JP5570657B2 - 遺伝子存在量の測定方法 - Google Patents

遺伝子存在量の測定方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5570657B2
JP5570657B2 JP2013509391A JP2013509391A JP5570657B2 JP 5570657 B2 JP5570657 B2 JP 5570657B2 JP 2013509391 A JP2013509391 A JP 2013509391A JP 2013509391 A JP2013509391 A JP 2013509391A JP 5570657 B2 JP5570657 B2 JP 5570657B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
primer
gene
base sequence
nucleic acid
abundance
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2013509391A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2013065646A1 (ja
Inventor
敏也 細見
萌子 伊集院
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Arkray Inc
Original Assignee
Arkray Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Arkray Inc filed Critical Arkray Inc
Priority to JP2013509391A priority Critical patent/JP5570657B2/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5570657B2 publication Critical patent/JP5570657B2/ja
Publication of JPWO2013065646A1 publication Critical patent/JPWO2013065646A1/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12QMEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
    • C12Q1/00Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
    • C12Q1/68Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving nucleic acids
    • C12Q1/6844Nucleic acid amplification reactions
    • C12Q1/6851Quantitative amplification

Description

本発明は、遺伝子存在量の測定方法に関する。
遺伝子の中には、一ゲノム中に複数存在するものがある。このような遺伝子のゲノムにおける存在量が、遺伝子診断に利用されることや薬剤の効果に影響を与えることがあり、対象サンプル中の核酸(例えば、ゲノム等)における遺伝子の存在量を把握又は測定することが求められる場合がある。このような検出の一例としては、遺伝子のコピー数の測定や遺伝子量の増減の測定、またコピー数多型(CNV)の診断等が挙げられる。
遺伝子の存在量を測定する方法としては、例えば、FISH法(例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 89, pp.5321−5325, June 1992参照)や、競合的なDNAの結合を利用したCGH法(例えば、特表平7−505053号公報参照)などの蛍光標識法を利用した方法がある。これらの方法では、染色体に対して直接蛍光標識化合物を反応させた後、画像処理や蛍光顕微鏡による観察によって、遺伝子の存在量が確認できる。しかしながら、同一の遺伝子が、染色体上の比較的近接した位置に2箇所以上存在する場合などに正確に識別できないことや、多くの試薬の使用や操作が煩雑といった欠点を有している。
このような観点から、遺伝子の存在量をPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)技術を利用して測定するリアルタイムPCR(例えば、Clinical Chemistry pp.1546−1554 (2009)、国際公開第2011/043220号パンフレット等)やデジタルPCR(例えば、特開2010−538614号公報参照)などを用いて、遺伝子の存在量を効率よく且つ精度よく測定する技術が開発されている。
特に、特開2010−538614号公報に開示されている技術では、対象ゲノムにおける標的ポリヌクレオチド配列の相対的コピー数を決定する方法であって、対象ゲノムDNAを含む試料において、標的遺伝子配列及び参照遺伝子配列を核酸増幅し、デジタルPCRによって増幅された各遺伝子の配列をアッセイし、標的遺伝子配列を含む増幅ポリヌクレオチド分子の数と、参照遺伝子配列を含む増幅ポリヌクレオチド分子の数との比から、コピー数の変動を決定している。
一方、一試料中に異なる遺伝子が複数存在する場合に、目的とする一部の標的核酸を増幅する方法として、特表2011−516069号公報には、二段階の核酸増幅工程と、その間で、目的となる核酸アンプリコンをレスキューする工程とを含む方法が開示されている。この方法では、最初の核酸増幅工程において、標的特異的プライマーを用いて核酸を増幅し、それによって、少なくとも1つの共通プライマー結合部位を含む少なくとも1つの核酸アンプリコンを生成し、得られた核酸アンプリコンを、使用した標的特異的プライマーから分離(レスキュー)してから、共通プライマーを用いて増幅している。
また一般にPCR技術では、互いに向きの異なる一対のプライマー対を用いて、二本鎖核酸をそれぞれ核酸増幅して、対象遺伝子配列の増幅産物(アンプリコンと称する場合がある)を生成している。このため、二本鎖のアンプリコンは、プライマー対を用いた核酸増幅の過程で指数関数的に一反応系に蓄積し、その後、生成された相補的アンプリコン鎖の蓄積量の増加に伴い、増幅反応の速度が低下し、いずれ停止する(プラトー期)ことが知られている。このプラトー期に達するともはや核酸増幅は生じないため、アンプリコン量が増加しない。このようなプラトー期に達することなくアンプリコンの蓄積量を継続的に増加させるために、使用量に一定の差を設けた一対のプライマーを利用した「指数後の線形PCR(LATE−PCR)」が知られている(例えば、特表2005−512577号公報参照)。
また、融合遺伝子を検出するような場合においては、各変異体に対して特異的なプライマーを設定するマルチプレックスPCRを用いることが多い(例えば、特開2012−100628号公報参照)。マルチプレックスPCRにおいては、プライマーを数多く用意しそれぞれのプライマーが二量体を作製する可能性を踏まえて最適化を行う必要がある。この最適化のプロセスを経てプライマーを再作製し、実験を通じて測定可能か否か検討していく必要がある。また、プライマー数が増えるにつれて、この最適化のプロセスの難易度が向上し、この最適なプライマーセットを見つけ出すまでに多大な時間と労力とコストを要する。
しかしながら、標的遺伝子配列と参照遺伝子配列とを用いて核酸増幅を行い、増幅産物の量比からコピー数を決定する場合でも、標的遺伝子配列と参照遺伝子配をそれぞれ増幅するために、異なるプライマーが用いられる。このように異なるプライマーを用いた場合には、増幅効率が異なることが多い。また、PCR技術によって核酸増幅を行った場合には、前述したようにプラトー期が存在するため、PCRサイクル数が多くなると、本来の存在量とは無関係に増幅産物量が一定量となる。このため、PCR技術を用いてゲノム中の遺伝子の存在量を測定しようとしても、本来の遺伝子存在量を正確に反映しないことがある。また、マルチプレックスPCRを用いる場合、プライマーを数多く用意する必要があるため、最適化のプロセスにおいて、費用面、労力面及び/又は時間面等での課題が生じる。
従って、本発明は、対象サンプル中の核酸における遺伝子の存在量を従来の技術よりも正確に且つ簡便に測定する遺伝子存在量の測定方法を提供することを目的とする。
本発明は以下のとおりである。
[1] 一の反応液に、対象サンプル中の核酸における遺伝子の存在量が相違し得る少なくとも2つの遺伝子をコードする核酸を、単一の付加塩基配列を増幅産物に導入可能であり且つ前記少なくとも2つの遺伝子のそれぞれに対応した少なくとも2種の第一のプライマーを含む第一のプライマーセットと、前記単一の付加塩基配列を含む核酸を増幅するための第二のプライマーとを含み、前記第二のプライマーの存在量が、前記第一のプライマーセットを構成する第一プライマーのうち存在量の最も多い第一プライマーの存在量に比べて4倍量〜20倍量(モル比)である前記反応液を用いて、核酸増幅を行い、前記単一の付加塩基配列を含み且つ前記少なくとも2つの遺伝子のそれぞれに対応した少なくとも2種の増幅産物を得ること(核酸増幅工程)、前記少なくとも2種の増幅産物の存在量に基づくそれぞれのシグナルを検出し、該シグナルから前記少なくとも2つの遺伝子の存在量を測定すること(存在量測定工程)、を含む遺伝子の存在量の測定方法
前記核酸における遺伝子の存在量は、ゲノムDNAにおける遺伝子のコピー数であり、
前記核酸増幅工程における前記反応液は、前記少なくとも2種の増幅産物をそれぞれ認識する、同一の蛍光色素で標識された少なくとも2種の検出用プローブを更に含み、
前記存在量測定工程における前記シグナルは、前記少なくとも2種の増幅産物と、それぞれに対応する前記少なくとも2種の検出用プローブとが解離する際の、少なくとも2つの蛍光強度の変動であり、
前記存在量測定工程は、前記少なくとも2つの蛍光強度の変動を同一の波長で測定し、Tm解析を行い、更に面積解析して、前記少なくとも2つの遺伝子の存在量を決定する。
[2] 前記第一のプライマーが、前記単一の付加塩基配列と、それぞれの前記遺伝子をコードする核酸の増幅対象領域の塩基配列にハイブリダイズ可能な塩基配列と、を有する[1]に記載の測定方法。
[3] 前記第二のプライマーが、前記単一の付加塩基配列又はその相補的な塩基配列にハイブリダイズ可能な塩基配列を有する[1]又は[2]に記載の測定方法。
[4] 前記単一の付加塩基配列が、前記少なくとも2つの遺伝子の各増幅対象領域中の塩基配列とは非相同的な塩基配列からなる[1]〜[3]のいずれか1つに記載の測定方法。
[5] 前記第一のプライマーセットが、前記第一のプライマーと、該第一のプライマーがハイブリダイズする塩基配列の相補鎖側の塩基配列を増幅するために用いられ且つ前記単一の付加塩基配列を含まない第三のプライマーとを含む[1]〜[4]のいずれか1つに記載の測定方法。
[6] 前記反応液における前記第三のプライマーの存在量が、前記反応液における前記第一のプライマーの存在量に比べて、物質量基準で0.25倍量〜4倍量である[5]に記載の測定方法。
[7] 前記第一のプライマーが、増幅対象領域の塩基配列に対してミスマッチ塩基及び縮重塩基からなる群より選択された少なくとも一方を含む[1]〜[]のいずれか1つに記載の測定方法。
] 前記第二のプライマーのTm値が、前記第一のプライマーの各Tm値よりも高い[1]〜[]のいずれか1つに記載の測定方法。
] 前記第二のプライマーが、前記単一の付加塩基配列及びその相補的な塩基配列とは異なる付加配列を更に含む[1]〜[]のいずれか1つに記載の測定方法。
10] 前記少なくとも2つの遺伝子の少なくとも1つは、対象サンプル中の核酸における存在量が予め判明している参照遺伝子であり、少なくとも1つは対象サンプル中の核酸における存在量の測定対象となる標的遺伝子である[1]〜[]のいずれか1つに記載の測定方法。
11] 前記参照遺伝子由来の増幅産物の検出シグナルと、前記標的遺伝子由来の増幅産物の検出シグナルとを比較して、前記標的遺伝子の対象サンプル中の核酸における存在量を決定することを含む[10]に記載の測定方法。
12] 前記少なくとも2つの遺伝子の少なくとも1つは、融合遺伝子の融合点よりも上流の5’側の遺伝子領域であり、少なくとも1つは、融合遺伝子の融合点よりも下流の3’側の遺伝子領域である[1]〜[]のいずれか1つに記載の測定方法。
13] 前記5’側の遺伝子領域由来の増幅産物の検出シグナルと、前記3’側の遺伝子領域由来の増幅産物の検出シグナルとを比較して、サンプル中における前記融合遺伝子の存在を検出することを含む[12]に記載の測定方法。
[14] 単一の付加塩基配列を増幅産物に導入可能であり且つ前記少なくとも2つの遺伝子のそれぞれに対応した少なくとも2種の第一のプライマーを含む第一のプライマーセットと、前記単一の付加塩基配列を含む核酸を増幅するための第二のプライマーと、前記少なくとも2つの遺伝子の核酸増幅領域にそれぞれハイブリダイズ可能な塩基配列を有し且つ同一の蛍光色素の標識を備えた少なくとも2つの検出用プローブと、を含む[1]〜[4]及び[7]〜[13]のいずれか1つに記載の測定方法のための遺伝子測定キット。
15] 単一の付加塩基配列を増幅産物に導入可能であり且つ前記少なくとも2つの遺伝子のそれぞれに対応した少なくとも2種の第一のプライマーを含む第一のプライマーセットと、前記単一の付加塩基配列を含む核酸を増幅するための第二のプライマーと、前記第一のプライマーがハイブリダイズする塩基配列の相補鎖側の塩基配列を増幅するために用いられ且つ前記単一の付加塩基配列を含まない第三のプライマーと、前記少なくとも2つの遺伝子の核酸増幅領域にそれぞれハイブリダイズ可能な塩基配列を有し且つ同一の蛍光色素の標識を備えた少なくとも2つの検出用プローブと、を含む[5]〜[13]のいずれか1つに記載の遺伝子測定キット。
[16] 前記第一のプライマーにより導入された単一の付加塩基配列を含み且つ第二のプライマーによって核酸増幅された前記少なくとも2つの遺伝子に対応する増幅産物の存在量に基づく少なくとも2つのシグナルを検出する検出装置と、前記検出装置により検出された前記少なくとも2つの検出シグナルを対比して、前記少なくとも2つの遺伝子の存在量を演算する演算装置と、を含む[1]〜[13]のいずれか1つに記載の遺伝子の存在量の測定方法を実施する遺伝子測定システム。
本発明によれば、対象サンプル中の核酸における遺伝子の存在量を従来の技術よりも正確に且つ簡便に測定する遺伝子存在量の測定方法を提供することができる。
(A)は、核酸混合物の融解曲線の一例であり、(B)は微分融解曲線の一例である。 本発明の実施例1にかかるTm解析の結果を示すグラフである。 本発明の比較例1にかかるTm解析の結果を示すグラフである。 本発明の比較例2にかかるTm解析の結果を示すグラフである。 本発明の比較例3にかかるTm解析の結果を示すグラフである。 本発明の実施例2にかかるTm解析の結果を示すグラフである。 本発明の実施例3にかかるTm解析の結果を示すグラフである。 本発明の実施例4にかかるTm解析の結果を示すグラフである。 本発明の実施例5にかかるTm解析の結果を示すグラフである。 本発明の比較例6、実施例7〜実施例8にかかるTm解析の結果を示すグラフである。 本発明の実施例9にかかるTm解析の結果を示すグラフである。
本発明の遺伝子の存在量の測定方法は、一の反応液に、対象サンプル中の核酸における遺伝子の存在量が相違し得る少なくとも2つの遺伝子をコードする核酸を、単一の付加塩基配列を増幅産物に導入可能であり且つ前記少なくとも2つの遺伝子のそれぞれに対応した少なくとも2種の第一のプライマーを含む第一のプライマーセットと、前記単一の付加塩基配列を含む核酸を増幅するための第二のプライマーとを含み、前記第二のプライマーの存在量が、前記第一のプライマーセットを構成する第一プライマーのうち存在量の最も多い第一プライマーの存在量に比べて4倍量〜20倍量(モル比)である前記反応液を用いて、核酸増幅を行い、前記単一の付加塩基配列を含み且つ前記少なくとも2つの遺伝子のそれぞれに対応した少なくとも2種の増幅産物を得ること、前記少なくとも2種の増幅産物の存在量に基づくそれぞれのシグナルを検出し、該シグナルから前記少なくとも2つの遺伝子の存在量を測定すること、を含む遺伝子の存在量の測定方法である。
なお、本明細書において「遺伝子」には、遺伝子の一部の領域を示す「遺伝子領域」も包含される。また、「遺伝子」は塩基配列によりコードされているものであればよく、特定の機能を発現するものだけではなく、特定の機能を発現しないものも包含される。
本測定方法では、所定の第一のプライマーを含む第一のプライマーセットと、第二のプライマーとを一の反応液中に存在させて前記少なくとも2つの遺伝子(以下、「測定対象遺伝子」という)のそれぞれの核酸に対する核酸増幅を行うので、所定の第一のプライマーを用いた核酸増幅によって、個々の測定対象遺伝子に対応した複数種の増幅産物には、単一の付加塩基配列が導入される。このため、反応液中に測定対象遺伝子が複数種存在していても、対応する増幅産物には単一の、即ち共通した付加塩基配列が導入される。この単一の付加塩基配列が導入され且つ測定対象遺伝子に対応した複数種の核酸(又は増幅産物)は全て、一の共通した付加塩基配列を含んでいるため、1種類の第二のプライマーにより一律に核酸増幅可能となる。これにより、反応液中に存在する複数の遺伝子の存在量が異なっていたとしても、同一の第二のプライマーによる核酸増幅によって得られた個々の遺伝子に由来する増幅産物の存在量は、異なるプライマーを用いた核酸増幅とは異なり、各遺伝子の存在量を反映したものとなる。この結果、対象サンプル中の核酸における少なくとも2種の遺伝子の存在量を、従来の技術よりも正確に且つ簡便に測定することができる。
本発明において、測定対象となる試料中の試料核酸、検出用プローブ又はプライマーの個々の配列に関して、これら互いの相補的な関係に基づいて記述された事項は、特に断らない限り、それぞれの配列と、各配列に対して相補的な配列とについても適用される。各配列に対して相補的な当該配列について本発明の事項を適用する際には、当該相補的な配列が認識する配列について、当業者にとっての技術常識の範囲内で、対応する本明細書に記載された配列に相補的な配列として、明細書全体を読み替えるものとする。
本発明において、「Tm値」とは、二本鎖核酸が解離する温度(解離温度:Tm)であって、一般に、260nmにおける吸光度が、吸光度全上昇分の50%に達した時の温度と定義される。即ち、二本鎖核酸、例えば、二本鎖DNAを含む溶液を加熱していくと、260nmにおける吸光度が上昇する。これは、二本鎖DNAにおける両鎖間の水素結合が加熱によってほどけ、一本鎖DNAに解離(DNAの融解)することが原因である。そして、全ての二本鎖DNAが解離して一本鎖DNAになると、その吸光度は加熱開始時の吸光度(二本鎖DNAのみの吸光度)の約1.5倍程度を示し、これによって融解が完了したと判断できる。Tm値は、この現象に基づき設定される。本発明におけるTm値は、特に断らない限り、50%の塩基が2本鎖を形成し、残る50%が1本鎖に融解する温度をいう。
