JP5585533B2 - ガソリンエンジン - Google Patents

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Description

本発明は、少なくとも一部がガソリンからなる燃料と空気との混合気を燃焼室で燃焼させることによりピストンを往復運動させるガソリンエンジンに関する。
従来、ガソリンエンジンの分野では、点火プラグの火花点火により強制的に混合気を着火させる燃焼形態が一般的であったが、近年、このような火花点火による燃焼に代えて、いわゆる圧縮自己着火燃焼をガソリンエンジンに適用する研究が進められている。圧縮自己着火燃焼とは、燃焼室(気筒内)に生成された混合気をピストンで圧縮し、高温・高圧の環境下で、火花点火によらず混合気を自着火させるというものである。圧縮自己着火燃焼は、燃焼室の各所で同時多発的に自着火する燃焼であり、火花点火による燃焼に比べて燃焼期間が短く、より高い熱効率が得られると言われている。
上記圧縮自己着火燃焼が適用されたガソリンエンジンの具体例として、例えば下記特許文献1に開示されたものが知られており、この特許文献1には、エンジンの一部の運転領域で、燃焼室に向けて燃料を複数回に分けて噴射するいわゆる分割噴射を行いながら、混合気を自着火により燃焼させることが開示されている。具体的には、圧縮行程よりも前に噴射された1回目の燃料により、燃料の濃度(混合気の空燃比)が均一な予混合領域を燃焼室に形成するとともに、圧縮行程後半の所定時期に行われる2回目の燃料噴射により、点火プラグの周りに混合気の成層領域を形成する。そして、ピストンが圧縮上死点の近傍に達した時点で、いわゆる着火アシストとして、点火プラグによる火花点火を行う。すると、この火花点火をきっかけに、上記成層領域内のリッチな混合気が燃焼するとともに、その燃焼による燃焼室の高温化をきっかけにして、上記予混合領域内の混合気が自着火により燃焼する。
特開2009−74488号公報
しかしながら、上記特許文献1のように、燃料濃度が均一な予混合領域内に燃料が偏在する成層領域が形成されるように燃料を分割噴射し、その状態で着火アシストを行うようにした場合には、特にエンジン負荷がある程度高まり、噴射されるトータルの燃料が増大したときに、上記予混合領域および成層領域内の両方の混合気がほとんど同時に燃焼することにより、筒内圧力が急上昇し、大きな燃焼騒音が発生するおそれがある。また、部分的に酸素が極端に不足した状態で燃焼が起きるため、多量のスート(炭素質粒子)が発生するおそれもある。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、燃焼騒音やスートの増大を招くことなく、適正に圧縮自己着火燃焼を行うことが可能なガソリンエンジンを提供することを目的とする。
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、少なくとも一部がガソリンからなる燃料と空気との混合気を燃焼室で燃焼させることによりピストンを往復運動させるガソリンエンジンであって、上記ピストンの冠面の中央部に設けられた凹状のキャビティと、上
記キャビティと対向する燃焼室天井の中央部から上記燃料を複数の方向に向けて噴射する多噴口型のインジェクタと、上記インジェクタによる燃料の噴射動作を制御する制御手段とを備え、上記制御手段は、予め設定されたエンジンの特定運転領域において、前段噴射および後段噴射の少なくとも2回に分けて上記インジェクタから燃料を噴射させるとともに、その噴射された燃料と空気との混合気を自着火により燃焼させ、上記前段噴射は、圧縮行程中でかつ上記後段噴射よりも前に燃料を噴射し、その噴射された燃料により、上記ピストンのキャビティよりもボア径方向の外側に位置する燃焼室の外周部に、上記キャビティの内部よりもリッチな混合気を形成するものであり、上記後段噴射は、圧縮行程後期から膨張行程初期までの間の所定時期に燃料を噴射し、その噴射された燃料により、上記前段噴射に基づく混合気の燃焼が上記燃焼室の外周部で既に起きている状態において、上記キャビティの内部に、上記前段噴射の実行時よりもリッチな混合気を形成するものであり、上記特定運転領域における少なくとも低回転側の一部では、上記前段噴射の時期が圧縮行程後期に設定されるとともに、上記後段噴射の時期が圧縮上死点から膨張行程初期までのいずれかに設定されることを特徴とする(請求項1)。
本発明によれば、ピストンの中央部に設けられたキャビティと対向するようにインジェクタが設けられ、そのインジェクタから、圧縮行程以降の少なくとも2回の噴射時期(前段噴射および後段噴射)に分けて燃料が噴射されることにより、燃焼室内の別々の空間(燃焼室の外周部およびキャビティの内部)に分離して混合気が形成されるため、それらの混合気を圧縮上死点付近で独立して自着火、燃焼させることができる。このため、分割噴射された燃料が混じり合って同時に燃焼してしまうといったことがなく、筒内圧力の急上昇による燃焼騒音の増大や、局所的な酸素不足によるスート(炭素質粒子)の増大を効果的に防止することができる。
本発明において、好ましくは、上記キャビティよりもボア径方向の外側に位置するピストン冠面に、ボア径方向の外側に至るほど高さが低くなる平面視円環状の環状凹部が形成される(請求項2)。
この構成によれば、ピストン外周部の環状凹部に、上記前段噴射によって噴射された燃料が受け入れられることにより、その環状凹部の設置部に対応する燃焼室の外周部に、上記前段噴射に基づく混合気を確実に留めておくことができる。この結果、当該前段噴射に基づく混合気を、その後の後段噴射に基づきキャビティ内に形成される混合気から明確に分離することができ、それらの混合気の燃焼独立性をより確実に担保することができる。
上記構成おいて、より好ましくは、上記環状凹部よりもさらにボア径方向の外側に、上記前段噴射により噴射された燃料を上方にガイドする立壁部が形成される(請求項3)。
この構成によれば、上記環状凹部に向けて噴射された前段噴射の燃料を立壁部に沿って上方に巻き上げることにより、燃料を十分に分散および気化・霧化させ、燃焼室の外周部における混合気の形成を効果的に促進することができる。
本発明において、好ましくは、上記キャビティは、その上端の開口面積がキャビティ内部の最大断面積よりも小さくなるように上窄まり状に形成される(請求項4)。
この構成によれば、後段噴射により噴射された燃料に基づく混合気を、上記キャビティ内に確実に留めておくことができ、当該後段噴射に基づく混合気を、それ以前の前段噴射に基づく混合気から明確に分離して形成することができる。
本発明において、好ましくは、上記インジェクタは、その先端に8個以上の噴口を有するとともに、当該8個の噴口を通じて、上記ピストン冠面に近づくほどボア径方向の外側に拡がるように放射状に燃料を噴射するものである(請求項5)。
この構成によれば、上記前段噴射および後段噴射を実行した後、ごく短時間で、周方向にほぼ均一な空燃比をもった混合気を形成することができ、その後の自着火による燃焼を適正に行わせることができる。
本発明において、好ましくは、上記特定運転領域に少なくとも高負荷域が含まれる(請求項6)。
この構成によれば、インジェクタからのトータルの燃料噴射量が多くなり、燃焼騒音の増大等が特に懸念される高負荷域において、上記のような混合気の分離形成を図ることにより、燃焼騒音を効果的に低減しつつ、スートの発生量を抑制することができる。
上記構成において、より好ましくは、上記特定運転領域では、燃焼室で生成された排気ガスをEGR通路を通じて吸気通路に還流させる外部EGRが実行される(請求項7)。
