JP5551542B2 - 全固体電池および全固体電池の製造方法 - Google Patents
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Description
従って、電極層−固体電解質層の界面が焼成によって良好に接合されたとしても、この界面や電極層中の電極活物質と固体電解質間の粒界に生成された化合物によってリチウムイオンの移動抵抗が大きくなり、結局大電流の充放電が実現し得ないこととなる。
また、イオン伝導を阻害する化合物が生成されない場合であっても、電極活物質そのものの電子伝導性が低い場合においては、電極活物質内での電子の供給、放出が良好になされず、やはり大電流での充放電が実現し得ない。
また、本発明のもう一つの課題は、電極活物質そのものの電子伝導性が低い場合においても、電極活物質内での電子の供給、放出が良好に行われ、大電流での充放電を可能とする全固体電池、好ましくは全固体リチウムイオン電池、およびこれらの製造方法を提供することにある。
固体電解質層を挟み正極と負極の2つの電極層を有し、
少なくとも1つの電極層は少なくとも1種類以上の電極活物質粒子と固体電解質粒子を含む混合物質の焼結体からなり、電極活物質粒子を囲む粒界の少なくとも30面積%の部分に厚さ1〜200nmの被覆層を有する全固体電池。
(構成2)
少なくとも1つの電極層において、前記被覆層の含有率は電極活物質に対して0.1重量%以上である構成1に記載の全固体電池。
(構成3)
前記被覆層はC、Au、Ag、Cu、Pd、Ru、Ni、Fe、Co、Mn、Ti、Sn、Al、Siから選ばれる少なくとも1種の元素を含む物質である構成1または2に記載の全固体電池。
(構成4)
少なくとも1つの電極層中において、固体電解質の含有率は、電極活物質に対して10重量%〜70重量%である構成1から3のいずれかに記載の全固体電池。
(構成5)
前記固体電解質は、リチウムイオン伝導性を有する結晶を含む化合物である構成1から4のいずれかに記載の全固体電池。
(構成6)
前記リチウムイオン伝導性を有する結晶はLi1+x+zMx(Ge1−yTiy)2−xSizP3−zO12(但し、0≦x≦0.8、0≦y≦1.0、0≦z≦0.6、M=Al、Gaから選ばれる一つ以上)である構成1から5のいずれかに記載の全固体電池。
(構成7)
前記電極活物質はC、Li、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、B、Al、Ti、Si、Ge、Sn、Bi、W、Oから選ばれる少なくとも1種の元素を含む物質である構成1から6のいずれかに記載の全固体電池。
(構成8)
前記固体電解質層と前記電極層が焼結により接合されている構成1から7のいずれかに記載の全固体電池。
(構成9)
正極および負極の2つの電極層前駆体を焼成する工程、固体電解質層前駆体を焼成する工程を有する全固体電池の製造方法であって、
少なくとも1つの前記電極層前駆体は、電極活物質粒子表面を厚さ1nm〜200nm、その被覆率が30面積%以上で被覆層が被覆された電極材料粉末と固体電解質粉末とを少なくとも有する成形体である全固体電池の製造方法。
(構成10)
前記電極材料粉末の被覆層の重量比は電極活物質に対して0.1重量%以上である構成9に記載の全固体電池の製造方法。
(構成11)
少なくとも1つの前記電極層前駆体を焼成する工程は、前記電極層前駆体に積層された前記固体電解質層前駆体を焼成する工程と共に行われる構成9または10に記載の全固体電池の製造方法。
(構成12)
前記固体電解質層前駆体を焼成する工程は、少なくとも1つの前記電極層前駆体を焼成する工程の後、前記工程によって焼成された電極層に固体電解質層前駆体を積層し焼成することにより行われる構成9または10のいずれかに記載の全固体電池の製造方法。
(構成13)
少なくとも1つの前記電極層前駆体を焼成する工程は、前記固体電解質層前駆体を焼成する工程の後、前記工程によって焼成された固体電解質層に少なくとも1つの電極層前駆体を積層し焼成することにより行われる構成9から12のいずれかに記載の全固体電池の製造方法。
(構成14)
