JP2008127630A - 鋳造用アルミニウム合金、同合金を用いたアルミニウムダイカスト製品及び同製品の製造方法 - Google Patents

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【課題】鋳造特性と生産性に優れた鋳造用アルミニウム合金、同合金を用いたアルミニウムダイカスト製品及び同製品の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の鋳造用アルミニウム合金はSi:9.0〜11.0質量%、Mg:0.05〜0.35質量%、Cu:0.1質量%以下、Fe:0.05〜0.40質量%、Mn:0.3〜0.5質量%、Li:0.0020〜0.0600質量%を含み、残部がアルミニウム及び不可避不純物からなることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、鋳造用アルミニウム合金、同合金を用いたアルミニウムダイカスト製品及び同製品の製造方法に関するものである。
ダイカスト鋳造法は、薄肉鋳造物に対して優れた成形性や生産性などの利点を有するため、アルミニウム製品の製造方法として大変注目されている。特に現在自動車産業の製造業者は、高い展延性を有する溶接可能な自動車の構造部品を製造する際に、高品質なダイカスト鋳造品を使用する場合が多くなっている。
これまでに、アルミニウム合金、その合金製品またはその製造方法が多数提案されてきた。従来技術として、ダイカスト合金及びその合金製品を開示しているものがある(例えば、特許文献1参照)。具体的に、特許文献1には、質量%でSi:9.5〜11.5%、Mg:0.1〜0.5%、Cu:0.03%以下、Fe:0.15%以下、Zn:0.10%以下、Ti:0.15%以下、Sr:0.0030〜0.0300%及び不可避不純物を含むダイカスト合金とその製品が開示されており、Siの含有量をAl−Si2元系の共晶点(11.7質量%)の近くまでとすることでダイカスト成形時の湯流れ性を確保する。また、Mnを通常(JIS規格ADC12、ADC10など)よりも高含有率にすることで金型への焼き付き防止及び展延性などの特性を向上させる。さらに、Feを0.15質量%以下に規制することで切り欠き効果の高いAl−Si−Fe系化合物相の生成を低減すると共に、Srを0.0030〜0.0300質量%添加することで共晶Si相の晶出サイズを微細化し、鋳放し状態(非熱処理)での材料特性の改善を達成している。
また、ダイカスト法を用いたアルミニウム製品の製造方法を開示しているものもある(例えば、特許文献2参照)。具体的に、特許文献2には、質量%でSi:9.5〜11.5%、Mg:0.3〜0.5%、Cu:0.1%以下、Fe:0.15%以下を含み残部がアルミニウムと不可避不純物とからなるアルミニウム合金を用いて高真空ダイカスト(50hPa以下)により得られた成形体に展延性を有する熱処理を行う製造方法が開示されている。
また、ダイカスト法を用いた鋳造合金を開示しているものもある(例えば、特許文献3参照)。具体的には、特許文献3には、質量%でSi:8.5〜10.5%、Mg:0.06%以下、Mn:0.3〜0.8%、Cu:0.03%以下、Fe:0.15%以下、Zn:0.10%以下、Ti:0.15%、Mo:0.05〜0.5%、Sr:0.0030〜0.0300%またはNa:0.0005〜0.0030%及び/またはCa:0.0001〜0.0030が必須成分であり、残部にAl及び不可避不純物を含む鋳放し状態で高展延性なダイカスト合金とこれによる部品を開示している。
さらに、ダイカスト用非熱処理アルミニウム合金、ダイカスト法による製品とその製造方法を開示しているものもある(例えば、特許文献4参照)。具体的には、特許文献4にはアルミニウム合金に含有するMgとSiの質量比が0.1以上かつ0.5以下で、Si:3.5〜5.0%、Mg:0.35〜2.5%、Mn:0.3〜1.5%、Cu:0.03%以下、Fe:0.15%以下、Ti:0.20%以下を必須元素として含み、残部がアルミニウム及び不可避不純物からなるダイカスト用非熱処理アルミニウム合金を開示している。また、Mgを上限2.5質量%と高含量にすることにより固溶強化の増加を図り、鋳放し状態(非熱処理)での材料特性改善を達成している。