この構成によれば、燃焼室の過度な高温化による異常燃焼の発生を回避しながら、ポンピングロスを効果的に低減し、燃費の改善を図ることができる。
上記構成において、より好ましくは、上記特定運転領域における少なくとも高回転域では、上記前段噴射および後段噴射よりも前に、吸気行程中に燃料を噴射する予備噴射が実行される(請求項8)。
この構成によれば、前段噴射および後段噴射で噴射すべき燃料の量が減るため、噴射すべきトータルの燃料が多く、しかもピストンスピードが速い状況でも、上記前段噴射および後段噴射による混合気の分離形成を的確に図ることができる。
以上説明したように、本発明によれば、燃焼騒音やスートの増大を招くことなく、適正に圧縮自己着火燃焼を行うことが可能なガソリンエンジンを提供することができる。
本発明の一実施形態にかかるガソリンエンジンの全体構成を示す図である。 図1の一部拡大図である。 上記エンジンの制御系を示すブロック図である。 エンジンの運転状態に応じた燃焼形態を選択するための制御マップの一例を示す図である。 図4の第1運転領域(A1)における制御内容を説明するためのタイムチャートである。 図4の第2運転領域(A2)における制御内容を説明するためのタイムチャートである。 図4の第3運転領域(A3)における制御内容を説明するためのタイムチャートである。 (a)〜(f)は、上記第2運転領域(A2)で行われる燃料噴射とそれに基づく混合気の燃焼を模式的に説明するための図である。
(1)エンジンの全体構成
図1は、本発明の一実施形態にかかるエンジンの全体構成を示す図である。本図に示されるエンジンは、走行駆動用の動力源として車両に搭載される往復ピストン型の多気筒ガソリンエンジンである。このエンジンのエンジン本体1は、紙面に直交する方向に並ぶ複数の気筒2(図中ではそのうちの1つのみを示す)を有するシリンダブロック3と、シリンダブロック3の上面に設けられたシリンダヘッド4と、各気筒2に往復摺動可能に挿入されたピストン5とを有している。なお、エンジン本体1に供給される燃料は、ガソリンを主成分とするものであればよく、その中身は、全てガソリンであってもよいし、ガソリンにエタノール(エチルアルコール)等を含有させたものでもよい。
上記ピストン5はコネクティングロッド8を介してクランク軸7と連結されており、上記ピストン5の往復運動に応じて上記クランク軸7が中心軸回りに回転するようになっている。
上記ピストン5の上方には燃焼室6が形成され、燃焼室6に吸気ポート9および排気ポート10が開口し、各ポート9,10を開閉する吸気弁11および排気弁12が、上記シリンダヘッド4にそれぞれ設けられている。なお、図例のエンジンはいわゆるダブルオーバーヘッドカムシャフト式(DOHC)エンジンであり、各気筒につき上記吸気ポート9および排気ポート10が2つずつ設けられるとともに、上記吸気弁11および排気弁12も2つずつ設けられている。
ここで、「燃焼室」とは、狭義には、ピストン5が上死点まで上昇したときに当該ピストン5の上方に形成される空間のことを指すが、本明細書でいう燃焼室6とは、ピストン5の上下位置にかかわらずその上方に形成される空間のことを指すものとする(広義の燃焼室)。
上記吸気弁11および排気弁12は、それぞれ、シリンダヘッド4に配設された一対のカムシャフト(図示省略)等を含む動弁機構13,14によりクランク軸7の回転に連動して開閉駆動される。
上記吸気弁11用の動弁機構13には、CVVL15が組み込まれている。CVVL15は、連続可変バルブリフト機構(Continuous Variable Valve Lift Mechanism)と呼ばれるものであり、吸気弁11のリフト量を連続的に(無段階で)変更するものである。CVVL15は、エンジンの全ての吸気弁11のリフト量を変更できるように設けられており、このCVVL15が駆動されると、各気筒2において一対の吸気弁11のリフト量が同時に変更されるようになっている。
このような構成のCVVL15は既に公知であり、その具体例として、吸気弁11駆動用のカムをカムシャフトの回転と連動して往復揺動運動させるリンク機構と、リンク機構の配置(レバー比)を可変的に設定するコントロールアームと、コントロールアームを電気的に駆動することによって上記カムの揺動量(吸気弁11を押し下げる量)を変更するステッピングモータとを備えたものを挙げることができる(例えば特開2007−85241号公報参照)。
上記排気弁12用の動弁機構14には、吸気行程中に排気弁12を押し下げる機能を有効または無効にするON/OFFタイプの可変バルブリフト機構(Variable Valve Lift Mechanism)であるVVL16が組み込まれている。すなわち、VVL16は、排気弁12を排気行程だけでなく吸気行程でも開弁可能にするとともに、この吸気行程中の排気弁12の開弁動作を実行するか停止するかを切り替える機能を有している。VVL16は、エンジンの全ての排気弁12に対応して設けられており、かつ、各気筒2の一対の排気弁12に対し、それぞれ個別に、吸気行程中の開弁動作を実行または停止できるように構成されている。
このような構成のVVL16は既に公知であり、その具体例として、排気弁12駆動用の通常のカム(排気行程中に排気弁12を押し下げるカム)とは別に吸気行程中に排気弁12を押し下げるサブカムと、このサブカムの駆動力が排気弁12に伝達されるのを有効または無効にするいわゆるロストモーション機構とを備えたものを挙げることができる(例えば特開2007−85241号公報参照)。
上記VVL16の作用により排気弁12が吸気行程中に開弁することで、高温の排気ガスが排気ポート10から燃焼室6に逆流し、燃焼室6の高温化が図られるとともに、燃焼室6に導入される空気(新気)の量が低減される。以下では、このような排気弁12の再開弁(吸気行程中の開弁)による排気ガスの残留操作を、後述する外部EGR装置30による排気ガスの還流操作(外部EGR)と区別して、内部EGRと称する。
上記エンジン本体1のシリンダヘッド4には、点火プラグ20およびインジェクタ21が、各気筒2につき1組ずつ設けられている。
上記インジェクタ21は、燃焼室6をその天井面(燃焼室6を覆うシリンダヘッド4の下面)から臨むように設けられている。インジェクタ21には燃料供給管23が接続されており、この燃料供給管23を通じて供給される燃料(ガソリンを主成分とする燃料)が上記インジェクタ21の先端部から噴射されるようになっている。
上記インジェクタ21は、いわゆる多噴口型のインジェクタであり、その先端部に12個の噴口を有している。これらの噴口の設置部(インジェクタ21の先端部)は、燃焼室6天井の中央部に位置しており、各噴口は、その開口端がボア径方向外側の斜め下方を向くように穿孔されている。このため、上記インジェクタ21の各噴口から燃料が噴射された場合、その燃料は、ピストン5の冠面(上面)に近づくほどボア径方向の外側に拡がるように放射状に噴射されることになる。
上記点火プラグ20は、燃焼室6を上方から臨むように上記インジェクタ21と隣接して配置されており、図外の点火回路からの給電に応じて先端から火花を放電する。
上記エンジン本体1の吸気ポート9および排気ポート10には、吸気通路28および排気通路29がそれぞれ接続されている。すなわち、外部からの吸入空気(新気)が上記吸気通路28を通じて燃焼室6に供給されるとともに、燃焼室6で生成された排気ガス(既燃ガス)が上記排気通路29を通じて外部に排出されるようになっている。
