JP5910223B2 - ポリアミック酸組成物、無端ベルト及びその製造方法、画像形成装置 - Google Patents

ポリアミック酸組成物、無端ベルト及びその製造方法、画像形成装置 Download PDF

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Description

本実施形態は、ポリアミック酸組成物、無端ベルト及びその製造方法、画像形成装置に関する。
電子写真方式を利用した画像形成装置では、従来、電子写真感光体などの像保持体に静電潜像を形成し、この静電潜像をトナーにより現像し、得られたトナー像を無端ベルトである中間転写ベルト上に静電気的に転写(一次転写工程)した後、転写紙などの被転写媒体上に再度転写(二次転写工程)して画像を形成する画像形成装置が知られている。特に、異なる複数色のトナー像を重ねることでフルカラー画像を得る方式(タンデム方式)の画像形成装置においては、中間転写ベルトが好適に用いられている。この種の画像形成装置においては、導電性を有する導電性中間転写ベルトが広く用いられてきた。
このようなベルトとして、機械強度の強さや、弾性、耐クリープ性などから、ポリイミド樹脂製の無端ベルトが用いられている。
例えば、特許文献1には、ポリイミドの前駆体として、pH7未満のカーボンブラックが、分子末端にアミノ基をもつポリアミック酸及び溶媒を含む溶液中に分散されてなるポリアミック酸組成物を用いることが開示されている。
また、例えば、特許文献2には、電子写真方式による画像形成装置に用いられ、内層と、該内層よりも外周表面側に積層された外層と、の少なくとも2層を有してなり、前記外層において単位体積当たりに含有されるカーボンブラックの含有量が、前記内層において単位体積当たりに含有されるカーボンブラックの含有量より少ない環状体が開示されている。
さらに、例えば、特許文献3には、少なくとも、樹脂と導電性粒子とを含んで構成される外層及び内層の2層を有してなり、前記内層が、厚み方向において他の領域に比べ導電性が高い領域を有する管状体が開示されている。
特開2009−237157号公報 特開2009−258699公報 特開2010−241123号公報
本発明の課題は、pH7未満のカーボンブラックの分散性が高いポリアミック酸組成物を提供することである。
前記課題は、以下の本発明により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、全末端がアミノ基であるポリアミック酸であって、カルボン酸モノ無水物で封止されていない末端アミノ基及びカルボン酸モノ無水物で封止されている末端アミノ基の総モル量(X)に対するカルボン酸モノ無水物で封止されている末端アミノ基の総モル量(Z)の割合Z/Xが、0.05≦Z/X≦0.1であるポリアミック酸と、全固形分に対して10質量%以上80質量%以下のpH7未満のカーボンブラックと、溶媒と、を含むポリアミック酸組成物である。
請求項に係る発明は、カルボン酸二無水物と、ジアミン化合物との重合体であり、かつカルボン酸モノ無水物で末端封止されていないポリアミック酸であって、末端アミノ基及び末端カルボキシ基の総モル量(X)に対する末端カルボキシ基の総モル量(Y)の割合Y/Xが、0.05≦Y/X<0.4であるポリアミック酸と、
全固形分に対して10質量%以上80質量%以下のpH7未満のカーボンブラックと、
溶媒と、
を含むポリアミック酸組成物である。
請求項に係る発明は、前記割合Y/Xが、0.1≦Y/X<0.4であるである請求項に記載のポリアミック酸組成物である。
請求項に係る発明は、請求項1〜のいずれか1項に記載のポリアミック酸組成物を用いて形成された第1層と、第1層上に、第1層と隣接して備えられ、ポリイミドを含む第2層と、を有する無端ベルトである。
請求項に係る発明は、芯体の表面に、請求項1〜のいずれか1項に記載のポリアミック酸組成物を含む第1のポリイミド前駆体溶液を塗布して第1の塗布膜を形成する第1の塗布工程と、
前記第1の塗布膜中の残留溶媒量が10質量%以上50質量%以下となるように溶媒を除去する第1の乾燥工程と、
残留溶媒量が10質量%以上50質量%以下である前記第1の塗布膜に、第2のポリイミド前駆体溶液を塗布して、前記第1の塗布膜に隣接する第2の塗布膜を形成する第2の塗布工程と、
前記第2の塗布膜の溶媒を除去する第2の乾燥工程と、
前記第1の塗布膜および前記第2の塗布膜を加熱し、前記第1の塗布膜中のポリイミド前駆体と、前記第2の塗布膜中のポリイミド前駆体とをイミド化して、第1層及び第2層が隣接した無端ベルトを形成する加熱工程と、
前記芯体から前記無端ベルトを抜き取る工程と、
を有する無端ベルトの製造方法である。
請求項に係る発明は、像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記像保持体の表面の潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像が転写される中間転写体と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を前記中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、
前記中間転写体の表面に転写された前記トナー像を被転写媒体に二次転写する二次転写手段と、
前記記録媒体に転写された前記トナー像を定着する定着手段と、
を備え、
前記中間転写体が、請求項に記載の無端ベルトである画像形成装置である。
請求項1に記載の発明によれば、全末端がアミノ基であるポリアミック酸と、全固形分に対して10質量%以上80質量%以下のpH7未満のカーボンブラックと、溶媒とを含むとき、ポリアミック酸におけるカルボン酸モノ無水物で封止されていない末端アミノ基及びカルボン酸モノ無水物で封止されている末端アミノ基の総モル量(X)に対するカルボン酸モノ無水物で封止されている末端アミノ基の総モル量(Z)の割合Z/Xが、0≦Y/X<0.4でない場合に比べ、pH7未満のカーボンブラックの分散性が高い
請求項に記載の発明によれば、ポリアミック酸と、全固形分に対して10質量%以上80質量%以下のpH7未満のカーボンブラックと、溶媒とを含むとき、ポリアミック酸の末端アミノ基及び末端カルボキシ基の総モル量(X)に対する末端カルボキシ基の総モル量(Y)の割合Y/Xが、0≦Y/X<0.4でない場合に比べ、pH7未満のカーボンブラックの分散性が高い。
請求項に係る発明によれば、上記割合Y/Xが、0≦Y/X<0.1の場合に比べ、ポリアミック酸組成物のポットライフが長い。
請求項に記載の発明によれば、ポリイミドを含む第2層と隣接して備えられる第1層が、請求項1〜のいずれか1項に記載のポリアミック酸組成物を用いて形成されない場合に比べ、無端ベルトの裏面抵抗のムラを抑制る。
請求項に記載の発明によれば、請求項1〜のいずれか1項に記載のポリアミック酸組成物を含む第1のポリイミド前駆体溶液を塗布して形成した第1の塗布膜中の残留溶媒量が10質量%以上50質量%以下となるように溶媒を乾燥し、残留溶媒量が10質量%以上50質量%以下である前記第1の塗布膜に、第2のポリイミド前駆体溶液を塗布して、前記第1の塗布膜に隣接する第2の塗布膜を形成しない場合に比べ、無端ベルトの裏面抵抗のムラを抑制し、かつ、第1層と第2層との接着性が高い無端ベルトを製造する。
請求項に記載の発明によれば、中間転写体として、請求項1〜のいずれか1項に記載のポリアミック酸組成物を用いて形成された第1層と、第1層上に、第1層と隣接して備えられ、ポリイミドを含む第2層と、を有する無端ベルトを用いない場合に比べ、画像濃度ムラが抑制される。
裏面抵抗率及び体積抵抗率の測定に用いた円形電極の一例を示す概略平面図(A)及び概略断面図(B)である。 回転塗布方法を説明するための模式図である。 本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
<第1実施形態のポリアミック酸組成物>
第1実施形態のポリアミック酸組成物は、末端アミノ基及び末端カルボキシ基の総モル量(X)に対する末端カルボキシ基の総モル量(Y)の割合Y/X(以下、末端アミノ基の総モル量(X)に対する末端カルボキシ基の総モル量(Y)の割合Y/Xとも称する。)が、0≦Y/X<0.4であるポリアミック酸と、全固形分に対して10質量%以上80質量%以下のpH7未満のカーボンブラックと、溶媒と、を含んで構成される。ただし、第1実施形態におけるポリアミック酸とは、カルボン酸二無水物と、ジアミン化合物との重合体であり、かつカルボン酸モノ無水物で末端封止されていないポリアミック酸とする。また、第1実施形態における割合Y/Xは、0.05≦Y/X<0.4が適用される。
以下、pH7未満のカーボンブラックを、「酸性カーボンブラック」とも称する。
第1実施形態のポリアミック酸組成物を上記構成とすることで、ポリアミック酸組成物中の酸性カーボンブラックの分散性を高められる。この理由は次の理由によるものと考えられる。
カーボンブラックとポリアミック酸とは、無機化合物と有機化合物であるポリマーとの関係にあり、一般に、互いになじみ難いため、両者を溶媒中に添加しても、無機層とポリマー層とに分離してしまう傾向にある。
ところで、ポリアミック酸分子の分子鎖の末端は、主として、アミノ基またはカルボキシ基であり、ポリアミック酸は、両末端がアミノ基である分子、両末端がカルボキシ基である分子、または、一方の末端がアミノ基で、他方の末端がカルボキシ基である化学構造をしている。ここで、第1実施形態のポリアミック酸組成物に含まれるポリアミック酸の末端アミノ基の総モル量(X)に対する末端カルボキシ基の総モル量(Y)の割合Y/Xが、0≦Y/X<0.4である場合、すなわち、ポリアミック酸組成物に含まれるポリアミック酸が、両末端がアミノ基である分子である場合(0=Y/X)および、カルボキシ基を有するポリアミック酸を含んでいても、末端アミノ基の割合が多い場合(0<Y/X<0.4)には、ポリアミック酸は、アミノ基過多となると考えられる。
ポリアミック酸の末端基を、カルボキシ基よりもアミノ基を多くすることで、末端カルボキシ基量を超える超過分となるポリアミック酸のアミノ基は、酸性カーボンブラックと水素結合を結ぶと考えられる。ポリアミック酸のアミノ基と酸性カーボンブラックとが水素結合を結ぶことで、酸性カーボンブラックは、溶媒中の分散性が高まるものと考えられる。
一方、酸性カーボンブラックのポリアミック酸組成物中の含有量が、組成物の全固形分に対して80質量%を超えると、末端アミノ基を有するポリアミック酸の存在に関わらず、酸性カーボンブラックが凝集する傾向にある。そのため、酸性カーボンブラックの含有量は80質量%以下である必要があり、ポリアミック酸組成物中の全固形分に対して10質量%以上80質量%以下であるとき、酸性カーボンブラックの分散性を高めるには、ポリアミック酸は超過分となるアミノ基がより多く必要と考えられる。
よって、10質量%以上80質量%以下の酸性カーボンブラックと、溶媒とを含む系において、ポリアミック酸の末端アミノ基の総モル量(X)に対する末端カルボキシ基の総モル量(Y)の割合Y/Xを、0≦Y/X<0.4とすることで、ポリアミック酸組成物中の酸性カーボンブラックの分散性を高めると考えられる。
但し、ポリアミック酸は、アミノ基過多となりすぎると、酸性カーボンブラックの官能基とポリアミック酸のアミノ基が経時により強固な構造をつくると考えられ、ポリアミック酸組成物が経時で粘度が上昇し易くなることから、ポリアミック酸の末端アミノ基の総モル量(X)に対する末端カルボキシ基の総モル量(Y)の割合Y/Xを、0.1≦Y/X<0.4とすることがよい。これにより、ポリアミック酸組成物のポットライフが長くなる。
以下、第1実施形態のポリアミック酸組成物の構成成分について説明する。
〔ポリアミック酸〕
第1実施形態のポリアミック酸組成物は、末端アミノ基の総モル量(X)に対する末端カルボキシ基の総モル量(Y)の割合Y/Xが、0≦Y/X<0.4であるポリアミック酸を含有する。なお、「末端カルボキシ基」には、2つのカルボキシ基が脱水した末端無水カルボキシ基を含む。
ポリアミック酸は、ポリイミドの前駆体であり、アミド結合(−NH−CO−)とカルボキシ基とを同一繰り返し単位内に有する高分子化合物である。
第1実施形態に係るポリアミック酸は、少なくとも1種が、アミド結合とカルボキシ基とを有する繰り返し単位を含む分子鎖(主鎖)の末端にアミノ基を有していればよく、かつ、ポリアミック酸組成物中の全ポリアミック酸における末端アミノ基の総モル量(X)に対する末端カルボキシ基の総モル量(Y)の割合Y/Xが、0≦Y/X<0.4となる範囲であれば、アミド結合とカルボキシ基とを有する繰り返し単位を含む分子鎖(主鎖)の末端にカルボキシ基を有していてもよい。また、ポリアミック酸の主鎖部分は、アミド結合とカルボキシ基とが並存する繰り返し単位を含む構造であれば、特に制限されない。
既述のように、ポリアミック酸は、主として、両末端がアミノ基であるポリアミック酸(以下「DA」ともいう)と、両末端がカルボキシ基であるポリアミック酸(以下「DC」ともいう)と、一方の末端がアミノ基であり他方の末端がカルボキシ基であるポリアミック酸(以下「AC」ともいう)とに分けられる。
ここで、ポリアミック酸組成物中の全ポリアミック酸における末端アミノ基の総モル量(X)は、ポリアミック酸組成物中に、DA、DC、及びACの全種類のポリアミック酸が含まれている場合、DAの両末端に存在する末端アミノ基、および、ACの片末端に存在する末端アミノ基の合計モル量をいう。すなわち、末端アミノ基の総モル量(X)は、ポリアミック酸組成物中の末端アミノ基を有するポリアミック酸の全末端アミノ基量(モル量)をいう。
末端アミノ基の総モル量(X)は、ポリアミック酸組成物を、酸(例えば、塩酸等)を用いて中和滴定することにより測定される。
ポリアミック酸組成物中の全ポリアミック酸における末端カルボキシ基の総モル量(Y)も、同様である。
末端カルボキシ基の総モル量(Y)は、ポリアミック酸組成物中に、DA、DC、及びACの全種類のポリアミック酸が含まれている場合、DCの両末端に存在する末端カルボキシ基、および、ACの片末端に存在する末端カルボキシ基の合計モル量をいう。すなわち、末端カルボキシ基の総モル量(Y)は、ポリアミック酸組成物中の末端カルボキシ基を有するポリアミック酸の全末端カルボキシ基量(モル量)をいう。
