JP4285188B2 - 鋳造用耐熱マグネシウム合金とマグネシウム合金製鋳物およびその製造方法 - Google Patents

鋳造用耐熱マグネシウム合金とマグネシウム合金製鋳物およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ダイカスト鋳造等の鋳造性に優れる耐熱マグネシウム合金に関するものである。
近年、材料の軽量化へのニーズが高まり、アルミニウム合金よりも軽量なマグネシウム合金が注目を集めている。マグネシウム合金は、実用金属中最も軽量であり、航空機用材料の他に、自動車用材料等として使用されつつある。例えば、自動車のホイールやエンジンのヘッドカバー材料等にマグネシウム合金が既に使用されている。さらに、最近の強い軽量化の要請により、このマグネシウム合金の適用範囲が一段と拡大しつつある。例えば、高温になるエンジンブロック等の構造部品やピストン等の機能部品にまで、マグネシウム合金の適用が考えられている。
ところで、マグネシウム合金製品は、通常、ダイカスト鋳造等によって製造されることが多い。このため、マグネシウム合金の普及を図るためには、その鋳造性も重要となる。つまり、鋳造割れの発生等を抑制・防止して、歩留向上やコスト低減を図る必要もある。
このような事情の下、耐熱性や鋳造性の向上を狙った種々のマグネシウム合金がこれまで開発されてきた。例えば、下記の特許文献1〜3には、耐熱性および鋳造性を両立させたマグネシウム合金が提案されている。
特開平7−331375号公報 特開2001−59125号公報 特表平10−513225号公報
上記特許文献1には、Mg−Al−Zn−R.E.−Mn−Ca系合金が開示されている。しかし、本発明者の研究によると、Alは、マグネシウム合金の鋳造性を改善するものの、耐クリープ性等の耐熱性をむしろ低下させる。従って、Alを多く含有するMg合金は鋳造用耐熱マグネシウム合金として好ましくない。
特許文献2に開示されているMg−Zn−Ca−R.E.−Zr系合金は、優れた耐熱性および鋳造性を示す。しかし、Znを多く含有する場合、大きな鋳造割れこそ発生しないものの、鋳物の形状によっては鋳物の表面に微細な鋳造割れが発生し得る。
特許文献3には、耐熱性、鋳造性および耐蝕性を改善したMg−Zn−R.E.系合金が開示されており、鋳造性改善のためにCaを加えると好ましい旨も記載されている。但し、実際にCaを添加した実施例は開示されていない。本発明者の研究によると、後述するように、Caは耐熱性を改善させる元素であるものの、Znとの共存下において鋳造性を改善させるものではない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、Mg−(Zn)−Ca−R.E.系合金をベースにして従来以上に耐熱性および鋳造性を改善できる鋳造用耐熱マグネシウム合金を提供する。また、耐熱性に優れると共に鋳造割れ等を抑制したマグネシウム合金製鋳物およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らはこの課題を解決すべく鋭意研究し各種系統的実験を重ねた結果、CaとZnとの共存が鋳造割れ性に大きく影響を与えることを発見し、この結果を踏まえて、耐熱性および鋳造割れの両立を高次元で図れる合金組成を新たに見出して、本発明を完成させるに至った。
(鋳造用耐熱マグネシウム合金)
すなわち、本発明の鋳造用耐熱マグネシウム合金は、全体を100質量%としたときに、0.2〜3質量%のカルシウム(Ca)と、1〜4質量%の希土類元素(R.E.)と、1質量%未満の亜鉛(Zn)と、0.3〜1質量%のジルコニウム(Zr)とを含み、残部がマグネシウム(Mg)および不可避的不純物とからなり、前記Caの前記Znに対する含有量比(Ca/Zn)は0.2〜4であり、鋳造性および耐熱性に優れることを特徴とする。
