波長をλminとした場合に、最低限、可視光線帯域の最長波長において反射防止効果を奏し得る必要最小限の条件は、Λmin=λmaxであるため、P≦λmaxとなり、可視光線帯域の全波長に対して反射防止効果を奏し得る必要十分の条件は、Λmin=λminであるため、P≦λminとなる。
なお波長λmax、λminは、観察条件、光の強度(輝度)、個人差等にも依存して多少幅を持ち得るが、標準的には、λmax=780nm及びλmin=380nmとされる。これらにより可視光線帯域の全波長に対する反射防止効果をより確実に奏し得る好ましい条件は、d≦300nmであり、より好ましい条件は、斜め方向(基材2表面の法線に対して45度以上に角度をなす方向)から見た場合の白濁感を低減させる点から、d≦200nmとなる。なお反射防止効果の発現及び反射率の等方性(低角度依存性)の確保等の理由から、周期dの下限値は、通常、d≧50nm、好ましくは、d≧100nmとされる。これに対して突起の高さHは、十分な反射防止効果を発現させる観点より、H≧0.2×λmax=156nm(λmax=780nmとして)とされる。
しかしながらこの実施形態のように、微小突起が不規則に配置されている場合には、隣接する微小突起間の間隔dはばらつきを有することになる。より具体的には、図2に示すように、基材の表面又は裏面の法線方向から見て平面視した場合に、微小突起が一定周期で規則正しく配列されていない場合、突起の繰り返し周期Pによっては隣接突起間の間隔dは規定し得ず、また隣接突起の概念すら疑念が生じることになる。そこでこのような場合、以下のように算定される。
(1)すなわち先ず、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope;AFM)又は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて突起の面内配列(突起配列の平面視形状)を検出する。なお図2は、実際に原子間力顕微鏡により求められた拡大写真である。
(2)続いてこの求められた面内配列から各突起の高さの極大点(以下、単に極大点と呼ぶ)を検出する。なお極大点を求める方法としては、(a)平面視形状の拡大写真上における平面座標とこれと対応する断面形状から求めた高さデータとを逐次対比して極大点を求める方法、(b)AFMで得られた基材上の平面座標における高さ分布データを2次元画像化してなる平面視拡大写真の画像処理によって極大点を求める方法等、種々の手法を適用することができる。図2はAFMによる拡大写真(画像濃度が高さに対応する)であり、図3は、図2に示した拡大写真に係る画像データの処理による極大点の検出結果を示す図であり、この図において黒点により示す個所がそれぞれ各突起の極大点である。なおこの処理では4.5×4.5画素のガウシアン特性によるローパスフィルタにより事前に画像データを処理し、これによりノイズによる極大点の誤検出を防止した。また8画素×8画素による最大値検出用のフィルタを順次スキャンすることにより1nm(=1画素)単位で極大点を求めた。
(3)次に検出した極大点を母点とするドロネー図(DelaunAPy Diagram)を作製する。ここでドロネー図とは、各極大点を母点としてボロノイ分割を行った場合に、ボロノイ領域が隣接する母点同士を隣接母点と定義し、各隣接母点同士を線分で結んで得られる3角形の集合体からなる網状図形である。各3角形は、ドロネー3角形と呼ばれ、各3角形の辺(隣接母点同士を結ぶ線分)は、ドロネー線と呼ばれる。図4は、図3から求められるドロネー図(白色の線分により表される図である)を図3による原画像と重ね合わせた図である。ドロネー図は、ボロノイ図(Voronoi diagram)と双対の関係に有る。またボロノイ分割とは、各隣接母点間を結ぶ線分(ドロネー線)の垂直2等分線同士によって画成される閉多角形の集合体からなる網状図形で平面を分割することを言う。ボロノイ分割により得られる網状図形がボロノイ図であり、各閉領域がボロノイ領域である。
(4)次に、各ドロネー線の線分長の度数分布、すなわち隣接する極大点間の距離(以下、隣接突起間距離と呼ぶ)の度数分布を求める。図5は、図4のドロネー図から作製した度数分布のヒストグラムである。なお図2において符号5A及び5Bにより示すように、突起の頂部に溝状等の凹部が存在したり、あるいは頂部が複数の峰に***している場合は、求めた度数分布から、このような突起の頂部に凹部が存在する微細構造、頂部が複数の峰に***している微細構造に起因するデータを除去し、突起本体自体のデータのみを選別して度数分布を作製する。
