JP5514762B2 - 曲げ加工性に優れたCu−Co−Si系合金 - Google Patents

曲げ加工性に優れたCu−Co−Si系合金 Download PDF

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Description

本発明はリードフレームやコネクタ等の電子材料、車載コネクタ用端子などに利用される高強度銅合金に関する。詳細には、曲げ加工後の曲げ部外観にしわや割れを生じない、優れた曲げ加工性及び曲げ部外観を示す高強度銅合金に関する。
近年、携帯電話、デジタルカメラ、ビデオカメラ等の電子機器や車載コネクタでの高密度実装化が進展し、その部品は著しく軽薄・短小化している。使用される材料も薄肉化の傾向が顕著で、材料にはより高強度なものが求められている。また、部品の形状も複雑化し、従来よりも厳しい曲げ加工が施されるケースが増えており、高強度化しても曲げ性は従来材と同等、もしくは箱曲げや180度密着曲げだけではなく、板厚を減厚させるつぶし加工後に曲げを行い割れが無いことなど、更に優れた曲げ加工性が要求されてきている。
コルソン合金(Cu−Co−Si系合金)は、一般的に合金の強度を高めると曲げ性が悪化し、また、曲げ性が良いものは強度が低い。そこで、強度と曲げ性を両立させる改善が種々行われてきた。コルソン合金は、時効硬化型の銅合金である。溶体化処理によって溶質原子であるCoとSiの過飽和固溶体を形成させ、その状態から低温で比較的長時間の熱処理を施すと、時効析出現象によって、強度の高い析出物が析出し、強度が向上する。この際、問題となるのは、強度と曲げ加工性が相反する特性を有する点である。すなわち、強度を向上させると曲げ加工性が損なわれ、逆に、曲げ加工性を重視すると所望の強度が得られないということである。一般に、冷間圧延の圧下率を高くするほど、導入される転位量が多くなって転位密度が高くなるため、析出に寄与する核生成サイトが増え、時効処理後の強度を高くすることができるが、圧下率を高くしすぎると曲げ加工性が悪化する。このため、強度及び曲げ加工性の両立を図ることが課題とされてきた。
特許文献1には、高強度、高導電性及び、高曲げ加工性の実現を目的として開発されたCu−Co−Si系合金が記載されており、結晶粒径とアスペクト比について着目している。特許文献2では、銅合金の組成と共に、銅合金中に析出する介在物の大きさ及び総量に着目したCu−Co−Si系合金が記載されている。特許文献3では、高強度、高導電性、高曲げ加工性及び耐疲労特性の実現を目的として開発されたCu−Co−Si系合金が記載されており、銅合金組織中の無析出帯(PFZ)の幅についてと粒界上の粒子径について着目している。特許文献4では、高強度、高導電性及び、高曲げ加工性の実現を目的として開発されたCu−Co−Si系合金が記載されており、結晶粒径と結晶粒径の分布について着目している。特許文献5は、強度、導電率、及び曲げ加工性に優れたCu−Co−Si系合金が記載されてあり、同文献段落「0018」では熱処理時の昇温速度、降温速度に着目している。
特開平9−20943号公報 特開2008−56977号公報 特開2010−215976号公報 特開2010−59543号公報 WO2009−116649号公報
コルソン合金の曲げ部外観、特に曲げ軸が圧延方向と直行する曲げ(特にBW)の外観はりん青銅のそれよりも劣り、肌荒れが大きい特徴がある。もし端子において割れが発生した場合、端子に求められる特性の導電性及びバネ性が失われ、製品の信頼性が損なわれるため、製品曲げ部の外観検査が通常行われている。しかし、例えば、最先端の超小型端子の曲げ部の外観の状況を裸眼で確認するのは難しく、曲げプレス後の状況を確認する検査工程では拡大鏡を使用して目視する、又はCCDカメラによる表面検査装置により確認するなど冶具や機械に頼らざるを得ない。この検査の際、実際には割れてはいないが、曲げ部外観の肌荒れが激しいため割れと区別が困難な場合は検査確認に時間がかかり検査効率が低下する。そこで、超小型電子機器材料に使用されるコルソン合金には、ただ曲げ部に割れが発生しなければ良いのではなく、曲げ部の肌荒れも小さいものが求められるようになってきている。
本発明は、コルソン系銅合金の優れた曲げ性、詳しくは割れのみならず、BW(bad way)の曲げ加工後の、従来注目されていなかった曲げ部の肌荒れを改良することを目的とした。
本発明者らは、Cu−Co−Si系合金において、BWの曲げ性及び曲げ部の肌荒れの改善を目的として研究した結果、異物や欠陥などの不均一伸びの起点となる部分を表面近くから排除し、板厚中央部(下記表層以外の部分)に比べて表層(材料表面から板厚の1/6深さまで)のせん断帯の形成を抑えることにより材料本来の引張強さ、0.2%耐力、ばね限界値などの機械的特性はそのままにBWの曲げ部の肌荒れを改善できることを発見して本発明を完成させた。
本発明は下記構成を有する。