特許第3255560号公報(第2〜第3頁) 特開2001−198659号公報(第2〜第3頁) 特開2004−225160号公報(第2〜第5頁) 特開2005−82865号公報(第2〜第5頁)
特許文献1の発明では、不純分元素全般が低濃度化された中で、特にFeを0.15質量%以下という既存のダイカスト鋳造用合金部材よりも低い水準に維持されているので、部材の高純度化の為の精錬コストの上昇が避けられないといった問題がある。さらに、微量添加される元素Srは合金部材の特性を左右する効果があり、Srの添加量は下限以下では共晶Siの微細化が実現できず、上限以上ではAlSr化合物の生成晶出による合金部材の靭性低下(いわゆるOver modification効果)がそれぞれ生じるので、特許文献1の発明ではSrの含有量を0.0030〜0.0300質量%といった極微量範囲内に絞られ、厳密な成分管理作業による合金の生産を行うことから、生産の手間がかかるといった問題もある。
また、特許文献2の発明では、特許文献1の発明と同様に、共晶組成に近いAl−Si系成分を主としているが、元素Srの添加が省略されている。このため、鋳放し状態(非熱処理)では所望の合金部材の材料特性(例えば、展延性向上)が得られない。また、熱処理を付加することが必須としているので、生産コストの上昇に繋がる。さらに、熱処理を行うため、場合によって鋳造品の熱処理による製品の歪みが発生し、製品寸法精度の低下などの問題もある。
また、特許文献3の発明では、特許文献1の発明における主要組成とほぼ同じであり、必須元素として新たに0.05〜0.5質量%のMoを含有し、鋳放し状態での材料特性、取り分け展延性の向上が具現化されているが、比較的高価な元素Moを追加使用するので、生産コストの上昇に繋がるといった問題がある。
また、特許文献4の発明では、合金部材の主要組成をAl−Si−Mg系としているが、特許文献1〜3に比べ、元素Siの含有量は3.5〜5.0質量%という低い含有水準である。このため、元素Siの低含有に起因する鋳造凝固時のAl−Siの共晶反応潜熱放出量の低下、さらにAl−Siの共晶反応潜熱放出量の低下に起因する凝固温度範囲の拡大から、合金部材の鋳造特性(湯流れ性、金型への焼き付き性、割れ性など)の劣化が発生しやすいといった問題がある。
本発明は上記実状に鑑みてなされたものであり、鋳造特性と生産性に優れた鋳造用アルミニウム合金、同合金を用いたアルミニウムダイカスト製品及び同製品の製造方法を提供することを課題とする。
本発明の鋳造用アルミニウム合金はSi:9.0〜11.0質量%、Mg:0.05〜0.35質量%、Cu:0.1質量%以下、Fe:0.05〜0.40質量%、Mn:0.3〜0.5質量%、Li:0.0020〜0.0600質量%を含み、残部がアルミニウム及び不可避不純物からなることを特徴とする。
アルミニウム合金の組成に含まれるSiはアルミニウム合金の湯流れ性と機械的性質を左右する元素とされる。本発明では、Siを9.0質量%以上に設定することにより、凝固時のAl−Si共晶の晶出量の減少に伴い湯流れ性の低下を抑えることができ、金型内へ流入する材料が不足または不廻りなどの原因による製品不良の発生を回避することができる。また、Siを11.0質量%以下に設定することにより、アルミニウム合金内のAl−Si2元系における共晶点は11.7%を越えることなく、初晶Si相が晶出し始めることがない。このため、合金材料の展延性の低下を抑えることができる。このように、本発明の鋳造用アルミニウム合金は、Siの含有量を9.0〜11.0質量%に限定し、アルミニウム合金の湯流れ性と機械的性質を向上させることができる。
また、アルミニウム合金(Al−Si系合金)の組成に含まれるMgは合金の機械的性質に影響を及ぼす元素とされる。微量のMgを添加することにより凝固途中でのMgSiの晶出相及び凝固直後でのMgSi系析出相(前駆構造物)の生成が生じる。本発明では、Mgを0.05質量%以上に設定することにより、MgSiの晶出量が低下することなく、Al−Si−MgSiの3元共晶反応量の減りによる鋳造割れなどの問題の発生を防ぐことができる。同時に、MgSi系析出相の析出量が必要範囲内に維持されることにより、合金材料の強度の低下を防ぐことができる。また、Mgを0.35質量%以下に設定することにより、凝固直後でのMgSi系析出相の生成量が適度に抑制され、合金材料の展延性の低下を防ぐことができる。このように、本発明の鋳造用アルミニウム合金は、Mgの含有量を0.05〜0.35質量%に限定し、アルミニウム合金の機械的性質を向上させることができる。
