JP5515031B2 - 経口免疫寛容を誘導するペプチド組成物およびその調製方法 - Google Patents

経口免疫寛容を誘導するペプチド組成物およびその調製方法 Download PDF

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Description

本発明は、経口免疫寛容を効果的に誘導するペプチド組成物およびその調製方法に関する。より詳細には、特定の分子量以下のペプチドを有し、牛乳アレルギーの治療・予防に有用な経口免疫寛容を誘導するペプチド組成物およびその調製方法に関する。
一般に生体は異種(非自己)抗原に対しては免疫反応を示すが、自己を構成する抗原に対しては免疫反応を示さない。しかし、本来は異種抗原であっても免疫反応を示さない場合があり、この現象は免疫寛容と呼ばれている。また、経口摂取して腸管を経由して体内に吸収された抗原に関しては、免疫反応における応答性が著しく低下することから、この現象は特に、経口免疫寛容と呼ばれている。
この経口免疫寛容の作用機序として、現在、クローナルアナジー・クローナルデリーション・アクティブサプレッションという3つの制御機構が働いているとされている。クローナルアナジーとは、免疫細胞が抗原に対して不応答化することを指し、アナジー状態になるリンパ球がCD4+T細胞であることが確認されている(非特許文献1参照)。また、クローナルデリーションとは、抗原に反応するT細胞がアポトーシスを起こして消失する現象を指し、アクティブサプレッションにおいては、抗炎症性サイトカインであるIL−10を産生する調節性T細胞が大きな役割を果たしていることが知られている(非特許文献2参照)。従って、経口免疫寛容の作用機序にはT細胞が大きく関わっているとされている。さらに、近年においてはアレルギー疾患の発症には、ヘルパーT細胞のサブクラスと制御性T細胞とのバランスが重要であるとも言われている(非特許文献3参照)。
健常者においては、このようなT細胞を中心とした反応制御機構により経口免疫寛容が成立しているため、牛乳を摂取しても生体に不利益な免疫反応は惹起されない。しかし、牛乳アレルギー患者においてはT細胞による抗原に対する経口免疫寛容が成立しておらず、摂取した牛乳にアレルギーの引き金となるB細胞反応性が残存している場合には、様々なアレルギー症状が惹起され、アナフィラキシーショック等の重篤な症状を引き起こし死に至る場合もある。
そこで、牛乳アレルギー患者に対し、経口免疫寛容を誘導することによって牛乳アレルギーを予防・治療しようとする試みがなされており、牛乳たんぱく質加水分解物を利用したものが開示されてきた(特許文献1および2参照)。
しかし、牛乳たんぱく質加水分解物を利用する場合においても、経口免疫寛容を誘導するにはいくつかの問題点がある。牛乳たんぱく質加水分解物はアレルギー症状の惹起を避けるために、B細胞反応性が消失していること、または低減されていることが重要となる。牛乳たんぱく質加水分解物は、アレルゲンとなる牛乳中に含まれるβ−ラクトグロブリン(以下β−LGとする)やカゼイン等の牛乳たんぱく質を酵素によって分解し、低分子のペプチドとしたものであるが、酵素反応の条件によって、B細胞反応性の消失に加えて、さらに免疫寛容を誘導するために重要なT細胞反応性も消失してしまうことが多いという問題があった。
そこで、B細胞反応性を消失または低減しつつ、T細胞反応性を維持したペプチドを得るために、pHや温度、時間などの分解酵素における適度な反応条件の検討が望まれている。特に、食品添加物用の酵素は試験研究に供する目的において使用される酵素試薬とは異なり、高度に精製されておらず、様々な活性を持った複数の酵素による混合物であることが多い。したがって、pHや温度などの緒条件によって各酵素の活性および酵素同士の相互作用が異なり、生じる分解物も多岐に渡るという問題がある。
