JP5489738B2 - モータ制御装置および光学機器 - Google Patents
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Description
ただし、ステッピングモータは、負荷が大きくなったり高速回転させたりすると、脱調を生じるおそれがある。このため、ステッピングモータに、ロータの回転位置を検出するエンコーダを取り付け、ロータの回転位置に応じてコイルへの通電状態を切り替える、いわゆるブラシレスDCモータと同様の動作を行わせることで、脱調を防ぐ方法が提案されている。以下の説明において、ステッピングモータの開ループ制御による駆動モードをパルスモードと称し、ブラシレスDCモータと同様の制御による駆動モードをブラシレスモードと称する。
そこで、ホール素子の出力信号と該ホール素子の出力信号に対するモータを駆動させるための遅れ駆動パルス信号との位相差である遅延角を、駆動パルス信号の極性が変化するごとに所定値だけ増減させていくことで遅延角を変化(増減)させるようにしてもよい。つまり、駆動パルス信号を生成するごとに遅延角を細かく変化させていくことで進相させていく遅延角操作を行ってもよい。
しかしながら、このような遅延角操作で加減速制御を行う際に遅延角操作を進めていくと、モータを駆動するための駆動パルス信号とホール素子の出力信号との位相関係が逆転してしまう。この場合、基準とするホール素子の出力信号の出力タイミングから駆動パルス信号を生成しているためにモータの制御が不能となり、目標最高速度まで加速することができなくなる。
また、パルスモードからブラシレスモードへモードに移行する場合に、生成したい駆動パルス信号に対してパルス信号生成の基準とするホール素子の出力信号を選択する操作が必要となる。このとき、生成したい駆動パルス信号に対して信号出力タイミング的に遠方に位置するホール素子の出力信号を選択すれば、そこからの位相差から大きな遅延角を得ることができる。これにより、駆動パルス信号とホール素子の出力信号の位相関係の逆転を遅らせることができ、位相関係の逆転を生じさせず、ホール素子の出力信号の切り替えをしなくてもモータを目標最高速度まで加速できる可能性が高まる。
しかし、パルスモードからブラシレスモードへの移行の際に取得した遅延角に検出誤差が含まれた場合、遅延角操作が長くなるほど検出誤差の及ぼす影響が大きくなる。これにより、2相の駆動パルス信号(A相駆動パルス信号とB相駆動パルス信号)間の位相差が、電気角90°からずれてしまうという位相ずれの問題が発生する。
第1の信号と第2の信号との間で基準信号を切り替える基準信号切り替えを行う信号切り替え手段と、第1の信号および第2の信号のうち、基準信号切り替えの直前に基準信号であった信号とは異なる信号と第3の信号との間の遅延角を、基準信号切り替えの直後の初期遅延角として設定する初期遅延角設定手段とを有することを特徴とする。
また、本発明の他の一側面としてのモータ制御装置は、マグネットを有するロータ、第1のコイルおよび第2のコイルを有するモータの駆動を制御する。該モータ制御装置は、互いに異なる位相に配置され、ロータの回転位置を検出する第1のロータ位置検出手段および第2のロータ位置検出手段と、第1のロータ位置検出手段が出力した第1の信号および第2のロータ位置検出手段が出力した第2の信号のうち一方を基準信号として、モータを駆動するためのパルス信号である第3の信号を生成する駆動パルス信号生成手段と、基準信号と第3の信号との位相差である遅延角を増減させる遅延角操作手段と、第3の信号に基づいてモータを駆動する駆動手段と、
所定の時間間隔で第1および第2のコイルへの通電状態を切り替える第1の駆動モードでモータの駆動を開始した後、遅延角に応じて通電状態を切り替える第2の駆動モードでモータを駆動して目標速度に加速する駆動モード移行手段とを有する。駆動モード移行手段は、第1および第2の信号のうち、第1の駆動モードから第2の駆動モードへの移行の直前における第3の信号との間の遅延角が小さい方の信号との間の該遅延角を、第2の駆動モードの初期遅延角として設定することを特徴とする。
なお、上記モータ制御装置によって、光学素子を移動させるモータの駆動を制御する光学機器も本発明の他の一側面を構成する。
(ステッピングモータの構成について)
図1には、本発明の実施例であるモータ制御装置により駆動が制御されるステッピングモータの構成を示している。説明のため、ステッピングモータの一部を破断して示している。
