JP5492393B2 - 熱間圧延棒鋼線材とその製造方法 - Google Patents

熱間圧延棒鋼線材とその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、熱間圧延棒鋼線材とその製造方法に関し、特に強度を確保し靱性を向上させて、強度と靱性とのバランスに優れた高強度高靱性を有する熱間圧延棒鋼線材とその製造方法に関するものである。本発明は、また、靭性向上のためにフェライト分率を増加させる技術に関するものでもある。
一般に、鋼を高強度化すると靱性が低下するが、フェライト−パーライト複相組織を有する棒鋼線材においても、靭性と強度を同時に確保することが必要である。
特許文献1には、炭素含有量が0.30〜0.50%の中炭素低合金鋼鋼片を1050℃以上に加熱後、仕上げ圧延温度を650〜800℃に制御することにより、フェライト分率を所定値以上で、フェライト粒度を10番以上(粒径換算で11μm以下)に微細化させ、強度−靱性バランスを向上させる技術が開示されている(請求項1、請求項2、第3頁第6欄第37〜41行)。
しかしながら、特許文献1に記載された実施例の中で最も微細粒の場合(当該発明鋼、番号7)でも、フェライト粒度番号は11.4であり、粒径換算推定値は6.9μm程度に留まっている(JIS G 0551:2005より推定)。また、特許文献1に記載された技術では、Cr及びVを適正量添加しており、フェライト分率は、実施例によれば、C含有量=0.44%、0.48%の場合、それぞれ38%、36%であり、C含有量が更に低いC=0.37%、0.41%の場合でも、フェライト分率は45%に留まっている(第2表中の番号6、7及び2、3)。
また、従来、鋼材の強化方法としては、固溶強化や、マルテンサイト等との複合組織化による第2相による強化、析出強化、結晶粒の微細化などが良く知られているが、これらの強化方法の中でも、強度と靱性をともに高くし、強度−靱性バランスを良好にする方法としては、結晶粒の微細化が優れた方法である。この観点から特許文献1に記載された技術を評価すると、フェライト粒度番号が10.5〜11.4に留まっているので、フェライト粒が十分に微細化されているとは言えない。
一方、自動車のステアリングラックバー(ステアリングラック又はラックバーともいう)については、熱間圧延棒鋼材に焼入れ・焼戻し処理を施すことにより素材の靭性を向上させ、これを用いて切削加工により所望のラックバーの寸法・形状に成形し、ラックバーに強度を付与するために高周波焼入れ後焼戻しをしている。このようなラックバーの製造に関して特許文献2には、熱間圧延棒鋼材に焼入れ・焼戻しによる調質処理を施すことなく切削加工により成形加工を行い、成形加工後に高周波焼入れ後焼戻すか、又は高周波焼入れのみで焼戻しを省略しても、高強度・高靭性が確保されたラックバーが製造される技術が開示されている(実施例、表4中の製造工程A、B)。
しかしながら、特許文献2には、鋼の合金元素としてB及びTiを添加し、特にTiとNとの含有量比率を特定することが記載され、フェライト分率及びフェライト粒径に関する記載は一切ない。
このように、自動車用及び建設機械用のシャフトやピン部品等の機械構造用部品は、一般に、機械構造用中炭素鋼や中炭素低合金鋼棒鋼を素材として用い、切削による成形後に焼入れ・焼戻し熱処理を行う方法で製造されている。したがって、このような成形後の焼入れ・焼戻し熱処理を省略することも可能であるような、熱間圧延ままの高強度且つ高靭性の非調質棒鋼線材、すなわち、熱間圧延棒鋼線材の製造が可能になれば、省エネルギー、コスト低減及び環境改善の面でメリットは大きく、望ましい。
特公平4−25343号公報 特開平10−8189号公報
本発明は、以上の状況に鑑み、特殊な合金元素を添加することなく、強度を確保しつつ靱性を向上させるために、フェライト分率を所定値以上まで上昇させると共に、フェライト粒径の微細化を達成することにより、強度と靱性とのバランスに優れた高強度且つ高靱性を備えた熱間圧延棒鋼線材及びこの熱間圧延棒鋼線材を製造する技術を提供することを課題としている。
中炭素鋼において従来得られていない高いフェライト分率を達成するために、オーステナイト材料を熱間加工するに際して、粒界アロトリオモルフを用いたKineticsモデルに注目した。結晶組織が等軸オーステナイト粒の材料の場合、図1に示すように、等軸オーステナイト1(粒径をdγとする)及び熱間加工によりパンケーキ状となったオーステナイト2の粒界から粒界アロトリオモルフフェライト3が変態生成する。パンケーキ状オーステナイト2の粒界間隔をTHγとし、各オーステナイト粒界に生成したフェライト粒の厚さをTHαとする。このとき、図1におけるフェライト分率fαは、THα/dγ又はTHα/THγによって算出できる。
そこで、等軸オーステナイト粒径dγ及びパンケーキ状オーステナイト粒界間隔THγを変化させて、フェライト分率fαを計算した。計算においては、粒界フェライト粒厚さTHαを5μm又は3μmと仮定し、等軸オーステナイト粒径dγ又はオーステナイト粒界間隔THγを30μmから3.5μmまで変化させた。その結果を図2に示す。
図2によれば、等軸オーステナイト粒径dγ又はパンケーキ状オーステナイト粒界間隔THγを小さくすれば、フェライト分率fαは大きくなり、また、粒界フェライト粒厚さTHαを大きくすれば、フェライト分率fαは大きくなる。このことから、現実の結晶組織においても、THγを小さくし、THαを大きくすれば、fαは大きくなることが推定される。
実際に、C含有量=0.17%の低炭素鋼を用い、800℃で熱間圧縮加工機(グリーブル2000)による圧縮加工試験で確認試験を行ったところ、図3に示す結果が得られている(鳥塚等 鉄と鋼 Vol.86(2000)No.12 p807)。このように、パンケーキ状オーステナイト粒界間隔THγが300μm以下30μmまでは、粒界フェライト粒厚さTHαはほぼ一定で6〜7μmであるが、THγがそれよりも小さくなると、THαもTHγとともに小さくなる。THγが約20μmのときにTHαは約5μmとなり、THγが6μm程度でTHαは3μm程度となっている。
ここで、注目すべきことは、C含有量=0.17%の低炭素鋼であるから、フェライト分率向上のためにはC含有量=0.30〜0.55%といった中炭素鋼よりも有利ではあるが、(粒界フェライト粒厚さTHα)/(オーステナイト粒界間隔THγ)の値をみると、オーステナイト粒界間隔THγが30μmまで低下したとき、粒界フェライト粒厚さTHα=6〜7μmであるから、THα/THγ=6〜7/30=20〜23%程度と高く、一方、オーステナイト粒界間隔THγが6μmまで低下したときに、3/6=50%と著しく増大していることである。そして図1によれば、(粒界フェライト粒厚さTHα)/(オーステナイト粒界間隔THγ)の値を増大させることによりフェライト分率は上昇することが分かる。
本発明は、上記の通りの知見に基づき完成させたものである。すなわち、本発明は、以下の特徴を有している。