(マグネシウム合金製鋳物)
また、本発明は、上記鋳造用耐熱マグネシウム合金のみならず、それを用いて鋳造したマグネシウム合金製鋳物としても把握できる。
すなわち、本発明は、全体を100質量%としたときに、0.2〜3質量%のCaと、1〜4質量%のR.E.と、 1質量%未満のZnと、0.3〜1質量%のZrとを含み、残部がMgおよび不可避的不純物とからなり、前記Caの前記Znに対する含有量比(Ca/Zn)は0.2〜4であり、耐熱性に優れると共に鋳造割れがほとんどないことを特徴とするマグネシウム合金製鋳物としても良い。
(マグネシウム合金製鋳物の製造方法)
さらに、本発明は、上記マグネシウム合金製鋳物の製造方法としても把握できる。
すなわち、本発明のマグネシウム合金製鋳物の製造方法は、全体を100質量%としたときに、0.2〜3質量%のCaと、1〜4質量%のR.E.と、1質量%未満のZnと、0.3〜1質量%のZrとを含み、残部がMgおよび不可避的不純物とからなり、前記Caの前記Znに対する含有量比(Ca/Zn)は0.2〜4であるマグネシウム合金の溶湯を鋳型に注入する注入工程と、該鋳型に注入された溶湯を凝固させる凝固工程とを備え、耐熱性に優れると共に鋳造割れがほとんどないマグネシウム合金製鋳物が得られることを特徴とするマグネシウム合金製鋳物の製造方法としても良い。
(発明の作用効果)
本発明の鋳造用耐熱マグネシウム合金を用いて鋳造すると、鋳造割れ等が著しく少なく、高温強度や耐クリープ性等の耐熱性に優れたマグネシウム合金製鋳物が得られる。この理由は必ずしも定かではないが、現状、次のように考えられる。
本発明の鋳造用耐熱マグネシウム合金(以下、適宜、単に「マグネシウム合金」という。)が耐熱性に優れるのは、R.E.およびCaを適量含有するためである。例えば、本発明者の研究によると、マグネシウム合金の耐熱性に対する各合金元素の寄与度は、本発明に関連する元素について、R.E.>Ca>Zr>Znの順となる。従って、Caは、R.E.と共にマグネシウム合金の耐熱性の向上に非常に有効な元素である。
ところが、従来、Caはマグネシウム合金の鋳造性を低下させる元素であるといわれてきた。このため、例えば、前述の特許文献2にもあるように、鋳造性を改善する観点から、Ca量を抑制することが推奨されてきた(例えば、0.3質量%以下)。
しかし、本発明者がさらに研究したところ、Caが比較的多くのZnと共存するとき、その鋳造性が大きく低下することが新たにわかった。これは、CaがZnと共存すると、固相線温度が低くなり合金溶湯の凝固温度が拡大するためであると考えられる。なぜなら、鋳造性は主に鋳造割れによって評価できるが、この鋳造割れは鋳造時の凝固収縮に伴う歪みによって発生する。凝固温度範囲が拡大すると、凝固収縮に伴う収縮応力が脆弱な液相部分に集中し、鋳造割れも発生し易くなる。
従って、本発明の鋳造用耐熱マグネシウム合金では、適量のCaを残存させることで耐熱性が確保され、凝固温度範囲を広げるZnを抑制することで、鋳造時の固相線温度を上昇させることによって、鋳造性が確保されていると考えられる。
なお、本明細書では各元素の組成範囲を「x〜y質量%」という形式で示したが、これは特に断らない限り、下限値(x質量%)および上限値(y質量%)も含む。また、本明細書でいう「鋳造性」は、例えば、合金溶湯を冷却凝固させた際の鋳造割れの発生の有無で評価できる。ここで、本明細書でいう鋳造は、特に断らない限り、特定の鋳造方法を対象としたものではなく、砂型鋳造、金型鋳造、重力鋳造、高圧鋳造等のあらゆる鋳造方法を対象としている。もっとも、ダイカスト鋳造等の冷却速度が速い鋳造方法に本発明の鋳造用耐熱マグネシウム合金は特に有効である。Zn量が少ないので溶湯の凝固温度範囲が狭く、鋳造割れ等が発生し難く、しかも冷却速度が速いためにマグネシウム合金製鋳物の組織も微細となるからである。「耐熱性」は、例えば、高温雰囲気中におけるマグネシウム合金の機械的性質(クリープ特性、高温強度、軸力保持率等)で評価できる。