上記吸気通路28は、単一の通路からなる共通通路部28cと、共通通路部28cの下流側端部に設けられたサージタンク28bと、気筒2ごとに分岐して設けられ、上記サージタンク28bと各気筒2の吸気ポート9とを接続する分岐通路部28aとを有している。
上記排気通路29は、単一の通路からなる共通通路部29cと、気筒2ごとに分岐して設けられ、上記共通通路部29cの上流側端部と各気筒2の排気ポート10とを接続する分岐通路部29aとを有している。
上記吸気通路28および排気通路29の間には、排気通路29を通過する排気ガスの一部を吸気通路28に還流させる外部EGR装置30が設けられている。具体的に、外部EGR装置30は、吸気通路28および排気通路29の各共通通路部28c,29cどうしを連通させるEGR通路31と、EGR通路31の途中部に設けられ、その内部を通過する排気ガスの流量を制御するEGRバルブ32と、EGR通路31を通過する排気ガスの温度を冷却する水冷式のEGRクーラ33とを有している。
上記吸気通路28の共通通路部28cには、吸気通路28を通過する吸入空気の量を調節するスロットル弁25が設けられている。ただし、当実施形態では、上記CVVL15により吸気弁11のリフト量が調整され、また、VVL16により燃焼室6に残留する排気ガスの量が調整され、さらには、外部EGR装置30により吸気通路28に還流される排気ガスの量が調整される。したがって、これらの操作に基づいて、スロットル弁25を操作することなく、燃焼室6に導入される空気(新気)の量を調整することが可能である。このため、スロットル弁25は、エンジンの停止時等を除いて、全開もしくはそれに近い値に維持される。
上記排気通路29の共通通路部29cには、排気ガス浄化用の触媒コンバータ35が設けられている。触媒コンバータ35には例えば三元触媒が内蔵されており、排気通路29を通過する排気ガス中の有害成分が上記三元触媒の作用により浄化されるようになっている。
図2は、上記ピストン5の冠面の形状を具体的に説明するための拡大図である。この図2および先の図1に示すように、ピストン5の冠面の中央部には、凹状のキャビティ40が設けられている。キャビティ40は、上記インジェクタ21と対向する上向きの開口部40aを上端に有しており、この開口部40aの面積(開口面積)は、キャビティ40の内部の最大断面積(キャビティ40の各高さ位置における水平方向断面積の最大値)よりも小さく設定されている。すなわち、キャビティ40は、その開口部40aから所定深さまでの範囲において、上方に至るほど内径が狭くなるように上窄まり状に形成されている。
上記キャビティ40よりもボア径方向の外側に位置するピストン5の冠面には、平面視円環状の環状凹部41が、キャビティ40の周囲を取り囲むように設けられている。この環状凹部41は、ボア径方向の外側に至るほど高さが低くなるように形成されており、その最大深さ(最外周部の深さ)は、キャビティ40の深さよりも浅く設定されている。
また、上記環状凹部41よりもさらにボア径方向の外側に位置するピストン5の最外周部には、上記環状凹部41よりも上方に突出した円環状の立壁部42が設けられている。この立壁部42の突出高さは、上記キャビティ40上端の開口部40aを囲む部分(リップ部)と同一に設定されている。
再び図1に戻って、上記エンジン本体1のシリンダブロック3やシリンダヘッド4の内部には、冷却水が流通するウォータジャケット(図示省略)が設けられており、このウォータジャケット内の冷却水の温度を検出するための水温センサSW1が、上記シリンダブロック3に設けられている。
上記シリンダブロック3には、クランク角センサSW2も設けられている。クランク角センサSW2は、クランク軸7と一体に回転するクランクプレート(図示省略)の回転に応じてパルス信号を出力するものであり、このパルス信号に基づいて、クランク軸7の回転角度(クランク角)および回転速度(エンジン回転速度)が検出されるようになっている。
上記シリンダヘッド4には、動弁機構14におけるカムシャフトの角度を検出するためのカム角センサSW3が設けられている。カム角センサSW3は、カムシャフトと一体に回転するシグナルプレートの歯の通過に応じて、気筒判別(各気筒が吸気、圧縮、膨張、排気のいずれの行程にあるかの判別)用のパルス信号を出力するものである。
(2)制御系
図3は、エンジンの制御系を示すブロック図である。本図に示されるECU50は、エンジンの各部を統括的に制御するための装置(本発明にかかる制御手段)であり、周知のCPU、ROM、RAM等から構成されている。
上記ECU50には、エンジンに設けられた各種センサから種々の情報が入力される。すなわち、ECU50は、エンジンに設けられた上記水温センサSW1、クランク角センサSW2、およびカム角センサSW3と電気的に接続されており、これら各センサSW1〜SW3からの入力信号に基づいて、エンジンの冷却水温、クランク角、エンジン回転速度、および気筒判別といった種々の情報を取得する。
また、ECU50には、車両に設けられた各種センサからの情報も入力される。例えば、車両には、運転者により踏み込み操作される図外のアクセルペダルの開度(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサSW4が設けられており、このアクセル開度センサSW4により検出されたアクセル開度が、上記ECU50に入力される。
上記ECU50が有するより具体的な機能について説明すると、上記ECU50は、その主な機能的要素として、判定手段51、インジェクタ制御手段52、吸気制御手段53、内部EGR制御手段54、外部EGR制御手段55、および点火制御手段56を有している。
上記判定手段51は、クランク角センサSW2およびアクセル開度センサSW4の各検出値から特定されるエンジンの回転速度Neおよび負荷T(目標トルク)に基づいて、図4の制御マップにおけるいずれの運転領域でエンジンが運転されているかを判定するものである。
具体的に、図4の制御マップにおいて、負荷Tが比較的低い領域には、全ての回転速度域にわたって第1運転領域A1が設定されている。また、この第1運転領域A1よりも負荷Tが高くかつ回転速度Neが所定値よりも低い領域には、第2運転領域A2が設定されているとともに、上記第1運転領域A1よりも負荷Tが高くかつ回転速度Neが上記所定値よりも高い領域には、第3運転領域A3が設定されている。さらに、上記第1運転領域A1と第2運転領域A2と間、および、第1運転領域A1と第3運転領域A3との間には、それぞれ、第4運転領域A4および第5運転領域A5が設定されている。なお、これら第1〜第5運転領域A1〜A5が設定された図4の制御マップは、基本的に、エンジン水温センサSW1により検出された冷却水温が所定値(例えば80℃)以上となる温間状態のときのものである。エンジンが冷間状態にあるときの制御マップについては、ここでは説明を省略する。
エンジンの運転中においては、エンジンの運転点(負荷Tおよび回転速度Neの各値から特定される制御マップ上でのポイント)が上記図4中のどの運転領域(A1〜A5)に該当するかに応じて、それぞれ適切な燃焼形態が選択されるようになっている。
なお、詳細は後述するが、当実施形態では、エンジンの運転点が上記第1〜第5運転領域A1〜A5のいずれにある場合でも、ピストン5の圧縮作用により混合気を自着火させる燃焼形態(圧縮自己着火燃焼)が選択される。ただし、各運転領域A1〜A5では、インジェクタ21からの燃料噴射時期や、噴射された燃料に基づく混合気の空燃比、さらには内部EGRまたは外部EGRの有無等が異なる。例えば、第1運転領域A1では、吸気行程中に燃料が噴射され、かつ内部EGRが実行されるが、第2および第3運転領域A2,A3では、圧縮行程から膨張行程初期にかけた複数回(または吸気行程から膨張行程初期にかけた複数回)に分けて燃料が噴射され、かつ外部EGRが実行される。このうち、燃料を分割噴射しつつ圧縮自己着火燃焼を実行する第2および第3運転領域A2,A3は、本発明にかかる「特定運転領域」に相当するものである。