(1) Coを0.2〜3.5質量%、Siを0.02〜1.0質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物からなるCu−Co−Si系合金条であって、第3元素群として、Mn、Fe、Mg、Ni、Cr、V、Nb、Mo、Zr、B、Zn、Sn、Ag、Be、ミッシュメタル及びPよりなる群から選択される1種以上を、総量で1.0質量%以下の範囲で含有してもよく、材料表面から板厚の1/6深さまで(以下「表層」と表記する)のせん断帯の線の本数Ssと、材料表層以外の部分(以下「板厚中央部」と表記する。)のせん断帯の線の本数Scの比Ss/Scが1.0以下、結晶粒径が20μm以下、材料表層では粒径1〜10μmの析出物の個数が3.0×104個/mm2以下であり、材料表層のせん断帯の線の本数が330本/10,000μm 2 以下である、高強度でかつ曲げ加工後の外観にも優れたCu−Co−Si系合金条。
(2) 材料表層における粒径1〜10μmの析出物の個数Nsと、板厚中央部における粒径1〜10μmの析出物の個数Ncの比Ns/Ncが1.0以下である(1)のCu−Co−Si系合金条。
) 溶体化温度を固溶限温度+25℃以内として溶体化処理されて製造される(1)又は(2)のCu−Co−Si系合金条。
本発明は、端子、コネクター等電子材料用銅合金として好適な、BW方向に関しても優れた曲げ加工性及びしわのない曲げ部外観を示す高強度銅合金を提供できる。
実施例1で製造された合金条の曲げ変形前の、圧延方向と平行かつ板厚方向に直角なサンプル表面の表層部を撮影したSEM写真(1,000倍)である。 実施例1で製造された合金条の曲げ変形前の、圧延方向と平行かつ板厚方向に直角なサンプル表面の板厚中央部を撮影したSEM写真(1,000倍)である。 実施例9で製造された合金条の曲げ変形前の、圧延方向と平行かつ板厚方向に直角なサンプル表面の板厚中央部を撮影したSEM写真(1,000倍)である。
−Cu−Co−Si系合金の組成−
<Co含有量>
Coが0.2質量%未満ではCu−Co−Si系合金本来の析出強化による強化機構を充分に得ることができないことから十分な強度が得られず、逆に3.5質量%を超えると粗大なCoや添加元素を含む第二相粒子が析出し易くなり、強度及び曲げ加工性が劣化する傾向にある。従って、本発明の実施の形態に係る銅合金中のCoの含有量は、0.2〜3.5質量%であり、好ましくは1.5〜3.5質量%、更に好ましくは1.5〜3.0質量%である。このようにCoの含有量を適正化することで、電子部品用に適した強度及び曲げ加工性を共に実現することができる。
<Si含有量>
Siは導電性に悪影響を及ぼすことなくCoと反応して第二相粒子を生成し強化機構に寄与する。発明者による試験の知見から、Siの含有量は析出強化による強化機構を十分に発揮するために、Co:Si=4.2:1が導電率と強度の関係が理論的に最適であることが見出された。Siは溶解時に添加しにくく、かつCoに比べ少し多くても強度面には影響がほとんど無い。従って、導電率が目標の範囲内となるのであればSiの上限は理論値より少し高いことが実際には適当である。従って、本発明の実施の形態に係る銅合金中のSiの含有量は、0.02〜1.0、好ましくは0.07〜0.85質量%、更に好ましくは0.36〜0.83質量%、最も好ましくは0.36〜0.71質量%である。
<その他の添加元素>
その他の添加元素をCu−Co−Si系合金に添加すると、Coが十分に固溶する高い温度で溶体化処理をしても結晶粒が容易に微細化し、強度を向上させる効果がある。
その他の添加元素としては、Mn、Fe、Mg、Ni、Cr、V、Nb、Mo、Zr、B、Zn、Sn、Ag、Be、ミッシュメタル及びPを単独で添加するか、又は2種以上を複合添加してもよい。
これらの元素は、合計で0.05質量%以上含有するとその効果が現れだすが、合計で1.0質量%を超えるとCoの固溶限を狭くして粗大な第二相粒子を析出し易くなり、強度は若干向上するが曲げ加工性が劣化する。同時に、粗大な第二相粒子は、曲げ部の肌荒れを助長し、プレス加工での金型磨耗を促進させる。従って、その他の元素群としてMn、Fe、Mg、Ni、Cr、V、Nb、Mo、Zr、B、Zn、Sn、Ag、Be、ミッシュメタル及びPよりなる群から選択される1種以上を合計で0〜1.0質量%含有することができ、好ましくは合計で0.05〜1.0質量%、更に好ましくは0.05〜0.5質量%含有してもよい。
−曲げしわの原因−
一般に、材料を曲げ加工する場合、曲げ部最外周に最も歪が付与される。曲げ加工において特定の歪値までは材料表面が均一に伸びるが、特定の歪値を境界に局部的に伸びが小さくなり、曲げしわが発生する。曲げ加工が進むとこのしわを起点に割れが入る。局部的に伸びが小さくなる(以降、不均一伸び)現象が生じる歪限界値は材料の機械的特性に依存するところも大きいが、材料内に異物や欠陥などの不均一伸びの起点となる物が存在すると、材料本来の機械的特性に応じた歪限界値以下で不均一伸びが生じやすく、曲げ部のしわが大きくなる傾向がある。従って、これら不均一伸びが生じる起点を少なくすることにより曲げしわを小さくできる。
なお、材料内部に不均一伸びが生じる起点が存在すると、材料表面に存在する起点ほどではないが、これが原因で材料表面に影響を及ぼすため、材料内部についても不均一伸びが生じる起点を少なくすることが望ましい。
