JP5482787B2 - 耐力に優れた鋳造用Al−Mg−Si系アルミニウム合金及びそれからなる鋳造部材 - Google Patents

耐力に優れた鋳造用Al−Mg−Si系アルミニウム合金及びそれからなる鋳造部材 Download PDF

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Description

本発明は耐力に優れた鋳造用Al-Mg-Si系アルミニウム合金、及びそれからなる鋳造部材に関する。
軽量化、複雑形状の加工容易性、製造コスト低減等の点で有利なアルミニウム合金の鋳造部材は各種の部品に広く使用されている。特に自動車等では省エネルギー及び燃費改善が要求されており、それを構成するアルミニウム合金鋳造部材にも一層の軽量化及び高品質化が望まれている。一般に車両等の構成部品に要求される機械的性質を満足するために、鋳造用アルミニウム合金は約200 MPa以上の耐力及び約3%以上の伸びを必要とし、特に薄肉化しても塑性変形し難い強度を有すべき自動車の車体を構成する部品等は約220 MPa以上の耐力を必要とする。
アルミニウム合金等の金属材料の耐力は結晶粒が小さくなるほど向上することが知られている。結晶粒サイズに影響を及ぼす因子の一つは凝固速度であり、凝固速度を上げると結晶粒が小さくなり、耐力が向上する。耐力の向上のために凝固速度を増大させるためには、鋳造部材を薄肉化するとともに、低圧鋳造法や重力鋳造法より高速で成形するダイカスト鋳造法を採用することが考えられる。しかし鋳造品の形状及び寸法の不均一化や鋳造欠陥の発生等のために、凝固速度の増加のみで耐力の向上を図るのには限界がある。
鋳造用アルミニウム合金としては、JIS ADC12やAC4B等の亜共晶Al-Si系アルミニウム合金がある。しかし、ADC12合金は鋳造性に優れているものの鋳放し状態での耐力は約150 MPaと低い。またAC4B合金は約200 MPaの耐力を確保するために、鋳造後に熱処理を施す必要がある。しかし、熱処理を行うと工程数や消費エネルギーの増加により製造コストが上昇し、また薄肉で複雑又は大型の鋳物の場合には変形や歪を生じ易く、その矯正のために更にコストが上昇するという問題がある。
熱処理を行わなくても高耐力を有するJIS ADC14のような過共晶Al-Si系合金も知られている。この合金は鋳放しで250 MPa程度の耐力を有するが、高Si含有量のために延性を低下させる硬くて脆いSi粒子が晶出しやすく、伸びが約1%未満と非常に低く、使用可能な鋳造部材が限られる。伸びが約1%未満では延性が十分でなく、落下による衝撃でも鋳造部材に亀裂や割れが生ずる虞がある。
鋳造用アルミニウム合金の高品質化への要求に応じて、最近ではAl-Si系アルミニウム合金とは異なるアルミニウム合金として、JIS ADC5、ADC6及びAC7A等のAl-Mg系のアルミニウム合金が使用されるようになってきた。これらのアルミニウム合金は熱処理なしでも優れた延性を示すが、強度は十分でなく、例えばADC5合金の耐力は約190 MPaにすぎない。またAl-Mg系アルミニウム合金はAl-Si系アルミニウム合金より湯流れ性に劣り、湯廻り欠陥を生じやすく、また凝固収縮量が多く鋳物内部の引け巣や鋳物表面の鋳造割れ(凝固割れ)を生じやすい等、鋳造性が悪い。言い換えると、Al-Mg系アルミニウム合金は、鋳造性を補うためのコスト増に見合うだけの耐力を有さない。
Al-Mg系アルミニウム合金の鋳造性を改善する試みとして、特開平5-163546号は、3.5〜8.5重量%のMg、1.5〜4.0重量%のSi、0.3〜1.0重量%のFe及び0.2〜0.6重量%のMnを含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるダイカスト用アルミニウム合金を提案している。Mg及びSiは相乗的に強度及び鋳造性に寄与し、鋳造割れを防止する。特開平5-163546号は、このアルミニウム合金が不純物としてCr、Cu、Ti、Zr及びZnを含有しても良いと記載している。
