JP5508940B2 - 空調制御システムの運転制御方法 - Google Patents
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Description
従来、冷却対象であるICT装置は、その運転状態によらず、常にほぼ一定の電力を消費していた。しかしながら、昨今、情報・通信負荷量に応じて、消費電力を最適化するICT装置(パワーコントロールサーバー)の出現により、データセンター内の消費電力はダイナミックに変化し、これに伴い高温部位の分布もダイナミックに変化することになるため、それに即応可能な空調制御方法が求められている。
しかしながら、(a)の方式では、室内温度の性状によっては、高負荷で運転している空調機Aの近傍で空調機Bが低負荷で運転しているなどという事象が生じる場合があり、室温維持の観点からも、また空調運転の効率化の観点からも好ましくない。他方、(b)の方式により、各空調機を一律に出力調整した場合、フロア内で生じる局所的な高温部位のために、位置関係からみてほとんど影響しない空調機についても出力を上げて対応することとなり、省エネ性に反する。
特許文献1は、各ICT装置と各空調機との冷却効果の影響度の関連付けを行う影響度関連付けテーブルを予め備え、装置内の温度を下げる場合に当該テーブルを参照して、影響度の大きい空調機を選択して制御するものである。
また、特許文献2は、運転に先立って毎回、空調機ごとに設定温度を変化させ、各センサの温度変化を測定して。温度センサが配置された位置への各空調機の影響度を求め、これを用いて運転制御するものである。
(1)複数の空調機により、室内に収容される複数のサーバラック内のICT装置を冷却する空調制御システムの運転制御方法であって、予め、
(a)いずれかの空調機の設定温度を変化させたときの、各サーバラック吸気面近傍(以下、基準点という)への影響度(以下、空調影響係数という)を、基準点ごとに設定し、
(b)前記空調影響係数を用いて、基準点の温度を単位温度変化させるとしたときの、各空調機の寄与率(以下、空調寄与率という)を基準点ごとに求めておき、
(c)運転時において、いずれかの基準点温度が吸気許容温度を超えている場合には、前記空調寄与率に基づいて空調機ごとに設定温度変更値を求める、ことを特徴とする。
また、「空調寄与率」とは、基準点の温度を単位温度(例えば1℃)下げるために、各空調機がどの程度寄与するかを定量化した数値である。具体的には、例えば後述の(1a)式、図6,7等により求めることもできる。
(d)運転時において、サーバラック排気温度を排気許容温度以下に維持するために、前記空調寄与率に基づいて空調機ごとに設定温度変更値を求める、とすることを特徴とする。
排気温度は、装置の風量や、消費電力によって機器ごとに相違するものであるため、入気温度のように一律に閾値を設定して良否判定を行うことは適さない。
ICT装置の負荷変化(パワーコントロール)状況把握手段として、排気温度をパラメータとする場合には、計測温度の絶対値による判定ではなく、変化傾向(温度の上昇)による判定とすることが適当である。
「排気温度上昇度」の判定基準として、例えば、過去5分間の排気温度平均値が、閾値(例えば5℃)を逸脱しているか否か、とすることができる。
本発明によれば、室内全体の温度環境が変化する前に、いち早くサーバラック内に格納されているICT装置の負荷増を把握し、空調機の出力を増加させることが可能となる。特に、パワーコントロールサーバを格納したサーバラックについて、より効果的となる。
空調機から基準点までの距離が冷気供給量に大きな影響を与えることは、経験上知られている。本発明は、この値を空調影響係数として設定したものである。
空調影響係数設定に際して、直線距離のみでなく空調機吹出面と各センサのなす角度考慮することにより、冷気供給量に影響を与える空調機吹き出し方向が考慮されることになる。
本発明は、空調機a,b,・・・に対して、各基準点(i)における空調影響係数をDa(i)、Db(i)、・・・とし、各空調機の空調寄与率Ea(i)、Eb(i)・・・を次式により求めるものである。
Ea(i)=Da(i)/[Da(i)+Db(i)+・・・]
Eb(i)=Db(i)/[Da(i)+Db(i)+・・・]
Ec(i)= ・・・
本発明は、(5)によるEa(i)、Eb(i)、・・・に、さらに1/[Da(i)+Db(i)+・・・]を乗じた数値、
Ea(i)’=Ea(i)*[1/(Da(i)+Db(i)+・・・)]
Eb(i)’=Eb(i)*[1/(Da(i)+Db(i)+・・・)]