また、アルミニウム合金の組成に含まれるCuは合金の腐食性に影響する元素とされる。本発明では、Cuを0.1質量%以下に設定することにより、アルミニウム母相中におけるAl−Cu系の晶出または析出相の生成の増加を抑えることができる。即ち、金属組織中の極微小領域で局部金属電池の形成が抑えられ、合金材料の耐食性が向上される。
また、アルミニウム合金の組成に含まれるFeは鋳造時の合金材料の金型への焼き付き防止効果を有するものとされる。本発明では、Feを0.05質量%以上に設定することにより、アルミニウム母相中におけるβ鉄系化合物(AlFeSi,AlFeSiなど)の晶出量が必要範囲内に維持され、ダイカスト鋳造時の合金材料の金型への焼き付き防止効果が向上される。また、従来方法では、合金の機械的性質(特に展延性)の向上を目的とするアルミニウム合金に、Feの含有量を0.15質量%以下としているアルミニウム合金が一般的であったが、本発明のアルミニウム合金は後述する元素Liの添加より合金材料組織の改良が行われ、Feの含有量の上限(0.15質量%)の許容量を緩和して0.15質量%を大幅に超えて0.40質量%のFeを含有させることができ、アルミニウム母相中におけるβ鉄系化合物の晶出量が必要範囲内に維持され、ダイカスト鋳造時の合金材料の金型への焼き付き防止効果を向上させながら、針状の鉄系化合物相の散在に伴う機械的性質(特に展延性)の低下を防ぐことができる。このように、本発明のアルミニウム合金は、Feの含有量を0.05〜0.40質量%に限定し、アルミニウム合金の機械的性質を向上させると同時に合金材料の金型への焼き付きを防止することができる。
また、アルミニウム合金の組成に含まれるMnはFeと同様に、鋳造時の合金材料の金型への焼き付き防止効果を有するものとされる。本発明では、Mnを0.3質量%以上に設定することにより、Al−Mn系化合物(AlMn,Al12MnSi,Al12MnSiなど)の鋳造物表面での生成量が増やされ、合金材料の金型への焼き付き防止効果を高めることができる。また、Mnを0.5質量%以下に設定することにより、Al−Mn系化合物の鋳造物表面での生成量が抑制され、合金材料の金型への焼き付き防止効果を高めながら、Al−Mn系化合物相の晶出量の増加に伴う亀裂の生成サイト及び伝播経路の増加を抑えることができ、合金材料の展延性の低下を抑えることができる。このように、本発明のアルミニウム合金は、Mnの含有量を0.3〜0.5質量%に限定し、アルミニウム合金の機械的性質を向上させると同時に合金材料の金型への焼き付きを防止することができる。
また、Al−Si系アルミニウム合金における共晶Siの微細化処理に際しては、改良元素として従来ではSr,Naが多く使用されてきており、特に鋳造時の改良効果とその持続性(溶湯保持炉での減耗度合い)からSrが最も多用されてきた。しかしながら、Srによる改良処理では、特に過剰によるAlSi晶の生成に伴う材料の展延性の劣化(Over modification現象)を回避するため、概ね0.0030〜0.0300質量%以下の比較的狭い範囲での厳密な成分管理が必要である。従って、生産上の手間を要し、生産性の向上に不利である。そこで、本発明は、従来のSrに代わる改良元素の検討を鋭意進めた結果、LiがSrと同等以上の共晶Si改良効果を持ち、かつLiの適した含有範囲がより広範囲であることを見出すに至った。すなわち、本発明では、改良元素とするLiの含有量の許容範囲が0.0020〜0.0600質量%となり、従来の改良元素Srの含有量の許容範囲(0.0030〜0.0300質量%)に比べ、許容範囲が格段に広くなる。このため、本発明の鋳造用アルミニウム合金では、共晶Siの微細化効果が十分維持されながら、生産性を向上させることができる。