本発明において「鋳型核酸」又は「鋳型」とは、核酸増幅を行う際にプライマーが鋳型としてアニーリングする塩基配列を意味する。
本発明において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても本工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
また、本発明において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
また、本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
以下、本発明の概要について説明する。
<遺伝子の存在量の測定方法>
本発明にかかる遺伝子の存在量の測定方法は、一の反応液において、対象サンプル中の核酸における遺伝子の存在量が相違し得る少なくとも2つの遺伝子をコードする核酸を、単一の付加塩基配列を増幅産物に導入可能であり且つ前記少なくとも2つの遺伝子のそれぞれに対応した少なくとも2種の第一のプライマーを含む第一のプライマーセットと、前記単一の付加塩基配列を含む核酸を増幅するための特定量の第二のプライマーとを用いて、核酸増幅を行い、前記単一の付加塩基配列を含み且つ前記少なくとも2つの遺伝子のそれぞれに対応した少なくとも2種の増幅産物を得ること、(以下、「核酸増幅工程」という)、前記少なくとも2種の増幅産物の存在量に基づくシグナルを検出し、該シグナルから前記少なくとも2つの遺伝子の存在量を測定すること(以下、「存在量測定工程」という)、を含む。
核酸増幅工程は、一の反応液において、対象サンプル中の核酸における遺伝子の存在量が相違し得る少なくとも2つの遺伝子をコードする核酸を、単一の付加塩基配列を増幅産物に導入可能であり且つ前記少なくとも2つの遺伝子のそれぞれに対応した少なくとも2種の第一のプライマーを含む第一のプライマーセットと、前記単一の付加塩基配列を含む核酸を増幅するための第二のプライマーとを用いて、核酸増幅を行い、前記単一の付加塩基配列を含み且つ前記少なくとも2つの遺伝子のそれぞれに対応した少なくとも2種の増幅産物を得ることを含む。
前記反応液には、少なくとも2種の遺伝子、即ち測定対象遺伝子が含まれる。
前記測定対象遺伝子は、対象サンプル中の核酸における遺伝子の存在量が互いに相違し得るものであり、一般に、対象サンプル中の核酸における遺伝子の存在量が異なっているものを含むが、同一のものが含まれていてもよい。反応液中の前記測定対象遺伝子をコードする塩基配列は、後述する核酸増幅を行う際の鋳型となる核酸に相当する。
前記反応液中の核酸の供給元となり得る試料としては、特に制限されない。例えば、血液、口腔粘膜懸濁液、爪や毛髪等の体細胞、生殖細胞、乳、腹水液、パラフィン包埋組織、胃液、胃洗浄液、腹膜液、羊水、細胞培養などの任意の生物学的起源に由来する又は由来しうるものを挙げられる。鋳型となる核酸は、該起源から得られたままで直接的に、あるいは該サンプルの特性を改変するために前処理した後で使用することができる。
例えば、全血を試料とする場合、全血からのゲノムDNAを単離して測定対象遺伝子の核酸を調製することができる。全血からのゲノムDNAの単離は、従来公知の方法によって行うことができる。例えば、市販のゲノムDNA単離キット(商品名GFX Genomic Blood DNA Purification kit;GEヘルスケアバイオサイエンス社製)等が使用できる。
反応液中の核酸は、一本鎖でもよいし、二本鎖でもよい。反応液中の核酸配列としては、例えば、DNAであってもよく、トータルRNA、mRNA等のRNA等であってもよい。また、本発明においては、反応液中に後述する複数種のプライマーを存在させて核酸増幅を行うため、核酸増幅工程後の反応液中には、核酸増幅によって生成された増幅産物も存在する。従って、本発明における反応液中の核酸としては、これらの増幅産物も含まれる。
反応液中の前記測定対象遺伝子は、少なくとも2種の遺伝子であれば、本発明において存在量の測定対象となり得る。好ましくは、前記測定対象遺伝子の少なくとも1つは、対象サンプル中の核酸における存在量が予め判明している参照遺伝子であり、少なくとも1つは対象サンプル中の核酸における存在量の測定対象となる標的遺伝子である。このように、測定対象遺伝子の少なくとも1つを、対象サンプル中の核酸における存在量が判明している参照遺伝子とすることによって、参照遺伝子の存在量を参照(指標)として使用し、標的遺伝子の対象サンプル中の核酸における存在量を容易に測定することができる。
ここで、「対象サンプル中の核酸における存在量」とは、所定のサイズの遺伝子のコピー数、対象サンプル中の核酸に占める1コピーの遺伝子全体の大きさ、疾患に関わる遺伝子の増加や減少、タンパク質に翻訳された時に機能ドメインに相当する遺伝子内の特定の領域、タンデムリピートやマイクロサテライト等を意味する。本発明にかかる測定方法においては、遺伝子のコピー数を、測定対象となる存在量とすることが、例えば、前記測定方法の感度及び簡便性等の関連から好ましい。
前記参照遺伝子として使用可能な遺伝子としては、個人間で同等の存在量であることが予め判明している遺伝子、又は経時的に存在量が変化せず比較的安定した存在量である遺伝子であれば特に制限はなく、RNaseP、sod2、COL8A1、gamma−actin等を挙げることができる。また、前記参照遺伝子と前記標的遺伝子との組み合わせとしては、特に制限はなく、ゲノム地図上で同一の染色体上であってもよいし、他の染色体上のゲノム地図上で離れた場所にあってもよく、適宜選択され、前記標的遺伝子と前記参照遺伝子の選択は特に限定されない。
前記標的遺伝子として使用可能な遺伝子は、測定された存在量の利用目的によって異なる。例えば、多型を示す遺伝子、疾患に起因して存在量が増加若しくは減少する遺伝子、疾患に起因して塩基配列中の塩基が欠失する遺伝子、並びに、検体により発現量が変化する遺伝子等が挙げられる。
また、前記参照遺伝子と標的遺伝子との組み合わせは、標的遺伝子の性質によって適宜選択可能である。例えば、個人間のコピー数多型を検出する場合には、個人間で同等の存在量であることが予め判明している遺伝子を参照遺伝子とし、多型を示す遺伝子を標的遺伝子に挙げることができ、疾患の治療薬の標的になる遺伝子の存在量を検出する場合には、経時的に存在量が変化せず比較的安定した存在量の遺伝子を参照遺伝子とし、疾患に起因して存在量が増加若しくは減少又は塩基が欠失する遺伝子を標的遺伝子に挙げることができ、RNAの発現量を検出する場合には、例えばハウスキーピング遺伝子を参照遺伝子とし、検体により発現量が変化する遺伝子を標的遺伝子に挙げることができる。
また、別の態様として、前記測定対象遺伝子の少なくとも1つは、融合遺伝子の融合点よりも上流の5’側の遺伝子領域(以下、「5’側の遺伝子領域」とも称する。)であり、少なくとも1つは、融合遺伝子の融合点よりも下流の3’側の遺伝子領域(以下、「3’側の遺伝子領域」とも称する。)であることも好ましい。このように、5’側の遺伝子領域の存在量と、3’側の遺伝子領域の存在量とを比較することにより、融合遺伝子変異の有無などを容易に検出することができる。
前記融合遺伝子は、ある遺伝子の一部が他の遺伝子の一部と融合して一つの遺伝子として存在するものであればよく、特に制限されるものではない。具体的には、ALK融合遺伝子、BCR-ABL融合遺伝子、AML1−MTG8融合遺伝子、RET融合遺伝子、ROS1融合遺伝子等が挙げられる。
以下、ALK融合遺伝子を例に挙げて、具体的に説明する。
ALK遺伝子(NCBIのアクセッションNo.NM_004304.4)は、ALK (anaplastic lymphoma kinase)受容体型チロシンキナーゼをコードする。
ALK融合遺伝子としては、例えばJ. Clon. Oncol. 2009 Sep 10;27(26): 4232−5に記載のEML4−ALK融合遺伝子や、KIF5B、KLC1、TFG等各種の遺伝子との融合遺伝子が知られている。
ここで、本発明における測定方法においては、融合遺伝子を構成するいずれか一方の遺伝子にのみ着目し、該遺伝子の融合点よりも上流の5’側の遺伝子領域の存在量及び下流の3’側の遺伝子領域の存在量を測定し、比較すればよい。
融合点とは、異なる2つの遺伝子が融合している境界部分を意味する。例えば、ALK遺伝子中4125番目の塩基(配列番号23中、1760番目の塩基に相当)が融合点となる。
なお、遺伝子の存在量を測定する5’側の遺伝子領域及び3’側の遺伝子領域とは、融合点よりも、上流及び下流の領域であれば特に制限はされない。遺伝子の存在量を測定する5’側の遺伝子領域及び3’側の遺伝子領域は、融合点から1塩基以上離れていれば遺伝子の存在量の測定は可能であるが、十分に離れた領域であることが好ましく、例えば10塩基程度以上離れていることがより好ましく、50塩基程度以上離れていることが更に好ましい。
また、融合遺伝子変異に伴って生じる融合点は、核酸上に複数存在する可能性がある。そのため、融合点から5’側の遺伝子領域及び3’側の遺伝子領域の距離を、測定対象となる融合遺伝子変異の種類に応じて適宜設定することで、検出可能な融合遺伝子変異の種類を自由に変更することができ、より多くの変異体(Variant)を検出することが可能になる。
尚、融合点からの遺伝子領域までの距離(塩基数)は、測定対象遺伝子となる5’側の遺伝子領域又は3’側の遺伝子領域に、ハイブリダイズするプライマーのうち、融合点に近い距離にハイブリダイズしたプライマーの5’末端をもとに計算する。
なお、本明細書において、融合遺伝子は、ALK融合遺伝子に限定されない。例えば、GenBank等のデータベースに塩基配列が登録されているものであれば、いずれの遺伝子であっても、ALK融合遺伝子と同様に、本発明にかかる方法を適用することができる。
前記第一のプライマーセットは、第一のプライマーを含み、測定対象遺伝子における増幅対象領域の二本鎖核酸をそれぞれ増幅するプライマーセットである。前記第一のプライマーは、単一の付加塩基配列を増幅産物に導入可能であり且つ前記少なくとも2つの遺伝子のそれぞれに対応したものである。
ここで、前記増幅対象領域は、測定対象遺伝子をコードする塩基配列の一部に相当する領域であり、好ましくは、40塩基長〜5000塩基長、より好ましくは50塩基長〜1000塩基長、更に好ましくは60塩基長〜200塩基長とする。前記増幅対象領域をこの範囲の長さとすることにより、例えば、前記核酸増幅工程における反応時間の短縮、増幅阻害影響の緩和、複数の核酸増幅を確実に進行させ、測定精度を高めることができるなどの利点が得られる。
ここで、「前記少なくとも2つの遺伝子のそれぞれに対応する」とは、測定対象遺伝子に特徴的な塩基配列を増幅対象領域として増幅可能であることを意味する。このため、前記核酸増幅工程では、測定対象遺伝子の種類に応じた数の第一のプライマーが用いられる。
前記第一のプライマーは、単一の付加塩基配列を増幅産物に導入可能であることを要する。ここで「単一の付加塩基配列を増幅産物に導入可能」とは、所定の塩基配列で構成された前記単一の付加塩基配列そのものを含む増幅産物が生成されることのみならず、当該所定の塩基配列に相補的な塩基配列を含む増幅産物が生成されることの双方を意味する。
単一の付加塩基配列を増幅産物に導入可能とするためには、前記第一のプライマーは、単一の付加塩基配列と、前記測定対象遺伝子をコードする核酸の塩基配列の一部を鋳型として核酸増幅可能な塩基配列と、を含むことができ、これらの間にリンカー配列を含んでいてもよい。前記測定対象遺伝子をコードする核酸の塩基配列の一部を鋳型として核酸増幅可能な塩基配列としては、例えば、前記増幅対象領域の塩基配列にハイブリダイズ可能な塩基配列とすることができる。第一のプライマーは、例えば、操作の簡便性、測定方法の測定感度等の観点から、前記単一の付加塩基配列と前記測定対象遺伝子の増幅対象領域の塩基配列にハイブリダイズ可能な塩基配列との組み合わせであることが好ましい。
ここで、「単一の付加塩基配列」は、一の測定に用いられる一の反応系中に存在しうる増幅産物の全てに対して共通して導入され得る一種類の(単一の)付加塩基配列を意味し、その相補的な配列も包含する。第一のプライマーが有する「単一の付加塩基配列」とは、前記単一の付加塩基配列及びその相補的な塩基配列のいずれであってもよい。前記増幅産物に導入される「単一の付加塩基配列」及び第一のプライマーが有する「単一の付加塩基配列」を、以下、特に断らない場合、単に「単一の付加塩基配列」と総称する。
このような単一の付加塩基配列の構造(塩基配列及び長さ)としては、特に制限はなく、任意の配列を選択することができる。増幅産物の全てにおいて共通して導入される塩基配列であることから、少なくとも2つの遺伝子の各増幅対象領域中の塩基配列とは非相同的な塩基配列からなる配列であることが好ましく、前記増幅対象領域及び該増幅対象領域に隣接する領域(例えば、1000塩基長以内の範囲)を含めた領域の塩基配列とは非相同的な塩基配列からなる配列であることがより好ましく、反応液中に存在する遺伝子の塩基配列には存在しない塩基配列からなる配列であることが更に好ましい。これにより、後述する第二のプライマーによる核酸増幅の精度を高めることができる等の利点が得られる。ここで、「非相同的」とは、例えば、増幅対象領域50%以下、好ましくは25%以下の相同性を有することを意味する。
ここで、「前記増幅対象領域の塩基配列にハイブリダイズ可能な塩基配列」とは、通常の核酸増幅条件において、増幅対象となる塩基配列を含む一本鎖核酸(鋳型核酸)に対してアニーリングし、鋳型核酸との間で二本鎖核酸を形成可能な配列を有していることを意味する。
前記第一のプライマーにおける前記増幅対象領域の核酸配列に対してハイブリダイズ可能な塩基配列は、増幅対象領域中の鋳型核酸の塩基配列を増幅できるものであれば特に制限されず、対象となる遺伝子の塩基配列に基づいて当業者であれば適宜設計することができる。
前記第一のプライマーに関する「ハイブリダイズ可能な塩基配列」には、鋳型核酸の塩基配列に対して完全に相補的な塩基配列が含まれ、また、後述する核酸増幅条件下において、完全に相補的な塩基配列に対して、一本鎖核酸に対する親和性が大きく損なわれない程度に、更に1個又は数個の塩基が、欠失、置換、又は付加した塩基配列も含んでもよい。塩基が挿入、欠失又は置換されている場合、その挿入、欠失又は置換の位置は、特に限定されない。挿入、欠失又は置換した塩基の数としては1塩基又は2塩基以上が挙げられ、第一のプライマー全体の長さによって異なるが、例えば1塩基〜10塩基、好ましくは1塩基〜5塩基が挙げられる。
また、前記第一のプライマーには、後述する第二のプライマーによる核酸増幅を優先させるため、前述した単一の付加塩基配列とは別の種々の付加塩基又は所定の長さの付加塩基配列(以下、総称して「調整用付加塩基配列」という)を含んでもよい。これらの調整用付加塩基配列は、後述するものを単独で、又は後述するものから適宜選択された2つ以上を組み合わせたものとすることができる。
このような調整用付加塩基配列としては、前記増幅対象領域の塩基配列に対してミスマッチ塩基及び縮重塩基からなる群より選択された少なくとも一方を含むことが好ましい。前記ミスマッチ塩基及び縮重塩基の種類及び塩基数については、特に制限はないが、予想されるTm値の調整、増幅効率への影響、同一のプライマー分子数の調整から設定すれよい。
また他の調整用付加塩基としては、ウラシル塩基、APサイト、及びRNA塩基からなる群より選択された分解誘導塩基を導入してもよい。これらの分解誘導塩基を導入した場合には、第一のプライマーによる増幅産物を得た後、これら分解誘導塩基を分解することにより、増幅産物に対する第一のプライマーのTm値を下げることができ、また、第二のプライマーによる核酸増幅を優先して進行させることができるなどの利点が得られる。
前記第一のプライマーの長さ及びTm値は、通常には、12mer〜60mer及び40℃〜85℃、好ましくは16mer〜50mer及び50℃〜80℃であるが、これに限定されない。
また、前記第一のプライマーにおける前記単一の付加塩基配列と前記遺伝子の増幅対象領域の塩基配列にハイブリダイズ可能な塩基配列とは、同じ長さであっても、異なる長さであってもよい。
また、前記第一のプライマーにおける前記単一の付加塩基配列の位置は、いずれの位置であってもよい。好ましくは、前記単一の付加塩基配列は、前記第一のプライマーの5’末端に配置される。前記遺伝子の増幅対象領域にハイブリダイズする塩基配列の5’末端側に前記単一の付加塩基配列を配置することにより、例えば、第一プライマーが測定対象遺伝子を最初に増幅する際に反応を妨げない。
第二のプライマーは、前記第一のプライマーセットによって増幅された前記単一の付加塩基配列を含む核酸を増幅するために用いられる。これにより、前記第一のプライマーを含む第一のプライマーセットを用いて得られた前記単一の付加塩基配列を含む増幅産物を、更に核酸増幅して、反応液中に蓄積することができる。
前記第二のプライマーは、前記単一の付加塩基配列又はその相補的な塩基配列にハイブリダイズ可能な塩基配列を有することができる。第一プライマーの前記単一の付加塩基配列と第二プライマーのハイブリダイズを防止する等の点で、好ましくは、前記第一のプライマーの一部に含まれる前記単一の付加塩基配列の相補的な塩基配列に対してハイブリダイズ可能な塩基配列、即ち、前記第一のプライマーの一部に含まれる前記単一の付加塩基配列に相同な塩基配列を有する。これにより、効率よく且つ効果的に前記単一の付加塩基配列を含む増幅産物を反応液中に蓄積させることができる。
前記第二のプライマーは、核酸増幅条件下において前記単一の付加塩基配列又はその相補的な塩基配列との間で二本鎖核酸を形成可能であれば、更に1個又は数個の塩基が、欠失、置換、又は付加したものであってもよい。塩基が挿入、欠失又は置換されている場合、その挿入、欠失又は置換の位置は、特に限定されない。挿入、欠失又は置換した塩基の数としては1塩基又は2塩基以上が挙げられ、第二のプライマー全体の長さによって異なるが、例えば1塩基〜10塩基、好ましくは1塩基〜5塩基が挙げられる。
好ましくは、前記第二のプライマーは、前記第一のプライマーの一部に含まれる前記単一の付加塩基配列に対して相同な配列を含む。これにより、例えば、測定の精度を高めることができる。ここで、前記第二のプライマーにおいて、前記単一の付加塩基配列に対して「相同」とは、前記単一の付加塩基配列に対して80%以上の相同性を有することを意味する。前記第二のプライマーにおける前記単一の付加塩基配列に対して相同な配列は、好ましくは、前記単一の付加塩基配列に対して90%以上、最も好ましくは100%の相同性を有する。
前記第二のプライマーには、前記第二のプライマーによる核酸増幅が前記第一のプライマーによる核酸増幅よりも優先して進行するように、第二のプライマーのTm値(前記増幅産物に対するTm値を意味する)を第一のプライマーのTm値(前記少なくとも2つの遺伝子をコードする核酸の各増幅対象領域又は前記増幅産物に対するTm値を意味する)よりも高いことが好ましい。