末端カルボキシ基の総モル量(Y)は、ポリアミック酸組成物を、塩基(例えば、水酸化ナトリウム等)を用いて中和滴定することにより測定される。
末端アミノ基の総モル量(X)に対する末端カルボキシ基の総モル量(Y)の割合Y/Xは、上記2つの中和滴定から得られるXとYとの比である。
Y/Xは、酸性カーボンブラックの分散性の観点から、0≦Y/X<0.4であることが好ましく、0≦Y/X≦0.3であることがより好ましい。一方、Y/Xは、ポリアミック酸組成物のポットライフの観点から、0.1≦Y/X<0.4が好ましく、0.2≦Y/X<0.4がより好ましい。
また、ポリアミック酸組成物中の全ポリアミック酸の含有量は、酸性カーボンブラックとの分散性の観点から、ポリアミック酸組成物の全固形分量に対して、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、20質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。
ポリアミック酸の好ましい重量平均分子量(Mw)の範囲は、ポリアミック酸を加熱、脱水縮合して得るポリイミドの用途によって異なり、一般に、27,000以上39,000以下であるが、例えば、ポリアミック酸組成物を画像形成装置の中間転写体等に用いる無端ベルトの製造に用いる場合は、33,000以下であることが好ましく、30,000以下であることがより好ましい。
ポリアミック酸は、一般に、テトラカルボン酸二無水物もしくはその誘導体と、ジアミン化合物とを、等モルで重合させて合成することで、両末端がアミノ基であるポリアミック酸(DA)と、両末端がカルボキシ基であるポリアミック酸(DC)と、一方の末端がアミノ基であり他方の末端がカルボキシ基であるポリアミック酸(AC)とが、DA:DC:AC=2:2:1(モル基準)で得られる。
ポリアミック酸の合成に用い得るテトラカルボン酸二無水物、及び、ジアミン化合物は、例えば、次のものを用いればよい。
−テトラカルボン酸二無水物−
テトラカルボン酸二無水物としては、分子構造中にカルボン酸無水物に由来する構造(−CO−O−CO−)を2つ有する化合物であれば、特に制限はなく、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物も使用してもよい。
例えば、下記の一般式(I)で示されるものが挙げられる。

(一般式(I)中、Rは4価の有機基であり、芳香族、脂肪族、環状脂肪族、芳香族と脂肪族を組み合わせたもの、又はそれらの置換された基である。)
芳香族系のテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等を挙げられる。
脂肪族のテトラカルボン酸二無水物としては、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げられる。
前記テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系のテトラカルボン酸二無水物が好ましく、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物がより好ましい。
これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で使用しても、2種以上組み合わせて使用してもよい。
−ジアミン化合物−
ジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物であれば特に限定されない。
前記ジアミン化合物は、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミン等が挙げられる。
ジアミン化合物としては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、が好ましい。これらのジアミン化合物は単独で使用しても、2種以上組み合わせて使用してもよい。
−テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との組み合わせ−
ポリアミック酸の合成に用いる、好ましいテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との組み合わせは、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族系ジアミンとの組合せが好ましい。
ポリアミック酸を合成(重合)する際の重合系の固形分濃度は、特に規定されるものではないが、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上30質量%以下がより好ましい。
ポリアミック酸を合成する際の重合温度としては、0℃以上80℃以下の範囲が好ましい。
〔溶媒〕
第1実施形態のポリアミック酸組成物は、少なくとも1種の溶媒を含有する。
溶媒は、ポリアミック酸組成物中で酸性カーボンブラックが分散する分散媒ともなる。
かかる溶媒としては、例えば、有機極性溶媒が挙げられ、具体的には、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒;フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;ブチルセロソルブ等のセロソルブ系;及びヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げられる。
中でも、ピロリドン系溶媒が好ましく、N−メチル−2−ピロリドン(以下「NMP」ともいう)がより好ましい。
ポリアミック酸組成物に含まれる溶媒は、1種のみを用いても、2種以上を混合して用いてもよい。また、ポリアミック酸組成物中の溶媒の含有量は、酸性カーボンブラックの分散性の観点から、ポリアミック酸組成物全量に対し70質量%以上80質量%以下であることが好ましく、76質量%以上78質量%以下であることがより好ましい。
なお、上記有機極性溶媒は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを反応させ、ポリアミック酸を合成する際に用いる重合溶媒としても用いられ、前記有機極性溶媒を単独又は混合して使用するのが好ましい。重合溶媒としては、更に、キシレン、トルエンの如き芳香族炭化水素を使用してもよい。ポリアミック酸の重合溶媒は、ポリアミック酸を溶解するものであれば特に限定されない。
〔酸性カーボンブラック〕
第1実施形態のポリアミック酸組成物は、10質量%以上80質量%以下のpH7未満のカーボンブラック(酸性カーボンブラック)を含有する。
酸性カーボンブラックは、カーボンブラックを酸化処理することで、表面にカルボキシル基、キノン基、ラクトン基、水酸基等を付与して製造される。この酸化処理は、高温(例えば、300℃以上800℃以下)雰囲気下で、空気と接触され、反応させる空気酸化法、常温(例えば25℃、以下同様)下で窒素酸化物やオゾンと反応させる方法、及び高温(例えば300℃以上800℃以下)下での空気酸化後、低い温度(例えば20℃以上200℃以下)下でオゾン酸化する方法などにより行われる。
具体的には、酸性カーボンブラックは、例えばコンタクト法により製造される。このコンタクト法としては、チャネル法、ガスブラック法等が挙げられる。また、酸性カーボンブラックは、ガス又はオイルを原料とするファーネスブラック法により製造され得る。更に必要に応じて、これらの処理を施した後、硝酸などで液相酸化処理を行ってもよい。
なお、酸性カーボンブラックは、コンタクト法で製造され得るが、密閉式のファーネス法によって製造するのが一般的である。ファーネス法では通常高pH・低揮発分のカーボンブラックしか製造されないが、これに上述の液相酸処理を施してpHを調整してもよい。このためファーネス法による製造により得られるカーボンブラックで、後工程処理によりpHが7未満となるように調節されたカーボンブラックも、適用し得る。
酸性カーボンブラックのpH値は7未満であるが、pH4.4以下が好ましく、pH4.0以下がより好ましい。
ここで、酸性カーボンブラックのpHは、カーボンブラックの水性懸濁液を調整し、ガラス電極で測定することで求められる。また、酸性カーボンブラックのpHは、酸化処理工程での処理温度、処理時間等の条件によって、調整される。
酸性カーボンブラックは、例えば、揮発成分の含有量が1質量%以上25質量%以下であることが好ましく、2質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、3.5%以上15%以下であることが更に好ましい。
酸性カーボンブラックとして、具体的には、例えば、デグサ社製の「プリンテックス150T」(pH4.5、揮発分10.0%)、同「スペシャルブラック350」(pH3.5、揮発分2.2%)、同「スペシャルブラック100」(pH3.3、揮発分2.2%)、同「スペシャルブラック250」(pH3.1、揮発分2.0%)、同「スペシャルブラック5」(pH3.0、揮発分15.0%)、同「スペシャルブラック4」(pH3.0、揮発分14.0%)、同「スペシャルブラック4A」(pH3.0、揮発分14.0%)、同「スペシャルブラック550」(pH2.8、揮発分2.5%)、同「スペシャルブラック6」(pH2.5、揮発分18.0%)、同「カラーブラックFW200」(pH2.5、揮発分20.0%)、同「カラーブラックFW2」(pH2.5、揮発分16.5%)、同「カラーブラックFW2V」(pH2.5、揮発分16.5%)、キャボット社製「MONARCH1000」(pH2.5、揮発分9.5%)、キャボット社製「MONARCH1300」(pH2.5、揮発分9.5%)、キャボット社製「MONARCH1400」(pH2.5、揮発分9.0%)、同「MOGUL−L」(pH2.5、揮発分5.0%)、同「REGAL400R」(pH4.0、揮発分3.5%)等が挙げられる。
酸性カーボンブラックのポリアミック酸組成物中の含有量は、組成物の全固形分に対して10質量%以上80質量%以下であるが、さらに、20質量%以上40質量%以下であることが好ましく、22質量%以上29質量%以下であることがより好ましい。
〔分散剤等〕
酸性カーボンブラックは、既述のように、ポリアミック酸組成物中に存在する超過分としてのポリアミック酸の末端アミノ基と水素結合を結ぶことにより分散性が高まると考えられるが、分散性をより高めるために、ポリアミック酸組成物は、更に分散剤を含有していてもよい。
酸性カーボンブラックを分散するために使用し得る分散剤としては、低分子量でも高分子量でもよく、カチオン系、アニオン系、非イオン系から選ばれるいずれの種類の分散剤を使用してもよい。分散剤として非イオン系高分子を使用することが好ましい。
−非イオン系高分子−
非イオン系高分子としては、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、ポリ(N,N’−ジエチルアクリルアジド)、ポリ(N−ビニルホルムアミド)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリ(N−ビニルフタルアミド)、ポリ(N−ビニルコハク酸アミド)、ポリ(N−ビニル尿素)、ポリ(N−ビニルピペリドン)、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)、ポリ(N−ビニルオキサゾリン)等が挙げられる。
これらの非イオン系高分子は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。中でも、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)が好ましい。
ポリアミック酸組成物中の非イオン系高分子の配合量は、ポリアミック酸100質量部に対して、0.2質量部以上3質量部以下であることが好ましい。
〔第1実施形態のポリアミック酸組成物の調製方法〕
第1実施形態のポリアミック酸組成物は、次のようにして調製すればよい。
まず、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物とを、溶媒中で重合反応させて、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸溶液を得る。かかるポリアミック酸溶液は、メタノールなどの貧溶媒中に添加して、一旦、ポリアミック酸を貧溶媒中に析出させ、再沈殿させて精製する。析出したポリアミック酸をろ別した後、γ−ブチロラクトン等のポリアミック酸が溶解する溶媒に再溶解させ、ポリアミック酸溶液を得る。
次に、得られたポリアミック酸溶液に、酸性カーボンブラックを、例えば、ポリアミック酸樹脂の乾燥質量100質量部に対して合計20質量部以上50質量部以下の範囲で添加すればよい。
さらに、酸性カーボンブラックの分散性を高めるため、ミキサーや攪拌子による攪拌、平行ロール、超音波分散などの物理的手法を用いて、ポリアミック酸溶液中の成分を混合してもよい。さらに酸性カーボンブラックの分散性を高める手法として、ポリアミック酸溶液中への分散剤の導入などの化学的手法が例示されるが、これらに限定されるものではない。
<第2実施形態のポリアミック酸>
第2実施形態のポリアミック酸組成物は、全末端がアミノ基であるポリアミック酸であって、カルボン酸モノ無水物で封止されていない末端アミノ基及びカルボン酸モノ無水物で封止されている末端アミノ基の総モル量(X)に対するカルボン酸モノ無水物で封止されている末端アミノ基の総モル量(Z)の割合Z/X(以下、カルボン酸モノ無水物で封止されていない末端アミノ基の総モル量(X)に対する末端アミノ基がカルボン酸モノ無水物で封止された末端の総モル量(Z)の割合Z/Xとも称する。)が、0≦Z/X<0.4であるポリアミック酸と、全固形分に対して10質量%以上80質量%以下のpH7未満のカーボンブラックと、溶媒と、を含んで構成される。
ただし、第2実施形態における割合Z/Xは、0.05≦Z/X≦0.1が適用される。
ポリアミック酸組成物を上記構成とすることで、ポリアミック酸組成物中の酸性カーボンブラックの分散性を高められる。この理由は次の理由によるものと考えられる。