特許文献1に示された牛乳たんぱく質加水分解物については、このような分解酵素の反応条件についての検討が全くなされておらず、特定の酵素反応条件で実験されていないため、効率的に経口免疫寛容を誘導するようなペプチドが得られているとは考えられない。
また、特許文献1および2には、経口免疫寛容を誘導したとする報告がされているが、マウスを用いた実験による結果である。一般に、経口免疫寛容の誘導されやすさに関しては動物の種類によって差があると言われており、特にマウスやラット等のげっ歯類は誘導されやすいとされている。特に、前述の様に経口免疫寛容の成立にはT細胞が非常に重要な役割を果たしているが、T細胞の認識する部位に関してはマウスの系統によってさえ異なることが報告されている(非特許文献4および5参照)。したがって、マウスにおいて経口免疫寛容が誘導されてもヒトで誘導されるとは限らないため、ヒトにおけるT細胞反応性を証明する必要があるといえる。
一方、本発明者らはヒトにおけるT細胞反応性を証明したペプチドを開発し、開示しているが(特許文献3参照)、経口免疫寛容の対象となるたんぱく質をβ−LGのみに限定していたため、β−LG以外の牛乳たんぱく質に対してアレルギーを持つアレルギー患者においては利用できないという問題があった。
近年、β−LGとともにカゼインも牛乳の主要なアレルゲンであるという報告(非特許文献6参照)がなされており、通常市販されている乳製品のほとんどにカゼインが含まれている。したがって、β−LGのみに対して免疫寛容を誘導したとしても、カゼインに対する経口免疫寛容が誘導されていなければ、結局牛乳アレルギー患者は乳製品を摂取できないことになる。
また、カゼインの加水分解物を用いた抗アレルギー材が特許文献4に開示されているが、単純に抗原の体内への移行を防ぐだけであり、経口免疫寛容を誘導するような効果は認められておらず、カゼインに対して経口免疫寛容を誘導できる牛乳たんぱく質加水分解物は得られていない。
そこで従来法では解決できなかった、B細胞反応性を限りなく低減させ、一方でT細胞反応性を有し、ヒトにおいて牛乳由来のたんぱく質であるカゼインに対して経口免疫寛容を誘導できるペプチドの開発が望まれていた。
特開平5−5000号公報 特開平7−101873号公報 特開平20−195618号公報 特開平16−99457号公報
Hirahara,K.et al.,J.Immunol.,(1995) 清野 宏:医学のあゆみ(2002) 齋藤 博久、化学と生物、(2009) Tsuji,NM.et al.,Immunol.Lett.,(1993) Totsuka,M.et al.,Cytotechnology.,(1997) Wal JM, Ann. Allergy Asthma Immunol.,(2004)
本発明は、IgEを介してアナフィラキシーショック等の重篤な症状を引き起こすB細胞反応性が消失または低減され、かつ少量の抗原で長期に免疫寛容を誘導できるT細胞反応性を有する、ヒトにおいて牛乳アレルギー、特に牛乳由来のたんぱく質であるカゼインに対するアレルギーの治療・予防に供することのできるペプチド組成物およびその調製方法を確立し、提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、牛乳由来のたんぱく質であるカゼインを、たんぱく質加水分解酵素による分解処理ならびに限外ろ過膜による分画処理する方法を鋭意検討した。その結果、本発明者らは酵素活性が最も高い条件、いわゆる至適条件下で酵素反応を行うと分解が進みすぎて、T細胞反応性が減弱してしまうことを確認した。そこで、敢えて至適条件を外した条件下で適切な分解反応を調節したところ、B細胞反応性が消失または低減され、かつ免疫寛容を誘導するために重要なT細胞反応性を有するペプチドが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は次の(1)〜(11)のペプチド組成物またはその調製方法等に関する。
(1)牛乳由来のたんぱく質であるカゼインをBacillus licheniformis由来のアルカリ性エンド型たんぱく質分解酵素でpH9.5〜10.5、温度50〜60℃、反応温度2〜4時間分解する経口免疫寛容誘導能を有するペプチド組成物。