本発明でいう鋳物用マグネシウム合金は、主に鋳造原料となるものである。例えば、インゴット等の一次的な形態をしている。マグネシウム合金製鋳物は、素材、中間素材または中間製品、最終製品等のいずれでも良い。また、鋳放状態でも、熱処理を施したものでも、仕上加工をしたものでも良い。その形態も問わず、例えば、棒状、板状、環状等の他、最終製品形状またはそれに近い形状をしていても良い。
発明の実施形態を挙げて、本発明をより詳しく説明する。なお、以下の実施形態を含め、本明細書で説明する内容は、本発明の鋳造用耐熱マグネシウム合金のみならずマグネシウム合金製鋳物(以下、適宜、両者を単に「マグネシウム合金」という。)およびその製造方法にも適宜該当する。また、いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
(1)合金組成
本発明のマグネシウム合金は、Caを0.2〜3質量%と、R.E.を1〜4質量%と、Znを1質量%未満含有してなる。
Caは、Mg基地中に固溶してα−Mgを強化すると共にMgと化合物を形成し、微細な析出物や晶出物として組織を形成して、マグネシウム合金の耐熱性と耐力を向上させる元素である。特に、その微細な析出物によって耐熱性が向上し、粒界に晶出するMg−Ca系化合物によって耐力が向上する。Caが0.2質量%未満ではこのような効果が薄く、Caが3質量%を超えるとCa化合物(粒界化合物)が粒界に多量に連続して晶出するようになり、マグネシウム合金の伸びや靱性を低下させる。また、Caの過多は鋳造割れの誘因ともなる。Caの下限を0.2質量%さらには0.5質量%とし、Caの上限を3質量%、1.5質量%さらには1質量%とするとより好ましい。
R.E.は、Mg基地中への固溶及び粒界への晶出(析出)によって、マグネシウム合金の耐熱性を向上させる元素である。R.E.が1質量%未満ではこのような効果が薄く、R.E.が4質量%を超えるとマグネシウム合金の靱性が低下する。R.E.の下限を1質量%、1.5質量%とし、R.E.の上限を3質量%、2.5質量%とするとより好ましい。
なお、R.E.には、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタノイド、アクチノイドがあるが、本発明でいうR.E.として代表的なものは、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジム等である。これらのR.E.は、1種類でも2種類以上でも良い。特に、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジム等の混合物であるミッシュメタル(Mm)を用いると、比較的入手が容易で安価なので好ましい。
Znは、固溶強化により母相であるα−Mg相を強化し、マグネシウム合金の室温強度を改善する元素である。また、Znは、マグネシウム合金の耐熱性の向上にも効果がある。しかし、前述したように、ZnがCaと共存すると、マグネシウム合金の鋳造性が大きく低下する。そこで本発明では、Zn量を比較的少なくして、概して、固相線温度を上昇させ、凝固温度範囲を狭めている。固相線温度や液相線温度は合金組成によっても変化するが、本発明者が調査したところ、本発明のマグネシウム合金では、その固相線温度が概ね490℃以上となり、そのときの液相線温度は640〜650℃となる。従って、凝固温度範囲を示す液相線温度と固相線温度との温度差は160℃以下となる。本発明ではZnの上限を1質量%としたが、0.8質量%さらには0.5質量%であるとより好ましい。なお、Znの下限は0質量%でも良いが、室温強度や耐熱性の向上を図るために、その下限を0.1質量%さらには0.3質量%とするとより好ましい。
