以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
インクジェットプリンタ101は、図1に示すように、図1上方から下方に向かって用紙Pを搬送する搬送ユニット20と、搬送ユニット20によって搬送された用紙Pに、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインク滴をそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッド1と、インクジェットヘッド1にインクを供給する4つのインク供給ユニット10と、インクジェットヘッド1のメンテナンスを行うメンテナンスユニット31と、インクジェットプリンタ101全体を制御する制御装置16とを有している。なお、本実施形態において、副走査方向とは搬送ユニット20で用紙Pを搬送するときの搬送方向と平行な方向であり、主走査方向とは副走査方向に直交する方向であって水平面に沿った方向である。
搬送ユニット20は、2つのベルトローラ6、7と、両ローラ6、7間に架け渡されるように巻回されたエンドレスの搬送ベルト8とを有している。ベルトローラ7は、駆動ローラであって、図示しない搬送モータから駆動力が与えられることで回転する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、ベルトローラ7の回転により搬送ベルト8が走行するのに伴って回転する。搬送ベルト8の外周面に載置された用紙Pは、図1下方へと搬送される。
4つのインクジェットヘッド1は、それぞれ主走査方向に沿って延在し、副走査方向には互いに平行に配置されている。すなわち、インクジェットプリンタ101は、主走査方向にインク滴が吐出される複数の吐出口108が配列されたライン式のカラーインクジェットプリンタである。各インクジェットヘッド1の下面は、複数の吐出口108が配列された吐出面2aとなっている(図2参照)。
搬送ベルト8の上側ループの外周面と吐出面2aとが対向しつつ平行となっている。搬送ベルト8によって搬送されてきた用紙Pが4つのインクジェットヘッド1のすぐ下方を通過する際に、各インクジェットヘッド1から用紙Pの上面に向けて各色のインク滴が順に吐出され、用紙P上に所望のカラー画像が形成される。
インク供給ユニット10は、インクジェットヘッド1の下面の図1左方端部近傍に接続されており、接続されたインクジェットヘッド1にインクを供給する。
メンテナンスユニット31は、4つのワイパ部材32を有している。4つのワイパ部材32は、後述のメンテナンス動作に係るワイプ動作において、インクジェットヘッド1の吐出面2aをワイプする弾性部材であり、図示しないアクチュエータによって、主走査方向に沿って往復移動可能となっている(図1矢印参照)。
次に、図2を参照しつつ、インクジェットヘッド1について詳細に説明する。図2に示すように、インクジェットヘッド1は、リザーバユニット71と、ヘッド本体2とを有している。
リザーバユニット71は、ヘッド本体2の上面に固定されており、ヘッド本体2にインクを供給する流路形成部材である。また、リザーバユニット71は、その内部に、インク流入流路72、10個のインク流出流路75、第1排気流路73及び第2排気流路74が形成されている。なお、図2においては、1つのインク流出流路75のみが表れている。
インク流入流路72は、リザーバユニット71の下面に開口する流入口72aを介して、インク供給ユニット10からのインクが流入する流路である。インク流入流路72は、流入したインクを一時的に貯溜するインクリザーバとしての機能を有する。インク流入流路72の内壁面にはリザーバユニット71の外壁面まで貫通する穴72bが形成されている。穴72bは、可撓性を有する樹脂フィルム76により、リザーバユニット71の外壁面側から封止されている。樹脂フィルム78は、インク流入流路72の内壁面の一部を形成している。樹脂フィルム76は、インク流入流路72におけるインク圧の変動に伴って変位するため、インク圧の変動を抑制するダンパー機能を有する。樹脂フィルム76を用いることによって、ダンパー機能を安価な構成で実現することができる。なお、通常印刷時においては、樹脂フィルム76はインク流入流路72内に向かって僅かに凸となった状態となっている。リザーバユニット71の外壁面には、樹脂フィルム76を覆うように板形状の規制部材77が固定されており、樹脂フィルム76がリザーバユニット71の外側に向かって凸となるのを規制している。これにより、インク流入流路72のインク圧が異常に高くなったとき、樹脂フィルム76が過剰に変位して破損するのが防止される。規制部材77には、大気連通孔77aが形成されており、規制部材77と樹脂フィルム76との間が常に大気圧となっている。これにより、樹脂フィルム76が変位し易くなっている。