上記インジェクタ制御手段52は、上記インジェクタ21から燃焼室6に噴射される燃料の噴射量や噴射時期を制御するものである。具体的に、このインジェクタ制御手段52は、アクセル開度センサSW4の検出値(アクセル開度)等から演算される負荷T(目標トルク)や、クランク角センサSW2から特定されるエンジン回転速度Ne等の情報に基づいて、目標とする燃料の噴射量および噴射時期を演算し、その演算結果に基づいてインジェクタ21の開弁時期および開弁期間を制御する。
上記吸気制御手段53は、上記CVVL15を駆動して吸気弁11のリフト量(開弁量)を変更する制御を行うものである。例えば、吸気制御手段53は、エンジンの負荷Tが高くインジェクタ21からの燃料噴射量が多い場合には、それに合わせて燃焼室6に多量の空気(新気)を導入すべく、吸気弁11のリフト量を増大させる。一方、エンジンの負荷Tが低くインジェクタ21からの燃料噴射量が少ない場合には、新気の量も少なくて済むため、吸気弁11のリフト量は低減される。
上記内部EGR制御手段54は、上記VVL16を駆動して排気弁12の吸気行程中の開弁を実行または停止することにより、燃焼室6に排気ガスを残留(逆流)させる操作(内部EGR)の有無を切り替えるものである。なお、当実施形態において、排気弁12は1気筒あたり2つ設けられているので、吸気行程中に開弁する排気弁12の数を0,1,2の間で切り替えることにより、上記燃焼室6に残留する排気ガスの量(内部EGR量)を段階的に変化させることが可能である。
上記外部EGR制御手段55は、上記EGR通路31に設けられたEGRバルブ32の開度を調節することにより、排気通路29から吸気通路28に排気ガスを還流する操作(外部EGR)の有無を切り替えるとともに、その外部EGRによる排気ガスの還流量(外部EGR量)を制御するものである。
上記点火制御手段56は、上記点火プラグ20が火花放電を行うタイミング(点火時期)等を制御するものである。ただし、当実施形態では、上述したように、図4に示した第1〜第5運転領域A1〜A5のいずれにおいても、火花点火によらず混合気を自着火させる燃焼形態(圧縮自己着火燃焼)が選択されるため、少なくともエンジンの温間時には、点火プラグ20からの火花点火は停止される。すなわち、点火プラグ20は、例えばエンジンの始動時や冷間状態での運転時のように、混合気の自着火が困難な場合(火花点火による強制燃焼が必要な場合)にのみ作動し、それ以外のときは基本的に作動しない。
(3)各運転領域での燃焼形態
次に、以上のような機能を有するECU50の制御に基づき、図4に示した各運転領域(A1,A2,A3,A4,A5)で、それぞれどのような燃焼形態が選択されるのかを説明する。なお、この説明の前提として、エンジンの冷却水温は充分に暖まっている(つまり温間時の運転である)ものとする。この場合は、エンジンの運転点が上記運転領域A1〜A5のいずれにあっても、圧縮自己着火燃焼が選択されることになる。ただし、適切な圧縮自己着火燃焼を行わせるには、インジェクタ21からの燃料噴射時期や、内部EGRまたは外部EGRの有無等を、運転領域A1〜A5によって変化させる必要がある。そのため、ECU50は、上記インジェクタ21、CVVL15、VVL16、およびEGRバルブ32等を、エンジンの運転点を逐次判定しながら制御する。
すなわち、エンジンの運転が開始されると、ECU50は、上記クランク角センサSW2およびアクセル開度センサSW4の各検出値に基づいて、エンジンの運転点(負荷Tおよび回転速度Ne)が図4の制御マップにおけるどの運転領域に該当するかを逐次判定する。そして、判定された運転領域が、図4中の第1〜第5運転領域A1〜A5の中のいずれであるかに応じて、それぞれ以下のような制御を実行する。
(i)第1運転領域A1
図5は、エンジンが第1運転領域A1で運転されている場合の燃料噴射時期と吸排気弁11,12のリフト特性、およびそれに基づく燃焼により生じる熱発生率(J/deg)を示す図である。本図に示すように、第1運転領域A1では、圧縮行程の前に噴射された燃料と空気との混合気をピストン5の圧縮作用によって自着火させる、一般的な予混合圧縮自己着火燃焼が実行される。具体的に、この第1運転領域A1では、吸気行程中の所定時期にインジェクタ21から燃焼室6に燃料が噴射(P)され、この燃料噴射Pにより噴射された燃料と、吸気通路28から燃焼室6に導入される空気(新気)との混合気が、ピストン5の圧縮作用により高温、高圧化し、圧縮上死点(圧縮行程と膨張行程の間のTDC)付近で自着火する。すると、このような自着火に基づき、波形Qaに示すような熱発生を伴う燃焼が生じることになる。
ただし、第1運転領域A1は、負荷Tが比較的低く、インジェクタ21から噴射される燃料の量が少ないため、筒内温度を意図的に上昇させないと、失火が起きるおそれがある。そこで、上記第1運転領域A1では、VVL16を駆動して排気弁12を吸気行程中に開弁させることにより、燃焼室6で生成された排気ガスを燃焼室6に逆流させる内部EGRが実行される。すなわち、排気弁12は、通常、排気行程のみで開弁するが(図5のリフトカーブEX)、VVL16の駆動に基づき排気弁12を吸気行程でも開弁させることにより(リフトカーブEX’)、排気ポート10から燃焼室6に排気ガスを逆流させる。このように、高温の排気ガスを燃焼室6に逆流(残留)させることで、燃焼室6を高温化して、混合気の自着火を促進する。なお、燃焼室6に残留する排気ガスの量(内部EGR量)は、低負荷側ほど多く、高負荷側ほど少なく設定される。そのための制御として、例えば、第1運転領域A1における低負荷域(無負荷に近い領域)では、吸気行程中に開弁する排気弁12の数が2つとされ、それよりも負荷が高くなると、開弁数が1つに減らされる。
上記のように、第1運転領域A1では、排気弁12の再開弁(吸気行程中の開弁)に基づく内部EGRが実行されるため、外部EGRについては停止される。すなわち、EGR通路31に設けられたEGRバルブ32の開度が全閉に設定されることにより、排気通路29から吸気通路28への排気ガスの還流が停止される。
また、上記第1運転領域A1では、燃焼室6内の混合気の空燃比(実空燃比)を理論空燃比(14.7)で割った値である空気過剰率λが、2以上という大幅にリーンな値に設定される。そのため、CVVL15の駆動により吸気弁11(リフトカーブIN)のリフト量を増減する制御が実行され、燃焼室6に導入される新気の量が、上記インジェクタ21からの燃料噴射量に対しかなり過剰になるように制御される。このように大幅にリーンに設定された混合気を燃焼させた場合、燃焼温度が大幅に低下するため、冷却損失を低減して熱効率(燃費)を向上させることができる。なお、λ≧2にまでリーンになると、三元触媒によるNOxの浄化作用はほとんど期待できなくなるが、λ≧2での燃焼により生じるNOx量(生のNOx量)は大幅に少なくなるため、三元触媒以外に特別な触媒(例えばNOxトラップ触媒)を設けなくても、排気ガス中に含まれるNOxの量を十分に小さい値に抑制することができる。
(ii)第2運転領域A2
