以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態の自動二輪車用エアバッグ装置(以下、単にエアバッグ装置とする)Mは、図1,2に示すように、スクータ型の自動二輪車(以下、単に二輪車という)Bに搭載されるものである。二輪車Bは、図1,2に示すように、乗員Dの着座するシート10と、シート10の前方に配置されるハンドル8と、シート10の左右両側に配置されて乗員Dの足部Fを載せるステップ9,9と、を備える構成とされている。実施形態の二輪車Bでは、乗員Dは、シート10を跨ぐように着座して、左右のステップ9,9に足部Fを載せつつ、二輪車Bを運転することとなる。そして、実施形態の二輪車Bでは、エアバッグ装置Mは、図2に示すように、シート10の前側に隣接して、配設されている。具体的には、エアバッグ装置Mは、シート10に着座してステップ9,9に足部Fを載せるようにして開いている乗員Dの脚部L,L間付近の部位に、配設されている。また、二輪車Bにおけるシート10の前方(エアバッグ装置Mの前方)におけるハンドル8のグリップ8a,8a間の車体(ボディ1)側の部位には、後方に突出するようなカウル2が、配置されている(図1及び図3の二点鎖線参照)。このカウル2は、シート10の前方において、図示しないハンドルポストの後方を覆うボディ1側の部材であり、実施形態の二輪車Bでは、図示しない計器盤の下方において、左右の中央を後方に突出させるように、形成されている。
なお、本願の明細書等での前後左右の方向は、前進時の二輪車Bを基準としており、二輪車Bに着座した乗員Dの前後左右の方向と一致するものである。
エアバッグ装置Mは、図3,4に示すように、エアバッグ23と、エアバッグ23に膨張用ガスを供給するインフレーター18と、折り畳まれたエアバッグ23を収納して保持するとともにインフレーター18を保持するケース13と、膨張完了時のエアバッグ23の前面24c側を支持する支持部材59と、支持部材59とエアバッグ23との外周側を覆うエアバッグカバー68と、を備える構成とされている。なお、実施形態の場合、エアバッグ装置Mは、図2,3に示すように、シート10の前側であって、シート10に着座した乗員Dの脚部L間の部位において、エアバッグカバー68の後述する天井壁部73の部位を外部に露出させるようにして、二輪車Bに搭載されている。また、実施形態では、エアバッグ装置Mの左右の側方は、シート10によって覆われている(図1参照)。
ケース13は、図3に示すように、折り畳まれたエアバッグ23を収納する収納部位Pを構成するもので、実施形態の場合、上方を開口させた板金製の箱形状として、長方形板状の底壁部14と、底壁部14の外周縁付近から上方に延びる略四角筒形状の周壁部15と、を備えて構成されている。底壁部14には、インフレーター18の本体部18aを下方から挿入させる円形の開口14aが、形成されている。このケース13には、図示しない連結ブラケットが配設され、この連結ブラケットを、二輪車Bのボディ(車体)1側のフレーム4から延びるブラケット5に連結させることにより、ケース13が、ボディ1側に連結されている。また、ケース13の周壁部15において左右に配置される領域には、図示しない押えプレートを利用してケース13とエアバッグカバー68と連結させるための、図示しない突起部が、形成されている。さらに、ケース13における底壁部14には、周壁部15より後方に突出した部位の上面側に、エアバッグ23の後面における下部側に設けた規制ベルト50の先端(下端)50bを固定する固定杆16が、配設されている。
インフレーター18は、図3に示すように、上部側に複数のガス吐出口18bを備えた円柱状の本体部18aと、本体部18aの外周面から突出するフランジ部18cと、を備えて構成され、フランジ部18cが、エアバッグ23の流入用開口25a周縁をケース13に取り付けるためのリテーナ19を利用して、ケース13の底壁部14の下面側に固定されている。
