JP5582999B2 - アルミナコロイド含有水溶液の製造方法及び該製造方法で得られたアルミナコロイド含有水溶液 - Google Patents
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Description
また、本願出願人は、正塩よりも当量あたりの酸量が少ない塩基性アルミニウムからなる酸性のアルミナ水溶液の製造方法を開示している(特許文献6、7)。
一方、特許文献5記載の中性のアルミナゾルの製造方法では、強アルカリ性のアルミン酸アルカリ金属水溶液を中和するために有機酸を多量に添加する必要があり、経済的ではなかった。
また、本発明は、塩基性有機酸アルミニウム水溶液とアルカリ剤とを混合することを特徴とする、pH5.5〜9のアルミナコロイド含有水溶液の製造方法に関するものである。但し、前記アルミナコロイド含有水溶液中の、有機酸のモル数と該有機酸中のカルボキシル基数との積(A)と、Al2O3のモル数(B)が、A/B=1.0〜2.0の範囲である。
更に、本発明は、上記製造方法によって得られたアルミナコロイド含有水溶液を、さらに70〜200℃で加熱することを特徴とするアルミナコロイド含有水溶液の製造方法に関するものである。
また、本発明は、上記いずれかの製造方法によって製造されたアルミナコロイド含有水溶液に関するものである。
更にまた、本発明は、上記アルミナコロイド含有水溶液を、分画分子量10000の限外ろ過膜でろ過した時の、ろ液中のAl2O3が、ろ過前の水溶液中のAl2O3に対して、5〜50質量%であるアルミナコロイド含有水溶液に関するものである。
本発明の第一の製法は、有機酸とアルミナ水和物とアルカリ剤とを混合、加熱することを特徴とする、pHが5.5〜9の範囲のアルミナコロイド含有水溶液の製造方法である。但し、前記アルミナコロイド含有水溶液中の、有機酸のモル数と該有機酸中のカルボキシル基数との積(A)と、Al2O3のモル数(B)が、A/B=1.0〜2.0の範囲である。
また、アルミナ水和物としては、一般に市販されている水酸化アルミニウムや酸化アルミニウムの水和物、またはアルミニウム塩の中和等によって得られるアルミナ水和物ゲルなどが好適に使用できる。このうち、易溶解性のものが特に好ましい。
アルカリ剤としては、アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、炭酸塩、重炭酸塩、アンモニア、アンモニウムの水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、アミン類、尿素のいずれでも使用できる。このうち、本発明のアルミナコロイド含有水溶液の用途において、乾燥処理や焼成処理して使用するときは、処理中に除去することができるアンモニア、炭酸水素アンモニウム、尿素、あるいはアミン類を使用することが好ましい。前記アルカリ剤は、1種類だけでもあるいは2種類以上を用いてもよい。アルカリ剤を水溶液として用いる場合の濃度は、アルカリ剤の種類により異なるが、一般的には0.2〜30質量%程度の濃度であることが好ましい。
尚、本発明においては、塩基性有機酸アルミニウム水溶液中に、製造原料に由来する無機酸根、あるいは塩基性有機酸アルミニウム水溶液の安定化のために添加される無機酸根が含有されていても構わない。
アルカリ剤の種類については、上記第一の製法と同様である。また、添加の態様と混合の態様も上記第一の製法と同様である。
尚、第二の製法では、上記A/B値の塩基性有機酸アルミニウム水溶液とアルカリ剤とを混合するだけなので、最終製品であるアルミナコロイド含有水溶液中のA/B値は、原料である塩基性有機酸アルミニウム水溶液のA/B値と同じである。
尚、第一の製法において、混合した溶液のpHは未反応の有機酸およびアルカリ剤が溶液中に存在するために酸性〜中性を示すが、加熱処理によってアルミニウムと有機酸の反応が進行するため、残存するアルカリ剤の影響によりpHが上昇する。従って、第一の製法では、有機酸やアルカリ剤の量は、加熱温度や時間等の加熱条件を考慮して、加熱後のpHが前記範囲内に入るように適宜設定することが望ましい。