具体的には、突起の頂部に凹部が存在する微細構造、頂部が複数の峰に***している多峰性微小突起に係る微細構造においては、このような微細構造を備えてい無い単峰性微小突起の場合の数値範囲から、隣接極大点間距離が明らかに大きく異なることになる。これによりこの特徴を利用して対応するデータを除去することにより突起本体自体のデータのみを選別して度数分布を検出する。より具体的には、例えば図2に示すような微小突起(群)の平面視の拡大写真から、5〜20個程度の互いに隣接する単峰性微小突起を選んで、その隣接極大点間距離の値を標本抽出し、この標本抽出して求められる数値範囲から明らかに外れる値(通常、標本抽出して求められる隣接極大点間距離平均値に対して、値が1/2以下のデータ)を除外して度数分布を検出する。図5の例では、隣接極大点間距離が56nm以下のデータ(矢印Aにより示す左端の小山)を除外する。なお図5は、このような除外する処理を行う前の度数分布を示すものである。因みに上述の極大点検用のフィルタの設定により、このような除外する処理を実行してもよい。
(5)このようにして求めた隣接突起間距離dの度数分布から平均値dAVG及び標準偏差σを求める。ここでこのようにして得られる度数分布を正規分布とみなして平均値dAVG及び標準偏差σを求めると、図5の例では、平均値dAVG=158nm、標準偏差σ=38nmとなった。これにより隣接突起間距離dの最大値を、dmax=dAVG+2σとし、この例ではdmax=234nmとなる。
なお同様の手法を適用して突起の高さを定義する。この場合、上述の(2)により求められる極大点から、特定の基準位置からの各極大点位置の相対的な高さの差を取得してヒストグラム化する。図6は、このようにして求められる突起付け根位置を基準(高さ0)とした突起高さHの度数分布のヒストグラムを示す図である。このヒストグラムによる度数分布から突起高さの平均値HAVG、標準偏差σを求める。ここでこの図6の例では、平均値HAVG=178nm、標準偏差σ=30nmである。これによりこの例では、突起の高さは、平均値HAVG=178nmとなる。なお図6に示す突起高さHのヒストグラムにおいて、多峰性微小突起の場合は、頂点を複数有していることにより、1つの突起に対してこれら複数のデータが混在することになる。そこでこの場合は麓部が同一の微小突起に属するそれぞれ複数の頂点の中から高さの最も高い頂点を、当該微小突起の突起高さとして採用して度数分布を求める。
なお上述した突起の高さを測る際の基準位置は、隣接する微小突起の間の谷底(高さの極小点)を高さ0の基準とする。但し、例えば図7に示すように、谷底の高さが微小突起の隣接突起間距離に比べて大きな周期でウネリを有する場合等において、係る谷底の高さ自体が場所によって異なる場合は、(1)先ず、基材2の表面又は裏面から測った各谷底の高さの平均値を、該平均値が收束するに足る面積の中で算出する。(2)次いで、該平均値の高さを持ち、基材2の表面又は裏面と平行な面を基準面として考える。(3)その後、該基準面を改めて高さ0として、該基準面からの各微小突起の高さを算出する。
突起が不規則に配置されている場合には、このようにして求められる隣接突起間距離の最大値dmax=dAVG+2σ、突起の高さの平均値HAVGが、規則正しく配置されている場合の上述の条件を満足することが必要であることが判った。具体的には、反射防止効果を発現する微小突起間距離の条件は、dmax≦Λminとなる。最低限、可視光線帯域の最長波長において反射防止効果を奏し得る必要最短限の条件は、Λmin=λmaxであるため、dmax≦λmaxとなり、可視光線帯域の全波長に対して反射防止効果を奏し得る必要十分の条件は、Λmin=λminであるため、dmax≦λminとなる。そして、可視光線帯域の全波長に対する反射防止効果をより確実に奏し得る好ましい条件は、dmax≦300nmであり、更に好ましい条件は、dmax≦200nmである。また反射防止効果の発現及び反射率の等方性(低角度依存性)の確保等の理由から、通常、dmax≧50nmであり、好ましくは、dmax≧100nmとされる。また突起高さについては、十分な反射防止効果を発現する為には、HAVG≧0.2×λmax=156nm(λmax=780nmとして)とされる。
因みに、図2〜図6の例により説明するとdmax=234nm≦λmax=780nmとなり、dmax≦λmaxの条件を満足して十分に反射防止効果を奏し得ることが判る。また可視光線帯域の最短波長λminが380nmであることから、可視光線の全波長帯域において反射防止効果を発現する十分条件dmax≦λminも満たすことが判る。また平均突起高さHAVG=178nmであることにより、平均突起高さHAVG≧0.2×λmax=156nmとなり(可視光波長帯域の最長波長λmax=780nmとして)、十分な反射防止効果を実現するための突起の高さに関する条件も満足していることが判る。なお標準偏差σ=30nmであることから、HAVG−σ=148nm<0.2×λmax=156nmとの関係式が成立することから、統計学上、全突起の50%以上、84%以下が、突起の高さに係る条件(178nm以上)の条件を満足していることが判る。なおAFM及びSEMによる観察結果、並びに微小突起の高さ分布の解析結果から、多峰性微小突起は相対的に高さの低い微小突起よりも高さの高い微小突起でより多く生じる傾向にあることが判明した。
