JP5616347B2 - 吸水性樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
以下、本明細書で使用される用語について説明する。
本明細書において、「吸水性樹脂」とは、以下の物性を有する水膨潤性かつ水不溶性の高分子ゲル化剤を意味する。吸水性樹脂の吸水倍率(CRC)は、必須に5g/g以上であり、好ましくは10〜100g/gであり、より好ましくは20〜80g/gである。また、吸水性樹脂の可溶分(Extractables)は、必須に0〜50重量%以下であり、好ましくは0〜30重量%であり、より好ましくは0〜20重量%であり、さらに好ましくは0〜10重量%である。
本明細書において、「ポリアクリル酸(塩)」とは、任意にグラフト成分を含み、単量体としてアクリル酸(塩)を主成分とする単量体を(共)重合することにより得られる(共)重合体を意味する。具体的には、ポリアクリル酸(塩)を構成する単量体(ただし、架橋剤を除く)に含まれるアクリル酸(塩)の割合は、単量体の全量に対して、必須に50〜100モル%であり、好ましくは70〜100モル%であり、より好ましくは90〜100モル%であり、さらに好ましくは実質100モル%である。(共)重合体としての塩は、必須に水溶性塩を含み、好ましくは一価塩を含み、より好ましくはアルカリ金属塩またはアンモニウム塩を含み、さらに好ましくはアルカリ金属塩を含み、特に好ましくはナトリウム塩を含む。
本明細書において、「初期着色」とは、吸水性樹脂の製造工程における不可避的な着色を意味する。当該初期着色は、製造直後(実施例では製造後1時間以内に測定)の吸水性樹脂に対して、国際公開第2009/005114号パンフレットに記載される測定方法を用いることにより求められる(例えば、L/a/b値、YI値、WB値など)。
本明細書において、「経時着色」とは、未使用(未膨潤)状態の吸水性樹脂を長期間保管等する際に起こる着色(通常、黄変ないし茶変)を意味する。当該経時着色は、例えば、未使用のおむつを倉庫等で長期間保管する場合などに起こり、おむつの商品価値の低下となりうる。室温での保管では数ヶ月ないし数年経過しないと着色が認められないため、通常、当該経時着色は国際公開第2009/005114号パンフレットに記載される、高温・高湿条件下での促進試験を用いて検証される。
「EDANA」とは、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Associations)の略称である。また、「ERT」とは、欧州標準の吸水性樹脂の測定法(ERT/EDANA Recomeded Test Method)の略称であり、現在これがほぼ世界基準となっている。本明細書においては特に断りのない限り、ERT原本(公知文献;2002年改定)を参照して、吸水性樹脂の物性を測定する。
「CRC」は、遠心分離機保持容量(Centrifuge Retention Capacity)の略称であり、無加圧下吸水倍率(以下、「吸水倍率」とも称する)を意味する。具体的には、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に不織布袋中の吸水性樹脂0.200gを30分間浸漬した後、遠心分離機で250Gの水切りした後の吸水倍率(単位;[g/g])で規定される。
「AAP」は、加圧下吸水倍率(Absorbency Against Pressure)の略称である。具体的には、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に吸水性樹脂0.900gを荷重下で1時間膨潤させた後の吸水倍率(単位;[g/g])で規定される。本明細書では、荷重条件が21g/cm2(0.3psi)または50g/cm2(0.7psi)である場合のAPPを測定した。
「可溶分」とは、吸水性樹脂中に含まれる水に可溶な成分の量を意味する。具体的には、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液200gに吸水性樹脂1gを投入し、16時間攪拌した後、溶解したポリマー量をpH滴定で測定することにより求められる(単位;重量%)。