しかし、特開平5-163546号には鋳造割れ率、熱膨張係数及び引張り強さの記載があるものの、耐力及び伸びに関する記載はない。代表的な機械的性質である引張り強さを参考にして推定すると、特開平5-163546号のAl-Mg系アルミニウム合金の耐力は180 MPa程度と想定され、不十分である。このように、従来の鋳造用Al-Si系又はAl-Mg系のアルミニウム合金は鋳放しでは十分な伸び及び耐力を有さない。
従って本発明の目的は、鋳放し状態でも十分な伸び及び高い耐力を有し、車両等の軽量化に対応可能な鋳造用Al-Mg-Si系アルミニウム合金、及びかかるアルミニウム合金からなる鋳造部材を提供することである。
上記目的に鑑み種々の組成を有するAl-Mg-Si系アルミニウム合金のダイカスト鋳造品の鋳放し状態での機械的性質を調べた結果、本発明者等は、Mg、Si及びMnの含有量を最適化するとともに適量のCr及びCuを添加すると、合金組織中にCr及びCuが共存し、Al-Mg-Si系アルミニウム合金の耐力及び伸びが向上することを発見し、本発明に想到した。
すなわち、優れた耐力を有する本発明の鋳造用Al-Mg-Si系アルミニウム合金は、質量比で、4〜6%のMg、3.1〜4.5%のSi、0.5〜1%のMn、0.1〜0.3%のCr、及び0.1〜0.4%のCuを含有し、残部Al及び不可避的不純物からなることを特徴とする。
本発明の鋳造用Al-Mg-Si系アルミニウム合金はさらに0.05〜0.3質量%のTiを含有してもよい。
本発明の鋳造部材は上記Al-Mg-Si系アルミニウム合金からなる。
本発明の鋳造用Al-Mg-Si系アルミニウム合金は鋳放し状態でも十分な伸び及び高い耐力を有するので、それからなる鋳造部材は薄肉化しても塑性変形しない強度を有し、軽量化に対応可能である。しかも本発明の鋳造部材は熱処理が不要であるので、低コストで製造可能である。
[1] 鋳造用Al-Mg-Si系アルミニウム合金
本発明のAl-Mg-Si系アルミニウム合金を以下詳細に説明する。各合金元素の含有量は特に断りのない限り質量%で示す。
(1) Mg:4〜6%
MgはAl-Mg-Si系アルミニウム合金のマトリックス中に固溶して耐力を向上させる。またSiとMg2Siを形成し、特にMgとSiの重量比が0.92<Mg/Si<1.93となる組成では共晶Mg2Siが結晶粒界に晶出し、鋳造割れを抑制する。Mg含有量が4.0%未満では耐力の向上効果が十分ではなく、6.0%を超えるとSi含有量とのバランスが悪化し、鋳造割れの抑制効果が低下する。従って、Mg含有量は4〜6%であり、好ましくは4.5〜6%であり、より好ましくは5〜6%である。
(2) Si:3.1〜4.5%
Siはアルミニウム合金のマトリックス中に固溶して耐力の向上に寄与する。またMgと相まって鋳造割れを防止する。Siが3.1%未満では耐力向上効果が十分に発揮されず、4.5%を超えるとMg含有量とのバランスが悪化し、鋳造割れ防止効果が低下するとともに、延性の著しい低下を招く。従って、Si含有量は3.1〜4.5%であり、好ましくは3.5〜4.3%である。
(3) Mn:0.5〜1%
Mnはアルミニウム合金のマトリックス中に固溶し強度を向上させるほか、塊状のAl-Mn金属間化合物を晶出することにより溶湯が金型に焼付くのを防止する。Mnが0.5%未満ではこれらの効果が小さく、1%を超えると針状のAl-Mn金属間化合物が晶出して延性が低下する。従って、Mn含有量は0.5〜1%であり、好ましくは0.7〜0.9%である。
(4) Cr:0.1〜0.3%
Crはマトリックスに固溶し、Cuとの共存により延性を阻害することなく、耐力を向上させる。Crが0.1%未満ではその効果は不十分であり、0.3%を超えると粗大なAl-Mn-Si-Cr化合物が晶出して延性を阻害し、伸びを安定して確保することができない。従って、Cr含有量は0.1〜0.3%であり、好ましくは0.2〜0.3%である。
(5) Cu:0.1〜0.4%
CuはCrと同様にマトリックスに固溶して、耐力を向上させる。またCuとCrとの共存により、Cuの単独添加の場合より耐力の向上効果が大きい。Cuが0.1%未満ではその効果は不十分である。0.4%までは初晶に固溶して耐力は向上するが、0.4%を超えると、Cuは鋳放しで初晶に固溶しにくくなり、耐力向上が期待できないだけでなく、耐食性が低下する。従って、Cu含有量は、0.1〜0.4%であり、好ましくは0.2〜0.35%である。