全末端がアミノ基であるポリアミック酸におけるカルボン酸モノ無水物で封止されていない末端アミノ基の総モル量(X)に対する末端アミノ基がカルボン酸モノ無水物で封止された末端の総モル量(Z)の割合Z/Xが、0≦Z/X<0.4である場合、すなわち、ポリアミック酸組成物中に含まれる全末端がアミノ基であるポリアミック酸において、その末端アミノ基の全てがカルボン酸モノ無水物で封止されていない場合(0=Y/X)および、末端アミノ基の一部がカルボン酸モノ無水物で封止されていても、カルボン酸モノ無水物で封止されていない末端アミノ基の割合が多い場合(0<Z/X<0.4)には、ポリアミック酸はアミノ基過多となると考えられる。
よって、第2実施形態のポリアミック酸組成物でも、第1実施形態のポリアミック酸組成物と同様の理由から、10質量%以上80質量%以下の酸性カーボンブラックと、溶媒とを含む系において、カルボン酸モノ無水物で封止されていない末端アミノ基の総モル量(X)に対する末端アミノ基がカルボン酸モノ無水物で封止された末端の総モル量(Z)の割合Z/Xが、0≦Z/X<0.4とすることで、ポリアミック酸組成物中の酸性カーボンブラックの分散性を高めると考えられる。
但し、第2実施形態のポリアミック酸組成物でも、アミノ基過多となりすぎると、ポリアミック酸組成物が経時で粘度が上昇し易くなることから、ポリアミック酸において、カルボン酸モノ無水物で封止されていない末端アミノ基の総モル量(X)に対する末端アミノ基がカルボン酸モノ無水物で封止された末端の総モル量(Z)の割合Z/Xを、0.1≦Z/X<0.4とすることがよい。これにより、第2実施形態のポリアミック酸組成物のポットライフが長くなる。
ここで、ポリアミック酸は、一例としての下記スキームのように、ポリアミック酸の合成、必要に応じて、カルボン酸モノ無水物による封止を行ったポリアミック酸である。
まず、例えば、テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体とジアミン化合物とを、ジアミン化合物過剰で反応させ、全アミン末端ポリアミック酸を合成する。次に、カルボン酸モノ無水物と末端アミン基と反応させ、末端アミン基を封止する。このようにして、末端アミン基のカルボン酸モノ無水物封止末端とする。
そして、ポリアミック酸組成物中の全ポリアミック酸におけるカルボン酸モノ無水物で封止されていない末端アミノ基の総モル量(X)は、両末端がアミノ基であるポリアミック酸(DA)の両末端に存在する末端アミノ基のうち、カルボン酸モノ無水物のカルボキシル基と反応していない末端アミノ基の合計モル量をいう。
末端アミノ基の総モル量(X)は、ポリアミック酸組成物を、酸(例えば、塩酸等)を用いて中和滴定することにより測定される。
一方、ポリアミック酸組成物中の全ポリアミック酸における末端アミノ基がカルボン酸モノ無水物で封止された末端の総モル量(Z)は、両末端がアミノ基であるポリアミック酸(DA)の両末端に存在する末端アミノ基のうち、カルボン酸モノ無水物のカルボキシル基と反応した末端の合計モル量をいう。
ポリアミック酸組成物中の全ポリアミック酸における末端の総モル量(Z)は、酸(例えば、塩酸等)を用いて中和滴定して測定する。
つまり、全末端がアミノ基であるポリアミック酸において、カルボン酸モノ無水物で封止されていない末端アミノ基の総モル量(X)に対する末端アミノ基がカルボン酸モノ無水物で封止された末端の総モル量(Z)の割合Z/Xは、上記測定方法から得られるXとZとの比である。
Z/Xは、酸性カーボンブラックの分散性の観点から、0≦Z/X<0.4であることが好ましく、0≦Z/X≦0.3であることがより好ましい。一方、Z/Xは、ポリアミック酸組成物のポットライフの観点から、0.1≦Z/X<0.4が好ましく、0.2≦Z/X<0.4がより好ましい。
ここで、両末端がアミノ基であるポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物もしくはその誘導体と、ジアミン化合物とを、ジアミン化合物過剰で重合させて合成することで得られる。
また、両末端がアミノ基であるポリアミック酸において、末端アミノ基を封止するカルボン酸モノ無水物は、カルボキシル基を2つ有し、この2つのカルボキシ基が分子内脱水縮合反応を起こした環状のカルボン酸無水物である。
カルボン酸モノ無水物として具体的には、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、2,3−ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、3,4−ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルエーテル無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルエーテル酸無水物、2,3−ビフェニルジカルボン酸無水物、3,4−ビフェニルジカルボン酸無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルスルホン無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルスルホン無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルスルフィド無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルスルフィド無水物、1,2−ナフタレンジカルボン酸無水物、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,2−アントラセンジカルボン酸無水物、2,3−アントラセンジカルボン酸無水物、1,9−アントラセンジカルボン酸無水物等が挙げられ、これらの中でも、無水フタル酸、無水マレイン酸がよい。
なお、カルボン酸無水物は、上記Z/Xが上記範囲となる範囲で使用量(封止量)が調整される。
以上説明した第2実施形態のポリアミック酸は、上記以外は第1実施形態のポリアミック酸組成物と同様であるため、説明を省略する。
<無端ベルト>
本実施形態に係る無端ベルトは、第1又は第2実施形態(以下、本実施形態)に係るポリアミック酸組成物を用いて形成された第1層と、第1層上に、第1層と隣接して備えられ、ポリイミドを含む第2層と、を有する少なくとも2層構成の積層体である。無端ベルトは、隣接する第1層と第2層との他に、更に、1層以上の層が積層された3層以上の積層体であってもよい。
少なくとも2層以上の多層構成の無端ベルトにおいて、下層(第1層)を、本実施形態に係るポリアミック酸組成物を用いて形成された層とし、ポリイミドを含む上層(第2層)が下層に隣接する構成とすることで、無端ベルトの裏面抵抗のムラを抑制する。
無端ベルトは、第1層を無端ベルトの内層側、第2層を無端ベルトの外層側とする構成が好ましく、第1層の表面のうち、第2層側とは反対の面を、無端ベルトの裏面というものとする。
無端ベルトの構成を上記構成とすることで無端ベルトの裏面抵抗のムラを抑制する理由は定かではないが、次の理由によるものと考えられる。
従来から積層無端ベルトの製造に用いられてきたポリアミック酸組成物は、ポリアミック酸組成物中のカーボンブラックの分散性が低く、かかる従来のポリアミック酸組成物を用いて2層以上の積層体を作ると、カーボンブラックが凝集することがあった。そのため、下層内の表面側(隣接層側)に、カーボンブラックの凝集層が形成され、カーボンブラックの凝集層の上に、ポリアミック酸のポリマー層が形成された構成になる傾向にあった。このとき、下層と上層との界面には、ポリアミック酸のポリマー層が存在し、カーボンブラックがポリマー層により覆われてしまうため、電気抵抗にムラが生じていたと考えられる。
これに対し、本実施形態に係るポリアミック酸組成物は、末端アミノ基を有するポリアミック酸の末端アミノ基と酸性カーボンブラックとが水素結合を結び、酸性カーボンブラックの分散性に優れている。従って、本実施形態に係るポリアミック酸組成物を用いて形成された第1層(下層)は、酸性カーボンブラックの凝集層とポリアミック酸のポリマー層とに分離せずに、酸性カーボンブラックが第1層中の一部に偏在することなく、分散していると考えられる。
よって、第1層中に酸性カーボンブラックが分散していることにより、層内での電気抵抗が偏らず、無端ベルトの裏面抵抗ムラが抑制されるものと考えられる。
特に、無端ベルトの周方向の抵抗ムラが抑制される。
以下、無端ベルトの構成を説明する。
無端ベルトは、本実施形態に係るポリアミック酸組成物を用いて形成された第1層と、第1層上に、第1層と隣接して備えられ、ポリイミドを含む第2層と、を有する構成である。
〔第1層〕
第1層は、本実施形態に係るポリアミック酸組成物を用いて形成されていればよく、例えば、芯体に本実施形態に係るポリアミック酸組成物を塗布等して塗布膜とし、加熱および乾燥してポリアミック酸をポリイミド化した層であればよい。従って、無端ベルトの第1層は、本実施形態に係るポリアミック酸組成物由来のポリイミドを含有して構成される。本実施形態に係るポリアミック酸組成物は、酸性カーボンブラックが、組成物中に偏在せず分散しているため、第1層中に含まれる酸性カーボンブラックは、第1層内に偏在せず、分散している。
無端ベルトの第1層の形成に用いる本実施形態に係るポリアミック酸組成物の好ましい態様は、既述のとおりである。
〔第2層〕
無端ベルトが有する第2層は、第1層に隣接しており、少なくともポリイミドを含んでいればよく、更に、カーボンブラックなどの導電性粒子を含有していてもよい。
−ポリイミド−
第2層が含み得るポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物もしくはその誘導体と、ジアミン化合物との反応から得られるものが用いられる。
テトラカルボン酸二無水物もしくはその誘導体と、ジアミン化合物としては、本実施形態に係るポリアミック酸組成物の調製に用い得る化合物として挙げた化合物が挙げられる。テトラカルボン酸二無水物およびジアミン化合物の好ましい例、及び好ましい組み合わせは、本実施形態に係るポリアミック酸組成物に用いるものと同様であるが、第2層に含まれるポリイミドを得るために用い得るポリアミック酸の末端基種は特に制限されない。
第2層は、さらに、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルエステル、ポリアリレート、ポリエステル、補強材を添加してなるポリエステル(いわゆる繊維強化樹脂)などの他のポリマーを含んでいてもよい。
−導電性粒子−
導電性粒子としては、導電性又は半導電性の粉末が使用でき、ベルトとして特定の電気抵抗を安定して得ることができれば、導電性に制限はないが、例えば、ケッチエンブラック、アセチレンブラック、酸性カーボンブラック等のカーボンブラック、アルミニウムやニッケル等の金属、酸化錫等の酸化金属化合物、チタン酸カリウム等が例示される。そしてこれらを単独、あるいは併用して使用してもよいが価格面で有利なカーボンブラックが望ましい。
ここで、「導電性」とは、体積抵抗率が10 Ωcm未満であることを意味する。また、「半導電性」とは、体積抵抗率が10以上1013 Ωcm以下であることを意味する。他も同様である。
本実施形態においては、表面抵抗は、無端ベルトの裏面、すなわち、第1層側が、第2層側よりも小さく、体積抵抗は、第1層側が、第2層側よりも大きいことが好ましい。
かかる観点から、第2層中の導電性粒子の含有量は、第1層に含まれる導電性粒子の含有量よりも小さいことが好ましく、具体的には、第1層中の導電性粒子の含有量の99質量%以下であることが好ましい。
次に、本実施形態に係る無端ベルトの特性について説明する。
−表面抵抗率−
本実施形態に係る無端ベルトは、裏面(内周面)の表面抵抗率が、常用対数値で9(LogΩ/□)以上13(LogΩ/□)以下であることが望ましく、10(LogΩ/□)以上12(LogΩ/□)以下であることがより望ましい。無端ベルトを画像形成装置の中間転写ベルトとして用いるとき、電圧印加の10sec後の表面抵抗率の常用対数値が13(LogΩ/□)を超えると、一次転写時に一次転写部材と中間転写ベルトとの間で放電が発生し画質欠陥が生じる場合がある。一方、電圧印加の10sec後の表面抵抗率の常用対数値が9(LogΩ/□)未満であると、中間転写ベルトに一次転写されたトナー像の保持力が不足し画質の粒状性や像乱れが発生する場合がある。
ここで、表面抵抗率の測定は、次の通り行う。
円形電極(例えば、三菱油化(株)製ハイレスターIPの「UR-100プローブ」)を用い、JIS K6911に従って測定した。表面抵抗率の測定方法を、図を用いて説明する。図1は、円形電極の一例を示す概略平面図(A)及び概略断面図(B)である。図1に示す円形電極は、第一電圧印加電極Aと板状絶縁体Bとを備える。第一電圧印加電極Aは、円柱状電極部Cと、該円柱状電極部Cの外径よりも大きい内径を有し、且つ円柱状電極部Cを一定の間隔で囲む円筒状のリング状電極部Dとを備える。第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部C及びリング状電極部Dと板状絶縁体Bとの間にベルトTを挟持し、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部Cとリング状電極部Dとの間に電圧V(V)を印加したときに流れる電流I(A)を測定し、下記式により、ベルトTの転写面の表面抵抗率ρs(Ω/□)を算出する。ここで、下記式中、d(mm)は円柱状電極部Cの外径を示し、D(mm)はリング状電極部Dの内径を示す。
式:ρs=π×(D+d)/(D−d)×(V/I)
なお、表面抵抗率は、円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ:円柱状電極部Cの外径Φ16mm、リング状電極部Dの内径Φ30mm、外径Φ40mm)を用い、22℃/55%RH環境下、電圧500V、10秒印加後の電流値を求め算出する。
−体積抵抗率−