このため、第二のプライマーは、前記単一の付加塩基配列及びその相補的な塩基配列とは異なる付加配列であって、第一のプライマーのTm値よりも高いTm値となるように調整可能な付加配列(以下、調整用付加塩基配列という)を含むことができる。この結果、前記増幅産物に対して、第二のプライマーのTm値を高くすることができる。この目的のための付加配列としては、特に制限されないがGC含量の高い塩基配列等を挙げることができる。
また、前記第二のプライマーには、人工核酸を導入してもよい。このような人工核酸としては、LNA、BNA、PNA等を挙げることができる。
また、前記第二のプライマーのTm値を前記第一のプライマーのTm値よりも高くするためにRNAプライマーを導入してもよい。さらに融解温度を向上させるTmエンハンサーであるMGB(マイナーグルーブバインダー)を付加させてもよい。
前記第二のプライマーの長さ及びTm値は、通常には、12mer〜60mer及び40℃〜85℃、好ましくは16mer〜50mer及び50℃〜80℃であるが、これに限定されない。
なお、前記第二のプライマーのTm値を前記第一のプライマーのTm値よりも高く設定する場合には、前記第二のプライマーのTm値が前記第一のプライマーのTm値に比べて、少なくとも0.1℃、1℃、3℃、5℃より高いことが好ましい。また、前記第二のプライマーのTm値と前記第一のプライマーのTm値の差が、30℃、25℃、20℃より低いことが好ましい。これを踏まえて、前記第二のプライマーのTm値と前記第一のプライマーのTm値の差が、0.1℃〜30℃高いことが好ましく、1℃〜30℃、3℃〜30℃、5℃〜25℃高いことがより好ましい。
また、前記第二のプライマーのTm値を前記第一のプライマーのTm値よりも高く設定する場合には、前記第二のプライマーのTm値が50℃〜85℃であり、前記第一のプライマーのTm値が40℃〜75℃であることが好ましい。また、前記第二のプライマーのTm値が55℃〜80℃であり、前記第一のプライマーのTm値が50℃〜75℃であることがより好ましい。
前記第一のプライマーセットは、前記第一のプライマーに加えて、測定対象となる遺伝子の二本鎖核酸の他方の一本鎖核酸を増幅させるための他のプライマーを含む。当該他方のプライマーとしては、前記単一の付加塩基配列を含むように同様に設計された同様の第一のプライマーとすることができ(一対の第一のプライマーによって構成されたセット)、また、前記第一のプライマーがハイブリダイズする一本鎖の相補鎖側を核酸増幅するために用いられ且つ前記単一の付加塩基配列を含まない第三のプライマーとすることができる。第三のプライマーは、前記単一の付加塩基配列を含まず、前記第一のプライマーが認識する前記測定対象遺伝子の一本鎖の相補鎖の核酸配列に対してハイブリダイズ可能な核酸配列を有するものであればよい。
前記第三のプライマーに関する「ハイブリダイズ可能な塩基配列」には、前記第一のプライマーに関して記述した記載をそのまま適用することができる。
また、前記第二のプライマーは、前記単一の付加塩基配列を有する二本鎖核酸の他方の核酸を増幅させるための他方のプライマーと第二のプライマーセットを形成することができる。前記第二のプライマーセットに含まれる他方のプライマーとしては、一対の前記第二のプライマーで構成されたセットすることができ、また、前記第一のプライマーセットに含まれる前記第三のプライマーと共に前記第二のプライマーセットを構成することもできる。即ち、前記第一のプライマーセットが前記第三のプライマーを含む場合、前記第一のプライマー及び前記第二のプライマーのそれぞれと一対(前記第一のプライマー又は前記第二のプライマーと前記第三のプライマーとのセット)を形成して、前記測定対象遺伝子の二本鎖核酸の両方の塩基配列を核酸増幅することができる。
核酸増幅工程において使用されるプライマーセットとしては、例えば、一対の第一のプライマーのセット及び一対の第二のプライマーのセットの組み合わせ、第一のプライマー及び第二のプライマーと第三のプライマーの組み合わせとすることができる。また、この場合に、第一のプライマー及び第二のプライマーには、前記調整用付加塩基配列が含まれていてもよい。
組み合わせの例示としては、例えば、これらに限定されないが、以下のものを挙げることができる:
前記単一の付加塩基配列及び前記測定対象遺伝子の増幅対象領域の塩基配列に対して相補的な塩基配列を有する第一のプライマーと、調整用付加塩基配列を含まない第二のプライマーと、第三のプライマーとの組み合わせ;
第二のプライマーよりも低いTm値となる第一のプライマーと、第一のプライマーよりも高いTm値となる第二のプライマーと、第三のプライマーとの組み合わせ;
第二のプライマーよりも高いTm値となる第一のプライマーと、第一のプライマーよりも低いTm値となる第二のプライマーと、第三のプライマーとの組み合わせ;
第二のプライマーよりも低いTm値となる調整用付加配列を含む第一のプライマーと、ミスマッチ又は縮重塩基を含まない第二のプライマーと、第三のプライマーとの組み合わせ;
第二のプライマーよりも低いTm値となるミスマッチ又は縮重塩基等の調整用付加塩基配列を含む第一のプライマーと、ミスマッチ又は縮重塩基等の調整用付加塩基配列を含まない第二のプライマーと、第三のプライマーとの組み合わせ;
第二のプライマーよりも低いTm値となる調整用付加配列及びミスマッチ又は縮重塩基を含む第一のプライマーと、ミスマッチ又は縮重塩基等の調整用付加塩基配列を含まない第二のプライマーと、第三のプライマーとの組み合わせ;
前記単一の付加塩基配列及び測定対象遺伝子の増幅対象領域の塩基配列の双方に対して置換等を含まない第一のプライマーと、第一のプライマーよりも高いTm値となる調整用付加塩基配列を含む第二のプライマーと、第三のプライマーとの組み合わせ;
ミスマッチ又は縮重塩基等の調整用付加塩基配列を含む第一のプライマーと、第一のプライマーよりも高いTm値となるミスマッチ又は縮重塩基等の調整用付加塩基配列を含む第二のプライマーと、第三のプライマーとの組み合わせ;並びに、
ミスマッチ又は縮重塩基を含む第一のプライマーと、第一のプライマーよりも高いTm値となるミスマッチ又は縮重塩基及び調整用付加塩基配列を含む第二のプライマーと、第三のプライマーとの組み合わせ。
なお、この場合、反応液中の測定対象遺伝子に対応する第一のプライマーの構成は、同種のもの(例えば、共にミスマッチ又は縮重塩基を含まない第一のプライマーで構成されている)であってもよく、異種のもの(例えば、一方はミスマッチ又は縮重塩基を含まない第一のプライマーを適用し、他方はミスマッチ又は縮重塩基を含む第一のプライマーを適用する)であってもよいが、複数の測定対象遺伝子に対して同一の増幅効率で核酸増幅を進行させる観点などから、同種であることが好ましい。
第三のプライマーを用いた場合には、前記反応液は、前記第三のプライマーを、当該第三のプライマーと対となる前記第一のプライマーの量に対して物質量基準で0.25倍量〜4倍量で含むことができる。0.25倍量以上であれば、例えば、第一のプライマーと第三のプライマーの増幅バランスを大きく損なうことなく増幅できる傾向があり、4倍量以下であれば、例えば、第三のプライマーの増幅産物に第二のプライマーが反応し易い等の利点を得ることができる。
第三のプライマー量は第一のプライマーの量と等量にすることができる。また、実際に用いるプライマー配列や試薬処方、得られる検出結果の数値を調節するために、第三のプライマーの量を多くするか少なくするかを微調整して最適化することができる。これにより、例えば、参照遺伝子若しくは標的遺伝子、又は5’側の遺伝子領域若しくは3’側の遺伝子領域の検出シグナルの強さを調節可能にすることができるという利点と、この利点に加えて、参照遺伝子及び標的遺伝子の増幅効率を調節することができるという利点を得ることができる。
例えば、第二のプライマーによる反応に移行させ易くする等の点で、好ましくは、第三のプライマーの量を、第一のプライマーの存在量に対して物質量基準で1倍〜4倍程度にすることができ、より好ましくは1倍〜2倍とすることができる。
さらに、前記第三のプライマーの量を前記第一のプライマーの量よりも少なくした場合には、例えば、第三のプライマーが反応液中に少ないため、前記第一のプライマーと第二のプライマーとが第三のプライマーを奪い合うように反応が起こる。このことから、参照遺伝子と標的遺伝子の反応プラトーに達し易い試薬を用意できる等の利点を得ることができる。この場合、第三のプライマーの量を、第一のプライマーの存在量よりも物質量基準で0.25倍〜1倍程度の量とすることができ、より好ましくは0.5倍〜1倍とすることができる。
また、前記反応液は、前記第二のプライマーを、前記第一のプライマーセットに含まれる各プライマーと物質量基準で等量又は多い量で含むことができる。これにより、例えば、第一のプライマーセットによって核酸増幅された増幅産物を確実に増幅させることができる等の利点を有する。また、第一のプライマーセットによる核酸増幅に比べて第二のプライマーセットの核酸増幅に移行し易い、第二のプライマーによる核酸増幅産物が多量に得られる、及び、第二のプライマーの枯渇が原因で核酸増幅産物がプラトーに達することを防止する等の利点の1つ以上も得ることができる。
好ましくは、前記第二のプライマーは、前記反応液中で、第一のプライマーセットを構成する各プライマーのうち多い方の量の1倍量〜400倍量(モル比)、好ましくは1倍量〜40倍量(モル比)の多い量とすることができ、さらに好ましくは1倍〜20倍(モル比)とすることができるが、本発明においては、第二のプライマーの存在量が、第一のプライマーセットを構成する第一プライマーのうち存在量の最も多い第一プライマーの存在量に比べて4倍量〜20倍量(モル比)である。第二のプライマーの反応液中の濃度を前記第一のプライマーセットを構成する各プライマーのうち多い方の濃度よりも1倍量以上とすることにより、増幅効率を損なうことなく増幅産物を確実に反応液中に蓄積することができる等の傾向があり、400倍量以下とすることにより、非特異的な増幅の防止や、第一のプライマーセットによる核酸増幅反応を妨害しない等の傾向がある。
更に前記反応液は、前記第一のプライマーとの量比、及び前記第二のプライマーと量比を共に満たすように、前記第三のプライマーを含むことができる。これにより、上述した利点を共に有することができる。
なお、前記核酸増幅工程において、各プライマーセットに含まれる各プライマーの長さは同一であっても異なっていてもよい。
核酸増幅の方法としては、ポリメラーゼを用いる方法が好ましく、その例としては、PCR法、ICAN法、LAMP法、NASBA法等が挙げられる。ポリメラーゼを用いる方法により増幅する場合は、後述するプローブの存在下で増幅を行うことが好ましい。用いるプローブ及びポリメラーゼに応じて、増幅の反応条件等を調整することは当業者であれば容易である。
またPCR法に用いるDNAポリメラーゼとしては、通常用いられるDNAポリメラーゼを特に制限なく用いることができる。例えば、GeneTaq(ニッポンジーン社製)、PrimeSTAR Max DNA Polymerase(タカラバイオ社製)、Taq ポリメラーゼ等を挙げることができる。
ポリメラーゼの使用量としては、通常用いられている濃度であれば特に制限はない。例えば、Taqポリメラーゼを用いる場合、好ましくは、反応液量50μlに対して0.01U〜100Uの濃度とすることができる。
前記PCR増幅産物の解離(解離工程)における加熱温度は、前記増幅産物が解離できる温度であれば特に制限されない。例えば、85℃〜95℃である。加熱時間も特に制限されない。通常、1秒〜10分であり、好ましくは1秒〜5分である。
また、解離した一本鎖核酸と前記プライマーそれぞれとのハイブリダイズは、例えば、前記解離工程の後、前記解離工程における加熱温度を降下させることによって行うことができる。温度条件としては、例えば、50℃〜80℃である。
温度条件は、核酸増幅の反応過程において複数の条件を設定してもよい。例えば、PCR反応を50サイクル実施する核酸増幅反応において、前半の10サイクルを55℃で実施し、後半の40サイクルを65℃で実施するといった反応条件を調整しても良い。
ハイブリダイズ工程の反応液における各組成の体積や濃度は、特に制限されない。具体例としては、前記反応液におけるプライマーの濃度は、例えば、第一プライマーと第三プライマーは0.001μM〜1μMであり、好ましくは0.01μM〜0.5μM、第二プライマーの濃度は、例えば、0.01μM〜10μMであり、好ましくは0.05μM〜5μMである。
前記反応液は、後述するシグナル検出工程において効果的にシグナルを検出するために、前記少なくとも2種の増幅産物をそれぞれ認識する少なくとも2種の検出用プローブを含んでもよい。
前記検出用プローブとしては、目的とする増幅産物を検出することができれば特に制限はない。また検出用プローブの長さとしては、特に制限はないが、5mer〜50merであることが好ましく、10mer〜30merであることがより好ましい。プローブの長さがこの範囲内であれば、例えば検出感度を高めることができる。
前記検出用プローブは、前記測定対象遺伝子それぞれの核酸配列に対して、70%〜100%同じ配列であることが好ましく、80%以上同一であることが特に好ましい。
また、前記検出用プローブを核酸増幅工程でプライマーと共に存在させて使用する場合には、DNAポリメラーゼの反応対象となってプローブ自体の伸長を予防するために、3’末端側に後述する蛍光標識が付加されているか、プローブの3’末端に更にリン酸基が付加されていることが好ましい。
検出用プローブは、標識が付されている標識化プローブであることが検出の効率性の観点から好ましい。
標識化プローブにおける標識物質の具体例としては、例えば、蛍光色素及び蛍光団が挙げられる。前記標識化プローブの具体例としては、例えば、蛍光色素で標識され、単独で蛍光を示し且つハイブリッド形成により蛍光が減少(例えば、消光)するプローブが好ましい。
このような蛍光消光現象(Quenching phenomenon)を利用したプローブは、一般に、蛍光消光プローブと呼ばれる。中でも、前記プローブとしては、オリゴヌクレオチドの3’領域(例えば、3’末端)もしくは5’領域(例えば、5’末端)の塩基が蛍光色素で標識化されていることが好ましく、標識化される前記塩基は、シトシン(C)であることが好ましい。この場合、前記標識化プローブがハイブリダイズする検出目的配列において、前記標識化プローブの末端塩基Cと対をなす塩基もしくは前記対をなす塩基から1〜3塩基離れた塩基がグアニン(G)となるように、前記標識化プローブの塩基配列を設計することが好ましい。このようなプローブは、一般的にグアニン消光プローブと呼ばれ、いわゆるQ Probeとして知られている。
このようなグアニン消光プローブが検出目的配列にハイブリダイズすると、蛍光色素で標識化された末端のCが、前記検出目的配列におけるGに近づくことによって、前記蛍光色素の発光が弱くなる(蛍光強度が減少する)という現象を示す。このようなプローブを使用すれば、シグナルの変動により、ハイブリダイズと解離とを容易に確認することができる。また、前記標識物質は、例えば、通常、ヌクレオチドのリン酸基に結合することができる。
なお、Q Probeを用いた検出方法以外にも、公知の検出様式を適用してもよい。このような検出様式としては、Taq−man Probe法又はRFLP法などを挙げることができる。
前記蛍光色素としては、特に制限されないが、例えば、フルオレセイン、リン光体、ローダミン、ポリメチン色素誘導体等が挙げられ、市販の蛍光色素としては、例えば、BODIPY FL、FluorePrime、Fluoredite、FAM、Cy3およびCy5、TAMRA等が挙げられる。測定対象となる遺伝子が試料液中に複数存在するため、本発明においては、複数の検出用プローブが適用される。この場合に好ましく用いられる複数のプローブに使用可能な蛍光色素の組み合わせは、例えば、異なる条件で検出できればよく、特に制限されないが、例えば、Pacific Blue (検出波長445nm〜480nm)、TAMRA(検出波長585nm〜700nm)およびBODIPY FL(検出波長520nm〜555nm)の組み合わせ等が挙げられる。同一の蛍光色素を用いる場合には、前記検出対象に対するTm値が相違する検出用プローブを選択することが好ましい。
また、前記検出用プローブが、蛍光色素等の標識化物質で標識化された標識化プローブである場合、例えば、検出する蛍光強度等のシグナル強度を調節するために、前記標識化プローブと同じ配列である未標識プローブを併用してもよい。この未標識プローブは、例えば、その3’末端にリン酸が付加されてもよい。
前記反応液中の核酸に対する検出用プローブの添加割合(モル比)は、特に制限されない。試料中の核酸に対して1倍以下が好ましく、0.1倍以下がより好ましい。これにより、例えば検出シグナルを十分に確保できる。
前記核酸に対する前記検出用プローブの添加割合は、例えば、二本鎖核酸に対するモル比でもよいし、一本鎖核酸に対するモル比でもよい。
前記存在量測定工程では、前記少なくとも2種の増幅産物の存在量に基づくシグナルを検出し、該シグナルから前記少なくとも2つの遺伝子の存在量を測定することを含む。
少なくとも2種の増幅産物の存在量は、少なくとも2種の遺伝子の存在量を反映しているため、核酸増幅工程で得られた増幅産物の存在量に基づくシグナルを測定することにより、対象サンプル中の核酸における遺伝子の存在量を測定できる。
遺伝子の存在量の測定は、増幅産物の検出シグナルを得ること(以下、シグナル検出工程という)、及び得られた検出シグナルを対比して存在量を測定すること(以下、シグナル対比工程という)により行うことができる。
シグナルの検出は、反応液中に蓄積した増幅産物の存在量を測定する方法であればよく、シグナルの種類については特に制限はない。
前記シグナル検出工程としては、好ましくは、目的とする増幅産物を検出可能な検出用プローブを用いた検出方法を用いることができる。
前記シグナル対比工程では、前記シグナル検出工程で得られた各遺伝子に対応する各検出シグナルを対比することによって、各遺伝子の存在量を測定することを含む。前記検出シグナルの対比及び、対比結果からの各遺伝子の存在量の測定の方法については、特に限定されない。
例えば、PCRのサイクル数と増幅産物の蓄積量との関係から、前記遺伝子に対応した検出シグナルを対比して各遺伝子の存在量を算出してもよい。
この場合には、反応液中の複数の測定対象遺伝子の増幅産物量を、PCRサイクル数の経過と共に逐次測定し、得られた測定結果から、測定対象遺伝子の存在量を測定することができる。PCRサイクル数に伴う増幅産物の量は、一般に、指数関数的に増幅するが、一般的な検出方法では検出不能な初期サイクル期、指数関数的に増加して検出可能な増幅期、反応速度が低下するプラトー期に分けられる。前記核酸増幅工程では、前記検出対象遺伝子の種類に応じた複数の増幅産物は、いずれも第二のプライマーによって増幅産物されているため、プラトー期に到達しても、前記測定対象遺伝子の存在量に応じた量比で反応液中に蓄積する。このため、前記増幅産物の種類を識別する種類識別手段を適用することにより、反応液中に蓄積した前記測定対象遺伝子に由来する増幅産物を識別し、それぞれの量比を測定することによって、それぞれの測定対象遺伝子の存在量を測定することができる。
