JP5493401B2 - セメント組成物の水和熱低減方法 - Google Patents

セメント組成物の水和熱低減方法 Download PDF

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Description

本発明は、セメント組成物の水和熱低減方法及びセメント組成物の製造方法に関する。
中庸熱ポルトランドセメントの水和熱は、JIS R 5210:2003に、材齢7日は290J/g以下、材齢28日は340J/g以下と規定されている。
セメントの水和熱は、セメントが水と反応して水和物を生成する際に発生する熱である。一般に、生成した水和物の量が多いほど、そのセメントによって調製されるモルタル及びコンクリートの強度は上昇するが、同時に水和熱も増大する。言い換えれば、モルタル及びコンクリートの強度発現性を向上しようとすれば、セメントの水和熱も増大するのが一般的な傾向である。
一方で、セメントユーザーからは、コンクリートの高耐久性を維持するために水和熱の小さいセメントが望まれている。また、同時にコンクリートの強度発現性の更なる向上も求められている。
セメントの水和熱を低減する方法としては、低熱ポルトランドセメントクリンカーのように主要鉱物組成を制御する方法(例えば、CS量及びCA量の低減)が知られている。しかし、この方法ではセメントの水和熱を低減することができるものの、セメントの強度発現性も低下してしまう(特許文献1及び非特許文献1)。例えば、特許文献1におけるセメント組成物は、従来の低発熱型混合セメント組成物よりも、特に材齢28日や91日の圧縮強度が低下している。
特開昭61−097154号公報
「セメントの常識」2004年版、社団法人セメント協会、p.11−17
セメント組成物の強度発現性を向上する他の手段としては、セメント組成物の粉末度(ブレーン比表面積)を細かくすること等が挙げられるが、この場合ではセメント組成物の水和熱が増大してしまう。
このように、セメント組成物においては、基本的な性状(主要化学組成、鉱物組成、粉末度、石膏形態・添加量等)を変えずに、コンクリートの強度発現性を維持しつつ水和熱を低減することのできる材料設計が求められている。しかしながら、そのような材料を得ることは困難であった。
そこで、本発明は、材齢7日、28日及び/又は91日といった中長期的なコンクリートの強度発現性を維持しつつ水和熱を低減することのできるセメント組成物の水和熱低減方法及びそのようなセメント組成物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、材齢7日、28日及び/又は91日の強度発現性を損なうことなく水和熱を低減するためには、塩化物イオンの含有量等を調整すればよいことを見出した。そして、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
本発明は、石灰石、高炉スラグ、石炭灰、焼却灰及び建設発生土からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む原料をプラスチックを含む燃料で焼成してセメントクリンカーを調製するロータリーキルンと、該ロータリーキルンで発生する塩素及び/又はアルカリを含む燃焼ガスの少なくとも一部を抽気する塩素バイパスと、上記セメントクリンカーと石膏とを混合して粉砕する粉砕機と、を備えるセメント製造装置を用いるセメント組成物の水和熱低減方法であって、上記セメント組成物における塩化物イオンの含有量に基づいて、上記セメントクリンカーの原料原単位、燃料原単位及び上記塩素バイパスにおける上記燃焼ガスの抽気量の少なくとも一つを調整する調整工程を有し、調整工程において、セメント組成物における塩化物イオンの含有量が0.002〜0.015質量%となるように、原料原単位、燃料原単位及び抽気量の少なくとも一つを調整し、セメント組成物における遊離石灰の含有量が0.46〜0.92質量%となるように原料原単位及び燃料原単位の少なくとも一方を調整し、セメント組成物におけるアルカリの含有量がROに換算して0.31〜0.50質量%となるように、原料原単位、燃料原単位及び抽気量の少なくとも一つを調整し、セメント組成物の鉱物組成は、CS量が33.5〜36.8質量%、CS量が42.4〜45.7質量%、CA量が3.6〜4.2質量%及びCAF量が9.7〜10.3質量%となるように原料原単位を調整し、塩素バイパスの抽気率は0.05〜10体積%であり、塩素バイパスにより抽気される燃焼ガスの温度は300〜1300℃であり、セメント組成物のブレーン比表面積は、3760〜4040cm/gである、塩化物イオン含有量の調整によるセメント組成物の水和熱低減方法を提供する。