インク流出流路75は、フィルタ75aを介してインク流入流路72と連通していると共に、ヘッド本体2の流路ユニット9の上面に形成されたインク供給口105bに連通している(図3参照)。フィルタ75aは、インク流入流路72におけるインクの流れる方向に沿って延在している。通常印刷時においては、インク供給ユニット10からのインクは、インク流入流路72に流入し、インク流出流路75を通過して、インク供給口105bから流路ユニット9に供給される。
第1排気流路73は、フィルタ75aの上流側においてインク流入流路72と連通していると共に、リザーバユニット71の下面に形成された第1流出口73aを介してインク供給ユニット10に接続されている。第1排気流路73の下方側内壁面にはリザーバユニット71の外壁面まで貫通する穴73bが形成されている。穴73bは、可撓性を有する樹脂フィルム78により、リザーバユニット71の下方の外壁面側から封止されている。樹脂フィルム78は、第1排気流路73の内壁面の一部を形成している。樹脂フィルム78は、第1排気流路73のインク圧の変動に伴って変位するため、インク圧の変動を抑制するダンパー機能を有する。樹脂フィルム78を用いることによって、ダンパー機能を安価な構成で実現することができる。なお、通常印刷時においては、樹脂フィルム78は第1排気流路73内に向かって僅かに凸となった状態となっている。リザーバユニット71の下方の外壁面には、樹脂フィルム78を覆うように板形状の規制部材79が固定されており、樹脂フィルム78がリザーバユニット71の外側に向かって凸となるのを規制している。これにより、第1排気流路73のインク圧が異常に高くなったとき、樹脂フィルム78が過剰に変位して破損するのが防止される。規制部材79には、大気連通孔79aが形成されており、規制部材79と樹脂フィルム78との間が常に大気圧となっている。これにより、樹脂フィルム78が変位し易くなっている。後述の第1インク循環(液体還流)時においては、インク供給ユニット10からのインクが、流入口72aを介してインク流入流路72に流入し、第1排気流路73を通過して、流出口73aを介してインク供給ユニット10に還流する(図8(a)参照)。
第2排気流路74は、流路ユニット9に連通していると共に、リザーバユニット71の下面に形成された第2流出口74aを介してインク供給ユニット10に接続されている。後述の第2インク循環(液体還流)時においては、インク供給ユニット10からのインクが、流入口72aを介してインク流入流路72に流入し、インク流出流路75、流路ユニット9のマニホールド流路105(後述)及び第2排気流路74を順に通過して、流出口74aを介してインク供給ユニット10に還流する(図8(b)参照)。
さらに、図3及び図4を参照しつつ、ヘッド本体2について説明する。なお、図4では説明の都合上、アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき圧力室110、アパーチャ112及び吐出口108を実線で描いている。
ヘッド本体2は、図3及び図4に示すように、流路ユニット9の上面に4つのアクチュエータユニット21が固定された積層体である。流路ユニット9は、圧力室110等を含むインク流路が内部に形成されている。アクチュエータユニット21は、各圧力室110に対応した複数のユニモルフ型のアクチュエータを含んでおり、圧力室110内のインクに選択的に吐出エネルギーを付与する機能を有する。
流路ユニット9は、ステンレス鋼からなる複数の金属製のプレートを互いに位置合わせした積層体である。流路ユニット9の上面には、リザーバユニット71のインク流出流路75(図2参照)に連通する計10個のインク供給口105b、及び、リザーバユニット71の第2排気流路74に連通する図示しない排出口が開口している。流路ユニット9の内部には、図3に示すように、インク供給口105b及び図示しない排出口に連通するマニホールド流路105、さらにマニホールド流路105に含まれる複数の副マニホールド流路105aのそれぞれから分岐した多数の個別インク流路が形成されている。吐出面2aには多数の吐出口108がマトリクス状に配置されている。