前記種類識別手段としては、前記検出用プローブのTm値、標識種、プローブを固定したDNAマイクロアレイ等を挙げることができる。
また、前記測定対象遺伝子が参照遺伝子と標的遺伝子とを含む場合には、参照遺伝子の存在量に対する比率から、標的遺伝子の存在量を測定してもよい。前記測定対象遺伝子が融合遺伝子における5’側の遺伝子領域と3’側の遺伝子領域とである場合には、5’側の遺伝子領域の存在量に対する比率から、3’側の遺伝子領域の存在量を測定してもよいし、3’側の遺伝子領域の存在量に対する比率から、5’側の遺伝子領域の存在量を測定してもよい。
また、前記存在量測定工程は、前記少なくとも2つの遺伝子の存在量が、当該遺伝子のそれぞれに対応する少なくとも2つの検出シグナルのTm解析により測定されるものであってもよい。この場合、前記シグナル検出工程及び前記シグナル対比工程としては、下記工程(I)〜(IV)を含むことがより好ましい。なお、下記工程(I)は、上述した核酸増幅工程と同時に進行するものであってもよい。
(I)前記検出用プローブ及び試料中の一本鎖核酸(増幅産物)を接触させて、ハイブリッド形成体を得ること(ハイブリダイゼーション工程)。
(II)前記ハイブリッド形成体を含む試料の温度を変化させることにより、前記ハイブリッド形成体を解離させ、前記ハイブリッド形成体の解離に基づく検出シグナルの変動を測定すること(測定工程)。
(III)前記検出シグナルの変動に基づいてハイブリッド形成体の解離温度であるTm値を検出すること(Tm値検出工程)。
(IV)前記Tm値に基づいて、前記試料中の一本鎖核酸における、目的とする増幅産物の存在又は存在比を検出すること(存在比検出工程)。
ハイブリダイゼーション工程では、前記検出用プローブと試料中の一本鎖核酸とを接触させて、両者をハイブリダイズさせる。試料中の一本鎖核酸は、例えば、上記のようにして得られた増幅産物を解離することで調製することができる。
前記増幅産物の解離(解離工程)における加熱温度は、前記増幅産物が解離できる温度であれば特に制限されない。例えば、85℃〜95℃である。加熱時間も特に制限されない。通常、1秒〜10分であり、好ましくは1秒〜5分である。
解離した一本鎖核酸と前記検出用プローブとのハイブリダイズは、例えば、前記解離工程の後、前記解離工程における加熱温度を降下させることによって行うことができる。温度条件としては、例えば、25℃〜50℃である。ハイブリダイズ工程の反応液における各組成の体積や濃度は、特に制限なく、通常適用される条件を適用することができる。
測定工程では、得られた前記一本鎖核酸と前記検出用プローブとのハイブリッド形成体を徐々に加熱し、温度上昇に伴う蛍光シグナルの変動を測定する。例えば、Q Probeを使用した場合、一本鎖核酸とハイブリダイズした状態では、解離した状態に比べて蛍光強度が減少(または消光)する。したがって、例えば、蛍光が減少(または消光)しているハイブリッド形成体を徐々に加熱し、温度上昇に伴う蛍光強度の増加を測定すればよい。
蛍光強度の変動を測定する際の温度範囲は、特に制限されないが、例えば、開始温度が室温〜85℃であり、好ましくは25℃〜70℃であり、終了温度は、例えば、40℃〜105℃である。また、温度の上昇速度は、特に制限されないが、例えば、0.1℃/秒〜20℃/秒であり、好ましくは0.3℃/秒〜5℃/秒である。
測定工程では、前記少なくとも2種の遺伝子の存在量を測定するために用いられる前記シグナルを、同一の波長より取得される吸光度又は蛍光値により得ることが好ましい。これにより、簡略化された測定及び検出によって、前記測定対象遺伝子の存在量を測定することができる。同一波長により吸光度又は蛍光値を取得するためには、例えば、検出用プローブの標識を同一のものにすればよい。このとき、使用される各プライマーのTm値が異なることが、検出感度の観点から、より好ましい。
Tm値検出工程では、前記シグナルの変動を解析してTm値として決定する。具体的には、得られた蛍光強度から各温度における微分値(−d蛍光強度/dt)を算出し、最も低い値を示す温度をTm値として決定できる。また、単位時間当たりの蛍光強度増加量(蛍光強度増加量/t)が最も高い点をTm値として決定することもできる。なお、標識化プローブとして、消光プローブではなく、ハイブリッド形成によりシグナル強度が増加するプローブを使用した場合には、反対に、蛍光強度の減少量を測定すればよい。
また、ハイブリッド形成体を加熱して、温度上昇に伴う蛍光シグナル変動(好ましくは蛍光強度の増加)を測定することに代えて、例えば、ハイブリッド形成時におけるシグナル変動の測定を行ってもよい。すなわち、前記プローブを添加した試料の温度を降下させてハイブリッド形成体を形成する際の前記温度降下に伴う蛍光シグナル変動を測定してもよい。
具体例として、相補配列にハイブリダイズしていないときの蛍光強度に比べて、相補配列にハイブリダイズしているときの蛍光強度が減少(消光)する蛍光標識プローブ(例えば、QProbe)を使用した場合、前記プローブを試料に添加した際には、前記プローブは解離状態にあるため蛍光強度が大きいが、温度の降下によりハイブリッド形成体を形成すると、前記蛍光が減少(または消光)する。したがって、例えば、前記加熱した試料の温度を徐々に降下して、温度下降に伴う蛍光強度の減少を測定すればよい。
他方、ハイブリッド形成によりシグナルが増加する標識化プローブを使用した場合、前記プローブを試料に添加した際には、前記プローブは解離状態にあるため蛍光強度が小さい(または消光)が、温度の降下によりハイブリッドを形成すると、蛍光強度が増加するようになる。したがって、例えば、前記試料の温度を徐々に降下して、温度下降に伴う蛍光強度の増加を測定すればよい。
存在比検出工程では、前記Tm値に基づいて、前記試料中の一本鎖核酸における、目的とする増幅産物の存在量を検出し、当該存在量から測定対象となる遺伝子の存在量を検出する。
前記シグナル検出工程において得られた前記増幅産物の検出シグナルには、測定対象となる複数の遺伝子に由来する複数の増幅産物のシグナルが混在している。これらのシグナルは、それぞれ増幅産物の存在量を反映しているので、それぞれの検出シグナルを比較対比することによって、測定対象遺伝子の存在量、即ち、対象サンプル中の核酸における存在量を測定することができる。特に、測定対象となる遺伝子が、予め遺伝子の存在量が判明している前記参照遺伝子と前記標的遺伝子と含む場合、参照遺伝子の検出シグナルを基準とすることにより、簡便に、前記標的遺伝子の存在量を測定することができる。
また、測定対象となる遺伝子が、融合遺伝子における5’側の遺伝子領域と3’側の遺伝子領域とである場合、5’側の遺伝子領域の検出シグナルと、3’側の遺伝子領域の検出シグナルとを比較することにより、簡便に、サンプル中における融合遺伝子の存在を検出することができる。
検出シグナルに基づいて遺伝子の存在量を測定する方法としては、特に制限はなく、この目的のために使用可能な解析方法であれば、いずれも適用することができる。
例えば、上述したシグナルのTm解析により得られた融解曲線を対比することによって遺伝子の存在量を測定することが、精度よく且つ簡便に目的とする遺伝子の存在量を測定できるなどの利点を有し、好ましい。
このようなTm解析方法としては、WO2009/081965、及びWO2010/001969等に記載されたものを好ましく挙げることができる。
Tm解析方法の好ましい一例として、測定対象遺伝子を参照遺伝子及び標的遺伝子とし、Tm解析の結果を面積解析して、それぞれの遺伝子の対象サンプル中の核酸における存在量を決定する方法を以下に述べる。
図1(A)に、ある任意の標的遺伝子と参照遺伝子の核酸混合物の温度と吸光度または蛍光強度等の検出信号との関係で表された融解曲線、及び同図(B)に温度と検出信号の微分値との関係で表された融解曲線(微分融解曲線ともいう)を示す。この微分融解曲線からピークを検出することにより、参照遺伝子の核酸Rの融解温度Tm及び標的遺伝子の核酸Tの融解温度Tmを検出して、Tm及びTmを含む温度範囲の各々を設定する。
Tmを含む温度範囲ΔTとしては、例えば、TmとTmとの間で検出信号の微分値が最小となる温度を下限、検出信号のピークの裾野に対応する温度を上限とする温度範囲を設定することができる。また、Tmを含む温度範囲ΔTとしては、例えば、TmとTmとの間で検出信号の微分値が最小となる温度を上限、検出信号のピークの裾野に対応する温度を下限とする温度範囲を設定することができる。
なお、温度範囲ΔT及び温度範囲ΔTは、同一の幅(例えば、10℃)または異なる幅(例えば、温度範囲ΔTが10℃、温度範囲ΔTが7℃)となるように設定してもよい。また、温度範囲ΔT及び温度範囲ΔTは、それぞれの融解温度TmからプラスX℃、マイナスX℃の幅(X℃は例えば15℃以内、望ましくは10℃以内)というように設定してもよい。
次に、温度範囲ΔT及び温度範囲ΔTの各々について、微分融解曲線の温度範囲の下限に対応する点と上限に対応する点とを通る直線と微分融解曲線とで囲まれた面積を求める。面積の求め方の一例として、具体的に以下のように求めることができる。温度Tにおける検出信号の微分値をf(T)とし、温度Tにおけるベース値をB(T)として、下記(1)式により求める。
面積S={f(Ts+1)−B(Ts+1)}+{f(Ts+2)−B(Ts+2)}
+・・・+{f(Te−1)−B(Te−1)} ・・・(1)
ただし、Tは各温度範囲における下限値、Tは上限値である。また、各温度Tにおけるベース値B(T)は、下記(2)式により求まる値であり、検出信号に含まれるバックグラウンドレベルを表すものである。このベース値を検出信号の微分値から減算することにより、検出信号に含まれるバックグラウンドの影響を除去する。
B(T)=a×(T−T)+f(T) ・・・(2)
ただし、a={f(T)−f(T)}/(T−T) である。
上記(1)式及び(2)式に従って、各核酸について、温度範囲ΔTにおける面積S及び温度範囲ΔTにおける面積Sを求め、面積比と各核酸の存在比との関係を算出する。例えば、横軸に存在比(核酸の総量に対する標的遺伝子Tの割合)をとり、縦軸に面積比(S/S)をとってもよい。なお、面積比はS/Sで定めてもよい。
ここで参照遺伝子の存在量は予め判明しているので、参照遺伝子の面積と標的遺伝子の面積との対比を行うことにより、標的遺伝子の存在量を決定することができる。
なお、上記のようにして予め具体的な存在量がわかっている測定対象遺伝子について検量線を作成して、標的遺伝子の定量を行ってもよい。
上記のようにして作成された検量線を用いて、測定対象となる複数の遺伝子の存在量を測定する。存在量の測定は、測定対象となる遺伝子のうち、一の遺伝子の存在量との対比でその他の遺伝子の相対的な存在量を得てもよく、一の遺伝子の具体的な存在量に基づいてその他の遺伝子の具体的な存在量を得てもよい。一の遺伝子を参照遺伝子とした場合には、標的遺伝子の存在量を参照遺伝子の存在量に基づく相対量として得ることができ、また、具体的な量として得てもよい。存在量としてコピー数を求める場合には、前記参照遺伝子由来の増幅産物の検出シグナルと、前記標的遺伝子由来の増幅産物の検出シグナルを比較して、前記標的遺伝子のコピー数を決定することができる。
なお、測定対象遺伝子が、5’側の遺伝子領域及び3’側の遺伝子領域である場合についても、上述の方法と同様の方法で、5’側の遺伝子領域由来の増幅産物の検出シグナルと、3’側の遺伝子領域由来の増幅産物の検出シグナルとを比較して、サンプル中における融合遺伝子の存在を検出することができる。
<遺伝子の測定キット>
本発明にかかる遺伝子測定キットは、前述した遺伝子測定方法のためのキットであって、前述した第一のプライマーを含む前記第一のプライマーセットと、前記第二のプライマーを含む。
本測定キットによれば、存在量の異なる測定対象遺伝子の存在量を簡便に測定することができる。
また、前記測定キットには、前記第一のプライマー及び第二のプライマーに加えて、前述した第三のプライマーを含んでもよい。
本遺伝子測定キットにおける前記第一のプライマー、前記第二のプライマー及び前記第三のプライマーについては、前述した事項がそのまま適用される。
また、前記測定キットには、前記少なくとも2つの遺伝子の核酸増幅領域にそれぞれハイブリダイズ可能な核酸配列を有し且つ標識を備えた少なくとも2つの検出用プローブを含めてもよい。これにより、検出プローブを用いて、存在量の異なる測定対象遺伝子を、いっそう簡便に測定することができる。前記測定キットに含まれる前記検出用プローブとしては、前記標識が蛍光標識であるものが好ましい。前記標識及び蛍光標識については、前述した事項がそのまま適用される。
また前記測定キットは、プローブの他に、本発明にかかる測定方法における核酸増幅を行うのに必要とされる試薬類をさらに含んでいてもよい。また、前記各プローブ、前記各プライマー及びその他の試薬類は、別個に収容されていてもよいし、それらの一部が混合物とされていてもよい。
なお、「別個に収容」とは、各試薬が非接触状態を維持できるように区分けされたものであればよく、必ずしも独立して取り扱い可能な個別の容器に収容される必要はない。
さらに本発明の測定キットは、前記第一のプライマーを含む前記第一のプライマーセットと第二のプライマーとを用いて、測定対象遺伝子を含む試料について微分融解曲線を作成し、そのTm値解析を行って、測定対象遺伝子の存在量を測定することが記載された取扱い説明書、又は測定キットに含まれる若しくは追加的に含むことが可能な各種の試薬について記載された使用説明書を含むことが好ましい。
また、本発明の測定キットは、融合遺伝子変異を検出するのに用いることができる。例えば、ALK融合遺伝子測定キットとしては、ALK遺伝子における特定遺伝子領域を増幅させることが可能な第一のプライマーを含む前記第一のプライマーセット(例えば、配列番号19及び21)と第二のプライマー(例えば、配列番号22)とを含む測定キットが挙げられる。また、ALK融合遺伝子測定キットは、ALK遺伝子における特定遺伝子領域を増幅させることが可能な第一のプライマーを含む前記第一のプライマーセット(例えば、配列番号19及び21)と、第二のプライマー(例えば、配列番号22)と、第三のプライマー(例えば配列番号18及び20)とを含む測定キットであってもよい。
<遺伝子測定装置>
本発明にかかる遺伝子測定装置は、前述した遺伝子の存在量の測定方法を適用可能な装置であって、前記第一のプライマーにより導入された前記単一の付加塩基配列を含み且つ第二のプライマーによって核酸増幅された前記少なくとも2つの遺伝子に対応する増幅産物の存在量に基づく少なくとも2つのシグナルを検出する検出部と、前記検出部により検出された前記少なくとも2つの検出シグナルを対比して、前記少なくとも2つの遺伝子の存在量を演算する演算部と、を含む遺伝子測定装置である。
本遺伝子測定装置であれば、前述した本発明にかかる遺伝子の存在量の測定方法を、より簡便に実施できる。
前記検出部は、検出シグナルを検出可能な物であれば特に制限はなく、例えば、用いられる検出用プローブの種類に応じて、適宜選択可能である。例えば、検出用プローブが蛍光標識プローブであれば、蛍光検出器を含むことができる。
前記演算部は、検出部によって得られた各検出シグナルに基づいて、反応液中の測定対象遺伝子の存在量を演算する。
演算には、例えば、融解曲線の検出信号を温度に関して微分して、温度と検出信号の微分値との関係を表す微分融解曲線を演算すること、微分融解曲線に対して、予め検量線を作成したときに設定した温度範囲を設定すること、微分融解曲線の温度範囲の下限に対応する点と上限に対応する点とを通る直線と微分融解曲線とで囲まれた面積であって、測定対象遺伝子に対応する面積をそれぞれ求めること、得られた面積の比を演算すること、予め作成された検量線に基づいて、面積比に対応する測定対象遺伝子の存在比を演算すること、が含まれる。
前記検出部及び演算部を備えた装置としては、公知のいずれを用いてもよい。例えば、WO2009/081965、及びWO2010/001969等に記載された装置をそのまま適用してもよい。
<遺伝子測定システム>
本発明にかかる遺伝子測定システムは、前述した遺伝子の存在量の測定方法を適用可能な装置であって、前記第一のプライマーにより導入された前記単一の付加塩基配列を含み且つ第二のプライマーによって核酸増幅された前記少なくとも2つの遺伝子に対応する増幅産物の存在量に基づく少なくとも2つのシグナルを検出する検出装置と、前記検出装置により検出された前記少なくとも2つの検出シグナルを対比して、前記少なくとも2つの遺伝子の存在量を演算する演算装置と、を含む遺伝子測定システムである。
本遺伝子測定装置であれば、前述した本発明にかかる遺伝子の存在量の測定方法を、より簡便に実施できる。
本システムに用いられる検出装置及び演算装置は、上記遺伝子測定装置において検出部及び演算部として記述したものをそのまま適用することができる.
また、前記測定装置と同様に、前記測定装置及び演算装置については、例えば、WO2009/081965、及びWO2010/001969等に記載された装置をそのまま適用してもよい。
<遺伝子診断方法>
本発明に遺伝子診断方法は、上述した遺伝子測定方法を用いて行う診断方法である。
本方法によれば、対象サンプル中の核酸における存在量が異なる少なくとも2つの遺伝子の存在量に基づいて、このような存在量に関連する疾患、薬剤代謝能、薬剤感受性などの診断を行うことができる。
好ましくは、測定対象遺伝子の存在量がコピー数であり、対象サンプル中の核酸におけるコピー数が増減することを指標の一つとするコピー数多型の診断に本発明を適用する。コピー数多型を指標の一つとする疾患としては、染色体1q21.1のコピー数多型による神経芽細胞腫等が挙げられる。本発明によれば、これらの疾患、薬剤代謝能、薬剤感受性に関わる遺伝子の存在量の検出を精度よく診断することができる。
以下、本発明を実施例にて詳細に説明する。しかしながら、本発明はそれらに何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。
[実施例1]
CYP2D6遺伝子を標的遺伝子として、ヒトCYP2D6遺伝子の特定領域配列(配列番号1)の存在量の測定を行った。参照遺伝子としてヒトsod2遺伝子の特定領域配列(配列番号2)を用いた。なお、CYP2D6遺伝子のゲノム塩基配列は、GenBank NG008376として、sod2遺伝子のゲノム塩基配列はGenBank NG008729として、それぞれ入手可能である。
配列番号1又は配列番号2の核酸配列をpUC57に挿入した人工核酸(プラスミド)を調製し、CYP2D6のコピー数を変化させるために、表1に従って各種のプラスミド溶液による試料a〜dを準備した。これらのプラスミド溶液を用いて、所定のコピー数で標的遺伝子及び参照遺伝子を含む各種試料(各種の鋳型)を調製した。