本発明の水和熱低減方法によれば、上述の製造装置を用いて製造されるセメント組成物を、モルタル又はコンクリートを調製する際の原材料として使用することによって、強度発現性を維持しながら、硬化の際に発生する水和熱を低減することができる。
本発明のセメント組成物の水和熱低減方法では、上記調整工程において、(A)セメント組成物における塩化物イオンの含有量が0.002〜0.05質量%となるように、セメントクリンカーの原料原単位、燃料原単位及び上記抽気量の少なくとも一つを調整する。
本発明のセメント組成物の水和熱低減方法では、上記調整工程において、(B)セメント組成物における遊離石灰の含有量が0.40.92質量%となるように上記原料原単位及び上記燃料原単位の少なくとも一方を調整する。
本発明のセメント組成物の水和熱低減方法では、上記調整工程において、(C)セメント組成物におけるアルカリの含有量がRO(=NaO+0.658KO)に換算して0.3〜0.50質量%となるように、原料原単位、燃料原単位及び上記抽気量の少なくとも一つを調整する。
本発明のセメント組成物の水和熱低減方法では、上記調整工程において、(D)セメント組成物の鉱物組成は、CS量が33.536.8質量%、CS量が42.445.7質量%、CA量が3.64.2質量%及びCAF量が9.710.3質量%となるように原料原単位を調整する。
なお、CS、CS、CA、CAFは以下の鉱物相を示す。
S:エーライト(3CaO・SiO
S:ビーライト(2CaO・SiO
A:アルミネート(3CaO・Al
AF:フェライト(4CaO・Al・Fe
本発明のセメント組成物の水和熱低減方法では、上記調整工程におけるセメントクリンカーの原料原単位、燃料原単位及び塩素バイパスにおける燃焼ガスの抽気量の少なくとも一つを調整することによって、製造されるセメント組成物が上記(A)〜(D)の組成を備えるようにする。また、セメント組成物のブレーン比表面積は、3760〜4040cm /gである。これにより、中長期的なコンクリートの強度発現性を維持しつつ水和熱を十分に低減することができる。
また、本発明において燃料として使用するプラスチックは、全塩素含有量が10質量%以下であることが好ましく、本発明のセメント組成物の原料として使用する焼却灰は、全塩素含有量が20質量%以下であることが好ましい。
本発明により、材齢7日、28日及び/又は91日といった中長期的なコンクリートの強度発現性を維持しつつ水和熱を低減することのできるセメント組成物の水和熱低減方法及びそのようなセメント組成物の製造方法を提供することができる。
本発明のセメント組成物の水和熱低減方法で用いられるセメント製造装置の概略図である。 表2の「セメント組成物中の塩化物イオンの含有量」と表3の「セメント組成物の材齢28日の水和熱」との関係を示したグラフである。 表2の「セメント組成物中の遊離石灰の含有量」と表3の「セメント組成物の材齢28日の水和熱」との関係を示したグラフである。
本発明のセメント組成物の水和熱低減方法及び製造方法の好適な実施形態について、以下に詳細に説明する。
本実施形態のセメント組成物の水和熱低減方法は、セメント組成物における塩化物イオンの含有量に基づいて、セメントクリンカーの原料原単位、燃料原単位及び塩素バイパスにおける燃焼ガスの抽気量の少なくとも一つを調整する調整工程を有している。かかる調整工程を有する本実施形態のセメント組成物の水和熱低減方法は、図1に示すようなセメント製造装置1を用いて行うことができる。