流路ユニット9におけるインクの流れについて説明する。図3及び図4に示すように、通常印刷時においては、リザーバユニット71のインク流出流路75からインク供給口105bに供給されたインクは、マニホールド流路105の副マニホールド流路105aに分配される。副マニホールド流路105a内のインクは、各個別インク流路に流れ込み、圧力室110を介して吐出口108に至る。また、後述の第2インク循環においては、リザーバユニット71のインク流出流路75からインク供給口105bに供給されたインクは、マニホールド流路105を通過して図示しない排出口からリザーバユニット71の第2排気流路74に流れ込む(図8(b)参照)。
インク供給ユニット10について詳細に説明する。図2に示すように、インク供給ユニット10は、サブタンク80と、サブタンク80に接続されたインク補給管81、インク供給管82、第1インク帰還管83及び第2インク帰還管84と、インク供給管82に設けられたパージポンプ86と、第1インク帰還管83に設けられた第1バルブ87と、第2インク帰還管84に設けられた第2バルブ88とを有している。
サブタンク80は、インクジェットヘッド1に供給されるインクを貯溜するものであり、インクタンク90に貯溜されたインクがインク補給管81を介して補給される。また、サブタンク80の外壁には大気連通孔80aが形成されている。これにより、サブタンク80内の気圧が、貯溜しているインクの量にかかわらず常に大気圧となり、安定したインク供給を可能にしている。
インク供給管82の一端はサブタンク80に接続されており、他端はジョイント82aを介してリザーバユニット71の流入口72aに接続されている。これにより、サブタンク80のインクがインク供給管82を介してリザーバユニット71のインク流入流路72に供給される。パージポンプ86は、駆動することによって、サブタンク80のインクを、インク供給管82を介してインク流入流路72に強制的に供給する供給手段として機能すると共に、インク供給管82においてジョイント82aからサブタンク80に向かってインクが流れるのを防止する逆止弁として機能する。パージポンプ86は、容積型ポンプである三相ダイヤフラムポンプであり、図5に示すように、3つのダイヤフラムが互いに異なる位相で駆動することによって、インク送出時の圧力変動を抑制する構成となっている。
図2に示すように、第1インク帰還管83の一端はサブタンク80に接続されており、他端はジョイント83aを介してリザーバユニット71の第1流出口73aに接続されている。第1バルブ87は、第1インク帰還管83におけるインク流量を調整する調整弁である。
第2インク帰還管84の一端はサブタンク80に接続されており、他端はジョイント84aを介してリザーバユニット71の第1流出口74aに接続されている。第2バルブ88は、第2インク帰還管84におけるインク流量を調整する調整弁である。
次に、図6を参照しつつ、制御装置16について説明する。制御装置16は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使
用されるデータを書き替え可能に記憶するEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRA
M(Random Access Memory)とを含んでいる。制御装置16を構成する各機能部は、これらハードウェアとEEPROM内のソフトウェアとが協働して構築されている。制御装置16は、インクジェットプリンタ101全体を制御するものであり、搬送制御部41と、画像データ記憶部42と、ヘッド制御部43と、不吐出時間検出部46と、循環・パージ制御部44と、メンテナンス制御部45とを有している。
搬送制御部41は、搬送方向に沿って用紙Pが搬送されるように搬送ユニット20の搬送モータを制御する。
画像データ記憶部42は、用紙Pに印刷すべき画像に関する画像データを記憶する。
ヘッド制御部43は、印刷時において、画像データに基づいて、生成した吐出駆動信号をアクチュエータユニット21に供給する。図7(a)に示すように、吐出駆動信号は、1印刷周期において電位V1から所定時間グランド電位V0となるパルスを含む信号である。このパルス幅は、圧力波が副マニホールド流路105aの出口から吐出口108に至る距離AL(Acoustic Length)長を伝播する時間と等しい。なお、図7(a)の波形は
、小滴のインク滴を吐出するときの波形であり、1つのパルスを有している。中滴のインク滴を吐出するときの波形は、2つのパルスを有しており、大滴のインク滴を吐出するときの波形は、3つのパルスを有している。