〔製造工程〕
図8は、この反射防止物品1の製造工程を示す図である。この製造工程10は、樹脂供給工程において、ダイ12により帯状フィルム形態の基材2に微小突起形状の受容層を構成する未硬化で液状の紫外線硬化性樹脂を塗布する。なお紫外線硬化性樹脂の塗布については、ダイ12による場合に限らず、各種の手法を適用することができる。続いてこの製造工程10は、押圧ローラ14により、反射防止物品の賦型用金型であるロール版13の周側面に基材2を加圧押圧し、これにより基材2に未硬化状態で液状のアクリレート系紫外線硬化性樹脂を密着させると共に、ロール版13の周側面に作製された微細な凹凸形状の凹部に紫外線硬化性樹脂を充分に充填する。この製造工程は、この状態で、紫外線の照射により紫外線硬化性樹脂を硬化させ、これにより基材2の表面に微小突起群を作製する。この製造工程は、続いて剥離ローラ15を介してロール版13から、硬化した紫外線硬化性樹脂と一体に基材2を剥離する。製造工程10は、必要に応じてこの基材2に粘着層等を作製した後、所望の大きさに切断して反射防止物品1を作製する。これにより反射防止物品1は、ロール材による長尺の基材2に、賦型用金型であるロール版13の周側面に作製された微細形状を順次賦型して、効率良く大量生産される。
図8は、この反射防止物品1の製造工程を示す図である。この製造工程10は、樹脂供給工程において、ダイ12により帯状フィルム形態の基材2に微小突起形状の受容層を構成する未硬化で液状の紫外線硬化性樹脂を塗布する。なお紫外線硬化性樹脂の塗布については、ダイ12による場合に限らず、各種の手法を適用することができる。続いてこの製造工程10は、押圧ローラ14により、反射防止物品の賦型用金型であるロール版13の周側面に基材2を加圧押圧し、これにより基材2に未硬化状態で液状のアクリレート系紫外線硬化性樹脂を密着させると共に、ロール版13の周側面に作製された微細な凹凸形状の凹部に紫外線硬化性樹脂を充分に充填する。この製造工程は、この状態で、紫外線の照射により紫外線硬化性樹脂を硬化させ、これにより基材2の表面に微小突起群を作製する。この製造工程は、続いて剥離ローラ15を介してロール版13から、硬化した紫外線硬化性樹脂と一体に基材2を剥離する。製造工程10は、必要に応じてこの基材2に粘着層等を作製した後、所望の大きさに切断して反射防止物品1を作製する。これにより反射防止物品1は、ロール材による長尺の基材2に、賦型用金型であるロール版13の周側面に作製された微細形状を順次賦型して、効率良く大量生産される。
図9は、ロール版13の構成を示す斜視図である。ロール版13は、円筒形状の金属材料である母材の周側面に、陽極酸化処理、エッチング処理の繰り返しにより、微細な凹凸形状が作製され、この微細な凹凸形状が上述したように基材2に賦型される。このため母材は、少なくとも周側面に純度の高いアルミニウム層が設けられた円柱形状又は円筒形状の部材が適用される。より具体的に、この実施形態では、母材に中空のステンレスパイプが適用され、直接に又は各種の中間層を介して、純度の高いアルミニウム層が設けられる。なおステンレスパイプに代えて、銅やアルミニウム等のパイプ材等を適用してもよい。ロール版13は、陽極酸化処理とエッチング処理との繰り返しにより、母材の周側面に微細穴が密に作製され、この微細穴を掘り進めると共に、開口部に近付くに従ってより大きな径となるようにこの微細穴の穴径を徐々に拡大して凹凸形状が作製される。これによりロール版13は、深さ方向に徐々に穴径が小さくなる微細穴が密に作製され、反射防止物品1には、この微細穴に対応して、頂部に近付くに従って徐々に径が小さくなる多数の微小突起により微細な凹凸形状が作製される。
〔陽極酸化処理、エッチング処理〕
図10は、ロール版13の製造工程を示す図である。この製造工程は、電解溶出作用と、砥粒による擦過作用の複合による電解複合研磨法によって母材の周側面を超鏡面化する(電解研磨)。続いてこの工程は、母材の周側面にアルミニウムをスパッタリングし、純度の高いアルミニウム層を作製する。続いてこの工程は、陽極酸化工程A1、…、AN、エッチング工程E1、…、ENを交互に繰り返して母材を処理し、ロール版13を作製する。
図10は、ロール版13の製造工程を示す図である。この製造工程は、電解溶出作用と、砥粒による擦過作用の複合による電解複合研磨法によって母材の周側面を超鏡面化する(電解研磨)。続いてこの工程は、母材の周側面にアルミニウムをスパッタリングし、純度の高いアルミニウム層を作製する。続いてこの工程は、陽極酸化工程A1、…、AN、エッチング工程E1、…、ENを交互に繰り返して母材を処理し、ロール版13を作製する。