セメント製造装置1は、石灰石、高炉スラグ、石炭灰、焼却灰及び建設発生土からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む原料とプラスチックを含む燃料を予熱するプレヒータ12と、プレヒータ12の下流側に設けられ、上記原料を焼成するロータリーキルン2と、ロータリーキルン2で発生する塩素及び/又はアルカリを含む燃焼ガスの一部を抽気する塩素バイパス5と、ロータリーキルン2で焼成して得られるセメントクリンカー及び石膏を混合して粉砕する粉砕機100と、を備える。以下、図1を参照しながら、本実施形態のセメント製造装置1を具体的に説明する。
セメントクリンカーの原料及び燃料(以下、併せて「原燃料」という。)としては、適正な塩素及び/又はアルカリを含むものを使用する。
塩素を含むセメントクリンカーの原燃料としては、原燃料は、塩素を多量に含むものが好ましく、例えば、廃プラスチック、都市ゴミ焼却灰及び建設発生土から選ばれる1種以上のものであることがより好ましい。廃プラスチックの全塩素含有量は、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜7.0質量%、更に好ましくは1.0〜5.0質量%である。都市ゴミ焼却灰の全塩素含有量は、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.2〜15質量%、更に好ましくは0.3〜13質量%、特に好ましくは0.3〜10質量%である。
また、燃料中の塩素量が少量であっても、原燃料の使用量が多く、原燃料全体として全塩素含有量が多くなるものを用いればセメント組成物の塩化物イオンの含有量を容易に調整することができる。かかる観点から、例えば、粘土、建設発生土、下水汚泥、焼却灰、石灰石、石炭灰及び高炉スラグから選ばれる1種以上を含む原料を用いることが好ましく、石灰石、石炭灰及び高炉スラグから選ばれる1種以上を含む原料を用いることがより好ましい。
上述の原燃料を、プレヒータ12における第三段サイクロン11Cと第四段サイクロン11Dを連通するダクト16に設けられた供給管17を通じてセメント製造装置1に供給する。セメント製造装置1は、仮焼炉8付きのニューサスペンションプレヒータ(NSP)を有しており、仮焼炉8から上方に向かって設置される4段のサイクロン11(下から上に向かって順に11A〜11Dとする)を有している。なお、第四段サイクロン11Dには、プレヒータ12内のガスを排気するための排気ファン13がダクト14を介して接続されている。
供給管17から、セメント製造装置1内に供給された原燃料は、プレヒータ12内で余熱される。具体的には、原燃料はサイクロン11及びライジングダクト7内を通過して、仮焼炉8に供給される。仮焼炉8には、仮焼炉8内に導入される原燃料を仮焼するための仮焼用バーナ9が設置されている。
サイクロン11の最下段に配置される第一段サイクロン11Aの下端部とインレット・フッド6との間には、第一段サイクロン11Aとインレット・フッド6とを連通するシュート18が接続されている。仮焼炉8で仮焼された仮焼原料は、第一段サイクロン11Aからシュート18及びロータリーキルン2の先端部に設けられたインレット・フッド6を通過してロータリーキルン2に導入される。
ロータリーキルン2内には、原燃料を燃焼させるための焼成用バーナ4が取り付けられており、原燃料を焼成することによってセメントクリンカーが生成する。焼成温度は、例えば1000〜1500℃、焼成帯の滞留時間は、例えば20分間〜2時間とすることができる。
ロータリーキルン2の基端部には、焼成によって生成したセメントクリンカーを冷却するためのクリンカークーラー3が設置されている。ロータリーキルン2で生成したセメントクリンカーは、クリンカークーラー3で冷却されてバケットエレベータ34によってコンベア35に搬送され、更にコンベア35によって粉砕機100のクリンカータンク36に供給される。
セメント製造装置1の塩素バイパス5は、ロータリーキルン2で発生した塩素及び/アルカリを含む燃焼ガスの少なくとも一部を抽気するためにインレット・フッド6に接続された抽気管23を有する。インレット・フッド6は、ライジングダクト7を介して仮焼炉8に接続されている。また、クリンカークーラー3と仮焼炉8とは、ダクト21によって連通しており、このダクト21によって、クリンカークーラー3内の排ガスが仮焼炉8に導入されるようになっている。