第1の発明は、熱間圧延棒鋼線材に関し、質量%で、C:0.30〜0.55%、Si:0.10〜0.60%、Mn:0.50〜1.50%、S:0.005〜0.065%、Al:0.001〜0.060%、Cr:0.12〜0.15%を含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなる化学成分組成を有し、フェライト分率fα(面積%)が、下記(1)式:
60≦fα≦100−45.5C ・・・・・・・・・(1)
但し、CはC含有量であって、0.30%≦C≦0.55%
を満たすフェライトと、残部のパーライトからなるフェライト−パーライト複相組織を有し、平均フェライト粒径が2.5〜4.5μmの範囲内にあることを特徴としている。
第2の発明は、上記第1の発明の特徴において、熱間圧延棒鋼線材の硬さがビッカース硬さで190〜240の範囲内にあることを特徴としている。
第3の発明は、熱間圧延棒鋼線材の製造方法に関し、質量%で、C:0.30〜0.55%、Si:0.10〜0.60%、Mn:0.50〜1.50%、S:0.005〜0.065%、Al:0.001〜0.060%、Cr:0.12〜0.15%を含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなる化学成分組成を有する鋼片を850〜950℃の温度範囲内で再加熱し、引続き750〜850℃の温度範囲内で減面率Rが、R≧70%となるように熱間加工を施した後、得られた加工材を500℃以下の温度まで冷却するに際して、500℃までの平均冷却速度を3〜15℃/secの範囲内で冷却することを特徴としている
第4の発明は、熱間圧延棒鋼線材の製造方法に関し、質量%で、C:0.30〜0.55%、Si:0.10〜0.60%、Mn:0.50〜1.50%、S:0.005〜0.065%、Al:0.001〜0.060%、Cr:0.12〜0.15%を含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなる化学成分組成を有する鋼片を再加熱して仕上がり温度が900〜950℃の範囲内で熱間加工し、引続き750〜850℃の温度範囲内で減面率Rが、R≧70%となるように熱間加工を施した後、得られた加工材を500℃以下の温度まで冷却するに際して、500℃までの平均冷却速度を3〜15℃/secの範囲内で冷却することを特徴としている。
第5の発明は、上記第3又は第4の発明の特徴において、加工材を500℃以下の温度まで冷却するに際して、500℃までの平均冷却速度を3〜15℃/secの範囲内で冷却する過程で、更にAr以下且つパーライト変態開始温度以上の温度範囲内で恒温保持処理することを特徴としている。
本発明によれば、中炭素鋼において高価な合金元素の節約及び熱処理の省略により、高強度且つ高靭性を備えた非調質の熱間圧延棒鋼線材が安価に製造される。自動車をはじめとする各種構造用鋼の用途拡大に寄与することができる。
(鋼の化学成分組成)
本発明の熱間圧延棒鋼線材の製造方法では、使用する鋼片の化学成分組成に水素等の製造過程で増減する元素を規定していないが、鋼片を製造するに至る初期工程における溶鋼の成分組成が、そのまま引き継がれると考えることができる。したがって、製造する熱間圧延棒鋼線材の成分組成を特定することにより、溶鋼の成分組成が特定される。
本発明の熱間圧延棒鋼線材の化学成分組成は、構造用鋼としての特性を具備するために、質量%で、C:0.30〜0.55%、Si:0.10〜0.60%、Mn:0.50〜1.50%、S:0.005〜0.065%、Al:0.001〜0.060%を含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなる。個々の成分組成の限定理由は次の通りである。
(1)C:0.30〜0.55%
Cは、経済的で且つ有効な強度上昇効果を有する元素である。しかしながら、本発明における重要な目的であるフェライト分率の向上に対しては、フェライト分率を低下させる方向に作用する。
一方、本発明の熱間圧延棒鋼線材の重要な用途の一つである自動車用のラックバーに用いる場合には、切削加工によりラックバーの形状に成形加工し、成形加工後にラックバーの強度向上のために、通常、高周波焼入れをした後に焼戻し処理をすることが必要である。Cは、高周波焼入れ性を向上させる効果も有し、この効果を十分に発揮させるために、Cの含有量の下限は0.30%(中炭素鋼)とする必要がある。Cの含有量が上限の0.55%を超えて高くなると、強度は上昇するが、フェライト分率の目標値を確保することが困難になり、その結果、靱性が低下する。したがって、C含有量は0.30〜0.55%の範囲内としている。
なお、本発明の熱間圧延棒鋼線材は、用途によっては硬さをビッカース硬さHで210以上確保しつつ、強度と靭性とのバランスが要請される場合があり、その場合には、C含有量の下限値を0.40%とすることが望ましい。
(2)Si:0.10〜0.60%
Siは製鋼時の鋼の脱酸のために必要な元素である。また、固溶強化により強度を上昇させる効果もある。その含有量が0.10%未満では、脱酸効果や強度向上効果が不十分となる。一方、Si含有量が上限の0.60%を超えて含有量が高くなると、C含有量が上限値の場合には強度が高くなり過ぎ、靱性を低下させる結果となる。したがって、Si含有量は0.10〜0.60%の範囲内としている。
(3)Mn:0.50〜1.50%
MnはSiと同様、脱酸剤として有用な元素であり、固溶強化により強度を上昇させる効果もある。また、Mnは変態温度を低下させて、組織を微細化させる効果もある。その含有量が0.50%未満の場合には、上記効果が十分発揮されない。一方、その含有量が1.50%を超える場合は、強度が高くなり過ぎ、靱性を低下させる。また、空冷程度の冷却速度でも、ベイナイトが形成されるようになるため、靱性が低下する。したがって、Mn含有量は0.50〜1.50%の範囲内としている。
(3)S:0.005〜0.065%
Sは、鋼中に不可避的に含有される成分であり、S含有量の低減の工業的及びコスト的限界を考慮して、0.005%を下限とする。Sは鋼中でMnSとして存在し、高S含有量になると、熱間加工により伸長してセパレーション発生の原因になり、熱間加工性及び靭性の劣化原因となるので、上限を0.065%とする。したがって、S含有量は0.005〜0.065%の範囲内としている。
(4)Al:0.001〜0.060%
Alは製鋼時の鋼の脱酸のために必要な元素である。また、固溶強化により強度を上昇させる効果もあり、鋼中に存在する固溶NをAlNとして固定し、AlNとして析出して圧延時の組織の粗大化を抑制する効果もある。その含有量が0.001%未満の場合には、上記効果が不十分となる。一方、0.060%を超えると、強度が高くなり過ぎ、靱性を低下させる結果となる。したがって、Al含有量は0.001〜0.060%の範囲内としている。
(製造方法)
本発明の高強度且つ高靱性を備えた熱間圧延棒鋼線材の好ましい製造条件について以下に説明する。
(1)素材の調製方法について
本発明では、先ず素材の調製方法として、上記化学成分組成からなる溶鋼を溶製して連続鋳造鋳片を調製し、鋳片を加熱後、粗圧延工程で半成品としての鋼片にするか、若しくは製造業者の設備によっては入手した鋼片を更に所望の断面形状・寸法に熱間鍛造等により加工するかして、素材とする。なお、熱間鍛造等により加工した場合も、材料が具備する材料特性上は鋼片と実質的に同一とみなすことができる。