また、ヘッド制御部43は、後述の第1及び第2循環動作において、全ての吐出口108に形成されたインクのメニスカスを振動させるメニスカス振動信号をアクチュエータユニット21に供給する。これにより、各吐出口108に形成されたインクのメニスカスが振動し、各吐出口108におけるメニスカス耐圧が向上する。なお、図7(b)に示すように、メニスカス振動信号は、電位V1から所定時間グランド電位V0となるパルスが所定の周期で繰り返される信号である。このパルス幅は、圧力波がAL長を伝播する時間の1/3以下であることが好ましい。
不吐出時間検出部46は、過去の吐出履歴から各インクジェットヘッド1について、いずれの吐出口108からもインク滴が吐出されていない時間を検出する。
循環・パージ制御部44は、後述のメンテナンス動作において、各インク供給ユニット10のパージポンプ86、第1バルブ87及び第2バルブ88の動作を制御するものである。具体的な動作内容については後述する。
メンテナンス制御部45は、メンテナンス動作において、メンテナンスユニット31の動作を制御するものである。
図8〜図10を参照しつつ、メンテナンス動作について説明する。メンテナンス動作は、インクジェットヘッド1のメンテナンスを行う動作であり、インクジェットプリンタ101が起動されたとき、待機時間が一定時間を超えたとき、及び、ユーザから指示があったときに開始される。待機時及び通常印刷時には、パージポンプ86が停止していると共に、第1バルブ87及び第2バルブ88が閉となっている(図2参照)。そして、メンテナンス動作が開始されると、第1循環動作、第2循環動作、パージ動作及びワイプ動作が順に実行される。なお、パージポンプ86が停止している場合であっても、サブタンク80のインクは、インク供給管82を流れてリザーバユニット71に供給可能となっている。
第1循環動作が開始されると、ヘッド制御部43が、全ての吐出口108に形成されたインクのメニスカスを振動させるメニスカス振動信号をアクチュエータユニット21に供給する。これにより、各吐出口108のメニスカスが振動し、メニスカス耐圧が高くなる。そして、図8(a)及び図9に示すように、循環・パージ制御部44は、第1バルブ87を開くと共に第2バルブ88を閉じた後に、パージポンプ86を駆動する。これにより、サブタンク80のインクが、インク供給管82を介してインク流入流路72に強制的に供給される。このとき、第1バルブ87が開いているため、インク流入流路72から第1排気流路73及び第1インク帰還管83を通過してサブタンク80に至る経路における流路抵抗が、インク流入流路72からインク流出流路75及びマニホールド流路105を経由して各吐出口108に至る経路の流路抵抗より小さくなる。このため、インク流入流路72に供給されたインクが、インク流出流路75に流れ込むことなく、第1排気流路73及び第1インク帰還管83を順に通過してサブタンク80に帰還する第1インク循環が行われる。第1インク循環が行われることによって、インク流入流路72内に滞留しているエア及び異物、特にフィルタ75a上に滞留しているエア及び異物が、インクと共に第1排気流路73及び第1インク帰還管83を順に通過してサブタンク80にトラップされる。
なお、第1インク循環を行っているときは、印刷時と比較してインク流入流路72及び第1排気流路73内のインク圧が高くなるため、インク流入流路72の樹脂フィルム76が規制部材77に密着すると共に、第1排気流路73の樹脂フィルム78が規制部材79に密着する。循環・パージ制御部44は、第1インク循環が所定時間行われると、パージポンプ86を停止し、その後、第1バルブ87を閉じる。このとき、循環・パージ制御部44は、インクジェットヘッド1の周囲温度を検出する温度センサ35によって検出された温度が高くなるに伴って、又は、不吐出時間検出部46によって検出された時間が長くなるに伴って、第1インク循環を行う当該所定時間を長くする。その後、ヘッド制御部43が、メニスカス振動信号をアクチュエータユニット21に供給するのを停止する。以上で、第1循環動作が完了する。