不均一伸びの起点となる因子としては、材料表面の粗さ、表層に存在する析出物が挙げられる。材料表面の粗さは、最終圧延ロール表面の表面研磨等の従来手段で小さくすることは可能であるが、それだけでは最新の超小型端子に要求される曲げ加工に対応できない。
−金属組織内のせん断帯−
一般的に銅合金は、金属結晶の粒径(結晶微細化)や析出物の量、粒径、分布(析出強化)等の調整により強化できるが、最終冷間圧延の加工度調整によっても強化できる(加工強化)。圧延では、長手方向に張力が負荷された材料に対し、鉛直方向から圧延ロールによる荷重が加えられ、材料が変形(圧延)されていく。この圧延の際には、せん断的な変形が局所的に集中し、結晶粒組織が変形破壊されてせん断帯と呼ばれる帯状の組織が結晶方位とは無関係に形成される。
本実施形態において「せん断帯」とは、金属材料を圧延加工したサンプルの表面または圧延平行断面を研磨後エッチングしたときに観察される筋状又は線状の深さ0.01〜1μmの凹部であって、結晶粒の内部に連続して存在する部分を意味する(図3のせん断帯12参照)。
せん断帯の発達を制御する方法としては、圧延加工度を変更すること、冷間圧延時の圧延油の粘度を変更すること、圧延荷重を変更すること等によって行うことができる。具体的には、時効処理後の冷間圧延での圧延加工度、圧延油の粘度、圧延荷重を高くするなどして、金属材料に歪みが入りやすい状態とすることにより、せん断帯の発生頻度を上げることができる。
せん断帯は変形が局部的に集中した組織、すなわち歪が多くたまって転位密度が増加している部分であり、周りの組織に比べ変形しにくい。このため、せん断帯が存在する材料では、曲げ加工した際にせん断帯を起点に不均一伸びが生じ、不均一伸びが表面まで達する場合にはしわや割れが発生する。しかし、せん断帯が形成されるまで圧延加工をしないと加工強化はできず、要求される合金強度を達成することができないため、最終冷間圧延後の製品は必然的にせん断帯を内在させている。
本発明者らはせん断帯の分布に着目し、材料表面近くのせん断帯が少ないほど表面に達する不均一伸びが生じにくいため、割れやしわが少なくなることを発見した。即ち、せん断帯として具現化される歪が板厚中央部より表層で少ない場合には、曲げ加工の際に割れやしわが発生しにくい。具体的には、最終圧延後の材料表層に観察されるせん断帯の線の本数Ssと、板厚中央部(表層以外の部分)のせん断帯の線の本数Scの比Ss/Scが1.0以下、好ましくは0.95以下であれば、激しい曲げ加工の際にも曲げしわの発生が少なくなる。
更に、最終圧延後の材料表層のせん断帯の線の本数が好ましくは330本/10,000μm2以下、更に好ましくは280本/10,000μm2以下であれば、曲げしわの発生がより少なくなる。
なお、最終圧延での総加工度を低くして加工強化を充分に行わず、材料の表層でも板厚中央部でもせん断帯が少なかった場合は、高強度な本発明の合金条を得ることはできない。従って、本発明の合金条の表層のせん断帯の線の本数Ssは0を超える。
本実施形態においては、せん断帯の有無を、Cu−Co−Si系合金の圧延平行断面に対して機械研磨後にエッチングすることにより組織を現出させ、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、結晶粒の表面(圧延面)から深さが0.01μm以上のものをカウントする。深さの下限を0.01μm以上としたのは、あまりにも微細なせん断帯はカウントするのが困難だからである。
−析出物の粒径及び数−
せん断帯は歪がたまる部分に発生しやすい。そして、歪は組織が不連続となる部分、すなわちコルソン系合金では析出物粒子の周辺に局所的にたまりやすい。よって、析出物粒子の密度が低ければ歪の局所化も抑えられ、せん断帯も発生しにくくなる。ここで、本発明の「析出物」は、鋳造時の凝固過程に生じる晶出物、溶解時の溶湯内での反応により生じる酸化物や硫化物等、鋳塊凝固後の冷却過程、熱間圧延後、溶体化処理後の冷却過程及び時効処理時にCuマトリックス母材中に析出する析出物等の金属化合物を包括して総称する。従って、析出物粒子は、Co及びSiからなる粒子もあれば、この粒子に更に添加合金元素が加わったもの、Co及びSiのいずれか一方を含まない、もしくは両方を含まないものもある。
析出物の粒径及び数は、圧延平行断面を研磨し,エッチング後に、FE−SEM(電解放射型走査電子顕微鏡)を用いて200〜2,000倍程度の倍率で観察できる。粒子解析ソフト及びEDS(エネルギー分散型X線分析)を用いて成分を測定し、母材成分とは異なる成分で構成される粒子を析出物として判定した。析出物のそれぞれの粒径を測定して個数を数えた。ここで、析出物に外接する円の直径を析出物の粒径とする。
理論によって本発明を制限するものではないが、時効処理後の材料の表面から1/6板厚深さまでの表層において、粒径1〜10μmの析出物の個数が3.0×104個/mm2以下であれば、せん断帯発生の起点となる析出物の密度が低いため、表層部分でのせん断帯の発生が少なくなり、曲げ部に発生するしわも小さくできる。一方、3.0×104個/mm2を超えると表層でのせん断帯の発生が多くなり、曲げ部に発生するしわが大きくなる。表層における粒径1〜10μmの析出物の個数は好ましくは1×10-6個/mm2以上であり、それ未満であると材料全体として析出が少ない状態であり、強度上昇効果が得られず導電性も低い傾向がある。