このように、本発明の鋳造用アルミニウム合金によれば、ダイカスト鋳造に際しては、優れた鋳造特性と金型離型性を有し、得られたダイカスト鋳造品は鋳放しで高い機械的性質、特に展延性を有すると共に、生産性に優れたものである。また、本発明の鋳造用アルミニウム合金によるダイカスト鋳造品は靭性が要求される自動車構造部品の用途に適したものである。
また、本発明の鋳造用アルミニウム合金は合計で0.05〜0.18質量%のTi及びZrをさらに含有することが好ましい。鋳造用アルミニウム合金は、微細化処理に際しては、TiおよびZrを改良元素として添加すると、鋳造凝固時において包晶反応によりAlZr或いはAlTi化合物が生成される。これらの化合物は初晶α−Al相の凝固核となり、結果的に結晶組織の微細化がより一層進み、機械的性質(強度及び展延性など)が向上される。本発明では、アルミニウム合金に含有するTi及びZrの含有量を合計で0.05質量%以上に設定することにより、微細化処理により高い強度及び展延性を有するアルミニウム合金を得ることができる。一方、この微細化効果は0.18質量%を超えると飽和するため、Ti及びZrの含有量を合計で0.18質量%以下に設定することにより、Ti及びZrの過剰含有による余分な材料コストの上昇を防ぐことができる。
本発明のアルミニウムダイカスト製品の製造方法は、上記の鋳造用アルミニウム合金を用いて、ダイカスト法によって製造することを特徴とする。本発明が提供するアルミニウムダイカスト製品の製造方法は、上記のアルミニウム合金の鋳造に際して、高真空ダイカスト法を用いることで、特に展延性と靭性に優れたアルミニウムダイカスト製品を得ることができる。
本発明のアルミニウムダイカスト製品は上記のアルミニウムダイカスト製品の製造方法で製造されることを特徴とする。本発明が提供するアルミニウムダイカスト製品は、上記アルミニウムダイカスト製品の製造方法によるものであり、ダイカスト鋳造後に熱処理を必要とせず、優れた機械的性質を備えたダイカスト製品を得ることができる。
また、本発明のアルミニウムダイカスト製品は自動車の構造部材および衝撃吸収部材であることが好ましい。例えば、自動車のフレーム、サスペンションまたはリンク部品などに使用することができる。
本発明の鋳造用アルミニウム合金によれば、ダイカスト鋳造に際しては、優れた鋳造特性と耐金型固着性すなわち離型性を有し、得られたダイカスト鋳造品は鋳放しで高い機械的強度すなわち引張り強さ、耐力及び硬さと高い伸び率すなわち高展延性を有すると共に、生産性に優れたものである。また、本発明の鋳造用アルミニウム合金によるダイカスト鋳造品は靭性が要求される自動車構造部品の用途に適したものである。
本発明の鋳造用アルミニウム合金はSi:9.0〜11.0質量%、Mg:0.05〜0.35質量%、Cu:0.1質量%以下、Fe:0.05〜0.40質量%、Mn:0.3〜0.5質量%、Li:0.0020〜0.0600質量%を含み、残部がアルミニウム及び不可避不純物からなるものとすることができる。
また、Siの含有量は9.0〜11.0質量%において下限9.0質量%に近い範囲がより良い。例えば9.0〜10.0質量%が好ましい。Mgの含有量は0.05〜0.35質量%において下限0.05質量%に近い範囲がより良い。例えば0.05〜0.15質量%が好ましい。Cuの含有量は0.1質量%以下においてより少量がより良い。例えば0.01〜0.05質量%が好ましい。Feの含有量は0.05〜0.40質量%において下限0.05質量%に近い範囲がより良い。例えば0.05〜0.30質量%が好ましい。Mnの含有量は0.3〜0.5質量%において上限0.5質量%に近い範囲がより良い。例えば0.3〜0.4質量%が好ましい。Liの含有量は0.0020〜0.0600質量%において上限0.0600質量%に近い範囲がより良い。例えば0.0080〜0.0600質量%が好ましい。
なお、Liの含有量は0.0020質量%以上とすることで、共晶Siの微細化効果が高く、明瞭な合金特性の向上が認められる。一方、Liの含有量は0.0600質量%以下とすることで、Al−Li系化合物(LiAlO、LiO、δ−AlLi非平衡晶出相)の生成が抑制されて、合金材料展延性が向上する。