又は上記溶鋼を鋼塊に鋳造し、分塊圧延により鋼片に調製することもできる。これらいずれかの方法で調製された材料を素材とし、再加熱して使用する。
(2)オーステナイト材の750〜850℃における熱間加工直前のオーステナイト粒径dγの望ましい制御について
まず、上記750〜850℃の温度範囲であるが、加工する鋼片などの材料はある大きさを有することから、当然材料には長さ方向、厚さ方向などに温度分布を生ずることがある。したがって、上記温度範囲は、材料が均一に再加熱された状態の温度を含むことはもちろん、若干の温度分布が生じた場合の平均化した温度や測定誤差などを含むものである。本発明における他の温度規定は、すべて上記に準じている。
上記素材のいずれかに対して、先ず(イ)850〜950℃の温度範囲内で再加熱・保持を施すか、又は(ロ)再加熱後に仕上げ温度が900〜950℃の範囲内の熱間加工を施すかのいずれかを行う。すなわち、上記素材がいずれの調製方法によるものであっても、鋼片又は熱間鍛造等で得られた材料を一旦冷間素材とした後に、850〜950℃の範囲内で再加熱・保持をするか、又は再加熱して900〜950℃の範囲内で仕上げ加工をする。こうした後、材料に対して750〜850℃における熱間加工を施す。
このように、先ず(イ)再加熱・保持又は(ロ)再加熱後の熱間加工のいずれかを行うのは、後述する理由により材料のオーステナイト粒径dγを20μm程度以下にしておくことが望ましいからである。そして、その後オーステナイト粒径が成長して20μm程度を超えないように制御するために、上記再加熱・保持又は再加熱後の熱間加工の後は、3℃/sec以上の平均冷却速度で750〜850℃の範囲内まで冷却し、その後速やかに、望ましくは5sec程度以内に750〜850℃の範囲内での熱間加工を開始する。
上述したように、オーステナイト材を750〜850℃で熱間加工する直前のオーステナイト粒径dγの上限値を20μmとする理由は、当該熱間加工における減面率Rを70%以上とすれば、20μm×(1−0.7)=6μmにより、当該熱間加工直後における平均オーステナイト粒厚さ(すなわち、パンケーキ状オーステナイト粒界間隔の平均値)の推定値THγ(μm)も、THγ≦6μmとなると考えられ、フェライト分率fαを60%以上にするのに有利となるからである。
なお、本発明において、減面率は圧下率とみなすことができる。
また、熱間加工直前におけるオーステナイト粒径dγが20μmよりも更に小さく、例えば15μmとなっていれば、減面率R=70%のとき、平均オーステナイト粒厚さの推定値THγは、4.5μm以下となり、図2よりフェライト分率fαを増大させるために一層有利となることが分かる。
(3)750〜850℃でのオーステナイト材熱間加工と当該加工終了後の冷却条件について
本発明においては、素材としての鋼片又はこれに更に鍛造等を加えて調製された材料を、850〜950℃の温度範囲内で再加熱する(上記イ)か、又は900〜1250℃若しくは1200℃の範囲内で熱間加工する(但し、仕上温度は900〜950℃の範囲内)(上記ロ)かのいずれかの後、引続き750〜850℃の範囲内で熱間加工を施す。当該熱間加工に供される被加工材はオーステナイト材であり、上述した粒径dγのオーステナイト材を750〜850℃で熱間加工することにより、前述した所謂粒界アロトリオモルフフェライト(オーステナイト粒界に生成するフェライト)の成長を制御することにより、フェライト分率を60%以上に増大させる。
この熱間加工終了後は、フェライト粒径の過度の成長を抑制して適切な粒径の微細粒を確保することにより、強度及び靭性を確保する。そのために、熱間加工終了後の平均冷却速度として3〜15℃/secで冷却する。冷却速度が3℃/secより遅いと、4.5μmのフェライト粒径が得られず、15℃/secより速いと、ベイナイトやマルテンサイトの生成の可能性がある。そして、冷却は500℃までとすれば、マルテンサイト又はベイナイトのいずれもが生成しないフェライトとパーライトとからなる複相組織が形成する。500℃までに変態は終了するので、その後の冷却速度は規定する必要がない。マルテンサイト及びベイナイトのいずれもが生成しないようにするのは、靭性の低下を防止するためである。
(4)Ar以下であってパーライト変態開始温度以上での恒温保持について
フェライト分率fαを一層増大させるために、上記750〜850℃での熱間加工が終了後、加工材を500℃以下の温度まで冷却するに際して、500℃までの平均冷却速度を3〜15℃/secの範囲内で冷却する過程で、更にAr以下且つパーライト変態開始温度以上の温度範囲内で恒温保持処理を行う。この恒温保持をせずに750〜850℃での熱間加工が終了後、500℃までの冷却をする場合、すなわち、連続冷却の場合は、フェライトが平衡分率にならない内にパーライト変態が開始してしまう。これに対して、パーライト変態開始温度以上で恒温保持すると、平衡体積のフェライト−オーステナイト状態に近づけることができ、これによりフェライト体積率(=フェライト分率)を連続冷却の場合に比べ増大させることができる。
このような恒温保持操作を付加する場合にも、恒温保持終了後、速やかに3〜15℃/secの平均冷却速度で500℃まで冷却することで、その後マルテンサイト及びベイナイトのいずれをも生成させないようにして、フェライトとパーライトとからなる複相組織が形成する。
(5)フェライト分率の上限について
フェライト分率の上限は、状態図で決まる。変態温度が低下すればするほど、状態図におけるフェライト−オーステナイト相比はフェライト分率が大きくなる。公知の計算ソフト「Thermo−calc」を用い、セメンタイトが析出しないと仮定して、720℃、650℃、630℃又は600℃まで過冷できた場合のオーステナイト−フェライト平衡分率を求めると、フェライト分率とC含有量との関係は、図4に表すことができる。経験上、600℃をセメンタイトが析出しない下限温度としている。
(6)フェライト分率fα(面積%)の規定
図4において、フェライト分率が最も大きくなると考えられる600℃まで過冷した場合の炭素含有量とフェライト分率との関係式は、下記(1a)式:
fα=100−45.5C ・・・・・・・・・(1a)
である。したがって、フェライト分率の必須要件の一つとして、下記(1b)式:
fα≦100−45.5C ・・・・・・・・・(1b)
で規定することができる。
次に、機械構造用炭素鋼鋼材として良好な吸収エネルギーを有し、優れた靭性を確保するためには、シャルピー衝撃試験方法(JIS Z2242準拠)において、幅×高さ×長さ=10×10×55mmの2mmVノッチ試験片を用いたときに、上部棚エネルギーが100J以上(USE≧100J)であることが必要である。そこで、USE≧100Jを満たすために必要となるフェライト分率fαは以下の通りに求められる。
中炭素及び高炭素フェライト−パーライト鋼において、シャルピー衝撃上部棚エネルギーは炭素含有量の低下と共に増加することが知られており、焼きならし鋼において炭素含有量で表示された関係図が示されている(鉄鋼材料の設計と理論 P85 図5.5 丸善 昭和56年9月30日発行)。炭素含有量とフェライト分率は密接な関係がある。そこで炭素含有量をフェライト分率に変換するために、前記図4に示した過冷到達温度720℃における炭素含有量−フェライト分率の関係式(fα=−135.1C+100)を用いた。得られたフェライト分率fαと上記関係図(図5.5)を、フェライト分率fαとシャルピー衝撃上部棚エネルギーUSE(J)との関係にまとめ直すと、図5が得られる)。
