JP5494121B2 - 還元鉄の製造方法 - Google Patents
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Description
また、特許文献2には、回転床炉に装入する塊成化物の強度及び還元性を高めるため、塊成化物を構成する粒子の粒度分布について、(累積篩下30%比率粒径)/(累積篩下70%比率粒径)が1/3以下となるように粒度調整する還元鉄の製造方法が開示されている。
確かに塊成化物の強度及び還元性を高めることは重要ではあるが、この特許文献2に記載のものは、還元材を含め、配合する原料のメディアン粒径が62μmや110μmの条件で調べられており、工業的にこのようなレベルまで原料を破砕して粒度調整するには相当大きなエネルギーが必要となるため、還元鉄製造工程の経済性の観点で課題が非常に大きい。しかも、還元材として使用される石炭の場合、このような粒径にまで微破砕するには粉塵爆発対策も必要になってくるという問題もある。
原料となる製鉄プロセスで発生する製鉄ダストの粒度分布は、破砕後、1000μmから0.5μm程度までの粒径で構成されている。一方、還元材として利用される石炭は破砕しにくく、破砕後、1000μmから10μm程度までの粒径で構成され、製鉄ダストよりもやや粗い構成である、という特徴を有する。
この両者を配合して成形した塊成化物を得て、還元処理することが一般に行われているが、この方法に対して、反応速度をさらに高める改良に着目して検討を進めた。
その結果、還元材に使用する炭材については、その比表面積が大きくなると、粒子の表面の凹凸が増し、その凹みに製鉄ダストの微粒子が埋まり、凹み部分が反応に有効に寄与する一方、表面積が大きすぎると、凹みが小さくなりすぎて、製鉄ダストの微粒子が入り込まなくなり、還元速度が増加しにくいという知見を得た。
この場合において、前記樹脂を主体とする使用済み製品は、廃タイヤ、廃ベルト、廃ゴムの1種または2種以上を含んでいるものとすることができる。
具体的に説明すると、還元鉄の製造するに際しては、まず原料となる製鉄プロセスで発生する製鉄ダストや鉄鉱石などの酸化鉄原料と、還元材である石炭や乾留物等の炭材とをそれぞれ別々のサイロに貯蔵しておき、各サイロから一定速度で供給される前記酸化鉄原料と炭材とを破砕、混合する破砕混合工程を行う。破砕混合工程の後、該工程で生成された混合物に水分含有率調整及びバインダー添加を行って混練する混練工程を行い、さらに、該混練工程後の混合物を塊成化して塊成化物を成形する塊成化工程を行う。そして、成形された塊成化物をさらに乾燥させて含有する水分を1%未満にする乾燥工程を経た後、この乾燥した塊成化物を、回転炉床を有する還元炉に投入して還元し還元鉄とする還元処理工程を行うことにより、還元鉄が製造される。
なお、ここで製造された還元鉄の一部は、次工程の冷鉄源溶解炉操業に送られ、冷鉄源溶解炉において石炭や酸素を吹き込まれて溶解され、溶銑の製造に供される。
また、前記混錬工程は、ミックスマラー等の混練機によって行われるが、湿式で塊成化物成形する際には、水分の最適化や適切なバインダーの添加が肝要となるため、この水分調整やバインダーの混錬のために、混錬工程は非常に重要な工程となる。
また、前記乾燥工程においては、湿式成形された塊成化物がそのまま還元炉内に入ると水分の蒸発に伴う熱ロスや亀裂発生に伴う塊成化物回収歩留まり低下などの問題を発生させる可能性があるため、これを防止するために行うもので、上述のように、塊成化物中の水分含有量を1%未満にまで低下させる。
さらに、還元処理工程においては、乾燥させた塊成化物を、回転炉床炉を用いて、約1200〜1300℃の雰囲気温度条件で、約20分弱の処理時間で還元させ、これにより還元鉄を得る。
一方、酸化鉄材料の還元に必要となる還元材としては、石炭や樹脂を主体とする使用済み製品を乾留して得られる炭素主体の粒子が使用される。
具体的には、比表面積が、2(m2/g)、38(m2/g)、1100(m2/g)という3水準の炭材を用いて、酸化鉄の還元実験を行ったところ、図2のように、比表面積が38(m2/g)の炭材が、より低温から大きな還元反応が始まることがわかった。