続いて、第2循環動作が開始されると、ヘッド制御部43が、全ての吐出口108に形成されたインクのメニスカスを振動させるメニスカス振動信号をアクチュエータユニット21に供給する。そして、循環・パージ制御部44は、図8(b)及び図9に示すように、第1バルブ87を閉じると共に第2バルブ88を開いた後に、パージポンプ86を駆動する。これにより、サブタンク80のインクが、インク供給管82、インク流入流路72及びインク流出流路75を介してマニホールド流路105に強制的に供給される。このとき、第2バルブ88が開いているため、マニホールド流路105から第2排気流路74及び第2インク帰還管84を経由してサブタンク80に至る経路における流路抵抗が、マニホールド流路105から各個別インク流路を経由して吐出口108に至る経路の流路抵抗より小さくなる。このため、マニホールド流路105に供給されたインクが、各個別インク流路に流れ込むことなく、第2排気流路74及び第2インク帰還管84を順に通過してサブタンク80に帰還する第2インク循環が行われる。第2インク循環が行われることによって、インク流出流路75及びマニホールド流路105内に滞留しているエア及び異物が、インクと共に第2排気流路74及び第2インク帰還管84を順に通過してサブタンク80にトラップされる。
なお、第2インク循環を行っているときは、インク流入流路72内のインク圧が高くなるため、インク流入流路72の樹脂フィルム76が規制部材77に密着する。循環・パージ制御部44は、第2インク循環が所定時間行われると、パージポンプ86を停止させ、その後、第2バルブ88を閉じる。このとき、循環・パージ制御部44は、温度センサ35によって検出された温度が高くなるに伴って、又は、不吐出時間検出部46によって検出された時間が長くなるに伴って、第2インク循環を行う当該所定時間を長くする。その後、ヘッド制御部43が、メニスカス振動信号をアクチュエータユニット21に供給するのを停止する。以上で、第2循環動作が完了する。
第1及び第2循環動作において、エア及び異物を効率よくサブタンク80まで移動させるには、パージポンプ86における単位時間当りのインク流量を、吐出口108に形成されたインクのメニスカスが壊れて(メニスカスブレーク)吐出口108からインクが漏れ出る流量(メニスカスブレーク流量)以下の範囲で高くする必要がある(図10参照)。なお、メニスカスブレーク流量は、インクジェットヘッド1に係る流路構造、インクジェットプリンタ101内におけるインクジェットヘッド1とサブタンク80との高さ関係、インクの粘度などから算出した値、又は、実測により得られた値であり、予め記憶されている。上述したように、第1及び第2循環動作においては、各吐出口108におけるメニスカスを振動させて、各吐出口108におけるメニスカス耐圧を高くしている。このため、パージポンプ86における単位時間当りのインク流量をより高くすることができる。
さらに続いて、パージ動作が開始されると、ヘッド制御部43が、全ての吐出口108に形成されたインクのメニスカスを振動させるメニスカス振動信号をアクチュエータユニット21に供給する。循環・パージ制御部44は、図9及び図10に示すように、第1バルブ87を開くと共に第2バルブ88を閉じた後に、パージポンプ86を駆動し、第1インク循環を行う。これにより、インク流入流路72におけるインク圧が上昇する。なお、パージポンプ86における単位時間当りのインク流量は、メニスカスブレーク流量未満、且つ、後に吐出口108からインクがパージされるときに、個別インク流路内に滞留しているエアや異物がインクと共に吐出口108から排出可能な流量(回復可能流量)以上となっている。なお、回復可能流量は、実測により得られた値であり、予め記憶されている。
そして、循環・パージ制御部44は、パージポンプ86における単位時間当りのインク流量が回復可能流量以上で安定した状態で、第1バルブ87を閉じる。これにより、インク流入流路72に供給されたインクが、第1排気流路73に流れ込むことなく、インク流出流路75に流れ込み、マニホールド流路105及び各個別インク流路を順に通過し、吐出口108からパージされる。パージされたインクは、図示しない廃液トレイに受け止められる。
このように、パージポンプ86における単位時間当りのインク流量が回復可能流量以上で安定している状態で、吐出口108からのパージが開始されるため、パージ開始直後から、インク流入流路72におけるインク圧が高い状態となり、吐出口108内の増粘したインク、滞留しているエア及び異物を、吐出口108から効率よくパージすることができる。この点、このようなインパクトパージを行わない場合、例えば、第1バルブ87及び第2バルブ88を閉じた状態で、パージポンプ86の駆動を開始した場合には、パージポンプ86における単位時間当りのインク流量が回復可能流量に達するまでは、吐出口108からインクが無駄にパージされる。