この製造工程において、陽極酸化工程A1、…、ANでは、陽極酸化法により母材の周側面に微細な穴を作製し、さらにこの作製した微細な穴を掘り進める。ここで陽極酸化工程では、例えば負極に炭素棒、ステンレス板材等を使用する場合のように、アルミニウムの陽極酸化に適用される各種の手法を広く適用することができる。また薬液についても、中性、酸性の各種薬液を使用することができ、より具体的には、例えば硫酸水溶液、シュウ(蓚)酸水溶液、リン酸水溶液等を使用することができる。この製造工程A1、…、ANは、液温、印加する電圧、陽極酸化に供する時間等の管理により、微細な穴をそれぞれ目的とする深さ及び微小突起形状に対応する形状に作製する。
続くエッチング工程E1、…、ENは、金型をエッチング液に浸漬し、陽極酸化工程A1、…、ANにより作製、掘り進めた微細な穴の穴径をエッチングにより拡大し、深さ方向に向かって滑らか、かつ徐々に穴径が小さくなるように、これら微細な穴を整形する。なおエッチング液については、この種の処理に適用される各種エッチング液を広く適用することができ、より具体的には、例えば硫酸水溶液、シュウ酸水溶液、リン酸水溶液等を使用することができる。これらによりこの製造工程では、陽極酸化処理とエッチング処理とを交互にそれぞれ複数回実行することにより、賦型に供する微細穴を母材の周側面に作製する。尚、陽極酸化処理で用いたシュウ酸水溶液等の薬液自体を、電圧を印加することなく、母材に接触させればエッチング液としても機能する。従って、陽極酸化処理の薬液とエッチング処理の薬液とを同じ薬液とし、薬液を入れた槽中に母材を浸漬したまま、順次、所定時間所定電圧を印加することで陽極酸化処理を行い、電圧無印加で所定時間浸漬することによってエッチング処理を行うこともできる。
〔視野角特性の設定〕
ここでこの実施形態では、陽極酸化処理時における母材に対する相対的な薬液流の制御により、ロール版13の周側面に形成する微細穴の傾きの分布を設定する。ここで図11(A)に示すように、微小突起5を基材の正面方向より平面視した場合の、微小突起5の重心をWとする。この微小突起5の重心Wから頂点Pを結ぶ線分の、重心Wの法線方向Lに対する傾きθを微小突起5の傾きと定義する。微小突起5は、ロール版13の周側面に形成された微細穴に樹脂を充填、硬化して作製されることにより、微細穴の傾きは、この微小突起5の傾きθに対応することになる。この実施形態では、この微小突起5の傾きθの分布の設定により所望の視野角特性を確保する。
ここでこの実施形態では、陽極酸化処理時における母材に対する相対的な薬液流の制御により、ロール版13の周側面に形成する微細穴の傾きの分布を設定する。ここで図11(A)に示すように、微小突起5を基材の正面方向より平面視した場合の、微小突起5の重心をWとする。この微小突起5の重心Wから頂点Pを結ぶ線分の、重心Wの法線方向Lに対する傾きθを微小突起5の傾きと定義する。微小突起5は、ロール版13の周側面に形成された微細穴に樹脂を充填、硬化して作製されることにより、微細穴の傾きは、この微小突起5の傾きθに対応することになる。この実施形態では、この微小突起5の傾きθの分布の設定により所望の視野角特性を確保する。
図12(A)は、この薬液流の制御の説明に供する図である。陽極酸化工程は、薬液槽23に満たした陽極酸化処理に供する薬液22に、ロール版13の母材21を部分的に浸漬した状態で、矢印Aにより示すように、母材21を回転させながら陽極酸化処理を実行する。またロール版13の上方にノズル24を設け、陽極酸化処理の際に、薬液22の液面より上昇する母材21の部位に、矢印Bにより示すように、このノズル24から薬液を塗布する。これにより陽極酸化工程は、一定の方向(この図12の例では、円周方向である)に薬液流を作製した状態で陽極酸化処理し、陽極酸化処理により作製、掘り進める微細穴を、母材21の中心に向かう方向より傾け(図12(A)の例では、時計方向)、上述した微小突起5の傾きθに対応する傾きを形成する。なおこのような薬液流の制御にあっては、上記記載事項の他、ノズルを一定周期で動かすことにより、または周期的な塗布ムラ発生を抑えるため前記一定周期の前後の範囲で不定周期で動かすことにより、ロール版へ塗布される薬液の角度を変更して実行してもよく、また薬液槽23内における薬液の循環により作製してもよく、また母材21の回転のみにより作製してもよい。またさらに円周方向への薬液流の制御に代えて、又は加えて、ロール版13の軸方向に実行してもよい。
これによりこのように傾いた微細穴が作製されてなるロール版13を使用した賦型処理により反射防止物品1は作製され、反射防止物品1においては、微小突起5が傾くように形成され、微小突起5の基材表面の法線方向に対する傾きθの分布の中心が、この法線方向から異なる方向となる。このように傾きθの分布の中心が、法線方向から異なる方向となる場合には、何ら傾きを設けない場合の正面方向の光学特性を、この傾きθの方向に近づけることができる。これにより例えば画像表示装置に適用して、この傾きθの方向を画面の下方側に設定することにより、見上げるように表示画面を視聴するパブリックビューイングに好適な光学特性を確保することができる。