また、本発明のアルミナコロイド含有水溶液は、常温保存は勿論、50℃保存においても6ヶ月以上外観及び粘度にほとんど変化が見られず、長期保存安定性に優れている。
実施例に用いた原料は、試薬あるいは工業薬品として入手できるものを用いた。
(1)Al2O3濃度は、旧JIS K-5407-8に準じてアルミナコロイド含有水溶液を1000℃/5hで焼成した後の焼成残分により算出した。また鉄濃度は、酸化鉄濃度から計算により求めた。
(2)結晶構造は、水溶液を100℃で乾燥させたものをX線回折装置XRD-7000(島津製作所(株)製)で測定して解析した。
(3)電気伝導度は、電気伝導度計CM-14S(TOA ELECTRON Ltd.製)を用いて測定した。
(4)粘度は、水溶液の温度を25℃にした後、E型粘度計で測定した。
(5)透過率は、水溶液をAl2O3として7.5質量%に調整したものを側色差計 ND-300A(日本電飾工業(株)製)で測定した。但し、水溶液中のAl2O3が7.5質量%未満のものは原液のまま測定した。
(6)平均粒子径は、動的光散乱色粒度分布測定装置LB-500(堀場製作所(株)製)を用いて測定した。
試料を50mL容サンプル瓶に封入した後50℃恒温槽で6ヶ月間保存し、保存前及び保存後のpH、EC、粘度、透過率の測定、及び目視による観察によって長期保存安定性を評価した。
〈ろ過漏れ率〉
ろ過漏れ率は、分画分子量10000の限外ろ過膜(ADVANTEC製 ウルトラフィルターユニット USY-1)でろ過した時の、ろ過前のアルミニウム成分の質量に対するろ液中のアルミニウム成分の質量の百分率により算出した。
〈A/B値〉
有機酸のモル数と該有機酸中のカルボキシル基数との積をAとし、Al2O3のモル数をBとしたときのA/Bを、A/B値とする。
水酸化アルミニウムにイオン交換水を加えてAl2O3として10%のスラリーを得た。このスラリー100質量部に対し88%乳酸12質量部と20%アンモニア水10質量部を添加した(この時のpH6.8)。これを100℃で3h加熱を行い、Al2O3濃度が8.2%、pH8.5のアルミナコロイド含有水溶液を得た。得られた水溶液のA/B値は1.2であり、平均粒子径は11nmであった。製造直後、及び50℃/6ヶ月保存後の分析値を表1に示した。保存後に若干pHの低下が認められたものの、ゲル化や沈殿物発生は認められず、安定性を保持していた。また、この水溶液をエバポレーターを用いて、Al2O3濃度を15%まで濃縮したものは、6ヶ月の保存安定性試験後も安定状態を維持していた。尚、濃縮直後の水溶液の乾燥物の粉末X線回折が擬ベーマイトの回折パターンを示したことより、得られた水溶液にはアルミナコロイドが含有されていることが確認できた。
水酸化アルミニウムにイオン交換水を加えてAl2O3として10%のスラリーを得た。このスラリー100質量部に対し88%乳酸12質量部と10%水酸化ナトリウム水溶液27質量部を添加した(この時のpH3.7)。これを100℃で3h加熱を行い、Al2O3濃度が7.2%、pH7.3のアルミナコロイド含有水溶液を得た。得られた水溶液のA/B値は1.2であり、平均粒子径は11nmであった。製造直後、及び50℃/6ヶ月保存後の分析値を表1に示した。保存後に、ゲル化や沈殿物発生は認められず、安定性を保持していた。尚、この水溶液をイオン交換水でAl2O3濃度を1%まで希釈した水溶液は、6ヶ月の保存安定性試験後も安定状態を維持していた。希釈直後の水溶液の乾燥物の粉末X線回折が擬ベーマイトの回折パターンを示したことより、得られた水溶液にはアルミナコロイドが含有されていることが確認できた。