リテーナ19は、図3,5に示すように、四隅にボルト19aを備えた略四角環状とされるもので、エアバッグ23の後述するバッグ本体24の内部において、流入用開口25aの周縁に、ボルト19aを突出させた状態で配置されている。そして、このバッグ本体24の流入用開口25aの周縁から突出しているボルト19aを、ケース13の底壁部14及びインフレーター18のフランジ部18cに貫通させて、ナット20止めすることにより、インフレーター18のフランジ部18cが、エアバッグ23とともに、ケース13の底壁部14に対して固定されている。
また、インフレーター18は、図示しないリード線によって、二輪車Bに搭載された図示しない制御回路に電気的に接続されている。そして、二輪車Bに衝撃が作用した際に、制御回路が、衝撃を検知した所定の検知センサからの信号を入力して、インフレーター18に作動信号を出力することとなる。
支持部材59は、チタン等の軽量な金属製として、図3,4に示すように、エアバッグ23の前方となるケース13の前方に、配設されている。実施形態の場合、支持部材59は、上下方向に延びる1本の四角筒形状の縦材部60(縦杆部)と、縦材部60の上端60aで左右方向に延びる横材部61(横杆部)と、を備えて構成されている。横材部61は、縦材部60の上下方向に延びた軸心VCDと直交する方向に沿って左右に延びるように構成されている。縦材部60は、摺動しつつ上昇移動可能に、ケース13の前方に配置される案内部材65に、保持されている。また、横材部61は、円筒状のパイプ材から形成されて、図3に示すように、左右方向に延びる軸心LCDを、縦材部60の軸心VCDより若干後方にオフセットさせるようにして、左右の中央付近を、縦材部60の上端60aに固着されている。すなわち、横材部61は、図4に示すように、縦材部60の上端60aに結合される中央部61cと、中央部61cから左右両側に延びる左右対称形の左側部61a,右側部61bと、を備えて構成されている。左側部61aと右側部61bとには、前面側に、前後方向に貫通するねじ孔からなる締結孔63が、形成されている。各締結孔63には、エアバッグ23における連結ベルト39の先端45を横材部61の左側部61aと右側部61bとに固着させるためのボルト48が、締結されることとなる。
なお、支持部材59の縦材部60と横材部61とには、強度を確保できる範囲で、一層の軽量化を図れるように、適宜、複数の肉盗み孔を設けてもよい。また、案内部材65は、図3,4に示すように、支持部材59の縦材部60を挿通可能に、断面略四角形状に開口した挿通路65aを上下に貫通させて構成されるもので、この挿通路65aの領域に図示しないベアリングを配置させて、縦材部60を、上下に円滑に摺動可能に保持させる構成とされている。この案内部材65は、図示しない連結ブラケット等を利用して、ボディ1側のフレーム4から延びるブラケット6や、ケース13の周壁部15に、固定されている。
また、支持部材59は、左右方向の幅寸法を、収納位置WPから、乗員Dの左右の脚部L間を経て、上方に突出可能に、設定されている。また、支持部材59は、図12に示すように、上方への突出を完了させた位置、すなわち、エアバッグ23を支持可能な支持位置(引き上げ完了位置)SPに配置された状態で、上端59a側に位置する横材部61と縦材部60の上端60a側の領域とにより、膨張を完了させたエアバッグ23(バッグ本体24)の上部24aの前面側を支持でき、かつ、後面59bを、エアバッグ23(バッグ本体24)によって覆われるように、構成されている。なお、支持部材59には、支持位置SPに配置された際の位置決め用に、フレーム4や案内部材65等に当接して位置規制される図示しないストッパが、配設されている。
エアバッグ23は、折り畳まれてケース13内に収納されるもので、実施形態の場合、図5に示すように、内部に膨張用ガスを流入させて膨張する袋状のバッグ本体24と、支持部材59を引き上げるための連結ベルト39と、バッグ本体24の後面24d側の下部に配置される規制ベルト50と、を備えて構成されている。実施形態の場合、折り畳まれたエアバッグ23(折り完了体82)は、図3に示すように、上面82aを、ケース13の周壁部15より上方に位置させるようにして、ケース13内に収納されている。また、実施形態の場合、ケース13内に収納される折り完了体82は、上面82aを、収納位置WPの支持部材59よりも上方に位置させている。