また、本発明の鋳造用アルミニウム合金はさらに合計で0.05〜0.18質量%のTi及びZrを含有することができる。また、Ti及びZrの含有量を合計で0.10〜0.15質量%の範囲がより良い。Ti及びZrの含有量を合計で0.10〜0.15質量%に設定すると、Ti及びZrによる微細化効果が顕著となり、アルミニウム合金の生産性の向上に最も有利である。
本発明のアルミニウムダイカスト製品の製造方法は、上記の鋳造用アルミニウム合金を用いて、ダイカスト法によって製造することができる。本発明が提供するアルミニウムダイカスト製品の製造方法は、上記のアルミニウム合金の鋳造に際して、高真空ダイカスト法を用いることで、特に展延性と靭性に優れたアルミニウムダイカスト製品を得ることができる。
本発明のアルミニウムダイカスト製品は上記のアルミニウムダイカスト製品の製造方法で製造することができる。本発明が提供するアルミニウムダイカスト製品は、上記アルミニウムダイカスト製品の製造方法によるものであり、ダイカスト鋳造後に熱処理を必要とせず、優れた機械的性質を備えたダイカスト製品を得ることができる。
また、本発明のアルミニウムダイカスト製品は自動車の構造部材および衝撃吸収部材とすることができる。例えば、自動車のフレーム、サスペンションまたはリンク部品などに使用することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
表1に示す各種合金150kgをガス溶解炉で溶製し、800トン型締め力のダイカスト鋳造機を使用し、高真空ダイカスト鋳造法(金型キャビティ内をショット毎に減圧して高真空化)にて質量約4.2kgの箱型形状の鋳造品を鋳造した。鋳造条件は、溶湯温度は670℃で、射出速度は3m/sで、射出圧力は3.43×10Pa(350kgf/cm)で、金型温度は170〜250℃とし、最初の数ショットは型温度安定の為捨て打ちとし、その後の型温度が安定した鋳造品について鋳放し状態(非熱処理)のままで以下の評価を行った。なお、表1は本実施例のアルミニウム合金の各化学組成を示すものである。
Figure 2008127630
表1に示すように、実施例1〜12において、Siの含有量は9.0〜11.0質量%に設定され、Mgの含有量は0.05〜0.35質量%に設定され、Cuの含有量は0.1質量%以下に設定され、Feの含有量は0.05〜0.40質量%に設定され、Mnの含有量は0.3〜0.5質量%に設定され、Liの含有量は0.0020〜0.0600質量%に設定されている。また、元素Srは極微量(約0.0002〜0.0006質量%)の不可避不純物として合金材料の組成に存在している。残部はAlとその他の不可避不純物からなる。なお、実施例1〜10において、Ti及びZrの含有量はそれぞれ0.01質量%以下に設定されているが、実施例11、12において、Ti及びZrの含有量は合計で0.08〜0.15質量%に設定されている。
比較例は、表2に示すように、比較例1〜10と、AA規格365合金同等材を用いた比較例11とからなる。なお、表2は比較例のアルミニウム合金の各化学組成を示すものである。
Figure 2008127630
比較例1〜10は、以下に示すように、合金材料の組成に含有する元素の含有量を変化させて実験を行った比較例である。
表2に示すように、比較例1は、Siの含有量を許容範囲(9.0〜11.0質量%)より小さく設定し、8.37質量%とし、その他の合金材料組成の含有量を許容範囲内に設定して実験を行った。比較例2は、Siの含有量を許容範囲より大きく設定し、11.72質量%とし、その他の合金材料組成の含有量を許容範囲内に設定して実験を行った。
比較例3は、Mgの含有量を許容範囲(0.05〜0.35質量%)より小さく設定し、0.01質量%とし、その他の合金材料組成の含有量を許容範囲内に設定して実験を行った。比較例4は、Mgの含有量を許容範囲より大きく設定し、0.44質量%とし、その他の合金材料組成の含有量を許容範囲内に設定して実験を行った。
比較例5は、Feの含有量を許容範囲(0.05〜0.40質量%)より小さく設定し、0.03質量%とし、その他の合金材料組成の含有量を許容範囲内に設定して実験を行った。比較例6は、Feの含有量の許容範囲より大きく設定し、0.49質量%とし、その他の合金材料組成の含有量を許容範囲内に設定して実験を行った。
