従来の定着装置において、ポリイミド樹脂層にカーボンナノ材料及びフィラメント状金属微粒子が分散された定着装置用発熱ベルトや、導電性酸化物を含有した発熱ベルトが提案されているが、発熱ベルトの発熱層を適正な電気抵抗に調整するため多量の化合物を添加するので、発熱層の強度が低下し、耐久性が悪化する、という問題があった。
本発明の特徴は、導電性材料として金属に近い電気抵抗を持ち、銅などに比べ酸化され難く、また銀や金に比べ安価で広い範囲で使用することができる導電性材料として、導電性繊維と、カーボンブラック又はカーボンナノチューブとを用い発熱層を構成している点であり、適正な電気抵抗、昇温特性と共に耐久性を向上させた発熱ベルトを提供することが出来た。
本発明は、アスペクト比が0.025以上0.25以下で、直径が0.5μm以上30μm以下であり、長さが5.0μm以上1000μm以下である導電性繊維とカーボンブラック又はカーボンナノチューブをポリイミド等の樹脂に含有させたことが大きな特徴である。
使用するカーボンブラックは直径が3nmから500nmであること、又、カーボンナノチューブの長さが、0.5μmから20μmであることを特徴とする。
本発明では、発熱層を形成する低抵抗化物質(導電性材料)としての導電性繊維を、目的の抵抗値を達成するために、基本的には1種類とカーボンブラック又はカーボンナノチューブとを用いることで、低抵抗で均一な発熱ベルトを実現した。樹脂に含有された導電性繊維は5.0体積%以上60体積%以下、カーボンブラック又はカーボンナノチューブを導電性繊維100質量部に対して1質量部から30質量部混合して使用することが本発明の好ましい態様である。
本発明の実施の形態を図1から図5を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は、本発明の定着発熱ベルトを使用した電子写真方式の画像形成装置の一例を示す概略断面構成図である。尚、本図はフルカラー画像形成装置の場合を示している。
図中、1はフルカラー画像形成装置を示す。フルカラー画像形成装置1は、複数組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kと、転写部としての無端ベルト状中間転写体形成ユニット7と、記録媒体Pを搬送する無端ベルト状の給紙搬送手段21及び定着手段としてのベルト式定着装置24とを有する。フルカラー画像形成装置1の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
各感光体1Y、1M、1C、1Kに形成される異なる色のトナー像の1つとして、イエロー色の画像を形成する画像形成ユニット10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Y、感光体1Yの周囲に配置された帯電手段2Y、露光手段3Y、現像剤担持体4Y1を有する現像手段4Y、一次転写手段としての一次転写ローラー5Y、クリーニング手段6Yを有する。
又、別の異なる色のトナー像の1つとして、マゼンタ色の画像を形成する画像形成ユニット10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、感光体1Mの周囲に配置された帯電手段2M、露光手段3M、現像剤担持体4M1を有する現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラー5M、クリーニング手段6Mを有する。
又、更に別の異なる色のトナー像の1つとして、シアン色の画像を形成する画像形成ユニット10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、感光体1Cの周囲に配置された帯電手段2C、露光手段3C、現像剤担持体4C1を有する現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラー5C、クリーニング手段6Cを有する。
又、更に他の異なる色のトナー像の1つとして、黒色画像を形成する画像形成ユニット10Kは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1K、感光体1Kの周囲に配置された帯電手段2K、露光手段3K、現像剤担持体4K1を有する現像手段4K、一次転写手段としての一次転写ローラー5K、クリーニング手段6Kを有する。
無端ベルト状中間転写体形成ユニット7は、複数のローラーにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体として無端の中間転写ベルト70を有する。
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kより形成された各色の画像は、一次転写ローラー5Y、5M、5C、5Kにより、回動する無端の中間転写ベルト70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された記録媒体として用紙等の記録媒体Pは、給紙搬送手段21により給紙され、複数の中間ローラー22A、22B、22C、22D、レジストローラー23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラー5Aに搬送され、記録媒体P上にカラー画像が一括転写される。
カラー画像が転写された記録媒体Pは、環状の発熱定着ベルト24aが装着された定着装置24により定着処理され、排紙ローラー25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
一方、二次転写ローラー5Aにより記録媒体Pにカラー画像を転写した後、記録媒体Pを曲率分離した無端の中間転写ベルト70は、クリーニング手段6Aにより残留トナーが除去される。
画像形成処理中、一次転写ローラー5Kは常時、感光体1Kに圧接している。他の一次転写ローラー5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに圧接する。