全自動SNPs検査装置(商品名i−densy(商標)、アークレイ社製)と、下記表2に示すプローブ及び各種プライマーを使用し、表3に記載した処方の検査用試薬を用いて、PCRおよびTm解析を行った。なお、使用したポリラーゼは、Taqポリメラーゼである。
PCRは、95℃で60秒処理した後、95℃で1秒及び63℃で15秒を1サイクルとして、60サイクル繰り返した。
またTm解析は、PCRの後、95℃で1秒、40℃で60秒処理し、続けて温度の上昇速度1℃/3秒で、40℃から80℃まで温度を上昇させ、その間の経時的な蛍光強度の変化を測定した。励起波長を520nm〜555nmとし、測定波長を585〜700nmとして、蛍光標識プローブに由来する蛍光強度の変化をそれぞれ測定した。標的遺伝子(CYP2D6)の場合には58℃付近、参照遺伝子(sod2)の場合には、70℃付近にそれぞれピークが認められることがわかっている。
Tm値に基づく解析は、面積解析に基づいて行った。具体的には、試料a〜dについて、Tm解析の結果から微分融解曲線を作成して、標的遺伝子及び参照遺伝子のそれぞれのTm値とそれぞれの面積を得て、参照遺伝子の面積に対する標的遺伝子の面積の比を求めた。結果を表8及び図2Aに示す。
使用したプライマー及びプローブの配列は表2に記載のとおりである。
CYP2D6の核酸を、単一の付加塩基配列とCYP2D6に特徴的な塩基配列に相補的な塩基配列とで構成された第一のプライマー(配列番号3、Tm値70.4℃)と、CYP2D6に特徴的な塩基配列に相補的な塩基配列で構成された第三のプライマー(配列番号4、Tm値55.7℃)を用いて増幅した。sod2の核酸を、前記単一の付加塩基配列と、sod2に特徴的な塩基配列に相補的な塩基配列とで構成されていた第一のプライマー(配列番号6、Tm値69.7℃)と、sod2に特徴的な塩基配列に相補的な塩基配列で構成された第三のプライマー(配列番号5、Tm値57.3℃)を用いて増幅した。それぞれの増幅産物を、前記単一の付加塩基配列のみで構成された第二のプライマー(配列番号7、Tm値59.6℃)と、それぞれの第三のプライマーを用いて増幅した。CYP2D6の検出用プローブ(配列番号8)及びsod2の検出用プローブ(配列番号9)は、表2に記載のとおりである。各プライマーのTm値は、Meltcalcを用いて算出した値である。
なお、表2中、小文字で表記した塩基配列は、前記単一の付加塩基配列を示す。