バッグ本体24は、図5に示すように、略正方形状の底壁部25と、底壁部25の外周縁から上方に延びる略四角筒形状の周壁部26と、底壁部25の上方で底壁部25と対向して配置される天井壁部29と、から構成されている。周壁部26は、バッグ本体24の前面24c側を構成する前壁部27と、バッグ本体24の後面24d側を構成する後壁部28と、から構成されている。前壁部27と後壁部28とは、左右両縁で相互に結合(縫着)されて、周壁部26を構成している。また、天井壁部29は、外周縁を、前壁部27及び後壁部28の上縁に結合(縫着)されている。そして、バッグ本体24は、具体的に説明すれば、膨張完了時における前方側から見た外形形状を、下部24b側より上部24a側の左右方向の幅寸法を大きくした上広がりの略台形形状とするとともに(図4の二点鎖線参照)、膨張完了時における側方から見た外形形状を、下部24b側から上部24a側に向かうにつれて、前後方向の厚さ寸法を増大させるようなテーパ形状として(図12参照)、構成されている。そして、バッグ本体24は、膨張完了時の後面24d側を、乗員Dの上半身を受け止める拘束面37としている。
また、実施形態の場合、バッグ本体24は、外周壁を構成するアウタバッグとしての二次膨張バッグ部35と、二次膨張バッグ部35内に配置されるインナバッグとしての一次膨張バッグ部31と、を備えて構成されている。一次膨張バッグ部31と二次膨張バッグ部35とは、底壁部25を共用するように、底壁部25の部位で相互に重ねられている。また、一次膨張バッグ部31は、底壁部25から延びる前壁部31cを、二次膨張バッグ部35の外周壁36の前壁部、すなわち、バッグ本体24の前壁部27、に、結合させて配設されている。実施形態の場合、前壁部31cと前壁部27との相互の結合部位27a,27aは、一次膨張バッグ部31の左右両縁付近で、上下方向に沿わせるように縫合して、形成されている。
バッグ本体24の底壁部25には、膨張用ガスを流入させるための円形の流入用開口25aが形成されており、流入用開口25aの周縁には、リテーナ19の各ボルト19aを挿通させるための取付孔25b(図6参照)が、形成されている。そして、この流入用開口25aの周縁は、上述したごとく、リテーナ19に押えられて、ケース13の底壁部14に取り付けられることとなる(図3参照)。
実施形態のエアバッグ装置Mでは、バッグ本体24における一次膨張バッグ部31が、支持部材59を引き上げるための駆動源を構成している。一次膨張バッグ部31は、流入用開口25aと取付孔25bとを有した底壁部31aと、底壁部31aの外周縁から上方に延びる周壁部31bと、から構成されている。周壁部31bは、左右両縁と上縁とを相互に結合させた前壁部31cと後壁部31dとから構成されている。この一次膨張バッグ部31は、上述したごとく、前壁部31cの領域を、上下の略全域にわたって、二次膨張バッグ部35の前壁部(バッグ本体24の前壁部27)に結合されるとともに、膨張完了時の高さ寸法を、二次膨張バッグ部35(バッグ本体24)より若干小さくして、構成されている。また、一次膨張バッグ部31の後壁部31dには、バッグ本体24の膨張完了時において、一次膨張バッグ部31の上端から下方に下がった左右方向の中央となる位置に、供給口33が、円形に開口して形成されている。この供給口33は、図11,12に示すように、一次膨張バッグ部31内に流入した膨張用ガスを、二次膨張バッグ部35内に流出させる部位である。そして、この一次膨張バッグ部31では、供給口33の上方の領域が、支持部材59を引き上げるために膨張用ガスを貯留させるガス溜り部34を、形成している。