図5に示される関係によれば、USE≧100Jを満たすためのフェライト分率fαは、約60%以上となる。このことから、本発明の熱間圧延棒鋼線材におけるフェライト分率fαのもう一つの必須要件を、下記(1c)式:
fα≧60% ・・・・・・・・・・・・(1c)
とした。
そして、前記必須要件(1b)式と(1c)式とをまとめて下記(1)式:
60≦fα≦100−45.5C ・・・・・・・・・・(1)
但し、 0.30%≦C≦0.55%
を本発明の熱間圧延棒鋼線材におけるフェライト分率fαに関する必須要件としている。
従来C含有量が0.40%程度ではフェライト分率fαを60%程度を確保することは困難であったが、本発明は、fα≧60%としているので、USE≧100Jが確保され、材料の信頼性を著しく大きくすることが可能となる。
なお、本発明では、素材と熱間圧延棒鋼線材とは前述したように同一化学成分組成とみなしている。
また、本発明の熱間圧延棒鋼線材は、上記フェライト分率fαを有するフェライトと、残部のパーライトとからなるフェライト−パーライト複相組織を有し、少なくともマルテンサイト又はベイナイトのいずれか一方又は両方が生成していないことを靭性確保上必須としている。
(鋼材のフェライト分率と平均フェライト粒径及び硬さについて)
本発明の熱間圧延棒鋼線材の平均フェライト粒径の下限値は、フェライト分率を確保することにより靭性向上を図るために2.5μmとし、上限値は、フェライトの微細粒化効果による強度及び靭性の良好なバランスを得るために4.5μmとしている。
フェライト粒径に下限値を設けたのは、フェライト粒径が過度に小さくなると、dα/THγの値が小さくなり過ぎて、フェライト分率fαの確保が困難となり、また、硬さが過度に大きくなり、その結果、靭性の向上を阻害するからである。
なお、鋼材の強度として引張強さTSで600MPaを確保するために、ビッカース硬さHで190以上を確保すると共に、過度の硬さ上昇は靭性確保に不利であることを考慮して、ビッカース硬さHの上限を240(SAE J417による換算で、引張強さTSが765MPa程度)とするのが好ましい。
以下実施例を示し、本発明を更に詳しく説明する。
本発明の範囲内にある実施例及び範囲外にある比較例の試験は、加工熱処理シミュレーターとしてグリーブル試験機及びフォーマスタ試験機を用いた試験(<試験A>という)と、試験用熱間鍛造機又は試験用溝ロール圧延機を用いた試験(<試験B>という)とに分けられる。
<試験A> グリーブル試験機によるアンビル圧縮加工による試験
(1)試験材の調製方法
表1に示す化学成分組成の鋼を溶製した。成分符号がS45C−1及びS45C−2の鋼はS45C(JIS G4051 機械構造用炭素鋼鋼材による)相当の成分組成を有し、成分符号がS45CSの鋼はS45CのS含有量を高めたもの(S=0.056%)であり、S含有量以外はS45C−1及びS45C−2と類似の成分組成を有する。
これら成分組成の溶鋼を用いて次の2通りの方法で素材(i、ii)を調製した。
(i)粗圧延素材:所定成分組成の溶鋼をブルーム連続鋳造鋳片に鋳造し、これを1200〜1300℃の温度域に加熱し、粗圧延によりC方向断面寸法を厚さ180mm×幅180mmとした後、室温まで冷却した鋼(「粗圧延素材」という)である。
(ii)粗圧延+熱間鍛造素材:所定成分組成の溶鋼をブルーム連続鋳造鋳片に鋳造し、これを(i)に準じて粗圧延し、試験素材を切り出し採取し、更に、熱間鍛造により総減面率95.5%でC方向断面寸法を厚さ38mm×幅38mmとした後、室温まで冷却した鋼(「粗圧延+熱間鍛造素材」という)である。
上記(i)の厚さ180mm×幅180mm×所定長さ、又は(ii)の厚さ38mm×幅38mm×所定長さのいずれの素材からも、各辺の方向に対応させて厚さ12mm×幅15mm×長さ18mmの試験材を切り出し採取してグリーブル試験に供した。
なお、グリーブル圧縮試験においては、上記試験材の中心部に対して所定の圧下率の加工を加えた。そして、この中心部に注目して試験を行った。前述したように、圧下率は減面率とみなすことができる。以下、同じである。
(2)実施例1〜5
表2に、実施例1〜5の試験方法及び試験結果を示す。これらは、アンビル圧縮加工後に500℃まで冷却した場合であって、パーライト変態開始温度以上で恒温保持をしなかった場合である。
(実施例1、2の試験方法)
実施例1では、表1に示した成分符号がS45C−1の連続鋳造鋳片を熱間粗圧延された素材から切り出した試験材(厚さ12mm×幅15mm×長さ18mm)を使用し、実施例2では、成分符号がS45CS(高S材、S=0.056%)の連続鋳造鋳片を同じく熱間粗圧延された素材から切り出した試験材(厚さ12mm×幅15mm×長さ18mm)を使用し、いずれも900℃に再加熱し、60sec保持した後、冷却速度10℃/secで800℃まで冷却し、ここで5sec保持し、引続きグリーブル試験機によりアンビル圧縮加工を行った。図6に試験材に対するアンビルによる圧縮加工方法を示す。
図6に示すように、加工温度800℃で試験材の幅15mm×長さ18mmの面に対して矢印6の方向に加え、厚さ12mmの中心部で圧下率が85%となる圧縮加工をひずみ速度10sec−1にて1回で行った後、直ちに平均冷却速度10℃/secで500℃まで冷却した。その後、常温まで冷却して、確性試験片を採取した。なお、前記の通り、圧下率は減面率とみなすことができる。以下、同じである。
(実施例3〜5の試験方法)
実施例3〜5はいずれも、成分符号がS45C−2の連続鋳造鋳片を用い、実施例3では上記(ii)に準じ、熱間粗圧延後、更に1150℃で鍛造された素材から、実施例4では上記(ii)に準じ、熱間粗圧延後、更に1200℃で鍛造された素材から、そして実施例5では熱間粗圧延後の素材から、それぞれ切り出した試験材(厚さ12mm×幅15mm×長さ18mm)を使用し、いずれも900℃に再加熱し、60sec保持した後、冷却速度10℃/secで750℃まで冷却し、ここで5sec保持し、引き続き加工温度750℃で図6に示すように試験材の幅15mm×長さ18mmの平面に対して矢印6の方向に厚さ12mmの中心部での圧下率が85%となる圧縮加工をひずみ速度10sec−1にて1回で行った後、直ちに平均冷却速度10℃/secで500℃まで冷却した。その後、常温まで冷却して、加工熱処理試験を完了した。
(実施例1〜5の確性試験方法)
上記加工熱処理済み後の材料の中心部から確性試験片を切り出して確性試験に供した。確性試験を行った試験材中の位置は、図6に示す試験材4の圧縮面であった15mm幅×18mm長さの平面に対する垂直断面で、且つ試験材の12mm厚さ×18mm長さの平面に平行な断面であって、試験材の厚さ、幅及び長さの中心部相当の位置について行った。