本実施形態に係る無端ベルトは、その全体の体積抵抗率は、常用対数値で8(LogΩcm)以上13(LogΩcm)以下であることが望ましい。無端ベルトを中間転写ベルトとして用いるとき、前記体積抵抗率の常用対数値が8(LogΩcm)未満であると、像保持体から中間転写ベルトに転写された未定着トナー像の電荷を保持する静電的な力が働きにくくなるため、トナー同士の静電的反発力や画像エッジのフリンジ電界の力によって、画像の周囲にトナーが飛散してしまい、ノイズの大きい画像が形成される場合がある。一方、前記体積抵抗率の常用対数値が13(LogΩcm)を超えると、電荷の保持力が大きいために、1次転写での転写電界で転写ベルト表面が帯電するために除電機構が必要となる場合がある。尚、前記体積抵抗率の常用対数値は、後述する導電剤の種類、及び導電剤の添加量により制御される。
ここで、体積抵抗率の測定は、次の通り行う。
円形電極(例えば、三菱油化(株)製ハイレスターIPのUR−100プローブ)を用い、JIS K6911に従って測定する。前記体積抵抗率の測定方法を、図を用いて説明する。測定は表面抵抗率と同一の装置で測定する。但し、図1に示す円形電極において、表面抵抗率測定時の板状絶縁体Bに代えて第二電圧印加電極B’を備えた構成とする。そして、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部C及びリング状電極部Dと第二電圧印加電極B’との間にベルトTを挟持し、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部Cと第二電圧印加電極Bとの間に電圧V(V)を印加した時に流れる電流I(A)を測定し、下記式により、ベルトTの体積抵抗率ρv(Ωcm)を算出する。ここで、下記式中、tは、ベルトTの厚さを示す。
式 ρv=19.6×(V/I)×t
なお、体積抵抗率は、円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ:円柱状電極部Cの外径Φ16mm、リング状電極部Dの内径Φ30mm、外径Φ40mm)を用い、22℃/55%RH環境下、電圧500V、10秒印加後の電流値を求め算出する。
また、上記式に示される19.6は、抵抗率に変換するための電極係数であり、円柱状電極部の外径d(mm)、試料の厚さt(cm)より、πd/4tとして算出される。また、ベルトTの厚さは、サンコー電子社製渦電流式膜厚計CTR−1500Eを使用し測定する。
本実施形態に係る無端ベルトは、既述の構成とすることで、無端ベルトの裏面の抵抗ムラが抑制される。
ここで、無端ベルトの裏面の抵抗ムラとは、直径366mm、幅369mmの無端ベルトの裏面の表面抵抗率を、ベルト1本につき、幅方向に3点、周方向に8点の計24点測定したときの、最大値と最小値との差が、0.5を超える場合をいう。すなわち、本実施形態に係る無端ベルトは、既述の構成とすることで、無端ベルトの裏面の表面抵抗率の最大−最小差を、0.2以下とする。
〔第1層中の酸性カーボンブラック分散性の評価方法〕
無端ベルトの第1層中の酸性カーボンブラックの分散性は、無端ベルトの第1層と第2層との界面を、集束イオンビーム(FIB)により切断した後、断面切片を透過型電子顕微鏡で直接粒子を観察する方法や、ミクロトームにより断面切片を作製し、原子間力顕微鏡(AFM)の高さ情報から粒子の有無を観察する方法がある。
例えば、無端ベルトの第1層と第2層との界面が、カーボンブラック(CB)を含有しない層(非CB層という)であるか、カーボンブラックが凝集した層(CB凝集層という)であるかは、ミクロトームにより断面切片を作製し、コンダクティングモードのAFM観察を行なう方法で比較される。
かかる方法における具体的な条件は、次のとおりである。
・AFM装置:デジタル・インスツルメンツ社製D3000及びNanoscopeIII
・測定モード:コンタクトモード
・カンチレバー:Auコート導電性カンチレバー
・バネ定数:0.2N/m
・印加電圧:−10V
上記条件の下、試料を10μm四方で観察したときにおける各領域での電流値の最大値をその領域での導電性と定義する。試料は、包埋後ミクロトームにより断面試料を作製し、試料深さ方向と平行に銀ペースト電極を貼り合わせカンチレバーの対向電極とする。この試料を10μm四方で観察し導電性と高さ情報を得る。
ただし、上記条件および測定方法は、一例であって、同条件に限定するものでない。試料により、測定範囲、印加電圧、バネ定数などを変更してもよい。
以上の方法で得られた電流像および電流値の最大値により導電性を比較する。
<無端ベルトの製造方法>
本実施形態に係る無端ベルトの製造方法は、第1層が、本実施形態にかかるポリアミック酸組成物を用いて形成されてあり、第2層が、第1層と隣接して形成され、ポリイミドを含む構成となる2層以上の積層無端ベルトを形成し得る方法であれば特に制限されない。
例えば、次の〔1〕〜〔3〕の製造方法が挙げられる。
〔1(1a)〕ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を含む本実施形態にかかるポリアミック酸組成物を芯体に塗布し、乾燥して第1層を形成すると共に、第1層上にポリイミド前駆体を含む溶液を塗布し、乾燥して第2層を形成する方法。
〔2〕本実施形態にかかるポリアミック酸組成物を芯体に塗布し、乾燥して形成した第1層用の無端ベルトと、同様の方法で別途作成したポリイミドを含む第2層となる無端ベルトとを、圧着して積層体とする方法。
〔3〕予め、芯体にポリアミド前駆体を含む溶液を塗布し、乾燥して第2層とすべき無端ベルト作製しておき、かかる無端ベルトの内周面に、本実施形態にかかるポリアミック酸組成物を芯体に塗布し、乾燥して第1層を形成する方法。
中でも、上記〔1a〕の方法が、生産効率がよい。
さらに、次の方法〔1b〕により無端ベルトを製造することが、ベルトの裏面抵抗ムラの抑制および第1層と第2層との接着性の観点から好ましい。
すなわち、本実施形態に係る無端ベルトの製造方法は、
〔1b〕芯体の表面に、本実施形態に係るポリアミック酸組成物を含む第1のポリイミド前駆体溶液を塗布して第1の塗布膜を形成する第1の塗布工程と、
前記第1の塗布膜中の残留溶媒量が10質量%以上50質量%以下となるように溶媒を除去する第1の乾燥工程と、
残留溶媒量が10質量%以上50質量%以下である前記第1の塗布膜に、第2のポリイミド前駆体溶液を塗布して、前記第1の塗布膜に隣接する第2の塗布膜を形成する第2の塗布工程と、
前記第2の塗布膜の溶媒を除去する第2の乾燥工程と、
前記第1の塗布膜および前記第2の塗布膜を加熱し、前記第1の塗布膜中のポリイミド前駆体と、前記第2の塗布膜中のポリイミド前駆体とをイミド化して、第1層及び第2層が隣接した無端ベルトを形成する加熱工程と、
前記芯体から前記無端ベルトを抜き取る工程と、
を有して構成される。
本実施形態においては、無端ベルトの製造過程において、ポリイミド前駆体溶液を塗布して形成された膜であって、ポリイミド前駆体のポリイミド転化が完了していないものを「塗布膜」といい、当該「塗布膜」を乾燥し、加熱することにより、ポリイミド前駆体のポリイミドへの転化が完了した状態のものを「層」と称する。
無端ベルトの製造方法を上記〔1b〕に示す方法とすることで、無端ベルトの裏面抵抗のムラが抑制されると共に、さらに、第1層と第2層との接着性に優れた無端ベルトを製造し得る。かかる理由は定かではないが、次の理由によるものと推測される。
〔1b〕に示す方法では、第1の塗布工程の後に、第1の乾燥工程にて、第1の塗布膜中の残留溶媒量が10質量%以上50質量%以下となるように溶媒を乾燥し、除去した後、少なくとも第1の塗布膜中に溶媒が少なくとも10質量%以上残留している状態で、第2のポリイミド前駆体溶液を塗布して、第1の塗布膜に隣接する第2の塗布膜を形成する。
第2の塗布膜を形成する際に、第1の塗布膜中の残留溶媒量が10質量%未満となるほどに乾燥していると、過乾燥のためベルト表面欠陥が生じてしまう。無端ベルトの第1層となる第1の塗布膜中の導電性粒子が凝集してしまうと、無端ベルトの裏面抵抗率やムラが生じ易くなる。第1の塗布膜中の導電性粒子が凝集するのは、第2の塗布膜を形成する際に、第2のポリイミド前駆体溶液中の溶媒が、乾燥した第1の塗布膜中に浸透し、第2層の乾燥時にポロアミック酸が第2層方向に移動するため、導電剤が密な領域が形成されると考えられる。第1の塗布膜中の残留溶媒量が50質量%以上となると、第2膜の塗布に影響が生じ、膜厚ムラとなりベルト表面性の悪化や体積抵抗率ムラが生じる。また、第1層と第2層の接着性が悪い。
これに対し、本実施形態に係る無端ベルトの製造方法(〔1b〕に示す方法)においては、少なくとも第1の層を形成する第1の塗布膜が、本実施形態にかかるポリアミック酸組成物を含む溶液により形成される。本実施形態にかかるポリアミック酸組成物を用いれば、ポリアミック酸と酸性カーボンブラックとが、水素結合により結ばれているため、仮に、第2のポリイミド前駆体溶液の溶媒により第1の塗布膜の表面が再溶解しても、第1の塗布膜の表面が、ポリマー層とカーボンブラックの凝集層とに分離しにくいと考えられる。
さらに、塗布膜中の残留溶媒量が10質量%未満となるほどに乾燥している第1の塗布膜に、第2の塗布膜形成用のポリイミド前駆体溶液を塗布すると、第1層の過乾燥のため、過乾燥のためベルト表面欠陥が生じてしまう。
本実施形態に係る無端ベルトは、第1層を形成する第1の塗布膜が、本実施形態にかかるポリアミック酸組成物を含む溶液により形成される。本実施形態にかかるポリアミック酸組成物を用いれば、ポリアミック酸と酸性カーボンブラックとが、水素結合により結ばれているため、仮に、第2のポリイミド前駆体溶液の溶媒により第1の塗布膜の表面が再溶解しても、第1の塗布膜の表面が、ポリマー層とカーボンブラックの凝集層とに分離しにくいと考えられる。
従って、第1層のカーボンブラックの凝集を抑制して第1層の抵抗ムラを抑制する無端ベルト全体としての裏面抵抗ムラを抑制し得ると考えられる。
さらに、第2の塗布膜を形成するときに、第1の塗布膜中の残留溶媒量が10質量%以上50質量%以下であることで、第1の塗布膜中の残留溶媒量が10質量%未満である場合に比べ、層間の接着が強固であり、ベルト表面欠陥のないベルトが得られる。これは層間において樹脂の分子鎖の絡み合いが形成されるためと考えられる。
以下、本実施形態に係る無端ベルトの製造方法(〔1b〕に示す方法)について、より詳細に説明する。
−第1の塗布工程−
まず、芯体の表面に、本実施形態に係るポリアミック酸組成物を含む第1のポリイミド前駆体溶液を塗布して第1の塗布膜を形成する(第1の塗布工程)。
本実施形態に係るポリアミック酸組成物の詳細、および好ましい態様については既述のとおりである。本実施形態に係るポリアミック酸組成物を用いて第1のポリイミド前駆体溶液とするには、本実施形態に係るポリアミック酸組成物をそのまま用いるか、本実施形態に係るポリアミック酸組成物を、本実施形態に係るポリアミック酸組成物に含まれる溶媒(例えば、NMP等)でさらに希釈すればよい。
カーボンブラックを分散させたポリイミド前駆体溶液は高粘度の溶液であるため、作製時に混入した気泡は自然に抜けることはなく、塗布により気泡に起因するベルトの突起、へこみ、穴等の欠陥が発生する。このため、脱泡することが望ましい。脱泡はできる限り塗布直前に行うことが望ましい。
芯体は、内部が空洞でない円柱状の芯体、または、内部が空洞になっている円筒状の芯体が用いられる。
第1のポリイミド前駆体溶液の芯体上への塗布方法は、特に制限はなく、例えば、第1のポリイミド前駆体溶液に、円柱状芯体の外周面に浸漬する方法や、円柱状の芯体の外周面に回転塗布する方法などを利用して、無端状に第1の塗布膜を形成する。円筒状の芯体の内周面に回転塗布する方法も使用できるが、後述する方法でベルトを形成すると、円柱状の芯体の外周面に塗布して塗膜を作成する場合とは、ベルトの内周と外周が逆になるので、外周面に浸漬する方法や円柱状の芯体の外周面に塗布して塗膜を形成する方法が好ましい。なお、ベルトの形成に際しては、芯体に、型の離型処理を施すことがよい。
第1のポリイミド前駆体溶液の芯体上への塗布方法の具体的な一例として、回転塗布方法について説明する。回転塗布法は、図2に示すように、例えば、無端ベルトの長さに対応した外径を有する円筒状芯体11を用意する。円筒状芯体11の外周面に沿った位置に、第1のポリイミド前駆体溶液16を、円筒状芯体11の外周面上に吐出するためのノズル15を配し、ノズル15は配管を通じてポリイミド前駆体溶液容器14に接続されており、さらにポリイミド前駆体溶液容器14は配管を通じて加圧装置17に接続している。また、ノズル15の下方には、吐出された第1のポリイミド前駆体溶液16を円筒状芯体11の外周面上において均すためのブレード18が配置されている。
円筒状芯体11を円筒状芯体の回転方向(矢印D)の向きに回転し、ノズル15から第1のポリイミド前駆体溶液16(内層用塗布液)を円筒状芯体11の外周面上に吐出し、ブレード18で円筒状芯体11の外周面上に均す。ノズル15とブレード18は、ノズル及びブレード移動方向(矢印E)の方向に一定速度で移動し、塗布液16が円筒状芯体11の外周面上に一定の厚みで塗布される。なお、第1のポリイミド前駆体溶液16は加圧装置17によりノズル15から一定量吐出するように調節されている。これにより、円筒状芯体11の外周面上に第1のポリイミド前駆体溶液16の塗布膜(第1の塗布膜)が形成される。
−第1の乾燥工程−
次に、円筒状芯体11に塗布された第1の塗布膜を乾燥する(第1の乾燥工程)。本乾燥では、第1の塗布膜の残留溶媒量が50質量%以下、特に40質量%以下になるように行うことがよく、望ましくは36質量%以下である。第1の塗布膜の残留溶媒量が50質量%を越えると、第2のポリイミド前駆体溶液を第1の塗布膜上に塗布しにくくなる。一方、残留溶媒量が低い程、後述する導電性粒子の偏在(密度の上昇)が生じ易くなる。この第1の塗布膜の残留溶媒量、つまり第1の塗布膜の乾燥状態を制御することで、後述する導電性粒子の偏在(密集)度合いが制御される。
ここで、残留溶媒量とは、第1のポリイミド前駆体溶液中に存在する溶媒質量の固形分量(樹脂材料の固形分の質量+酸性カーボンブラックの質量)に対する割合を示している。この残留溶媒量の求め方は、以下の通りである。