上記の通り、本発明の鋳造用アルミニウム合金は、Cr及びCuの両方を含有することにより、鋳放し状態でも伸びの低下を招くことなく、耐力を大幅に向上できる。Cr及びCuはいずれもマトリックスを固溶強化するが、単独添加では耐力の向上はそれほど期待できない。Crの単独添加の場合、余剰のCrが粗大なAl-Mn-Si-Cr化合物として粒界に晶出し、アルミニウム合金の耐力向上に寄与しないだけでなく、延性を著しく阻害する。またCuの単独添加の場合、凝固につれて合金液相中にCuが濃化及び偏析し、初晶の粒界にCu濃化部が形成され、耐力向上に寄与しない。ところが、Cr及びCuの両方を添加した合金の凝固組織を詳しく観察した結果、Cr及びCuの両方が同じ部位でAl、Si及びMgと共存し、Crに起因するAl-Mn-Si-Cr化合物が相対的に減少するだけでなく、Cuに起因する初晶粒界のCu濃化部の割合が減少していることが確認された。この理由は必ずしも明確ではないが、Cr及びCuの存在形態から、Cr及びCuの両方が、伸びを阻害するCr含有金属間化合物やCuの偏析を増やすことなく初晶に共存することにより、効果的に耐力を向上させるものと推定される。Cr及びCuの合計量(Cr+Cu)は好ましくは0.2〜0.7%であり、より好ましくは0.3〜0.65%であり、最も好ましくは0.4〜0.6%である。
(6) Ti:0.05〜0.3%
Tiは結晶粒を微細化させてアルミニウム合金の強度及び延性を向上させるのみならず、合金溶湯が凝固収縮する際に発生する応力に抗して鋳造割れを防止する作用を有する。これらの作用を効果的に発揮させるためには、Tiを0.05%以上含有させるのが好ましい。高純度Al地金に不可避的不純物として含まれるTiは0.05%未満であるので、高純度Al地金を原料に用いる場合、上記効果を得るためにはTiを積極的に添加する必要がある。しかし、展伸材の5000系合金、ADC12合金等のアルミニウム合金スクラップ材、低純度Al地金等を原料とした場合、Tiは通常不可避的不純物として0.05%以上混入している。しかし、Tiが0.3%を超えるとAl-Ti金属間化合物が晶出し、アルミニウム合金の延性はかえって低下する。従って、Tiを添加する場合、Tiは0.05〜0.3%、好ましくは0.1〜0.2%とする。勿論、Tiを積極的に添加しない場合でも、上記下限より少ない量のTiを不純物として含有しても良い。
[2] 鋳造部材
本発明の鋳造部材は、重力鋳造法、低圧鋳造法、高圧鋳造法等の金型鋳造法により製造することができる。中でも、高圧鋳造法の一つであるダイカスト鋳造法を用いれば、急冷凝固により結晶粒が微細で緻密な鋳造組織が得られ、かつ鋳物表面に圧縮応力が作用するので、強度及び延性が向上した鋳造部材が得られる。ダイカスト鋳造法により薄肉部位にも溶湯を確実に充填できるので、寸法精度が良く鋳肌が美麗な鋳造部材を高い製造歩留で得ることができ、かつ生産サイクルを短縮できる。さらに真空ダイカスト鋳造法を用いれば、空気やガスの巻込みによる空孔の発生を抑制でき、また溶湯の流れがスムーズであるので、湯境等の湯廻り欠陥を低減できる。真空ダイカスト鋳造法は優れた機械的性質、特に高い耐力を有する鋳造部材を得るのに好適である。
本発明のAl-Mg-Si系アルミニウム合金からなる鋳造部材は、鋳造後に熱処理を施さなくても大きな伸び及び高い耐力を有する。例えば本発明のAl-Mg-Si系アルミニウム合金のダイカスト鋳造部材は、鋳放しで7μmの平均DAS(デンドライトアームスペーシング)、3%以上の伸び、及び220 MPa以上の耐力を有する。ここで平均DASは結晶粒径を表すパラメータである。さらに高い強度及び延性が要求される場合には、鋳造後に溶体化処理、時効処理等の熱処理を施しても良い。
このように良好な伸びを確保しつつ優れた耐力を有する本発明の鋳造部材は、高い機械的性質を必要とする車両等の構成鋳造部品に好適であり、例えば自動車や自動二輪車のシャシ部材、パワートレイン部材等(スペースフレーム、ステアリングホイールの芯金、シートフレーム、サスペンションメンバー、エンジンブロック、シリンダヘッドカバー、チェーンケース、ミッションケース、オイルパン、プーリ、シフトレバー、インスツルメントパネル、吸気用サージタンク、ペダルブラケット等)に使用するのに適している。
