JP5528320B2 - アルカリ土類金属シリケート蛍光体の製造方法 - Google Patents
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また小型化が容易なため、携帯機器のバックライトや薄型テレビのバックライトとしての利用が進んでいる。
さらに赤外線や紫外線を発しないことから冷凍食品の展示用照明などにも幅広く使用され始めている。
ここで、アルカリ土類金属シリケート蛍光体は、アルカリ土類金属の組成比を変えることで発光波長が変化する特徴を有しており、そこで所望の発光波長の蛍光体を得るには、アルカリ土類金属の組成比を任意に変えることが可能で、かつ構成成分の組成が均一な前駆体を得ることが可能な湿式法が、その製造方法としては適している。
これらの種々の問題を解決するためSi源として、水溶性珪素(以下、WSSと称することがある)が開発され、実際にシリケート蛍光体の合成が検討され、有用性が確認されている(特許文献4,5参照)。
また、水溶性珪素(WSS)を用いた湿式合成では、クエン酸などの有機酸の使用量が多いため、多量の前駆体を作製するためには、多量の有機酸を熱分解させる必要があり、そのために有機酸の熱分解時に、有機物、ススや異臭を除去する必要を生じ、また均一な熱分解が難しく炭素が残留するという問題が生じていた。
・工程(A):アルカリ土類金属の水溶液、賦活材元素水溶液、及び水溶性珪素を混合した混合液を作製し、その混合液中のシリコン濃度を0.15〜1.0モル/Lとする工程。
・工程(B):工程(A)で作製した混合液を、ゲル体が形成する温度に保持して、継続した攪拌を行うことによりゲル体とする工程。
・工程(C);工程(B)で作製したゲル体を、100℃〜200℃の大気乾燥、または凍結乾燥することによってゲル体乾燥物である前駆体とする工程。
<記>
工程(B):工程(A)で作製した前記混合液をゲル体を形成する温度に保持した継続した攪拌によりゲル体を作製する工程。
工程(C);工程(B)で作製したゲル体を、100℃〜200℃の大気乾燥、または凍結乾燥することによってゲル体乾燥物である前駆体とする工程。
以下に、各工程について詳細に説明する。
1.アルカリ土類金属の水溶液及び賦活材元素水溶液の作製
Ba、Sr、Ca、Mgから選ばれる少なくとも一種以上のアルカリ土類金属、および賦活材元素の水溶液は、先ず硝酸塩、酢酸塩や塩化物を水に溶解させた水溶液を作製する。
なお、酸化物あるいは炭酸塩を硝酸や酢酸塩酸等で溶解させて水溶液を作製してもよい。ここで、塩化物を用いるときは、大気中で800℃に加熱すると酸化物に変わる塩を用いることが必要である。硝酸塩は、爆発的に反応することがあるので加熱焼成時に注意が必要である。また、本発明においては、この水溶液作製にクエン酸、乳酸、リンゴ酸などの有機酸の使用は、後工程の前駆体の熱処理、仮焼時にこれらの有機物成分の分解に伴うススの残留や、異臭の発生などの問題があるため使用を避ける。
水溶性珪素(WSS)は、特許文献4に記載の公知の製造方法でも作製しても良いが、具体的には以下に示す方法で作製することができる。
Si源とする原料にテトラエトキシシラン(TEOS)を使用し、このTEOSとプロピレングリコールを、モル比1:4になるように秤量し、80℃で1時間混合した混合液に、塩酸または乳酸を少量(混合液の0.2%程度で良い)加えて1時間攪拌することにより得られる。また、得られた水溶性珪素に、更に水を加えて所望の濃度(例えば、1モル/Lなど)に調整することができる。
3.ゲル体の作製
作製するアルカリ土類金属シリケート蛍光体の組成となるように、これらのアルカリ土類金属の水溶液、水溶性珪素の水溶液を秤量、混合する。この混合液を所定の温度を維持し、撹拌を継続すると次第にゲル化し、アルカリ土類金属と、賦活材元素が均一に含有したゲル体を得ることができる。
まず、水溶性珪素(WSS:Si(OROH)4、Rは2価のアルキル基)にアルカリ土類金属の水溶液を加えることで、液が塩基性になり加水分解して、
Si(OH)n(OROH)4−nとなる。
さらに、OH基脱水縮合反応(下記(2)式)や、脱アルコール縮合反応(下記(3)式)の進行により、Si−O−Siのネットワークを形成してゲル体になると考えられる。