二次転写ローラー5Aは、ここを記録媒体Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端の中間転写ベルト70に圧接する。
又、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。筐体8は、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kと、無端ベルト状中間転写体形成ユニット7とを有する。
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Kの図示左側方には無端ベルト状中間転写体形成ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体形成ユニット7は、ローラー71、72、73、74、76を巻回して回動可能な無端の中間転写ベルト70、一次転写ローラー5Y、5M、5C、5K及びクリーニング手段6Aとを有している。
筐体8の引き出し操作により、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kと、無端ベルト状中間転写体形成ユニット7とは、一体となって、本体Aから引き出される。
この様に感光体1Y、1M、1C、1Kの外周面上を帯電、露光し外周面上に潜像を形成した後、現像によりトナー像(顕像)を形成し、無端の中間転写ベルト70上で各色のトナー像を重ね合わせ、一括して記録媒体Pに転写し、ベルト式定着装置24で加圧及び加熱により固定して定着する。尚、本発明で像形成時とは潜像形成、トナー像(顕像)を記録媒体Pに転写し最終画像を形成することを含む。
トナー像を記録媒体Pに転移させた後の感光体1Y、1M、1C、1Kは、各感光体1Y、1M、1C、1Kに配設されたクリーニング手段6Y、6M、6C、6Kで転写時に感光体に残されたトナーを清掃した後、上記の帯電、露光、現像のサイクルに入り、次の像形成が行われる。
上記カラー画像形成装置では、中間転写体をクリーニングするクリーニング手段6Aのクリーニング部材として、弾性ブレードを用いる。又、各感光体に脂肪酸金属塩を塗布する手段(11Y、11M、11C、11K)を設けている。尚、脂肪酸金属塩としては、トナーで用いたと同じものを用いることが出来る。
本発明は、本図に示される定着装置24に使用されている環状の発熱定着ベルト24aに関するものである。
図2は図1に示す画像形成装置に使用している定着装置の拡大概略図である。図2(a)は図1に示す画像形成装置に使用している定着装置の拡大概略斜視図である。図2(b)は図1に示すA−A′に沿った概略断面図である。
図中、24は定着装置を示す。定着装置24は環状の発熱定着ベルト24aと、定着ローラー24bと、環状の発熱定着ベルト24aを圧接しながら回動する加圧ローラー24cとを有している。
定着ローラー24bが駆動ローラーとなっており、定着ローラー24bの回転(図中の矢印方向)に伴い、環状の発熱定着ベルト24aは矢印方向に巻回する様になっている。
環状の発熱定着ベルト24aを介して定着ローラー24bと加圧ローラー24cとの間に定着ニップ部Nを形成する様になっている。定着ニップ部Nで、トナー像(顕像)が転写された記録媒体P(図1参照)を挟み込み、環状の発熱定着ベルト24aによりトナー像(顕像)を溶融定着し最終画像を形成する様になっている。
環状の発熱定着ベルト24aの定着ローラー24bと接触する側が発熱層24a3(図3参照)、加圧ローラー24cと接触する側が離形層24a7(図3参照)となっている。
24a1は発熱定着ベルト24aの端に設けられた給電用電極を示し、24a2は発熱定着ベルト24aの他の端に設けられた給電用電極を示し、給電用電極24a1と給電用電極24a2とで一対となっている。
24d1は給電用電極24a1に接触し、発熱定着ベルト24aに給電する給電部材を示す。24d2は給電用電極24a2に接触し、発熱定着ベルト24aに給電する給電部材を示す。給電部材を配設する位置は、環状の発熱定着ベルト24aの温度、定着安定性等を考慮し、給電用電極24a1と給電部材24d1との接触を安定にするため、給電用電極24a1が定着ローラー24bと接触している位置で、且つ定着ニップ部Nの近傍が好ましい。
給電部材は給電用電極に均一に接触させるため、給電用電極に押圧手段(例えばバネ)で押圧して接触させることが好ましい。
図3は図1に示す発熱定着ベルトの拡大概略図である。図3(a)は図1に示す発熱定着ベルトの拡大概略平面図である。図3(b)は図3(a)のB−B′に沿った概略拡大断面図である。図3(c)は図3(b)のYで示される部分の拡大概略図である。
図中、24aは環状の発熱定着ベルトを示す。環状の発熱定着ベルト24aは両端部に給電用電極24a1、24a2を有する発熱層24a3と、給電用電極24a1、24a2を除きプライマー層24a4を介して弾性層24a5と、プライマー層24a6を介して離形層24a7とを有する構成を有している。尚、本発明において、層構成については特に限定はなく、弾性層24a5、プライマー層24a4、24a6は、必要に応じて設けることが可能である。
本図では、発熱層24a3の弾性層24a5が積層されている側と反対側の面が定着ローラー24b(図2参照)と接触し、離形層24a7の弾性層24a5と接触している面と反対側の面が加圧ローラー24c(図2参照)と接触する様になっている。
発熱層24a3は、導電性繊維と、カーボンブラック又はカーボンナノチューブ(以下、導電性物質とも言う)を含むポリイミド樹脂で構成されている。
使用する導電性繊維としては、直径(X)が0.5μm≦X≦30μm、長さ(Y)が5.0μm≦Y≦1000μmで、アスペクト比が0.025≦(X/Y)≦0.25である。