抽気管23には、抽気された燃焼ガスを冷却するために、ダクト24を介して冷却ファン26が接続されており、冷却ファン26から供給された冷却空気が、抽気管23内に供給されるようになっている。このとき、冷却空気によって抽気管23内の燃焼ガスは、塩素化合物の融点以下に冷却されるため、抽気された燃焼ガスのダストの表面に、揮発性の塩素化合物が凝集する。
抽気管23の後流側には、ダクト27、燃焼ガス冷却装置28、及びバッグフィルタ29が接続されている。燃焼ガス冷却装置28は、バッグフィルタ29に供給される燃焼ガスをバッグフィルタ29が耐えうる温度にまで冷却する。また、バッグフィルタ29は、抽気された燃焼ガスのダスト(塩素バイパスダスト)を集塵する。
バッグフィルタ29の排気口には、吸引ファン31が接続されている。この吸引ファン31を駆動させることにより、抽気管23、ダクト27、排ガス冷却装置28、及びバッグフィルタ29内のガスが吸引され、抽気管23からロータリーキルン2からの燃焼ガスの少なくとも一部が抽気される。吸引ファン31から送出されたガスは、管路32によってダクト21内に戻されて、仮焼炉8に供給される。
本実施形態のセメント組成物の水和熱低減方法では、セメント組成物の塩化物イオン含有量に基づいて、上述の構成を有する塩素バイパス5における燃焼ガスの抽気量を調整する。これによって、所望の塩化物イオン含有量を有するセメント組成物を製造することが可能となり、水和熱の低減とコンクリートの強度発現性の向上とを両立させることが可能なセメント組成物を提供することができる。
バッグフィルタ29によって集塵された塩素バイパスダストは、ダスト搬送用ダクト39を介して水洗処理施設38に接続されたダスト取込み部37に供給される。ダスト取込み部37に供給された塩素バイパスダクトは、ダスト搬送用ダクト39のバッグフィルタ29側に設けられたダスト搬送用ファン41からの送風によって、ダクト搬送ダクト39を通って水洗処理施設38に供給される。
粉砕機100は、セメントクリンカーと混合する石膏が供給される石膏ヤード43を有する。クリンカータンク36及び石膏ヤード43からそれぞれ供給されるセメントクリンカー及び石膏は、搬送路44を通って仕上げ粉砕ミル46に供給され、混合粉砕され混合物となる。この混合物は、搬送路47を通じて混合機48に供給されて混合される。そして、セメントクリンカーと石膏とを含むセメント組成物が、搬送路49を通じてセメントサイロ51に供給される。
セメントクリンカーと混合する石膏は、天然石膏、排脱石膏、フッ酸石膏又は燐酸石膏等を使用することができる。石膏の形態は、二水石膏、半水石膏又は無水石膏のいずれの形態であってもよい。また、任意の組成成分として、必要に応じて石膏ヤード43には石灰石を供給してもよく、混合機48には高炉スラグ粉末やフライアッシュを供給してもよい。
搬送路49には、セメントサイロ51に供給されるセメント組成物を自動的にサンプリングするためのサンプリング装置53が接続されている。このサンプリング装置53によってサンプリングされたセメント組成物を分析して、セメント組成物中の塩化物イオンの含有量を測定する。そして、測定値に基づいて、セメントクリンカーの原料原単位、セメントクリンカーの燃料原単位及び塩素バイパスにおける燃焼ガスの抽気量の少なくとも一つを調整することにより、所望の塩素イオン含有量を有するセメント組成物を得ることができる。
例えば、塩素バイパス5の抽気量を増やすと、ロータリーキルン2内を循環するKClやNaClが多く抽気されることとなり、セメントクリンカーに取り込まれるKClやNaClを低減することができる。これによって、最終的に得られるセメント組成物中の塩化物イオンの含有量、遊離石灰の含有量、及びROの含有量を調整することができる。