上記第1運転領域A1よりも負荷Tが高く、かつ回転速度Neが比較的低い領域に設定された第2運転領域A2では、図6に示すような制御が実行される。すなわち、第2運転領域A2では、圧縮上死点付近とそれより前の圧縮行程中の所定時期とに設定された2回の噴射タイミング(P1,P2)に分けてインジェクタ21から燃料を噴射させる分割噴射が実行される。以下では、圧縮行程中に実行される1回目の燃料噴射P1を前段噴射、それより後の圧縮上死点付近(図例では膨張行程のごく初期)に実行される2回目の燃料噴射P2を後段噴射と称する。
具体的に、上記第2運転領域A2において、前段噴射P1のタイミングは、圧縮上死点(TDC)を基準として、その上死点前(BTDC)60〜50°CA(CAはクランク角を表す)程度の期間内に設定され、後段噴射P2のタイミングは、上死点後(ATDC)0〜10°CA程度の期間内に設定される。また、前段噴射P1および後段噴射P2による各噴射量の割合については、前段噴射P1が10%以下で後段噴射P2が90%以上に設定されるパターンから、前段噴射P1が60%程度で後段噴射P2が40%程度に設定されるパターンまで、運転条件等により適宜の割合に設定される。
上記前段噴射P1および後段噴射P2によるトータルの噴射量は、第2運転領域A2に対応する高い負荷に合わせて、第1運転領域A1のとき(燃料噴射Pによる噴射量)よりも増大される。また、このように増大設定される燃料噴射量に応じた多量の新気を燃焼室6に導入すべく、CVVL15が駆動されて吸気弁11のリフト量が増大される(リフトカーブIN)。そして、上記のように分割噴射された燃料と空気(新気)との混合気が圧縮上死点付近で自着火することにより、図中の波形Qbに示すように、時期の異なる2つのピークを有するような熱発生を伴う燃焼が生じる。なお、このような波形Qbの形状はあくまで概念的なものであり、実際には2つのピークが明確に現れない場合も当然にあり得る。
上記のように前段噴射P1および後段噴射P2に分けて燃料を噴射するようにしたのは、燃焼騒音等の問題を考慮してのものである。すなわち、燃料噴射量の多い上記第2運転領域A2では、燃料を1回で噴射してしまうと、噴射された多量の燃料が短時間で全て燃焼する急激な燃焼が起きることにより、筒内圧力が急上昇し、燃焼騒音が著しく増大する等の事態を招くおそれがある。そこで、上記のように燃料を分割噴射することにより、比較的マイルドな燃焼が継続的に起きるようにして、上記のような燃焼騒音の増大等を回避するようにしている。
ただし、たとえ燃料噴射を複数回に分割しても、インジェクタ21の配置やピストン5の形状によっては、各回に噴射された燃料どうしが混じり合い、その混じり合った燃料がほとんど同時に燃焼することがある。このように、噴射タイミングが異なる燃料どうしが混じり合った状態で燃焼が起きると、燃焼騒音が過大になるばかりでなく、燃焼時に必要な酸素が局所的に著しく不足し、多量のスート(炭素質粒子)が発生するおそれがある。
このような問題に対し、当実施形態では、インジェクタ21が燃焼室6天井の中央部に配置されるとともに、ピストン5の冠面がキャビティ40等を有する特殊な形状に形成されているため、分割噴射された燃料が一緒に燃焼してしまうことがなく、上記のような燃焼騒音の増大やスートの大量発生を回避することが可能である(その詳細なメカニズムについては後述する)。
また、上記第2運転領域A2では、上記のような燃料の分割噴射制御に加えて、吸気行程中に排気弁12を押し下げる機能を無効にするようにVVL16が駆動され、排気弁12の吸気行程中の開弁が停止される。これにより、排気ガスが燃焼室6に逆流することがほとんどなくなり、内部EGRが禁止される。
一方、第2運転領域A2では、上記のように禁止された内部EGRに代わり、外部EGRが実行される。すなわち、EGR通路31に設けられたEGRバルブ32が所定開度まで開かれることにより、排気通路29から吸気通路28へ排気ガスを還流させる操作が実行される。
このように、内部EGRから外部EGRへと切り替えるのは、燃焼室6の過度の高温化を防いで異常燃焼を回避するためである。すなわち、第2運転領域A2は、第1運転領域A1よりもエンジン負荷Tが高く、噴射されるトータルの燃料が多いため、燃焼に伴い発生する熱量が増大し、燃焼室6が高温化する傾向にある。このため、仮に第2運転領域A2でも内部EGRを継続したのでは、燃焼室6がますます高温化し、プリイグニッションやノッキング等の異常燃焼が起きるおそれがある。そこで、内部EGRから外部EGRに切り替えて、EGRクーラ33付きのEGR通路31を通過した(つまりEGRクーラ33により冷却された)排気ガスを吸気通路28に還流させることにより、燃焼室6の過度な高温化を防ぎ、上記のような異常燃焼を回避するようにしている。ただし、第2運転領域A2であっても、エンジンの全負荷近傍では、多量の新気を確保するために、外部EGRは停止される。
ここで、以上のような制御に基づき実現される第2運転領域A2での燃焼形態について、図8(a)〜(f)を参照しつつより具体的に説明する。図8(a)は、インジェクタ21から前段噴射P1が行われたときの状態を示している。このときのピストン5は、上述したように、圧縮上死点前(BTDC)60〜50°CA程度に位置している。このような位置にあるピストン5の冠面に向けて、上記インジェクタ21の先端部に備わる複数(12個)の噴口から放射状に燃料が噴射されると、その燃料の噴霧は、ピストン5の冠面のボア径方向の外側寄りに設けられた環状凹部41に向かうことになる。
上記ピストン5の環状凹部41に向けて噴射された燃料(噴霧)は、その後、ピストン5の最外周部に設けられた立壁部42により上方にガイドされながら分散し、その分散した燃料に基づき、図8(b)に示すように、燃焼室6の外周部(主に環状凹部41の内部およびその上方空間)に混合気X1が形成される。ここで形成される混合気X1の空燃比は、燃焼室6の外周部だけの局所的な空燃比として、理論空燃比(空気過剰率λ=1)程度に設定される。すなわち、理論空燃比程度の濃さの混合気X1が燃焼室6の外周部に局所的に形成されるように、上記前段噴射P1の噴射時期および噴射量が設定されている。
もちろん、上記前段噴射P1によって、燃焼室6の外周部以外(例えばキャビティ40の内部)にも微量の燃料が存在し得るが、その燃料の濃度は、上記燃焼室6の外周部に比べれば極めて薄いものである。言い換えれば、前段噴射P1が実行された時点で、燃焼室6の外周部には、キャビティ40の内部よりもリッチな混合気X1が形成されていることになる。
上記のように燃焼室6の外周部に形成された混合気X1は、ピストン5の上昇により圧縮されて高温・高圧化し、圧縮上死点付近までピストン5が達したところで、図8(c)に示すように自着火により燃焼する(圧縮自己着火)。なお、同図では、混合気X1が燃焼している領域を黒またはグレーに着色して示している。この混合気X1が燃焼する領域Y1は、上記混合気X1が形成された領域に対応して、燃焼室6の外周部分に限られる。
上記のような前段噴射P1に基づく燃焼が始まると、それと前後して(図例では前段噴射P1に基づく燃焼開始とほぼ同時に)、図8(d)に示すような後段噴射P2が実行される。この後段噴射P2のタイミングは、上述したように、ピストン5がその上昇端に至った時点(圧縮上死点)とほぼ同時かその直後のATDC0〜10°CA程度である。このようなタイミング(圧縮上死点付近)でインジェクタ21から燃料が噴射されると、その燃料の噴霧は、ピストン5の冠面の中央部に設けられたキャビティ40の内部へと向かうことになる。すると、このキャビティ40の内部に向けて噴射された燃料(噴霧)は、キャビティ40の周壁に沿って上方にガイドされながら分散し、その分散した燃料に基づき、図8(e)に示すように、燃焼室6の中央部(主にキャビティ40の内部)に混合気X2が形成される。この混合気X2の局所的な空燃比も、上述した前段噴射P1に基づく混合気X1と同様、理論空燃比(空気過剰率λ=1)程度に設定される。言い換えれば、上記後段噴射P2により、キャビティ40の内部には、前段噴射P1の実行時よりもリッチな(より具体的には、前段噴射P1により噴射された燃料に基づきキャビティ40内に形成される極めて薄い混合気の空燃比よりもリッチな)混合気X2が形成されていることになる。