本発明において、導電性繊維の直径が0.5μm未満では発熱層中に分布し繊維同士が接触したときのその接触抵抗が大きくなり過ぎ、発熱層全体の抵抗値を十分に下げることが出来ない。また導電性繊維の直径が30μmを超えると発熱層中での分散性が低下し、抵抗に局部的なばらつきが生ずる。また、5.0μm未満では電荷の導通路が形成されにくく、1000μmを超えてしまうと必ずしも長く伸びた形では存在できず、発熱層の抵抗に局部的バラツキが生ずる。さらには、アスペクト比が0.025より低い、あるいは0.25より高い場合についても、上記のいずれかの不都合が生じる。
導電性繊維の直径と長さは、導電性繊維を走査型電子顕微鏡写真を用いて500倍にて撮影し、スキャナーにて取り込んだ画像から最低500個の繊維の直径と長さを測定し、その平均値より算出した。又、アスペクト比は繊維の直径を長さで除算することにより求めた。
導電性繊維のポリイミド樹脂への混合量は、ポリイミド樹脂に対して、導通路の形成や発熱層の強度等を考慮し、10体積%以上、50体積%以下が好ましい。
使用するカーボンブラックの直径は、導電性繊維との接点を考慮し、3nmから500nmであることが好ましい。
カーボンブラックの直径は、電子顕微鏡法により測定する。電子顕微鏡法とは、以下に示す方法である。カーボンブラックをクロロホルムに投入し200kHzの超音波を20分間照射し分散させた後、分散試料を支持膜に固定する。これを透過型電子顕微鏡で写真撮影し、写真上の直径と写真の拡大倍率により粒子径を計算する。この操作を約1500回にわたって実施し、それらの値の算術平均により測定した値を示す。
使用するカーボンブラックの使用量は、発熱層の強度を考慮し、導電性繊維100質量部に対して1質量部から10質量部混合されていることが好ましい。
カーボンナノファイバーの長さは、導電性繊維との接触性を考慮し、0.5μmから20μmが好ましい。
繊維径及び長さは、電子顕微鏡法により測定する。電子顕微鏡法とは、以下に示す方法である。カーボンブラックをクロロホルムに投入し200kHzの超音波を20分間照射し分散させた後、分散試料を支持膜に固定する。これを透過型電子顕微鏡で写真撮影し、写真上の直径と写真の拡大倍率により繊維径、長さを計算する。この操作を約500回にわたって実施し、それらの値の算術平均により測定した値を示す。
給電用電極24a1、24a2の形成は特に限定はなく、例えば導電性テープを貼合してもよい。
離形層24a7の硬度はユニバーサル硬度(HU)(DIN 50359)で、耐久性、可撓性、離型性、トナーオフセット性等を考慮し、50MPaから800MPaが好ましい。離形層24a7の硬度は、超微小硬度計「H−100V((株)フィッシャー・インストルメンツ製)」を用いて測定した値を示す。
離形層24a7の摩擦係数は、離型性、トナーオフセット性、耐久性等を考慮し、0.25以下であることが好ましい。摩擦係数は、ポータブル摩擦計「ミューズ TIPE:94i−II(新東科学株式会社製)」を用いて測定した値を示す。
尚、測定は離形層24a7上を、ランダムに10点から30点行い、それらの平均値を摩擦係数(μ)とする。
Eは発熱層の厚さを示す。厚さEは、電熱性、柔軟性等を考慮し、0.02mmから0.2mmが好ましい。厚さEは、大塚電子(株)製FE−300で測定した値を示す。
Fは弾性層24a5の厚さを示す。厚さFは柔軟性を考慮し、0.1mmから0.3mmが好ましい。厚さFは、大塚電子(株)製FE−300で測定した値を示す。
Gは離形層24a7の厚さを示す。厚さGは、熱伝達性、可撓性、耐久性等を考慮し、1μmから10μmが好ましく、1μmから5μmがより好ましい。厚さは、渦電流式膜厚計((株)フィッシャー・インストルメンツ製)により測定した値を示す。
プライマー層24a4、24a6の厚みは2μmから5μmであることが好ましい。
発熱定着ベルト24aの幅、直径は画像形成装置の仕様に応じて適宜決めることが可能である。
発熱層24a3の体積抵抗率は、体積抵抗率が高くても低くても発熱効率が悪く、発熱効率を考慮し、8×10−6Ω・mから1×10−2Ω・mが好ましい。
体積抵抗率は発熱定着ベルトの円周方向全周の両端部に導電テープで電極部を設け、その両端の抵抗値を測定し、下記式にて算出することが出来る。
体積抵抗率(ρ)=(R・d・W)/L(Ω・m)
(但し、両端間の抵抗値(R:Ω)、発熱層厚み(d:m)、円周方向長さ(W:m)、電極間の長さ(L:m)である。)
次ぎに図1から図3に示される発熱定着ベルトの製造方法に付き説明する。
図4は図3に示される構成を有する発熱定着ベルトの概略製造フロー図である。
発熱定着ベルト24aは(a)、(b)に示される2通りの製造フローにより製造することが可能となっている。
(a)に示される概略製造フロー図に付き説明する。
9は製造工程を示す。製造工程9は発熱層形成工程9Aと、弾性層形成工程9Bと、離形層形成工程9Cとを有している。
発熱層形成工程9Aは、溶解工程9aと、導電性物質分散工程9bと、塗布・乾燥工程9cと、焼成工程9dとを有している。
溶解工程9aでは、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを実質的に等モル量を溶媒に溶解し、混合・加熱し重縮合反応してポリアミド酸溶液を調製する。
導電性物質分散工程9bでは、溶解工程9aで調製したポリアミド酸溶液に導電性物質を添加し、加熱攪拌混合し導電性繊維、導電性物質分散ポリアミド酸溶液を調製する。
ポリアミド酸溶液の固形分濃度は特に規定されるものではないが、ポリイミド樹脂からなる環状の発熱定着ベルト製造時の塗工適性より、適当な粘度を発現する範囲が選択される。塗工上最適な粘度範囲としては、一般に1Pasから100Pasが好ましい。
導電性物質の分散方法としては公知の方法が適用でき、ボールミル、サンドミル、バスケットミル、超音波分散等が挙げられる。