連結ベルト39は、バッグ本体24における前面24cの左右方向の中央の上端側となる天井壁部29の左右方向の中央の前縁29aに、元部端40を連結されている。この連結ベルト39は、バッグ本体24に結合される略正方形板状の元部端40と、元部端40から左右方向に広がりつつ先端側に延びる略台形板状の中間部41と、中間部41から左右に二又状に延びる先端側部位42と、を備えて構成されている。元部端40は、天井壁部29の外表面側の前縁29aに、縫合により、結合されている。先端側部位42は、二股に分かれる分岐部43と、横材部61に固着される二つの先端45,45と、を備え、左右に配置される各先端45には、ボルト48を挿通させる取付孔45aが、左右方向の中央付近に、それぞれ、形成されている。そして、実施形態の場合、連結ベルト39は、各分岐部43を、支持部材59の横材部61の外周面62における後面側に配置させ、分岐部43と先端45との間の部位である巻き付け部44を、横材部61の下面の外周側を覆うように配置させて、横材部61の前面に配置される先端45を、板金製の当て板47とボルト48とを使用して横材部61に固定させることにより、横材部61の周囲に巻き付けられるようにして、配置されることとなる。この連結ベルト39は、全体の長さ寸法を、一次膨張バッグ部31の膨張に伴って、支持部材59を支持位置SPまで引き上げ可能な寸法に、設定されている。
規制ベルト50は、バッグ本体24の後面24dにおいて左右方向の中央の下端付近に、元部端50aを連結させている。この規制ベルト50は、図3に示すように、先端(下端)50b側を、ケース13の固定杆16に連結させており、バッグ本体24の膨張完了後、後面24d側の拘束面37によって前進移動する乗員Dの上半身Uを受け止めた際、バッグ本体24の流入用開口25aの周縁の後縁側が、捲れるように前進移動して、破損しないように、拘束面37の上方移動を規制するための部材である。
実施形態のエアバッグ23は、図6に示すように、バッグ本体24を構成する第1基布52,第2基布53,第3基布54、連結ベルト用基布55、及び、規制ベルト用基布56、から、構成されている。これらの第1基布52,第2基布53,第3基布54,連結ベルト用基布55,規制ベルト用基布56は、可撓性を有したポリアミド糸やポリエステル糸等からなる織布から、形成されている。第1基布52は、アウタバッグとしての二次膨張バッグ部35の底壁部25、前壁部27、及び、後壁部28を、形成するもので、底壁部25から前後両側に延びるように前壁部27と後壁部28とを配設させて、外形形状を略鼓形状として、構成されている。第2基布53は、外形形状を略楕円形状として、二次膨張バッグ部35の天井壁部29を形成している。第3基布54は、インナバッグとしての一次膨張バッグ部31を形成するもので、底壁部31aから前後両側に延びるように前壁部31cと後壁部31dとを配設させて、外形形状を帯状として構成されている。なお、第1基布52や第3基布54の流入用開口25aの周縁には、補強のための円環状の補強布(図符号省略)を設けてもよい。連結ベルト39は、連結ベルト用基布55を二枚重ねとして、縫合して形成されている。規制ベルト50は、規制ベルト用基布56を二つ折りして、形成されている。
エアバッグカバー68は、折り畳まれたエアバッグ23を収納する収納部位Pを構成するもので、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等の合成樹脂製とされている。実施形態の場合、エアバッグカバー68は、支持部材59と折り畳まれたエアバッグ23(折り完了体82)との側方から上方にかけてを略全面にわたって覆うように、下面側を開口させた略直方体形状として、構成され、図2,3に示すように、上面側を露出させるようにして、二輪車Bに搭載されている。エアバッグカバー68は、図7〜10に示すように、支持部材59と折り畳まれたエアバッグ23を収納させたケース13との側方を覆う略四角筒形状の周壁部69と、周壁部69の上方の開口を塞ぐように配設される略長方形板状の天井壁部73と、を備えている。実施形態の場合、周壁部69の下端付近には、前後に突出する取付片部70,71が、形成されている。