これは、前述の炭材粒子の表面の凹凸が増すと共に、その凹みに製鉄ダストの微粒子が埋まったため、この凹み部分が反応に有効に寄与し、還元速度が増加したためだと考えられる。
一方、1100(m2/g)の炭材のように、比表面積が大きすぎると、凹みが小さくなりすぎて、該凹みに製鉄ダストの微粒子が入り込まなくなるため、凹み部分による還元速度の増加への影響が小さかったものと考えられる。
具体的には、まず吸着物の無い状態の試料重量を計り、次に、試料表面に窒素ガスが吸着していく過程を圧力の変化に対する吸着量の変化を求め、この結果から試料表面にだけ吸着したガス分子吸着量をBET吸着等温式より求めた。窒素分子は吸着占有面積がわかっているので、ガス吸着量より試料の表面積を算出することが可能となる。
炭材の比表面積の範囲を10〜300(m2/g)としたのは、上述のように、300(m2/g)超になると、表面の凹みが小さくなりすぎて、製鉄ダストの微粒子が入り込みづらくなり、この凹み部分による還元速度の増加へ寄与が小さくなる一方、10(m2/g)未満となると、表面の凹凸が少なく、製鉄ダストの微粒子が入り込む凹み自体が少なくなるため、還元速度の増加への影響が小さくなるためである。
そのため、このようなトラブルの発生を防止しうる程度の強度を確保する上では、還元材に比表面積が10(m2/g)未満の炭材も混合して使用して、塊成化物の空隙を可及的に少なくすることによって、還元鉄(還元後の塊成化物)の強度を確保することが適切であることを見出した。
したがって、還元材としては、比表面積が10〜300(m2/g)の第1の炭材と、比表面積が10(m2/g)未満の第2の炭材の両方を使用することが必要である。
なお、炭材の比表面積については0となることはないため、使用する第2の炭材の比表面積は0を含まないことは当然である。
第1の炭材を使用する質量比率を還元材の全使用質量の5%〜50%の範囲としたのは、第1の炭材の質量比率が還元材の全使用質量の5%未満である場合は、還元速度を向上させる働きの高い第1の炭材の量が少ないため高金属化率への寄与が小さく、一方で質量比率が50%超となると、塊成化物の空隙が多くなり還元後の塊成化物の強度が落ちて砕けやすくなるためである。
乾留の対象物である有機物としては、樹脂を主体とする使用済み製品であることが好ましく、例えば廃タイヤ、廃ベルト、廃ゴムが含まれ、これらを単体あるいは複数混合して乾留処理することができ、これにより比表面積の大きい第1の炭材を比較的容易に入手することが可能となる。
これらの製品の共通の特徴は、粒状のカーボンブラックを含有することである。カーボンブラックは一般に0.1μm以下の大きさの粒子であり、樹脂を主体とする使用済み製品内では微細なカーボンブラックが凝集した形態で存在していると考えられる。これを乾留すると、カーボンブラックの周りの樹脂が熱分解し、カーボンブラックが凝集した骨格を残しながら、表面に凹凸ある炭材(乾留炭化物)が形成され、炭材の比表面積を増大させると推定される。
還元実験に際しては、上述の実施の形態と同様の工程を実施した。即ち、製鉄プロセスで発生する製鉄ダストと種々の比表面積の炭材を原料として、ボールミルで破砕後、バインダーとしてコーンスターチを加えて、混錬、水分調整を行い、ブリケット方式で成型した塊成化物を製造し、乾燥工程で水分1%未満にしたのち、炉温1250℃の回転炉床炉で20分の還元処理を行った。
図3に使用した炭材の比表面積に対する還元速度指標(900℃における還元速度)との関係を示す。
また、図4に使用した炭材の比表面積に対する還元後の金属化率(全鉄分濃度に対する金属鉄分の比率)との関係を示す。
また、図4に示すように、炭材の比表面積が10(m2/g)〜300(m2/g)の範囲では、83%以上の高い金属化率を実現することができることがわかる。
この結果、還元速度及び高金属化率から勘案すると、還元材に使用する炭材の比表面積には最適な範囲があることがわかった。特に、炭材の比表面積が10(m2/g)〜300(m2/g)の範囲にある場合は、十分な還元速度及び高金属化率が得られることがわかった。