「FSC」は、自由膨潤倍率(Free Swell Capacity)の略称である。具体的には、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に不織布中の吸水性樹脂0.200gを30分間浸漬した後、遠心分離機による水切りを行わないで測定した吸水倍率(単位;[g/g])で規定される。
「残存モノマー量」とは、吸水性樹脂中に残存しているモノマー(単量体)量を意味する。具体的には、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液200cm3に吸水性樹脂を1.0g投入し、500rpmで1時間攪拌した後、当該水溶液に溶出したモノマー量を高速液体クロマトグラフィーで測定することにより求められる(単位;ppm)。
粒度分布は、篩分級により求められる。
「通液性」とは、荷重下または無荷重下において膨潤ゲル粒子間を流れる液体の流れ具合を意味する。代表的な測定法に、SFC(Saline Flow Conductivity)と、GBP(Gel Bed Permeability)とがある。SFCは、21g/cm2(0.3psi)の荷重条件における、吸水性樹脂0.9gに対する0.69%生理食塩水の通液性であり、米国特許第5669894号明細書に記載の方法により求められる。荷重下または自由膨潤のGBPは、国際公開第2005/016393号パンフレットに記載の方法により求められる。
上記以外の吸水性樹脂等の物性は、以下のERT原本(2002年改定)の測定方法により求められる。
含水率(Moisture Content)(ERT430.2−2)
流下速度(Flow Rate)(ERT450.2−02)
嵩比重(Density)(ERT460.2−02)
呼吸域粉塵(Respirable Particles)(ERT480.2−02)
粉塵(Dust)(ERT490.2−02)。
(1)重合工程
本形態の吸水性樹脂の製造方法では、まず、単量体水溶液を重合反応に供して含水ゲルを得る、重合工程が行われる。
単量体水溶液は、単量体を必須に含み、必要によりその他の添加剤を含みうる。以下、単量体水溶液に含まれる各成分について詳細に説明する。
本形態における単量体は重合性不飽和結合を含む単量体(不飽和単量体)であれば特に制限はないが、吸水性樹脂の着色し難さや物性の観点から、アクリル酸および/またはその中和物(すなわちアクリル酸(塩))を主成分とすることが好ましい。
本形態の単量体水溶液は、吸水性樹脂の吸水特性を向上させる観点から、内部架橋剤をさらに含むことが好ましい。
本形態の単量体水溶液は、重合安定性の面から、重合禁止剤をさらに含むことが好ましい。重合禁止剤としては、例えば、メトキシフェノール類が挙げられ、なかでもp−メトキシフェノールを使用することが好ましい。重合禁止剤の添加量は、単量体に対して、好ましくは1〜250ppmであり、より好ましくは5〜200ppmであり、さらに好ましくは10〜160ppmであり、さらに好ましくは20〜100ppmである。上記重合禁止剤の添加量が250ppmを超える場合、重合速度や着色(特に初期着色)の問題が生じ、また、重合禁止剤の添加量が1ppm未満の場合、重合安定性に劣るため、好ましくない。
本形態の単量体水溶液は、さらに鉄を含みうる。当該鉄は、単量体水溶液中でイオンの形態で存在する。鉄の含有量は単量体に対してFe2O3換算値として、通常0〜10重量ppmであり、好ましくは0〜5重量ppmであり、より好ましくは0を超えて5重量ppm未満であり、さらに好ましくは0.001〜5重量ppmであり、特に好ましくは0.001〜4重量ppmであり、最も好ましくは0.005〜3重量ppmである。鉄の含有量の制御手法としては、国際公開第2006/109842号パンフレットに開示される手法が採用されうる。