磁気センサ6は、ホール素子であり、マグネット2からの磁束の変化を検出することでロータ3の回転位置を検出する非接触方式の回転位置検出器である。1つの磁気センサ6の中に、第1の感磁極(第1のロータ位置検出手段)6aおよび第2の感磁極(第2のロータ位置検出手段)6bが設けられている。
第1および第2の感磁極6a,6bは、マグネット2の回転に伴う磁界(磁束密度)の変化を感知する。第1および第2の感磁極6a,6bはそれぞれ、第1のロータ位置検出手段および第2のロータ位置検出手段に相当する。
ただし、磁気センサ6をアナログ信号を出力するセンサとし、該信号に基づくアナログ制御でステッピングモータ1を制御するようにしてもよい。
(ホール素子信号の位相関係について)
図3には、本実施例におけるステッピングモータ1内における磁気センサ6とその2つの感磁極6a,6bと第1および第2のヨーク5a,5bの配置を示す。第1および第2の感磁極6a,6bは、物理角で22.5°離れた位置(すなわち、互いに異なる位相)に配置されている。また、第1の感磁極6aから67.5°離れた位置に第1のヨーク5aが存在し、第1のヨーク5aから22.5°離れた位置に第2のヨーク5bが存在する。
22.5°はセンサ出力の1波長を360°とした電気角に直すと90°に相当する。第1および第2のヨーク5a,5bは物理角で90°毎(電気角で360°毎)に4つずつ配置されている。
磁気センサ6の第1および第2の感磁極6a,6bからの出力信号を、以下、ホール素子信号ともいう。また、第1および第2の感磁極6a,6bからの出力信号はそれぞれ、第1の信号および第2の信号に相当する。
(ブラシレスモード構成について)
図4には、ブラシレス制御を行うためのモータ制御装置の全体構成を示す。ステッピングモータ1に設けられた磁気センサ6(第1および第2の感磁極6a,6b)からのホール素子信号H1,H2は、ホール素子信号検出回路7で2値化される。該2値化されたホール素子信号は、マイクロコンピュータ(以下、マイコンという)11の信号計測処理部8へと送られる。ここでは、ホール素子信号の極性が変化する毎にタイマカウント値を取得して更新していく。
信号計測処理部8では、駆動パルス出力処理部10から出力された駆動パルス信号の計測も行う。ここでも駆動パルス信号の極性が変化する毎にタイマカウント値を取得して更新していく。
駆動パルス信号は、ステッピングモータ1に励磁切り替え(第1および第2のコイル4a,4bの通電状態の切り替え)を行わせるために生成される信号であり、第3の信号に相当する。
ホール素子信号と駆動パルス信号のタイマカウント値から、遅延角操作部(遅延角操作手段)9で遅延角を決定する。ここにいう遅延角とは、ホール素子信号と駆動パルス信号との位相差である。遅延角は、時間データとして取得してもよいし、電気角に換算したデータとして取得してもよい。本実施例では、電気角データとして取得した遅延角として説明する。
駆動パルス出力処理部(駆動パルス信号生成手段)10は、決定された遅延角に基づいてA相およびB相の駆動パルス信号を生成し、モータドライバ(駆動手段)12に出力する。モータドライバ12は、該駆動パルス信号に基づいてステッピングモータ1の励磁切り替えを行う。
(パルスモードについて)
図1に示したステッピングモータ1の駆動は、パルスモード(第1の駆動モード)での制御が可能である。パルスモードとは、通常のステッピングモータの開ループ制御に相当し、所定の時間間隔で第1および第2のコイル4a,4bの通電状態を切り替えるモードである。すなわち、入力された駆動パルス間隔(駆動周波数)と回転方向に従って、第1および第2のコイル4a,4bの通電を順次切り替えることで、ロータ3を目標速度で回転させる。また、入力された駆動パルス数に従って、ロータ3を目標角度だけ回転させることが可能である。
(ブラシレスモードについて)
ステッピングモータ1の駆動は、ブラシレスモード(第2の駆動モード)での制御も可能である。すなわち、入力された駆動パルス数と回転方向、およびホール素子信号と駆動パルス信号のタイマカウント値から遅延角操作部9で決定する遅延角に従って、第1および第2のコイル4a,4bの通電状態を順次切り替える。これにより、ロータ3を目標角度だけ回転させることが可能である。
このようにブラシレスモードは、ホール素子信号の極性の変化を基準として駆動パルス信号(第3の信号)を生成してステッピングモータ1を駆動するモードである。生成する駆動パルス信号は、ホール素子信号に対して遅れを持った信号(遅れ信号)となる。