少なくとも1つの前記電極層前駆体を焼成する工程はN2、H2、He、Ar、CO2、CO、CH4から選ばれる少なくとも1種のガスを含む雰囲気で焼成する工程である構成9から13のいずれかに記載の全固体電池の製造方法。
(構成15)
少なくとも1つの前記電極層前駆体焼成する工程は焼成雰囲気の酸素分圧を低減させることを可能にする材料を電極層前駆体に接触させながら焼成する工程である構成9から14のいずれかに記載の全固体電池の製造方法。
(構成16)
少なくとも一つの前記電極層前躯体を焼成する工程は、最高温度が600℃以上1200℃以下の範囲の温度である構成9から15のいずれかに記載の全固体電池の製造方法。
また、電極活物質そのものの電子伝導性が低い場合において、電極活物質内での電子の供給、放出が良好に行われ、大電流での充放電を可能とする全固体電池、好ましくは全固体リチウムイオン電池を得ることができる。
このように、焼結された電極活物質粒子を囲む粒界の少なくとも30面積%の部分に、焼成時に電極活物質や固体電解質と反応し難い物質または電子伝導性に優れた物質を被覆層として設け、その厚さを1〜200nmの範囲とする事によって、本発明の課題を解決するものである。
被覆層として設けられる、焼成時に電極活物質や固体電解質と反応し難い物質または電子伝導性に優れた物質は、イオン伝導が固体電解質に比して低い物質であることが多い為、その厚さを200nm以下とすることが必要であり、100nm以下とすることがより好ましく、50nm以下とすることが最も好ましい。被覆層の厚さが200nmを超える場合、イオン伝導の抵抗が大きくなってしまい、大電流での充放電が困難となる。一方被覆層の厚さが1nm未満であると、焼成時の電極活物質と固体電解質の焼成時の反応抑制効果が期待できない。従って、被覆層の厚さは1nm以上が好ましく、3nm以上がより好ましく、5nm以上が最も好ましい。
また、被覆層は電極活物質粒子を囲む粒界全体の面積に対して、30面積%以上の部分に存在することが必要であり、70面積%以上の部分に存在することがより好ましく、90面積%以上の部分に存在することが最も好ましい。被覆層が存在する面積が30面積%未満であると、粒界に生成されたイオン伝導を大きく阻害する化合物によって充分に大きな電流での充放電が困難となる。
このように、本発明においては被覆層の厚さと存在する面積のバランスによって、充分に大きな電流での充放電を可能とする。
一方、被覆層の含有率の上限としては当該電極層の電極活物質の質量に対して、20重量%であることが好ましく、15重量%以下であることがより好ましく、12重量%以下であることが最も好ましい。12重量%を超えるとイオン伝導の抵抗が大きくなってしまう。
電極層中の被覆層の含有率はTG−DTAあるいはSEMのEDX観察によって測定する。
一方、電極活物質界面の電子伝導性を向上させ、電極活物質界面での充放電反応面積を増大させる観点からは、被覆層は、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、Mg、Cuのいずれかの元素からなる金属、またはこれらの元素の2種以上からなる合金が好ましく、ニッケルマグネシウム合金が最も好ましい。この時、被覆層は微量の意図しない不純物や電極活物質や固体電解質から拡散した微量の成分を含むものであってもよい。
これは粉末X線回折測定で得られる電極層中の物質のピーク強度から求めることができる。
固体電解質層の作製において、または電極層の作製において電極層中に固体電解質を含有させる為には、上記ガラスセラミックスの粉末、またはガラスセラミックスの原ガラスの粉末を使用することができる。原ガラスの粉末を使用する場合は固体電解質層や電極層の焼成過程においてガラス粉末中に結晶が析出しガラスセラミックスとなる。
Li2O:10〜25%、および
Al2O3+Ga2O3:0.5〜15%、および
TiO2+GeO2:25〜50%、および
SiO2:0〜15%、および
P2O5:26〜40%
の各成分を含有するガラスを溶融、急冷することで原ガラスを得たのち、このガラスを熱処理し、結晶を析出させることによって得ることができる。