循環・パージ制御部44は、第1バルブ87を所定期間閉じることにより所定量のインクが吐出口108からパージされると、第1バルブ87を開くことによって第1インク循環を再開させ、吐出口108からのパージを停止する。このとき、吐出口108からパージされるインク量は、パージポンプ86における単位時間当りのインク流量及び第1バルブ87を閉じている期間によって算出される。
循環・パージ制御部44は、パージポンプ86を駆動した状態で、吐出口108から所定の周期で所定量のインクが3回連続してパージされるように、第1バルブ87を所定の周期で3回ずつ開閉する。なお、循環・パージ制御部44は、温度センサ35によって検出された温度が高くなるに伴って、又は、不吐出時間検出部46によって検出された時間が長くなるに伴って、第1インク循環を行う時間を長くすると共に吐出口108からパージするインクの当該所定量を大きくする。その後、循環・パージ制御部44は、パージポンプ86を停止する。以上で、パージ動作が完了する。
上述したように、第1循環動作、第2循環動作、及び、パージ動作を順に実行することによって、インク流入流路72、マニホールド流路105、及び、個別インク流路の順に、滞留しているエア及び異物を、下流側の流路に流し込むことなく直接的に排出することができる。
次に、ワイプ動作が開始されると、最初に、循環・パージ制御部44が、第1バルブ87及び第2バルブ88を閉とする。これにより、パージ動作によって吐出面2aに付着した余分なインクが再び吐出口108に吸い込まれるのを防止することができる。そして、メンテナンス制御部45が、図示しない移動機構によって4つのインクジェットヘッド1を上方に移動させた後、4つのワイパ部材32の先端を対向する吐出面2aに接触させつつ、各ワイパ部材32を吐出面2aに沿って主走査方向に移動させる。これにより、パージ動作によって吐出面2aに付着した余分なインクが除去されると共に、吐出口108に形成されるメニスカスが整えられる。各吐出面2aがワイプされた後、メンテナンス制御部45は、4つのワイパ部材32及び各インクジェットヘッド1を通常の位置に戻し、循環・パージ制御部44が第1バルブ87及び第2バルブ88を開く。以上で、ワイプ動作が完了する。
以上のように、本実施形態のインクジェットプリンタ101によると、パージ動作において、パージポンプ86における単位時間当りのインク流量が回復可能流量以上で安定している状態で、吐出口108からのパージが開始されるため、パージ開始直後から、インク流入流路72におけるインク圧が高い状態となり、吐出口108内の増粘したインク、滞留しているエア及び異物を、吐出口108から効率よくパージすることができる。これにより、インク吐出特性を回復させつつインクが無駄に消費されるのを抑制することができる。
また、パージ動作において、パージに先立って第1インク循環のみを行うため、パージ開始直前までマニホールド流路105においてインクの流れが発生することがなく、マニホールド流路105における圧力変動を抑制することができる。これにより、パージ開始時において各個別インク流路に均等の圧力を付与することが可能となる。
さらに、パージ動作において、第1バルブ87を開くことによって、吐出口108からのパージを停止するため、吐出口108からインクがパージされるのを素早く停止させることができる。これにより、インクが無駄に消費されるのをさらに抑制することができる。
加えて、パージ動作において、パージポンプ86を駆動した状態で、吐出口108から所定の周期で所定量のインクが3回連続してパージされるように、第1バルブ87を所定の周期で3回ずつ開閉する。これにより、インク流入流路72、マニホールド流路105及び各個別インク流路内のインクを所定の周期で効率よく振動させることができるため、吐出口108内の増粘したインク、インク流路内に滞留しているエア及び異物を、吐出口108から効率よくパージすることができる。
また、パージ動作が完了した後に、ワイプ動作において、第1バルブ87及び第2バルブ88が閉じられるため、吐出口108からパージされたインクが、インクジェットヘッド1とサブタンク80との水頭差などによって吐出口108内に吸い込まれるのを防止することができる。
さらに、パージポンプ86が逆止弁として機能するため、第1及び第2インク循環を効率よく行うことができる。
加えて、メンテナンス動作にワイプ動作が含まれているため、吐出面2aに付着したインクや異物を除去することができると共に、吐出口108のメニスカスを整えることができる。