ここで、CaおよびZnの共存下でZn量が増加した場合に鋳造用耐熱マグネシウム合金の鋳造性が低下するのは、Zn量の増加によって合金の固相線温度が低下し、凝固温度範囲が拡大することにより、脆弱な残留液相が鋳造割れの起点となるためであると考えられる。
このような観点から、前記Caの前記Znに対する含有量比(Ca/Zn)を0.2〜4とすると好ましい。Ca/Znが0.2未満では、耐熱性が劣り、Ca/Znが4を超えると鋳造性および靱性が低下するからである。このCa/Znが0.2〜2.5であるとより好ましい。
本発明のマグネシウム合金は、さらに、ストロンチウム(Sr)を0.1〜1質量%含むと好適である。また、ジルコニウム(Zr)およびマンガン(Mn)の1種以上を合計で0.3〜1質量%含むと好適である。
Srは、鋳造性を向上させる元素である。Srが0.1質量%未満ではその効果が薄く、1質量%を超えるとSr系化合物が多量に晶出して合金を脆弱化させてしまうため好ましくない。Srは0.3〜0.8質量%であるとより好ましい。
ZrおよびMnは、合金の結晶粒を微細化させる働きをする。また、Zrは耐熱性の向上にも寄与する元素である。それらの合計が0.3質量%未満ではその効果が薄く、1質量%を超えると靱性が低下するため好ましくない。ZrおよびMnは合計で0.3〜0.8質量%であるとより好ましい。
(2)マグネシウム合金製鋳物の製造方法
本発明のマグネシウム合金製鋳物は、その鋳造方法が特に限定されるものではないが、例えば、前述したように、上述の組成を有するマグネシウム合金の溶湯を鋳型に注入する注入工程と、この鋳型に注入された溶湯を凝固させる凝固工程とによって製造される。これにより、耐熱性に優れると共に鋳造割れ(表面割れ)がほとんどないマグネシウム合金製鋳物が得られる。ここで、マグネシウム合金製鋳物を量産する場合、ダイカスト鋳造が主となる。本発明の製造方法によってダイカスト鋳造すれば、薄肉、複雑形状等をした鋳物であっても、鋳造割れ等が少ない。
ところで、ダイカスト鋳造は、セットされた金型のキャビティへ、合金溶湯をプランジャ等から高速供給すると共に加圧しつつ急冷凝固させるものである。通常は、ダイカストマシン等によって、短いタクトでほぼ自動的、連続的に行われる。
ダイカスト鋳造の条件は、例えば、鋳造圧力、射出温度、射出速度(または溶湯の注入時間)、冷却速度等によってほぼ規定される。鋳造圧力は、例えば20〜60MPaである。射出速度(プランジャ速度)は、例えば、1〜4m/secさらには1〜7m/secである。これを溶湯の製品キャビティ内への注入時間でいえば、例えば300msec以下さらには100msec以下である。冷却速度は、厳密にいうと鋳造部位により異なるため、一律には特定できないが、遅くとも、例えば、20℃/sec以上である。このようなダイキャスト鋳造の場合、上記注入工程は、溶湯を鋳型に高速注入する工程となり、凝固工程は、その注入された溶湯を急冷凝固させる工程となる。
(3)マグネシウム合金製鋳物の用途
本発明のマグネシウム合金製鋳物は、鋳造後に溶体化処理や時効処理等の熱処理を施しても良いが、熱処理を施さない鋳放し状態で優れた耐熱性等を発揮する。このため、高耐熱性のマグネシウム合金製鋳物が歩留り良く低コストで得られる。特に、それがダイカスト鋳造品の場合、鋳造に要するサイクルタイムも短かく、鋳造後の加工等もほとんど不要となり、マグネシウム合金製鋳物の量産化、低コスト化を一層図れる。
本発明のマグネシウム合金製鋳物の用途は種々あるが、例えば、次のようなものがある。自動車や二輪車の分野では、ボディ構造用部材、シャシ部材、ホイール、スペースフレーム、ステアリングホイール(芯金)、シートフレーム、サスペンションメンバー、ミッションケース、プーリ、オイルパン、シフトレバー、インスツルメントパネル、ドアインパクトパネル、吸気用サージタンク、ペダルブラケット、フロントシュラウドパネル等である。特に、本発明のマグネシウム合金製鋳物は優れた耐熱性を有するので、高温環境下で使用される製品、例えば自動車のエンジンルーム内に配置されるエンジン、トランスミッション又はそれらの関連製品に使用されると一層好適である。