上記のような後段噴射P2に基づく混合気X2は、ピストン5が圧縮上死点に近く、しかも前段噴射P1に基づく混合気X1の燃焼が既に起きている状態で形成されるものである。このため、上記混合気X2は、図8(f)に示すように、後段噴射P2の後、短い時間で自着火に至り、燃焼する。この混合気X2が燃焼する領域Y2は、上記混合気X2が形成された領域に対応して、燃焼室6の中央部に限られる。すなわち、上述した前段噴射P1に基づく混合気X1が、環状凹部41の設置部に対応する燃焼室6の外周部分(燃料領域Y1)で燃焼するのに対し、後段噴射P2に基づく混合気X2は、キャビティ40の設置部に対応する燃焼室6の中央部(上記燃料領域Y1よりもボア径方向の中心寄りに位置する燃焼領域Y2)で燃焼することになる。
以上のように、第2運転領域A2では、負荷Tに応じた比較的多量の燃料を複数回(前段噴射P1および後段噴射P2)に分けて噴射することで、別々の空間に混合気(X1,X2)を形成し、それらを独立して自着火、燃焼させるようにしている。このような制御が行われる上記第2運転領域A2では、分割噴射された燃料が混じり合って同時に燃焼してしまうことがないため、筒内圧力の急上昇による燃焼騒音の増大や、局所的な酸素不足によるスートの増大を招く心配がない。しかも、前段噴射P1および後段噴射P2に基づく混合気X1,X2は、それぞれ局所的にλ=1程度の空気過剰率に設定されるので、そのような環境下の燃焼により生成された排気ガスであれば、三元触媒のみによって十分に有害成分の浄化が可能である。
(iii)第3運転領域A3
上記第1運転領域A1よりも負荷Tが高く、かつ第2運転領域A2よりも回転速度Neが高い第3運転領域A3では、図7に示すような制御が実行される。すなわち、第3運転領域A3では、インジェクタ21からの燃料が、吸気行程から圧縮上死点付近にかけた3回の時期に分けて噴射される(P0,P1,P2)。このうち、圧縮行程中に実行される2回目の燃料噴射P1と、それより後の圧縮上死点付近(図例では膨張行程のごく初期)に実行される3回目の燃料噴射P2とは、それぞれ、先に説明した第2運転領域A2における前段噴射P1および後段噴射P2(図6)にそれぞれ対応している。一方、吸気行程中に実行される1回目の燃料噴射P0は、第2運転領域A2では行われない噴射であり、第3運転領域A3に特有のものである。よって、以下では、第3運転領域A3における1回目の燃料噴射P0を予備噴射、2回目の燃料噴射P1を前段噴射、3回目の燃料噴射P2を後段噴射と称する。
上記第3運転領域A3で実行される前段噴射P1および後段噴射P2は、第2運転領域でのそれと同様の役割を果たすものである。すなわち、圧縮行程中に実行される前段噴射P1により、図8(b)に示したような、燃焼室6の外周部に偏在する混合気X1が形成され、圧縮上死点付近で実行される後段噴射P2により、図8(e)に示したような、燃焼室6の中央部に偏在する混合気X2が形成される。
ただし、第3運転領域A3では、第2運転領域A2のときよりもエンジン回転速度Neが高く、ピストンスピードが速いため、インジェクタ21からの噴射燃料がピストン5の冠面付近に達するまでの間にピストン5が比較的大きく移動する。このことを考慮して、上記前段噴射P1および後段噴射P2の時期は、第2運転領域A2のときよりも若干早めに設定される。これにより、エンジン回転速度Neの相違にかかわらず、上記各噴射P1,P2に基づく混合気X1,X2が図8(b),(e)に示したのと同様の場所に別々に形成され、それらの混合気が独立して自着火、燃焼するようになる(図8(c),(f))。
一方、上記第3運転領域A3で、前段噴射P1および後段噴射P2に加えて、吸気行程中に実行される予備噴射P0を追加しているのは、エンジン回転速度Neが比較的高い第3運転領域A3では、短期間のうちに所要量の燃料を噴射し切ることが困難だからである。すなわち、エンジン回転速度Neが高い第3運転領域A3では、相対的に回転速度Neが低い第2運転領域A2のときと異なり、ピストンスピードが速いため、同じ時間をかけて所要量の燃料を噴射しようとしても、その間にピストン5の位置が大きく変化してしまい、ピストン5と燃料の噴霧との位置関係が崩れてしまうおそれがある。
例えば、上記第3運転領域A3において、第2運転領域A2のときと同量の燃料を前段噴射P1によって噴射しようとすれば、インジェクタ21からの燃料噴射動作(インジェクタ21の噴口を開いてそこから燃料を噴射させる動作)を、第2運転領域A2のときと同じ期間だけ継続させる必要があるが、ピストンスピードの速い第3運転領域A3では、燃料の吹き始めから吹き終わりまでの間にピストン5の位置が大きく上昇することにより、図8(a)に示したような適正な位置関係が崩れ、噴霧の方向がピストン5の環状凹部41から外れてしまうおそれがある。このような事態が生じると、上記環状凹部41の設置部に対応する燃焼室6の外周部分に混合気X1を確実に偏在させることができず、その後の圧縮上死点以降において、前段噴射P1および後段噴射P2に基づく混合気X1,X2を十分に独立して燃焼させることができなくなると考えられる。
そこで、上記のような事態を確実に回避すべく、第3運転領域A3では、まず吸気行程中に予備噴射P0を実行して少量の燃料を噴射し、その後の圧縮行程中および圧縮上死点付近において、前段噴射P1および後段噴射P2をそれぞれ実行するようにしている。これにより、前段噴射P1および後段噴射P2により噴射すべき燃料の量が減るので、その燃料の噴射に要する時間も減り、上述したような不具合(燃料噴射中にピストン5の位置が大きく変化することによる不具合)が回避される。
上記のように予備噴射P0、前段噴射P1、および後段噴射P2の3回に分けて燃料を噴射した場合、予備噴射P0によって予め燃焼室6に形成された極めてリーンな混合気中に、前段噴射P1および後段噴射P2による燃料が追加的に噴射されることとなる。すると、燃焼室6では、その外周部および中央部(キャビティ40の内部)に、予備噴射P0、前段噴射P1、および後段噴射P2に基づくλ=1程度のリッチな混合気が形成される一方、それ以外の領域では、予備噴射P0のみに基づく極めてリーンな混合気(例えばλ=2を大幅に超えるような混合気)が形成される。
この場合でも、上記前段噴射P1により噴射された燃料と、後段噴射P2により噴射された燃料とは、基本的に混じり合うことなく、別々の場所で(燃焼室6の外周部およびキャビティ40の内部で)独立して燃焼することになる。これにより、燃焼室6全体としては、図6の波形Qcに概念的に示すように、時期の異なる2つのピークを有するような熱発生を伴う燃焼が生じる。また、上記のような空燃比の混合気が燃焼した場合、生成される排気ガスは、三元触媒により十分に浄化可能なものか、もしくはNOx生成量の極めて少ないものとなるので、エミッション性については問題なくクリアされる。