また、表層における粒径1〜10μmの析出物粒子の個数Nsと、板厚中央部の粒径1〜10μmの析出物粒子の個数Ncの比Ns/Ncが1.0以下、好ましくは0.95以下であれば、激しい曲げ加工後にもしわの発生が少なくなる。これは、板厚中央部よりも表層で析出物粒子の個数が少ないため表層に歪がたまらず、せん断帯が少なくなり、曲げ加工の際に割れやしわが発生しにくいからである。
なお、コルソン合金では微細な析出物が均一に存在することにより強度向上効果が見られるが、粒径1μm以上の析出物は、析出物の分布密度及び粒界面積の低下を引き起こすため強度向上の観点から余り好ましくないとされていた。しかし、本発明では、圧延加工による歪を局在化させてせん断帯が形成される原因となりやすい粒径1〜10μmの析出物に着目し、その分布を調整して目的の特性を達成している。
粒径1μm未満の析出物粒子は、析出強化に寄与するが歪の局在化には余り寄与せず、せん断帯の発生にほとんど影響しないため曲げ部のしわにも影響しない。更に、粒径0.5μm未満の析出物粒子は、析出物であるか否かの成分判断ができないほど小さすぎる。一方、表層及び板厚中央部を含む全体において粒径10μmを超える析出物は割れの原因になるため、その個数は好ましくは1個/mm2以下、更に好ましくは0個/mm2である。
−結晶粒径−
本発明のCu−Co−Si系合金条の結晶粒径は20μm以下であり、15μm以下がさらに好ましい。20μm以上の粒径では曲げ性が悪化する。
−本発明の合金条の製造方法−
次に、本発明の合金を得るための製造方法について説明する。
通常、コルソン合金の鋳塊の製造は半連続鋳造法で行なわれる。鋳造条件の温度、時間及び冷却速度を制御して、鋳造時の凝固過程において粗大なCo−Si系析出物を生成させないことが好ましい。ある大きさ以下のCo−Si系析出物は、鋳造後に行われる熱間圧延の加熱を強化することによりCuマトリックス中に固溶できるが、全ての粗大な析出物をマトリックス中に固溶させるために加熱温度を上昇させると加熱炉の炉体耐火物寿命が短くなり、加熱時間を長時間化させるとリードタイムが長くなり生産性が極端に悪化する等の問題が生じる。
800℃以上の温度で1時間以上加熱後に、終了温度を650℃以上とする熱間圧延を行なうと、鋳造で析出・晶出したある大きさ以下の析出物はCuマトリックス中に固溶される。その場合、高温で加熱すると鋳造時に析出・晶出した析出物をCuマトリックス中に固溶させることができるが、熱間圧延前の加熱温度が1,000℃以上では、大量のスケールの発生、熱間圧延時の割れの発生といった問題が生じるので、熱間圧延前の加熱温度は900℃以上1,000℃未満が好ましい。具体的には、インゴット製造工程後には、900〜1,000℃に加熱して3〜24時間均質化焼鈍を行った後に、熱間圧延を実施するのが好ましい。
コルソン合金は、上記熱間圧延加工後、加熱して鋳造や熱間圧延で析出したCo−Si系析出物をCuマトリックス中に固溶させる溶体化処理と、溶体化処理温度より低い温度で熱処理して溶体化処理で固溶したCoとSiを析出させる時効処理、時効処理の前後で加工硬化させる圧延を組み合わせた工程で製造されることが多い。一般的には溶体化処理、圧延、時効処理、圧延、歪取り焼鈍の工程で製造される。せん断帯は、時効熱処理により消滅し、時効後の圧延で新たに生成する。そのため時効処理後の圧延条件がせん断帯形成に対して重要である。一方、歪取り焼鈍熱処理は、時効に比べて入熱量が少ないため、せん断帯の存在に対する影響はほとんど無い。時効処理前後の圧延では、要求される引張強さや0.2%耐力といった機械的特性及び曲げ加工性を考慮して条件を設定するが、時効前後のどちらか一方の圧延を省略することは可能である。
この場合、溶体化処理温度が高い方がCo、SiのCuマトリックス中への固溶量が増加し、時効処理時にマトリックス中からCo−Si系の金属間化合物が析出して強度を向上させる。この析出強度効果を得るための溶体化処理温度は、試験片の材料最高温度がCoの固溶限温度(Co濃度0.1質量%で約370℃、Co濃度0.2質量%で約490℃、Co濃度0.3質量%で約560℃、Co濃度0.5質量%で約650℃、Co濃度0.7質量%で約710℃、Co濃度0.8質量%で約730℃、Co濃度0.9質量%で約750℃、Co濃度1.0質量%で約770℃、Co濃度1.5質量%で約840℃、Co濃度1.7質量%で約865℃、Co濃度1.8質量%で約875℃、Co濃度1.9質量%で約885℃、Co濃度2.0質量%で約890℃、Co濃度2.2質量%で約910℃、Co濃度2.6質量%で約940℃、Co濃度3.0質量%で約960℃、Co濃度3.5質量%で約990℃)程度又はそれ以上となるようにする。
通常、溶体化処理工程ではCo及びSiの固溶状態を可能な限り維持するために急冷される。本発明では、実際にはいくら急冷しても溶体化処理の冷却過程で、ある程度の量のCo−Si金属間化合物が材料内部にほぼ均一に析出してしまうことに着目し、あえて溶体化処理工程での冷却速度を遅くすることにより、溶体化の冷却過程で表層と板厚中央部に温度勾配をつけ、粒径1〜10μmの析出物数が表層から板厚中央部に向けて段階的に増加するように変化させて、最終冷間圧延後の表層せん断帯本数を少なくし、曲げ加工後でも優れた表面外観を示す合金条を得た。理論によって本発明を制限するものではないが、冷却速度を遅くすることにより表層と板厚中央部とで冷却速度の差が大きくなり、表層付近は急冷されて析出物が少なく、板厚中央部では徐冷されて析出物は多くなると考えられる。