塩素バイパス5による抽気率は、好ましくは0.05〜10体積%、より好ましくは0.1〜7体積%である。抽気率が0.05体積%未満では燃焼ガスがセレンを含有する場合に、当該燃焼ガスを充分に抽気できない傾向があり、10体積%を超えると、燃費の悪化、仮焼原料の過多な取り込みによる生産性悪化、及び取り込んだ原料又は仮焼原料の処理の増大等の傾向がある。ここで抽気率とは、ロータリーキルン2の先端部に設けられたインレット・フッド6を通過する燃焼ガス量(m)全体に対する、塩素バイパス5によりロータリーキルン2から抽気される抽気量(m)の百分率(体積%)をいう。
また、塩素バイパスによる抽気の際は、抽気ガス温度が300〜1300℃であることが好ましい。
ここで、セメントクリンカーの「原料原単位」とは、セメントクリンカーを1トン製造するにあたり、使用される各原料成分の質量をいう。したがって、セメントクリンカーの原料原単位は、セメントクリンカーの原料に含まれる各種原料成分、すなわち、石灰石、高炉スラグ、石炭灰、焼却灰及び建設発生土の使用割合を変えたり、セメントクリンカーと石膏との配合割合を変えたりすることによって調整することができる。
また、セメントクリンカーの「燃料原単位」とは、セメントクリンカーを1トン製造するにあたり、使用される各燃料成分の消費量(質量)をいう。したがって、セメントクリンカーの燃料原単位は、各燃料成分の割合を変えることによって調整することができる。
セメント組成物中の塩化物イオンの含有量は、下限が、好ましくは0.003質量%、より好ましくは0.004質量%、さらに好ましくは0.008質量%、最も好ましくは0.010質量%であり、上限は、好ましくは0.035質量%、より好ましくは0.030質量%、さらに好ましくは0.025質量%、最も好ましくは0.020質量%である。これらの範囲に調整することによって、セメント組成物の強度発現性を維持しつつ、水和熱を低減することが可能である。セメント組成物のブレーン比表面積は、好ましくは2800〜5000cm/g、より好ましくは3300〜4300cm/gである。
セメント組成物中の鉱物組成は、CS量が好ましくは30〜50質量%、より好ましくは35〜45質量%、CS量が好ましくは30〜55質量%、より好ましくは35〜45質量%、CA量が好ましくは1〜8質量%、より好ましくは1〜5質量%、CAF量が好ましくは7〜15質量%、より好ましくは8〜12質量%である。これらの範囲であれば適度な強度発現性を維持しつつ、水和熱を一層低減することが可能となる。
本実施形態における調整工程は、例えば次のようにして行うことができる。セメント製造装置1によって製造されたセメント組成物を、リアルタイム(実時間)で化学分析又は蛍光X線分析等を行い、当該セメント組成物における塩化物イオンの含有量を測定する。この測定値に基づき、セメントクリンカーの原料原単位、燃料原単位及び塩素バイパスにおける燃焼ガスの抽気量の少なくとも一つを調整してセメントクリンカーを焼成する。これによって、セメント組成物の水和熱を低減することができる。
また、本実施形態のセメント製造装置1によって、所望の塩化物イオンの含有量、遊離石灰の含有量及びRO量を有するセメント組成物を製造することができる。このようにして製造されたセメント組成物をモルタル又はコンクリートを調製する際の原材料として使用すると、強度発現性を維持しながら、硬化の際に発生する水和熱を低減することができる。
本実施形態のセメント組成物の水和熱低減方法は、上述の通り、硬化の際の水和熱を低減することが可能であることから、水和熱を低減することが可能なセメント組成物の製造方法として実施することもできる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定
されるものではない。
例えば、本発明のセメント組成物の水和熱低減方法に用いられ得るセメント製造装置1は、上述のセメント製造装置1に限定されるものではない。上記セメント製造装置1は塩素バイパス5を有する所謂NSPを備えているが、NSPに代えてSP(サスペンションプレヒータ)を備えているものであってもよい。また、抽気管23とバッグフィルタ29の間に、分級機を設置し、その分級機によって分離した粗紛を、インレット・フッド6内、又はライジングダクト7内に投入して、ロータリーキルン2に戻してもよい。
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜15)