この取付片部70,71は、フレーム4から延びるブラケット5,6にボルト止めされる部位であり、エアバッグカバー68は、この取付片部70,71をブラケット5,6に固定させることにより、ボディ1側に連結されている。周壁部69の下端付近における左右方向側の部位には、略四角形状の開口69aが、形成されている(図7,9,10参照)。この開口69aは、ケース13の周壁部15に形成される図示しない突起部を貫通させるためのもので、周壁部69は、図示しない押えプレートを利用してケース13と連結されている。また、実施形態の場合、天井壁部73は、図3に示すように、隣接されるシート10から連ならせるように、側方から見て、前下がりに傾斜して形成されている。
天井壁部73には、エアバッグ23の展開膨張時に開く扉部76が、形成されている。扉部76は、支持部材59と折り畳まれたエアバッグ23との上方を覆う構成とされて、支持部材59の前方に位置する前縁76a側を開き時の回転中心となるヒンジ部75として、残りの周縁に、エアバッグ23に押されて破断可能な破断予定部74を、図8〜10に示すように、天井壁部73を裏面(下面)側から連続的に切り欠くようにして、配設させて、開き時に、後縁76b側を前方に向けるように、前開きで開く構成とされている。この扉部76は、外形形状を、開き時に、支持部材59とエアバッグ23とを突出可能な開口を形成可能な大きさに、設定されるとともに、前後方向の長さ寸法を、開いた際に、シート10の前方に配置されるボディ1側のカウル2に当接可能な寸法に、設定されている。詳細に説明すれば、実施形態の場合、扉部76において、開き前の状態で折り畳まれたエアバッグ23の上方を覆っている後側の部位が、開き時に、カウル2に当接することとなる(図11のB参照)。
詳細には、エアバッグカバー68の天井壁部73において、扉部76の前後方向の長さ寸法と、前縁76a側のヒンジ部75の配置位置と、は、扉部76の開き時において、カウル2と当接した際の開き角度θ(周囲の天井壁部63との交差角度、図11のB参照)を、90〜180°程度(望ましくは、100〜140°程度)の範囲内とするような長さ寸法及び配置位置に、設定されている。実施形態の場合、扉部76の開き角度θは、110°に設定されている。
また、実施形態の場合、扉部76は、図8〜10に示すように、略長方形板状の扉本体77と、開き前の扉本体77から下方に向かって延びる複数のリブ78と、を備えている。扉本体77は、側方から見て前下がりに傾斜するとともに、長手方向を前後方向に略沿わせた略長方形板状とされている。リブ78は、開き時の扉本体77において、カウル2と当接する部位に配設されるもので、扉本体77の強度を補強する補強部を、構成している。詳細には、リブ78は、扉本体77において、折り畳まれたエアバッグ23の上方を覆っている後側部位77bに、形成されている。実施形態の場合、リブ78は、前後方向に沿った薄肉の板状とされるとともに左右方向に沿って複数並設される縦リブ79と、左右方向に沿った薄肉の板状とされるとともに前後方向に沿って複数並設される横リブ80とを交差させるようにして、下面側から見て略格子状に形成されている(図8参照)。また、リブ78(各縦リブ79,横リブ80)は、図3に示すように、折り畳まれたエアバッグ23(折り完了体82)の上方近傍となる位置まで、扉本体77から下方に延びるように、形成されている。すなわち、このリブ78は、扉本体77とエアバッグ23との間の隙間を埋めるスペーサを、兼用している。
また、実施形態の場合、リブ78(縦リブ79,横リブ80)は、図3に示すように、支持部材59の上方を覆う領域まで延びるとともに、下面78aを、水平方向に略沿わせるように構成されている。実施形態の場合、このリブ78(縦リブ79,横リブ80)は、前端側の領域において、扉本体77との間に段差を生じさせないように、前下がりに傾斜している扉本体77に対して、前方にかけて収束するように(扉本体77の下面77aに連ならせるように)、形成されている。すなわち、このリブ78(縦リブ79,横リブ80)の下面78aは、水平方向に沿った状態を維持されつつ、支持部材59の上方の領域において、扉本体77の下面77aからなだらかに連なるように、構成されている。そして、実施形態では、このリブ78(縦リブ79,横リブ80)の下面78aが、開き後の扉部76が支持部材59と干渉した際に、支持部材59に対して滑り可能な滑り面SFを、構成している。