また図13に示すように、このように傾きθの分布の中心が、法線方向から異なる方向となるように反射防止物品1を作製した場合、基材表面に係る2次元座標により傾きθの分布を表現した傾きθの分布に係る領域APが、楕円形形状の領域を形成する。ここでこの楕円形形状の領域の長軸方向が、微小突起の傾きの方向である。なおこの図13においては、図12(B)により示すように、幅狭のノズルを使用して、矢印L1に示すように、薬液の塗布箇所がロール版の周側面にらせん状の軌跡を描くように設定した場合である。またロール版13の軸方向をx座標軸方向とし、円周接線方向をy座標軸方向とした場合であり、図11(A)との対比により図11(B)に示すように、傾きθに係る重心Wから見た頂点Pの座標を、このxy座標により表現したものである。
ここでこのように楕円形形状の領域APにより分布する場合、この楕円形形状の領域APの長軸方向では、短軸方向に比して広い視野角特性を確保することができ、短軸方向に比して斜め方向における反射防止率を低減することができる。これによりこの長軸方向が長辺側となるように、反射防止物品1を長方形形状により作製すれば、この長辺方向で広い視野角特性を確保することができる。これによっても画像表示パネルのパネル面に配置して、画像表示装置に要求される好適な光学特性を確保することができる。なおこのように傾きθの分布中心を設定する場合には、傾きθに比例した微小突起の高さ分布が生じ、その結果、耐擦性を向上することができる。
なお図13の計測結果においては、符号AVが傾きθの分布中心であり、計測結果の平均値により求めたものである。これによりこの実施形態では、この長軸方向が長辺方向となるように、長方形形状により切り出して反射防止物品を作製し、この反射防止物品を画像表示パネルのパネル面に配置する。
以上の構成によれば、傾きの分布の中心を基材法線方向から異ならせることにより、反射防止を図る方向の中心をこの傾きの分布の中心方向とすることができ、これによりモスアイ構造の反射防止物品に関して、視野角方向における反射防止を図る特性を種々に設定することができる。
また2次元座標により傾きの分布を表現した場合に、傾きの分布に係る領域が楕円形形状の領域であることにより、この楕円形形状の長軸方向と短軸方向とで特性を異ならせることができ、一段と視野角方向における反射防止を図る特性を種々に設定することができる。
またさらに全体形状を長方形形状として、この楕円形形状の長軸方向をこの長方形形状の長辺方向に設定することにより、例えば画像表示装置に適用して好適な特性を確保することができる。
〔他の実施形態〕
以上、本発明の実施に好適な具体的な構成を詳述したが、本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述の実施形態の構成を種々に変更し、さらには従来構成と組み合わせることができる。
以上、本発明の実施に好適な具体的な構成を詳述したが、本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述の実施形態の構成を種々に変更し、さらには従来構成と組み合わせることができる。
すなわち上述の実施形態では、陽極酸化処理とエッチング処理とを交互に繰り返す場合について述べたが、本発明はこれに限らず、最後の処理を陽極酸化処理とする場合にも広く適用することができる。
また上述の実施形態では、反射防止物品を液晶表示パネル、電場発光表示パネル、プラズマ表示パネル等の各種画像表示パネルの表側面に配置して視認性を向上する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば液晶表示パネルの裏面側に配置してバックライトから液晶表示パネルへの入射光の反射損失を低減させる場合(入射光利用効率を増大させる場合)にも広く適用することができる。尚、ここで画像表示パネルの表面側とは、該画像表示パネルの画像光の出光面であり、画像観察者側の面でもある。又、画像表示パネルの裏面側とは、該画像表示パネルの表面の反対側面であり、バックライト(背面光源)を用いる透過型画像表示裝置の場合は、該バックライトからの照明光の入光面でもある。
また上述の実施形態では、賦型用樹脂にアクリレート系の紫外線硬化性樹脂を適用する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、エポキシ系、ポリエステル系等の各種紫外線硬化性樹脂、或いはアクリレート系、エポキシ系、ポリエステル系等の電子線硬化性樹脂、ウレタン系、エポキシ系、ポリシロキサン系等の熱硬化性樹脂等の各種材料及び各種硬化形態の賦型用樹脂を使用する場合にも広く適用することができ、さらには例えば加熱した熱可塑性の樹脂を押圧して賦型する場合等にも広く適用することができる。