本発明のマグネシウム合金の鋳造性および耐熱性を具体的に評価するため、Zn量およびCa量を種々変更してダイキャスト鋳造した試験片(マグネシウム合金製鋳物)を製造した。以下、それらの試験片の製造方法、試験方法および試験結果について説明する。
(1)鋳造割れとZn量との関係
(試験片の製造)
先ず、電気炉中で予熱した高クロム合金鋼(SUS430)製るつぼの内面に、塩化マグネシウム系のフラックスを塗布し、その中に純マグネシウム地金を投入して溶解した。700℃に保持した溶湯中に、Ca、Znおよびミッシュメタル(Mm)を添加した。さらに、その溶湯を780℃に昇温後、Mg−Zr合金を添加した。それらを充分に攪拌して完全に溶解させた後、その溶湯を780℃に保持した。
このとき、試験片の合金組成がCa:0.2質量%、ミッシュメタル:2.0質量%、Zr:0.5質量%およびZn:x質量%(xは試験片によって異なる。)で残部がMgとなるように、各原料を調製した。そのZn量は、それぞれ、0質量%、0.25質量%、0.5質量%、0.75質量%、1質量%または2質量%とした。なお、使用したMmは、セリウム(Ce)52.2質量%、ランタン(La)25.47質量%、プラセオジム(Pr)16.1質量%、ネオジム(Nd)5.4質量%、サマリウム(Sm)0.1質量%の組成割合であった。
溶解作業中の燃焼を防止するため、溶湯表面に炭酸ガスとSF6ガスとの混合ガスを流速0.2L/分で吹き付け、適宜、フラックスを溶湯表面に散布した。こうして得た合金溶湯を図1に示す試験片形状のキャビティをもつ金型へ注入し(注入工程)、その後、急冷凝固させて(凝固工程)、ダイキャスト鋳物を得た。
この際行ったダイカスト鋳造は、縦型ダイカスト機を使用して行った。つまり、上記組成に調製した各種溶湯をプランジャ(φ40mm)で金型のキャビティへ加圧注入後(注入工程)、冷却速度を100℃/秒程度として凝固させた(凝固工程)。このときの鋳造条件は、鋳造圧力:64MPa、射出(プランジャ)速度:0.6m/s、射出(溶解)温度:液相線温度+20℃とした。また、金型温度は50〜100℃としておいた。
図1に示した試験片は、ゲートに連なる幅40x長さ70x厚さ3mmの薄板部と、この薄板部から奥に連なる幅40x長さ65x厚さ11mmの厚板部と、薄板部の中央表面から突出し厚板部からゲートへと架橋する幅2x長さ70x高さ8mmのリブとで構成されている。そして、薄板部と厚板部との裏面は面一の平坦面となっている。
(測定および評価)
各試験片のリブ背面(リブ裏側の平坦面)と、リブと薄板部との付け根部分に形成された隅R部とに鋳造割れが発生した否かを調べた。すなわち、ゲートから高さ方向に50mmの位置にあるリブ背面と隅R部とについて、鋳造割れの深さを組織観察によって測定した。この結果を図2に示す。図2中、総和(△)は、リブ背面の割れ深さ(◆)と隅R部の割れ深さ(■)との算術和である。また、図2には、代表的な鋳造用耐熱マグネシウム合金であるAZ91を用いたときの割れ深さも参考に示した。図2から明らかなように、Mg−x%Zn−0.2%Ca−2%Mm−0.5%Zr(単位:質量%)の場合、Znが1質量%未満(特に、Zn:0.5質量%)のときに割れ深さが非常に小さくなることが確認された。
(2)鋳造割れとCa量との関係
上記結果を踏まえて、上記の場合と同様に、Mg−0.5%Zn−x%Ca−2%Mm−0.5%Zr(単位:質量%)からなる試験片を製造して、鋳造割れとCa量との関係を調査した。この結果を図3に示す。用意した各試験片のCa量(x)は、0.2%、1%、2%、3%とした。