(2)たんぱく質分解酵素の分解条件が、pH10、温度55℃、反応時間4時間であることを特徴とする上記(1)に記載の経口免疫寛容誘導能を有するペプチド組成物。
(3)牛乳由来のたんぱく質であるカゼインをAspergillus melleus由来のアルカリ性エンド型たんぱく質分解酵素でpH7.5〜8.5、温度25〜35℃、反応時間2〜4時間分解した経口免疫寛容誘導能を有するペプチド組成物。
(4)たんぱく質分解酵素の分解条件が、pH8.0、温度30℃、反応時間4時間であることを特徴とする上記(3)に記載の経口免疫寛容誘導能を有するペプチド組成物。
(5)上記(2)または(4)に記載のペプチド組成物を分子量10,000の限外ろ過膜で処理し、その透過物として得られることを特徴とする経口免疫寛容誘導能を有するペプチド組成物。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載されたペプチド組成物を有効成分として含む経口免疫寛容誘導剤。
(7)牛乳由来のたんぱく質であるカゼインをBacillus licheniformis由来のアルカリ性エンド型たんぱく質分解酵素でpH9.5〜10.5、温度50〜60℃、反応温度2〜4時間分解する経口免疫寛容誘導能を有するペプチド組成物の調製方法。
(8)たんぱく質分解酵素の分解条件が、pH10、温度55℃、反応時間4時間であることを特徴とする上記(7)に記載の経口免疫寛容誘導能を有するペプチド組成物の調製方法。
(9)牛乳由来のたんぱく質であるカゼインをAspergillus melleus由来のアルカリ性エンド型たんぱく質分解酵素でpH7.5〜8.5、温度25〜35℃、反応時間2〜4時間分解した経口免疫寛容誘導能を有するペプチド組成物の調製方法。
(10)たんぱく質分解酵素の分解条件が、pH8.0、温度30℃、反応時間4時間であることを特徴とする上記(9)に記載の経口免疫寛容誘導能を有するペプチド組成物の調製方法。
(11)上記(7)または(9)に記載のペプチド組成物の調製方法であって、さらにペプチド組成物を分子量10,000の限外ろ過膜で処理し、その透過物として得られることを特徴とする経口免疫寛容誘導能を有するペプチド組成物の調製方法。
乳幼児に多く認められる食物アレルギーの原因のひとつとして、食品たんぱく質の一部が消化酵素の分解を受けずに腸管から吸収され、生体免疫系を刺激してアレルギーを発症させることが指摘されている。この点に関して、本発明のペプチド組成物はその平均分子量が低いため、もとの未分解の乳たんぱく質の有する抗原性が非常に低減されており、牛乳アレルギー患者の治療に用いることができる。また、本ペプチド組成物は経口免疫寛容誘導能に関しては非常に高いため、生体の有する潜在的なアレルギー防御機構を十分に活性化できる。
したがって、本発明のペプチド組成物は新しいアレルギー低減化および予防と治療を目的とした食品素材あるいは経口免疫寛容誘導材として有用である。
分解反応前の基質カゼインならびにペプチド1含有組成物および対照サンプル1含有組成物について、T細胞反応性を、牛乳アレルギー患者血清を用いたリンパ球幼弱化反応法で検討した図である(試験例1)。 分解反応前の基質カゼインならびにペプチド4含有組成物および対照サンプル4含有組成物について、T細胞反応性を、牛乳アレルギー患者血清を用いたリンパ球幼弱化反応法で検討した図である(試験例2)。 分解反応前の基質カゼインならびにペプチド1含有組成物およびペプチド4含有組成物について、B細胞反応性を、牛乳アレルギー患者血清を用いたIgE−ウェスタンブロット法で検討した図である(試験例3)。
本発明の「経口免疫寛容誘導能を有するペプチド組成物」とは、カゼインをたんぱく質分解酵素で酵素分解することによって得られる、B細胞反応性が消失または低減されており、かつT細胞反応性を有するペプチドを含む組成物のことをいう。