又、導電性物質の分散時には、これらの分散安定性を更に高めるために、非イオン系高分子を添加することが好ましい。非イオン系高分子としては、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、ポリ(N,N’−ジエチルアクリルアジド)、ポリ(N−ビニルホルムアミド)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリ(N−ビニルフタルアミド)、ポリ(N−ビニルコハク酸アミド)、ポリ(n−ビニル尿素)、ポリ(N−ビニルピペリドン)、ポリ(n−ビニルカプロラクタム)、ポリ(n−ビニルオキサゾリン)等が挙げられ、単独又は複数の非イオン系高分子を添加することが出来る。これらの中では、導電性物質の分散性がより高まることから、ポリ(n−ビニル−2−ピロリドン)を含むことがより好ましい。
塗布・乾燥工程9cでは、導電性物質分散工程9bで調製した導電性物質分散ポリアミド酸溶液を、円筒状金型に塗布し、乾燥を行う。
塗布方法としては特に限定はなく、例えば、円筒状金型を使用する場合、浸漬塗布方法、ノズルによる塗布方法等が挙げられ適宜必要に応じて使用することが可能である。ノズルによる塗布方法に付いては図5で説明する。
乾燥は、導電性物質分散ポリアミド酸溶液を塗布した円筒状金型を、加熱環境に置き、含有溶媒の20質量%から60質量%以上を揮発させ、発熱定着ベルト形成用塗膜(導電性物質分散ポリアミド酸塗膜)を形成するために行われる。この際、溶媒は膜中に残留していても構わず、発熱定着ベルト形成用塗膜(導電性物質分散ポリアミド酸塗膜)表面が傾けても流動しない状態であれば問題ない。乾燥は、常圧下で50℃から200℃の温度範囲で行うことが好ましい。
焼成工程9dでは、乾燥工程での乾燥が終了した後、発熱定着ベルト形成用塗膜(導電性物質分散ポリアミド酸塗膜)を形成した円筒状金型を200℃から500℃の温度範囲で加熱し、イミド転化反応を十分に進行させる。加熱温度が60℃未満では脱水閉環が十分に進行せず、加熱温度が500℃を超えると分解が始まる。イミド化の温度は、原料のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類、又は添加される3級アミンによって、それぞれ異なるが、イミド化が完結する温度に設定しなければならない。イミド化が不充分であると、機械的特性及び電気的特性に劣るものとなることがある。
ポリアミド酸の脱水閉環反応のため、ポリアミドからポリイミドへの転化が起こる。その結果、反応により脱離した水分量相当の質量減少が発生し、発熱定着ベルト形成用塗膜(導電性物質分散ポリアミド酸塗膜)中の、ポリイミド樹脂成分に対する導電性物質の含有率が、ポリアミド酸樹脂成分に対する導電性物含有率に比べ大きくなる。
弾性層形成工程9Bは塗布工程(不図示)と、乾燥工程(不図示)とを有している。弾性層形成工程9Bでは、発熱層の上に給電用電極24a1、24a2(図3参照)を除き弾性層形成用塗布液を塗布した後、乾燥することで弾性層が形成される。尚、弾性層と発熱層との接着を良くするためにプライマー層を形成した後に弾性層を形成することが好ましい。
離形層形成工程9Cは塗布工程(不図示)と、乾燥工程(不図示)とを有している。離形層形成工程9Cでは、給電用電極24a1、24a2(図3参照)を除き弾性層の上に離形層形成用塗布液を塗布した後、乾燥することで離形層が形成される。尚、弾性層と離形層との接着を良くするためにプライマー層を形成した後に離形層を形成することが好ましい。
その後、円筒状金型を抜き取ることで導電性物質を含有した発熱層と、弾性層と、離形層とを順次形成した環状の発熱定着ベルトを製造することが出来る。尚、弾性層、離形層は必要に応じて省くことも可能である。
尚、給電用電極24a1、24a2(図3参照)は、離形層を形成した後にテープ貼合機を使用し、発熱層の両端に導電性テープを貼合することで形成することが可能である。
(b)に示される概略製造フロー図に付き説明する。
9′は製造工程を示す。製造工程9′は発熱層形成工程9′Aと、弾性層形成工程9′Bと、離形層形成工程9′Cとを有している。発熱層形成工程9′Aは、導電性物質分散工程9′aと、重縮合工程9′bと、塗布・乾燥工程9′cと、焼成工程9′dとを有している。
導電性物質分散工程9′aでは、溶媒に導電性物質が分散される。尚、使用する溶媒は(a)に示される発熱層形成工程9Aの溶解工程9aで使用する溶媒と同じ溶媒である。
重縮合工程9′bでは、導電性物質分散工程9′aで調製した導電性物質分散液に、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを実質的に等モル量を溶解し、混合・加熱し重縮合反応して導電性物質分散ポリアミド酸溶液を調製する。導電性物質分散ポリアミド酸溶液中、導電性物質の配合量は(a)に示される製造工程9の場合と同じである。
塗布・乾燥工程9′cでは、重縮合工程9′bで調製された導電性物質分散ポリアミド酸溶液を円筒状金型に塗布し、乾燥を行う。塗布方法、乾燥条件は(a)に示される製造工程9の塗布・乾燥工程9cと同じである。
焼成工程9′dでは、乾燥工程での乾燥が終了した後、発熱定着ベルト形成用塗膜(導電性物質分散ポリアミド酸膜)を形成した円筒状金型を焼成し、イミド転化反応を十分に進行させる。焼成条件は(a)に示される製造工程9の焼成工程9dと同じである。
弾性層形成工程9′Bは塗布工程(不図示)と、乾燥工程(不図示)とを有している。弾性層形成工程9′Bでは、発熱層の上に給電用電極24a1、24a2(図3参照)を除き弾性層形成用塗布液を塗布した後、乾燥することで弾性層が形成される。尚、弾性層と発熱層との接着を良くするためにプライマー層を形成した後に弾性層を形成することが好ましい。弾性層形成用塗布液の塗布は発熱層形成用塗布液の塗布と同じ方法で塗布することが可能である。
離形層形成工程9′Cは塗布工程(不図示)と、乾燥工程(不図示)とを有している。離形層形成工程9′Cでは、給電用電極24a1、24a2(図3参照)を除き弾性層の上に離形層形成用塗布液を塗布した後、乾燥することで離形層が形成される。尚、弾性層と離形層との接着を良くするためにプライマー層を形成した後に離形層を形成することが好ましい。離形層形成用塗布液の塗布は発熱層形成用塗布液の塗布と同じ方法で塗布することが可能である。