比較例7は、Mnの含有量を許容範囲(0.3〜0.5質量%)より小さく設定し、0.22質量%とし、その他の合金材料組成の含有量を許容範囲内に設定して実験を行った。比較例8は、Mnの含有量を許容範囲より大きく設定し、0.68質量%とし、その他の合金材料組成の含有量を許容範囲内に設定して実験を行った。
比較例9は、Liの含有量を許容範囲(0.0020〜0.0600質量%)より小さく設定し、0.0011質量%とし、その他の合金材料組成の含有量を許容範囲内に設定して実験を行った。比較例10は、Liの含有量を許容範囲内より大きく設定し、0.0720質量%とし、その他の合金材料組成の含有量を許容範囲内に設定して実験を行った。
また、比較例11は、AA規格365合金同等材を用いた実験例である。合金材料の各組成の含有量が表2に示されている。
Figure 2008127630
表3は、表1に示される各実施例のアルミニウム合金鋳造品を用いて、合金の機械的特性及び鋳造特性を測定した結果を示すものである。なお、機械的特性は、引張り特性を指すものであり、引張り強さ、耐力(0.2%耐力)、伸び率(破断伸び率)を含む。鋳造特性は、湯流れ性及び焼き付き性を含む。
表1に示す実施例1〜12の各箱型形状のアルミニウム合金鋳造品を中央の肉厚2〜4mm部より板状引張り試験片として切り出し加工した後、クロスヘッドスピード(引張り速度)1mm/minにてアムスラー型試験機で引張り特性の測定を行った。引張り試験片は図1、図2に示す。図1は板状引張り試験片の正面図及び寸法を示したものである。図2は板状引張り試験片の図1のA−A断面図及び寸法を示したものである。
また、鋳造特性の湯流れ性は、表1に示す実施例1〜12の各箱型形状のアルミニウム合金鋳造品の外観、とくに湯廻り性の差が顕著に現れる反ゲート側のオーバーフロー部(湯だめ部)及び真空吸引用ランナー部(通路)における溶湯の充填度合いを目視で観察して評価したものである。なお、表3では、「○」は湯流れ性良好(全て密に充填)を示し、「△」は湯流れ性やや良好(極一部に充填不足)を示し、「×」は湯流れ性不良(全体に充填不足が目立つ)を示すものである。
また、鋳造特性の焼付き性は、湯流れ性の測定方法と同様に、目視にて鋳造品全体とビスケット、ランナーを観察し評価したものである。なお、表3では、「○」は焼付き皆無を示し、「△」は焼付きが極一部に発生することを示し、「×」は焼付きが全体に点在し発生することを示すものである。
表3の合金の引張および鋳造特性評価結果から分かるように、本実施形態に係る実施例1〜12の全ての実施例において、引張り特性の引張り強さは260〜280Mpaの範囲となり、耐力特性(0.2%伸び率時)は126〜142Mpaの範囲となり、伸び率は8.3〜11.2%の範囲となる。
この結果から、本実施例のアルミニウム合金の鋳造品は優れた引張特性を有することが分かる。特に、表3の実施例11、12の測定結果から分かるように、アルミニウム合金にTi及びZrを合計で0.05〜0.18質量%以内に含有させることにより、よりよい引張り強さ、耐力及び伸び率を得ることができた。また、鋳造特性においても、溶融した金属湯が金型を密に充填でき、良好な湯流れ性を示している。また、鋳造品は金型に焼き付きなく、良好な焼き付き特性を示している。
次に、表4において、実施例と同様の評価方法で比較例1〜11のアルミニウム合金鋳造品を測定して評価した結果を示す。表4は、比較例のアルミニウム合金鋳造品の評価結果である。
Figure 2008127630
表4に示す合金の引張及び鋳造特性評価結果から分かるように、本実施形態の比較例1〜10において、引張特性の引張強さは248〜275Mpaの範囲となり、実施例1〜12の結果より引張強さが低いことが分かった。また、比較例1〜10の評価結果から、耐力特性(0.2%伸び率時)は118〜148Mpaの範囲となり、実施例1〜12の結果に比べて、耐力特性が劣っていることが分かった。比較例1〜10の評価結果から、伸び率は5.3〜10.8%の範囲となり、実施例1〜12の結果に比べて、伸び率が劣っていることが分かった。この結果から、本実施形態のアルミニウム合金の鋳造品は比較例に比べ、優れた引張特性を有することが分かった。また、表4に示すように、比較例1〜10の合金鋳造品の中で、比較例1,5,7,8,9,10は組成含有量の差異により鋳造特性が劣ることが分かった。