例えば、固形分量として樹脂材料の固形分の質量(樹脂材料の乾燥質量)と酸性カーボンブラックの質量が判明している場合には、乾燥前の塗布膜の全質量を正確に秤量し、塗布膜の全質量に含まれる溶媒の質量を算出する。その後、上記乾燥後の塗布膜の全質量を正確に秤量し、減少分を消失した溶媒の質量として、乾燥前に算出した溶媒の質量から消失した溶媒の質量を差し引きすることで、残留溶媒の質量を求める。これより、残留溶媒の質量/(酸性カーボンブラックの質量+樹脂固形の分質量+残留溶媒の質量)を計算し、残留溶媒量が求められる。
また、熱抽出ガスクロマトグラム質量分析装置を用いて、残留溶媒量を求めてもよい。この測定の一例を以下に示す。例えば、上記乾燥後の塗布膜から2mg以上3mg以下程度に切り取り出して試料を得て、この試料を秤量後、熱抽出装置(PY2020D:フロンティアラボ社製)に入れて400℃に加熱する。揮発成分を320℃のインターフェイスを経てガスクロマトグラム質量分析装置(GCMS−QP2010:島津製作所製)に注入し、定量する。すなわち、ヘリウムガスをキャリアガスとして、試料から揮発した量の1/51(スプリット比50:1)を線速度153.8cm/秒(カラム温度50℃でのキャリアガス流量1.50ml/分、圧力50kPa)で、 内径0.25μ mφ×30mのカラム(フロンティアラボ社製キャピラリーカラムUA−5)に注入する。次いで、50℃で3分間保持した後、カラムを毎分8℃ の割合で400℃まで昇温させ、同温度で10分間保持して、揮発成分を脱着させた。さらに、インターフェイス温度320℃で揮発成分を質量分析装置に注入し、溶媒に相当するピークの面積を求める。定量は、既知量の同一溶媒で予め検量線を作成して行った。これより求めた溶媒質量を上記乾燥後試料質量で除算して残留溶媒量が求められる。但し、上記測定例は、一例であって、使用する樹脂の分解や変化する温度、又は、溶媒の沸点により測定条件は変更して行なうことがよい。
−第2の塗布工程−
次に、導電性粒子を含有する第2のポリイミド前駆体溶液を、既述の残留溶媒量で乾燥された第1の塗布膜上に塗布して、第2のポリイミド前駆体溶液の塗布膜(第2の塗布膜)を形成する(第2の塗布工程)。
なお、第2のポリイミド前駆体溶液の円筒状芯体11に形成・乾燥された第1の塗布膜上への塗布方法は、内層用塗布液と同様である。
第2のポリイミド前駆体溶液は、ポリイミド前駆体を含有し、溶媒により溶解して溶液状とした組成物である。
ここで、ポリイミド前駆体溶液として、カーボンブラック(導電性粒子)を分散させたポリアミド酸溶液を調製する例を例示する。まず、精製したカーボンブラックを用意し、有機極性溶媒に分散させ、カーボンブラック分散液を調整する。分散方法は、予備攪拌を行った後に分散機、ホモジナイザーにより分散する方法が望ましい。カーボンブラックの精製方法と同様に微細メディアの混入がカーボンブラックの精製効果を低下させてしまうため、メディアを使用しないメディアフリーの分散方法が望ましく、特に高粘度溶液のバラツキを抑制して分散するジェットミルが望ましい。
得られたカーボンブラック分散液中にジアミン成分と酸二無水物成分を溶解・重合させてカーボンブラックを分散させたポリアミド酸溶液を作製する。
この際、モノマー濃度(溶媒中におけるジアミン成分と酸無水物成分の濃度)は種々の条件により設定されるが、5質量%以上30質量%以下が望ましい。また、反応温度は80℃以下に設定することが望ましく、特に望ましくは5℃以上50℃以下であり、反応時間は5時間以上10時間以下である。
なお、第1の塗布膜と第2の塗布膜との接着性の観点からは、第2のポリイミド前駆体溶液は、第1のポリイミド前駆体溶液と同じ成分組成とすることが好ましい。
−第2の乾燥工程−
次に、第1の塗布膜表面に塗布された第2の塗布膜を乾燥させる(第2の乾燥工程)。本乾燥では、例えば、残留溶媒量が40質量%以下となるように行うことがよい。この残留溶媒量は、使用する樹脂材料種、得られる無端ベルトの使用用途、得られる無端ベルトの強度や維持性等などから決定される。
なお、第2の塗布膜が第1の塗布膜よりも厚みが厚い場合、第2の塗布膜に加えるエネルギーの総和は第1の塗布膜に加えるエネルギーの総和よりも大きいことがよい。具体的には、例えば、同じ乾燥温度であれば、第2の塗布膜の乾燥時間は第1の塗布膜よりも長くすることがよい。これにより、第1の塗布膜の溶媒は、第2の塗布膜を通じて乾燥するので、第1の塗布膜及び第2の塗布膜同時に乾燥が行われる。
−加熱工程−
第1の塗布膜、及び第2の塗布膜の乾燥後、第1の塗布膜および第2の塗布膜を加熱し、焼成を行う(加熱工程)ことで、無端ベルトが製造される。この焼成、即ちポリアミド酸をイミドに転化するには200℃以上の高温処理が一般的である。200℃以下では十分なイミド転化が得られない。一方、高温処理はイミド転化に有利であり、安定した特性が得られるが、熱エネルギーを使用するため、熱効率が悪くコストが高くなるため、転写ベルトの特性と生産性を考慮して熱処理温度を決める必要がある。
第1の塗布膜、及び第2の塗布膜を焼成することで、ポリイミド前駆体はポリイミドに転化し、それぞれ、ポリイミドを含む第1層、及びポリイミドを含む第2層となる。
得られた無端ベルトを円筒状芯体11から抜き取ることで、無端ベルトが得られる。
上記工程を経て、本実施形態に係る無端ベルトが製造される。
<画像形成装置>
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、像保持体の表面の潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、像保持体の表面に形成された前記トナー像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成された前記トナー像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写された前記トナー像を被転写媒体に二次転写する二次転写手段と、記録媒体に転写された前記トナー像を定着する定着手段と、を備え、中間転写体が、本実施形態に係る無端ベルトであるものとして構成される。
本実施形態に係る画像形成装置の詳細を、図3を用いて説明する。図3は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置100は、いわゆるタンデム方式であり、中間転写ベルトとして上記本実施形態に係る無端ベルトを適用した形態である。
本実施形態に係る画像形成装置100は、図3に示すように、電子写真感光体からなる4つの像保持体101a〜101dの周囲に、その回転方向に沿って順次、帯電装置102a〜102d、露光装置114a〜114d、現像装置103a〜103d、1次転写装置(1次転写ロール)105a〜105d、像保持体クリーニング装置104a〜104dが配置されている。尚、転写後の像保持体101a〜101dの表面に残留している残留電位を除去するために除電器を備えていてもよい。
また、中間転写ベルト107が、テンションロール106a〜106d、駆動ロール111及びバックアップロール108に張架され、転写ユニットを構成している。これらのテンションロール106a〜106d、駆動ロール111及びバックアップロール108により、中間転写ベルト107は、各像保持体101a〜101dの表面に接触しながら各像保持体101a〜101dと1次転写ロール105a〜105dとの間を矢印Aの方向に移動することができる。1次転写ロール105a〜105dが中間転写ベルト107を介して像保持体101a〜101dに接触する部位が1次転写部となり、像保持体101a〜101dと1次転写ロール105a〜105dとの接触部には1次転写電圧が印加される。
また、2次転写装置として、中間転写ベルト107を介してバックアップロール108と2次転写ロール109が対向配置されている。紙等の被転写媒体115が中間転写ベルト107の表面に接触しながら中間転写ベルト107と2次転写ロール109との間を矢印Bの方向に移動し、その後、定着装置110を通過する。2次転写ロール109が中間転写ベルト107を介してバックアップロール108に接触する部位が2次転写部となり、2次転写ロール109とバックアップロール108との接触部には2次転写電圧が印加される。更に、転写後の中間転写ベルト107と接触するように、中間転写ベルトクリーニング装置112及び113が配置されている。
この構成のフルカラー画像形成装置100では、像保持体101aが矢印Cの方向に回転するとともに、その表面が帯電装置102aによって一様に帯電された後、レーザー光等の露光装置114aにより第1色目の静電潜像が形成される。形成された静電潜像はその色に対応するトナーを収容した現像装置103aにより、トナーで現像(顕像化)されてトナー像が形成される。なお、現像装置103a〜103dには、各色の静電潜像に対応するトナー(例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)がそれぞれ収容されている。
像保持体101a上に形成されたトナー像は、1次転写部を通過する際に、1次転写ロール105aによって中間転写ベルト107上に静電的に転写(1次転写)される。以降、第1色目のトナー像を保持した中間転写ベルト107上に、1次転写ロール105b〜105dによって、第2色目、第3色目、第4色目のトナー像が順次重ね合わせられるよう1次転写され、最終的にフルカラーの多重トナー像が得られる。
中間転写ベルト107上に形成された多重トナー像は、2次転写部を通過する際に、被転写媒体115に静電的に一括転写される。トナー像が転写された被転写媒体115は、定着装置110に搬送され、加熱及び/又は加圧により定着処理された後、機外に排出される。
1次転写後の像保持体101a〜101dは、像保持体クリーニング装置104a〜104dにより残留トナーが除去される。一方、2次転写後の中間転写ベルト107は、中間転写ベルトクリーニング装置112及び113により残留トナーが除去され、次の画像形成プロセスに備える。
〔像保持体〕
像保持体101a〜101dとしては、公知の電子写真感光体を広く適用することができる。電子写真感光体としては、感光層が無機材料で構成される無機感光体や、感光層が有機材料で構成される有機感光体などを用いることができる。有機感光体においては、露光により電荷を発生する電荷発生層と、電荷を輸送する電荷輸送層を積層する機能分離型の有機感光体や、電荷を発生する機能と電荷を輸送する機能を同一の層が果たす単層型有機感光体が好適に用いられる。また、無機感光体においては、感光層がアモルファスシリコンにより構成されているものが、好適に用いられる。
また、像保持体の形状には特に限定はなく、例えば、円筒ドラム状、シート状或いはプレート状等、公知の形状が採用される。
〔帯電装置〕
帯電装置102a〜102dとしては、特に制限はなく、例えば、導電性(ここで、「導電性」とは例えば体積抵抗率が10Ω・cm未満を意味する。本明細書においては、特記がない限り同様である。)又は半導電性(ここで、「半導電性」とは例えば体積抵抗率が10〜1013Ωcmを意味する。本明細書においては、特記がない限り同様である。)のローラ、ブラシ、フィルム、又はゴムブレード等を用いた接触型帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器など、公知の帯電器を広く適用することができる。これらの中でも、オゾンの発生が少なく、効率的な帯電を行うことができる接触型帯電器が好ましい。
帯電装置102a〜102dは、像保持体101a〜101dに対し、通常、直流電流を印加するが、交流電流を更に重畳させて印加してもよい。
〔露光装置〕
露光装置114a〜114dとしては、特に制限はなく、例えば、像保持体101a〜101dの表面に、半導体レーザー光、LED光、又は液晶シャッタ光等の光源、或いはこれらの光源からポリゴンミラーを介して所望の像様に露光できる光学系機器など、公知の露光装置を広く適用することができる。
〔現像装置〕
現像装置103a〜103dとしては、目的に応じて選択することができる。例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用い接触或いは非接触させて現像する公知の現像器などが挙げられる。
本実施形態の画像形成装置100に用いるトナー(現像剤)は特に限定されず、例えば、結着樹脂と着色剤を含んで構成される。
〔一次転写ロール〕
1次転写ロール105a〜105dは単層或いは多層のいずれでもよい。例えば、単層構造の場合は、発泡又は無発泡のシリコーンゴム、ウレタンゴム、又はエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等にカーボンブラック等の導電性粒子が適量配合されたロールで構成される。その抵抗値は10Ω以上1010Ω以下の範囲にあることが好ましい。1次転写ロール105a〜105dには1.0kV以上5.5kV以下の電圧が印加され、像保持体101a〜101dとの間に発生する電界により、トナーを転写する。
〔像保持体クリーニング装置〕
像保持体クリーニング装置104a〜104dは、1次転写工程後の像保持体101a〜101dの表面に付着する残存トナーを除去するためのものであり、クリーニングブレードの他、ブラシクリーニング、又はロールクリーニング等を用いることができる。これらの中でもクリーニングブレードを用いることが好ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、又はシリコーンゴム等が挙げられる。
〔2次転写ロール〕
2次転写ロール109の層構造は、特に限定されるものではないが、例えば、三層構造の場合、コア層と中間層とその表面を被覆するコーティング層により構成される。コア層は導電性粒子を分散したシリコーンゴム、ウレタンゴム、又はEPDM等の発泡体で、中間層はこれらの無発泡体で構成される。コーティング層の材料としては、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、パーフルオロアルコキシ樹脂などが挙げられる。2次転写ロール109の体積抵抗率は10Ωcm以下であることが好ましい。また、中間層を除いた2層構造とすることも可能である。
〔バックアップロール〕