その後、円筒状金型を抜き取ることで導電性物質を含有した発熱層と、弾性層と、離形層とを順次形成した環状の発熱定着ベルトを製造することが出来る。尚、弾性層、離形層は必要に応じて省くことも可能である。
尚、給電用電極24a1、24a2(図3参照)は、離形層を形成した後にテープ貼合機を使用し、発熱層の両端に導電性テープを貼合することで形成することが可能である。
図5は、図4に示す発熱層形成工程の塗布・乾燥工程で使用する塗布・乾燥装置の一例を示す概略図である。図5(a)は図4に示す発熱層形成工程の塗布・乾燥工程で使用する塗布・乾燥装置の一例を示す概略斜視図である。図5(b)は図5(a)に示される塗布・乾燥装置の概略正面図である。以下に、円筒状金型を使用し円筒状金型の表面上に導電性物質分散ポリアミド酸溶液を塗布する方法に付き説明する。
図中、9c1は塗布装置を示す。塗布装置9c1は保持部9c11と塗布部9c12と乾燥部9c13とを有している。保持部9c11は第1保持台9c111と、第2保持台9c112、駆動用モーター9c113とを有している。駆動用モーター9c113は第1保持台9c111上に配設されており、円筒状金型9c2の保持部材9c21と接続部材を介して駆動用モーター9c113の回転軸に接続されている。第2保持台9c112には円筒状金型9c2の他方の保持部材9c22を受ける受け部9c114が配設されており、これにより、駆動用モーター9c113の回転により円筒状金型9c2を回転及び停止が可能に保持することが可能となっている。
塗布部9c12は、塗布手段9c121と、駆動手段9c122とを有している。9c123は塗布手段9c121に導電性物質分散ポリアミド酸溶液を供給する塗布液供給管を示す。塗布手段9c121は取り付け部材9c124によりガイドレール9c125に円筒状金型9c2の回転軸に沿って平行に移動可能に取り付けられている。塗布手段9c121としては、ノズルが挙げられる。ノズルの導電性物質分散ポリアミド酸溶液の吐出口の形状は特に限定はなく、例えば、円形、長方形等が挙げられる。ノズルの吐出口と円筒状金型9c2の周面までの距離は、塗布液の粘度、膜厚等を考慮し、1mmから100mmが好ましい。尚、本図では塗布手段9c121への導電性物質分散ポリアミド酸溶液供給部、制御部は省略してある。
駆動手段9c122はモーター9c126とガイドレール取り付け板9c3とを有している。ガイドレール取り付け板9c3には、取り付け部材9c124を取り付け、保持部9c11に保持された円筒状金型c2の回転軸と平行に塗布手段9c121を回転軸方向に往復移動(図中の矢印方向)させるための2本のガイドレール9c125が配設されている。
モーター9c126は、取り付け部材9c124の上に取り付けられたスライド用ネジ9c127と螺合し、取り付け部材9c124を保持部9c11に保持された円筒状金型9c2の幅よりも長く移動させる長さの雌ネジ9c128を有している。
モーター9c126を駆動させることで、雌ネジ9c128の回転に伴い、取り付け部材9c124に取り付けられた塗布手段9c121が円筒状金型9c2の回転軸と平行に回転軸方向に往復移動(図中の矢印方向)することが可能となっている。
円筒状金型9c2の上に導電性物質分散ポリアミド酸塗膜(発熱定着ベルト形成用塗膜)を形成した後、導電性物質分散ポリアミド酸塗膜(発熱定着ベルト形成用塗膜)は、乾燥部9c13で回転させながら溶媒を除去する。この後焼成工程(不図示)で加熱処理を行うことでポリイミド膜が形成する。この後、円筒状金型9c2を抜き取ることで環状の発熱定着ベルトが形成される。
乾燥部9c13は、乾燥装置9c131を有している。乾燥装置9c131は円筒状金型9c2に塗布された導電性物質分散ポリアミド酸溶液塗膜を乾燥させるために円筒状金型9c2の下に配設されている。乾燥装置9c131の熱源としては、例えば赤外線ランプ、ニクロム線、熱風等の熱源が挙げられる。尚、乾燥装置9c131は導電性物質分散ポリアミド酸塗膜(発熱定着ベルト形成用塗膜)の溶媒を除去した後、焼成装置としても利用することが可能である。
本図は円筒状金型を使用した場合を示しているが円柱状金型であってもよく、適宜選択することが可能である。
本図は、ノズルを使用した塗布方法に付き説明したものであるが、円筒状金型9dの表面に導電性物質分散ポリアミド酸溶液(発熱定着ベルト形成用溶液)を塗布する方法は特に限定はなく公知の塗布方法適用することが出来る。例えば、環状塗布槽を使用した環状塗布方法、浸漬塗布方法、超音波アトマイザーによる塗布方法等が挙げられる。
尚、形成された発熱定着ベルトの上に弾性層、離形層を順次形成する場合も、本図に示す塗布装置9c1を使用し、弾性層形成用溶液、離形層形成用溶液を発熱定着ベルトの上に順次塗布することで形成することが可能である。
本発明で使用する導電性物質分散ポリアミド酸溶液(発熱定着ベルト形成用溶液)の粘度は、円筒状金型への塗布性、レベリング性、脱泡等のハンドリング性等を考慮し、5Pa・sから200Pa・sが好ましい。粘度は、東機産業(株)製TVB10形を使用し、温度25℃で測定した値を示す。
導電性繊維の直径(A)が、0.5μm≦A≦30μm、導電性繊維の長さ(B)が5.0μm≦B≦1000μm、アスペクト比が、0.025≦(A/B)≦0.25の導電性繊維と、カーボンブラック又はカーボンナノファイバーとを含むポリイミド樹脂から構成される発熱層を有する発熱定着ベルトにより次の効果が挙げられる。
1.発熱ベルトの低抵抗化が有効に出来、十分な性能を長期にわたって維持することが可能となった。
2.ウォーミングアップタイムが短くすることが可能となった。
3.ウォーミングアップタイムが短く、省エネルギー性能を有した画像形成装置の作製が可能となった。
次ぎに本発明の発熱定着ベルトを構成している各層に係わる材料に付き説明する。
発熱層
(耐熱性樹脂)
