JP5482787B2 - 耐力に優れた鋳造用Al−Mg−Si系アルミニウム合金及びそれからなる鋳造部材 - Google Patents
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Description
本発明のAl-Mg-Si系アルミニウム合金を以下詳細に説明する。各合金元素の含有量は特に断りのない限り質量%で示す。
MgはAl-Mg-Si系アルミニウム合金のマトリックス中に固溶して耐力を向上させる。またSiとMg2Siを形成し、特にMgとSiの重量比が0.92<Mg/Si<1.93となる組成では共晶Mg2Siが結晶粒界に晶出し、鋳造割れを抑制する。Mg含有量が4.0%未満では耐力の向上効果が十分ではなく、6.0%を超えるとSi含有量とのバランスが悪化し、鋳造割れの抑制効果が低下する。従って、Mg含有量は4〜6%であり、好ましくは4.5〜6%であり、より好ましくは5〜6%である。
Siはアルミニウム合金のマトリックス中に固溶して耐力の向上に寄与する。またMgと相まって鋳造割れを防止する。Siが3.1%未満では耐力向上効果が十分に発揮されず、4.5%を超えるとMg含有量とのバランスが悪化し、鋳造割れ防止効果が低下するとともに、延性の著しい低下を招く。従って、Si含有量は3.1〜4.5%であり、好ましくは3.5〜4.3%である。
Mnはアルミニウム合金のマトリックス中に固溶し強度を向上させるほか、塊状のAl-Mn金属間化合物を晶出することにより溶湯が金型に焼付くのを防止する。Mnが0.5%未満ではこれらの効果が小さく、1%を超えると針状のAl-Mn金属間化合物が晶出して延性が低下する。従って、Mn含有量は0.5〜1%であり、好ましくは0.7〜0.9%である。
Crはマトリックスに固溶し、Cuとの共存により延性を阻害することなく、耐力を向上させる。Crが0.1%未満ではその効果は不十分であり、0.3%を超えると粗大なAl-Mn-Si-Cr化合物が晶出して延性を阻害し、伸びを安定して確保することができない。従って、Cr含有量は0.1〜0.3%であり、好ましくは0.2〜0.3%である。
CuはCrと同様にマトリックスに固溶して、耐力を向上させる。またCuとCrとの共存により、Cuの単独添加の場合より耐力の向上効果が大きい。Cuが0.1%未満ではその効果は不十分である。0.4%までは初晶に固溶して耐力は向上するが、0.4%を超えると、Cuは鋳放しで初晶に固溶しにくくなり、耐力向上が期待できないだけでなく、耐食性が低下する。従って、Cu含有量は、0.1〜0.4%であり、好ましくは0.2〜0.35%である。
Tiは結晶粒を微細化させてアルミニウム合金の強度及び延性を向上させるのみならず、合金溶湯が凝固収縮する際に発生する応力に抗して鋳造割れを防止する作用を有する。これらの作用を効果的に発揮させるためには、Tiを0.05%以上含有させるのが好ましい。高純度Al地金に不可避的不純物として含まれるTiは0.05%未満であるので、高純度Al地金を原料に用いる場合、上記効果を得るためにはTiを積極的に添加する必要がある。しかし、展伸材の5000系合金、ADC12合金等のアルミニウム合金スクラップ材、低純度Al地金等を原料とした場合、Tiは通常不可避的不純物として0.05%以上混入している。しかし、Tiが0.3%を超えるとAl-Ti金属間化合物が晶出し、アルミニウム合金の延性はかえって低下する。従って、Tiを添加する場合、Tiは0.05〜0.3%、好ましくは0.1〜0.2%とする。勿論、Tiを積極的に添加しない場合でも、上記下限より少ない量のTiを不純物として含有しても良い。
本発明の鋳造部材は、重力鋳造法、低圧鋳造法、高圧鋳造法等の金型鋳造法により製造することができる。中でも、高圧鋳造法の一つであるダイカスト鋳造法を用いれば、急冷凝固により結晶粒が微細で緻密な鋳造組織が得られ、かつ鋳物表面に圧縮応力が作用するので、強度及び延性が向上した鋳造部材が得られる。ダイカスト鋳造法により薄肉部位にも溶湯を確実に充填できるので、寸法精度が良く鋳肌が美麗な鋳造部材を高い製造歩留で得ることができ、かつ生産サイクルを短縮できる。さらに真空ダイカスト鋳造法を用いれば、空気やガスの巻込みによる空孔の発生を抑制でき、また溶湯の流れがスムーズであるので、湯境等の湯廻り欠陥を低減できる。真空ダイカスト鋳造法は優れた機械的性質、特に高い耐力を有する鋳造部材を得るのに好適である。