バックアップロール108は、2次転写ロール109の対向電極を形成する。バックアップロール108の層構造は、単層或いは多層のいずれでもよい。例えば単層構造の場合は、シリコーンゴム、ウレタンゴム、又はEPDM等にカーボンブラック等の導電性粒子が適量配合されたロールで構成される。二層構造の場合は、上記のようなゴム材料で構成される弾性層の外周面を高抵抗層で被覆したロールから構成される。バックアップロール108の表面抵抗率は10Ω/□以上1011Ω/□以下の範囲にあることが好ましい。
バックアップロール108と2次転写ロール109とのシャフトの間には、通常1kV以上6kV以下の電圧が印加される。また、バックアップロール108のシャフトへの電圧印加に代えて、バックアップロール108に接触させた電気良導性の電極部材と2次転写ロール109との間に電圧を印加することもできる。上記電極部材としては、金属ロール、導電性ゴムロール、導電性ブラシ、金属プレート、又は導電性樹脂プレート等が挙げられる。
〔定着装置〕
定着装置110としては、例えば、熱ローラ定着器や加圧ローラ定着器、又はフラッシュ定着器など公知の定着器を広く適用することができる。
〔中間転写ベルトクリーニング装置〕
中間転写ベルトクリーニング装置112及び113としては、クリーニングブレードの他、ブラシクリーニング、ロールクリーニング等を用いることができ、これらの中でもクリーニングブレードを用いることが好ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、又はシリコーンゴム等が挙げられる。
上述した実施形態においては、像保持体が複数個で構成される所謂タンデム方式の画像形成装置を説明したが、これに限られず、例えば、像保持体が1個で、色数分だけ中間転写ベルトが回転・作像プロセスを行う所謂複数サイクル方式(例えば4サイクル方式等)の画像形成装置等、周知の装置が適用され得る。
以下、実施例を用いて本実施形態を説明するが、本実施形態はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
[[実施例A]]
以下に示す実施例Aにおいて、実施例A2、実施例A4及び実施例A6は、本発明に対する参考例として示すものである。
<1.ポリアミック酸組成物の調製と評価>
〔ポリアミック酸の合成〕
分子鎖の両末端がアミノ基であるポリアミック酸として、ポリアミック酸DA−A1と、分子鎖の両末端がカルボキシ基であるポリアミック酸として、ポリアミック酸DC−A1とを合成した。
−ポリアミック酸DA−A1の合成−
NMP800g中に、ジアミン化合物として、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(以下「ODA」と略す)83.48g(416.9ミリモル)を加え、常温(25℃)で攪拌させながら溶解した。次いで、テトラカルボン酸二無水物として、3,3’,4,4’ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下「BPDA」と略す)116.52g(396.0ミリモル)を徐々に添加した。テトラカルボン酸二無水物の添加・溶解後、反応液の温度を60℃まで加熱して、その後反応液温度を保持したまま20時間重合反応を行い、ポリアミック酸DA−A1及びNMPを含む反応液を得た。得られた反応液を、#800のステンレスメッシュを用いてろ過して室温(25℃)まで冷却をして25℃における溶液粘度2.0Pa・s(東機産業社製、E型回転粘度計、TV−20Hを用い、標準ローター(1°34“×R24)で、測定温度:25℃、回転数:0.5rpm(100Pa・s以上)、1rpm(100Pa・s未満)の条件にて測定、以下の合成例も同様)のポリアミック酸溶液DA−A1を得た。
得られたポリアミック酸DA−A1の組成は、BPDA/ODA=95/100(モル/モル)となった。
−ポリアミック酸DC−A1の合成−
ODAを79.57g(397.4ミリモル)、BPDAを120.43g(409.3ミリモル)とした以外は、合成例1と同様にして、ポリアミック酸DC−A1及びNMPを含む溶液粘度6.0Pa・sのポリアミック酸溶液DC−A1を得た。得られたポリアミック酸DC−A1の組成は、BPDA/ODA=103/100(モル/モル)となり、下記構造を有するものであった。

〔ポリアミック酸組成物A1の調製〕
・ポリアミック酸DA−A1を含むポリアミック酸溶液DA−A1 700g
・ポリアミック酸DC−A1を含むポリアミック酸溶液DC−A1 300g
・酸性カーボンブラック(乾燥状態;導電剤)
〔SPECIAL BLACK4:Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%、(以下「SB−4」と略する)〕 55.6g
上記組成のポリアミック酸溶液DA−A1およびポリアミック酸溶液DC−A1を混合し、酸性カーボンブラックSB−4を、ポールミルにて30℃にて12時間分散処理することによりポリアミック酸溶液の混合液に分散した。その後、SB−4が分散した混合液を、#400ステンレスメッシュでろ過して、下記組成のポリアミック酸組成物A1を得た。
ポリアミック酸組成物A1の組成は、:ポリアミック酸固形分(ポリアミック酸DA−A1とDC−A1の合計)/NMP/SB−4=185.4/814.6/55.6(質量比)であった。
ポリアミック酸組成物A1中の全ポリアミック酸における末端アミノ基の総モル量(X)に対する末端カルボキシ基の総モル量(Y)の割合Y/Xは0.3であった。
また、ポリアミック酸組成物A1をイミド転化したときの組成、つまりポリアミック酸組成物A1を用いて作製した酸性カーボンブラックが分散したポリイミドフィルムの組成は、ポリイミド/SB−4=185.4/55.6(質量比)である。よってカーボンブラック/ポリイミドは30.0/100(質量比)である。
〔ポリアミック酸組成物A2の調製〕
・ポリアミック酸DA−A1を含むポリアミック酸溶液DA−A1 1000g
・酸性カーボンブラック(乾燥状態;導電剤)〔SB−4〕 55.6g
上記組成のポリアミック酸溶液DA−A1に、酸性カーボンブラックSB−4を添加し、ポールミルにて30℃にて12時間分散処理した。その後、SB−4が分散したポリアミック酸溶液DA−A1を、#400ステンレスメッシュでろ過して、下記組成のポリアミック酸組成物A2を得た。
ポリアミック酸組成物A2の組成は、:ポリアミック酸(ポリアミック酸DA−A1)/NMP/SB−4=185.4/814.6/55.6(質量比)であった。
ポリアミック酸組成物A2中の全ポリアミック酸における末端アミノ基の総モル量(X)に対する末端カルボキシ基の総モル量(Y)の割合Y/Xは0であった。
また、ポリアミック酸組成物A2をイミド転化したときの組成、つまりポリアミック酸組成物A2を用いて作製した酸性カーボンブラックが分散したポリイミドフィルムの組成は、ポリイミド/SB−4=185.4/55.6(質量比)である。よってカーボンブラック/ポリイミドは30.0/100(質量比)である。
〔ポリアミック酸組成物A3の調製〕
・ポリアミック酸DA−A1を含むポリアミック酸溶液DA−A1 800g
・ポリアミック酸DC−A1を含むポリアミック酸溶液DC−A1 200g
・酸性カーボンブラック(乾燥状態;導電剤)
〔SPECIAL BLACK4:Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%、(以下「SB−4」と略する)〕 55.6g
上記組成のポリアミック酸溶液DA−A1およびポリアミック酸溶液DC−A1を混合し、酸性カーボンブラックSB−4を、ポールミルにて30℃にて12時間分散処理することによりポリアミック酸溶液の混合液に分散した。その後、SB−4が分散した混合液を、#400ステンレスメッシュでろ過して、下記組成のポリアミック酸組成物A3を得た。
ポリアミック酸組成物A3の組成は、:ポリアミック酸固形分(ポリアミック酸DA−A1とDC−A1の合計)/NMP/SB−4=185.4/814.6/55.6(質量比)であった。
ポリアミック酸組成物A3中の全ポリアミック酸における末端アミノ基の総モル量(X)に対する末端カルボキシ基の総モル量(Y)の割合Y/Xは0.2であった。
また、ポリアミック酸組成物A3をイミド転化したときの組成、つまりポリアミック酸組成物A3を用いて作製した酸性カーボンブラックが分散したポリイミドフィルムの組成は、ポリイミド/SB−4=185.4/55.6(質量比)である。よってカーボンブラック/ポリイミドは30.0/100(質量比)である。
〔ポリアミック酸組成物A4の調製〕
・ポリアミック酸DA−A1を含むポリアミック酸溶液DA−A1 950g
・ポリアミック酸DC−A1を含むポリアミック酸溶液DC−A1 50g
・酸性カーボンブラック(乾燥状態;導電剤)
〔SPECIAL BLACK4:Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%、(以下「SB−4」と略する)〕 55.6g
上記組成のポリアミック酸溶液DA−A1およびポリアミック酸溶液DC−A1を混合し、酸性カーボンブラックSB−4を、ポールミルにて30℃にて12時間分散処理することによりポリアミック酸溶液の混合液に分散した。その後、SB−4が分散した混合液を、#400ステンレスメッシュでろ過して、下記組成のポリアミック酸組成物A4を得た。
ポリアミック酸組成物A4の組成は、:ポリアミック酸固形分(ポリアミック酸DA−A1とDC−A1の合計)/NMP/SB−4=185.4/814.6/55.6(質量比)であった。
ポリアミック酸組成物A4中の全ポリアミック酸における末端アミノ基の総モル量(X)に対する末端カルボキシ基の総モル量(Y)の割合Y/Xは0.05であった。
また、ポリアミック酸組成物A4をイミド転化したときの組成、つまりポリアミック酸組成物A4を用いて作製した酸性カーボンブラックが分散したポリイミドフィルムの組成は、ポリイミド/SB−4=185.4/55.6(質量比)である。よってカーボンブラック/ポリイミドは30.0/100(質量比)である。
〔ポリアミック酸組成物A101の調製〕
・ポリアミック酸DA−A1を含むポリアミック酸溶液DA−A1 400g
・ポリアミック酸DC−A1を含むポリアミック酸溶液DC−A1 600g
・酸性カーボンブラック(乾燥状態;導電剤)〔SB−4〕 55.6g
上記組成のポリアミック酸溶液DA−A1およびポリアミック酸溶液DC−A1を混合し、酸性カーボンブラックSB−4を、ポールミルにて30℃にて12時間分散処理することによりポリアミック酸溶液の混合液に分散した。その後、SB−4が分散した混合液を、#400ステンレスメッシュでろ過して、下記組成のポリアミック酸組成物A101を得た。
ポリアミック酸組成物A101の組成は、:ポリアミック酸(ポリアミック酸DA−A1とDC−A1の合計)/NMP/SB−4=185.4/614.6/55.6(質量比)であった。
ポリアミック酸組成物101中の全ポリアミック酸における末端アミノ基の総モル量(X)に対する末端カルボキシ基の総モル量(Y)の割合Y/Xは0.6であった。
また、ポリアミック酸組成物A101をイミド転化したときの組成、つまりポリアミック酸組成物A101を用いて作製した酸性カーボンブラックが分散したポリイミドフィルムの組成は、ポリイミド/SB−4=185.4/55.6(質量比)である。よってカーボンブラック/ポリイミドは30.0/100(質量比)である。
〔ポリアミック酸組成物A102の調製〕
・ポリアミック酸DA−A1を含むポリアミック酸溶液DA−A1 600g
・ポリアミック酸DC−A1を含むポリアミック酸溶液DC−A1 400g
・酸性カーボンブラック(乾燥状態;導電剤)〔SB−4〕 55.6g
上記組成のポリアミック酸溶液DA−A1およびポリアミック酸溶液DC−A1を混合し、酸性カーボンブラックSB−4を、ポールミルにて30℃にて12時間分散処理することによりポリアミック酸溶液の混合液に分散した。その後、SB−4が分散した混合液を、#400ステンレスメッシュでろ過して、下記組成のポリアミック酸組成物A102を得た。
ポリアミック酸組成物A102の組成は、:ポリアミック酸(ポリアミック酸DA−A1とDC−A1の合計)/NMP/SB−4=185.4/814.6/55.6(質量比)であった。
ポリアミック酸組成物A102中の全ポリアミック酸における末端アミノ基の総モル量(X)に対する末端カルボキシ基の総モル量(Y)の割合Y/Xは0.4であった。
また、ポリアミック酸組成物A102をイミド転化したときの組成、つまりポリアミック酸組成物A102を用いて作製した酸性カーボンブラックが分散したポリイミドフィルムの組成は、ポリイミド/SB−4=185.4/55.6(質量比)である。よってカーボンブラック/ポリイミドは30.0/100(質量比)である。
〔ポリアミック酸組成物A103の調製〕
・ポリアミック酸DC−A1を含むポリアミック酸溶液DC−A1 1000g
・酸性カーボンブラック(乾燥状態;導電剤)〔SB−4〕 55.6g
上記組成のポリアミック酸溶液DC−A1に、酸性カーボンブラックSB−4を添加し、ポールミルにて30℃にて12時間分散処理した。その後、SB−4が分散した混合液を、#400ステンレスメッシュでろ過して、下記組成のポリアミック酸組成物103を得た。
ポリアミック酸組成物A103の組成は、:ポリアミック酸(ポリアミック酸DC−A1)/NMP/SB−4=185.4/814.6/55.6(質量比)であった。
ポリアミック酸組成物A103中の全ポリアミック酸における末端アミノ基の総モル量(X)に対する末端カルボキシ基の総モル量(Y)の割合Y/Xは∞(X=0)であった。
また、ポリアミック酸組成物A103をイミド転化したときの組成、つまりポリアミック酸組成物A103を用いて作製した酸性カーボンブラックが分散したポリイミドフィルムの組成は、ポリイミド/SB−4=185.4/55.6(質量比)である。よってカーボンブラック/ポリイミドは30.0/100(質量比)である。
〔ポリアミック酸組成物の酸性カーボンブラック分散性評価〕
得られたポリアミック酸組成物A1、A2、A3,A4、A101、A102、及びA103について、粘弾性を測定し、酸性カーボンブラックの分散性を評価した。また、ポットライフも評価した。
(分散性の評価方法)