また、上述の実施形態では、図1に図示の如く、基材2の一方の面上に受容層(紫外線硬化性樹脂層)4を積層してなる積層体の該受容層4上に微小突起群5、5A、5B、・・を賦形し、該受容層4を硬化せしめて反射防止物品1を形成している。層構成としては2層の積層体となる。但し、本発明は、かかる形態のみに限定される訳では無い。本発明の反射防止物品1は、図示は略すが、基材2の一方の面上に、他の層を介さずに直接、微小突起群5、5A、5B、・・を賦形した単層構成であっても良い。或いは、基材2の一方の面に1層以上の中間層(層間の密着性、塗工適性、表面平滑性等の基材表面性能を向上させる層。プライマー層、アンカー層等とも呼称される。)を介して受容層4を形成し、該受容層表面に微小突起群5、5A、5B、・・を賦形した3層以上の積層体であっても良い。
更に、上述の実施形態では、図1にも図示の如く、基材2の一方の面上にのみ(直接或いは他の層を介して)微小突起群5、5A、5B、・・を形成しているが、本発明はかかる形態には限定され無い。基材2の両面上に(直接或いは他の層を介して)各々微小突起群5、5A、5B、・・を形成した構成であっても良い。
また、図示は略すが、図1等に図示の如き本発明の反射防止物品1において、基材2の微小突起群形成面とは反対側の面(図1においては基材2の下側面)に各種接着剤層を形成し、更に該接着剤層表面に離型フィルム(離型紙)を剥離可能に積層してなる接着加工品の形態とすることも出来る。かかる形態においては、離型フィルムを剥離除去して接着剤層を露出せしめ、該接着剤層により所望の物品の所望の表面上に本発明の反射防止物品1を貼り合わせ、積層することが出来、簡便に所望の物品に反射防止性能を付与することが出来る。接着剤としては、粘着剤(感圧接着剤)、2液硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、熱熔融型接着剤等の公知の接着形態のものが各種使用出来る。
また、図示は略すが、図1等に図示の如き本発明の反射防止物品1において、基材2の微小突起群形成面とは反対側の面(図1においては基材2の下側面)に各種接着剤層を形成し、更に該接着剤層表面に離型フィルム(離型紙)を剥離可能に積層してなる接着加工品の形態とすることも出来る。かかる形態においては、離型フィルムを剥離除去して接着剤層を露出せしめ、該接着剤層により所望の物品の所望の表面上に本発明の反射防止物品1を貼り合わせ、積層することが出来、簡便に所望の物品に反射防止性能を付与することが出来る。接着剤としては、粘着剤(感圧接着剤)、2液硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、熱熔融型接着剤等の公知の接着形態のものが各種使用出来る。
また、図示は略すが、図1等に図示の如き本発明の反射防止物品1において、微小突起群5、5A、5B、・・形成面上に剥離可能な保護フィルムを仮接着した状態で保管、搬送、売買、後加工乃至施工を行い、しかる後に適時、該保護フィルムを剥離除去する形態とすることも出来る。かかる形態においては、保管、搬送等の間に微小突起群が損傷乃至は汚染して反射防止性能が低下することを防止することが出来る。
また、上述の実施形態では、図1、図10(a)に示すように、各隣接微小突起間の谷底(高さの極小点)を連ねた面は高さが一定な平面であったが、本発明はこれに限らず、図12に示すように、各微小突起間の谷底を連ねた包絡面が、可視光線帯域の最長波長λmax以上の周期D(すなわちD>λmaxである)でうねった構成としてもよい。又該周期的なうねりは、基材2の表裏面に平行なXY平面(図10、図12参照)における1方向(例えばX方向)のみでこれと直交する方向(例えばY方向)には一定高さであっても良いし、或いはXY平面における2方向(X方向及びY方向)共にうねりを有していても良い。D>λmaxを満たす周期Dでうねった凹凸面6が多数の微小突起からなる微小突起群に重畳することによって、微小突起群で完全に反射防止し切れずに残った反射光を散乱し、殘留反射光、とくに鏡面反射光を更に視認し難くし、以って、反射防止効果を一段と向上させることができる。
尚、係る凹凸面6の周期Dが前面に渡って一定では無く分布を有する場合は、該凹凸面について凸部間距離の度数分布を求め、その平均値をDAVG、標準偏差をΣとしたときの、
DMIN=DAVG―2Σ
として定義する最小隣接突起間距離を以って周期Dの代わりとして設計する。即ち、微小突起群の殘留反射光の散乱効果を十分奏し得る条件は、
DMIN>λmax
である。通常、D又はDMINは1〜200μm、好ましくは10〜100μmとされる。
各微小突起の谷底を連ねた包絡面形が、D(又はDMIN)>λmax、なる凹凸面6を呈する樣な微小突起群を形成する具体的な製造方法の一例を挙げると以下の通りである。即ち、ロール版13の製造工程において、円筒(又は円柱)形状の母材の表面にサンドブラスト又はマット(つや消し)メッキによって凹凸面6の凹凸形状に対応する凹凸形状を賦形する。次いで、該凹凸形状の面上に、直接或いは必要に応じて適宜の中間層を形成した後、アルミニウム層を積層する。その後、該凹凸形状表面に対応した表面形状を賦形されたアルミニウム層に上述の実施形態と同様にして陽極酸化処理及びエッチング処理を施して微小突起5、5A、5Bを含む微小突起群を形成する。