本発明において、発熱層を形成するバインダー樹脂としては、所謂耐熱性樹脂を用い、一般的には短期的耐熱性が200℃以上、長期的耐熱性が150℃以上のものを耐熱性樹脂という。耐熱性樹脂の代表的なものとしては次ぎのものが挙げられる。例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等。これらの中で特に好ましい耐熱性樹脂としては、ポリイミド樹脂が挙げられる。
本発明において、樹脂全体の40体積%以上が当該樹脂であることが極めて望ましい。
(ポリイミド樹脂)
ポリイミド樹脂は、通常、少なくとも1種の芳香族ジアミンと少なくとも1種の芳香族テトラカルボン酸二無水物とを有機極性溶媒中で重合してなるポリアミド酸がイミド転化されてポリイミド樹脂を形成する。
(ジアミン化合物)
ポリアミド酸の製造に用いられるジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物であれば特に限定されない。
例えば、パラフェニレンジアミン(PPD)、メタフェニレンジアミン(MPDA)、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジメチル−4,4′−ビフェニル、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ビフェニル、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4、4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン(MDA)、2,2−ビス−(4−アミノフェニル)プロパン、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン(33DDS)、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン(44DDS)、3,3′−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジアミノジフェニルエーテル、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル(34ODA)、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、1,5−ジアミノナフタレン、4,4′−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4′−ジアミノジフェニルシラン、4,4′−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(133APB)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(134APB)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPSM)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、2,2−ビス(3−アミノフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン及び9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン等を挙げることができる。中でも好ましいジアミンは、パラフェニレンジアミン(PPD)、メタフェニレンジアミン(MPDA)、4,4′−ジアミノジフェニルメタン(MDA)、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン(33DDS)、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン(44DDS)、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル(34ODA)、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(133APB)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(134APB)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPSM)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)等の芳香族ジアミン:ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン:1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミン等を挙げることができる。
これらのジアミン化合物の中で、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォンが好ましい。
これらのジアミン化合物は単独で又は2種以上組み合わせて用いることが出来る。
(テトラカルボン酸二無水物)
ポリアミド酸の製造に用いられ得るテトラカルボン酸二無水物としては、特に制限はなく、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物も使用できる。