なお、図7に示すように、上記第3運転領域A3では、上記のような燃料の分割噴射に関する制御を除けば、第2運転領域A2のときとほぼ同様の制御が実行される。例えば、第3運転領域A3では、排気弁12を吸気行程中に開弁させる(排気ガスを燃焼室6に逆流させる)内部EGRが禁止されるとともに、EGR通路31を通じて排気ガスを吸気通路28に還流させる外部EGRが実行される。ただし、エンジンの全負荷近傍では、多量の新気を確保するために、外部EGRは禁止される。
(iv)第4運転領域A4および第5運転領域A5
上記第4運転領域A4および第5運転領域A5は、第1運転領域A1と第2運転領域A2との間、または第1運転領域A1と第3運転領域A3との間に位置する領域であるから、上述の(i)〜(iii)で説明した各制御内容の中間的な制御が実行される。
具体的に、第4運転領域A4では、インジェクタ21からの燃料噴射時期が、第1運転領域A1での燃料噴射時期よりもリタードされ、例えば圧縮行程中の1回に設定される。そのときの噴射量は、第1運転領域A1のときと同様、空気過剰率λが2以上になるように設定される。また、EGR通路31を通じて排気ガスを吸気通路28に還流させる外部EGRが実行される。
一方、第5運転領域A5では、圧縮行程中の所定時期およびそれより後の圧縮上死点付近の2回に分けて燃料を噴射する制御が実行される。そのときの噴射量は、空気過剰率λが局所的にλ=1程度になるように設定される。また、吸気行程中の排気弁12の開弁により排気ガスを燃焼室6に逆流させる内部EGRが実行される。
(4)作用効果等
以上説明したように、当実施形態のガソリンエンジンでは、ピストン5の冠面の中央部に凹状のキャビティ40が設けられるとともに、キャビティ40と対向する燃焼室6天井の中央部から放射状に燃料(ガソリンを主成分とする燃料)を噴射する多噴口型のインジェクタ21がシリンダヘッド4に設けられている。このエンジンの運転領域のうち、高負荷域を含む第2、第3運転領域A2,A3(特定運転領域)では、圧縮行程中に設定された前段噴射P1と、それより後の圧縮上死点付近に設定された後段噴射P2との少なくとも2回に分けて燃料を噴射する制御が実行される。そして、前段噴射P1が実行されると、その時点において、ピストン5のキャビティ40よりもボア径方向の外側に位置する燃焼室6の外周部に、キャビティ40の内部よりもリッチな(λ=1程度の)混合気X1が形成され、また、後段噴射P2が実行されると、上記キャビティ40の内部に、上記前段噴射P1の実行時よりもリッチな(混合気X1と同様のλ=1程度の)混合気X2が形成されるようになっている。このような構成によれば、比較的負荷Tの高い上記第2、第3運転領域A2,A3(特定運転領域)において、燃焼騒音やスート(炭素質粒子)の増大を伴わない適正な圧縮自己着火燃焼を行わせることができる。
すなわち、上記実施形態では、ピストン5冠面の中央部に設けられたキャビティ40と対向するようにインジェクタ21が設けられ、そのインジェクタ21から、圧縮行程以降の少なくとも2回の噴射時期(前段噴射P1および後段噴射P2)に分けて燃料が噴射されることにより、図8(a)〜(f)に示したように、燃焼室6内の別々の空間(燃焼室6の外周部およびキャビティ40の内部)に分離して混合気X1,X2が形成されるため、それらの混合気X1,X2を圧縮上死点付近で独立して自着火、燃焼させることができる。このため、分割噴射された燃料が混じり合って同時に燃焼してしまうといったことがなく、筒内圧力の急上昇による燃焼騒音の増大や、局所的な酸素不足によるスートの増大を効果的に防止することができる。
特に、比較的負荷Tの高い上記第2、第3運転領域A2,A3では、インジェクタ21から噴射する必要のあるトータルの燃料が多くなるため、仮に分割噴射された燃料が混じり合って同時に燃焼したとすると、筒内圧力が急激に上昇してかなり大きな燃焼騒音が発生するとともに、多量のスートが発生することが懸念される。しかしながら、上記実施形態のように、分割噴射された燃料を別々の空間に分離しながら独立して燃焼させた場合には、上記のような問題を効果的に回避することができ、燃焼騒音を低減しつつエミッション性を向上させることができる。
また、上記実施形態では、キャビティ40よりもボア径方向の外側に位置するピストン5の冠面に、ボア径方向の外側に至るほど高さが低くなる平面視円環状の環状凹部41が形成されているため、上記前段噴射P1および後段噴射P2に基づく各混合気X1,X2の空間分離をより確実に図ることができる。
すなわち、キャビティ40よりもボア径方向の外側に環状凹部41が設けられていれば、上記前段噴射P1によって噴射された燃料が上記環状凹部41に受け入れられることにより、その環状凹部41の設置部に対応する燃焼室6の外周部に、上記前段噴射P1に基づく混合気X1を確実に留めておくことができる。この結果、当該前段噴射P1に基づく混合気X1を、その後の後段噴射P2に基づきキャビティ40内に形成される混合気X2から明確に分離することができ、それらの混合気X1,X2の燃焼独立性をより確実に担保することができる。
特に、上記実施形態では、上記環状凹部41よりもさらにボア径方向の外側に、上記前段噴射P1により噴射された燃料を上方にガイドする立壁部42が設けられているため、上記環状凹部41に向けて噴射された前段噴射P1の燃料を立壁部42に沿って上方に巻き上げることにより、燃料を十分に分散および気化・霧化させ、燃焼室6の外周部における混合気X1の形成を効果的に促進することができる。
また、上記実施形態では、キャビティ40が上窄まり状に形成され、その上端の開口部40aの面積がキャビティ40内部の最大断面積よりも小さく設定されているため、後段噴射P2により噴射された燃料に基づく混合気X2を、上記キャビティ40の内部に確実に留めておくことができ、当該後段噴射P2に基づく混合気X2を、それ以前の前段噴射P1に基づく混合気X1から明確に分離して形成することができる。
また、上記実施形態では、前段噴射P1および後段噴射P2による燃料の分割噴射が実行される運転領域(第2、第3運転領域A2,A3)において、燃焼室6で生成された排気ガスを吸気通路28からEGR通路31を通じて排気通路29に還流させる外部EGRを実行するようにしたため、ポンピングロスを効果的に低減し、燃費を改善することができる。なお、ポンピングロスの低減は、排気ガスを燃焼室6に残留させる内部EGRによっても同様に得ることができるが、比較的負荷の高い上記第2、第3運転領域A2,A3では、燃料噴射量が多いため、高温の排気ガスをそのまま燃焼室6に残留させると、燃焼室6が過度に高温化し、プリイグニッションやノッキング等の異常燃焼が起きるおそれがある。これに対し、上記実施形態では、内部EGRではなく、EGR通路31を通じて排気ガスを還流させる外部EGRを実行するようにしたため、燃焼室6の過度な高温化による異常燃焼の発生を回避しながら、ポンピングロスの低減を図ることができる。
また、上記実施形態では、上記分割噴射が実行される第2、第3運転領域A2,A3のうち、相対的に高回転側に位置する第3運転領域A3において、上記前段噴射P1および後段噴射P2よりも前に、吸気行程中に燃料を噴射する予備噴射P0を実行するようにした。このような構成によれば、噴射すべきトータルの燃料が多く、しかもピストンスピードが速い状況でも、上記前段噴射P1および後段噴射P2による混合気X1,X2の分離形成を的確に図ることができる。
すなわち、高回転かつ高負荷域を含む上記第3運転領域A3において、噴射すべき多量の燃料を前段噴射P1および後段噴射P2の2回だけで無理に噴射しようとすれば、その噴射中にピストン5の位置が大きく変化することで、混合気X1,X2を所望の場所に形成することができなくなると考えられる。これに対し、上記実施形態のように、前段噴射P1および後段噴射P2の前に予備噴射P0を実行した場合には、上記前段噴射P1および後段噴射P2による燃料噴射量が減るため、上記のような不具合を効果的に回避することができ、負荷に応じた十分なエンジン出力を確保しながら、上記混合気X1,X2の分離形成を的確に図ることができる。