DMIN=DAVG―2Σ
として定義する最小隣接突起間距離を以って周期Dの代わりとして設計する。即ち、微小突起群の殘留反射光の散乱効果を十分奏し得る条件は、
DMIN>λmax
である。通常、D又はDMINは1〜200μm、好ましくは10〜100μmとされる。
各微小突起の谷底を連ねた包絡面形が、D(又はDMIN)>λmax、なる凹凸面6を呈する樣な微小突起群を形成する具体的な製造方法の一例を挙げると以下の通りである。即ち、ロール版13の製造工程において、円筒(又は円柱)形状の母材の表面にサンドブラスト又はマット(つや消し)メッキによって凹凸面6の凹凸形状に対応する凹凸形状を賦形する。次いで、該凹凸形状の面上に、直接或いは必要に応じて適宜の中間層を形成した後、アルミニウム層を積層する。その後、該凹凸形状表面に対応した表面形状を賦形されたアルミニウム層に上述の実施形態と同様にして陽極酸化処理及びエッチング処理を施して微小突起5、5A、5Bを含む微小突起群を形成する。
また上述の実施形態では、陽極酸化処理とエッチング処理との繰り返しにより賦型処理用の金型を作製する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、フォトリソグラフィーの手法を適用して賦型処理用の金型を作製する場合にも広く適用することができる。
また上述の実施形態では、ロール版を使用した賦型処理によりフィルム形状による反射防止物品を生産する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、反射防止物品の形状に係る透明基材の形状に応じて、例えば平板、特定の曲面形状による賦型用金型を使用した枚葉の処理により反射防止物品を作製する場合等、賦型処理に係る工程、金型は、反射防止物品の形状に係る透明基材の形状に応じて適宜変更することができる。
また上述の実施形態では、画像表示パネルの表側面、或いは照明光の入射面にフィルム形状による反射防止物品を配置する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、種々の用途に適用することができる。具体的には、画像表示パネルの画面上に間隙を介して設置されるタッチパネル、各種の窓材、各種光学フィルタ等による表面側部材の裏面(画像表示パネル側)に配置する用途に適用することができる。なおこの場合には、画像表示パネルと表面側部材との間の光の干渉によるニュートンリング等の干渉縞の発生の防止、画像表示パネルの出光面と表面側部材の入光面側との間の多重反射によるゴースト像の防止、さらには画面から出光されてこれら表面側部材に入光する画像光について、反射損失の低減等の効果を奏することができる。
或いは、タッチパネルを構成する透明電極を、フィルム或いは板状の透明基材上に本発明特定の微小突起群を形成し、更に該微小突起群上にITO(酸化インジウム錫)等の透明導電膜を形成したものを用いることが出来る。この場合には、該タッチパネル電極とこれと隣接する対向電極又は各種部材との間での光反射を防止して、干渉縞、ゴースト像等の発生を低減させる効果を奏することが出来る。
また店舗のショウウインドウや商品展示箱、美術館の展示物の展示窓や展示箱等に使用する硝子板表面(外界側)、或いは表面及び裏面(商品又は展示物側面)の両面に配置するようにしても良い。なおこの場合、該硝子板表面の光反射防止による商品、美術品等の顧客や観客に対する視認性を向上することができる。
また眼鏡、望遠鏡、写真機、ビデオカメラ、銃砲の照準鏡(狙撃用スコープ)、双眼鏡、潜望鏡等の各種光学機器に用いるレンズ又はプリズムの表面に配置する場合にも広く適用することができる。この場合、レンズ又はプリズム表面の光反射防止による視認性を向上することができる。またさらに書籍の印刷部(文字、写真、図等)表面に配置する場合にも適用して、文字等の表面の光反射を防止し、文字等の視認性向上することができる。また看板、ポスター、其の他各種店頭、街頭、外壁等における各種表示(道案内、地図、或いは禁煙、入口、非常口、立入禁止等)の表面に配置して、これらの視認性を向上することができる。またさらに白熱電球、発光ダイオード、螢光燈、水銀燈、EL(電場発光)等を用いた照明器具の窓材(場合によっては、拡散板、集光レンズ、光学フィルタ等も兼ねる)の入光面側に配置するようにして、窓材入光面の光反射を防止し、光源光の反射損失を低減し、光利用効率を向上することができる。またさらに時計、其の他各種計測機器の表示窓表面(表示観察者側)に配置して、これら表示窓表面の光反射を防止し、視認性を向上することができる。
またさらに、自動車、鉄道車両、船舶、航空機等の乗物の操縦室(運転室、操舵室)の窓の室内側、室外側、あるいはその両側の表面に配置して窓における室内外光を反射防止して、操縦者(運転者、操舵者)の外界視認性を向上することができる。またさらに、防犯等の監視、銃砲の照準、天体観測等に用いる暗視装置のレンズないしは窓材表面に配置して、夜間、暗闇での視認性を向上することができる。