次に、実施形態のエアバッグ装置Mの二輪車Bへの搭載について説明する。まず、エアバッグ23を製造する。第1基布52と第3基布54とに、予め、流入用開口25aと取付孔25bとを設け、さらに、予め形成しておいた連結ベルト39と規制ベルト50との元部端40,50aを、第2基布53や第1基布52の所定位置に縫着させておく。そして、第3基布54における一次膨張バッグ部31の前壁部31cを、縫合により、第1基布52におけるバッグ本体24の内周面側となる二次膨張バッグ部35の前壁部27に、結合部位27a,27aを設けて結合させ、次いで、第3基布54における一次膨張バッグ部31の前壁部31cと後壁部31dとの外周縁相互を重ねて縫合し、一次膨張バッグ部31を形成しておく。
次いで、第2基布53の外周縁と、第1基布52における一次膨張バッグ部31の前壁部31c及び後壁部31dを構成する各部位の上縁と、を、縫合糸を用いて結合させ、第1基布52における残りの縁部を、縫合糸を用いて結合させる。その後、縫合代がバッグ本体24の外周側に露出しないように、二次膨張バッグ部35の流入用開口25aを利用して、一次膨張バッグ部31を内部に入れながら、二次膨張バッグ部35を反転させれば、エアバッグ23を製造することができる。
その後、エアバッグ23の内部に、ボルト19aを取付孔25bから外部に突出させるようにして、リテーナ19を挿入した状態で、エアバッグ23を折り畳む。詳細には、エアバッグ23を、ケース13内に収納可能に、前後左右の幅を縮めるように、折り畳み、折り完了体82を形成する。折り完了体82は、折り崩れしないように、破断可能な図示しないラッピング材で包んでおく。なお、連結ベルト39や規制ベルト50は、先端45,50b側を、ラッピング材から突出させるとともに、リテーナ19の各ボルト19aも、ラッピング材から突出させておく。また、エアバッグ23の流入用開口25aも、インフレーター18の本体部18aを挿入可能なように、開口させておく。
そして、折り畳んだエアバッグ23(折り完了体82)を、各ボルト19aを底壁部14から突出させるようにして、ケース13内に収納させる。その後、各ボルト19aをフランジ部18cから突出させるようにして、ケース13の底壁部14の下方から、インフレーター18の本体部18aを、開口14a,流入用開口25aに挿入させ、フランジ部18cから突出している各ボルト19aにナット20を締結させて、エアバッグ23とインフレーター18とをケース13に取り付ける。次いで、規制ベルト50のループ状の下端(先端)50bを、固定杆16に連結させるとともに、ケース13を、図示しない連結ブラケットを利用して、ブラケット5に取り付け、ボディ1側に固定させる。また、連結ベルト39の左右の先端45を、案内部材65とともにフレーム4側に取り付け済みの支持部材59の横材部61における左側部61aと右側部61bとに、当て板47とボルト48とを用いて、連結させる。
その後、エアバッグカバー68を、支持部材59及び折り畳まれたエアバッグ23の上方から被せ、周壁部69の下端付近における左右方向側の部位を、図示しない押えプレートを利用してケース13に連結させる。同時に、周壁部69の前後両側に形成される取付片部70,71を、フレーム4から延びるブラケット5,6にボルト止めして、エアバッグカバー68を、ボディ1側に固定させる。そして、インフレーター18に、所定の作動信号を入力させるリード線を結線するとともに、シート10を装着すれば、エアバッグ装置Mを二輪車Bに搭載することができる。