ゲル化に要する時間は、アルカリ土類金属元素の種類や水溶液の水分量によって変化するが、以下に示すゲル化条件を逸脱しない範囲で実施することができる。
ゲル化温度は、10〜99℃が好ましく、20〜80℃がより好ましい。
10℃未満ではゲル化時間が長くなるため好ましくなく、また100℃以上では水が沸騰し均一なゲル化が難しいため好ましくない。
即ち、ゲル体から水分が流出すると、組成比が変動したり、ゲル内での組成分布が不均一になったりするため、その後の工程を経て得られる蛍光体は、組成が均一でないため高輝度の発光が得られなくなる。
そこで、ゲル体に含まれる水分量を減らすために、高濃度の水溶液を用い、溶解度が低い溶液を使用した場合には、ゲル体ができる前に沈殿物が析出してしまうことがある。この沈殿物の発生は、その後の工程を経て得られる蛍光体の組成が均一でなくなるために高輝度の発光が得られなくなる。
従って、アルカリ土類金属、賦活材、水溶性珪素を全て添加した後のWSS濃度(シリコン濃度)は0.15モル/L以上、1.0モル/L以下であることが必要で、さらに0.2モル/L以上、0.85モル/L以下がより好ましい。
なお、添加後のWSS中のシリコン濃度を0.85モル以上にする場合は、WSS作製時に生成する30〜40wt%含まれているエタノールを除去し、WSS中のシリコン濃度を1.85モル/L以上にする必要がある。その場合は、エタノールを揮発除去することでWSS中のシリコン濃度は2から3モル/Lまで高めることが可能である。ただし、エタノール除去過程で急に加熱すると固化する場合があるので注意する。
4.ゲル体の乾燥
次に、得られたゲル体を乾燥させてゲル体乾燥物の前駆体とする。
乾燥時に、ゲル体が多量の水を含んでいると、ゲル体からアルカリ土類金属の水溶液が分離しないようにしなければならない。また乾燥中に水分がゲル体の内部を移動して高濃度溶液部を形成し沈殿物が発生すると、その後の工程を経て得られる蛍光体は組成が均一でなくなるため高輝度の発光が得られなくなる。そのため乾燥時にはゲル体内での水分移動が生じないようす乾燥することが望ましい。具体的には、ゲル体の乾燥は100℃から200℃の大気乾燥や凍結乾燥法により乾燥することができる。
凍結乾燥法は、ゲル体を凍結し、昇華により乾燥するため、水分が多いゲルでも水溶液の流出を防止してゲル体を乾燥することが可能なので、より好ましい。
5.前駆体の熱分解、仮焼、還元焼成
得られた前駆体には水溶性珪素(WSS)やアルカリ土類金属塩由来の有機物が含まれているため、有機物の熱分解を行う。
その熱分解の方法としては、特に制限はなく、箱型の電気炉中で加熱するなど公知の方法で行うことができる。熱分解温度は、含有される有機物が分解する600℃から1200℃が好ましい。処理時間は1時間から20時間が好ましく、4時間から12時間が特に好ましい。
仮焼処理の方法は、特に制限はなく、箱型の電気炉中で加熱するなど公知の方法で行うことができる。仮焼温度は炭酸塩が分解するため800℃以上とするとよい。ただし、仮焼粉の焼結や坩堝材料の選定が難しくなるので仮焼温度1500℃以下が好ましい。
還元焼成の方法としては、特に制限はなく、雰囲気調整が可能な電気炉中で加熱するなど公知の方法で行うことができる。還元雰囲気は水素やアンモニアなどの気体が好ましいが、固体炭素と接して焼成しても良い。
還元温度は1000℃から1500℃が好ましい。還元時間は2時間から12時間が好ましく、3時間から6時間が特に好ましい。
上記の工程を経ることで、本発明に係るアルカリ土類金属シリケート蛍光体を得ることができる。
6.蛍光輝度の評価
次に、実施例および比較例で作製した蛍光体の蛍光測定を行い、その発光強度を比較した。具体的には、蛍光分光光度計F−4500(日立製)を用いて、励起、発光スペクトルの測定を行い、市販の黄色蛍光体のY3Al5O12:Ce3+(YAG:Ce。化成オプトニクス製P46)のピーク強度を1として比較した。
まず、水溶性珪素(WSS)を次のように作製した。
テトラエトキシシラン:TEOS(関東化学株式会社製)とプロピレングリコール(関東化学株式会社製99%)を22.4ml秤量し、80℃で48時間混合した。更に混合液に塩酸を100μlを加えて室温で1時間攪拌した。この攪拌液に蒸留水を加えて100mlに定溶して1M/Lの水溶性珪素を作製した。