単量体水溶液は、上述の成分以外にも、澱粉、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリエチレンイミンなどの水溶性樹脂または吸水性樹脂を含みうる。これらの水溶性樹脂または吸水性樹脂は、単量体の全量に対して、例えば0〜50重量%、好ましくは0〜20重量%、より好ましくは0〜10重量%、さらに好ましくは0〜3重量%の割合で添加されうる。なお、その他成分を使用して得られたグラフト重合体(例;澱粉アクリル酸グラフト重合体)ないし吸水性樹脂組成物も、本発明ではポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂と総称する。また、各種の発泡剤(炭酸塩、アゾ化合物、気泡など)、界面活性剤、またはこれら以外の各種添加剤等を、例えば0〜5重量%、好ましくは0〜1重量%添加して、吸水性樹脂の諸物性を改善してもよい。
本形態の重合工程における重合反応は、吸水性樹脂の性能や重合反応の制御の容易さの観点から、通常、水溶液重合または逆相懸濁重合など採用されうる。このうち、水溶液重合が好ましく、連続水溶液重合がより好ましい。
上記重合工程で得られた含水ゲル状重合体(以下、単に「含水ゲル」とも称する)は、そのまま乾燥工程に供されてもよいが、重合工程の後で、且つ乾燥工程の前に、必要により粉砕機(ニーダー、ミートチョッパーなど)を用いて細粒化され粒子状にされる。なお、重合工程における重合反応が逆相懸濁重合である場合は、重合時に溶媒中での分散によって含水ゲルが細粒化されるため、細粒化工程を要しない場合がある。
本形態の吸水性樹脂の製造方法は、含水ゲルの乾燥工程に特徴を有する。すなわち、本発明者らは高固形分(必須に35重量%以上、好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは45重量%以上)の含水ゲルを連続通気ベルト式乾燥機を用いて乾燥する際に通気ベルトの幅方向に対して、含水ゲルの厚みを変化させることで上記課題が解決できること見出し、本発明を完成させるに至った。以下、本乾燥工程について詳細に説明する。
本乾燥工程に供される含水ゲルの固形分は、必須に35重量%以上であり、好ましくは40重量%以上であり、より好ましくは45重量%以上であり、さらに好ましくは50重量%以上であり、特に好ましくは55重量%以上である。固形分の上限値は特に制限されないが、好ましくは80重量%以下であり、より好ましくは75重量%以下であり、さらに好ましくは70重量%以下である。固形分が35重量%よりも低いと、生産性が低くなることがある。また固形分が過度に高いと、吸水倍率などの物性が低下することがある。固形分の調整は、重合時の単量体の濃度や重合時の水等の蒸発量を調節することにより行うことができる。さらに、必要により、重合中や重合後に、後述の粉砕工程・分級工程で得られた微粉末や、当該微粉末に水を添加したものを添加して固形分を制御してもよい。
本形態においては、含水ゲルの乾燥に連続通気ベルト式乾燥機が用いられる。連続通気ベルト式乾燥機は、単一のベルトからなるものであってもよく、複数のベルトを有するものであってもよい。また、連続通気ベルト式乾燥機は、単独の装置であってもよいし、その他の工程の装置と組み合わせた多段階装置として形成されていてもよい。
連続通気ベルト式乾燥機における通気ベルトの移動速度は、ベルト幅やベルト長、吸水性樹脂の乾燥時間や生産量に応じて適宜調整することができるが、ベルト駆動装置の負荷や耐久性等の観点から、好ましくは0.3〜5m/分であり、より好ましくは0.5〜2.5m/分であり、さらに好ましくは0.5〜2m/分であり、特に好ましくは0.7〜1.5m/分である。
本形態において、通気ベルトの開孔率とは、通気ベルトの全面積(孔の面積も含む)に対する、孔の面積の割合(百分率)で規定される。開孔率は孔の面積、数、配置(ピッチ)などにより決定されるが、仮に通気ベルトの一定領域(例えば通気ベルトの淵部分)に孔を有しない場合であっても、当該孔を有しない領域も含めて通気ベルトの全面積とする。該開孔率は、20〜50%であることが好ましく、20〜45%であることがより好ましく、25〜40%であることがさらに好ましい。開孔率が上記範囲内であると、吸水性樹脂の物性および乾燥効率等を向上させることができる。