実施形態のエアバッグ装置Mでは、二輪車Bが走行時に四輪自動車等と衝突して、インフレーター18が作動すれば、インフレーター18のガス吐出口18bから吐出された膨張用ガスを内部に流入させて膨張するエアバッグ23(バッグ本体24)が、図11のAに示すように、エアバッグカバー68の扉部76を押し開き、シート10に着座した乗員Dの左右の脚部L間の収納部位Pから上方側へ展開膨張して、前方側へ移動する乗員Dの上半身Uを拘束可能に、膨張を完了させることとなる(図12参照)。また、エアバッグ23の上方への突出に伴って、支持部材59も上昇移動することとなり(図11のB参照)、エアバッグ23の膨張完了時には、支持位置SPまで上昇移動した支持部材59が、エアバッグ23の前面24c側を支持することとなる(図12参照)。
詳細に説明すれば、実施形態のエアバッグ装置Mでは、インフレーター18から吐出される膨張用ガスは、まず、一次膨張バッグ部31内に流入することとなり、図11のAに示すように、一次膨張バッグ部31が内部に膨張用ガスGを流入させて膨張して、エアバッグカバー68の扉部76を押し開くこととなる。そして、一次膨張バッグ部31が、扉部76が開いて形成された開口から上方に向かって突出し、このとき、支持部材59も、図11のBに示すように、上方に突出する一次膨張バッグ部31により上方に引き上げられて、扉部76が開いて形成された開口から上昇移動することとなる。この一次膨張バッグ部31は、供給口33の上方の領域のガス溜り部34(図5,11のB参照)を上昇移動させるように、上方へ突出し、支持部材59を支持位置SPまで引き上げることとなる。そして、支持部材59を支持位置SPまで引き上げた後には、一次膨張バッグ部31の供給口33から多量の膨張用ガスGが二次膨張バッグ部35内へ流入し、二次膨張バッグ部35が、後方へ大きく膨らむように膨張して、図12に示すように、エアバッグ23(バッグ本体24)が膨張を完了させることとなる。
そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、合成樹脂製のエアバッグカバー68が、支持部材59とエアバッグ23の上方を覆うとともに、エアバッグ23の展開膨張時に、周囲に形成される破断予定部74を破断させつつ、支持部材59の前方に配置される前縁76a側のヒンジ部75を回転中心として、後縁76b側を前方に向けるように開く扉部76を、備える構成であるものの、この扉部76は、開き時に、シート10の前方における二輪車Bの車体(ボディ1)側の部材であるカウル2に当接可能に構成されている。すなわち、実施形態のエアバッグ装置Mでは、扉部76が、図11のB及び図12に示すように、シート10の前方に配置されるカウル2に当たって開きを止められることから、支持部材59から折り畳まれたエアバッグ23にかけての前後に広い範囲を覆う構成であっても、エアバッグ23の突出後に、過度に開くことを抑制でき、ヒンジ部75の部位で、エアバッグカバー68の他の部位(天井壁部73)から分断されることを的確に抑制できる。また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、扉部76におけるカウル2と当接する部位に、補強部(リブ78)が配設されて、カウル2と当接する部位(後側部位77b)の強度を向上させた構成とされていることから、扉部76が、カウル2と当たって破損することも抑制できる。
したがって、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグ23の突出時に、前後に広い領域を覆う扉部76を前開きで開かせる構成であっても、開き時の飛散を抑制し、かつ、円滑に扉部76を開かせることができる。
また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、扉部76が、扉本体77と、開き前の扉本体77から下方に向かって延びる複数のリブ78と、を備え、このリブ78が、補強部を構成するとともに、折り畳まれたエアバッグ23と扉本体77との間の隙間を埋めるスペーサを兼用している。そのため、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグ23の展開膨張時に、膨張するエアバッグ23(バッグ本体24)がリブ78の部位を押し上げるようにして、扉部76を開かせることとなり、膨張するエアバッグ23により扉部76(扉本体77)を迅速に押し開くことができる。勿論、このような点を考慮しなければ、扉部に形成される補強部を、下方に突出するリブから構成しなくともよく、例えば、扉部におけるカウルの当たる領域に、補強部として、板金素材を固着させるような構成としてもよい。