<セメントクリンカー及びセメント組成物の製造>
セメントクリンカーの原料として、塩素及び/又はアルカリを含む粘土、石炭灰、建設発生土、石灰石、硅石、高炉スラグ、鉄精鉱、都市ゴミ焼却灰を準備した。燃料として廃プラスチックを準備した。これらの原料及び燃料を、図1に示すような塩素バイパスを備えたNSPキルンを用いて焼成し、セメントクリンカーを製造した。塩素バイパスの抽気率を3.0〜5.0体積%の範囲で調整し、抽気温度を800〜1000℃とした。このセメントクリンカーに石膏を添加し、ボールミルで粉砕し、ブレーン比表面積が3750±50cm/gであるセメント組成物を製造した。
<原燃料の全塩素含有量の測定>
(1)廃プラスチック中の全塩素含有量の測定
使用する廃プラスチック中の全塩素含有量は、JIS Z 7302−6:1999「廃棄物固形化燃料―第6部:全塩素分試験方法」に準じて測定した。測定結果を表1に示す。
(2)都市ゴミ焼却灰中の全塩素含有量の測定
使用する廃プラスチック中の全塩素含有量は、JIS M 8853:1998「セラミックス用アルミノけい酸塩質原料の化学分析方法」に準じて測定した。測定結果を表1に示す。
Figure 0005493401
後述するセメント組成物の塩化物イオンの測定方法によって、製造したセメント組成物の塩化物イオン含有量の測定を行った。その測定結果に基づいて、塩化物イオンの含有量が0.002〜0.020質量%の範囲となるように、セメントクリンカーの原料原単位、燃料原単位及び塩素バイパスにおける燃焼ガスの抽気量の少なくとも一つを調整して、塩化物イオン及び遊離石灰の含有量が異なる実施例1〜実施例15のセメント組成物を製造した。
<セメント組成物の化学組成及びセメント組成物の性状>
(1)塩化物イオン及び遊離石灰の含有量の測定
各セメント組成物中の塩化物イオンの含有量(質量%)をJIS R 5202:1999「ポルトランドセメントの化学分析方法」に準じて測定した。各セメント組成物中に含まれる遊離石灰の量は、JCAS I−01:1997「遊離酸化カルシウムの定量方法(B法)」に準じて測定される遊離酸化カルシウム量に等しいとの前提で遊離石灰の量を求めた。両者の測定結果を表2に示す。
(2)セメント組成物の化学組成の測定
各セメント組成物中のSiO、Al、CaO、Fe、SO、及びROの含有量(質量%)を測定した。測定結果を表2に示す。また、各セメント組成物中のCS量、CS量、CA量及びCAF量は、下記のボーグ式[1]〜[4]によって算出された値である。算出結果を表3に示す。
S量(質量%)=4.07×CaO量(質量%)−7.60×SiO量(質量%)−6.72×Al量(質量%)−1.43×Fe量(質量%)−2.85×SO量(質量%) ・・・[1]
S量(質量%)=2.87×SiO量(質量%)−0.754×CS量(質量%) ・・・[2]
A量(質量%)=2.65×Al(質量%)−1.69×Fe(質量%) ・・・[3]
AF量(質量%)=3.04×Fe(質量%) ・・・[4]
Figure 0005493401
<セメント組成物の評価>
以下の測定方法によって実施例1〜15のセメント組成物の評価を行った。
(1)セメント組成物の水和熱測定方法
ポルトランドセメントの水和熱は、JIS R 5203:1995「セメントの水和熱測定方法(溶解熱方法)」により測定した。測定結果を表3に示す。
(2)セメント組成物のモルタル圧縮強さ測定方法
各実施例のセメント組成物のモルタル圧縮強さは、JIS R 5201:1998「セメントの物理試験方法」により測定した。測定結果を表3に示す。
また、セメント組成物の粉末特性の測定結果も併せて表3に示す。
Figure 0005493401
表3に示す水和熱の測定結果から、各実施例のセメント組成物は、中庸熱ポルトランドセメントの水和熱についてのJIS R 5210:2003「ポルトランドセメント」の規定(材齢7日は290J/g以下、材齢28日は340J/g以下)を満たしていることが確認された。また、表3に示すモルタル圧縮強さの結果から、各実施例のセメント組成物をモルタルの原材料として使用した場合に、材齢28日において従来のものと同等の強度発現性を示すことが確認された。