本実施例では、1つのホール素子信号に対して1つの駆動パルス信号を生成するが、他の生成方法を採用してもよい。また、遅延角操作部9で遅延角を制御することで、トルク−回転数特性を変化させることが可能である。
(モータ駆動シーケンスについて)
図6には、本実施例でのステッピングモータ1の起動から停止までの駆動シーケンスを示している。本実施例では、パルスモードで加速制御を開始し、ブラシレスモードに移行する。ブラシレスモード中は、磁気センサ6の2つの感磁極6a,6bからの2つの出力信号のうち一方であって、駆動パルス信号を生成する基準信号となるホール素子信号を切り替えながらステッピングモータ1を目標速度(目標最高速度)まで加速する。駆動パルス信号を生成する基準信号となるホール素子信号を、以下、基準ホール素子信号という。
その後、加速制御と同様に基準ホール素子信号を切り替えながらパルスモードへの移行点まで減速制御を行う。そして、再びパルスモードに切り替え、入力された駆動パルス数に達することに応じてステッピングモータ1を停止させる。
(駆動全体の制御フローについて)
図6に示した駆動シーケンスを実行するための処理の流れを、図14〜16のフローチャートを用いて説明する。
まず図14のフローチャートは、ステッピングモータ1の駆動開始(加速制御の開始)から減速制御に移行するまでの処理を示す。以下の説明において、「S」はステップを意味する。また、図14〜16の処理は、マイコン11がコンピュータプログラムに従って実行する。
マイコン11は、磁気センサ6の2つの感磁極6a,6bからの2つの出力信号の間で基準ホール素子信号を切り替える基準信号切り替えを行う信号切り替え手段として機能する。マイコン11は、感磁極6a,6bからの2つの出力信号のうち、基準信号切り替え直前に基準ホール素子信号であった信号とは異なる信号と駆動パルス信号との間の遅延角を基準信号切り替え直後の初期遅延角として設定する初期遅延角設定手段としても機能する。また、マイコン11は、パルスモードとブラシレスモードとを切り替える駆動モード移行手段として機能する。
S101では、マイコン11は、パルスモードでのステッピングモータ1の駆動(加速制御)を開始する。そして、駆動中に、S102において、マイコン11は、基準ホール素子信号を決定する。これについては後述する。
S103では、マイコン11は、制御周期が所定周期に達したか否かを判定し、達しない場合はパルスモードでの駆動を繰り返す。一方、所定周期に達するとS104に進む。
S104では、マイコン11はブラシレスモードに移行し、加速時において遅延角を変化(増減)させる遅延角操作を行う。このとき、S105で、マイコン11は、遅延角を取得していく。具体的には、第1の感磁極6aからのホール素子信号H1とA相およびB相駆動パルス信号との位相差である遅延角と、第2の感磁極6bからのホール素子信号H2とA相およびB相駆動パルス信号との位相差である遅延角とを取得していく。マイコン11は、遅延角の値が所定値まで減少するまでこの遅延角操作を繰り返す。
そして、S106では、マイコン11は遅延角が所定値まで減少したか否かを判定し、所定値まで減少するとS107に進み、基準ホール素子信号の切り替えを行う。S108では、マイコン11は、基準ホール素子信号の切り替えに使用した遅延角を記憶(保持)しておく。
マイコン11は、以上の処理を、S108にてステッピングモータ1の回転速度が目標最高速度に達するまで繰り返し行う。
図15には、ステッピングモータ1の回転速度が目標最高速度に達した後、減速制御に移行して駆動を停止させるまでの処理(第1の減速処理)を示している。
S201では、マイコン11は、減速の遅延角操作を行う。このとき、S202で、S105と同様に遅延角を取得していく。マイコン11は、S203で、遅延角の値が所定値(第1の所定値)まで増加するまで遅延角操作を行う。
そして、遅延角の値が所定値まで増加すると、マイコン11は、S204にて基準ホール素子信号の切り替え(基準信号切り替え)を行う。
なお、上述した第1の減速処理に代えて、以下の第2の減速処理を行ってもよい。S201およびS202で、マイコン11は、減速の遅延角操作と遅延角取得とを行う。そして、S203にて、遅延角の値が図14のS108にて保持した加速制御時の遅延角の記憶値まで増加することに応じて、マイコン11は、S204にて基準ホール素子信号の切り替え(基準信号切り替え)を行う。