次に、合成に使用する酢酸Sr水溶液、酢酸Ba水溶液、酢酸Eu水溶液を作製した。
酢酸Sr水溶液は、酢酸Sr(関東化学株式会社製99.9%)を水に溶解し、0.5M/Lの水溶液を作製した。
酢酸Ba水溶液は、酢酸Ba(関東化学株式会社製99.9%)を水に溶解し1M/Lの水溶液を作製した。
酢酸Eu水溶液は、酢酸Eu(フルウチ化学株式会社製)を水に溶解し0.1M/Lの水溶液を作製した。
そこで、このゲル体を凍結乾燥機(EYELA FDU−2100、DRC1100)で、−30℃、1時間凍結し、真空ポンプで排気して0.00603気圧以下にする。その後−25℃、3時間保持、−20℃、5時間保持、−15℃、8時間保持、30℃、5時間保持と段階的に乾燥温度を変化させて凍結乾燥させた。均一な状態のゲル体の乾燥物として、前駆体を得ることができた。
得られた仮焼粉に、仮焼粉の質量の20%のBaCl2をフラックスとして加えて混合し、その混合粉をBN容器に入れて管状炉に装入して窒素90%−水素10%の混合ガス流通下で1200℃、4時間の還元焼成を行い、Sr1.46Ba0.50Eu0.04SiO4蛍光体を作製した。
図1から、この蛍光体は250nmから470nmの光で励起可能で、370nmで励起すると発光のピーク波長は560nmで緑色の発行であることが分かる。
その蛍光強度を表1に示す。市販のYAGと比較すると、蛍光輝度は1.7倍の発光強度を示し、高輝度の発光が得られた。
また、XRD測定結果を図2に示す。
図2から分かるように、不純物の相がないSr2SiO4単相であった。
なお、仮焼粉作製の焼成時において、スス、異臭などの有機物に伴う問題は起きなかった。
実施例1で作製した酢酸Sr水溶液、酢酸Ba水溶液、酢酸Eu水溶液をSi:Sr:Ba:Euが1:1.78:0.20:0.02の比率となるように混合した以外は実施例1と同じ方法で蛍光体を合成した。
蛍光強度を表1に示す。市販のYAGと比較すると、蛍光輝度は1.8倍の発光強度を示し、実施例1と同様に高輝度の発光が得られた。
XRD測定すると、実施例1と同様な不純物の相がないSr2SiO4単相であった。
また、仮焼粉作製の焼成時において、スス、異臭などの有機物に伴う問題は起きなかった。
実施例1で作製した酢酸Sr水溶液、酢酸Ba水溶液、酢酸Eu水溶液をSi:Sr:Ba:Euが1:1.96:0:0.04にした、すなわちアルカリ度類金属をBa無しとし、Srのみとした以外は、実施例1と同じ方法で蛍光体を合成した。
XRD測定すると、実施例1と同様な不純物の相がないSr2SiO4単相であった。
また、仮焼粉作製の焼成時において、スス、異臭などの有機物に伴う問題は起きなかった。
実施例1で作製した酢酸Sr水溶液、酢酸Ba水溶液、酢酸Eu水溶液を、Si:Sr:Ba:Euが1:0:1.96:0.04にした、すなわちアルカリ度類金属をSr無しとし、Baのみとした以外は、実施例1と同じ方法で蛍光体を合成した。
XRD測定すると、不純物の相がないBa2SiO4単相であった。
また、仮焼粉作製の焼成時において、スス、異臭などの有機物に伴う問題は起きなかった。
工程1の(C)工程のゲル体の乾燥を凍結乾燥せず、200℃で大気乾燥させた以外は実施例1と同様の方法で蛍光体を合成した。
XRD測定からは、不純物の相がないBa2SiO4単相であった。
また、仮焼粉作製の焼成時において、スス、異臭などの有機物に伴う問題は起きなかった。
XRD測定からは、不純物の相がないSr2SiO4単相であった。
また、仮焼粉作製の焼成時において、スス、異臭などの有機物に伴う問題は起きなかった。
工程1の(B)〜(C)工程のゲルの作製、乾燥工程について、水溶性珪素(WSS)、酢酸Sr水溶液、酢酸Ba水溶液、酢酸Eu水溶液の混合溶液を水熱容器に入れて200℃の大気乾燥機に入れて12時間処理した以外は実施例1と同様の方法で蛍光体を作製した。
水熱処理後、得られたゲルは、ゲル体と水溶液が分離していた。そのゲル体だけを分離し、凍結乾燥して、蛍光体を作製したが蛍光の発光をまったく示さなかった。これは、水熱処理法でゲルを合成したが、水溶液にSrやBaが溶出したため、本実施例のような均一の組成のアルカリ土類シリケート蛍光体が得られなかったと思われる。
また、仮焼粉作製の焼成時において、スス、異臭などの有機物に伴う問題は起きなかった。