図2及び図3に、表2の「セメント組成物中の塩化物イオンの含有量」及び「セメント組成物中の遊離石灰の含有量」と、表3の「セメント組成物の材齢28日の水和熱」との関係を示す。図2及び図3から、「セメント組成物の材齢28日の水和熱」は、「セメント組成物の塩化物イオンの含有量」及び「セメント組成物の遊離石灰の含有量」と高い相関を示すことが確認された。これらの相関関係から明らかなように、セメント組成物の塩化物イオンの含有量と遊離石灰の含有量とから、セメント組成物の使用時に発生する水和熱を予測することができる。
したがって、本発明のセメント組成物の水和熱低減方法によれば、モルタルやコンクリートの強度発現性を維持しつつ水和熱を低減することができる。調整工程においてセメントクリンカーの原料原単位、燃料原単位及び塩素バイパスにおける燃焼ガスの抽気量の少なくとも一つを調整して、セメント組成物の塩化物イオンの含有量を0.002〜0.035質量%とすれば、水和熱の低減が可能なセメント組成物とすることができる。このようなセメント組成物は、製造工程における塩化物イオンの含有量をリアルタイム(実時間)で測定し、その測定値に基づいてセメントクリンカーの原料原単位、燃料原単位及び塩素バイパスにおける燃焼ガスの抽気量の少なくとも一つを調整することによって容易に得ることができる。
また、塩化物イオンの含有量の調整と併せて、遊離石灰の含有量を0.4〜1.0質量%となるように調整することによって、モルタルやコンクリートの強度発現性を維持しつつ水和熱の低減が可能なセメント組成物を一層確実に製造することができる。
1…セメント製造装置、2…ロータリーキルン、12…プレヒータ、5…塩素バイパス、100…粉砕機、6…インレット・フッド、23…抽気管。

Claims (3)

  1. 石灰石、高炉スラグ、石炭灰、焼却灰及び建設発生土からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む原料を、プラスチックを含む燃料で焼成してセメントクリンカーを調製するロータリーキルンと、
    該ロータリーキルンで発生する塩素及び/又はアルカリを含む燃焼ガスの少なくとも一部を抽気する塩素バイパスと、
    前記セメントクリンカーと石膏とを混合して粉砕する粉砕機と、を備えるセメント製造装置を用いるセメント組成物の水和熱低減方法であって、
    前記セメント組成物における塩化物イオンの含有量に基づいて、前記セメントクリンカーの原料原単位、燃料原単位及び前記塩素バイパスにおける前記燃焼ガスの抽気量の少なくとも一つを調整する調整工程を有し、
    前記調整工程において、
    前記セメント組成物における塩化物イオンの含有量が0.002〜0.015質量%となるように、前記原料原単位、前記燃料原単位及び前記抽気量の少なくとも一つを調整し、
    前記セメント組成物における遊離石灰の含有量が0.46〜0.92質量%となるように前記原料原単位及び前記燃料原単位の少なくとも一方を調整し、
    前記セメント組成物におけるアルカリの含有量がROに換算して0.31〜0.50質量%となるように、前記原料原単位、前記燃料原単位及び前記抽気量の少なくとも一つを調整し、
    前記セメント組成物の鉱物組成は、CS量が33.5〜36.8質量%、CS量が42.4〜45.7質量%、CA量が3.6〜4.2質量%及びCAF量が9.7〜10.3質量%となるように前記原料原単位を調整し、
    前記塩素バイパスの抽気率は0.05〜10体積%であり、前記塩素バイパスにより抽気される前記燃焼ガスの温度は300〜1300℃であり、
    前記セメント組成物のブレーン比表面積は、3760〜4040cm/gである、
    塩化物イオン含有量の調整によるセメント組成物の水和熱低減方法。
  2. 前記プラスチックの全塩素含有量が10質量%以下である、請求項1に記載のセメント組成物の水和熱低減方法。
  3. 前記焼却灰の全塩素含有量が20質量%以下である、請求項1又は2に記載のセメント組成物の水和熱低減方法。
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