マイコン11は、S201〜S204の制御を、S205にて制御周期がパルスモード切り替え周期(所定周期)に達するまで繰り返し行う。制御周期がパルスモード切り替え周期に達すると、マイコン11はS206に進み、パルスモードへの切り替えを行い、さらに与えられた駆動パルス数に達するとステッピングモータ1を停止させる。
図16には、減速制御時において図15に示した処理とは異なる基準ホール素子信号の切り替え条件を用いた場合の処理(第3の減速処理)を示している。
S301では、マイコン11は、減速の遅延角操作を行う。このとき、S302で、S202(S105)と同様に遅延角を取得していく。ここで、例えば、ホール素子信号H1でA相駆動パルス信号を生成しているとき、ホール素子信号H2とA相駆動パルス信号の遅延角を遅延角1とし、ホール素子信号H1とA相駆動パルス信号の遅延角を遅延角2とする。このとき、マイコン11は、S303で遅延角1が遅延角2より小さく、かつ遅延角1が加速制御時での基準ホール素子信号の切り替え条件としていた所定値(第2の所定値)まで増加するまで遅延角操作を繰り返し行う。
S303の条件を満たしたとき、マイコン11は、S304にて基準ホール素子信号の切り替え(基準信号切り替え)を行う。
マイコン11は、以上の制御を、S305にて制御周期がパルスモード切り替え周期(所定周期)に達するまで繰り返し行う。制御周期がパルスモード切り替え周期に達すると、マイコン11はS306に進み、パルスモードへの切り替えを行い、さらに与えられた駆動パルス数に達するとステッピングモータ1を停止させる。
S401では、マイコン11は、S105と同様に、ホール素子信号H1,H2とA相およびB相駆動パルス信号との位相差である遅延角を取得していく。
マイコン11は、以上の制御を繰り返し行うことで、ブラシレスモードへの移行時の駆動パルス信号生成用の基準ホール素子信号を決定する。
(パルスモードからブラシレスモードへの移行について)
以下、上述した処理と信号波形の変化との関係について説明する。図7はパルスモードからブラシレスモードへの移行時の信号波形の変化を示す。
マイコン11(遅延角操作部9)は、パルスモードでの駆動中に、ホール素子信号H1を基準としてA相駆動パルス信号を見たときの遅延角T1と、ホール素子信号H2を基準としてA相駆動パルス信号を見たときの遅延角T2とを通電切り替え毎に取得していく。このとき、B相駆動パルス信号に対しても同様の処理を行う。取得した遅延角T1,T2は毎回保持されるものではなく、毎回更新されていく。
また、マイコン11は、取得したホール素子信号H1を基準とした遅延角T1とホール素子信号H2を基準とした遅延角T2の大小を通電切り替え毎に比較する。比較は、A相およびB相のうち一方に限られるものではないが、本実施例では、A相駆動パルス信号で比較を行う。
このとき、B相駆動パルス信号に対しても同様の処理を行う。また、モード移行時に基準信号切り替えの直前の遅延角T1を所定値ΔTだけ減算して小さくして、ブラシレスモードでの初期遅延角として設定してもよい。
このような初期遅延角の設定を行うことで、ステッピングモータ1の個体差や磁気センサの検出値のばらつきがあっても、スムーズなモード移行を実現できる。また、遅延角の小さい方のホール素子信号を基準信号として選択することで、磁気センサの検出誤差による駆動パルス信号の位相ずれの影響を抑えることができる。
ブラシレスモードで加速する場合、マイコン11(遅延角操作部9)は、ホール素子信号と駆動パルス信号の位相差から電気角データとして取得した遅延角を所定値ΔTだけ減算して小さくして新たな遅延角を生成する。そして、その遅延角に基づいて駆動パルス信号を生成していく。つまり、通電切り替え毎に駆動パルス信号を先行させていくことで加速制御を行う。
図8(a)には、パルスモードからブラシレスモードへの移行直後の加速制御の開始時のA相およびB相駆動パルス信号とホール素子信号H1,H2の波形を示している。ここでは、ホール素子信号H1を基準としてA相駆動パルス信号を生成している場合を代表として説明するが、ホール素子信号H2を基準としたB相駆動パルス信号の生成についても同様である。
ホール素子信号H1とA相駆動パルス信号の位相差から電気角データとして取得した遅延角T1を所定値ΔTずつ減算して小さくしていく。この遅延角操作を進めていくと、図8(b)に示すように、ホール素子信号H1とA相駆動パルス信号の位相差が徐々に小さくなっていき、やがて図8(c)に示すようにホール素子信号H1とA相駆動パルス信号との関係が同位相となり、さらにこれが逆転する。これでは、ホール素子信号から駆動パルス信号を生成している場合、信号関係の逆転によってアルゴリズムに矛盾が生じ、モータ制御を行えなくなる。