この中から選択される物質の標準電極電位差によって電池の電圧が決まるが、物質の組み合わせによっては正極、負極双方の電極活物質となりうるものもある。熱安定性の点で正極の電極活物質としてはLiNiPO4、LiFePO4、LiMn2O4が好ましく、負極の電極活物質としてはグラファイト、活性炭、Li4Ti5O12が好ましい。
すなわち、電極層前駆体、固体電解質層前駆体をそれぞれ焼成した後に積層し、再度焼成して各層を接合する方法や、いずれかの層を焼成して焼結体とした後に当該焼結体上に前駆体を積層し、焼結体と前駆体を同時に焼成して接合する方法や、二以上の層の前駆体を積層し同時に焼成して焼結体としながら層間を接合する方法などである。
より具体的には次の6つの態様がある。
(1)2つの電極層前駆体と固体電解質層前駆体を積層し、一度に焼成する方法。
(2)1つの電極層前駆体と固体電解質層前駆体を積層して焼結し、焼結後の固体電解質層に電極層前駆体を積層して再度焼結する方法。
(3)1つの焼結後の電極層に固体電解質層前駆体を積層して焼結し、焼結後の固体電解質層に電極層前駆体を積層して再度焼結する方法。
(4)1つの焼結後の固体電解質層に電極層前駆体を積層して焼結し、固体電解質層にもう1つの電極層前駆体を積層して再度焼結する方法。
(5)1つの焼結後の固体電解質層に2つの電極層前駆体を積層して焼結する方法。
(6)2つの焼結後の電極層を固体電解質層前駆体を挟んで積層し、焼結する方法。
電極活物質粉末の平均粒子径は電極反応面積を上げるため、0.1μm〜10μmが好ましく、0.1μm〜3μmがより好ましく、0.1μm〜1μmが最も好ましい。
電極層前駆体に含む固体電解質粉末の平均粒子径は反応面積を上げるため、0.1μm〜10μmが好ましく、0.1μm〜1μmがより好ましく、0.1μm〜0.6μmが最も好ましい。
電子伝導助材粉末の平均粒子径は伝導度を上げるため、10nm〜3μmが好ましく、10nm〜1μmがより好ましく、10nm〜50nmが最も好ましい
なお、平均粒子径はレーザー回折法によって測定した時のD50(累積50%径)の値であり、具体的には日機装株式会社製の粒度分析計マイクロトラックMT3300EXIIまたはベックマン・コールター社製サブミクロン粒子アナライザーN5によって測定した値を用いることができる。なお、前記平均粒子径は体積基準で表わした値である。
例えば電極活物質粒子の表面に被覆する場合、電極活物質とスクロース溶液を混合しながら水分を乾燥し、黒鉛坩堝内、不活性雰囲気下で熱処理すれば良い。
また、電極活物質に対しての被覆された被覆層の質量割合は、0.1重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましく、7重量%以上が最も好ましい。被覆層の質量割合が0.1重量%未満であると焼成時の反応抑制効果が充分に得らにくくなる。
一方、被覆層の質量割合の上限としては当該電極層の電極活物質の質量に対して、20重量%であることが好ましく、15重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることが最も好ましい。20重量%を超えるとイオン伝導の抵抗が大きくなってしまう。
ここでグリーンシートとは、焼成前のガラス、ガラスセラミックス、セラミックス等の粉末に有機バインダー、可塑剤、溶剤等を混合してスラリーとし、当該スラリーを薄板状に成形後、溶剤を揮発させた未焼成体を意味することができる。この成形は、ドクターブレードやカレンダ法、スピンコートやディップコーティングなどの塗布法、印刷法、ダイコーター法、スプレー法等により行うことができる。焼成前のグリーンシートは柔軟であり、任意の形状に切断することや、積層することも可能である。
固体電解質層前駆体を焼成する際の最高温度は850℃〜1100℃が好ましく、900℃〜1050℃がより好ましく、950℃〜1000℃が最も好ましい。
酸素分圧を低減させることを可能にする材料とは、雰囲気中の酸素と燃焼反応を起こすことが可能な材料であることが好ましい。具体的には炭素系材料あるいは、炭素系材料に金属粒子を分散させたシートであることが好ましく、グラファイトからなるセッター、あるいはFeの微粒子を分散させたグラファイトからなるセッターが最も好ましい。