[比較例1〜3]
比較例1では、下記表4に示すようにCYP2D6及びsod2の双方において前記単一の付加塩基配列を含まないプライマー(2D6−Int6r−F1:配列番号10、sod2−R1:配列番号11)を含むプライマーセットを使用し、且つ第二のプライマーを使用しなかった表5の処方とした以外は、実施例1と同様にPCR及びTm解析を行った。
比較例2では、下記表4に示すようにCYP2D6及びsod2の双方において前記単一の付加塩基配列を含まないプライマー(2D6−Int6r−F1:配列番号10、sod2−R1:配列番号11)を含むプライマーセットを使用した表6の処方とした以外は、実施例1と同様にPCR及びTm解析を行った。
比較例3では、第二のプライマー(PEN3 F4:配列番号7、表2参照)を使用しない表7の処方とした以外は、実施例1と同様にPCR及びTm解析を行った。
比較例1〜3で使用した各プライマーの配列及びTm解析の結果を表8及び図2B〜図2Dに示す。





表8及び図2A〜Dに示されるように、実施例1では、試料a〜b中の標的遺伝子のコピー数に従って面積比が大きくなり、コピー数の増加に反映した結果が得られた。これに対して、比較例1〜比較例3ではいずれも、試料中のコピー数の増加に応じた面積比の増加となっておらず、コピー数の増加に反映した結果が得られなかった。
実施例1及び比較例1をそれぞれ3回ずつ繰り返しても、同様の傾向が認められた(データ示さず)。
[実施例2〜実施例3]
実施例2では、第二のプライマーを、前記調整用付加塩基配列を有するPEN3 F4+CTACG(CTACGCTACGCTACGcgctgtagtcgaagacgatgtttacg:配列番号12、41mer、Tm値69.4℃)に変更して表9に示される処方に従った各試薬を使用し、PCRを、95℃で60秒処理した後、95℃で1秒及び60℃で15秒を1サイクルとして、50サイクル繰り返した以外は、実施例1と同様にしてTm解析を行った。結果を表11及び図3に示す。
実施例3では、CYP2D6用の第一のプライマーを、5’末端側の前記単一の付加塩基配列を4塩基削除すると共にCYP2D6の増幅対象領域に相当する塩基配列に縮重を含む2D6−P3F4−Int6r−F2(gtagtcgaagacgatgtttacgTGAGCCCATCTGGG(B)AACA、B=c,g,又はt:配列番号13、41mer、Tm値67.6〜69.2℃)に変更し、sod2用の第一のプライマーを、5’末端側の前記単一の付加塩基配列を4塩基削除すると共にsod2の増幅対象領域に相当する塩基配列に縮重を含むP3F4−sod2−R4(gtagtcgaagacgatgtttacgCCTTATTGAAACCAAGC(D)AACC、D=a、g又はt:配列番号14、44mer、Tm値66〜67.3℃)に変更し、表10に示される処方に従った各試薬を使用し、PCRを、95℃で60秒処理した後、95℃で1秒及び57℃で15秒を1サイクルとして5サイクル繰り返した後、95℃で1秒及び63℃で45秒を1サイクルとして45サイクル繰り返した以外は、実施例1と同様にしてPCR及びTm解析を行った。各プライマーのTm値は、Meltcalcを用いて算出した値である。結果を表11及び図4に示す。