確性試験項目は、走査型電子顕微鏡(SEM)による金属組織の観察、平均フェライト粒径dαの測定、画像処理によるフェライト分率fαの測定並びにビッカース試験による硬さHの測定を行った。また、等軸状オーステナイト粒径dγの推定値、及びパンケーキ状オーステナイトの粒界間隔THγ(いずれも図1参照)の推定値を求めた。
dγ及びTHγの推定方法は組織写真から判断した。旧オーステナイト粒界のすべてからフェライト粒が生成すると仮定する。組織写真でフェライトは網目状に繋がっていることが分かる。パーライトは、網目状フェライトで囲まれている。この網目状フェライトが旧オーステナイト粒界に相当する。したがって、網目状フェライトの間隔を測ることによって、旧オーステナイトの大きさを推定できる。網目状フェライトが等軸状をしている場合は、旧オーステナイトも等軸であったと推定され、その間隔がdγとなる。一方、網目状フェライトが扁平している場合には、短軸方向の間隔を測れば、それがTHγとなる。なお、dγ及びTHγの推定方法は、以下の実施例及び比較例において同じである。
(実施例1〜5の試験結果)
試験結果を表2に示す。等軸オーステナイト粒径dγの推定値は全て17μmであり、パンケーキ状オーステナイト粒界間隔の推定値THγもまた全て5μmであった。すなわち、素材のS含有量が、0.017%又は0.056%のいずれであっても、素材が粗圧延素材又は粗圧延+熱間鍛造素材のいずれであっても、そしてアンビル圧縮加工温度が800℃又は750℃のいずれであっても、試験材の再加熱温度が900℃で60sec保持し、その後冷却速度10℃/secで上記アンビル圧縮加工温度まで冷却し、中心部圧下率が85%であれば、等軸オーステナイト粒径dγの推定値は全て17μmであり、次いで、アンビル圧縮加工後のパンケーキ状オーステナイト粒界間隔の推定値THγも、また、圧縮加工温度が800℃又は750℃のいずれにおいても全て5μmであった。
上記500℃まで冷却後、常温まで冷却した試験材から採取した試料の確性試験結果によれば、フェライト分率fαは60〜66%の範囲内にあり、60%以上が確保されているので、前記シャルピー衝撃上部棚エネルギーは100J以上が確保されていると考えられる。そして、各実施例のフェライト分率fαはフェライト分率の推定値dα/THγの値に近似している。
一方、平均フェライト粒径dαは2.7〜3.4μmが得られているので、本発明の必須要件である2.5〜4.5μmの範囲内にある。そして、金属組織は上記フェライト分率のフェライトと残部のパーライトとからなる複相組織であった。また、ビッカース硬さHは203〜222の範囲内にあるので、本発明の望ましい要件である190〜240を満たしている(SAE J 417により引張強さTSに換算すると、TS=605〜765MPaとなる)。
なお、実施例のビッカース硬さH=203〜222は、引張強さTS=646〜702MPaとなる。
また、以上の通りのフェライト分率(fα≧60%)、平均フェライト粒径(dα=2.7〜3.4μm)且つビッカース硬さ(H=203〜222)の結果から、本発明の製造方法によって優れた強度と靭性とのバランスを有する熱間圧延棒鋼線材が製造されることが確認される。
(3)比較例1〜5
表2に、比較例1〜5の試験方法及び試験結果を示す。これらは、素材の再加熱温度を900℃、保持時間を60secとし、アンビル圧縮加工後、直ちに500℃まで冷却した場合であり、パーライト変態開始温度以上での恒温保持はしていない。
(比較例1〜5の試験方法)
比較例1〜5では、表2に示す通りの分類素材、成分符号及び加工方法で調製した試験素材から切り出した試験材(厚さ12mm×幅15mm×長さ18mm)を使用した。試験材の再加熱条件は全て900℃×60secであり、本発明の製造方法で必須要件としている再加熱条件を満たしている。この内、比較例1〜3では再加熱後の冷却速度が1℃/secと遅いが、アンビル圧縮加工温度は800℃であり、本発明の製造方法で必須要件としている加工温度条件を満たしている。そして、比較例1では中心部圧下率が85%であり、本発明の製造方法で必須要件としている減面率の条件を満たしているが、比較例2,3では57%であり、減面率の条件を満たしていない。圧縮加工後の平均冷却速度は、比較例1〜3は全て1℃/secであり、本発明の製造方法で必須要件としている平均冷却温度の条件を満たしていない。
一方、比較例4,5では、中心部圧下率が57%であり、上記減面率の条件を満たしてないが、他の必須要件は満たしている。試験材に対するアンビルによる圧縮加工方向(図6参照)、ひずみ速度(10sec−1)及び圧縮回数(1回)は実施例1〜5と同一である。500℃まで各条件で冷却後、常温まで冷却して、試験片を採取した。
(比較例1〜5の確性試験方法)
試験片の採取は上記「加工熱処理済み試験材」の中心部から試験片を切り出して確性試験に供した。確性試験を行った試験材中の位置、確性試験項目及び方法については、前記実施例1〜5と同じである。
(比較例1〜5の試験結果)
試験結果を表2に示す。800℃におけるアンビル圧縮加工直前における等軸オーステナイト粒径dγの推定値は、全て17μmであった。すなわち、素材のS含有量が、0.017%又は0.056%のいずれであっても、等軸オーステナイト粒径dγの推定値は、全て17μmであった。 アンビル圧縮加工後、500℃まで冷却した場合のパンケーキ状オーステナイト粒界間隔の推定値THγは、中心部での圧下率が85%の圧縮加工をした比較例1のみは5μmと小さいが、中心部での圧下率が57%であった比較例2〜5は8μmと大きい。一方、フェライトの平均粒径dαについては比較例1のみが3μmであったが、比較例2〜5は4μmであった。その結果、dα/THγは、比較例1が0.6であったのに対して、比較例2〜5では0.5と若干小さかった。これは、THγが比較例1において比較的小さかったことにより、フェライト分率fαは、比較例1が比較的大きい傾向はあるが、比較例1〜5の全てにおいて55%以下であり、本発明の線材で必須要件としている60%以上を満たしていない。
但し、比較例1〜5ではいずれも、平均フェライト粒径dαが3〜4μmであり、また、ビッカース硬さHが193〜221の範囲内にある。金属組織は、上記フェライト分率のフェライトと残部のパーライトとからなる複相組織であった。
(4)比較例6〜17
(比較例6〜17の試験方法)
表3に示すように、比較例6〜11では成分符号がS45C−1の粗圧延素材(i)を使用し、比較例12〜17では成分符号がS45CS(高S材、S=0.056%)の粗圧延素材(i)を使用し、厚さ×幅×長さ(180×180mm×長さ)の素材から、直径3mm×長さ10mmの試験材を長さ方向と一致させて切り出し採取した。
フォーマスタ試験機を用い、試験材の再加熱条件は、比較例6,7,12,13が950℃×60sec、比較例8,9,14,15が900℃×60sec、比較例10,11,16,17が850℃×60secの3種類の条件であり、いずれも本発明の製造方法における再加熱条件を満たしている。しかしながら、再加熱後の冷却速度に関しては、比較例6,8,10,12,14,16では1℃/secであり、比較例7,9,11,13,15,17では10℃/secである。そして、比較例6〜17の全てにおいて、再加熱後のアンビル圧縮等の加工をすることなく、上記それぞれの冷却速度で500℃まで冷却した後、常温まで冷却して、試験片を採取した。