芳香族テトラカルボン酸二無水物の代表例としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,2′,3,3′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二水物、2,3,3′,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス[3,4−(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、オキシジフタル酸無水物(ODPA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホキシド二無水物、チオジフタル酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物及び9,9−ビス[4−(3,4′−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物等を挙げることができる。中でも好ましいテトラカルボン酸二無水物は、ピロメリット二無水物(PMDA)、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、2,2−ビス[3,4−(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)、オキシジフタル酸無水物(ODPA)を挙げることができる。なお、これらをメタノール、エタノール等のアルコール類と反応させてエステル化合物としてもよい。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9B−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。
テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系テトラカルボン酸二無水物が好ましく、さらに、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物が最適に使用される。
尚、これらの芳香族ジアミン及び芳香族テトラカルボン酸二無水物、又は脂肪族テトラカルボン酸二無水物は単独で又は混合して用いることができる。また、複数種類のポリアミド酸溶液を調製し、それらのポリアミド酸溶液を混合して用いることも出来る。
ポリアミド酸溶液の調製に使用する溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)やN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を使用することが可能である。
(導電性繊維)
導電性繊維とは、代表的には金、銀、鉄、アルミニウム等の純金属繊維、ステンレス、ニクロム等の合金繊維、或いは炭素、黒鉛などの非金属繊維であり、繊維とは細長い形状を有していることを示す呼称である。本発明では、特に好ましい導電性繊維として黒鉛繊維が挙げられる。
これら繊維の作製方法は、特開2004−176236等に記載の公知の製造方法を用いることが出来る。
これら導電性繊維自体の体積固有抵抗(ρv)は10−1Ω・m以下であることが好ましい。
体積固有抵抗(ρv)は、断面積Wtに一定電流Iを流し、距離Lだけ離れた電極間の電位差V(V)を測り、下式により求められる。
体積抵抗率ρv=VWt/IL
(カーボンブラック)
カーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が挙げられる。これらの中でが好ましい。
これらカーボンブラックの作製方法は、カーボンブラック便覧 編集:カーボンブラック協会等に記載の公知の製造方法を用いることが出来る。
(カーボンナノ材料)
カーボンナノ材料としては、カーボンナノファイバー、カーボンマイクロコイル、等が挙げられ、カーボンナノファイバーが特に好ましい。
これらカーボンナノファイバーの作製方法は、曽根田靖 炭素No.237 72−76(2009)に記載の公知の製造方法を用いることが出来る。
(弾性層)
弾性層としては、特に限定されるものではなく、任意のゴム材料、熱可塑性エラストマーを用いることが出来る。例えばスチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ハイスチレンゴム、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IIR)、エチレン−プロピレン共重合体、ニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロロヒドリンゴム及びノルボルネンゴム等から選ぶことが出来る。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
一方、熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系、ポリウレタン系、スチレン−ブタジエントリブロック系、ポリオレフィン系などを用いることが出来る。
又、弾性体層には、発熱定着ベルトの使用目的、設計目的などに応じて、充填剤、増量充填剤、加硫剤、着色剤、耐熱剤、顔料等の種々の配合剤を添加することが出来る。又、配合剤の添加量などにより合成樹脂の可塑度は変化するが、硬化前の剛性樹脂の可塑度としては、120以下のものが好適に用いられる。
(離形層)
離形層形成用樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)より成る群から選択される少なくとも1つの樹脂あることが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(導電性繊維及びカーボンブラック、カーボンナノファイバー分散ポリアミド酸溶液の調製)
ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸溶液(宇部興産社製 U−ワニスS301)100gに表1に示すフィラーを投入し、攪拌、混合はプライミックス社製TKホモディスパー2.5型を用い、5,000rpmで15分行った。なお、黒鉛繊維は特開2004−176236に記載の方法により作製し、直径及び長さの変更は、紡糸条件及び分級条件を変更することで行った。
(発熱層の形成)