そこで、本実施例では、マイコン11は、図9に示すように、A相駆動パルス信号を生成するための基準ホール素子信号を、ホール素子信号H1から、遅延角T1が所定値まで減少することに応じてホール素子信号H2に切り替える。図9は、ブラシレスモードでの加速制御における基準ホール素子信号切り替え前後のA相およびB相駆動パルス信号とホール素子信号H1,H2の波形を示している。このときの遅延角T1は、ブラシレスモードでの減速制御において基準ホール素子信号切り替えの判定に使用するため、記憶値として保持しておく。
そして、マイコン11は、基準ホール素子信号の切り替え直前における切り替え先の(すなわち、切り替え直前の基準ホール素子信号とは異なる)ホール素子信号H2に対するA相駆動パルス信号の遅延角T3を、切り替え直後の初期遅延角に設定する。このとき、切り替え直前の遅延角T3を所定値ΔTだけ減算して小さくし、切り替え直後の初期遅延角として設定してもよい。
さらに、マイコン11は、新たに取得した遅延角T3を、基準ホール素子信号の切り替え前と同様に、所定値ΔTずつ減算して小さくしていく遅延角操作を行うことで、さらなる加速制御を行う。
加速制御中に遅延角T3が所定値に達すると、A相駆動パルス信号を生成するための基準ホール素子信号を、ホール素子信号H2からホール素子信号H1に切り替える処理を再び行う。
以上の遅延角操作と基準ホール素子信号切り替えとを繰り返し行うことで、ステッピングモータ1の回転速度を目標最高速度まで加速する。同様に、B相駆動パルス信号を生成する場合も基準ホール素子信号の切り替えを行い、回転速度を目標最高速度に到達させる。
図10(a)には、ブラシレスモードの加速制御によってステッピングモータ1の回転速度を目標最高速度まで到達させた後、減速制御に移行した直後のA相およびB相駆動パルス信号とホール素子信号H1,H2の波形を示している。ここでは、ホール素子信号H1を基準としてA相駆動パルス信号を生成している場合を代表として説明するが、ホール素子信号H2を基準としたB相駆動パルス信号の生成についても同様である。
ホール素子信号と駆動パルス信号の位相差から電気角データとして取得した遅延角T4を所定値ΔTずつ加算して大きくしていく。この遅延角操作を進めていくと、図10(b)に示すように、ホール素子信号H1とA相駆動パルス信号との位相差が徐々に大きくなっていき、やがて加速制御時と同様にホール素子信号と駆動パルス信号の関係が逆転してしまう。
そこで、本実施例では、マイコン11は、図11に示すように、A相駆動パルス信号を生成するための基準ホール素子信号を、ホール素子信号H1から、遅延角T4が所定値まで増加することに応じてホール素子信号H2に切り替える。
そして、マイコン11は、基準ホール素子信号の切り替え直前における切り替え先の(すなわち、切り替え直前の基準ホール素子信号とは異なる)ホール素子信号H2に対するA相駆動パルス信号の遅延角T5を切り替え直後の初期遅延角に設定する。このとき、切り替え直前の遅延角T5を所定値ΔTだけ加算して大きくし、切り替え直後の初期遅延角として設定してもよい。
さらに、マイコン11は、新たに取得した遅延角T5を、基準ホール素子信号の切り替え前と同様に、所定値ΔTずつ加算して大きくしていく遅延角操作を行うことで、さらなる減速制御を行う。
減速制御中に遅延角T5が所定値に達すると、A相駆動パルス信号を生成するための基準ホール素子信号を、ホール素子信号H2からホール素子信号H1に切り替える処理を再び行う。
以上のような遅延角操作と基準ホール素子信号切り替えとを繰り返し行い、ブラシレスモードからパルスモードへの切り替え速度まで減速させる。本実施例では駆動パルス信号の周期データから速度を算出し、所定速度に達したらモード切り替えを行うという条件だが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、ブラシレスモードからパルスモードへ切り替えたときの周期データを記憶し、記憶値に達したらモード切り替えを行うとしてもよい。
上述したブラシレスモードによる減速制御では、遅延角が所定値より大きくなることに応じて基準ホール素子信号を切り替える場合について説明したが、以下の基準ホール素子信号の切り替えを採用してもよい。すなわち、ブラシレスモードの加速制御において基準ホール素子信号の切り替えを行ったときの遅延角を記憶値として保持する。そして、ブラシレスモードの減速制御での基準ホール素子信号とは異なるホール素子信号と生成している駆動パルス信号との間の遅延角が該記憶値に等しくなる(該記憶値まで増加する)ことに応じて、基準ホール素子信号を切り替える。