溶体化温度から400℃までの平均冷却速度は、好ましくは500℃/分以下、さらに好ましくは500〜300℃/分、最も好ましくは500〜400℃/分である。上記範囲であると表層では急冷されるため粒径1μm以上の析出物数が低下し、中央部では徐冷されるため粒径1〜10μmの析出物が発生する。500℃/分を超えると材料内部にほぼ均一に析出してしまうため、曲げ性及び曲げ加工後の外観に劣る。300℃/分未満であると板厚中央部の析出物が粗大化して時効での析出強化の効果が充分に得られない。
400℃から70℃までの平均冷却速度は、好ましくは300℃/分以下、さらに好ましくは300〜100℃/分である。300℃/分を超えると材料内部にほぼ均一に析出してしまうため、曲げ加工後の外観に劣る。一方100℃/分未満であると板厚中央部の析出物が粗大化して時効での析出強化の効果が充分に得られない。その上、時間もかかるため工業的にも好ましくない。
本発明では溶体化温度からの冷却において冷却速度を一定にすることは実際には難しいので平均冷却温度を用いている。本発明の平均冷却速度は、溶体化温度と400℃、又は400℃と70℃との差を、冷却にかかった時間で割ったものである。
溶体化前の銅合金素材を、第二相粒子組成の固溶限付近の温度になるまで加熱する。Coの添加量が0.2〜3.5質量%の範囲でCoの固溶限が添加量と等しくなる温度(本発明では「固溶限温度」という。)は490〜990℃程度であり、例えばCoの添加量が2.0質量%では890℃程度である。典型的には、溶体化前の銅合金素材のCoの固溶限温度に比べて0〜25℃高い温度、好ましくは0〜20℃高い温度になるまで加熱する。但し、溶体化処理温度をCoの固溶限温度よりも25℃を超えて高く設定することは結晶粒径が大きくなり、曲げ性が悪化するため好ましくない。溶体化は冷間圧延の途中に複数回行うことも可能である。
最終溶体化処理に引き続いて、時効処理を行う。本実施形態に係るCu−Co−Si系合金を得る上では最終溶体化処理の後、冷間圧延を行わずに直ちに時効処理を行うことが好ましい。
最終溶体化処理の後、時効処理を行って微細な析出物を生成させた後に冷間圧延をすると(時効→冷間圧延)、せん断帯の起点である転位は析出物の個数に比例して増加するので、低い加工度で高強度を得ることができる。曲げ性は、材料に入っている歪の量が少ないほうが良い傾向にあるため、低い加工度で圧延を行うことのできる「時効→冷間圧延」によって得られる材料の曲げ性は優れたものになる。一方、時効による析出物が無い状態で冷間圧延を行ってから時効処理をする「冷間圧延→時効工程」では、曲げ性と強度を両立することが困難である。その理由は、冷間圧延時には析出物がほとんど無いために、時効→冷間圧延と同じレベルの強度を得るためには高い加工度が必要とされ、曲げ性が悪くなるからである。議論によって本発明を限定するものではないが、せん断帯は時効熱処理で一度消滅し、その後の圧延で再度生成すると考えられる。従って、強度と曲げ性のバランスに優れた合金条を得るためには時効後の圧延が好ましく、時効前の圧延は省略可能である。
時効処理は、金属間化合物の微細な析出物が適切な大きさと間隔で均質に分布して、導電性を担保しつつピーク強度が得られる時効処理条件で実施することが好ましい。ここで、ピーク強度とは、例えば時効処理時間を一定として(例えば15時間)、時効処理温度を変化させた場合(例えば450、475、500、525、550、575、600℃の各時効処理温度で時効処理をした場合)に、最も強度(引張強さ)が高くなる条件で時効処理した場合の強度をいう。具体的には、材料温度475〜580℃で1〜30時間加熱することが好ましく、材料温度480〜580℃で1.5〜25時間加熱することがより好ましく、材料温度480〜580℃で5〜25時間加熱することがより好ましい。
せん断帯は材料内に導入された歪が局所化することにより発生する。上記記載の通り粒径1〜10μmの析出物の個数を表層部で少なく、板厚中央部で多く調整した材料へ、表層及び板厚中央部に対して均一に変形(圧延)を加えると、せん断帯が表層で少なく板厚中央部では加工強化に充分な程度に多く発生する。
せん断帯の発達を制御するため、本発明の実施形態においては、最終冷間圧延の圧延荷重は材料の幅方向の単位長さ当たりで115kg/mm以下とするのが好ましく、より好ましくは100kg/mm以下であり、例えば、100〜85kg/mmである。これは、表層及び板厚中央部に対して均一に変形(圧延)を加えることを目的としており、粒径1〜10μmの析出物の個数を表層部で少なく、板厚中央部で多く調整した材料ではせん断帯が表層で少なく板厚中央部では加工強化に充分な程度に多く発生する効果がある。なお、通常は、最終冷間圧延の圧延荷重は工業的に短時間で圧延するために、150〜200kg/mmからそれ以上の圧延荷重で実施される。圧延荷重が高ければ高いほど、板厚方向に材料を圧縮する力が強くなり、より短時間で所望の板厚まで材料を薄くすることができるからである。そのため従来技術ではせん断帯の発達は制御されず、材料表面に歪みが集中して表層のせん断帯が多くなっていた。