本発明のペプチド組成物を得るために用いるカゼインは、牛乳由来のカゼインであればいずれのものも用いることができるが、特にカゼインを高含有する酸カゼインまたはカゼインナトリウム、およびそれらに準ずるより純度の高いものを用いることが望ましい。
本発明の「経口免疫寛容誘導能を有するペプチド組成物」は、上述したカゼインをたんぱく質加水分解酵素で処理し、低分子ペプチド化することで調製することができる。
たんぱく質加水分解酵素は、ペプチド結合を加水分解する酵素であればいずれのものも用いることができるが、本発明に用いる酵素は微生物由来のアルカリ性エンド型たんぱく質分解酵素、特に微生物のBacillus licheniformisまたはAspergillus melleus由来のアルカリ性エンド型たんぱく質分解酵素が好ましい。これらの酵素は市販のものや独自に調製したいずれの酵素も用いることができるが、例えば、Bacillus licheniformis由来のアルカリ性エンド型たんぱく質分解酵素として、アルカラーゼ(ノボ社)やAspergillus melleus由来のアルカリ性エンド型たんぱく質分解酵素として、プロテアーゼP3SD(天野エンザイム社)等を用いることができる。
本発明の「経口免疫寛容誘導能を有するペプチド組成物の調製方法」として、カゼインをたんぱく質加水分解酵素で処理し、低分子ペプチド化するには、牛乳由来のたんぱく質を基質としてこれにたんぱく質加水分解酵素を加えて、所定のpH、温度で必要時間加水分解することが挙げられる。
例えば、カゼインをBacillus licheniformis由来のアルカリ性エンド型たんぱく質分解酵素でpH9.5〜10.5、温度50〜60℃、反応温度2〜4時間分解することで、B細胞反応性が消失または低減されており、かつT細胞反応性を有するペプチド組成物を得ることができる。この調製においては、さらに、たんぱく質分解酵素の分解条件が、基質濃度5%、pH10.0、温度55℃、4時間であることが望ましく、より抗原性の高い高分子物質を除去するために分子量が10,000の限外ろ過膜を用いて精製する事が特に望ましい。
または、カゼインをAspergillus melleus由来のアルカリ性エンド型たんぱく質分解酵素でpH7.5〜8.5、温度25〜35℃、反応時間2〜4時間分解することで、B細胞反応性が消失または低減されており、かつT細胞反応性を有するペプチド組成物を得ることができる。
この調製においては、さらに、たんぱく質分解酵素の分解条件が、基質濃度5%、pH8.0、温度30℃、4時間であることが望ましく、より抗原性の高い高分子物質を除去するために分子量が10,000の限外ろ過膜を用いて精製する事が特に望ましい。
本発明で得られる「経口免疫寛容誘導能を有するペプチド組成物」は、B細胞反応性が消失または低減されており、かつT細胞反応性を有することが、牛乳アレルギー患者T細胞において基質であるカゼインと同程度の反応性を示していること、および牛乳アレルギー患者血清を用いたIgE−ウェスタンブロット法により、IgE反応性の消失が示されていることから確認されている。
従って、本発明によって得られる「経口免疫寛容誘導能を有するペプチド組成物」は、B細胞反応性が低減しているため抗原性が低く、かつ免疫寛容誘導能は未分解の牛乳由来たんぱく質と同等に優れており、さらにペプチド態であるために耐熱性等の加工特性に優れているため、新規のアレルギー予防・治療食品素材として、単独または清涼飲料水、ミネラルウォーター、茶などの各種飲料、クッキー、ビスケット、煎餅等の菓子類、または育児用調製粉乳、パン、ゼリー、口腔清涼菓子などの食品とともに自由に使用することができる。