硫酸アルミニウム水溶液(Al2O3として10%)に炭酸水素アンモニウム水溶液(NH3として5%)をpHが8.0になるまでゆっくり添加して反応させた後、限外洗浄によってAl2O3として10%のアルミナ水和物ゲルを得た。このゲル100質量部に対し88%乳酸10質量部を反応させて、塩基性乳酸アルミニウム水溶液(Al2O3濃度=9.1%、乳酸/Al2O3のモル比=1.0、pH5.7)を作製した。この塩基性乳酸アルミニウム水溶液100質量部に対し20%アンモニア水2質量部を撹拌下で徐々に添加して、pH6.7のアルミナコロイド含有水溶液を得た。得られた水溶液のA/B値は1.0であり、Al2O3濃度は8.9%、平均粒子径6nmであった。この溶液を100、120、140℃で各3時間の水熱処理を行ったところ、平均粒子径がそれぞれ8、15、31nmであったことより、アルミナコロイドの粒子成長が確認された。水熱処理前の水溶液の製造直後、及び50℃/6ヶ月保存後の分析値を表1に示した。保存後に、ゲル化や沈殿物発生は認められず、安定性を保持していた。尚、製造直後のこの水溶液の乾燥物の粉末X線回折が擬ベーマイトの回折パターンを示したことより、得られた水溶液にはアルミナコロイドが含有されていることが確認できた。
硫酸アルミニウム水溶液(Al2O3として10%)に炭酸水素アンモニウム水溶液(NH3として5%)をpHが8.0になるまでゆっくり添加して反応させた後、限外洗浄によってAl2O3として10%のアルミナ水和物ゲルを得た。このゲル100質量部に対し88%乳酸16質量部を反応させて、塩基性乳酸アルミニウム水溶液(Al2O3濃度=8.6%、乳酸/Al2O3のモル比=1.6、pH4.5)を作製した。この塩基性乳酸アルミニウム水溶液100質量部に20%アンモニア水7質量部を撹拌下で徐々に添加した後これを140℃で3h加熱を行い、pH7.8のアルミナコロイド含有水溶液を得た。得られた水溶液のA/B値は1.6であり、Al2O3濃度は8.0%、平均粒子径33nmであった。得られた水溶液の製造直後、及び50℃/6ヶ月保存後の分析値を表1に示した。保存後に、ゲル化や沈殿物発生は認められず、安定性を保持していた。尚、製造直後のこの水溶液の乾燥物の粉末X線回折が擬ベーマイトの回折パターンを示したことより、得られた水溶液にはアルミナコロイドが含有されていることが確認できた。
水酸化アルミニウムにイオン交換水を加えてAl2O3として20%のスラリーを得た。このスラリー100質量部に対し20%リンゴ酸125質量部と20%アンモニア水21質量部を添加した(この時のpH4.6)。これを140℃で3h加熱を行い、Al2O3濃度が8.1%、pH8.1のアルミナコロイド含有水溶液を得た。得られた水溶液のA/B値は1.9であり、平均粒子径は9nmであった。得られた水溶液の製造直後、及び50℃/6ヶ月保存後の分析値を表1に示した。保存後に、ゲル化や沈殿物発生は認められず、安定性を保持していた。尚、製造直後のこの水溶液の乾燥物の粉末X線回折が擬ベーマイトの回折パターンを示したことより、得られた水溶液にはアルミナコロイドが含有されていることが確認できた。
硫酸アルミニウム水溶液(Al2O3として10%)に炭酸水素アンモニウム水溶液(NH3として5%)をpHが8.0になるまでゆっくり添加して反応させた後、限外洗浄によってAl2O3として10%のアルミナ水和物ゲルを得た。このゲル100質量部に対し88%乳酸15質量部を反応させて、塩基性乳酸アルミニウム水溶液(Al2O3濃度=8.7%、乳酸/Al2O3のモル比=1.5、pH4.6)を作製した。この塩基性乳酸アルミニウム水溶液100質量部に対し2%アンモニア水15質量部を撹拌下で徐々に添加して、pH5.2のアルミナコロイド含有水溶液を得た。得られた水溶液のA/B値は1.5であり、Al2O3濃度は7.6%であった。しかし、得られた水溶液は、50℃/1ヶ月保存後には沈殿物の発生が認められた。