HAKKE社製のMARSIIを用い、下記条件で、各ポリアミック酸組成物の貯蔵粘弾性率G’を測定した。また、カーボンブラック分散前の各ポリアミック酸溶液の貯蔵粘弾性率G0’を測定した。周波数0.1HzでのG’/G0’を算出し、酸性カーボンブラックの分散性を評価した。G’/G0’が大きいほど、酸性カーボンブラックの分散性が高いことを示す。結果を表1に示す。
−測定条件−
・測定温度:23℃
・周波数範囲:0.1〜100Hz
・せん断応力:1Pa
・プローブ:C35/1 L07 041
(ポットライフの評価方法)
ポットライフは、E型粘度計で各ポリアミック酸組成物の液粘度を24hごとに240hまで測定して評価した。E型粘度計の詳細は以下の通りである。
・E型粘度計:(東機産業社製TV−22型またはTV−25型)、循環恒温槽
・ローター:3°×R14
・ロータ回転数:50rpm
・測定温度:22±0.5℃
ポットライフの評価基準は以下の通りである。
A:0hと240hでの粘度差が3%以内
B:0hと240hでの粘度差が10%以内
C:0hと240hでの粘度差が15%以内
D:0hと240hでの粘度差が15%超える
表1から明らかなように、実施例のポリアミック酸組成物は、比較例のポリアミック酸組成物に比べ、酸性カーボンブラックの分散性に優れた。
<2.無端ベルトの製造と評価>
−ポリイミド前駆体溶液の準備−
1)第1のポリイミド前駆体溶液
「<1.ポリアミック酸組成物の調製と評価>」で得たポリアミック酸組成物A1、ポリアミック酸組成物A2、ポリアミック酸組成物A3、ポリアミック酸組成物A4、ポリアミック酸組成物A101、及び、ポリアミック酸組成物A102を、それぞれ、第1のポリイミド前駆体溶液A1、第1のポリイミド前駆体溶液A2、第1のポリイミド前駆体溶液A101、および第1のポリイミド前駆体溶液A102として用いた。
2)第2のポリイミド前駆体溶液
ポリアミック酸組成物A1の調製において、酸性カーボンブラックであるSB−4の添加量を55.6gから40gに変更したほかは、同様にして、第2のポリイミド前駆体溶液A1となるポリアミック酸組成物を調製した。
第2のポリイミド前駆体溶液A1の組成は、:ポリアミック酸(ポリアミック酸DA−A1とDC−A1の合計)/NMP/SB−4=185.4/614.6/40(質量比)であった。
ポリアミック酸組成物A1中の全ポリアミック酸における末端アミノ基の総モル量(X)に対する末端カルボキシ基の総モル量(Y)の割合Y/Xは0.3であった。
また、ポリアミック酸組成物1をイミド転化したときの組成、つまりポリアミック酸組成物1を用いて作製した酸性カーボンブラックが分散したポリイミドフィルムの組成は、ポリイミド/SB−4=185.4/40(質量比)である。よってカーボンブラック/ポリイミドは22/100(質量比)である。
〔ポリイミド無端ベルトA1の製造〕
外径90mm、長さ450mmのSUS材料製筒型金型を用意し、その外表面にシリコーン系離型剤を塗布・乾燥処理を行った(離型剤処理)。
離型剤処置を施した円筒型金型を周方向に10rpmの速度で回転させながら、円筒型金型端部より第1のポリイミド前駆体溶液1を口径1.0mmディスペンサーより吐出し、金型上に設置した金属ブレードにて一様の圧力で押し付けて塗布を行った。ディスペンサーユニットを円筒型金型の軸方向に100mm/分の速度で移動させることによって円筒型金型上に螺旋状に第1のポリイミド前駆体溶液1を塗布した。第1のポリイミド前駆体溶液1の塗布後、ブレードを解除して円筒状金型を2分間回転し続けレベリングを行った。
その後、金型及び塗布物を乾燥炉中で145℃空気雰囲気下、10rpmで回転させながら30分乾燥処理を行った。
乾燥処理後の第1の塗布膜の残留溶媒量を測定し、残留溶媒量が10質量%以上50質量%以下であることを確認の上、第1のポリイミド前駆体溶液A1を第2のポリイミド前駆体溶液A1に変更して、第1のポリイミド前駆体溶液A1の塗布と同様にして、第2の塗布膜の形成を開始した。
なお、乾燥処理後の第1の塗布膜の残留溶媒量を、結果を表2に示した。
第2のポリイミド前駆体溶液A1の塗布後、ブレードを解除して円筒状金型を2分間回転し続けレベリングを行った。
その後、金型及び塗布物を乾燥炉中で145℃空気雰囲気下、10rpmで回転させながら30分乾燥処理を行った。
乾燥後、塗布物より溶媒が揮発することで、塗布物は自己支持性を有するポリアミック酸樹脂成形品(無端ベルト本体)と変化した。
乾燥処理後次いで、クリーンオーブン中で、300℃、2時間焼成処理を行い、イミド化反応を進行させた。その後、金型を25℃にして、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルトA1を得た。
〔ポリイミド無端ベルトA2〜A4、および、ポリイミド無端ベルトA101〜A104の製造〕
ポリイミド無端ベルトA1の製造において、第1のポリイミド前駆体溶液について、それぞれ、第1のポリイミド前駆体溶液A1を、表2の「塗布工程」「塗布液種」「第1」に示す溶液に変更したほかは、同様にして、ポリイミド無端ベルトA2〜A4、および、ポリイミド無端ベルトA101〜A104を製造した。
〔ポリイミド無端ベルトの評価〕
ポリイミド無端ベルトA1〜A4、および、ポリイミド無端ベルトA101〜A104につき、以下の評価を行った。その結果を表2に示す。
(無端ベルトの裏面抵抗率、体積抵抗率、裏面抵抗ムラの測定)
既述の方法で無端ベルトの裏面抵抗率〔LogΩ/□〕、体積抵抗率〔Ω・cm〕、裏面抵抗ムラ〔LogΩ/□〕を測定し、結果を表2に示した。
(第1層中の酸性カーボンブラックの分散性評価)
原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、無端ベルトの第1層と第2層との界面が、カーボンブラック(CB)を含有しない層(非CB層という)であるか、カーボンブラックが凝集した層(CB凝集層という)であるかを確認し、第1層中の酸性カーボンブラックの分散性を評価した。
−測定条件−
・AFM装置:デジタル・インスツルメンツ社製D3000及びNanoscopeIII
・測定モード:コンタクトモード
・カンチレバー:Auコート導電性カンチレバー
・バネ定数:0.2N/m
・印加電圧:−10V
ポリイミド無端ベルトA1〜A4、および、ポリイミド無端ベルトA101〜A104を、それぞれ、10μm四方切り取り、試料とした。
上記条件の下、試料をAFMにて観察したときにおける各領域での電流値の最大値を測定した。試料は、包埋後、ミクロトームにより切断し、断面切片を作製し、試料深さ方向と平行に銀ペースト電極を貼り合わせ、カンチレバーの対向電極とした。この試料を10μm四方で観察し導電性と高さ情報を得た。
表2に、非CB層のAFM電流量〔A〕、および、CB凝集層のAFM電流量〔A〕を示した。また、AFM電流像から得られた知見を「AFM電流像」欄に示した。
表2から明らかなように、実施例の無端ベルトは、第1層中の酸性カーボンブラックの分散性に優れ、裏面抵抗ムラが小さかった。また、第1層と第2層との接着性にも優れた。
<3.画像形成装置の製造および評価>
図3に示す基本構成を有するフルカラープリンター(DocuPrint C5450:富士ゼロックス社製)を改造した画像形成装置に、「<2.無端ベルトの製造と評価>」で得たポリイミド無端ベルトA1を搭載し、画像形成装置A1とした。
この画質評価機を用い、一般環境(22℃、50%RH)の環境下、A3用紙(C2紙 富士ゼロックス社製)で黒のハーフトーン画像(画像濃度45%)を出力し、出力画像について画像濃度ムラを評価した。評価結果を表3に示す。
画像濃度ムラの評価基準は、以下の通りである。
◎:画像濃度ムラの発生は無く、さらに高画質領域での使用上で問題ない
○:画像濃度ムラの軽微な発生は有るが、実使用上問題ない
△:濃画像度ムラの発生が多数有り、問題が確認される
×:画像濃度ムラの発生が全体に有り、実使用上耐えられない
また、画像形成装置A1の製造において、ポリイミド無端ベルトA1に代えて、ポリイミド無端ベルトA2〜A4、またはポリイミド無端ベルトA101〜A104を搭載した他は同様にして、画像形成装置A2、及び画像形成装置A101〜A104を製造した。得られた画像形成装置A2〜A4、及び画像形成装置A101〜A104について、画像形成装置A1と同様にして、画像濃度ムラの評価を行なった。評価結果を表3に示す。
[[実施例B]]
以下に示す実施例Bにおいて、実施例B1、実施例B2、実施例B2−2、実施例B3、実施例B4、実施例B4−1、実施例B5、実施例B6及び実施例B6−1は、本発明に対する参考例として示すものである。
<1.ポリアミック酸組成物の調製と評価>
〔ポリアミック酸の合成〕
分子鎖の両末端がアミノ基であるポリアミック酸として、ポリアミック酸DA−B1と、分子鎖の両末端アミノ基の全てをカルボン酸モノ無水物で封止したポリアミック酸として、ポリアミック酸DC−B1とを合成した。
−ポリアミック酸DA−B1の合成−
NMP800g中に、ジアミン化合物として、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(以下「ODA」と略す)83.48g(416.9ミリモル)を加え、常温(25℃)で攪拌させながら溶解した。次いで、テトラカルボン酸二無水物として、3,3’,4,4’ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下「BPDA」と略す)116.52g(396.0ミリモル)を徐々に添加した。テトラカルボン酸二無水物の添加・溶解後、反応液の温度を60℃まで加熱して、その後反応液温度を保持したまま20時間重合反応を行い、ポリアミック酸DA−B1及びNMPを含む反応液を得た。得られた反応液を、#800のステンレスメッシュを用いてろ過して室温(25℃)まで冷却をして25℃における溶液粘度2.0Pa・s(東機産業社製、E型回転粘度計、TV−20Hを用い、標準ローター(1°34“×R24)で、測定温度:25℃、回転数:0.5rpm(100Pa・s以上)、1rpm(100Pa・s未満)の条件にて測定、以下の合成例も同様)のポリアミック酸溶液DA−B1を得た。
得られたポリアミック酸DA−B1の組成は、BPDA/ODA=95/100(モル/モル)となった。
−ポリアミック酸DC−B1の合成−
分子鎖の両末端がアミノ基であるポリアミック酸DA−B1の両末端アミノ基をカルボン酸モノ無水物で封止した。
具体的には、特開2010−77300公報の段落0064に記載されたブレンド法に準じて、DA−B1に41.8ミリモルの無水フタル酸を混合して重合した。
このようにして、ポリアミック酸DC−B1を得た。
〔ポリアミック酸組成物B1の調製〕
・ポリアミック酸DA−B1を含むポリアミック酸溶液DA−B1 700g
・ポリアミック酸DC−B1を含むポリアミック酸溶液DC−B1 300g
・酸性カーボンブラック(乾燥状態;導電剤)
〔SPECIAL BLACK4:Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%、(以下「SB−4」と略する)〕 55.6g
上記組成のポリアミック酸溶液DA−B1およびポリアミック酸溶液DC−B1を混合し、酸性カーボンブラックSB−4を、ポールミルにて30℃にて12時間分散処理することによりポリアミック酸溶液の混合液に分散した。その後、SB−4が分散した混合液を、#400ステンレスメッシュでろ過して、下記組成のポリアミック酸組成物B1を得た。
ポリアミック酸組成物B1の組成は、:ポリアミック酸固形分(ポリアミック酸DA−B1とDC−B1の合計)/NMP/SB−4=185.4/814.6/55.6(質量比)であった。
ポリアミック酸組成物B1中の全ポリアミック酸におけるカルボン酸モノ無水物で封止されていない末端アミノ基の総モル量(X)に対する末端アミノ基がカルボン酸モノ無水物で封止された末端の総モル量(Z)の割合Z/Xは0.3であった。
また、ポリアミック酸組成物B1をイミド転化したときの組成、つまりポリアミック酸組成物B1を用いて作製した酸性カーボンブラックが分散したポリイミドフィルムの組成は、ポリイミド/SB−4=185.4/55.6(質量比)である。よってカーボンブラック/ポリイミドは30.0/100(質量比)である。
〔ポリアミック酸組成物B2の調製〕
・ポリアミック酸DA−B1を含むポリアミック酸溶液DA−B1 1000g
・酸性カーボンブラック(乾燥状態;導電剤)〔SB−4〕 55.6g
上記組成のポリアミック酸溶液DA−B1に、酸性カーボンブラックSB−4を添加し、ポールミルにて30℃にて12時間分散処理した。その後、SB−4が分散したポリアミック酸溶液DA−B1を、#400ステンレスメッシュでろ過して、下記組成のポリアミック酸組成物B2を得た。
ポリアミック酸組成物B2の組成は、:ポリアミック酸(ポリアミック酸DA−B1)/NMP/SB−4=185.4/814.6/55.6(質量比)であった。
ポリアミック酸組成物B2中の全ポリアミック酸におけるカルボン酸モノ無水物で封止されていない末端アミノ基の総モル量(X)に対する末端アミノ基がカルボン酸モノ無水物で封止された末端の総モル量(Z)の割合Z/Xは0であった。
また、ポリアミック酸組成物B2をイミド転化したときの組成、つまりポリアミック酸組成物B2を用いて作製した酸性カーボンブラックが分散したポリイミドフィルムの組成は、ポリイミド/SB−4=185.4/55.6(質量比)である。よってカーボンブラック/ポリイミドは30.0/100(質量比)である。
〔ポリアミック酸組成物B3の調製〕
・ポリアミック酸DA−B1を含むポリアミック酸溶液DA−B1 800g
・ポリアミック酸DC−B1を含むポリアミック酸溶液DC−B1 200g
・酸性カーボンブラック(乾燥状態;導電剤)
〔SPECIAL BLACK4:Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%、(以下「SB−4」と略する)〕 55.6g
上記組成のポリアミック酸溶液DA−B1およびポリアミック酸溶液DC−B1を混合し、酸性カーボンブラックSB−4を、ポールミルにて30℃にて12時間分散処理することによりポリアミック酸溶液の混合液に分散した。その後、SB−4が分散した混合液を、#400ステンレスメッシュでろ過して、下記組成のポリアミック酸組成物B3を得た。