また、本形態においては、通気ベルトの孔の面積が、乾燥に供される含水ゲルの一粒の断面積より大きいことが好ましく、当該断面積の2〜100倍の面積であることがより好ましく、4〜50倍の面積であることがさらに好ましい。
本明細書において「面積占有率」とは、通気ベルトの面積に対する、通気ベルト上に積載された乾燥前の含水ゲルが通気ベルトに占める面積の割合(百分率)を意味する。具体的には、通気ベルト上に含水ゲルの積載が完了した地点から進行方向に1分間、好ましくは0.5分間、最も好ましくは0.1分間進んだ地点までの通気ベルトの面積で規定される。なお、後述の実施例の面積占有率は、通気ベルト上に含水ゲルの積載が完了した地点から進行方向に0.1分間進んだ地点までの面積において測定した値である。当該面積は、通気ベルトの速度によって適宜決定されるが、例えば、通気ベルト速度が1[m/min]の場合、通気ベルト上に含水ゲルの積載が完了した地点から1m、好ましくは0.5m、最も好ましくは0.1mまでの面積となる。当該通気ベルトの面積を(A)とし、この面積に積載される含水ゲルの占有面積を(B)とした場合に、面積占有率は、B/A×100[%]で表される。
本形態の乾燥工程では、通気ベルト上に積層される含水ゲルの厚みに変化を持たせて、含水ゲルを乾燥する。具体的には、下記式1で表される厚み変化率(1)を所定の範囲に規定する。
(2)幅方向に一定の形状(例;波状、櫛状、ギザギザ状)を有する制御板やローラーを用いて通気ベルト上に供給されたゲルをならす方法;
(3)通気ベルト上に、幅方向の複数箇所(それぞれ供給量を変化させてもよい)から含水ゲルを供給する方法;
(4)通気ベルト上に、複数回に分けて含水ゲル供給する方法。
本形態の乾燥工程において、通気ベルトに積載される、未乾燥状態の含水ゲルの嵩比重は0.7g/cm3未満であることが好ましく、0.6g/cm3未満であることがより好ましく、0.55g/cm3未満であることがさらに好ましく、その下限値としては0.35g/cm3以上であることが好ましい。嵩比重の制御方法としては含水ゲルを所定の高さから落下させて、通気ベルトに散布するする方法が挙げられる。なお、その際に、前記特許文献18のように散布後のゲルをローラーなどで平滑化させると密度の制御が困難である。当該嵩比重は、通気ベルト上に積載された含水ゲルの重量と、レーザー式距離計やレーザー式変位センサーの走査による粒子状含水ゲルの積載物の体積とから算出することにより求めることができる。
連続通気ベルト式乾燥機における乾燥温度は110〜230℃とすることが好ましく、150〜230℃とすることがより好ましく、160℃〜200℃とすることがさらに好ましい。乾燥温度を110〜230℃とすることにより、乾燥時間の短縮と、吸水性樹脂の着色低減の両立が可能となる。なお、乾燥温度は、雰囲気温度により規定される。
乾燥時間は、含水ゲルの表面積、含水率、および乾燥機の種類よって当業者が適宜調製することができる。通常、乾燥時間は10〜120分間であり、好ましくは20〜60分間である。
乾燥工程においては、含水ゲルに、水蒸気を含む空気または不活性気体を接触させる。当該水蒸気混合気体の露点は、乾燥機入口において高く、乾燥機出口において低いことが好ましい水蒸気混合気体の露点は50〜100℃であることが好ましく、50〜70℃であることがより好ましい。この範囲に制御することで残存モノマーを低減させることができる。さらに、乾燥工程において、残存モノマー、吸水特性や着色の観点から、好ましくは10〜50℃、より好ましくは15〜40℃露点が高い熱風を含水ゲルに接触させることが好ましい。この範囲に制御することによって、残存モノマーの低減、吸水特性の向上、着色の抑制が可能となる。以上のように露点を制御することで、吸水性樹脂の嵩比重の低下をも防止できる。
上記特許文献17または特許文献19では重合後の含水ゲルを乾燥前に貯蔵したり、含水ゲルに対して所定の処理を行ったりしており、重合工程後の短時間において固形分を上昇させる技術は開示されていない。