図12には、ブラシレスモードでの減速制御における基準ホール素子信号切り替え前後のA相およびB相駆動パルス信号とホール素子信号H1,H2の波形を示している。ここでは、ホール素子信号H1を基準としてA相駆動パルス信号を生成している場合を代表として説明するが、ホール素子信号H2を基準としたB相駆動パルス信号の生成についても同様である。
マイコン11(遅延角操作部9)は、ホール素子信号H1とA相駆動パルス信号との位相差から電気角データとして取得した遅延角T6を、遅延角操作部9で遅延角を所定値ΔTずつ加算して大きくしている。この遅延角操作を進めていくと、他方のホール素子信号H2とA相駆動パルス信号との位相差から取得した遅延角T7が、ブラシレスモードでの加速制御において保持した基準ホール素子信号の切り替え時の遅延角T1に達する。これに応じて、マイコン11は、A相駆動パルス信号の生成のための基準ホール素子信号をホール素子信号H1からホール素子信号H2へと切り替える。
そして、マイコン11は、基準ホール素子信号の切り替え直前における切り替え先の(すなわち、切り替え直前の基準ホール素子信号とは異なる)ホール素子信号H2に対するA相駆動パルス信号の遅延角T7を、切り替え直後の初期遅延角に設定する。このとき、切り替え直前の遅延角T7を所定値ΔTだけ加算して大きくし、切り替え直後の初期遅延角として設定してもよい。
さらに、マイコン11は、新たに取得した遅延角T7を、基準ホール素子信号の切り替え前と同様に、所定値ΔTずつ加算して大きくしていく遅延角操作を行うことで、さらなる減速制御を行う。
この遅延角操作をさらに進めていくと、基準ホール素子信号とは異なるホール素子信号H1とA相駆動パルス信号との位相差である遅延角が加速制御で保持していたブラシレスモードでの加速制御の基準ホール素子信号2回目切り替え時の遅延角に達する。これに応じて、マイコン11は、A相駆動パルス信号の生成のための基準ホール素子信号をホール素子信号H2からホール素子信号H1へと切り替える。
以上の遅延角操作と基準ホール素子信号切り替えとを、B相駆動パルス信号の生成に関しても同様に返し行い、ブラシレスモードからパルスモードへの切り替え速度までブラシレスモードでの減速制御を行う。
(ブラシレスモードでの減速中における基準ホール素子信号とは異なるホール素子信号(以下、他方のホール素子信号という)を基準とした基準ホール素子信号の切り替えについて)
減速制御での基準ホール素子信号切り替えでは、以下の処理を行ってもよい。駆動パルス信号とその信号を生成するための基準ホール素子信号との間の遅延角と、駆動パルス信号と他方のホール素子信号との間の遅延角とを比較する。他方のホール素子信号との間の遅延角が基準ホール素子信号との間の遅延角よりも小さく、かつ他方のホール素子信号との間の遅延角が加速制御時の基準ホール素子信号の切り替え条件であった所定値まで増加したことに応じて基準ホール素子信号を切り替える。
図13には、ブラシレスモードでの減速制御における基準ホール素子信号切り替え前後のA相およびB相駆動パルス信号とホール素子信号H1,H2の波形を示している。ここでは、ホール素子信号H1を基準としてA相駆動パルス信号を生成している場合を代表として説明するが、ホール素子信号H2を基準としたB相駆動パルス信号の生成についても同様である。
マイコン11(遅延角操作部9)は、ホール素子信号H1とA相駆動パルス信号との位相差から電気角データとして取得した遅延角T8を所定値ΔTずつ加算して大きくしている。同時に、ホール素子信号H1とA相駆動パルス信号との間の遅延角T8とホール素子信号H2とA相駆動パルス信号との間の遅延角T9とを比較する。このとき、遅延角T9の方が小さく、かつ遅延角T9が加速制御時の基準ホール素子信号切り替え条件であった所定値より大きいときは、A相駆動パルス信号の生成のための基準ホール素子信号をホール素子信号H1からホール素子信号H2へと切り替える。
そして、マイコン11は、基準ホール素子信号の切り替え直前における切り替え先の(すなわち、切り替え直前の基準ホール素子信号とは異なる)ホール素子信号H2に対するA相駆動パルス信号の遅延角T9を切り替え直後の初期遅延角として設定する。このとき、切り替え直前の遅延角T9を所定値ΔTだけ加算して大きくし、切り替え直後の初期遅延角として設定してもよい。