アルカリ土類金属、及び賦活剤を酢酸塩でなく、すべて硝酸塩とした、すなわち硝酸Ba水溶液、硝酸Sr水溶液と硝酸Eu水溶液に変えた以外は、比較例1と同様の方法で蛍光体を作製した。水熱処理後、得られたゲルはゲル体と水溶液が分離していた。そのゲル体だけを分離し、凍結乾燥して蛍光体を作製したが蛍光の発光をまったく示さなかった。
水溶液にSrやBaが溶出したため、本発明のような均一な組成のアルカリ土類シリケート蛍光体が得られなかったと思われる。
また、仮焼粉作製の焼成時において、スス、異臭などの有機物に伴う問題は起きなかった。
実施例1と同じ水溶性珪素(WSS)、Sr、BaとEuの混合溶液に前記の全金属元素量の4倍のクエン酸を加えて、80℃でゲル化するまで撹拌してゲル体を得た。得られたゲル体には水の分離は無く、均一なゲル体を得ることができた。その後、このゲル体を140℃で大気乾燥させて前駆体とした。得られた前駆体を700℃で4時間、さらに1000℃に上げて6時間焼成して仮焼粉を作製した。この仮焼粉に仮焼粉の質量の20%のBaCl2をフラックスとして加えて混合し、その混合粉をBN容器に入れて管状炉に装入して窒素90%−水素10%の混合ガス流通下で1200℃、4時間還元焼成してSr1.46Ba0.50Eu0.04SiO4蛍光体を作製した。
実施例1の工程1:工程(A)のアルカリ土類金属の水溶液、賦活材元素水溶液、水溶性珪素(WSS)の混合液中のシリコン濃度を0.10モル/Lと少なくした以外は、実施例1と同様にして処理したが、撹拌を継続しても、水と分離しない均一なゲル体を得ることができなかったため、その後の工程に進めなかった。
実施例1の工程1:工程(A)において、水溶性珪素からエタノールを揮発させてシリコン濃度を2モル/Lとし、それに水と酢酸Eu水溶液(2モル/L)を添加して混合液中のシリコン濃度を1.9モル/Lとし、次いで酢酸Sr塩および酢酸Ba塩を添加した以外は、実施例1と同様にして処理したが、撹拌を継続しても、加水分解反応が進まず水と分離しない均一なゲル体を得ることができなかったため、その後の工程に進めなかった。
Claims (5)
- 湿式法によりアルカリ土類金属及び賦活材を均一に含有する前駆体を合成する工程(1)と、
工程(1)で得られた前記前駆体を、熱分解、あるいは熱分解と仮焼を施した後、還元焼成する工程(2)とからなる、下記[化1]記載のアルカリ土類金属シリケー
ト蛍光体の製造方法であって、
前駆体を合成する前記工程(1)が、以下に示す工程(A)、(B)、(C)とからなることを特徴とするアルカリ土類金属シリケート蛍光体の製造方法。
工程(A):アルカリ土類金属の水溶液、賦活材元素水溶液、及び水溶性珪素を混合した混合液を作製し、その混合液中のシリコン濃度を0.15〜1.0モル/Lとする工程。
工程(B):工程(A)で作製した前記混合液を、ゲル体が形成する温度に保持して継続した攪拌を行うことによりゲル体とする工程。
工程(C);工程(B)で作製したゲル体を、100℃〜200℃の大気乾燥、または凍結乾燥することによってゲル体乾燥物である前駆体とする工程。
<記>
- 前記アルカリ土類金属が、Ba、Sr、Caの群から選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ土類金属シリケート蛍光体の製造方法。
- 前記アルカリ土類金属の水溶液および前記賦活材元素水溶液が、硝酸塩を水に溶解させた水溶液であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアルカリ土類金属シリケート蛍光体の製造方法。
- 前記アルカリ土類金属の水溶液および前記賦活材元素水溶液が、酢酸塩を水に溶解させた水溶液であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアルカリ土類金属シリケート蛍光体の製造方法。
- 前記アルカリ土類金属の水溶液および前記賦活材元素水溶液が、塩化物を水に溶解させた水溶液であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアルカリ土類金属シリケート蛍光体の製造方法。
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