Ec(i)= ・・・
を以って、空調寄与率とするものである。
逸脱度が最大の基準点に対応して、各空調機の設定温度を変更することにより、他の基準点についても許容温度内に維持される可能性が高いといえる。
例えば、当該空調機が完全に停止した場合には0、冷房能力が減少した場合には減少率を考慮した値にする等、故障の程度に応じて係数を変化させることが望ましい。
(9)上記各発明において、空調機ごとに求めた設定温度変更値に基づいて運転したときの前記基準点における実測温度を計測して、前記空調影響係数及び前記空調寄与率を、随時、更新することを特徴とする。
実測値に基づいて空調影響係数、空調寄与率の数値を更新することにより、より実態に即した温度管理が可能となる。
また、室内温度逸脱の危険性の最小化(信頼性の向上)を図ることができる。また、空調出力の即応性を高めることにより標準設定温度を高く保つことが可能となり、空調効率の最大化(省エネ)を達成できる。
また、本発明を、ICT装置を収容するデータセンター等の空調制御に適用した場合、高温障害による空調システムの運転停止等の事態を未然に防止することができる。
また、近年、フロア内の温度分布の可視化や温度環境の監視等を目的として、室内に複数の温度センサ(マルチ温度センサ)を設置する事例が増加しているが、本発明によれば、既設のマルチ温度センサを有効に利用して、省エネルギー性に優れた高効率空調システムの構築が可能となる。
(第一の実施形態)
図1、2を参照して、本実施形態に係る空調制御システム1は、情報通信機械室5内に収容される複数のサーバラック2(以下、ラック2と略称)を、2台の空調機4A,4Bにより冷却するシステムである。
)。機械室5内部は、床パネル5d及び天井パネル5eにより3つの空間に区画されており、中央の機械室空間5aと、床パネル5dの下部に二重床空間5cと、天井パネル5eの上部に天井空間5bと、が形成されている。なお、説明の便宜上、図2では空調機4Aの位置を90度回転させ、かつ、空調機4Bの図示を省略して表示している。
各ラックの吸気側表面近傍(基準点に該当)には、温度センサSi(i=1−n)がそれぞれ配設されており、当該ラックの吸気温度を計測可能としている。
なお、図1,2では、平面座標上の1つのポイントに対して1つの温度センサを配設する例を示しているが、1つのポイントに対して鉛直方向に複数配設される場合もある(以下の実施形態についても同様)。
制御中は、所定の時間t(j)(j=0、1,2、・・・)ごと(例えば30secごと)に、温度センサSi(i=1−n)により吸気温度Ti(j)が計測され、計測値はデータ格納部10aに取り込まれる(S102)。以下、時刻t(j)における計測が行われる状態を想定して説明する。
Tmを逸脱するセンサSk(k=1−m))が存在するときは(S103においてYES)、当該センサの逸脱度に対応した各空調機の設定温度変更の演算が行われる。最初に、センサ位置の空調影響係数に基づいて、空調寄与率Ea(k)、Eb(k)が次式により演算される(S104)。
Ea(k)=Da(k)/[Da(k)+Db(k)] ・・・・(1a)
Eb(k)=Db(k)/[Da(k)+Db(k)] ・・・・(1b)
ΔTa(k)=ΔTm(k)・Ea(k) ・・・・(2a)
ΔTb(k)=ΔTm(k)・Eb(k) ・・・・(2b)
次いで、ΔTa(k)、ΔTb(k)(k=1−m)の中から、それぞれの最大値Max(ΔTa(k))、Max(ΔTb(k))を抽出する(S106)。
これより、空調機4A,4Bの変更後の設定温度をTa(j)、Tb(j)とすると、それぞれ式により求めることができる。
Ta(j)=Ta(0)−Max(ΔTa(k))・・・・(3a)
Tb(j)=Tb(0)−Max(ΔTb(k))・・・・(3b)
演算結果に基づいて、設定変更指示部10dは設定温度の変更を各空調機に指示する(S107)。その後、次の計測タイミング(t(j+1))に移行する(S108)。
以上の制御により、局所的な高温発生を防止して、吸気温度を許容上限温度以下に維持しつつ、各空調機について省エネを考慮した効率的な運転が可能となる。
また、本実施形態ではデータ格納部10aに空調影響係数(距離情報)を格納し、これを用いて空調寄与率を演算する例を示したが、上記(1a)、(1b)式により予め空調寄与率を求めておき、直接(2a)、(2b)式により変更度を求める態様とすることもできる。
Da(i)2=(Xa−Xi)2+(Ya−Yi)2 ・・・・(4a)
Db(i)2=(Xb−Xi)2+(Yb−Yi)2 ・・・・(4b)