さらに、マイコン11は、新たに取得した遅延角T9を基準ホール素子信号の切り替え前と同様に、遅延角を所定値ΔTずつ加算して大きくしていく遅延角操作を行う。これにより、ホール素子信号H2とA相駆動パルス信号との間の遅延角とホール素子信号H1とA相駆動パルス信号との間の遅延角との比較を行いながらさらなる減速制御を行う。
その後、遅延角操作を進めた結果、他方のホール素子信号H1とA相駆動パルス信号との間の遅延角の方が小さく、かつ該遅延角が加速制御時の基準ホール素子信号の切り替え条件であった所定値よりも大きくなる。これに応じて、マイコン11は、A相駆動パルス信号の生成のための基準ホール素子信号をホール素子信号H2からホール素子信号H1へと切り替える。
以上の遅延角操作と基準ホール素子信号の切り替えとを、B相駆動パルス信号の生成に関しても同様に繰り返し行い、ブラシレスモードからパルスモードへの切り替え速度までブラシレスモードでの減速制御を行う。
(ブラシレスモードからパルスモード切り替えについて)
ブラシレスモードからパルスモードへの切り替え速度まで減速した場合、マイコン11は、駆動パルス信号の極性状態がHighかLowかを判別する。そして、パルスモードの初期出力をモード切り替え点の極性状態に対応させて第1および第2のコイル4a,4bへの通電を切り替える。
以上の処理によってブラシレスモードからパルスモードへの切り替えを行ったマイコン11は、駆動パルス信号のカウント値が入力された駆動パルス数に達することに応じてステッピングモータ1の駆動を停止する。
(カメラシステムへの適用について)
次に、前述したモータ制御装置をカメラシステムに適用した場合について説明する。図5には、一眼レフカメラと該カメラに対して着脱可能な交換レンズとにより構成されたカメラシステムの構成例を示している。
101はカメラであり、102は交換レンズである。カメラ本体101内には、電気回路部103が設けられている。電気回路部103は、交換レンズ102内の撮影光学系を通ってきた光の量を測定するための測光部104と、撮影光学系の焦点状態を検出して撮影光学系のフォーカス制御を行うAF部105を含む。また、電気回路部103は、撮影光学系により形成された被写体像を光電変換する撮像素子(CCDセンサやCMOSセンサ等)107と、該撮像素子107の露光を制御するシャッター106を含む。さらに、電気回路部103は、カメラ101内の上記各部の制御を司るカメラCPU108と、交換レンズ102との通信を行う通信部109を含む。カメラ101内には、該カメラ101と交換レンズ102に電力を供給する電源110が設けられている。
交換レンズ102には、フォーカスレンズ(光学素子)111、変倍レンズ112、絞り113を含む撮影光学系が収容されている。また、交換レンズ102には、変倍レンズ112の位置を検出するズーム位置検出ブラシ114と、フォーカスレンズ111の位置を検出するエンコーダ115と、電気回路部116とが設けられている。
電気回路部116は、カメラ101との間で通信を行う通信部117と、交換レンズ102の各部の制御を行うレンズCPU118と、フォーカスレンズ111を移動させるレンズ駆動用モータ120と、該モータ120を駆動するモータドライバ119とを含む。また、電気回路部116は、絞り113の動作を制御する絞り制御部121と、絞り113を駆動する絞り駆動用モータ122とを含む。
レンズCPU118は、図4に示したマイコン11を含む。また、レンズ駆動用モータ120は、図1に示したステッピングモータ1に相当する。レンズCPU118にはレンズ駆動用モータ120に設けられたホール素子(磁気センサ)からの出力信号が入力されており、レンズCPU118はA相およびB相の駆動パルス信号を生成してモータドライバ119に送る。図4に示したモータドライバ12に相当するモータドライバ119は、入力された駆動パルス信号に基づいてレンズ駆動用モータ120を駆動する。
このように構成されたカメラシステムにおいて、先に説明したように、ブラシレスモードでの加減速中に駆動パルス信号を生成する基準となる基準ホール素子信号の切り替えを繰り返し行う。これにより、レンズ駆動用モータ120、つまりはフォーカスレンズ111を目標最高速度でパルスモードへの切り替え点まで加速又は減速することが可能となる。