焼結後の固体電解質層の厚さは、負極と正極を隔離することができれば十分であり薄いほうが好ましいが、機械的強度との兼ね合いからに1μm〜100μmが好ましく、1μm〜50μmがより好ましく、1〜20μmが最も好ましい。
(電解質の作製)
原料としてH3PO4、Al(PO3)3、Li2CO3、SiO2、TiO2を使用し、これらを酸化物換算のmol%でP2O5を35.0%、Al2O3を7.5%、Li2Oを15.0%、TiO2を38.0%、SiO2を4.5%といった組成になるように秤量して均一に混合した後に、白金ポットに入れ、電気炉中1500℃でガラス融液を撹拌しながら4時間加熱熔解した。その後、ガラス融液を流水中に滴下させることにより、フレーク状のガラスを得た。
前記フレーク状ガラスをそれぞれラボスケールのジェットミルにより粉砕して、ジルコニア製の回転ローラーにより分級を行い、平均粒子径20μmの粉末とした。この粉末を遊星ボールミル、アトライター、ビーズミル等で更に粉砕し、平均粒子径0.6μmを有するリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの原ガラス粉末(以後原ガラス粉末とする)を得た。
さらに前記フレーク状ガラスを950℃で12時間の熱処理により結晶化を行うことにより、目的のガラスセラミックスを得た。析出した結晶相は粉末X線回折法により、Li1+x+yAlxTi2−xSiyP3−yO12(0≦x≦0.4、0<y≦0.6)が主結晶相であることが確認された。また、このガラスセラミックスのリチウムイオン伝導度は1×10−3S/cm程度であった。
得られたガラスセラミックスのフレークをそれぞれラボスケールのジェットミルにより粉砕して、ジルコニア製の回転ローラーにより分級を行い、平均粒子径20μmのガラスセラミックスの粉末を得た。得られた粉末を遊星ボールミル、アトライター、ビーズミル等で更に粉砕し、平均粒子径0.6μmを有するリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス粉末(以後LICGCとする)を得た。
LICGC100gにバインダー(ユケン工業社製・N-3046)20g、分散材(ユケン工業社製・N−1005)0.3g、水 25gを調合し、φ10mmアルミナボールで混合した。さらに消泡剤(ユケン工業社製・N−3301)0.5gを加えハイブリッドミキサーで消泡した後に塗工機にてギャップ200μmで離型フィルム上に成膜し、厚さ66μmのグリーンシート状の固体電解質前駆体とした。
正極材料である高純度化学研究所社製のLiNiPO4に3種類の処理を実施した。
LiNiPO4(1):LiNiPO4を遊星ボールミルで平均粒子径3μmまで粉砕した。
LiNiPO4(2):LiNiPO4を遊星ボールミルで平均粒子径3μmまで粉砕し、LiNiPO45gに20%スクロース水溶液2.5g加えて混合しながら乾燥させた。乾燥させた粉末を黒鉛坩堝内に入れ、試料に触れないように坩堝上部にグラファイト粉末を配置し、N2雰囲気700℃で3時間熱処理してカーボンが被覆されたLiNiPO4を得た。得られた粉末を遊星ボールミルで平均粒子径3μmまで粉砕した。
LiNiPO4(3):LiNiPO4を遊星ボールミルで平均粒子径1.0μmまで粉砕した。LiNiPO45gに20%スクロース水溶液2.5gを加え混合しながら乾燥させた。乾燥させた粉末を黒鉛坩堝内に入れ、試料に触れないように坩堝上部にグラファイト粉末を配置し、N2雰囲気650℃1時間熱処理をしてカーボンが被覆されたLiNiPO4を得た。
得られたLiNiPO4(1) 10.5gにLICGC4.5g、グラファイト(SECカーボン社製・平均粒子径3μm)5g、バインダー(ユケン工業社製・N-3046)、分散剤(ユケン工業社製・セランダーF)0.8g、カルボキシメチルセルロース(ダイセル化学工業社製・1105)1%水溶液12g、スチレンブタジエンゴム溶液(日本エイアンドエル社製・XR−9026)1.3g、純水2.67gを調合し、φ10mmのアルミナボール、ポットミルで混合してスラリーとした。塗工機で200μmギャップにてシート成型し、グリーンシート状の正極層前駆体P1を得た。