またさらに、住宅、店舗、事務所、学校、病院等の建築物の窓、扉、間仕切、壁面等を構成する透明基板(窓硝子等)の表面(室内側、室外側、あいはその両側)の表面に配置して、外界の視認性、あるいは採光効率を向上することができる。またさらに、温室、農業用ビニールハウスの透明シート、ないしは透明板(窓材)の表面に配置して、太陽光の採光効率を向上することができる。さらにまた、太陽電池表面に配置して、太陽光の利用効率(発電効率)を向上することができる。
またさらに、上述の実施形態においては、反射防止を図る電磁波の波長帯域を、専ら、可視光線帯域(の全域又は一部帯域)としたが、本発明はこれに限らず、反射防止を図る電磁波の波長帯域を赤外線、紫外線等の可視光線以外の波長帯域に設定しても良い。その場合は前記の各条件式中において、電磁波の波長帯域の最短波長Λminを、それぞれ、赤外線、紫外線等の波長帯域における反射防止効果を希望する最短波長に設定すれば良い。例えば、最短波長Λminが850nmの赤外線帯域の反射防止を希望する場合は、隣接突起間距離d(乃至は其の最大値dmax)を850nm以下、例えば、d(dmax)=800nmと設計すれば良い。尚、この場合は、可視光線帯域(380〜780nm)においては反射防止効果は期待し得ず、專ら波長850nm以上の赤外線に対しての反射防止効果を奏する反射防止物品が得られる。
以上例示の各種実施形態において、硝子板等の透明基板の表面、裏面、或いは表裏両面に本発明のフィルム状の反射防止物品を配置する場合、該透明基板の全面に亙って配置、被覆する以外に、一部分の領域にのみ配置することも出来る。かかる例としては、例えば、1枚の窓硝子について、其の中央部分の正方形領域において、室内側表面にのみフィルム状の反射防止物品を粘着剤で貼着し、その他領域には反射防止物品を貼着し無い場合を挙げることが出来る。透明基板の一部分の領域にのみ反射防止物品を配置する形態の場合は、特別な表示や衝突防止柵等の設置無しでも、該透明基板の存在を視認し易くして、人が該透明基板に衝突、負傷する危険性を低減する効果、及び室内(屋内)の覗き見防止と該透明基板の(該反射防止物品の配置領域における)透視性とが両立出来ると言う効果を奏し得る。
1 反射防止物品
2 基材
4 紫外線硬化性樹脂層、受容層
5、5A、5B 微小突起
6 凹凸面
10 製造工程
12 ダイ
13 ロール版
14、15 ローラ
21 母材
22 薬液
23 薬液槽
g 溝
2 基材
4 紫外線硬化性樹脂層、受容層
5、5A、5B 微小突起
6 凹凸面
10 製造工程
12 ダイ
13 ロール版
14、15 ローラ
21 母材
22 薬液
23 薬液槽
g 溝
Claims (2)
- 微小突起が密接して配置され、隣接する前記微小突起の間隔が、反射防止を図る波長帯域の最短波長以下である反射防止物品の製造方法において、
前記反射防止物品は、
基材の正面方向より平面視した場合の前記微小突起の重心から、微小突起の頂点までの方向ベクトルの基材表面に対する射影が分布を持ち、その分布の中心が前記重心と一致せず、
前記反射防止物品の製造用金型は、
前記微小突起に対応する微細穴が密接して作製されており、
前記反射防止物品の製造方法は、
陽極酸化処理とエッチング処理との交互の繰り返しにより前記微細穴を作製して、前記微小突起の賦型に供する製造用金型を作製する金型作製工程と、
前記製造用金型に基材を押圧して前記製造用金型に形成された凹凸形状を前記基材に賦型することにより、前記基材に前記微小突起を作製する賦型工程とを備え、
前記金型作製工程は、
陽極酸化処理時における母材に対する相対的な薬液流の制御により、前記微小突起に係る射影の分布に対応するように、前記微細穴の傾きの分布を作製する
反射防止物品の製造方法。 - 微小突起が密接して配置され、隣接する前記微小突起の間隔が、反射防止を図る波長帯域の最短波長以下である反射防止物品の製造用金型であって、賦型処理により前記微小突起を作製する前記微小突起に対応する微細穴を備えた反射防止物品の製造用金型の製造方法において、
前記反射防止物品は、
基材の正面方向より平面視した場合の前記微小突起の重心から、微小突起の頂点までの方向ベクトルの基材表面に対する射影が分布を持ち、その分布の中心が前記重心と一致せず、
前記反射防止物品の製造用金型の製造方法は、
陽極酸化処理とエッチング処理とにより、母材の表面に、前記微小突起に対応する微細穴を作製する微細穴作製工程を備え、
陽極酸化処理時における母材に対する相対的な薬液流の制御により、前記微小突起に係る射影の分布に対応するように、前記微細穴の傾きの分布を作製する
反射防止物品の製造用金型の製造方法。
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