ところが、Znが0.5%のとき、Ca量が変化しても、微細な鋳造割れはAZ91合金と同等あるいはそれ以下と少なかった。但し、Ca量が3質量%を超えると、金型の拘束によって鋳物の破断を生じた。破断した箇所は図1の厚板部と薄板部との境界部分であった。ちなみに、鋳物の鋳造割れは溶湯の凝固途中(液相線温度〜固相線温度の温度)で生じるものであるが、鋳物の破断は凝固後に(固相線温度以下の温度で)生じるものである。
この結果から、Znが1質量%未満で少ないと、Ca量(但し、3質量%以内)に拘らず優れた鋳造性が得られることが解った。この結果の見方を変えれば、マグネシウム合金の高耐熱性を確保するために、CaおよびMm(R.E.)を適量(または比較的多く)含有させても、Zn量を抑制することで鋳造性も確保されることがわかる。
参考までに、本実施例である試験片(Mg−0.2%Zn−0.8%Ca−2%Mm−0.5%Zr)の耐クリープ特性と、他の組成をもつ試験片の耐クリープ特性とを図4に対比して示した。このクリープ試験では、150℃の高温環境下で100MPaの引張応力を試験片に印加した。図4の縦軸にはそのとき生じた歪みεをとり、横軸には時間(sec)をとって示した。
以上のように、本発明の鋳造用耐熱マグネシウム合金を用いると、耐熱性は勿論のこと、薄肉で複雑形状の鋳物であっても、鋳造割れ等を非常に少なくできる。つまり、ダイキャスト鋳造等を行う場合のロバスト性が向上して、鋳造可能な条件を拡大でき、既存設備でも十分な耐熱性をもつマグネシウム合金製鋳物の製造が可能となる。
試験片の形状を表す斜視図である。 Zn量と鋳造割れの深さとの関係を示す図である。 Ca量と鋳造割れの深さとの関係を示す図である。 各試験片のクリープ特性(150℃x100MPa)を示すグラフである。

Claims (6)

  1. 全体を100質量%としたときに、
    0.2〜3質量%のカルシウム(Ca)と、
    1〜4質量%の希土類元素(R.E.)と、
    1質量%未満の亜鉛(Zn)と、
    0.3〜1質量%のジルコニウム(Zr)とを含み、
    残部がマグネシウム(Mg)および不可避的不純物とからなり、
    前記Caの前記Znに対する含有量比(Ca/Zn)は0.2〜4であり、
    鋳造性および耐熱性に優れることを特徴とする鋳造用耐熱マグネシウム合金。
  2. ダイカスト鋳造に用いられるダイカスト鋳造用耐熱マグネシウム合金である請求項1に記載の鋳造用耐熱マグネシウム合金。
  3. 液相線温度と固相線温度との温度差は160℃以下である請求項1または2に記載の鋳造用耐熱マグネシウム合金。
  4. 全体を100質量%としたときに、
    0.2〜3質量%のCaと、
    1〜4質量%のR.E.と、
    1質量%未満のZnと、
    0.3〜1質量%のZrとを含み、
    残部がMgおよび不可避的不純物とからなり、
    前記Caの前記Znに対する含有量比(Ca/Zn)は0.2〜4であり、
    耐熱性に優れると共に鋳造割れがほとんどないことを特徴とするマグネシウム合金製鋳物。
  5. ダイカスト鋳造されたものである請求項4に記載のマグネシウム合金製鋳物。
  6. 全体を100質量%としたときに、0.2〜3質量%のCaと、1〜4質量%のR.E.と、1質量%未満のZnと、0.3〜1質量%のZrとを含み、残部がMgおよび不可避的不純物とからなり、前記Caの前記Znに対する含有量比(Ca/Zn)が0.2〜4であるマグネシウム合金の溶湯を鋳型に注入する注入工程と、
    該鋳型に注入された溶湯を凝固させる凝固工程とを備え、
    耐熱性に優れると共に鋳造割れがほとんどないマグネシウム合金製鋳物が得られることを特徴とするマグネシウム合金製鋳物の製造方法。
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