得られたLiNiPO4(1)〜(3)それぞれ2.0gにLICGC0.85g、正極導電助剤としてP2、P4、P5についてはアセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック平均粒子径35nm)0.15g、P3については前記アセチレンブラックを0.21g、バインダー(ユケン工業社製、N-3046)0.9g、分散剤(ユケン工業社製、セランダーF)0.12g、カルボキシメチルセルロース(ダイセル化学工業社製、1105)1%水溶液1.8g、スチレンブタジエンゴム溶液(日本エイアンドエル社製、XR-9026)を調合し、φ10mmのアルミナボール、ポットミルで混合してスラリーとした。塗工機で200μmギャップにてシート成型し、厚さ70μmのグリーンシート状の正極層前躯体P2〜P5を得た。
平均粒径3μmのグラファイト粉末(SECカーボン社製、SGP3)とLICGC、エチレングリコールを重量比で3:7:10で混合し、φ10mmのアルミナボールを入れてポットミルで混合してスラリーとした。塗工機を用いて200μmギャップでシート成型した後乾燥し、離型フィルムから剥がして、混合粉末を得た。得られた混合粉末1.5gをφ30mm、2tでタブレット成型して厚さ1.5mmの負極層前駆体とした。
負極層前駆体、固体電解質前駆体、正極層前駆体の順番でそれぞれ一枚ずつ積層した。積層体の形状はφ30mmの円盤状であり、厚さは1.5mmであった。この積層体をSUS板で挟み、ゴムシートで包んで、真空パック処理をして、冷間静水圧プレスで2t加圧した。積層体中の炭素が雰囲気の酸素で紛失しないように、グラファイト板に挟んで100%N2雰囲気中で1000℃、20分間焼成し、試料1〜5を作製した。
作製した試料1〜5について、端子間電気抵抗と充放電特性の評価試験を行った。結果一覧を表2に示す。
被覆層の効果を確認するために、被覆層となる物質を被覆した電極活物質粉末とLICGCを混合して焼成することにより、分解温度向上の確認を実施した。カーボンを被覆した場合の結果一覧を表3に、銅を被覆した場合の結果一覧を表4に示す。分解温度は被覆層の存在により上がり、電極活物質や固体電解質の分解反応は抑制方向にある。
具体的には電極材料とLICGCを7:3の重量比で混合し、ボールミルで混合した後に、純N2雰囲気800℃焼成処理とTG−DTA分析を実施した。
電極活物質粉末へのカーボンを被覆する処理は、電極活物質粉末5gに対し、20重量%スクロース水溶液2.5gを加え混合しながら乾燥させた。乾燥させた粉末を黒鉛坩堝内に入れ、試料に触れないように坩堝上部にグラファイト粉末を配置し、N2雰囲気650℃1時間熱処理をしてカーボンが被覆された電極活物質粉末を得た。作製した電極活物質の炭素の被覆厚はすべて約20nmであった。
電極活物質粉末へ銅を被覆する処理は、電極活物質粉末5gに対し25重量%酢酸銅水溶液3.0を加え混合させながら乾燥させた。乾燥させた粉末を黒鉛坩堝内に入れ、触媒に触れないように坩堝上部にグラファイト粉末を配置し、N2雰囲気で650℃1時間熱処理をして銅が被覆された電極活物質粉末を得た。作製した電極活物質粉末の銅コート厚はすべて約15nmであった。
[リチウムイオン伝導性ガラスセラミックス焼結基板の作製]
原ガラス粉末に、水に分散させたアクリル樹脂に分散剤を添加し、ボールミルで12時間に亘り撹拌することでスラリーを調製した。このスラリーにおけるガラス微粒子の含有量は65.5質量%であり、アクリル樹脂の含有量は13.5質量%であった。かかるスラリーを、ドクターブレード法で離型処理を施したPETフィルム上に厚み20μmで成形し、80℃にて一次乾燥を、更に95℃で二次乾燥を行うことで、シート状物を得た。
PETフィルムを剥離した後のシート状物26枚を重畳し、等方加圧装置(CIP)を用いて196.1MPaにて10分間に亘り加圧を行うことで、緻密なグリーンシートを作製した。