こうして常温まで冷却した上記試験材の中心部から確性用の試験片を切り出して確性試験に供した。確性試験を行った位置は、試験材の長さ10mmの中点におけるL方向断面の中心相当部位である。
(比較例6〜17の確性試験方法)
試験片の採取は上記「熱処理済み試験材」の中心部から試験片を切り出して確性試験に供した。確性試験項目は、走査型電子顕微鏡(SEM)による金属組織の観察、平均フェライト粒厚さTHαの測定、画像処理によるフェライト分率fαの測定及びビッカース試験による硬さHの測定を行った。また、等軸状オーステナイト粒径dγの推定値及びパンケーキ状オーステナイトの粒界間隔THγ(いずれも図1参照)の推定値を求めた。
(比較例6〜17の試験結果)
試験結果を表3に示す。試験材の再加熱温度が950℃、900℃及び850℃の内のいずれかにおける60sec保持以後における等軸状オーステナイト粒径dγの推定値は、表3に示した通りである。成分符号がS45C−1の場合、再加熱温度が950℃のとき(比較例6、7)は26μm、900℃のとき(比較例8,9)は17μm、そして850℃のとき(比較例10,11)は12μmであり、また、成分符号がS45CS(S含有量=0.056%)の場合は、再加熱温度が950℃(比較例12,13)のときは23μm、900℃(比較例14,15)のときは16μm、そして850℃(比較例16,17)のときは11μmであった。オーステナイト粒径dγの推定値は、高S含有量材においては通常水準のS含有量材よりも小さくなっている。
次に、常温まで冷却後の平均フェライト粒厚さTHαは、再加熱・保持後の冷却速度がより速い場合(=10℃/sec、比較例7,9,11,13,15,17)には2μmであり、より遅い場合(1℃/sec、比較例6,8,10,12,14,16)には6〜7μmであり、冷却速度が10℃/secの場合の方が、平均フェライト粒厚さTHαは小さくなっている。このことから、冷却速度が10℃/secのときの方が、オーステナイト粒界に生成したフェライトの平均フェライト粒厚さTHαも小さい。
一方、フェライト分率fαは、比較例6〜17では、12〜51%の範囲内にあり、この範囲内においてはフェライト分率fαが大きい方に属する比較例8,10,14,16(それぞれのフェライト分率は45%、51%、41%、48%である)の平均フェライト粒厚さTHαは6〜7μmであり、本発明の棒鋼線材における平均フェライト粒径の範囲外となっている。なお、金属組織は、上記フェライト分率のフェライトと残部のパーライトとからなる複相組織であった。
ビッカース硬さHは、比較例7,9,11,13,15においては、本発明の線材において望ましいとしている硬さ範囲の上限値240を超えている。したがって、靭性確保の観点から望ましくなく、また、フェライト分率fαに関して比較例6〜17の全てが範囲外であり、本発明の線材におけるフェライト分率fαの下限値60%に達していない。
(5)実施例1〜5と比較例1〜17の各特性値間の著しい相違点
両者の比較をするために、実施例1〜5の代表例として実施例1を選び、比較例1〜17の代表例として比較例9を選んだ。両代表例間の製造条件を比較すると、素材の成分符号はS45C−1であり、同一で、試験材の再加熱条件も再加熱温度900℃×保持時間60secであり、同一で、且つこの再加熱・保持後の冷却速度も10℃/secと同一であるが、実施例1では再加熱・保持後に試験材の中心部での圧縮率が85%となるアンビル圧縮加工を施しているのに対し、比較例9ではアンビル圧縮加工を施していない。
上記製造条件の差による鋼材特性を比較する。図7は、実施例1の顕微鏡組織写真を例示し、等軸状オーステナイト粒径dγの推定値17μm、平均フェライト粒径3μm、フェライト分率60%及びビッカース硬さH222を記入したものである。図8は、比較例9の同じく顕微鏡組織写真を例示し、等軸状オーステナイト粒径dγの推定値17μm、フェライト粒径dα2μmフェライト分率fα12%及びビッカース硬さH258を記入したものである。
これらの比較から、以下のことが分かる。
実施例1では、再加熱・保持後の等軸状オーステナイト粒径dγの推定値は17μmであり、比較例9のそれと同一であるが、平均フェライト粒径が3μmである共に、フェライト分率fαが60%であり、本発明の線材の必須要件を満たしている。これに対し、比較例9では、平均フェライト粒径が2μmと過小であり、しかも、フェライト分率が12%で過小であり、いずれも本発明の棒鋼線材の必須要件を満たしていない。そして、ビッカース硬さは、実施例1では222、比較例9では258と、各特性は両者間に明確な差がある。特に、比較例9では、硬さが大きいことから強度は確保されているが、フェライト分率fαが著しく小さく、靭性が確保されていない。上記代表例以外の実施例と比較例との比較についても同様のことがいえる。
(6)実施例6〜17
(実施例6〜17の試験方法)
表4に示すように、成分符号が全てS45C−2の試験素材を用いた。実施例6〜9では、粗圧延+1150℃での熱間鍛造素材(ii)を使用し、実施例10〜13では、粗圧延+1200℃での熱間鍛造素材(ii)を使用し、そして、実施例14〜17では、粗圧延素材(i)を使用し、それぞれの素材の厚さ×幅×長さの方向に対応させて厚さ12mm×幅15mm×長さ18mmの試験材を採取して、いずれも900℃に加熱し、60sec保持した後、冷却速度が10℃/secで750℃まで冷却し、750℃で5sec保持し、引続き図6に示すように、グリーブル試験機により幅15mm×長さ18mmの平面に対して矢印6の方向に、アンビル圧縮加工を行い、厚さ12mmの中心部の圧下率が85%となる圧縮加工を行った。アンビル圧縮の加工回数は1回であり、ひずみ速度を10sec−1として行った。
上記アンビル圧縮加工後、直ちに10℃/secの平均冷却速度で下記の恒温保持温度まで冷却した。恒温保持温度は、Ar点温度以下でパーライト変態開始温度以上である。なお、実施例6〜17で使用した試験素材(成分符号:S45C−2)のAr点は、冷却速度が10℃/secのとき680℃である。恒温保持温度は、実施例6,10,14では670℃、実施例7,11,15では660℃、実施例8,12,16では650℃、そして、実施例9,13,17では630℃とし、保持時間はいずれも5minとした。恒温保持の後、直ちに常温まで冷却した。
こうして常温まで冷却した上記試験材の中心部から確性用の試験片を切り出して確性試験に供した。確性試験を行った試験片の位置は、図6に示すように、試験材の圧縮面であった15mm幅×18mm長さの面に対する垂直な断面で、且つ試験材の12mm厚さ×18mm長さの面に平行面な断面とした。試験材の厚さ、幅及び長さの中心相当の部位について確性試験を行った。
確性試験項目は、走査型電子顕微鏡(SEM)による金属組織の観察、平均フェライト粒径dαの測定、画像処理によるフェライト分率fαの測定及びビッカース試験による硬さHの測定を行った。
また、アンビル圧縮加工の直前における等軸状オーステナイト粒径dγの推定値、及びアンビル圧縮加工によるオーステナイト粒厚さTHγ(パンケーキ状オーステナイト粒界間隔)の推定値を求めた。