上記乾燥工程の後、得られた乾燥物を必要により粉砕して粒度を調整してもよい。粉砕工程により、上記乾燥工程で得られた乾燥物が粉砕された粉砕物(不定形破砕状の吸水性樹脂粉末)が得られる。後述の表面架橋工程を行う場合は、吸水性樹脂の物性向上のため、粒度を特定の範囲内に制御することが好ましい。
本形態の製造方法においては、上記工程(乾燥工程、粉砕工程または分級工程)で得られた吸水性樹脂粉末を表面架橋する工程をさらに含むことが好ましい。当該表面架橋工程を行うことによって、着色が少なく、より白色である吸水性樹脂を得ることができる。
上述工程以外にも、必要により、多価金属塩の表面処理工程、蒸発モノマーのリサイクル工程、造粒工程、微粉除去工程、微粉リサイクル工程などを設けてもよい。さらに、経時着色の低減(安定性効果の向上)やゲル劣化防止等のために、上述の添加剤を単量体またはその重合体(含水ゲル)に使用してもよい。
本形態の吸水性樹脂の製造方法は、下記(a)〜(f)の物性のうち、少なくとも1つ、好ましくはAAPを含めた2つ以上、より好ましくはAAPを含めた3つ以上を満たす吸水性樹脂を製造する場合に好適である。これらの物性を満たす吸水性樹脂は、衛生材料、特に紙おむつに好ましく適用される。吸水性樹脂がこれらの物性を満たさない場合、吸水性樹脂濃度が40重量%以上の高濃度紙おむつにおいて十分な性能を発揮しないことがある。
本形態の製造方法で得られる吸水性樹脂は、初期着色が少ない。具体的には、ハンターLab表面色系において、L値(Lightness)が好ましくは85以上であり、より好ましくは87以上であり、さらに好ましくは89以上であり;b値が−5から10であり、より好ましくは−5〜9であり、さらに好ましくは−4〜8であり、特に好ましくは−1〜7であり;a値が好ましくは−2〜2であり、より好ましくは−1〜1であり、さらに好ましくは−0.5〜1であり、特に好ましくは0〜1である。YIは好ましくは10以下であり、より好ましくは8以下であり、さらに好ましくは6以下である。WBは好ましくは70以上であり、より好ましくは75以上であり、さらに好ましくは77以上である。さらに、本形態の製造方法で得られる吸水性樹脂は、経時着色も少なく、高温高湿下における長期保存のモデル試験でも十分な白色度を示す。
本形態の製造方法で得られる吸水性樹脂は、0.3psiの加圧下、さらに好ましくは0.7psiの加圧下での0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液に対する吸水倍率(AAP)が、好ましくは10[g/g]以上、よりに好ましくは20[g/g]以上、さらに好ましくは22[g/g]以上、特に好ましくは24[g/g]以上でありうる。AAPは高いほど好ましいが、他の物性とのバランスを考慮すると上限は40[g/g]以下である。AAPが上記範囲であると、紙おむつでのモレを防止することができる。
本形態の製造方法で得られる吸水性樹脂は、加圧下での通液性の一つの指標である0.69%塩化ナトリウム水溶液流れ誘導性(SFC)が、好ましくは1[cm3・s・10−7/g]以上であり、より好ましくは10[cm3・s・10−7/g]以上であり、さらに好ましくは50[cm3・s・10−7/g]以上であり、特に好ましくは70[cm3・s・10−7/g]以上であり、最も好ましくは100[cm3・s・10−7/g]以上でありうる。SFCが上記範囲であると、紙おむつでのモレを防止することができる。
本形態の製造方法で得られる吸水性樹脂は、無加圧下吸水倍率(CRC)が好ましくは10[g/g]以上であり、より好ましくは20[g/g]以上であり、さらに好ましくは25[g/g]以上であり、特に好ましくは30[g/g]以上でありうる。CRCは高いほど好ましく、上限値は特に限定されないが、他の物性とのバランスを考慮すると、好ましくは100[g/g]以下であり、より好ましくは50[g/g]以下であり、さらに好ましくは45[g/g]以下であり、特に好ましくは40[g/g]以下である。