本発明の実施形態においては、最終冷間圧延で使用される圧延油の粘度は、表層と中央部とで均一に加工変形が生じるように13cST未満とするのが好ましく、10cST以下とするのが更に好ましく、より好ましくは7cST以下、最も好ましくは6.8〜3cSTである。13cST以上では、圧延の際に圧延油が材料表面に噛み込まれて表面平滑性に劣ると共に表層に歪がたまり、表層のせん断帯の本数が多くなる傾向がある。なお、通常は、工業的に短時間で圧延するためには7〜25cST程度からそれ以上の粘度の圧延油を使用するのが一般的である。圧延油の粘度が高いほど、速い圧延速度でも圧延に最適な潤滑油厚みを得られるため、圧延速度を高めることが可能となり、より短時間で圧延して生産性を向上させることができるからである。
本実施形態においては、せん断帯の有無を、Cu−Co−Si系合金の圧延平行断面に対して機械研磨後にエッチングすることにより組織を現出させ、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、結晶粒の表面(圧延面)から深さが0.01μm以上のものをカウントする。深さの下限を0.01μm以上としたのは、あまりにも微細なせん断帯はカウントするのが困難だからである。
高い強度を得ることを目的とする場合は、時効処理後の冷間圧延の総加工度を2%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは7%以上とする。但し、加工度が高すぎるとせん断帯の存在する結晶粒の割合が多くなり曲げ性が悪化することから加工度を25%以下、好ましくは20%以下とする。要求される引張強さ、0.2%耐力といった機械的特性及び曲げ加工性に対して任意に選択できる。
最終の冷間圧延の後、電子部品に適用するのに必要な応力緩和特性を得るため、歪取焼鈍を行う。歪取焼鈍の条件は慣用の条件でよいが、具体的には、材料温度200℃以上550℃未満で0.001〜20時間加熱の条件で行うのが好ましく、低温であれば長時間(例えば材料温度200〜300℃で12〜20時間加熱)、高温であれば短時間(例えば材料温度300〜400℃で0.001〜12時間加熱)の条件で行うのがより好ましい。また要求特性によっては本工程を省略することも可能である。但し、歪取焼鈍条件は、焼鈍後製品のせん断帯の本数及び分布が本発明の範囲内で保持されるように設定される。
本発明の銅合金は、曲げ加工後の表面外観の変化を評価するので材料表面外観が重要である。表面粗さの調整は、例えば、圧延、研磨などにより行うことが出来る。実際の操業においては表面粗度を調整した圧延ロール等を用いて圧延することにより、銅合金の表面粗度を調整することが出来る。また、圧延後の工程で材料表面に対して例えば、目の粗さが違うバフ研磨を実施することにより表面粗度を調整することも可能である。
本発明の合金条の下記曲げ加工評価後の表面平均粗さRaは、曲げ方向GW及びBW共に1.0μm以下、好ましくは0.8μm以下である。
以下に本発明に係るCu−Co−Si系合金の製造例及び特性試験の結果を示すが、これらは本発明及びその利点をより良く理解するために提供するのであり、本発明が限定されることを意図するものではないことに留意すべきである。
(製造方法)
実施例の銅合金を製造するに際しては、溶製には大気溶解炉を用いた。また、本発明で規定した元素以外の不純物元素の混入による予想外の副作用が生じることを未然に防ぐため、原料は比較的純度の高いものを厳選して使用した。
表1及び2に記載の濃度のCo、Siを添加し、場合により第3元素を更に添加して、残部銅及び不可避的不純物の組成を有するインゴットに対して980℃で3時間加熱する均質化焼鈍の後、900〜950℃で熱間圧延を行い、板厚10mmの熱延板を得た。面削による脱スケール後、冷間圧延して素条の板厚(2.0mm)とした。次いで、中間の冷間圧延では最終板厚が0.10mmとなるように中間の板厚を調整して冷間圧延した。その後、急速加熱が可能な焼鈍炉に挿入して溶体化処理を行い、銅合金素材が所定の材料温度に達した時点で直ぐに焼鈍炉から取り出し水冷した。
溶体化処理は、実施例においては、試験片の材料最高温度がCoの固溶限温度の0℃〜25℃高い温度になるようにした。溶体化温度〜400℃及び400℃〜70℃におけるそれぞれの平均冷却速度を所定の速度に調節しながら冷却し、表層及び板厚中央部の粒径1〜10μmの析出物個数を調整した。
本実施例においては、溶体化処理の保持時間は10sで統一した。なお、「溶体化処理の保持時間」は、試験片が材料最高温度に達した時から水冷を開始するまでの時間を示す。
表1及び2中の「溶体化温度〜400℃の冷却速度」は、試験片が材料最高温度から400℃まで冷却されるまでの平均冷却速度を表す。具体的には(冷却速度(℃/s))=((材料最高温度(℃)−400(℃))/(水冷を開始してから試験片の温度が400℃になるまでに要した時間(s))で算出した。表1及び2中の「400℃〜70℃の冷却速度」も同様に算出した。なお、冷却速度の基準を、試験片が70℃に冷却されるまでの時間と規定したのは、70℃以下の温度域では析出物の消滅、生成、成長の駆動力となる原子の拡散距離が無視できるくらい小さいからである。