ポリアミック酸組成物B3の組成は、:ポリアミック酸固形分(ポリアミック酸DA−B1とDC−B1の合計)/NMP/SB−4=185.4/814.6/55.6(質量比)であった。
ポリアミック酸組成物B3中の全ポリアミック酸におけるカルボン酸モノ無水物で封止されていない末端アミノ基の総モル量(X)に対する末端アミノ基がカルボン酸モノ無水物で封止された末端の総モル量(Z)の割合Z/Xは0.2であった。
また、ポリアミック酸組成物B3をイミド転化したときの組成、つまりポリアミック酸組成物B3を用いて作製した酸性カーボンブラックが分散したポリイミドフィルムの組成は、ポリイミド/SB−4=185.4/55.6(質量比)である。よってカーボンブラック/ポリイミドは30.0/100(質量比)である。
〔ポリアミック酸組成物B4の調製〕
・ポリアミック酸DA−B1を含むポリアミック酸溶液DA−B1 950g
・ポリアミック酸DC−B1を含むポリアミック酸溶液DC−B1 50g
・酸性カーボンブラック(乾燥状態;導電剤)
〔SPECIAL BLACK4:Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%、(以下「SB−4」と略する)〕 55.6g
上記組成のポリアミック酸溶液DA−B1およびポリアミック酸溶液DC−B1を混合し、酸性カーボンブラックSB−4を、ポールミルにて30℃にて12時間分散処理することによりポリアミック酸溶液の混合液に分散した。その後、SB−4が分散した混合液を、#400ステンレスメッシュでろ過して、下記組成のポリアミック酸組成物B4を得た。
ポリアミック酸組成物B4の組成は、:ポリアミック酸固形分(ポリアミック酸DA−B1とDC−B1の合計)/NMP/SB−4=185.4/814.6/55.6(質量比)であった。
ポリアミック酸組成物B4中の全ポリアミック酸におけるカルボン酸モノ無水物で封止されていない末端アミノ基の総モル量(X)に対する末端アミノ基がカルボン酸モノ無水物で封止された末端の総モル量(Z)の割合Z/Xは0.05であった。
また、ポリアミック酸組成物B4をイミド転化したときの組成、つまりポリアミック酸組成物B4を用いて作製した酸性カーボンブラックが分散したポリイミドフィルムの組成は、ポリイミド/SB−4=185.4/55.6(質量比)である。よってカーボンブラック/ポリイミドは30.0/100(質量比)である。
〔ポリアミック酸組成物B101の調製〕
・ポリアミック酸DA−B1を含むポリアミック酸溶液DA−B1 400g
・ポリアミック酸DC−B1を含むポリアミック酸溶液DC−B1 600g
・酸性カーボンブラック(乾燥状態;導電剤)〔SB−4〕 55.6g
上記組成のポリアミック酸溶液DA−B1およびポリアミック酸溶液DC−B1を混合し、酸性カーボンブラックSB−4を、ポールミルにて30℃にて12時間分散処理することによりポリアミック酸溶液の混合液に分散した。その後、SB−4が分散した混合液を、#400ステンレスメッシュでろ過して、下記組成のポリアミック酸組成物B101を得た。
ポリアミック酸組成物B101の組成は、:ポリアミック酸(ポリアミック酸DA−B1とDC−B1の合計)/NMP/SB−4=185.4/614.6/55.6(質量比)であった。
ポリアミック酸組成物101中の全ポリアミック酸におけるカルボン酸モノ無水物で封止されていない末端アミノ基の総モル量(X)に対する末端アミノ基がカルボン酸モノ無水物で封止された末端の総モル量(Z)の割合Z/Xは0.6であった。
また、ポリアミック酸組成物B101をイミド転化したときの組成、つまりポリアミック酸組成物B101を用いて作製した酸性カーボンブラックが分散したポリイミドフィルムの組成は、ポリイミド/SB−4=185.4/55.6(質量比)である。よってカーボンブラック/ポリイミドは30.0/100(質量比)である。
〔ポリアミック酸組成物B102の調製〕
・ポリアミック酸DA−B1を含むポリアミック酸溶液DA−B1 600g
・ポリアミック酸DC−B1を含むポリアミック酸溶液DC−B1 400g
・酸性カーボンブラック(乾燥状態;導電剤)〔SB−4〕 55.6g
上記組成のポリアミック酸溶液DA−B1およびポリアミック酸溶液DC−B1を混合し、酸性カーボンブラックSB−4を、ポールミルにて30℃にて12時間分散処理することによりポリアミック酸溶液の混合液に分散した。その後、SB−4が分散した混合液を、#400ステンレスメッシュでろ過して、下記組成のポリアミック酸組成物B102を得た。
ポリアミック酸組成物B102の組成は、:ポリアミック酸(ポリアミック酸DA−B1とDC−B1の合計)/NMP/SB−4=185.4/814.6/55.6(質量比)であった。
ポリアミック酸組成物B102中の全ポリアミック酸におけるカルボン酸モノ無水物で封止されていない末端アミノ基の総モル量(X)に対する末端アミノ基がカルボン酸モノ無水物で封止された末端の総モル量(Z)の割合Z/Xは0.4であった。
また、ポリアミック酸組成物B102をイミド転化したときの組成、つまりポリアミック酸組成物B102を用いて作製した酸性カーボンブラックが分散したポリイミドフィルムの組成は、ポリイミド/SB−4=185.4/55.6(質量比)である。よってカーボンブラック/ポリイミドは30.0/100(質量比)である。
〔ポリアミック酸組成物B103の調製〕
・ポリアミック酸DC−B1を含むポリアミック酸溶液DC−B1 1000g
・酸性カーボンブラック(乾燥状態;導電剤)〔SB−4〕 55.6g
上記組成のポリアミック酸溶液DC−B1に、酸性カーボンブラックSB−4を添加し、ポールミルにて30℃にて12時間分散処理した。その後、SB−4が分散した混合液を、#400ステンレスメッシュでろ過して、下記組成のポリアミック酸組成物103を得た。
ポリアミック酸組成物B103の組成は、ポリアミック酸(ポリアミック酸DC−B1)/NMP/SB−4=185.4/814.6/55.6(質量比)であった。
ポリアミック酸組成物B103中の全ポリアミック酸におけるカルボン酸モノ無水物で封止されていない末端アミノ基の総モル量(X)に対する末端アミノ基がカルボン酸モノ無水物で封止された末端の総モル量(Z)の割合Z/Xは∞(X=0)であった。
また、ポリアミック酸組成物B103をイミド転化したときの組成、つまりポリアミック酸組成物B103を用いて作製した酸性カーボンブラックが分散したポリイミドフィルムの組成は、ポリイミド/SB−4=185.4/55.6(質量比)である。よってカーボンブラック/ポリイミドは30.0/100(質量比)である。
〔ポリアミック酸組成物の酸性カーボンブラック分散性評価〕
得られたポリアミック酸組成物B1、B2、B3、B4、B101、B102、及びB103について、粘弾性を測定し、酸性カーボンブラックの分散性を評価した。また、ポットライフも評価した。結果を表4に示す。
なお、酸性カーボンブラックの分散性、ポットライフの評価については、実施例Aと同様にして行った。
表4から明らかなように、実施例のポリアミック酸組成物は、比較例のポリアミック酸組成物に比べ、酸性カーボンブラックの分散性に優れた。
<2.無端ベルトの製造と評価>
−ポリイミド前駆体溶液の準備−
1)第1のポリイミド前駆体溶液
「<1.ポリアミック酸組成物の調製と評価>」で得たポリアミック酸組成物B1、ポリアミック酸組成物B2、ポリアミック酸組成物B3、ポリアミック酸組成物B4、ポリアミック酸組成物B101、及び、ポリアミック酸組成物B102を、それぞれ、第1のポリイミド前駆体溶液B1、第1のポリイミド前駆体溶液B2、第1のポリイミド前駆体溶液B101、および第1のポリイミド前駆体溶液B102として用いた。
2)第2のポリイミド前駆体溶液
ポリアミック酸組成物B1の調製において、酸性カーボンブラックであるSB−4の添加量を55.6gから40gに変更したほかは、同様にして、第2のポリイミド前駆体溶液B1となるポリアミック酸組成物B1を調製した。
第2のポリイミド前駆体溶液B1の組成は、:ポリアミック酸(ポリアミック酸DB−B1とDC−B1の合計)/NMP/SB−4=185.4/614.6/40(質量比)であった。
ポリアミック酸組成物B1中の全ポリアミック酸におけるカルボン酸モノ無水物で封止されていない末端アミノ基の総モル量(X)に対する末端アミノ基がカルボン酸モノ無水物で封止された末端の総モル量(Z)の割合Z/Xは0.3であった。
また、ポリアミック酸組成物1をイミド転化したときの組成、つまりポリアミック酸組成物1を用いて作製した酸性カーボンブラックが分散したポリイミドフィルムの組成は、ポリイミド/SB−4=185.4/40(質量比)である。よってカーボンブラック/ポリイミドは22/100(質量比)である。
〔ポリイミド無端ベルトB1〜B4、および、ポリイミド無端ベルトB101〜B104の製造〕
実施例Aのポリイミド無端ベルトA1の製造において、第1のポリイミド前駆体溶液について、それぞれ、第1のポリイミド前駆体溶液A1を、表5の「塗布工程」「塗布液種」「第1」に示す溶液に変更すると共に、第2のポリイミド前駆体溶液A1を第2のポリイミド前駆体溶液B1に変更したほかは、同様にして、ポリイミド無端ベルトB1〜B4、および、ポリイミド無端ベルトB101〜B104を製造した。
〔ポリイミド無端ベルトの評価〕
ポリイミド無端ベルトB1〜B4、および、ポリイミド無端ベルトB101〜B104につき、実施例Aと同様の評価を行った。その結果を表5に示す。
表5から明らかなように、実施例の無端ベルトは、第1層中の酸性カーボンブラックの分散性に優れ、裏面抵抗ムラが小さかった。また、第1層と第2層との接着性にも優れた。
<3.画像形成装置の製造および評価>
図3に示す基本構成を有するフルカラープリンター(DocuPrint C5450:富士ゼロックス社製)を改造した画像形成装置に、「<2.無端ベルトの製造と評価>」で得たポリイミド無端ベルトB1を搭載し、画像形成装置B1とした。
この画質評価機を用い、実施例Aと同様にして評価した。評価結果を表6に示す。
また、画像形成装置B1の製造において、ポリイミド無端ベルトB1に代えて、ポリイミド無端ベルトB2〜B4、またはポリイミド無端ベルトB101〜B104を搭載した他は同様にして、画像形成装置B2、及び画像形成装置B101〜B104を製造した。得られた画像形成装置B2〜B4、及び画像形成装置B101〜B104について、画像形成装置B1と同様にして、画像濃度ムラの評価を行なった。評価結果を表6に示す。
100 画像形成装置
101Y、101M、101C、101BK 感光体ドラム
102 中間転写ベルト
105〜108 現像器
200 画像形成装置
200Y、200M、200C、200Bk 画像形成ユニット
206 転写搬送ベルト

Claims (6)

  1. 全末端がアミノ基であるポリアミック酸であって、カルボン酸モノ無水物で封止されていない末端アミノ基及びカルボン酸モノ無水物で封止されている末端アミノ基の総モル量(X)に対するカルボン酸モノ無水物で封止されている末端アミノ基の総モル量(Z)の割合Z/Xが、0.05≦Z/X≦0.1であるポリアミック酸と、全固形分に対して10質量%以上80質量%以下のpH7未満のカーボンブラックと、溶媒と、を含むポリアミック酸組成物。
  2. カルボン酸二無水物と、ジアミン化合物との重合体であり、かつカルボン酸モノ無水物で末端封止されていないポリアミック酸であって、末端アミノ基及び末端カルボキシ基の総モル量(X)に対する末端カルボキシ基の総モル量(Y)の割合Y/Xが、0.05≦Y/X<0.4であるポリアミック酸と、
    全固形分に対して10質量%以上80質量%以下のpH7未満のカーボンブラックと、
    溶媒と、
    を含むポリアミック酸組成物。
  3. 前記割合Y/Xが、0.1≦Y/X<0.4であるである請求項に記載のポリアミック酸組成物。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載のポリアミック酸組成物を用いて形成された第1層と、第1層上に、第1層と隣接して備えられ、ポリイミドを含む第2層と、を有する無端ベルト。
  5. 芯体の表面に、請求項1〜のいずれか1項に記載のポリアミック酸組成物を含む第1のポリイミド前駆体溶液を塗布して第1の塗布膜を形成する第1の塗布工程と、
    前記第1の塗布膜中の残留溶媒量が10質量%以上50質量%以下となるように溶媒を除去する第1の乾燥工程と、
    残留溶媒量が10質量%以上50質量%以下である前記第1の塗布膜に、第2のポリイミド前駆体溶液を塗布して、前記第1の塗布膜に隣接する第2の塗布膜を形成する第2の塗布工程と、
    前記第2の塗布膜の溶媒を除去する第2の乾燥工程と、
    前記第1の塗布膜および前記第2の塗布膜を加熱し、前記第1の塗布膜中のポリイミド前駆体と、前記第2の塗布膜中のポリイミド前駆体とをイミド化して、第1層及び第2層が隣接した無端ベルトを形成する加熱工程と、
    前記芯体から前記無端ベルトを抜き取る工程と、
    を有する無端ベルトの製造方法。
  6. 像保持体と、
    前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
    前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
    前記像保持体の表面の潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
    前記像保持体の表面に形成された前記トナー像が転写される中間転写体と、
    前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を前記中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、
    前記中間転写体の表面に転写された前記トナー像を被転写媒体に二次転写する二次転写手段と、
    前記記録媒体に転写された前記トナー像を定着する定着手段と、
    を備え、
    前記中間転写体が、請求項に記載の無端ベルトである画像形成装置。
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