本形態の製造方法で得られる吸水性樹脂は、可溶分が好ましくは0〜35重量%以下であり、より好ましくは25重量%以下であり、さらに好ましくは15重量%以下であり、特に好ましくは10重量%以下でありうる。
本形態の製造方法で得られる吸水性樹脂は、残存モノマー(残存単量体)量が好ましくは0〜400重量ppmであり、より好ましくは0〜300重量ppmであり、さらに好ましくは0〜200重量ppmでありうる。
本形態の製造方法で得られる吸水性樹脂は、固形分が85〜99.9重量%であることが好ましく、90〜99.9重量%であることがより好ましく、95〜99.9重量%であることがさらに好ましい。固形分が上記範囲内に制御されると、吸水性樹脂の物性の低下を防ぐことができる。
本形態の製造方法で得られる吸水性樹脂の用途は、特に限定されにないが、好ましくは紙おむつ、生理ナプキン、失禁パット等の吸収物品や、農園芸用途、廃液固化用途、土木建築用途等に使用されうる。これらの用途のうち、高濃度で吸水性樹脂を使用する吸収物品に使用した場合に、特に優れた性能が発揮される。
国際公開第2009/005114号パンフレット記載された方法により測定した。
予め正確に秤量した吸水性樹脂を、底面の直径が約50mmのアルミカップに量り取り、吸水性樹脂およびアルミカップの総重量W1[g]を測定した。吸水性樹脂の使用量の目安は約1gである。その後、雰囲気温度180℃のオーブン中に3時間静置して乾燥した。3時間後、オーブンから取り出した吸水性樹脂、およびアルミカップをデシケーター中で十分に室温まで冷却した後、乾燥後の吸水性樹脂およびアルミカップの総重量W2[g]を求め、下記式3に従って固形分[重量%]を求めた。
米国特許第5669894号明細書に記載された方法により測定した。
米国特許出願公開第2006/0167198号明細書の記載に従い、GEX値を算出した。GEX値は、無加圧下吸水倍率(CRC)をy[g/g]、可溶分をx(重量%)で表す時下記式4または5で定義される。
ERT/EDANAまたは米国特許出願公開第2006/204755号に記載の方法に従って、0.9%塩化ナトリウム水溶液での無加圧下吸水倍率(CRC)、粒度分布、pH、可溶分、残存アクリル酸量を測定した。
<重合工程>
内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量400)を0.07モル%(対 単量体)含む、75モル%が中和されたアクリル酸部分ナトリウム塩水溶液(単量体濃度38重量%)を単量体水溶液として準備した。容器に当該単量体水溶液を、定量ポンプを用いて、連続的にフィードした。この際、輸送管の途中で窒素ガスを連続的に吹き込み、単量体水溶液中の酸素濃度を0.5ppm以下とした。当該単量体水溶液に、単量体1モル当たり過硫酸ナトリウム0.14gおよびL−アスコルビン酸0.005gをラインミキシングで連続混合した。そして、この混合物を、両端に堰を有する平面スチールベルトに厚み約30mmとなるように供給して、連続的な静置水溶液重合を30分間行い、含水ゲルを得た。
得られた含水ゲルを孔径7mmのミートチョッパーで細分化することにより、重量平均粒子径が1.3mm、固形分39重量%である粒子状含水ゲル(A)を得た。
粒子状含水ゲル(A)(含水ゲル温度60℃、固形分39重量%)を、連続通気ベルト式乾燥機にトラバースフィーダーを用いて、トラバースフィーダーのシーケンスを制御(両端部を高速)することで、連続可動している通気ベルト(パンチングメタル)上に連続的に積載した。そして、通気ベルト上の粒子状含水ゲルを約38分間連続乾燥した。粒子状含水ゲルの厚み・面積占有率、乾燥機、および乾燥条件等は以下の通りである。
合計6室の互いに独立して熱風条件を調整できる乾燥室を有し、この乾燥室を通気ベルトが通過する連続通気ベルト式乾燥機を使用した。なお、通気ベルトのベルト長は17mであり、ベルト幅は1.2mであり、連続通気ベルトの移動速度は0.25m/分であった。
乾燥室の熱風温度は170℃、熱風の線速は1.0m/秒に設定した。また、熱風に水蒸気を混合することにより露点を調整し、乾燥機入口の乾燥室(第一室)の露点を80℃、乾燥機出口付近の乾燥室(第六室)の露点を20℃に調整した。なお、線速は1.0[m/秒]において、第一室の風向きは底面から上向き、第六室の風向きは乾燥機上部から底面への下向きとした。