準備した実施例1から20、比較例1から9の分散、混合液を図5に示す製造装置を使用し、塗布装置に装着したステンレス製の芯金に、厚さ0.8mmとなる様に以下に示す条件で塗布した後、回転速度40rpmで回転させながら、120℃で40分間加熱乾燥させた。その後、400℃で20分間加熱乾燥し発熱定着ベルトの発熱層を形成した。引き続き芯金を抜き取らないで給電用電極、弾性層、離形層を形成した。
塗布条件
ポリアミド酸溶液の温度:25℃
ノズルのポリアミド酸溶液吐出口の形状:円錐状ノズル
ノズルのポリアミド酸溶液吐出口の口径:2mm
ノズルのポリアミド酸溶液吐出口と芯金の周面までの距離:5mm
ノズルからのポリアミド酸溶液の吐出量:5ml/min
ノズルの芯金の回転軸方向への移動速度:1mm/sec
芯金の回転速度:40rpm
芯金の回転速度は、(株)小野測器製HT−4200製で測定した値を示す。
(給電用電極の形成)
発熱層(ポリイミド樹脂)の両端周面に幅10mm、厚さ2mmの導電性テープCU−35C(3M(株)製)を1巻き貼着し給電用電極を形成した。
(弾性層の形成)
(弾性層形成用塗布液の調製)
シリコーンゴムKE1379(信越化学(株)製)の液状ゴム及びシリコーンゴムDY356013(東レダウコーニングシリコーン社製)の2液を予め2:1の割合で混合した組成物40gを弾性層形成用塗布液とした。粘度は東機産業(株)製TVB10形を使用し、温度25℃で測定し、50Pa・sであった。
(弾性層形成用塗布液の塗布)
図5に示す製造装置を使用し、ポリイミド前駆体被覆用塗布液に換えて、弾性層形成用塗布液を給電用電極の上を除いて発熱層の上に、以下に示す条件でポリイミド樹脂前駆体塗布液の塗布と同じ方法で弾性層形成用塗布液を塗布し、乾燥後の膜厚200μmの弾性層形成用塗膜を形成する。この後、芯金を回転速度40rpmで回転させながら、150℃で30分間一次加硫し、さらに200℃で4時間ポスト加硫を行い、発熱層の上に弾性層を形成した。
塗布条件
弾性層形成用塗布液の温度:25℃
ノズルの弾性層形成用塗布液吐出口の形状:円錐状ノズル
ノズルの弾性層形成用塗布液吐出口の口径:2mm
ノズルの弾性層形成用塗布液吐出口と発熱層の周面までの距離:5mm
ノズルからの弾性層形成用塗布液の吐出量:5ml/min
ノズルの芯金の回転軸方向への移動速度:1mm/sec
芯金の回転速度:40rpm
芯金の回転速度は、(株)小野測器製HT−4200製で測定した値を示す。
(離形層の形成)
(離形層形成用塗布液の準備)
PTFE樹脂とPFA樹脂を7:3の割合で混合し、固形分濃度45%、粘度:110mPa・sに調整したフッ素樹脂ディスパーション(デュポン社製商品名“855−510”)を離形層形成用塗布液として準備した。
(離形層形成用塗布液の塗布)
図5に示す製造装置を使用し、弾性層形成用塗布液に換えて、離形層形成用塗布液を給電用電極の上を除いて弾性層の上に、以下に示す条件で弾性層形成用塗布液の塗布と同じ方法で離形層形成用塗布液を塗布し、乾燥後の膜厚30μmの離形層形成用塗膜を形成する。この後、室温で30分間乾燥した後、芯金を回転速度(周速度)0.1m/secで回転させながら、230℃で30分間加熱し、さらに270℃で10分間加熱し、弾性層の上に離形層を形成した。
離形層の引張強度は10MPaであった。離形層の引張強度は離形層の硬度は、インストロン ジャパン カンパニイ リミテッド製5988を用いて測定した値を示す。
離形層の摩擦係数は、0.1であった。摩擦係数は、ポータブル摩擦計「ミューズ TIPE:94i−II(新東科学株式会社製)」を用いて測定した値を示す。尚、測定は離形層上を、ランダムに10点から30点行い、それらの平均値を摩擦係数(μ)とする。
塗布条件
離形層形成用塗布液の温度:25℃
ノズルの離形層形成用塗布液吐出口の形状:円錐状ノズル
ノズルの離形層形成用塗布液吐出口の口径:2mm
ノズルの離形層形成用塗布液吐出口と発熱層の周面までの距離:5mm
ノズルからの離形層形成用塗布液の吐出量:5ml/min
ノズルの芯金の回転軸方向への移動速度:1mm/min
芯金の回転速度:40rpm
芯金の回転速度は、(株)小野測器製HT−4200製で測定した値を示す。
(芯金の抜き取り)
離形層を形成した後、芯金を冷却し抜き取ることで図3に示す構成(発熱層/弾性層/離形層)を有する表7に示す発熱定着ベルトを作製した。
評価
作製した実施例1から14、参考例1から6、比較例1から9のベルトを図2に示した画像形成装置に装填し図1に示す画像形成装置に組み込み、A4の画像支持体50万枚を1万枚毎に5分間中断しながら通紙し、抵抗率、昇温性、定着性、導電性繊維の酸化性に付き以下に示す方法で観察し、以下に示す評かランクに従って評価した結果を表1に示す。
(抵抗率の測定方法)
抵抗は給電電極間の抵抗値を三菱化学アナリテック製ロレスタAX MCP−T370型で測定した。本発明に係る発熱定着ベルトにおいて、上記抵抗率の測定方法で測定した場合の好ましい抵抗率は7Ωから50Ωである。
(昇温性の測定方法)
昇温性とは、発熱層に10Vを印加したときの通電5秒後までの温度をサーモビューアで測定した。
昇温性の評価ランク
◎:16℃/秒以上で極めて優秀
○:8℃/秒以上、16℃/秒未満
△:4℃/秒以上、8℃/秒未満実用可能なレベル
×:4℃/秒未満で、実用化には問題があるレベル
(定着性の測定方法)
定着性とは、粉体トナーを用いて形成されたトナー像を画像支持体に転写後、発熱ベルトにて加熱定着したときのトナー定着度合い。綿布パットを黒色トナーベタ画像に押し当て擦った時、綿布にトナーが移るか、又、トナーベタ画像を強く10回折り曲げたとき、折り目部の画像の状態を観察した。
定着性の評価ランク
○:擦ったとき、折り曲げたとき共に全く異常なし
△:擦ったとき、少し綿布がよごれるが、実用上問題なし
×:擦ったとき、綿布がよごれ、また、折り曲げにてトナーが浮き上がり、実用上問題がある
(耐久性の測定方法)
耐久性とは、画像支持体を通紙50万枚後の定着性を定着性の測定方法と同じ方法で測定し、定着性の評価ランクと同じ評価ランクで評価した。