また、樹脂フィルム76が、インク流入流路72の内壁面の一部となっており、樹脂フィルム78が、第1排気流路73の内壁面の一部となっているため、インク流入流路72及び第1排気流路73におけるインク圧の変動を効率よく抑制することができる。これにより、インクを安定した圧力で各個別インク流路に供給することができる。
このとき、規制部材77、79が、樹脂フィルム76、78がリザーバユニット71の外側に向かって凸となるのを規制しているため、インク流入流路72及び第1排気流路73のインク圧が異常に高くなったとき、樹脂フィルム76、78が過剰に変位して破損するのを防止することができる。また、パージ動作の第1インク循環において、規制部材77、79が樹脂フィルム76、77の変位を規制しているため、この状態で第1バルブ87を閉じることによってインク流入流路72におけるインク圧が上昇しても、各樹脂フィルム76、78がさらに変位することがない。このため、上昇したインク圧が損失することなく伝播され、インク流入流路72のインクが素早く個別インク流路に流れ込み、吐出口108からインクを効率よくパージすることができる。
さらに、パージ動作に係る第1インク循環におけるパージポンプ86の単位時間当りのインク流量が、メニスカスブレーク流量未満となっているため、第1インク循環において吐出口108からインクが漏れ出ることがなく、インクを無駄に消費されるのを抑制することができる。
また、パージポンプ86が、容積型ポンプであるため、インク圧が高い場合でもインクを逆流させることなく確実にインク流入流路72に供給することができる。
加えて、第1及び第2循環動作及びパージ動作において、ヘッド制御部43が、吐出口108に形成されたインクのメニスカスを振動させるため、メニスカス耐圧が高くなり、パージポンプ86における単位時間当りのインク流量をより高くすることができる。
さらに、パージ動作において、循環・パージ制御部44が、温度センサ35によって検出されたインクジェットヘッド1の周囲温度が高くなるに伴って、又は、不吐出時間検出部46によって検出された吐出口108からインク滴が吐出されていない時間が長くなるに伴って、第1インク循環を行う時間を長くすると共に吐出口108からパージするインクの量を大きくする。このように、インクの増粘の程度、及び、インクジェットヘッド1内のエアや異物の予測量に応じて、第1インク循環を行う時間及びパージするインク量を調整するため、吐出口108内の増粘したインク、エア及び異物を効率よく排出することができる。
また、フィルタ75aが、インク流入流路72におけるインクの流れる方向に沿って延在しているため、インク流入流路72からフィルタ75aを通過してインク流出流路75に流れ込むときの抵抗が大きくなっている。このため、第1インク循環において、インク流出流路75にインクが流れ込みにくくなり、吐出口108からインクが漏れ出すのを抑制することができる。
<第1変形例>
本発明に係る第1変形例について説明する。上述した実施形態においては、パージ動作において、循環・パージ制御部44が、パージポンプ86を駆動した状態で、吐出口108から所定の周期で所定量のインクが3回連続してパージされるように、第1バルブ87を所定の周期で3回ずつ開閉する構成であるが、図11に示すように、パージポンプ86を駆動した状態で、吐出口108から所定量のインクがパージされる毎に、パージポンプ86を停止させる動作を、所定の周期で3回繰り返してもよい。
<第2変形例>
本発明に係る第2変形例について説明する。上述した実施形態においては、インクジェットヘッド1がユニモルフ型のアクチュエータを含むヘッド本体2を有する構成であるが、インクジェットヘッドが他の方式のヘッド本体を有する構成であってもよい。例えば、図12に示すような、サーマル式のヘッド本体209を有していてもよい。このヘッド本体209においては、共通インク室205から複数の個別インク流路が分岐しており、各個別インク流路の吐出口108に対向するように、電気熱交換素子が配置されている。電気熱交換素子から発生する熱エネルギーによって、吐出口108からインク滴が吐出される。この構成によると、共通インク室205及び個別インク流路の構成が簡素化されるため、上述のパージ動作において、より効率よく吐出口108からインクをパージすることができる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。上述の実施形態では、メンテナンス動作において、第1循環動作、第2循環動作、パージ動作及びワイプ動作を順に行う構成であるが、第1循環動作、第2循環動作及びワイプ動作の少なくともいずれかを行わない構成であってもよい。