グリーンシートをφ59.5mmに切り出し、セッターのグリーンシート上に載置し、1000℃で1時間焼成した。そして、焼成処理物をX線回折法で調査したところ、主結晶相がLi1+x+yAlxTi2−xSiyP3−yO12(式中、0≦x≦0.4、0<y≦0.6)であることが確認された。また、インピーダンス測定を行って求めたイオン伝導度は2.0×10−4Scm−1であった。厚さは380μm、直径はφ50mmであった。
LiNiPO4、LiCoPO4のそれぞれの正極活物質粉末へ、カーボン、銅、ニッケル、鉄、ニッケルとマグネシウムの合金をそれぞれ被覆した。
電極活物質粉末へカーボンを被覆する処理は、電極活物質粉末5gに対し、20重量%スクロース水溶液2.5gを加え混合しながら乾燥させた。乾燥させた粉末を黒鉛坩堝内に入れ、試料に触れないように坩堝上部にグラファイト粉末を配置し、N2雰囲気650℃1時間熱処理をしてカーボンが被覆された電極活物質粉末を得た。
電極活物質粉末へ銅を被覆する処理は、電極活物質粉末5gに対し、25重量%酢酸銅水溶液3.0gを加え混合させながら乾燥させた。乾燥させた粉末を黒鉛坩堝内に入れ、触媒に触れないように坩堝上部にグラファイト粉末を配置し、N2雰囲気で650℃1時間熱処理をして銅が被覆された電極活物質粉末を得た。
電極活物質粉末へニッケルを被覆する処理は、電極活物質粉末5gに対し10重量%酢酸ニッケル4水和物水溶液10gを加え混合させながら乾燥させた。試料に触れないように坩堝上部にグラファイト粉末を配置し、N2雰囲気650℃1時間熱処理をしてニッケルが被覆された電極活物質粉末を得た。
電極活物質粉末へ鉄を被覆する処理は、電極活物質粉末5gに対し10重量%シュウ酸鉄水溶液16gを加え混合させながら乾燥させた。試料に触れないように坩堝上部にグラファイト粉末を配置し、N2雰囲気650℃1時間熱処理をして鉄が被覆された電極活物質粉末を得た。
電極活物質粉末でニッケルとマグネシウムの合金を被覆する処理は、電極活物質粉末5gに対し、10重量%酢酸ニッケル水溶液9.5gと10重量%酢酸マグネシウム水溶液2.2gを加え混合させながら乾燥させた。試料に触れないように坩堝上部にグラファイト粉末を配置し、N2雰囲気650℃1時間熱処理をしてニッケルとマグネシウムの合金(Ni0.9Mg0.1)が被覆された電極活物質粉末を得た。
作製した電極活物質粉末のコート厚はすべて約15nmであった。
作製した電極材料粉末とLICGC粉末を7:3の比率で混合し、乾式のポットミルで12時間混合した。混合試料を窒素雰囲気下900℃で10分間焼成したものをXRD測定し、結晶構造を確認した。また、混合試料をTG−DTA測定し、分解開始温度を計測した。TG−DTAの条件は20℃/分、室温から1000℃まで測定した。
評価結果を表5に示す。表中、○印は正極活物質の結晶構造が保たれていることを意味する。
被覆層を有する電極活物質と被覆処理を施していない電極活物質それぞれを表6に示すように調整し、正極スラリーを作製した。作製したスラリーをリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス焼結基板の片側に塗工した。その後、これを焼結炉に配置し、焼結炉の上方に炭素粉末を配置し、窒素雰囲気下、900℃で10分間焼成した。
表7に示すように、負極活物質として石原産業製Li4Ti5O12の粉末と、バインダー、分散剤、溶剤を混合し、負極スラリーを作製した。
各正極スラリーを塗布、LICGC焼結基板の反対面に負極スラリーを塗布し、周縁部のスラリーをウエスでふき取り大気放置でスラリーを乾燥させた。これを焼結炉に配置し、焼結炉の上方に炭素粉末を配置し、窒素雰囲気下、500℃で10分間焼成した。
リチウムイオン伝導性ガラスセラミックス焼結基板へ正極および負極を焼き付けたセル集電体を取り付けた。具体的には、セルの正極側へφ45mmのアルミ箔、負極側へφ45mmの銅箔をそれぞれ重ね、幅5mmの同材料のリードを重ねて、セルを真空パックした。
充放電試験は、CC−CVで充電電流300μA、CV充電後3時間保持、充電電圧6Vで行った。放電は、CC放電で50μA、0.01Vカットオフとした。充電後2分保持後の開回路電圧と、カットオフ時の放電容量を表8に示す。
合金はいずれも、正極材料と焼結されているため、その結びつきが強固である。