表1-1及び表1-2は実施例1〜22及び比較例1〜41のアルミニウム合金の組成(表に示す合金元素以外は実質的にAl及び不可避的不純物)、及びそのダイカスト鋳造品の機械的性質を示す。比較例29〜31はADC12に相当する合金である。
実施例1〜9、12〜22、及び比較例1〜21、28、29、32〜34、37、40及び41のAl-Mg-Si系アルミニウム合金から、均一な肉厚を有する断面コの字状の鋳造品A(幅25 mm、長さ80 mm、高さ20 mm、及び肉厚3 mm)を以下の方法により製造した。まず各合金用の原料として工業用の純Al、純Mg、純Si、及び必要な金属元素を表1-1及び表1-2に示す割合で黒鉛製坩堝に装入し、大気中で750〜770℃で溶解し、得られた溶湯に対してアルゴンガスバブリングによる脱ガス処理を行って、介在物及び水素を除去した。型締め力350トン、及びプランジャチップ直径60 mmのダイカスト鋳造機を用いて、150〜300℃の金型温度、700〜740℃の給湯温度、及び2〜3 m/sの射出速度で、各合金溶湯をダイカスト鋳造した。得られた各鋳造品Aを空冷し、鋳放しのまま機械的性質の測定に用いた。
実施例10、及び比較例22〜24、30、35及び38のAl-Mg-Si系アルミニウム合金から、鋳造品Aと同じ条件で平板形状の鋳造品B(幅100 mm、長さ200 mm、及び肉厚3 mm)を製造した。
実施例11、及び比較例25〜27、31、36及び39のAl-Mg-Si系アルミニウム合金から、鋳造品Aと同じ条件で平板形状の鋳造品C(幅100 mm、長さ200 mm、及び肉厚2 mm)を製造した。
DAS=[L1/(n1-1)+L2/(n2-1)+・・・L10/(n10-1)]/10
(ただし、L1,L2,・・・L10は各直線の長さを示し、n1,n2,・・・n10は各直線が交差するデンドライトアームの数を示す。)
(2) Mg及びMnの欄における「−」は、不可避的不純物としての含有量が0.3質量%未満であることを意味する。
(3) Cr及びCuの欄における「−」は、不可避的不純物としての含有量が0.03質量%未満であることを意味する。
(4) Tiの欄における「−」は、不可避的不純物としての含有量が0.05質量%未満であることを意味する。
表1-1から明らかなように、実施例1〜9及び実施例12〜22はいずれも220 MPa以上の耐力及び3%以上の伸びを有していた。一方、Mg含有量が4.0%未満の比較例1及び2の耐力は220 MPa未満であった。特にMg含有量が不純物レベル(0.3質量%未満)である比較例29(ADC12相当)の耐力は139 MPaと低かった。また少なくとも1つの合金元素の含有量が本発明の下限未満である比較例5、6、9、11、13、32、40及び41の耐力も220 MPa未満であった。さらに少なくとも1つの合金元素の含有量が本発明の上限を超えた比較例3、4、7、8、10、12、14及び28は220 MPa以上の耐力を有するものの、3%未満の伸びしか有さなかった。
ほぼ同じ組成を有する実施例5、10及び11の鋳造品A、B及びCの平均DAS値はそれぞれ約7μm、約5μm及び約4μmと異なっていた。これは、鋳造品の形状の差により凝固時の冷却速度が異なり、初晶デンドライトの大きさが異なったためである。一般にアルミニウム合金の耐力は初晶デンドライトが小さくなるほど向上することが知られている。本発明でも、初晶デンドライトが最も小さい鋳造品Cの耐力は317 MPaであり、初晶デンドライトが次に小さい鋳造品Bの耐力は268 MPaであった。
Claims (3)
- 質量比で、4〜6%のMg、3.1〜4.5%のSi、0.5〜1%のMn、0.1〜0.3%のCr、及び0.1〜0.4%のCuを含有し、残部Al及び不可避的不純物からなることを特徴とする耐力に優れた鋳造用Al-Mg-Si系アルミニウム合金。
- 請求項1に記載の鋳造用Al-Mg-Si系アルミニウム合金において、さらに0.05〜0.3質量%のTiを含有することを特徴とする鋳造用Al-Mg-Si系アルミニウム合金。
- 請求項1又は2に記載の鋳造用Al-Mg-Si系アルミニウム合金からなることを特徴とする鋳造部材。
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