通気ベルトの材質はSUS304であり、開孔率は33%であり、孔の平均面積は16mm2であった。
トラバースフィーダーにより通気ベルト上に積載された粒子状含水ゲル(A)は、厚み変化率(1)が1.41であり、厚み変化率(2)が1.33であった。また、含水ゲルの厚みの平均値は10.5cmであり、面積占有率(および幅占有率)は95%であった。なお、通気ベルト上に積載された粒子状含水ゲルの厚みの測定は、レーザー式変位センサーを用いて行った。
前記乾燥後、乾燥物の全量を3段ロールミル(ロールギャップが上から1.0mm/0.55mm/0.42mm)に連続供給することで粉砕した後、目開き850μmの金属篩網を有する篩い分け装置で分級し吸水性樹脂(1)を得た。なお、粉砕後、ロールミルの表面には未乾燥物由来の付着物はなかった。吸水性樹脂(1a)の分析結果を表1に示す。
得られた吸水性樹脂(1)を、定量供給機を用いて、高速連続混合機に1500kg/hrの割合で連続供給した。そして、吸水性樹脂100重量部に対して、1、4−ブタンジオール0.3重量部、プロピレングリコール0.5重量部、純水2.7重量部の混合液からなる表面処理剤溶液をスプレーで噴霧し混合した。
実施例1の重合工程において、単量体水溶液の単量体濃度を45重量%、過硫酸ナトリウムの使用量を単量体1モル当たり0.1gとし、L−アスコルビン酸を使用しなかったこと以外は、同様の操作を行い、粒子状含水ゲル(B)を得た。粒子状含水ゲル(B)の重量平均粒子径は1.2mm、固形分は46重量%であった。
実施例1の乾燥工程において、乾燥機の第一室の露点を55℃、第六室の露点を60℃に調整した。通気ベルトは開孔率が52%であり、孔の平均面積が8mm2であるものを使用した。トラバースフィーダーにより通気ベルト上に積載された粒子状含水ゲル(A)の厚み変化率(1)を5.51、厚み変化率(2)を3.80、厚みの平均値を14.6cm、面積占有率(および幅占有率)を84%とした。これ以外は実施例1と同じ操作で乾燥を行った。
比較例1の乾燥工程において、トラバースフィーダーにより通気ベルト上に積載された粒子状含水ゲル(A)の厚み変化率(1)を1.02、厚み変化率(2)を1.01、厚みの平均値を8.6cm、面積占有率(および幅占有率)を82%とした以外は、比較例1と同様の操作で乾燥を行った。
110 粒子状含水ゲル、
200 トラバースフィーダー(別称;首ふりフィーダー)、
300 通気乾燥機、
310 連続通気ベルト、
320 乾燥用バット、
θ 首ふり角度。
Claims (20)
- 単量体水溶液を重合反応に供して含水ゲルを得る重合工程と、
前記含水ゲルを乾燥させる乾燥工程と、を含む吸水性樹脂の製造方法であって、
前記乾燥工程における乾燥が、連続通気ベルト式乾燥機を用いて行われるものであり、
前記乾燥工程に供される含水ゲルの固形分が35重量%以上であり、
前記連続通気ベルト式乾燥機における通気ベルトに積載された前記含水ゲルの下記式1で表される厚み変化率(1)が1.05〜5である吸水性樹脂の製造方法。
前記通気ベルトの幅方向における含水ゲルの最大厚みとは、幅方向に厚みを連続的に測定した際の最大値を意味し、
前記通気ベルトの幅方向における含水ゲルの平均厚みとは、幅方向に厚みを連続的に測定した際の平均値を意味する。 - 前記連続通気ベルト式乾燥機における通気ベルトに積載された前記含水ゲルの下記式2で表される厚み変化率(2)が1.05〜3.00である、請求項1に記載の製造方法。
前記通気ベルトの両端部とは、通気ベルトの両端のそれぞれから、通気ベルトの幅全体に対して1/3の幅の部分を意味し、
前記通気ベルトの中央部とは、前記通気ベルトの両端部以外の部分を意味する。 - 前記通気ベルトがパンチングメタルである、請求項1〜2のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記通気ベルトの開孔率が20〜50%である、請求項1〜3いずれか1項に記載の製造方法。