硫酸アルミニウム水溶液(Al2O3として10%)に炭酸水素アンモニウム水溶液(NH3として5%)をpHが8.0になるまでゆっくり添加して反応させた後、限外洗浄によってAl2O3として10%のアルミナ水和物ゲルを得た。このゲル100質量部に対し88%乳酸15質量部を反応させて、塩基性乳酸アルミニウム水溶液(Al2O3濃度=8.7%、乳酸/Al2O3のモル比=1.5、pH4.6)を作製した。この塩基性乳酸アルミニウム水溶液100質量部に対し24%水酸化ナトリウム水溶液17質量部を撹拌下で徐々に添加して、pH10.5のアルミナコロイド含有水溶液を得た。得られた水溶液のA/B値は1.5であり、Al2O3濃度は7.4%であった。しかし、得られた水溶液は、50℃/1ヶ月保存後にはゲル化していた。
水酸化アルミニウムにイオン交換水を加えてAl2O3として10%のスラリーを得た。このスラリー100質量部に対し88%乳酸5質量部と10%アンモニア水5質量部を添加して(このときのpH4.7、A/B値は0.5)、100℃で3h加熱したところ、水溶液中には水酸化アルミニウムの未溶解物が認められ、収率良くアルミナコロイド含有水溶液が得られなかった。
特開昭59−223223号公報(実施例4)に従い、アルミン酸カリウム水溶液(Al2O3=8.0%、K2O/Al2O3モル比1.63)100質量部に対し、ホモミキサーの撹拌下に、20%乳酸水溶液130質量部を徐々に滴下しながら添加して、pH8.0の水溶液を得た。この水溶液のA/B値は3.7であり、Al2O3濃度は3.5%であった。この水溶液を50℃で保存したところ経時的に粘度上昇が認められた。
市販の塩基性塩化アルミニウム(多木化学(株)製「タンホワイト」 Al2O3濃度=23%、Cl=12%、pH2.5。有機酸を含まない。Cl/Al2O3(モル比)=1.5である。)をAl2O3として10%に希釈した。この希釈したもの100質量部に対し20%アンモニア水を4質量部添加したところ、添加直後から白濁が生じた。添加終了後、静置数分後には反応容器底部に沈殿物の発生が認められ、アルミナコロイド含有水溶液が得られなかった。
実施例4と同様に、硫酸アルミニウム水溶液(Al2O3として10%)に炭酸水素アンモニウム水溶液(NH3として5%)をpHが8.0になるまでゆっくり添加して反応させた後、限外洗浄によってAl2O3として10%のアルミナ水和物ゲルを得た。このゲル100質量部に対し88%乳酸16質量部を反応させて、塩基性乳酸アルミニウム水溶液(Al2O3濃度=8.6%、乳酸/Al2O3のモル比=1.6、pH4.5、EC1.5mS/cm、粘度3.4mPa・s、透過率99%)を作製した。この水溶液の乾燥物の粉末X線回折分析よりアモルファスであることが確認できた。また、この水溶液を限外ろ過膜でろ過した際のろ過漏れ率は65質量%であった。さらに、ろ過前の塩基性アルミニウム水溶液を50℃で保存したところ、2週間程度で反応容器底部に沈殿物の発生が認められた。
Claims (5)
- 有機酸とアルミナ水和物とアルカリ剤とを混合、加熱することを特徴とする、pH5.5〜9のアルミナコロイド含有水溶液の製造方法。
但し、前記アルミナコロイド含有水溶液中の、有機酸のモル数と該有機酸中のカルボキシル基数との積(A)と、Al2O3のモル数(B)が、A/B=1.0〜2.0の範囲である。 - 塩基性有機酸アルミニウム水溶液とアルカリ剤とを混合することを特徴とする、pH5.5〜9のアルミナコロイド含有水溶液の製造方法。
但し、前記アルミナコロイド含有水溶液中の、有機酸のモル数と該有機酸中のカルボキシル基数との積(A)と、Al2O3のモル数(B)が、A/B=1.0〜2.0の範囲である。 - 請求項1または2記載の製造方法によって得られたアルミナコロイド含有水溶液を、さらに70〜200℃で加熱することを特徴とするアルミナコロイド含有水溶液の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法によって製造されたアルミナコロイド含有水溶液。
- 請求項4記載のアルミナコロイド含有水溶液を、分画分子量10000の限外ろ過膜でろ過した時の、ろ液中のAl2O3が、ろ過前の水溶液中のAl2O3に対して、5〜50質量%であるアルミナコロイド含有水溶液。
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