上式により求めたDa(i)、Db(i)を(1a)、(1b)に代入することにより、空調分担係数を求めることができる。
Da(k)'=cosθa(k)・Da(k)、
Db(k)'=cosθb(k)・Db(k)
を用いることになる。これにより、温度に大きな影響を与える空調機の冷気吹き出し方向も考慮されることになり、より実態が反映されることとなる。
Ea(k)=Da(k)/[Da(k)+Db(k)]等を用いる例を示したが、これに替えて、
Ea(k)'=[1/[Da(k)+Db(k)]]*Da(k)/[Da(k)+Db(k)]・・・ (1a’)式
等を用いる形態とすることもできる(Eb(k)についても同様)。
(1a)式等を用いた場合、例えばDa(k)、Db(k)がそれぞれ0.4、0.8の場合と、0.1、0.2の場合で制御量は同一となるが、(1a’)式を用いた場合には制御量が異なる。よって、空調影響係数の絶対的な大きさを考慮する必要がある場合には後者の式を用い、影響係数の空調機間の相対的な比較のみを考慮すれば足りる場合には、前者の式を用いることが適当である。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は、空調機−センサ間の距離情報に基づいて空調影響係数を定めるのではなく、機械室内を各空調機の想定影響度に対応してゾーン分けし、ゾーンごとに空調影響係数を設定する形態に係る。
本実施形態の構成は、空調制御システム1と同一であるので重複説明を省略する。
具体的には、図6を参照して、ゾーンZ1については空調影響係数da=0.9、ゾーンZ2については空調影響係数da=0.7、ゾーンZ3については空調影響係数da=0.5、・・・のように定める。図示を省略するが、空調機4bに対しても同様に定める。
このようにして定めた空調影響係数を用いて、空調寄与率(Ea、Eb)を求め、さらに設定温度低下値(ΔTa、ΔTb)を演算し、最終的に変更後設定温度(T1a、T1b)を求めることができる。表2(a)−(g)に、具体的演算例を示す。
さらに、より簡易的に図7(a)、(b)に示すパターン化したゾーン分けとすることもできる。この場合も、設定温度変更値の演算については表2と同様の方法により行うことができる。
さらに本発明の他の実施形態について説明する。
図8を参照して、本実施形態の構成が上述の空調制御システム1と異なる点は、温度センサの配設位置である。すなわち、空調制御システム1の温度センサSiがラック2の吸気面側に配設されているのに対して、本実施形態の温度センサS'iは、ラック2の排気面近傍に配設されていることである。また、制御部10のデータ格納部10aは、温度センサS'iから送られる温度情報を格納するように構成されている。また、メモリ部10cには、後述する設定温度変更の要否を判定する閾値(α)、及び設定温度変更値(β)が格納されている。その他の構成については空調制御システム1と同一であるので、重複説明を省略する。
次に、図9、10を参照して、本実施形態における空調機4A,4Bの設定温度変更制御について説明する。空調機4A,4Bは、ともに吹き出し温度制御により運転される。初期状態において、吹き出し温度設定値(以下、設定温度という)は、Ta(0)、Tb(0)に設定されている(S201)。
制御中は、所定の時間t(j)(j=0、1,2、・・・)ごと(例えば30secごと)に、温度センサS’i(i=1−n)によりラック排気温度T'i(j)が計測され、データ格納部10aに取り込まれる(S202)。以下、時刻t(j)における計測が行われる段階を想定して説明する。
閾値αを逸脱するセンサS'k(k=1−m))が存在するときは(S204においてYES)、逸脱度が最大のセンサについて各空調機の空調寄与率Ea(k)、Eb(k)が、上述の(1a)、(1b)式により演算される。
ΔTa(k)=β・Ea(k) ・・・・(5a)
ΔTb(k)=β・Eb(k) ・・・・(5b)
空調機4A,4Bの新たな設定温度Ta(j)、Tb(j)を次式により演算し、各空調機に変更指示する(S206)。
Ta(j)=Ta(t(j-1))−Max(ΔTa(k)) ・・・・(6a)
Tb(j)=Tb(t(j-1))−Max(ΔTb(k)) ・・・・(6b)
変更後の設定温度により一定時間運転し、その後、次の計測タイミング(t(j+1))に移行する(S207)。
さらに本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は、設定温度を上げる場合の形態に関する。本実施形態の構成は、第一の実施形態に係る空調制御システム1と同一であるので、重複説明を省略する。