本発明を以下の実施例によりさら詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
実施例1〜22、及び比較例1〜41
表1-1及び表1-2は実施例1〜22及び比較例1〜41のアルミニウム合金の組成(表に示す合金元素以外は実質的にAl及び不可避的不純物)、及びそのダイカスト鋳造品の機械的性質を示す。比較例29〜31はADC12に相当する合金である。
組成のほかに平均DASの機械的性質への影響を調べるために、実施例及び比較例の各合金から、下記の方法により三種類の鋳造品A〜Cを作製した。
(A) 鋳造品A
実施例1〜9、12〜22、及び比較例1〜21、28、29、32〜34、37、40及び41のAl-Mg-Si系アルミニウム合金から、均一な肉厚を有する断面コの字状の鋳造品A(幅25 mm、長さ80 mm、高さ20 mm、及び肉厚3 mm)を以下の方法により製造した。まず各合金用の原料として工業用の純Al、純Mg、純Si、及び必要な金属元素を表1-1及び表1-2に示す割合で黒鉛製坩堝に装入し、大気中で750〜770℃で溶解し、得られた溶湯に対してアルゴンガスバブリングによる脱ガス処理を行って、介在物及び水素を除去した。型締め力350トン、及びプランジャチップ直径60 mmのダイカスト鋳造機を用いて、150〜300℃の金型温度、700〜740℃の給湯温度、及び2〜3 m/sの射出速度で、各合金溶湯をダイカスト鋳造した。得られた各鋳造品Aを空冷し、鋳放しのまま機械的性質の測定に用いた。
(B) 鋳造品B
実施例10、及び比較例22〜24、30、35及び38のAl-Mg-Si系アルミニウム合金から、鋳造品Aと同じ条件で平板形状の鋳造品B(幅100 mm、長さ200 mm、及び肉厚3 mm)を製造した。
(C) 鋳造品C
実施例11、及び比較例25〜27、31、36及び39のAl-Mg-Si系アルミニウム合金から、鋳造品Aと同じ条件で平板形状の鋳造品C(幅100 mm、長さ200 mm、及び肉厚2 mm)を製造した。
各鋳造品(熱処理なし)から、両面が鋳放し面の幅4 mmの引張試験片を切り出し、JIS-Z2241に従って常温で引張試験を行い、0.2%耐力及び破断伸びを測定した。また引張試験で破断した試験片のうち塑性変形していない部位において、組織中の初晶α相の平均DASを、「デンドライトアームスペーシング測定手順」(「軽金属」第38巻、54〜60頁、1988年)に記載されている交線法で求めた。具体的には、光学顕微鏡写真(400倍)の3つの任意の視野の各々に初晶α相と交差する10本の直線を引き、各直線の長さ及びそれが交差するデンドライトアームの数から、次式により各視野におけるDASを求め、それを3つの視野について平均した。
DAS=[L1/(n1-1)+L2/(n2-1)+・・・L10/(n10-1)]/10
(ただし、L1,L2,・・・L10は各直線の長さを示し、n1,n2,・・・n10は各直線が交差するデンドライトアームの数を示す。)
表1-1に実施例1〜22の試験結果を示し、表1-2に比較例1〜41の試験結果を示す。
Figure 0005482787
Figure 0005482787
注:(1) 残部はAl及び不可避的不純物である。
(2) Mg及びMnの欄における「−」は、不可避的不純物としての含有量が0.3質量%未満であることを意味する。
(3) Cr及びCuの欄における「−」は、不可避的不純物としての含有量が0.03質量%未満であることを意味する。
(4) Tiの欄における「−」は、不可避的不純物としての含有量が0.05質量%未満であることを意味する。
鋳造品Aの評価
表1-1から明らかなように、実施例1〜9及び実施例12〜22はいずれも220 MPa以上の耐力及び3%以上の伸びを有していた。一方、Mg含有量が4.0%未満の比較例1及び2の耐力は220 MPa未満であった。特にMg含有量が不純物レベル(0.3質量%未満)である比較例29(ADC12相当)の耐力は139 MPaと低かった。また少なくとも1つの合金元素の含有量が本発明の下限未満である比較例5、6、9、11、13、32、40及び41の耐力も220 MPa未満であった。さらに少なくとも1つの合金元素の含有量が本発明の上限を超えた比較例3、4、7、8、10、12、14及び28は220 MPa以上の耐力を有するものの、3%未満の伸びしか有さなかった。