また、「経口免疫寛容誘導剤」の有効成分として使用することができる。本発明の「経口免疫寛容誘導剤」は、本発明によって得られる「経口免疫寛容誘導能を有するペプチド組成物」を有効成分として含む「経口免疫寛容誘導剤」であればいずれのものも含まれる。例えば、「経口免疫寛容誘導能を有するペプチド組成物」をそのまままたはその他の成分と組み合わせたものを、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、粉剤、溶液剤など所望する剤型に製剤化した「経口免疫寛容誘導剤」などが挙げられる。これは経口投与用食品として経口免疫寛容誘導および/またはそのための補助的処置として用いることもできる。
本発明によって得られる「経口免疫寛容誘導能を有するペプチド組成物」は本来食品として用いることができるものであるため安全性に問題は無く、その用量も適宜で良い。
以下に実施例および試験例を示し、さらに本発明を詳細に説明する。
[試料]
本発明の実施例および比較例においては次の試料を用いた。
1.カゼイン
1)カゼインナトリウム(たんぱく質含量90%、フォンテラ社)
2)酸カゼイン(たんぱく質含量90%、フォンテラ社)
2.酵素
1)アルカラーゼ(Bacillus licheniformis由来、ノボ社、表示活性 2.4AU/g)
2)プロテアーゼP3SD(Aspergillus melleus由来、天野エンザイム社、たん白消化力 30,000u/g以上)
3)プロテアーゼNSD(Bacillus subtilis由来、天野エンザイム社、たん白消化力 150,000u/g以上)
4)プロテアーゼASD(Aspergillus oryzae由来、天野エンザイム社、たん白消化力 10,000u/g以上)
5)フレーバーザイム(Aspergillus oryzae由来、ノボ社、表示活性 1000LAPU/g)
6)ニュートラーゼ(Bacillus amyloliquefaciens由来、ノボ社、表示活性 0.8AU/g)
[実施例1]
カゼインナトリウム5gをイオン交換水100mlに50mg/mlの濃度で溶解した。水酸化ナトリウムにてpHを10に調整した後、たんぱく質1g当たりアルカラーゼ10mgを添加し、55℃で4時間反応させた。反応終了後、100℃で10分間加熱し、酵素分解ペプチド組成物を得た。この酵素分解ペプチド組成物をペプチド1含有組成物とした。
[実施例2]
酸カゼイン10kgをイオン交換水100Lに100mg/mlの濃度で溶解した。水酸化ナトリウムにてpHを10に調整した後、たんぱく質1g当たりアルカラーゼ20mgを添加し、55℃で2時間反応させた。反応終了後、120℃で3秒間加熱し、酵素分解ペプチド組成物を得た。この酵素分解ペプチド組成物をペプチド2含有組成物とした。
[実施例3]
カゼインナトリウム25kgをイオン交換水500Lに50mg/mlの濃度で溶解した。水酸化ナトリウムにてpHを10に調整した後、たんぱく質1g当たりアルカラーゼ10mgを添加し、55℃で4時間反応させた。反応終了後、120℃で3秒間加熱し、酵素分解ペプチド組成物を得た。さらに、平均分画分子量10,000の限外ろ過膜にて分画して保持物を得た。この酵素分解ペプチド組成物をペプチド3含有組成物とした。
[実施例4]
カゼインナトリウム5gをイオン交換水100mlに50mg/mlの濃度で溶解した。水酸化ナトリウムにてpHを8.0に調整した後、たんぱく質1g当たりプロテアーゼP3SD10mgを添加し、30℃で4時間反応させた。反応終了後、100℃で10分間煮沸し、酵素分解ペプチド組成物を得た。この酵素分解ペプチド組成物をペプチド4含有組成物とした。
[実施例5]
酸カゼイン5kgをイオン交換水100Lに50mg/mlの濃度で溶解した。水酸化ナトリウムにてpHを8.0に調整した後、たんぱく質1g当たりプロテアーゼP3SD10mgを添加し、30℃で2時間反応させた。反応終了後、120℃で3秒間加熱し、酵素分解ペプチド組成物を得た。この酵素分解ペプチド組成物をペプチド5含有組成物とした。
[実施例6]
酸カゼイン10kgをイオン交換水200Lに50mg/mlの濃度で溶解した。水酸化ナトリウムにてpHを8.0に調整した後、たんぱく質1g当たりプロテアーゼP3SD20mgを添加し、30℃で4時間反応させた。反応終了後、120℃で3秒間加熱し、酵素分解ペプチド組成物を得た。さらに、平均分画分子量10,000の限外ろ過膜にて分画して保持物を得た。この酵素分解ペプチド組成物をペプチド6含有組成物とした。