表1〜4を用いて実施例と比較例を比較し、以下の評価結果が分かった。
1.比較例1では、Siが許容含有量範囲(9.0質量%)以下であるため、鋳造特性が劣っている。これに対して、実施例1〜12では、安定かつ優れた鋳造特性を有している。
2.比較例2では、Siが許容含有量範囲(11.0質量%)以上であるため、引張特性(特に伸び率)が劣っている。これに対して、実施例1〜12では、安定かつ優れた引張特性を有している。
3.比較例3では、Mgが許容含有量範囲(0.05質量%)以下であるため、引張特性(特に耐力特性)が劣っている。これに対して、実施例1〜12では、安定かつ優れた引張特性を有している。
4.比較例4では、Mgが許容含有量範囲(0.35質量%)以上であるため、引張特性(特に伸び率)が劣っている。これに対して、実施例1〜12では、安定かつ優れた引張特性を有している。
5.比較例5では、Feが許容含有量範囲(0.05質量%)以下であるため、鋳造特性(特に焼き付き性)が劣っている。これに対して、実施例1〜12では、安定かつ優れた鋳造特性を有している。
6.比較例6では、Feが許容含有量範囲(0.40質量%)以上であるため、引張特性(特に伸び率)が劣っている。これに対して、実施例1〜12では、安定かつ優れた引張特性を有している。
7.比較例7では、Mnが許容含有量範囲(0.3質量%)以下であるため、鋳造特性(特に焼き付き特性)又は引張特性(特に伸び率)が劣っている。これに対して、実施例1〜12では、安定かつ優れた鋳造特性を有している。
8.比較例8では、Mnが許容含有量範囲(0.5質量%)以上であるため、鋳造特性(特に湯流れ性)が劣っている。これに対して、実施例1〜12では、安定かつ優れた鋳造特性を有している。
9.比較例9では、Liが許容含有量範囲(0.0020質量%)以下であるため、引張特性(特に伸び率)が劣っている。これに対して、実施例1〜12では、安定かつ優れた引張特性を有している。
10.比較例10では、Liが許容含有量範囲(0.0600質量%)以上であるため、鋳造特性(特に湯流れ性)が劣っている。これに対して、実施例1〜12では、安定かつ優れた鋳造特性を有している。
また、表4に示すように、比較例11はAA規格365合金同等材を用いた実験例である。比較例11の引張特性のデータから本実施形態の実施例1〜12の引張特性がAA規格に一致していることが分かった。つまり、本実施形態のアルミニウム合金鋳造品はAA規格を満たし、優れた引張特性を有するものである。
本発明の鋳造用アルミニウム合金、同合金を用いたアルミニウムダイカスト製品及び同製品の製造方法は、鋳造用アルミニウム合金によるダイカスト鋳造品の靭性などの機械的特性が要求された分野、例えば、自動車構造部品などの分野に使用することができる。
板状引張り試験片の正面図及び寸法を示したものである。 板状引張り試験片の図1のA−A断面図及び寸法を示したものである。

Claims (5)

  1. Si:9.0〜11.0質量%、
    Mg:0.05〜0.35質量%、
    Cu:0.1質量%以下、
    Fe:0.05〜0.40質量%、
    Mn:0.3〜0.5質量%、
    Li:0.0020〜0.0600質量%を含み、残部がアルミニウム及び不可避不純物からなることを特徴とする鋳造用アルミニウム合金。
  2. 請求項1において、前記合金は、合計で0.05〜0.18質量%のTi及びZrをさらに含有することを特徴とする鋳造用アルミニウム合金。
  3. 請求項1または2に記載の鋳造用アルミニウム合金を用いて、ダイカスト法によって製造することを特徴とするアルミニウムダイカスト製品の製造方法。
  4. 請求項3に記載の製造方法で製造されることを特徴とするアルミニウムダイカスト製品。
  5. 請求項4において、前記製品は自動車の構造部材であることを特徴とするアルミニウムダイカスト製品。
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