(実施例6〜17の試験結果)
試験結果を表4に示す。はじめに、試験材がアンビル圧縮加工を受ける前後のオーステナイト粒径を推定し、その推定値を表4に併記した。実施例6〜17のいずれにおいても、アンビル圧縮加工直前における等軸オーステナイト粒径dγの推定値は17μmであった。これは、素材の成分符号及び加工方法にはよらず、アンビル圧縮加工前の加熱温度が900℃であった実施例1〜5と同一である。また、実施例6〜17のいずれにおいても、アンビル圧縮加工後のオーステナイト粒厚さ(パンケーキ状オーステナイト粒界間隔)の推定値THγは、5μmであった。
次いで、常温まで冷却した試験材から採取した試料の確性試験結果としてフェライト平均粒径dα、フェライト分率fα及びビッカース硬さH、dα/THγの計算値、並びに金属組織名称を表4に併記した。
実施例6〜17の特徴は、アンビル圧縮加工後、Ar点温度以下でパーライト変態開始温度以上の温度において恒温保持することにより、フェライト分率を一層増加させたものであることにある。すなわち、前述した実施例3,4及び5(いずれも恒温保持なし)のそれぞれの製造条件に、更にアンビル圧縮加工後において恒温保持を付加したものが、実施例6〜9、実施例10〜13及び実施例14〜17である。
フェライト分率fαについて、恒温保持の無しの場合と有りの場合とについて比較すると、恒温保持無しの実施例3が61%であったのに対して、恒温保持有りの実施例6〜9は63〜67%の範囲内に増加している。
同様に、恒温保持無しの実施例4が60%であったのに対して、恒温保持有りの実施例10〜13は64〜72%の範囲内に増加しており、また、恒温保持無しの実施例5が62%であったのに対して、恒温保持有りの実施例14〜17は61〜67%の範囲内に増加している。
このように、アンビル圧縮加工後、Ar点温度以下でパーライト変態開始温度以上の温度において恒温保持することにより、フェライト分率を一層増加させることができることが確認される。勿論、恒温保持を行った実施例6〜17の全てが、本発明の棒鋼線材についての必須要件、すなわち、フェライト粒径dαが2.5〜4.5μmであることを満たし、金属組織は、上記フェライト分率のフェライトと残部のパーライトとからなる複相組織であり、より望ましい硬さであるビッカース硬さH190〜240を満たしている。したがって、引張強さTSに換算すると、TS=605〜765MPaが確保されている。
以上の実施例及び比較例の一部の結果より、フェライト分率の予測値であるdα/THγ又はTHα/THγと実測値fαとの相関性を図9に示す。
上記実施例及び比較例の試験結果によれば、本発明の必須要件を満たす実施例1〜17は全て、フェライト分率が60%以上で、マルテンサイト及びベイナイトのいずれもが生成しないフェライト−パーライト複相組織からなり、平均フェライト粒径が4.5μm以下2.5μm以上であり、更にビッカース硬さが190〜240の範囲内にある。このことから、熱間圧縮加工材であって非調質の状態であっても、強度605〜765MPaが確保され、良好な靭性が確保されている。これに対して、本発明の必須要件を満たさない比較例1〜17では全て、フェライト分率が55%以下となっており、十分な靭性確保が困難となっている。
以上より、アンビル圧縮加工による材料に対する加工率を塑性ひずみ量に換算すると共に、本発明の製造方法における製造条件を広く中炭素鋼の熱間加工プロセスへ適用することにより、本発明の熱間圧延棒鋼線材の材質特性を有する鋼材を製造することが可能となる。
図10に、図2の予測グラフ上に、実施例の一部と比較例のデータをプロットした結果を示す。図10は、図2のフェライト分率とオーステナイト粒径又はパンケーキ状オーステナイト粒界間隔の関係に実施例1〜5、比較例1〜17のうちの一部をプロットしたものである。オーステナイト粒径又はパンケーキ状オーステナイト粒界間隔を小さくすれば、フェライト分率が増大し、また、粒界フェライト粒厚さを大きくすれば、フェライト分率が増大し、推定が正しいことが実証されている。
次に、試験用熱間鍛造機又は試験用溝ロール圧延機を用いて行った試験<試験B>について説明する。試験Bは、試験Aで実施した加工熱処理シミュレーターの試験結果を実機による製造に応用することを考慮して行ったものである。そして、試験Bでは特に、熱間圧延棒鋼線材のフェライト分率fαと靭性との関係を定量化して明らかにする試験を行った。
<試験B> 試験用熱間鍛造機又は試験用溝ロール圧延機を用いた試験
(1)試験材の調製方法
表5に示す化学成分組成の鋼を溶製し、前記試験Aにおける前記(ii)の粗圧延+熱間鍛造素材と同じ方法により、厚さ38mm×幅38mm×長さ300mmの素材を調製し、これを試験材として熱間鍛造試験及び熱間溝ロール圧延試験を行った。いずれの試験においても、グリーブル圧縮試験の時と同様に、試験材の中心部に対して、鍛造試験では所定の圧下率の加工を、また、溝ロール圧延試験では所定の減面率の加工を加え、中心部に注目して試験を行った。
(2)実施例18
(試験方法)
表6に、試験方法の概要を示す。表5の成分符号がS45CSの成分組成を有する上記厚さ38mm×幅38mm×長さ300mmの素材の試験材を、950℃に再加熱して1hr保持し、空冷して750℃〜800℃において鍛造した。鍛造方法は、試験材の片側長さ180mm部分につき厚さ38mmを1回の平鍛造により19.5mmにし、直ちに90度回転して当初の幅38mmが鍛造により38〜70mm程度となった材料の長さ中央部の幅(幅=約70mm)を、19.5mmに平鍛造した。このとき、試験材の中心部における圧下率が85%に相当する圧縮加工がなされた。鍛造時の温度挙動は、1回目の平鍛造では加工発熱により750℃から790まで上昇し、2回目の平鍛造では加工発熱により760℃から800℃まで上昇した。
鍛造終了後、平均冷却速度4.1℃/secで650℃まで冷却し、ここで30min恒温保持した後、空冷した。
こうして常温まで冷却した試験材の中心部から確性用の試験片を切り出して確性試験に供した。確性試験項目は、走査型電子顕微鏡(SEM)による金属組織の観察、平均フェライト粒径dαの測定、画像処理によるフェライト分率fαの測定及びビッカース試験による硬さHの測定とした。更に、JIS Z2242に準拠したシャルピー衝撃試験を行った。幅×高さ×長さ=10×10×55mmの2mmVノッチ試験片を用いて吸収エネルギーを測定し、上部棚エネルギー(USE)を求めた。
(試験結果)
表6に試験結果を示す。平均フェライト粒径dαは3.0μm、フェライト分率fαは65%であり、フェライト−パーライト複相組織を呈しており、本発明の棒鋼線材の必須要件を満たしている。また、ビッカース硬さHは199であり、引張強さ換算で632MPa程度の高強度を有している。一方、シャルピー衝撃上部棚エネルギーUSEは113Jと優れた靭性が得られており、目標が達成されている。
以上の通り、実施例18により、本発明の熱間圧延棒鋼線材が得られていることが確認される。
(2)比較例18、19
(試験方法)