[比較例1〜14]
実施例1と同様に、カゼインナトリウム5gをイオン交換水100mlに50mg/mlの濃度で溶解した。水酸化ナトリウムにてそれぞれのpHに調整した後、たんぱく質1g当たりアルカラーゼ10mg、プロテアーゼP3SD10mg、プロテアーゼNSD10mg、プロテアーゼASD10mg、フレーバーザイム10mgまたはニュートラーゼ10mgをそれぞれ添加し、30〜65℃で4時間反応させた。反応終了後、100℃で10分間加熱し、酵素分解ペプチド組成物を得た。これをそれぞれ対照サンプル1含有組成物〜対照サンプル14含有組成物とした。
実施例1〜6および比較例1〜14の各ペプチド含有組成物および対照サンプル含有組成物の調製条件を表1にまとめて示した。
[試験例1]
実施例1で得られたペプチド1含有組成物ならびに比較例1の対照サンプル1含有組成物について、牛乳アレルギー患者より得られた血清を用いてリンパ球刺激試験を行い、免疫寛容誘導効果を調べた。
リンパ球刺激試験は、アレルギー患者血清より分離した末梢血単核球(PBMCs)を用いて評価した。すなわち、PBMCsと対照被験物質を37℃・5%CO2環境下で5日間培養し、培養終了16時間にPBMCsが細胞内に取り込んだ〔3H〕−サイミジン(1ウェル当たり 0.5μCi)量を、液体シンチレーションカウンターを用いて測定した。この細胞内に取り込んだ〔3H〕−サイミジン量からPBMCsの増殖能をStimulation Index(SI)として換算し、T細胞反応性の指標とした。培養は、96穴マイクロプレート(ロシェ社)に1ウェル当たり2×105の細胞および対象被験物質(20μg/ml)を加えて行った。培地にはRPMI1640(三光純薬)を用いた。
その結果、図1に示すようにペプチド1含有組成物は分解反応前の基質カゼインよりやや減弱したもののT細胞反応性を示しており、免疫寛容誘導効果が認められた。一方、対照サンプル1含有組成物は、基質カゼインと比べて著しくT細胞反応性が減弱していた。
[試験例2]
実施例4で得られたペプチド4含有組成物ならびに比較例6の対照サンプル6含有組成物について、牛乳アレルギー患者より得られた血清を用いて試験例1と同様にリンパ球刺激試験を行い、免疫寛容誘導効果を調べた。
その結果、図2に示すようにペプチド4含有組成物は分解反応前の基質カゼインと同様のT細胞反応性を示しており、免疫寛容誘導効果が認められた。一方、対照サンプル6含有組成物は、基質カゼインと比べて著しくT細胞反応性が減弱していた。
比較例2〜5および7〜14の対照サンプル2含有組成物〜対照サンプル5含有組成物および対照サンプル7含有組成物〜対照サンプル14含有組成物においても、対照サンプル1含有組成物や対照サンプル6含有組成物と同様に、著しくT細胞が減弱していることが確認された。
[試験例3]
実施例1で得られたペプチド1含有組成物ならびに実施例4で得られたペプチド4含有組成物について、アナフィラキシーショックなどの即時型アレルギー症状を引き起こす可能性のあるIgEに対する反応性を、IgE−ウェスタンブロット法にて評価した。
まず、目的のたんぱく質を15〜25%グラジエントゲル(XV PANTERA Gel:DRC社)を用いて電気泳動し、i−blot system(インビトロジェン社)を用いてPVDF膜に転写した。その後、3%牛血清アルブミンを用いてブロッキングを行い、1次抗体および2次抗体でそれぞれ2時間反応させた後に発色させ、検出を行った。IgE−ウェスタンブロットの1次抗体は、アレルギー患者血清とプロテインGを混合した後、15000×g にて遠心分離した上清を10〜100倍希釈したものを用い、2次抗体としてはHRP−標識抗ヒトIgE抗ヤギ抗体を用いた。
その結果、図3に示すように両組成物ともにIgEに対する反応性は全く認められず、分解前反応前のカゼインと比べてB細胞反応性の著しい低減が認められた。