また、コイル4a,4bの通電状態の切り替え毎に遅延角を取得し、該取得した遅延角に対する遅延角操作を行っているので、ステッピングモータの個体差やホール素子信号の検出むらの影響を受けにくいモータ制御を実現することができる。
以上説明した実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
4a 第1のコイル
4b 第2のコイル
6 磁気センサ
11 マイコン
12 モータドライバ
Claims (5)
- マグネットを有するロータ、第1のコイルおよび第2のコイルを有するモータの駆動を制御するモータ制御装置であって、
互いに異なる位相に配置され、前記ロータの回転位置を検出する第1のロータ位置検出手段および第2のロータ位置検出手段と、
前記第1のロータ位置検出手段が出力した第1の信号および前記第2のロータ位置検出手段が出力した第2の信号のうち一方を基準信号として、前記モータを駆動するためのパルス信号である第3の信号を生成する駆動パルス信号生成手段と、
前記基準信号と前記第3の信号との位相差である遅延角を変化させる遅延角操作手段と、
前記第3の信号に基づいて前記モータを駆動する駆動手段と、
前記第1の信号と前記第2の信号との間で前記基準信号を切り替える基準信号切り替えを行う信号切り替え手段と、
前記第1の信号および前記第2の信号のうち、前記基準信号切り替えの直前に前記基準信号であった信号とは異なる信号と前記第3の信号との間の前記遅延角を、前記基準信号切り替えの直後の初期遅延角として設定する初期遅延角設定手段とを有することを特徴とするモータ制御装置。 - 前記信号切り替え手段は、前記モータの加速制御時において、前記遅延角が所定値まで減少したことに応じて前記基準信号切り替えを行うことを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
- 前記信号切り替え手段は、
前記モータの減速制御時において、前記遅延角が第1の所定値まで増加したことに応じて前記基準信号切り替えを行う第1の減速処理と、
前記モータの加速制御時において前記信号切り替え直後の前記基準信号と前記第3の信号との間の前記遅延角を記憶値として保持し、前記モータの減速制御時において前記第3の信号と前記第1および第2の信号のうち前記基準信号ではない信号との間の位相差である遅延角と前記記憶値とが等しくなったことに応じて前記基準信号切り替えを行う第2の減速処理と、
前記第1の信号と前記第3の信号との位相差である遅延角と、前記第2の信号と前記第3の信号との位相差である遅延角とを比較し、前記遅延角操作手段によって変化されている前記遅延角とは異なる遅延角の方が小さく、かつ該小さい方の遅延角が第2の所定値まで増加したことに応じて前記基準信号切り替えを行う第3の減速処理のうちいずれかを行うことを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。 - マグネットを有するロータ、第1のコイルおよび第2のコイルを有するモータの駆動を制御するモータ制御装置であって、
互いに異なる位相に配置され、前記ロータの回転位置を検出する第1のロータ位置検出手段および第2のロータ位置検出手段と、
前記第1のロータ位置検出手段が出力した第1の信号および前記第2のロータ位置検出手段が出力した第2の信号のうち一方を基準信号として、前記モータを駆動するためのパルス信号である第3の信号を生成する駆動パルス信号生成手段と、
前記基準信号と前記第3の信号との位相差である遅延角を増減させる遅延角操作手段と、
前記第3の信号に基づいて前記モータを駆動する駆動手段と、
所定の時間間隔で前記第1および第2のコイルへの通電状態を切り替える第1の駆動モードで前記モータの駆動を開始した後、前記遅延角に応じて前記通電状態を切り替える第2の駆動モードで前記モータを駆動して目標速度に加速する駆動モード移行手段とを有し、
前記駆動モード移行手段は、前記第1および第2の信号のうち、前記第1の駆動モードから前記第2の駆動モードへの移行の直前における前記第3の信号との間の前記遅延角が小さい方の信号との間の該遅延角を、前記第2の駆動モードの初期遅延角として設定することを特徴とするモータ制御装置。 - マグネットを有するロータ、第1のコイルおよび第2のコイルを有するモータと、
該モータによって移動される光学素子と、
前記モータの駆動を制御する請求項1から4のいずれか1項に記載のモータ制御装置とを有することを特徴とする光学機器。
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