その後、実施例1〜35、比較例1〜30、35〜40については最終溶体化処理後の試験片に対してそれぞれピーク強度が得られる時効処理条件(例えば、500℃、15時間)で時効処理を行った後、表1に示す条件で最終冷間圧延を行い(製造方法A)、実施例及び比較例の試験片を作製した。また、比較例31〜34については溶体化処理後の試験片に対して表1及び2に示す条件で冷間圧延を行い、その後、それぞれピーク強度が得られる時効処理条件(例えば、500℃、15時間)で時効処理を行った(製造方法B)。なお、表1及び2中「荷重」は、試験片の幅方向の単位長さあたりの圧延荷重を示す。(幅方向の単位長さあたりの圧延荷重(kg/mm))=(圧延荷重(kg))/(サンプル幅(mm))
圧延油は、出光興産社製 商品名ダフニーステンレスオイルX-60(粘度9.5cST)又は出光興産社製 商品名ダフニーステンレスオイルX-3K(粘度12cST)へ鉱油を添加して粘度を調整して使用した。
得られた各試験片について以下の条件で特性評価を行った。結果を表2に示す。
<結晶粒径>
結晶粒径(平均結晶粒径)の測定は、圧延面表面をリン酸67%+硫酸10%+水の溶液に15V60秒の条件で電解研磨により組織を現出させ,水洗乾燥させ観察に供した.これをFE−SEM(電解放射型走査電子顕微鏡)を用いて組織を観察し、JIS G0551の交差線分法により平均結晶粒径を求めた。
<第二相粒子の個数密度>
結晶粒径測定と同様に組織を現出させ、FE−SEMを用い、粒径と析出物の複数の元素が含まれることは、FE−SEMのEDS(エネルギー分散型X線分析)を用いて全ての析出物に対して成分分析することにより確認した。粒径1.0μm未満の第二相粒子、粒径1.0〜10μmの第二相粒子、粒径10μmを超える第二相粒子に分けて個数を粒子解析ソフト(フェニックス社製EDS粒子/相解析ソフトウェア)を用いて数えた。なお、全ての実施例及び比較例において、粒径10μmを超える析出物は表層及び板厚中央部に存在しなかった。
<せん断帯>
結晶粒径測定と同様に組織を現出させ、サンプル表面の組織の凹凸を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定した。そして、結晶粒の表面から深さが0.01μm以上のものをせん断帯としてカウントした。具体的には、100μm×100μmの枠を作製し、この中に存在するせん断帯の本数をカウントした。枠を横切っているせん断帯についても、1本としてカウントした。カウントした本数をせん断帯の単位面積辺りの本数と規定した。サンプル表層についてはサンプル表面をそのまま電解研磨することにより現出させた。サンプル中央部については、サンプル表面からひずみが入らないように機械研磨を実施し、板厚中央部の組織を現出させた。
せん断帯の測定については、筋状又は線状の模様が存在する範囲の組織の凹凸を測定し、ある谷(凹部)から隣の山(凸部)までの高さが0.01μm以上である谷(凹部)を「せん断帯」としてカウントした。ここで「筋状又は線状の模様」は、SEM写真(倍率5,000倍)を目視することにより特定した。なお、結晶粒界はせん断帯としてカウントしなかった。
<0.2%耐力>
引張方向が圧延方向と平行になるように、プレス機を用いてJIS13B号試験片を作製した。JIS−Z2241に従ってこの試験片の引張試験を行ない、圧延平行方向の0.2%伸び時の強度を測定した。本発明で高強度とは、0.2%耐力560MPa以上を言う。
<導電率>
JIS H 0505に準拠し、4端子法で導電率(EC:%IACS)を測定した。本発明のCu−Co−Si系合金条は、通常60%IACS以上、好ましくは65.0%IACS以上、より好ましくは66.5%IACS以上の導電率を示す。
<伸び>
引張試験を実施したサンプルに対して、JIS−Z2241に従って、破断伸びを測定した。
<曲げ表面>
JIS Z 2248に従いW曲げ試験をBad way(BW:曲げ軸が圧延方向と同一方向)、R/t=0で実施し、この試験片の曲げ表面を観察した。観察方法はレーザーテック社製コンフォーカル顕微鏡HD100を用いて曲げ表面を撮影し、付属のソフトウェアを用いて平均粗さRaを測定し、比較した。なお、曲げ加工前の試料表面はコンフォーカル顕微鏡を用いて観察したところ凹凸は確認できなかった。曲げ加工後の表面平均粗さRaが1.0μmを超える場合を曲げ加工後の外観に劣ると評価した。本発明の「曲げ加工後の外観に優れた」とは、上記測定においてBW曲げ加工後の表面平均粗さRaが1.0μm以下のものをいう。なお、下記本発明の実施例サンプルにおいては、GW曲げ加工後のRaは全て1.0μm以下であった。
以上のようにして作製した材料の製造条件及び特性を表1〜4に示す。なお、表中の「*1」は熱間圧延で割れが生じたため、製造・評価不能であったことを示し、「*2」はせん断帯が存在しないため、表層と板厚中央部の比率は計算できないことを示す。