また、上述の実施形態では、パージ動作において、吐出口108からインクをパージするに先立って第1インク循環を行う構成であるが、第1インク循環の替りに第2インク循環を行ってもよい。これによると、吐出口108からインクをパージする直前に、第2循環によってマニホールド流路105に滞留するエア及び異物がサブタンク80にトラップされるため、パージ時においてマニホールド流路105に滞留しているエア及び異物が個別インク流路に流れ込むのを防止することができる。
さらに、上述の実施形態においては、パージ動作において、パージポンプ86を駆動した状態で第1バルブ87を開くことによって、吐出口108からのパージを停止する構成であるが、第1バルブ87を閉じた状態でパージポンプ86を停止することによって、吐出口108からのパージを停止する構成であってもよい。
加えて、上述の実施形態においては、パージ動作において、吐出口108から所定の周期で所定量のインクが3回連続してパージされる構成であるが、パージされる回数は1回でもよいし、2回でもよいし、4回以上であってもよい。また、インクが吐出口108から任意のタイミングで連続してパージされる構成であってもよい。さらに、複数回連続してパージするとき、各回においてパージされるインク量が互いに異なるように、バルブを閉じる期間を異ならせてもよい。
さらに、上述の実施形態においては、パージポンプ86が逆止弁として機能する構成であるが、パージポンプ86が逆止弁として機能しない構成であってもよい。このとき、逆止弁を別途設けることが好ましい。
加えて、上述の実施形態においては、樹脂フィルム76が、インク流入流路72の内壁面の一部となっており、樹脂フィルム78が、第1排気流路73の内壁面の一部となっている構成であるが、リザーバユニットが、樹脂フィルム76、78の少なくともいずれかを有さない構成であってもよい。
また、上述の実施形態においては、規制部材77、79が、樹脂フィルム76、78がリザーバユニット71の外側に向かって凸となるのを規制する構成であるが、リザーバユニットに、規制部材77、79の少なくともいずれかが固定されていない構成であってもよい。
さらに、上述の実施形態においては、パージ動作に係る第1インク循環におけるパージポンプ86の単位時間当りのインク流量が、メニスカスブレーク流量未満となっている構成であるが、当該第1インク循環時に吐出口108から漏れ出るインク量がわずかであれば、当該インク流量がメニスカスブレーク流量以上となっていてもよい。
加えて、上述の実施形態においては、パージポンプ86が、容積型ポンプである三相ダイヤフラムポンプとなっているが、チューブポンプのような他の容積型ポンプであってもよいし、インペラ型ポンプなど容積型以外のポンプであってもよい。
また、上述の実施形態では、第1及び第2循環動作及びパージ動作において、吐出口108のメニスカスを振動させる構成であるが、少なくともいずれかの場合において、吐出口108のメニスカスを振動させない構成であってもよい。このとき、メニスカスブレーク流量が低下するため、パージポンプ86の単位時間当りのインク流量を、低下したメニスカスブレーク流量未満とすることが好ましい。
さらに、上述の実施形態においては、循環・パージ制御部44が、温度センサ35によって検出されたインクジェットヘッド1の周囲温度が高くなるに伴って、又は、不吐出時間検出部46によって検出された吐出口108からインク滴が吐出されていない時間が長くなるに伴って、第1インク循環を行う時間を長くすると共に吐出口108からパージするインクの量を大きくする構成であるが、インクジェットヘッド1の周囲温度及び吐出口108からインク滴が吐出されていない時間のいずれか一方のみに基づいて、第1インク循環を行う時間及び吐出口108からパージするインクの量の少なくともいずれかを決定する構成であってもよいし、第1インク循環を行う時間及び吐出口108からパージするインクの量が予め決定された値であってもよい。
加えて、上述の実施形態においては、インクジェットヘッド1及びインク供給ユニット10において、第1及び第2インク循環が可能な流路構成となっているが、第1及び第2インク循環のいずれかのみが可能な流路構成となっていてもよい。
本発明は、インク以外の液体を吐出する記録装置にも適用可能である。さらに、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機などにも適用可能である。