さらに、実施形態のエアバッグ装置Mでは、扉部76に形成されるリブ78が、開き前の状態において、支持部材59の上方を覆う領域まで延びるように形成されるとともに、支持部材59の上方を覆う部位からスペーサの兼用部位(折り畳まれたエアバッグ23の上方に配置される領域)まで、なだらかに連なるような滑り面SFを、有している。詳細に説明すれば、実施形態の場合、リブ78が、縦リブ79と横リブ80とを有して、下面側から見て略格子状に形成されるとともに、下面78aを水平方向に沿わせて、前後方向に対して前下がりで傾斜している扉本体77の前方にかけて収束するように、形成されており、このリブ78の下面78aが、滑り面SFを構成している。そのため、実施形態のエアバッグ装置Mでは、仮に、支持部材59の上昇移動開始が遅れて、図13のAに示すように、一旦開いた扉部76が、カウル2に当たった後にリバウンドして、上昇移動する支持部材59の上方に被るように、支持部材59に干渉する場合があっても、支持部材59が、リブ78と扉本体77との境界部位に引っ掛かって上昇移動を阻害されることを抑制でき、リブ78に形成される滑り面SF(下面78a)に沿って、扉部76を前方移動させつつ、上昇移動することとなって、支持部材59を円滑に上昇移動させることができる(図13のB,C参照)。なお、実施形態では、リブ78は、前端側において扉本体77との間に段差を生じさせないように、扉本体77の前方にかけて収束するように、形成されているが、リブとして、支持部材の上方を覆う領域を備える構成であれば、扉部の開き前の状態において、支持部材の前方となる位置に配置される前端と扉本体との間に段差を有する構成としてもよい。また、勿論、このような点を考慮しなければ、リブを、支持部材の上方を覆う領域まで延設させず、折り畳まれたエアバッグの上方を覆う領域のみに、配設させる構成としてもよい。
なお、実施形態では、リブ78が、薄肉状の複数の縦リブと薄肉状の複数の横リブとを交差させた略格子状として、形成されているが、リブの外形形状は、実施形態に限られるものではない。例えば、リブを、前後方向に沿うとともに左右方向側で多数並設される縦リブのみからなる構成としてもよい。また、相互の離隔距離を、支持部材を進入させないような寸法に設定したり、下端側に水平方向に沿って突出するとともに横リブ間の隙間を埋めるようなフランジを配置させる構成とすれば、左右方向に沿うとともに、前後方向側で多数並設される横リブのみから、リブを構成してもよい。
また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、支持部材59を引き上げる駆動源が、エアバッグ23(バッグ本体24)の一次膨張バッグ部31から構成されているが、支持部材を引き上げる駆動源として、エアバッグ及び支持部材と別体の駆動機構を、配置させる構成としてもよい。なお、支持部材を引き上げるための駆動機構を別途配置させる場合、支持部材が上昇移動時に扉部と干渉することを抑制するために、支持部材の上昇移動開始を、エアバッグの膨張開始よりも遅らせるように、駆動を制御する構成のものを使用することが望ましい。
なお、実施形態では、支持部材59として、縦材部60と縦材部60の上端から左右に延びる横材部61とを有して前方から見た外形形状を略T字形状としたものを使用しているが、支持部材の外形形状は実施形態に限られるものではなく、支持部材として、前方から見て略逆U字形状とされるものや、平板状のものを、使用してもよい。
また、実施形態では、エアバッグ装置Mを、スクータ型の二輪車Bに搭載した場合を示したが、他のスポーツバイクタイプ等の自動二輪車に、本発明のエアバッグ装置を搭載してもよい。