表11、図3及び図4に示されるように、実施例2及び実施例3では、試料a〜b中の標的遺伝子のコピー数に従って面積比が大きくなり、コピー数の増加を反映した結果が得られた。また、プライマーの条件及び反応温度条件を変更することにより、検出グラフの波形が変化して、それぞれ異なる面積比の結果が得られるため、これらの条件を適宜変更することによって、試薬処方の最適化を行うことができる。
[実施例4〜実施例5]
実施例4では、第一のプライマーを、調整用付加配列及び縮重塩基を含む2D6−P3F4−Int6−F2(gtagtcgaagacgatgtttacgTGAGCCCATCTGGG(B)AACA:配列番号13、41mer、Tm値67.6℃〜69.2℃)と、P3F4−sod2−R4(gtagtcgaagacgatgtttacgCCTTATTGAAACCAAGC(D)AACC:配列番号14、44mer、Tm値66℃〜67.3℃)にそれぞれ変更し、第二のプライマーを、調整用付加塩基配列を含むPEN3 F4+CTACG(CTACGCTACGCTACGcgctgtagtcgaagacgatgtttacg:配列番号12、41mer、Tm値69.4℃)に変更して、表12に示される処方に従った各試薬を使用し、PCRを、95℃で60秒処理した後、95℃で1秒及び57℃で15秒を1サイクルとして5サイクル繰り返し、その後、95℃で1秒及び63℃で45秒を1サイクルとして45サイクル繰り返した以外は、実施例1と同様にしてPCR及びTm解析を行った。
実施例5では、各プライマーの量を表13に示されるように変更した以外は、実施例4と同様にして、PCR及びTm解析を行った。
結果をそれぞれ表14、図5及び図6に示す。



表14、図5及び図6に示されるように、実施例4及び実施例5では、試料a〜d中の標的遺伝子のコピー数に従って面積比が大きくなり、コピー数の増加を反映した結果が得られた。
実施例4は、第一のプライマーよりもTm値の高い第二のプライマーを使用すると共に、第三のプライマーよりも少ない量の第一のプライマーを使用したものである。実施例5は、実施例4と同一の組み合わせのプライマーを使用し、第三のプライマーよりも多い量の第一のプライマーを使用したものである。いずれの場合でも、表14、図5及び図6に示されるように、標的遺伝子のコピー数の増加を適切に反映した結果を得ることができる。
比較例6、実施例7〜8]
比較例6、実施例7〜8では、CYP2D6のプローブを3T−2D6−Int6−R2(gtacccttcctccc−(TAMRA):配列番号15)に変更し、表15に示されるように第二のプライマー(PEN3 F4)の量をそれぞれ100nM(比較例6)、400nM(実施例7)又は1200nM(実施例8)に変更した処方に従った各試薬を使用した以外は、実施例1と同様にしてPCR及びTm解析を行った。
結果をそれぞれ表16及び図7に示す。なお、図7では、比較例6、実施例7〜8それぞれの各試料における面積比を、標的遺伝子(CYP2D6)の量が250コピー/μLのときの面積比を100%としたときの割合で示す。
表16及び図7に示されるように、実施例7〜実施例8では第二のプライマーの反応液中の存在量を変更しても、試料a〜d中の標的遺伝子のコピー数に従って面積比が大きくなり、コピー数の増加を反映した結果が得られた。
また、第二のプライマーの量を、反応液中の他のプライマーの量よりも多くすると面積比の増加率が大きくなり、少なくすると面積比の増加率が小さくなることが分かった。
いずれの場合でも、表16及び図7に示されるように、標的遺伝子のコピー数の増加を適切に反映した結果を得ることができる。
従って、本発明によれば、対象サンプル中の核酸における遺伝子の存在量を従来の技術よりも正確に且つ簡便に測定することができる。
[実施例9]
ALK遺伝子の5’側の遺伝子領域として、NCBIのアクセッションNo.NM_004304.4の2460〜2801番目の塩基配列(配列番号24)と、3’側の遺伝子領域として、4690〜5031番目の塩基配列(配列番号25)とを、pcDNA3.1(+)に挿入した人工核酸(プラスミド)よりRNAを合成し、表17に記載のコピー数を含む鋳型を調製した。
全自動SNPs検査装置(商品名i−densy(商標)、アークレイ社製)と、下記表18に示すプローブ及び各種プライマーを使用し、表19に記載した処方の検査用試薬を用いて、RT−PCRおよびTm解析を行った。なお、使用したポリラーゼは、Taqポリメラーゼである。また、PEN3 R2(共通プライマー)は、0、2μM又は4μM添加した。
55℃で15分処理し、逆転写反応を行った。
PCRは、逆転写反応後の試料を、95℃で60秒処理した後、95℃で1秒及び58℃で15秒を1サイクルとして、50サイクル繰り返した。
またTm解析は、PCRの後、95℃で1秒、40℃で60秒処理し、続けて温度の上昇速度1℃/3秒で、40℃から75℃まで温度を上昇させ、その間の経時的な蛍光強度の変化を測定した。
励起波長を520nm〜555nmとし、測定波長を585〜700nmとして、蛍光標識プローブに由来する蛍光強度の変化をそれぞれ測定した。
5’側の遺伝子領域由来の増幅産物は51℃付近、3’側の遺伝子領域由来の増幅産物は58℃付近にそれぞれピークが認められることがわかっている。
Tm値に基づく解析は、面積解析に基づいて行った。具体的には、鋳型a〜cについて、Tm解析の結果から微分融解曲線を作成して、5’側の遺伝子領域及び3’側の遺伝子領域のそれぞれのTm値とそれぞれの面積を得て、5’側の遺伝子領域の面積に対する3’側の遺伝子領域の面積の比を求めた。結果を表20及び図8に示す。
使用したプライマー及びプローブの配列は表18に記載のとおりである。
5’側の遺伝子領域は、5’側の遺伝子領域に対する第一のプライマー;P3R2−ALK5’−R5(配列番号19、Tm値70.5℃)と、第三のプライマー;ALK5’−F2(配列番号18、Tm値59.9℃)を用いて増幅した。3’側の遺伝子領域は、3’側の遺伝子領域に対する第一のプライマー;P3R2−ALK3’−R3(配列番号21、Tm値70.1℃)と、第三のプライマー;ALK3’−F3(配列番号20、Tm値60.8℃)を用いて増幅した。それぞれの増幅産物を、前記単一の付加塩基配列のみで構成された共通プライマーである第二のプライマー;PEN3 R2(配列番号22、Tm値58.6℃)と、それぞれの第三のプライマーを用いて増幅した。
5’側の遺伝子領域に対する検出用プローブ(配列番号16)及び3’側の遺伝子領域に対する検出用プローブ(配列番号17)は、表18に記載のとおりである。
各プライマーのTm値は、Meltcalcを用いて算出した値である。
なお、表18中、小文字で表記した塩基配列は、単一の付加塩基配列を示す。
以上の結果より、本発明によれば、融合遺伝子変異の存在の有無を簡便に、安価にかつ正確に測定することができる。
2011年10月31日に出願の日本国出願番号第2011−238953号の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。

Claims (16)