Mg、Si及びMnの含有量が本発明の範囲の上限付近である比較例のうち、Cuを含有しない比較例15及び16、及びCrを含有しない比較例17及び18はいずれも220 MPa未満の耐力しか有さなかった。またMg、Si及びMnの含有量が本発明の範囲の中央値付近である比較例19〜21のうち、Cr及びCuをともに含有しない比較例19の耐力は176 MPaであるが、Crのみ上限付近まで添加した比較例20の耐力は197 MPaと、比較例19より21 MPaだけ高くなっていた。またCuのみを上限付近まで添加した比較例21の耐力は195 MPaと、比較例19より19 MPaだけ高くなっていた。
実施例5、6及び7の耐力はそれぞれ227 MPa、224 MPa及び267 MPaであり、比較例19の耐力よりそれぞれ51 MPa、48 MPa及び91 MPaだけ高くなっていた。Cr又はCuの単独添加による耐力向上は約20 MPaであり、実施例5、6及び7における耐力向上はその2倍以上と大きかった。以上の結果から、Cr及びCuを両方とも含有する本発明のアルミニウム合金は、Cr及びCuの一方を含有しない比較例のアルミニウム合金よりはるかに大きな耐力を有することが分かる。
Mg、Si及びMnの含有量が本発明の範囲の中央付近であって、Tiを不純物レベル(0.05質量%未満)しか含有しない実施例5と、Tiを含有する実施例12〜16及び比較例28に着目すると、Tiを含有する実施例12〜16はいずれも、Tiを含有しない実施例5より平均DAS値が小さく、耐力及び伸びが向上していた。また、本発明の上限を超えてTiを含有する比較例28は220 MPa以上の耐力を有するが、伸びは2.8%と、3%未満であった。
鋳造品A、B及びCの評価
ほぼ同じ組成を有する実施例5、10及び11の鋳造品A、B及びCの平均DAS値はそれぞれ約7μm、約5μm及び約4μmと異なっていた。これは、鋳造品の形状の差により凝固時の冷却速度が異なり、初晶デンドライトの大きさが異なったためである。一般にアルミニウム合金の耐力は初晶デンドライトが小さくなるほど向上することが知られている。本発明でも、初晶デンドライトが最も小さい鋳造品Cの耐力は317 MPaであり、初晶デンドライトが次に小さい鋳造品Bの耐力は268 MPaであった。
同様にほぼ同じ組成を有する比較例19、22、25のうち、鋳造品A(比較例19)の耐力は176 MPaと低かったが、鋳造品C(比較例25)の耐力は257 MPaであり、伸びは5.2%であった。このように冷却し易い鋳造品の形状では細かい初晶デンドライトが生成され、高い耐力及び伸びが得られるが、冷却速度を高くしにくい形状及びサイズの鋳造品では高い耐力及び伸びを安定的に得ることができない。
以上より、(a) Mg、Si及びMnの含有量を最適化するとともに、適量のCr及びCuをともに含有することにより、伸びを確保しつつ高い耐力を有する鋳造用Al-Mg-Si系アルミニウム合金が得られること、(b) さらにTiを適量添加することにより、耐力及び伸びを一層向上できること、及び(c) 小さな初晶デンドライトが生成しにくい形状及びサイズの鋳造部材でも、Cr及びCuの両方を添加することにより耐力を向上させることができることが分った。

Claims (3)

  1. 質量比で、4〜6%のMg、3.1〜4.5%のSi、0.5〜1%のMn、0.1〜0.3%のCr、及び0.1〜0.4%のCuを含有し、残部Al及び不可避的不純物からなることを特徴とする耐力に優れた鋳造用Al-Mg-Si系アルミニウム合金。
  2. 請求項1に記載の鋳造用Al-Mg-Si系アルミニウム合金において、さらに0.05〜0.3質量%のTiを含有することを特徴とする鋳造用Al-Mg-Si系アルミニウム合金。
  3. 請求項1又は2に記載の鋳造用Al-Mg-Si系アルミニウム合金からなることを特徴とする鋳造部材。
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