実施例2及び3はCo含有量が本発明の下限及び上限の例であり、実施例2はSi含有量が本発明の下限近くの例である。実施例4〜6はCo及びSi含有量が本発明の範囲内の例であり、実施例7〜9は時効処理後の冷間圧延加工度を3〜18%に変化させた例であり、実施例10〜33は添加元素の種類及び量を本発明の範囲内で変化させた例であり、実施例34はSi含有量が本発明の上限の例であり、実施例36〜41は冷却速度を変化させた例であるが、実施例1と同様に目的とする効果を示した。なお、実施例1の溶体化処理温度はCoの固溶限温度+5℃であるのに対し、実施例4では+15℃であったが、その差は製造された試験片の物性へほとんど影響しなかった。実施例5はCoの添加量がやや少ないため、溶体化処理温度も低めになり、粒径1〜10μmの析出物数も少なくなった。その結果実施例2と同様に強度が若干低かった。
比較例1は溶体化処理温度が固溶限温度より65℃低かったため、実施例1又は4に比べて粒径1〜10μmの析出物が多く析出し、強度及び曲げ性に劣った。
比較例2〜8及び35〜40は溶体化処理温度が高かったため、結晶粒径が20μmを超えて曲げ性に劣った。更に、比較例2、3および35は強度向上効果のある添加元素を含まないので強度にも劣った。その上、比較例35〜40は圧延荷重が高く、圧延油粘度も高いためにさらに曲げ性が悪化した。
比較例9〜12は、実施例1、4又は9に比べて溶体化温度から400℃までの平均冷却速度又は400℃から70℃までの平均冷却速度が速かったため、析出物が材料内部にほぼ均一に析出してしまい、中央部のせん断帯の線の本数が少なく曲げ性に劣った。更に比較例10は結晶粒径が大きめのため強度も劣った。又、比較例12は荷重が大きく冷間油の粘度も大きい従来例であり、表層のせん断帯本数が多く、曲げ性は非常に悪かった。
比較例13は、時効処理後の圧延の加工度がゼロだったので、表層および中央部の両方ともせん断帯が存在せず強度に劣った。比較例14は、加工度が高すぎるために,表層にせん断帯が過剰に存在する一方、中央部のせん断帯の線の本数が少なく、曲げ性に劣った。
比較例15、18、19、22、23、26、27、35〜40は、時効処理後の圧延荷重が大きかったので、表層にせん断帯が過剰に存在する一方、中央部のせん断帯の線の本数が少なくなり曲げ性に劣った。
比較例16、17、20、21、24、25、28、29、は、いずれも時効処理後の圧延油粘度が大きかったので、せん断帯が過剰に存在するにもかかわらす中央部のせん断帯の線の本数が少なく曲げ性に劣った。
比較例19及び21は、溶体化処理温度が不適当だったため、せん断帯が過剰に存在するにもかかわらす中央部のせん断帯の線の本数が少なく曲げ性に劣った。
比較例30はCo及びSi含有量が本発明の範囲外に多すぎたため、熱間圧延で割れが生じて評価不能であった。
比較例31〜34では、時効前に冷間圧延を行い、時効後の冷間圧延を行わなかった。比較例31は、加工度が低かったため、曲げ性は良いが強度は低かった。比較例32及び33は、比較例31に比べて加工度が高かったため、強度は高いが曲げ性が非常に悪かった。比較例34は、圧延条件が実施例9と同様であったにもかかわらず、時効後に冷間圧延をしていないため、強度は低く、曲げ性は悪化した。
比較例35〜40は荷重及び油粘度が大きかったので、せん断帯が過剰に存在するにもかかわらず中央部のせん断帯の線の本数が表層部に比べて少なく、比較例2〜8より更に曲げ性に劣った。
以上、説明したように本発明によれば、GWのみならずBW曲げ加工後の曲げ部外観にしわや割れを生じない、優れた曲げ部外観を示す高強度銅合金が得られ、端子、コネクター等電子材料用銅合金として好適である。
11:析出物
12:せん断帯

Claims (3)

  1. Coを0.2〜3.5質量%、Siを0.02〜1.0質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物からなるCu−Co−Si系合金条であって、第3元素群として、Mn、Fe、Mg、Ni、Cr、V、Nb、Mo、Zr、B、Zn、Sn、Ag、Be、ミッシュメタル及びPよりなる群から選択される1種以上を、総量で1.0質量%以下の範囲で含有してもよく、材料表面から板厚の1/6深さまで(以下「表層」と表記する)のせん断帯の線の本数Ssと、材料表層以外の部分(以下「板厚中央部」と表記する。)のせん断帯の線の本数Scの比Ss/Scが1.0以下、結晶粒径が20μm以下、材料表層では粒径1〜10μmの析出物の個数が3.0×104個/mm2以下であり、材料表層のせん断帯の線の本数が330本/10,000μm 2 以下であることを特徴とする、高強度でかつ曲げ加工後の外観にも優れたCu−Co−Si系合金条。
  2. 材料表層における粒径1〜10μmの析出物の個数Nsと、板厚中央部における粒径1〜10μmの析出物の個数Ncの比Ns/Ncが1.0以下であることを特徴とする請求項1に記載のCu−Co−Si系合金条。
  3. 溶体化温度を固溶限温度+25℃以内として溶体化処理されて製造されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のCu−Co−Si系合金条。
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