  1. 一の反応液に、対象サンプル中の核酸における遺伝子の存在量が相違し得る少なくとも2つの遺伝子をコードする核酸を、単一の付加塩基配列を増幅産物に導入可能であり且つ前記少なくとも2つの遺伝子のそれぞれに対応した少なくとも2種の第一のプライマーを含む第一のプライマーセットと、前記単一の付加塩基配列を含む核酸を増幅するための第二のプライマーとを含み、前記第二のプライマーの存在量が、前記第一のプライマーセットを構成する第一プライマーのうち存在量の最も多い第一プライマーの存在量に比べて4倍量〜20倍量(モル比)である前記反応液を用いて、核酸増幅を行い、前記単一の付加塩基配列を含み且つ前記少なくとも2つの遺伝子のそれぞれに対応した少なくとも2種の増幅産物を得ること(核酸増幅工程)
    前記少なくとも2種の増幅産物の存在量に基づくそれぞれのシグナルを検出し、該シグナルから前記少なくとも2つの遺伝子の存在量を測定すること(存在量測定工程)
    を含む遺伝子の存在量の測定方法
    前記核酸における遺伝子の存在量は、ゲノムDNAにおける遺伝子のコピー数であり、
    前記核酸増幅工程における前記反応液は、前記少なくとも2種の増幅産物をそれぞれ認識する、同一の蛍光色素で標識された少なくとも2種の検出用プローブを更に含み、
    前記存在量測定工程における前記シグナルは、前記少なくとも2種の増幅産物と、それぞれに対応する前記少なくとも2種の検出用プローブとが解離する際の、少なくとも2つの蛍光強度の変動であり、
    前記存在量測定工程は、前記少なくとも2つの蛍光強度の変動を同一の波長で測定し、Tm解析を行い、更に面積解析して、前記少なくとも2つの遺伝子の存在量を決定する。
  2. 前記第一のプライマーが、前記単一の付加塩基配列と、それぞれの前記遺伝子をコードする核酸の増幅対象領域の塩基配列にハイブリダイズ可能な塩基配列と、を有する請求項1に記載の測定方法。
  3. 前記第二のプライマーが、前記単一の付加塩基配列又はその相補的な塩基配列にハイブリダイズ可能な塩基配列を有する請求項1又は請求項2に記載の測定方法。
  4. 前記単一の付加塩基配列が、前記少なくとも2つの遺伝子をコードする核酸の各増幅対象領域中の塩基配列とは非相同的な塩基配列からなる請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の測定方法。
  5. 前記第一のプライマーセットが、前記第一のプライマーと、該第一のプライマーがハイブリダイズする塩基配列の相補鎖側の塩基配列を増幅するために用いられ且つ前記単一の付加塩基配列を含まない第三のプライマーとを含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の測定方法。
  6. 前記反応液における前記第三のプライマーの存在量が、前記反応液における前記第一のプライマーの存在量に比べて、物質量基準で0.25倍量〜4倍量である請求項5に記載の測定方法。
  7. 前記第一のプライマーが、増幅対象領域の塩基配列に対してミスマッチ塩基及び縮重塩基からなる群より選択された少なくとも一方を含む請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の測定方法。
  8. 前記第二のプライマーのTm値が、前記第一のプライマーの各Tm値よりも高い請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の測定方法。
  9. 前記第二のプライマーが、前記単一の付加塩基配列及びその相補的な塩基配列とは異なる付加配列を更に含む請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の測定方法。
  10. 前記少なくとも2つの遺伝子の少なくとも1つは、対象サンプル中の核酸における存在量が予め判明している参照遺伝子であり、少なくとも1つは対象サンプル中の核酸における存在量の測定対象となる標的遺伝子である請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の測定方法。
  11. 前記参照遺伝子由来の増幅産物の検出シグナルと、前記標的遺伝子由来の増幅産物の検出シグナルとを比較して、前記標的遺伝子の対象サンプル中の核酸における存在量を決定することを含む請求項10に記載の測定方法。
  12. 前記少なくとも2つの遺伝子の少なくとも1つは、融合遺伝子の融合点よりも上流の5’側の遺伝子領域であり、少なくとも1つは、融合遺伝子の融合点よりも下流の3’側の遺伝子領域である請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の測定方法。
  13. 前記5’側の遺伝子領域由来の増幅産物の検出シグナルと、前記3’側の遺伝子領域由来の増幅産物の検出シグナルとを比較して、サンプル中における前記融合遺伝子の存在を検出することを含む請求項12に記載の測定方法。
  14. 単一の付加塩基配列を増幅産物に導入可能であり且つ前記少なくとも2つの遺伝子のそれぞれに対応した少なくとも2種の第一のプライマーを含む第一のプライマーセットと、
    前記単一の付加塩基配列を含む核酸を増幅するための第二のプライマーと
    前記少なくとも2つの遺伝子の核酸増幅領域にそれぞれハイブリダイズ可能な塩基配列を有し且つ同一の蛍光色素の標識を備えた少なくとも2つの検出用プローブと、
    を含む請求項1〜請求項4及び請求項7〜請求項13のいずれか1項に記載の測定方法のための遺伝子測定キット。
  15. 単一の付加塩基配列を増幅産物に導入可能であり且つ前記少なくとも2つの遺伝子のそれぞれに対応した少なくとも2種の第一のプライマーを含む第一のプライマーセットと、
    前記単一の付加塩基配列を含む核酸を増幅するための第二のプライマーと、
    前記第一のプライマーがハイブリダイズする塩基配列の相補鎖側の塩基配列を増幅するために用いられ且つ前記単一の付加塩基配列を含まない第三のプライマーと、
    前記少なくとも2つの遺伝子の核酸増幅領域にそれぞれハイブリダイズ可能な塩基配列を有し且つ同一の蛍光色素の標識を備えた少なくとも2つの検出用プローブと、
    を含む請求項5〜請求項13のいずれか1項に記載の測定方法のための遺伝子測定キット。
  16. 前記第一のプライマーにより導入された前記単一の付加塩基配列を含み且つ第二のプライマーによって核酸増幅された前記少なくとも2つの遺伝子に対応する増幅産物の存在量に基づく少なくとも2つのシグナルを検出する検出装置と、
    前記検出装置により検出された前記少なくとも2つの検出シグナルを対比して、前記少なくとも2つの遺伝子の存在量を演算する演算装置と、
    を含む請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の遺伝子の存在量の測定方法を実施する遺伝子測定システム。
JP2013509391A 2011-10-31 2012-10-29 遺伝子存在量の測定方法 Active JP5570657B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013509391A JP5570657B2 (ja) 2011-10-31 2012-10-29 遺伝子存在量の測定方法

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011238953 2011-10-31
JP2011238953 2011-10-31
JP2013509391A JP5570657B2 (ja) 2011-10-31 2012-10-29 遺伝子存在量の測定方法
PCT/JP2012/077916 WO2013065646A1 (ja) 2011-10-31 2012-10-29 遺伝子存在量の測定方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP5570657B2 true JP5570657B2 (ja) 2014-08-13
JPWO2013065646A1 JPWO2013065646A1 (ja) 2015-04-02

Family

ID=48191993

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013509391A Active JP5570657B2 (ja) 2011-10-31 2012-10-29 遺伝子存在量の測定方法

Country Status (5)

Country Link
EP (1) EP2774995A4 (ja)
JP (1) JP5570657B2 (ja)
KR (1) KR101483576B1 (ja)
CN (1) CN104024433B (ja)
WO (1) WO2013065646A1 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US11053534B2 (en) * 2017-06-30 2021-07-06 Asp Global Manufacturing Gmbh Systems and methods for confirming activation of biological indicators

Citations (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN1496413A (zh) * 2003-05-09 2004-05-12 清华大学 用于多重pcr条件优化的方法和组分
JP2004337124A (ja) * 2003-05-19 2004-12-02 Nichirei Corp Dna増幅反応の効率向上方法
CN1629305A (zh) * 2004-08-26 2005-06-22 北京博奥生物芯片有限责任公司 一种不对称pcr扩增方法及其专用引物与应用
JP2010528592A (ja) * 2007-06-01 2010-08-26 モノクアント・ピーティーワイ・リミテッド Dna切断点の分析のための方法
JP2010207220A (ja) * 2009-03-10 2010-09-24 F Hoffmann La Roche Ag 多重定量的核酸増幅及び融解アッセイ
JP2010246419A (ja) * 2009-04-13 2010-11-04 Shimane Prefecture リアルタイムpcr法による食品媒介病原菌の網羅的迅速検出方法
WO2010128041A1 (en) * 2009-05-05 2010-11-11 Qiagen Gmbh Detection of multiple nucleic acid sequences in a reaction cartridge
WO2010138460A1 (en) * 2009-05-26 2010-12-02 Quest Diagnostics Investments Incorporated Methods for detecting gene dysregulations
JP2011500063A (ja) * 2007-10-22 2011-01-06 モノクアント・ピーティーワイ・リミテッド Dna増幅方法
WO2011043220A1 (ja) * 2009-10-06 2011-04-14 富士レビオ株式会社 融合遺伝子の測定方法
JP2011519570A (ja) * 2008-05-06 2011-07-14 キアゲン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング 反応における複数の核酸配列の同時検出

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7198897B2 (en) 2001-12-19 2007-04-03 Brandeis University Late-PCR
JP5322141B2 (ja) * 2006-01-25 2013-10-23 親房 別所 5’領域ディファレンシャルディスプレー法
US8148078B2 (en) 2007-09-07 2012-04-03 Fluidigm Corporation Copy number variation determination, methods and systems
KR101251177B1 (ko) 2007-12-26 2013-04-08 아크레이 가부시키가이샤 융해 곡선 해석 방법 및 융해 곡선 해석 장치
CN104928335A (zh) 2008-04-03 2015-09-23 哈森阿尔法生物技术研究院 用于扩增多个靶标的扩增子拯救多重聚合酶链式反应
JP5637850B2 (ja) 2008-07-02 2014-12-10 アークレイ株式会社 標的核酸配列の増幅方法、それを用いた変異の検出方法、および、それに用いる試薬
CN102076849A (zh) * 2008-12-16 2011-05-25 爱科来株式会社 核酸扩增的对照的检测方法及其用途
US8450063B2 (en) * 2009-01-28 2013-05-28 Fluidigm Corporation Determination of copy number differences by amplification
JP5769952B2 (ja) 2010-11-12 2015-08-26 株式会社Lsiメディエンス Eml4−alk融合遺伝子の高感度検出方法

Patent Citations (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN1496413A (zh) * 2003-05-09 2004-05-12 清华大学 用于多重pcr条件优化的方法和组分
JP2004337124A (ja) * 2003-05-19 2004-12-02 Nichirei Corp Dna増幅反応の効率向上方法
CN1629305A (zh) * 2004-08-26 2005-06-22 北京博奥生物芯片有限责任公司 一种不对称pcr扩增方法及其专用引物与应用
JP2010528592A (ja) * 2007-06-01 2010-08-26 モノクアント・ピーティーワイ・リミテッド Dna切断点の分析のための方法
JP2011500063A (ja) * 2007-10-22 2011-01-06 モノクアント・ピーティーワイ・リミテッド Dna増幅方法
JP2011519570A (ja) * 2008-05-06 2011-07-14 キアゲン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング 反応における複数の核酸配列の同時検出
JP2010207220A (ja) * 2009-03-10 2010-09-24 F Hoffmann La Roche Ag 多重定量的核酸増幅及び融解アッセイ
JP2010246419A (ja) * 2009-04-13 2010-11-04 Shimane Prefecture リアルタイムpcr法による食品媒介病原菌の網羅的迅速検出方法
WO2010128041A1 (en) * 2009-05-05 2010-11-11 Qiagen Gmbh Detection of multiple nucleic acid sequences in a reaction cartridge
WO2010138460A1 (en) * 2009-05-26 2010-12-02 Quest Diagnostics Investments Incorporated Methods for detecting gene dysregulations
WO2011043220A1 (ja) * 2009-10-06 2011-04-14 富士レビオ株式会社 融合遺伝子の測定方法

Non-Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6013013376; Br J Haematol. Vol.124, No.1, 200401, p.47-54 *
JPN6013013376; METZLER, M. et al.: Br J Haematol. Vol.124, No.1, 200401, p.47-54 *
JPN6013025088; J Clin Microbiol. Vol.45, No.11, 20070829, p.3514-3521 *
JPN6013025092; Electrophoresis Vol.19, No.18, 199812, p.3079-3083 *
JPN6013051629; Methods in Molecular Medicine Vol.114, 20050601, p.59-78 *
JPN7013001926; DNA Res. Vol.9, No.5, 20021031, p.173-178 *

Also Published As

Publication number Publication date
EP2774995A1 (en) 2014-09-10
KR101483576B1 (ko) 2015-01-21
KR20140088105A (ko) 2014-07-09
EP2774995A4 (en) 2015-04-29
CN104024433A (zh) 2014-09-03
JPWO2013065646A1 (ja) 2015-04-02
WO2013065646A1 (ja) 2013-05-10
CN104024433B (zh) 2016-11-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2012235778A (ja) アセトアルデヒド脱水素酵素2及びアルコール脱水素酵素2の遺伝子変異を同時に検出する方法
JP2012040029A (ja) 変異の検出方法およびそれに用いるキット
US20130078631A1 (en) Probe, and polymorphism detection method using the same
JP2013090622A (ja) 多型検出用プローブ、多型検出方法、薬効判定方法及び多型検出用キット
JP5917144B2 (ja) 疾患関連遺伝子の多型検出用プローブおよびその用途
JP4942508B2 (ja) abl遺伝子変異の検出用プローブおよびその用途
KR101386918B1 (ko) Vkorc1 유전자의 -1639번째의 염기의 다형 검출법, 및 그것을 위한 핵산 프로브 및 키트
US20120107815A1 (en) Polymorphism Detection Probe, Polymorphism Detection Method, Evaluation of Drug Efficacy, and Polymorphism Detection Kit
JP6153758B2 (ja) 多型検出用プローブ、多型検出方法、薬効判定方法及び多型検出用キット
JP2013081448A (ja) 遺伝子変異検出用プローブ
JP5570657B2 (ja) 遺伝子存在量の測定方法
JP5757909B2 (ja) 多型検出用プローブ、多型検出方法、薬効判定方法及び多型検出用試薬キット
US9121051B2 (en) Method of determining the abundance of a target nucleotide sequence of a gene of interest
JP6205216B2 (ja) 変異検出用プローブ、変異検出方法、薬効判定方法及び変異検出用キット
JP5930825B2 (ja) Egfrエクソン19多型検出試験用試薬キット及びその用途
WO2018079579A1 (ja) 標的塩基配列を検出する方法、プローブを設計および製造する方法ならびにキット
JP5940771B2 (ja) abl遺伝子多型の検出用プローブおよびその用途
JP5860667B2 (ja) Egfrエクソン21l858r遺伝子多型検出用プライマーセット及びその用途
JP5635496B2 (ja) Egfr遺伝子多型検出用プローブおよびその用途
KR20120124033A (ko) 유전자 변이 검출용 프로브, 유전자 변이 검출 방법 및 유전자 변이 검출용 시약 키트
JP2017163889A (ja) K−ras遺伝子増幅用フォワードプライマーセット、K−ras遺伝子増幅用キット、K−ras遺伝子増幅方法、多型解析方法、及び薬効判定方法

Legal Events

Date Code Title Description
A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20140212

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20140610

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20140624

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5570657

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250