具体的には、還元材として、比表面積が50(m2/g)の第1の炭材と、2(m2/g)の第2の炭材とを混合して用い、実施例1と同様に還元処理を実施した。なお、第1の炭材については、還元材の全使用質量に対する質量比率を変更させて実験を行った。
図5に比表面積が50(m2/g)のものを使用した比率に対する還元後の金属化率との関係を示す。
また、図6に比表面積が50(m2/g)のものを使用した比率に対する還元後の還元鉄の強度との関係を示す。
その一方で、図6に示すように、第1の炭材を用いる比率を高めると、還元鉄(還元後の塊成化物)の圧潰強度が低下することがわかった。これにより、還元鉄の強度は、比表面積の大きな炭材を使う比率が影響することがわかった。なお、比表面積の大きな炭材を使うことによる還元鉄の強度の低下については、既に述べたように、塊成化物に比表面積の大きな炭材が多く使われるとおのずと空隙が多くなるため、還元後にその空隙が残って還元鉄を形成する構成粒子の接触部が減少し、全体として脆くなってしまうためであると考えられる。
この実験は、還元材として、比表面積が5、10、50、300(m2/g)である炭材と、比表面積が2(m2/g)の炭材とを混合して用い、還元鉄を還元処理工程の次の工程である冷鉄源溶解炉操業(図1参照)で溶解し、酸素原単位を調べた。
ここで冷鉄源溶解炉は、転炉を改造し、溶銑を炉内に残しながら、酸素と石炭とを吹き込んで、その燃焼熱で還元鉄などの冷鉄源を溶解し溶銑を製造するものである。酸素原単位は還元鉄の金属化率が高いほど、かつ、冷鉄源溶解炉内へ留まる率が高いほど、低下する傾向があり、還元鉄の品質を示す指標となる。
なお、冷鉄源溶解炉内へ留まる率が高いという意味は、還元鉄の強度が高く、溶解炉の上方から還元鉄が投入された場合、塊状のまま溶解炉内に落下するため、炉内ガスの上昇気流に打ち勝って炉内に留まることを示している。逆に、還元鉄の強度が低い場合には、溶解炉の上方から還元鉄が投入された際に、割れて小さな粒子が多いために炉内ガスの上昇気流に乗って炉外へ排出されるため、冷鉄源溶解炉内へ留まる率が低くなる。
この実験の結果を図7に示す。
これは、比表面積が10〜300(m2/g)の炭材の使用比率が50%以上であると、還元鉄の強度が低下して、次工程への持ち運び時に割れて還元鉄の小片が増し、溶解炉内への投入歩留まりが低下することや、還元鉄の小片が空気と触れて再酸化し、溶解炉内に投入時の還元鉄の金属化率が低下するためと考えられる。
また、比表面積が10〜300(m2/g)の炭材の使用比率が5%未満であれば、溶解炉の酸素原単位は、比表面積が2(m2/g)の炭材のみを使用した場合の酸素原単位に比べて大差無かった。この理由は、この程度の使用量では金属化率の向上効果が小さいためと考えられる。
さらに、比表面積が5(m2/g)のものを使用した場合には、比表面積が2(m2/g)の炭材のみを使用した場合と比較しても改善効果が小さいことが分かった。
したがって、比表面積が10〜300(m2/g)の炭材の場合、その混合比率が5%以上、50%以下であれば、搬送等に際して十分な程度の強度を有した還元鉄を得ることができることが実証された。
Claims (3)
- 粒度分布が1000μmから0.5μmの粒径で構成された酸化鉄原料と、その酸化鉄原料よりも粗く、粒度分布が1000μmから10μmの粒径で構成された還元材とを含む塊成化物を還元炉により還元して還元鉄を製造する方法であって、前記還元材として比表面積が10〜300(m2/g)の第1の炭材と比表面積が10(m2/g)未満の第2の炭材とを混合して使用し、第1の炭材を使用する質量比率を還元材の全使用質量の5%以上、50%以下とすることを特徴とする還元鉄の製造方法。
- 前記還元材の第1の炭材は、樹脂を主体とする使用済み製品を乾留して得られる炭素主体の粒子が含有されていることを特徴とする請求項1に記載の還元鉄の製造方法。
- 前記樹脂を主体とする使用済み製品は、廃タイヤ、廃ベルト、廃ゴムの1種または2種以上を含んでいることを特徴とする請求項2に記載の還元鉄の製造方法。
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