- 前記通気ベルトの長さが5〜100mであり、前記通気ベルトの幅が1〜10mであり、前記通気ベルトに積載された前記含水ゲルの厚みが1〜30cmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記乾燥工程後の分級工程によって分離される微粉末または当該微粉末の水添加物を、前記重合工程または前記乾燥工程にリサイクルする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記重合工程の後で、且つ前記乾燥工程の前に、含水ゲルを細粒化する細粒化工程をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記乾燥工程において、前記重合工程後10分以内に、前記含水ゲルの固形分を70重量%以上とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記乾燥工程において、前記重合工程後5分以内に、前記含水ゲルの固形分を65重量%以上とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記乾燥工程における乾燥が、前記含水ゲルを、温度150〜230℃、風速3m/秒以下の熱風に曝すことにより行われるものである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記単量体水溶液がメトキシフェノール類を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記連続通気ベルト式乾燥機が、5室以上の乾燥室を有する連続通気ベルト式乾燥機である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記乾燥工程において、乾燥に供する含水ゲルの固形分が45〜80重量%である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記乾燥工程において、乾燥によって固形分93重量%以上となった含水ゲルをさらに5分以上加熱乾燥する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の製造方法。
- 乾燥工程において、乾燥工程前半よりも乾燥工程後半の露点を低く制御する請求項1〜14のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記単量体がアクリル酸(塩)を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記乾燥工程後に、粉砕工程、分級工程および表面架橋工程をさらに含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記吸水性樹脂がポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂であり、下記(a)〜(c)の少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の吸水性樹脂の製造方法;
(a)無加圧下吸水倍率(CRC)が20〜100g/gである;
(b)加圧下吸水倍率(AAP0.3psiまたはAAP0.7psi)が10g/g以上40g/g以下である;
(c)生理食塩水流れ誘導性(SFC)が10(10-7・cm3・s・g-1)以上である。 - 前記含水ゲルを非等速のトラバースフィーダーを用いて連続通気ベルト式乾燥機に積載し、かつ、トラバースフィーダーの周速(m/s)が通気ベルトの中央部より両端部で高速度となっている、請求項1〜18のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記トラバースフィーダーの、通気ベルト両端部における周速が中央部での周速の1.1〜100倍の高速である、請求項19に記載の製造方法。
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