一方、炭素コートでは炭素の焼結は低温では不可能で固着している状態になる。スラリーの処理や焼結時の残留酸素の影響もうける。
銅では膨張係数の差が大きいため、熱処理時にマイクロクラックが発生して、界面が比較的に減少したと考えられる。
Claims (15)
- 固体電解質層を挟み正極と負極の2つの電極層を有し、
少なくとも1つの電極層は少なくとも1種類以上の電極活物質粒子と固体電解質粒子を含む混合物質の焼結体からなり、電極活物質粒子を囲む粒界の少なくとも30面積%の部分に厚さ1〜200nmの被覆層を有し、前記被覆層は、Cの単体、Cuの単体、Niの単体、Feの単体、及びNi 0.9 Mg 0.1 合金から選ばれる少なくとも1種である全固体電池。 - 少なくとも1つの電極層において、前記被覆層の含有率は電極活物質に対して0.1重量%以上である請求項1に記載の全固体電池。
- 少なくとも1つの電極層中において、固体電解質の含有率は、電極活物質に対して10重量%〜70重量%である請求項1または2に記載の全固体電池。
- 前記固体電解質は、リチウムイオン伝導性を有する結晶を含む化合物である請求項1から3のいずれかに記載の全固体電池。
- 前記リチウムイオン伝導性を有する結晶はLi1+x+zMx(Ge1−yTiy)2−xSizP3−zO12(但し、0≦x≦0.8、0≦y≦1.0、0≦z≦0.6、M=Al、Gaから選ばれる一つ以上)である請求項1から4のいずれかに記載の全固体電池。
- 前記電極活物質はC、Li、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、B、Al、Ti、Si、Ge、Sn、Bi、W、Oから選ばれる少なくとも1種の元素を含む物質である請求項1から5のいずれかに記載の全固体電池。
- 前記固体電解質層と前記電極層が焼結により接合されている請求項1から6のいずれかに記載の全固体電池。
- 正極および負極の2つの電極層前駆体を焼成する工程、固体電解質層前駆体を焼成する工程を有する全固体電池の製造方法であって、
少なくとも1つの前記電極層前駆体は、電極活物質粒子表面を厚さ1nm〜200nm、その被覆率が30面積%以上で被覆層が被覆された電極材料粉末と固体電解質粉末とを少なくとも有する成形体であり、前記被覆層は、Cの単体、Cuの単体、Niの単体、Feの単体、及びNi 0.9 Mg 0.1 合金から選ばれる少なくとも1種である全固体電池の製造方法。 - 前記電極材料粉末の被覆層の重量比は電極活物質に対して0.1重量%以上である請求項8に記載の全固体電池の製造方法。
- 少なくとも1つの前記電極層前駆体を焼成する工程は、前記電極層前駆体に積層された前記固体電解質層前駆体を焼成する工程と共に行われる請求項8または9に記載の全固体電池の製造方法。
- 前記固体電解質層前駆体を焼成する工程は、少なくとも1つの前記電極層前駆体を焼成する工程の後、前記工程によって焼成された電極層に固体電解質層前駆体を積層し焼成することにより行われる請求項8または9のいずれかに記載の全固体電池の製造方法。
- 少なくとも1つの前記電極層前駆体を焼成する工程は、前記固体電解質層前駆体を焼成する工程の後、前記工程によって焼成された固体電解質層に少なくとも1つの電極層前駆体を積層し焼成することにより行われる請求項8から11のいずれかに記載の全固体電池の製造方法。
- 少なくとも1つの前記電極層前駆体を焼成する工程はN2、H2、He、Ar、CO2、CO、CH4から選ばれる少なくとも1種のガスを含む雰囲気で焼成する工程である請求項8から12のいずれかに記載の全固体電池の製造方法。
- 少なくとも1つの前記電極層前駆体焼成する工程は焼成雰囲気の酸素分圧を低減させることを可能にする材料を電極層前駆体に接触させながら焼成する工程である請求項8から13のいずれかに記載の全固体電池の製造方法。
- 少なくとも一つの前記電極層前躯体を焼成する工程は、最高温度が600℃以上1200℃以下の範囲の温度である請求項8から14のいずれかに記載の全固体電池の製造方法。
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