表6に、試験方法の概要を示す。比較例18では、表5の成分符号がS55Cの成分組成を有する上記厚さ38mm×幅38mm×長さ300mmの素材の試験材を、また、比較例19では、表5の成分符号がS45CSの成分組成を有する上記厚さ38mm×幅38mm×長さ300mmの素材の試験材を、それぞれ、950℃に再加熱して1hr保持した。空冷して900℃から750℃の温度範囲内において、溝ロール圧延を行った。
比較例18では、6パスの多方向圧延を行って23.5mm角の棒鋼としたが、この圧延において850℃以下750℃以上の温度範囲内における圧延は第3から第6パスまでの4パスとし、その減面率は55%とした。一方、比較例19では、7パスの多方向圧延を行い、21.3mm角の棒鋼としたが、この圧延において850℃以下750℃以上の温度範囲内における圧延は第3から第7パスまでの5パスとし、その減面率は63%とした。ここで、減面率は圧下率とみなすことができる。
圧延終了後、比較例18,19共に、平均冷却速度5℃/secで650℃まで冷却し、ここで30min恒温保持した後、空冷した。
こうして常温まで冷却した試験材の中心部から確性用の試験片を切り出して確性試験に供した。確性試験項目は、実施例18と同じく、走査型電子顕微鏡(SEM)による金属組織の観察、平均フェライト粒径dαの測定、画像処理によるフェライト分率fαの測定及びビッカース試験による硬さHとした。更に、JIS Z2242に準拠したシャルピー衝撃試験を行った。幅×高さ×長さ=10×10×55mmの2mmVノッチ試験片を用いて吸収エネルギーを測定し、上部棚エネルギー(USE)を求めた。
(試験結果)
表6に試験結果を示す。比較例18,19のそれぞれにおいて、平均フェライト粒径dαは5.0μm、7.8μmであり、フェライト分率fαは21%、45%である。いずれも本発明の棒鋼線材の必須要件を満たしていない。
一方、いずれも、フェライト−パーライト複相組織を呈しており、ビッカース硬さHは224、198であり、引張強さに換算すると、709MPa、629MPa程度であり、高強度を有している。
しかしながら、シャルピー衝撃上部棚エネルギーUSEは、49J、89Jであって、比較例18,19のいずれも目標とした靭性が得られず、特にC含有量が0.57%である比較例18では靭性が不十分になっている。
(フェライト分率と靭性の関係について)
実施例18及び比較例18,19で得られた結果より、フェライト分率とシャルピー衝撃上部棚エネルギーとの関係を図11に示す。
図11より、本発明の熱間圧延棒鋼線材が、優れた靭性として100J以上を有するためには、フェライト分率fαを60%以上とすべきとした前記図5が支持されていることが分かる。
熱間圧縮加工により等軸オーステナイトからパンケーキ状オーステナイトの粒界にフェライトが変態生成する状況を説明する模式図である。 図1に示した等軸オーステナイト粒径dγ又はパンケーキ状オーステナイト粒界間隔THγを変化させたときのフェライト分率fαの計算値を、粒界フェライト粒厚さTHαを5μm又は3μmと仮定して示した図である。 C含有量=0.15%の低炭素鋼を用いた800℃での熱間圧縮加工試験で得られたパンケーキ状オーステナイト粒界間隔THγと粒界フェライト粒厚さTHαとの実験結果を示す図である。 公知の計算ソフト「Thermo−calc」を用い、セメンタイトが析出しないと仮定して、720℃、650℃、630℃又は600℃まで過冷できたとした場合のC含有量とオーステナイト−フェライト平衡分率の計算値(フェライト分率)との関係を求めた図である。 公知技術によりまとめ直したフェライト分率fα(%)とシャルピー衝撃上部棚エネルギーUSE(J)との関係を示す図である。 実施例及び比較例におけるグリーブル2000試験機によるアンビル圧縮試験方法を説明する図である。 実施例1の顕微鏡組織写真を例示する図である。 比較例9の顕微鏡組織写真を例示する図である。 実施例及び比較例の一部で得られたフェライト分率の予測値と実測値フェライト分率fαとの相関性を示す図である。 図2の予測グラフ上に実施例の一部と比較例のデータをプロットした図である。 実施例及び比較例で得られた結果により得られたフェライト分率とシャルピー衝撃上部棚エネルギーとの関係を示す図である。
符号の説明
1 等軸オーステナイト
2 パンケーキ状オーステナイト
3 粒界アロトリオモルフフェライト
4 試験材
5 アンビル
6 アンビル圧縮加工方向

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.30〜0.55%、Si:0.10〜0.60%、Mn:0.50〜1.50%、S:0.005〜0.065%、Al:0.001〜0.060%、Cr:0.12〜0.15%を含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなる化学成分組成を有し、フェライト分率fα(面積%)が、下記(1)式:
    60≦fα≦100−45.5C ・・・・・・・・・(1)
    但し、CはC含有量であって、0.30%≦C≦0.55%
    を満たすフェライトと、残部のパーライトからなるフェライト−パーライト複相組織を有し、平均フェライト粒径が2.5〜4.5μmの範囲内にあることを特徴とする熱間圧延棒鋼線材。
  2. 前記熱間圧延棒鋼線材の硬さがビッカース硬さで190〜240の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の熱間圧延棒鋼線材。
  3. 質量%で、C:0.30〜0.55%、Si:0.10〜0.60%、Mn:0.50〜1.50%、S:0.005〜0.065%、Al:0.001〜0.060%、Cr:0.12〜0.15%を含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなる化学成分組成を有する鋼片を850〜950℃の温度範囲内で再加熱し、引続き750〜850℃の温度範囲内で減面率Rが、R≧70%となるように熱間加工を施した後、得られた加工材を500℃以下の温度まで冷却するに際して、500℃までの平均冷却速度を3〜15℃/secの範囲内で冷却することを特徴とする熱間圧延棒鋼線材の製造方法。
  4. 質量%で、C:0.30〜0.55%、Si:0.10〜0.60%、Mn:0.50〜1.50%、S:0.005〜0.065%、Al:0.001〜0.060%、Cr:0.12〜0.15%を含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなる化学成分組成を有する鋼片を再加熱して仕上がり温度が900〜950℃の範囲内で熱間加工し、引続き750〜850℃の温度範囲内で減面率Rが、R≧70%となるように熱間加工を施した後、得られた加工材を500℃以下の温度まで冷却するに際して、500℃までの平均冷却速度を3〜15℃/secの範囲内で冷却することを特徴とする熱間圧延棒鋼線材の製造方法。
  5. 加工材を500℃以下の温度まで冷却するに際して、500℃までの平均冷却速度を3〜15℃/secの範囲内で冷却する過程で、更にAr以下且つパーライト変態開始温度以上の温度範囲内で恒温保持処理することを特徴とする請求項3又は4に記載の熱間圧延棒鋼線材の製造方法。
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