なお、上記実施形態では、第2運転領域A2において、圧縮上死点前60〜50°CA程度の期間内に前段噴射P1を実行し、圧縮上死点後0〜10°CA程度の期間内に後段噴射P2を実行するものとし、また、上記第2運転領域A2よりも回転速度Neの高い第3運転領域A3では、ピストンスピードが速まることを考慮して、上記タイミングよりも若干早めのタイミングで前段噴射P1および後段噴射P2を実行するものとしたが、こられ各燃料噴射P1,P2のタイミングは、インジェクタ21からの燃料の噴射角(気筒中心軸に対する拡がり角度)やピストン5冠面の形状等に応じて適宜設定すべきものであり、上記実施形態はその一例を例示したものに過ぎない。
例えば、インジェクタ21からの燃料の噴射角が上記実施形態の例よりも小さい場合には、鉛直下向きにより近い角度(つまりインジェクタ21から遠く離れないとボア径方向の外側に大きく拡がらないような角度)で燃料が噴射されるため、仮にピストン5の冠面の形状が上記実施形態と同一であると仮定すると、上記実施形態のときよりも早いタイミングで前段噴射P1および後段噴射P2を実行しなければ、当該各噴射P1,P2による燃料をそれぞれ所望の場所(燃焼室6の外周部およびキャビティ40の内部)に偏在させることができなくなる。
ただし、このような噴射角等の相違による影響があるとしても、設定可能な噴射角や、キャビティ40および環状凹部41等の配置バランス等を考慮すれば、後段噴射P2は、少なくとも圧縮行程後期から膨張行程初期までの間のいずれかのタイミングで実行する必要があり、前段噴射P1は、上記後段噴射P2よりも前であって、かつ圧縮行程中に実行する必要がある。なお、ここでいう圧縮行程後期とは、圧縮行程を初期、中期、後期に分けたときの後期であって、圧縮上死点前(BTDC)60〜0°CAの範囲を指す。同様に、膨張行程初期とは、膨張行程を初期、中期、後期に分けたときの初期であって、圧縮上死点後(ATDC)0〜60°CAの範囲を指す。
また、上記実施形態では、エンジンの温間時において、エンジンの運転点が図4に示した運転領域A1〜A5のいずれにあっても、点火プラグ20を用いることなく混合気を自着火させる圧縮自己着火燃焼を実行するものとしたが、例えば第3運転領域A3のうちの特に高回転側では、外部EGRにより燃焼温度が低くなりがちであり、しかも燃料の受熱期間が短いため、混合気が確実に自着火しないおそれがある。そこで、このような運転領域では、混合気の自着火を促進するための措置(着火アシスト)として、圧縮上死点付近で点火プラグ20による火花点火を補助的に行うようにしてもよい。
また、上記実施形態では、インジェクタ21が多噴口型のインジェクタであり、その先端部に12個の噴口が設けられるものとしたが、噴口の数は12個に限られず、12個より多くても少なくてもよい。ただし、噴口の数があまりに少ないと、インジェクタ21から噴射された燃料の濃度が周方向に大きくばらつくことになる。このため、噴口の数は8個以上とすることが望ましい。噴口の数が8個以上であれば、上記前段噴射P1および後段噴射P2を実行した後、ごく短時間で、周方向にほぼ均一な空燃比をもった混合気を形成することができ、その後の自着火による燃焼(圧縮自己着火燃焼)を適正に行わせることができる。
5 ピストン
6 燃焼室
21 インジェクタ
31 EGR通路
40 キャビティ
41 環状凹部
42 立壁部
50 ECU(制御手段)
A2 第2運転領域(特定運転領域)
A3 第3運転領域(特定運転領域)
P0 予備噴射
P1 前段噴射
P2 後段噴射

Claims (8)

  1. 少なくとも一部がガソリンからなる燃料と空気との混合気を燃焼室で燃焼させることによりピストンを往復運動させるガソリンエンジンであって、
    上記ピストンの冠面の中央部に設けられた凹状のキャビティと、
    上記キャビティと対向する燃焼室天井の中央部から上記燃料を複数の方向に向けて噴射する多噴口型のインジェクタと、
    上記インジェクタによる燃料の噴射動作を制御する制御手段とを備え、
    上記制御手段は、予め設定されたエンジンの特定運転領域において、前段噴射および後段噴射の少なくとも2回に分けて上記インジェクタから燃料を噴射させるとともに、その噴射された燃料と空気との混合気を自着火により燃焼させ、
    上記前段噴射は、圧縮行程中でかつ上記後段噴射よりも前に燃料を噴射し、その噴射された燃料により、上記ピストンのキャビティよりもボア径方向の外側に位置する燃焼室の外周部に、上記キャビティの内部よりもリッチな混合気を形成するものであり、
    上記後段噴射は、圧縮行程後期から膨張行程初期までの間の所定時期に燃料を噴射し、その噴射された燃料により、上記前段噴射に基づく混合気の燃焼が上記燃焼室の外周部で既に起きている状態において、上記キャビティの内部に、上記前段噴射の実行時よりもリッチな混合気を形成するものであり、
    上記特定運転領域における少なくとも低回転側の一部では、上記前段噴射の時期が圧縮行程後期に設定されるとともに、上記後段噴射の時期が圧縮上死点から膨張行程初期までのいずれかに設定されることを特徴とするガソリンエンジン。
  2. 請求項1記載のガソリンエンジンにおいて、
    上記キャビティよりもボア径方向の外側に位置するピストン冠面に、ボア径方向の外側に至るほど高さが低くなる平面視円環状の環状凹部が形成されたことを特徴とするガソリンエンジン。
  3. 請求項2記載のガソリンエンジンにおいて、
    上記環状凹部よりもさらにボア径方向の外側に、上記前段噴射により噴射された燃料を上方にガイドする立壁部が形成されたことを特徴とするガソリンエンジン。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のガソリンエンジンにおいて、
    上記キャビティは、その上端の開口面積がキャビティ内部の最大断面積よりも小さくなるように上窄まり状に形成されていることを特徴とするガソリンエンジン。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のガソリンエンジンにおいて、
    上記インジェクタは、その先端に8個以上の噴口を有するとともに、当該8個の噴口を通じて、上記ピストン冠面に近づくほどボア径方向の外側に拡がるように放射状に燃料を噴射するものであることを特徴とするガソリンエンジン。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のガソリンエンジンにおいて、
    上記特定運転領域には、少なくとも高負荷域が含まれることを特徴とするガソリンエンジン。
  7. 請求項6記載のガソリンエンジンにおいて、
    上記特定運転領域では、燃焼室で生成された排気ガスをEGR通路を通じて吸気通路に還流させる外部EGRが実行されることを特徴とするガソリンエンジン。
  8. 請求項6または7記載のガソリンエンジンにおいて、
    上記特定運転領域における少なくとも高回転域では、上記前段噴射および後段噴射よりも前に、吸気行程中に燃料を噴射する予備噴射が実行されることを特徴とするガソリンエンジン。
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