本発明のペプチド組成物は平均分子量が低いため、もとの未分解の乳たんぱく質の有する抗原性が非常に低減されており、牛乳アレルギー患者の治療に用いることができる。また、本ペプチド組成物は経口免疫寛容誘導能が非常に高く、生体の有する潜在的なアレルギー防御機構を十分に活性化できる。したがって、本発明のペプチド組成物は新しいアレルギー低減化および予防と治療を目的とした食品素材あるいは経口免疫寛容誘導材として有用である。

Claims (12)

  1. 牛乳由来のたんぱく質であるカゼインをバチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis由来のアルカリ性エンド型たんぱく質分解酵素でpH9.5〜10.5、温度50〜60℃、反応温度2〜4時間分解することにより得られる経口免疫寛容誘導能を有するペプチド組成物を有効成分として含むことを特徴とする、T細胞反応性を示す経口免疫寛容誘導剤
  2. たんぱく質分解酵素の分解条件が、pH10、温度55℃、反応時間4時間であることを特徴とする請求項1に記載のT細胞反応性を示す経口免疫寛容誘導剤
  3. ペプチド組成物が、分子量10,000の限外ろ過膜で処理し、その透過物として得られることを特徴とする、請求項1または2に記載のT細胞反応性を示す経口免疫寛容誘導剤。
  4. 牛乳由来のたんぱく質であるカゼインをアスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus由来のアルカリ性エンド型たんぱく質分解酵素でpH7.5〜8.5、温度25〜35℃、反応時間2〜4時間分解することにより得られる経口免疫寛容誘導能を有するペプチド組成物を有効成分として含むT細胞反応性を示す経口免疫寛容誘導剤
  5. たんぱく質分解酵素の分解条件が、pH8.0、温度30℃、反応時間4時間であることを特徴とする請求項に記載のT細胞反応性を示す経口免疫寛容誘導剤
  6. ペプチド組成物分子量10,000の限外ろ過膜で処理し、その透過物として得られることを特徴とする請求項4または5に記載のT細胞反応性を示す経口免疫寛容誘導剤
  7. 牛乳由来のたんぱく質であるカゼインをバチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis由来のアルカリ性エンド型たんぱく質分解酵素でpH9.5〜10.5、温度50〜60℃、反応温度2〜4時間分解する工程を含むことを特徴とする、T細胞反応性を示す経口免疫寛容誘導剤用のペプチド組成物の調製方法。
  8. たんぱく質分解酵素の分解条件が、pH10、温度55℃、反応時間4時間であることを特徴とする請求項7に記載のT細胞反応性を示す経口免疫寛容誘導剤用のペプチド組成物の調製方法。
  9. さらに、分子量10,000の限外ろ過膜で処理する工程を含む、請求項7または8に記載のT細胞反応性を示す経口免疫寛容誘導能剤用のペプチド組成物の調製方法。
  10. 牛乳由来のたんぱく質であるカゼインをアスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus由来のアルカリ性エンド型たんぱく質分解酵素でpH7.5〜8.5、温度25〜35℃、反応時間2〜4時間分解する工程を含むことを特徴とする、T細胞反応性を示す経口免疫寛容誘導剤用のペプチド組成物の調製方法。
  11. たんぱく質分解酵素の分解条件が、pH8.0、温度30℃、反応時間4時間であることを特徴とする請求項10に記載のT細胞反応性を示す経口免疫寛容誘導剤用のペプチド組成物の調製方法。
  12. さらに、分子量10,000の限外ろ過膜で処理する工程を含むことを特徴とする請求項10または11に記載のT細胞反応性を示す経口免疫寛容誘導剤用の能を有するペプチド組成物の調製方法。
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