次に、図11を参照して、空調機4Aを例に設定温度変更する場合の制御について説明する。本実施形態では、設定温度Ta(0)の状態から設定温度を単位温度β(例えば0.5℃)上げることを計画する場合を想定している(S301)。
まず、温度センサSi(i=1−n)によりラック吸気温度Tiが計測される(S302)。次に、空調寄与率Ea(i)を考慮して、空調機4Aの設定温度をβ℃上げたと仮定したときの各センサ位置の予測温度Ti’が(7a)式により演算される(S303)。
Ti’=Ti+β・Ea(i) ・・・・(7a)
さらに、上式で求めた全てのTi’について、余裕度γ(例えば1℃)として、
Ti’+γ≦Tmの条件を満たしているか否かが判定される(S304)。
この条件を満足している場合には、空調機4Aの設定温度がTa=Ta(0)+βに変更される(S305)。S304において、Ti’+γ>Tmのセンサ位置が存在する場合には、β=β−Δβ(Δβ:例えば0.1℃)に変更して、S302以下のフローが再度実施される。
以上のフローにより、吸気温度を許容上限温度以下に維持しつつ、各空調機について設定温度を可能な限り高めに設定でき、省エネ性の向上を図ることができる。
2・・・・サーバラック
3・・・・ラック列
4A,4B・・・・空調機
5・・・・情報通信機械室
6・・・・コールドアイル
7・・・・ホットアイル
10・・・・制御部
Claims (8)
- 複数の空調機により、室内に収容される複数のサーバラック内のICT装置を冷却する空調制御システムの運転制御方法であって、予め、
(a)いずれかの空調機の設定温度を変化させたときの、各サーバラック吸気面近傍(以下、基準点という)への影響度(以下、空調影響係数という)を、基準点ごとに設定し、
(b)前記空調影響係数を用いて、基準点の温度を単位温度変化させるとしたときの、各空調機の寄与率(以下、空調寄与率という)を基準点ごとに求めておき、
(c)運転時において、いずれかの基準点温度が吸気許容温度を超えている場合には、前記空調寄与率に基づいて空調機ごとに設定温度変更値を求めるものであり、かつ、
前記空調影響係数が、空調機吹き出し面と前記基準点間の直線距離である、
ことを特徴とする空調制御システムの運転制御方法。 - 請求項1において、前記(c)に替えて、
(d)運転時において、サーバラック排気温度を排気許容温度以下に維持するために、前記空調寄与率に基づいて空調機ごとに設定温度変更値を求めるものであり、かつ、
前記空調影響係数が、空調機吹き出し面と前記基準点間の直線距離である、
ことを特徴とする空調制御システムの運転制御方法。 - 請求項1又は2において、
前記空調影響係数が、空調機吹き出し面と前記基準点間の直線距離であることに替えて、
空調機吹き出し面と前記基準点間の直線距離に、空調機と前記基準点とのなす角度の余弦を乗じた数値であることを特徴とする空調制御システムの運転制御方法。 - 前記空調寄与率が、各空調機の前記空調影響係数の総和に対する、当該空調機の空調影響係数の比であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の空調制御システムの運転制御方法。
- 前記空調寄与率が、各空調機の前記空調影響係数の総和に対する当該空調機の空調影響係数の比に、当該空調機の空調影響係数を乗じた数値であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の空調制御システムの運転制御方法。
- 前記吸気許容温度又は前記排気許容温度を逸脱する前記基準点が複数存在する場合には、逸脱度が最大の前記基準点に対して、前記(c)又は前記(d)を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の空調制御システムの運転制御方法。
- いずれかの空調機が故障したときは、当該空調機の空調影響係数の値を変更することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の空調制御システムの運転制御方法。
- 請求項1乃至7のいずれかにおいて、
空調機ごとに求めた設定温度変更値に基づいて運転したときの前記基準点における実測温度を計測して、前記空調影響係数及び前記空調寄与率を、随時、更新することを特徴とする空調制御システムの運転制御方法。
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