[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1および図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係るシステムの概略の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係るシステムの構成を示す斜視図である。図2は、本実施の形態に係るシステムの主要部分を示すブロック図である。本実施の形態は、本発明のシステムを自動車の電動パワーステアリング装置に適用した例である。
図1に示したように、本実施の形態に係るシステムは、ステアリングホイール61と、ステアリングホイール61に連結されたステアリングシャフト62と、ステアリングシャフト62に取り付けられたトルクセンサ63と、ステアリングシャフト62に取り付けられた減速ギア64と、ステアリングシャフト62に連結されたピニオン軸65と、ラック軸66と、ラック軸66に連結された2つのタイロッド67とを備えている。ピニオン軸65には、ピニオン65aが形成されている。ラック軸66には、ピニオン65aに噛み合うラック66aが形成されている。2つのタイロッド67は、2つの車輪に連結されている。
本実施の形態に係るシステムは、更に、操舵補助力発生用のモータ70を備えている。モータ70は、本発明における機械的動作を行う動作体に対応する。モータ70は、回転軸71を有している。回転軸71には、減速ギア64に噛み合うねじ歯車71aが形成されている。本実施の形態に係るシステムは、更に、モータ70を制御する制御装置80と、車速センサ81とを備えている。
トルクセンサ63は、ステアリングシャフト62に作用する操舵トルクを検出し、操舵トルクの検出値Tを制御装置80に出力する。また、車速センサ81は、車速を検出し、車速の検出値Vを制御装置80に出力する。
図2に示したように、本実施の形態に係るシステムは、更に、本実施の形態に係る物理量検出値補正装置1を備えている。物理量検出値補正装置1は、第1のセンサ2と、第2のセンサ3と、補正回路4とを備えている。第1のセンサ2は、動作体であるモータ70の機械的動作に対応して周期的に変化する物理量を検出し、その検出結果を補正前検出値θ0として、補正回路4に出力する。第2のセンサ3は、モータ70の機械的動作中の本来の動作に重畳された、機械的動作中の周期的な振動成分を検出し、振動成分の検出値VCを補正回路4に出力する。補正回路4は、第2のセンサ3によって検出された振動成分の振幅すなわち検出値VCの振幅が小さくなるように補正前検出値θ0を補正して、制御装置80がモータ70の機械的動作を制御するために利用する補正後検出値θsを生成し、制御装置80に出力する。補正回路4と制御装置80は、例えば、マイクロコンピュータによって実現することができる。
本実施の形態における第1のセンサ2は、モータ70の回転軸71の回転角度を検出する回転角度センサである。以下、第1のセンサ2を回転角度センサ2とも記す。図1に示したように、回転角度センサ2は、被検出磁界を発生する磁界発生部5と、この磁界発生部5が発生する被検出磁界を検出する磁気センサ6とを有している。磁界発生部5と磁気センサ6のうちの一方は、モータ70の機械的動作に連動して移動する。この場合、モータ70の機械的動作に対応して周期的に変化する物理量は、磁気センサ6が検出する被検出磁界に関連したものである。本実施の形態では、特に、磁界発生部5がモータ70の機械的動作に連動して移動し、磁気センサ6はモータ70の機械的動作に連動して移動しない。具体的には、本実施の形態における磁界発生部5は、回転軸71に取り付けられた磁石である。以下、磁界発生部5を磁石5とも記す。磁石5は、モータ70の機械的動作である回転軸71の回転に連動して回転する。磁気センサ6は、磁石5に対向するように配置されている。
本実施の形態における第2のセンサ3は、特に、モータ70またはモータ70に連結された部材の機械的振動を検出する振動センサである。以下、第2のセンサ3を振動センサ3とも記す。振動センサ3は、接触式でもよいし、非接触式でもよい。また、振動センサ3は、角速度センサ、角加速度センサ、加速度センサ、変位センサのいずれかであってもよい。
モータ70の機械的動作中の本来の動作とは、例えば、回転軸71を一定の角速度で回転させるべき状況においては、回転軸71が一定の角速度で動作することである。この状況において、モータ70の機械的動作中の本来の動作に、周期的な振動成分が重畳されると、回転軸71の角速度は、一定値を中心として振動する。この場合、周期的な振動成分は、回転軸71の実際の角速度から一定値を引いた値と言うことができる。
また、例えば、回転軸71を一定の角加速度で角速度を増加させながら回転させるべき状況においては、モータ70の機械的動作中の本来の動作とは、回転軸71が一定の角加速度で動作することである。この状況において、モータ70の機械的動作中の本来の動作に、周期的な振動成分が重畳されると、回転軸71の角加速度は、一定値を中心として振動する。この場合、周期的な振動成分は、回転軸71の実際の角加速度から一定値を引いた値と言うことができる。
モータ70の機械的動作が、本来の動作に上記振動成分が重畳されたものとなると、モータ70またはモータ70に連結された部材において、上記振動成分がない場合には発生しない機械的振動が発生する箇所が生じる。振動センサ3は、この機械的振動を検出することによって、上記振動成分を直接または間接的に検出する。
振動センサ3は、上記機械的振動を検出できる箇所であれば、どこに設けてもよい。図1には、振動センサ3を設けることのできる複数の箇所を、記号3A,3B,3C,3D,3Eで示している。箇所3Aは、モータ70の回転軸71またはその支持部材である。箇所3Bは、モータ70のハウジングまたはその支持部材である。箇所3Cは、ステアリングシャフト62またはその支持部材である。箇所3Dは、減速ギア64の軸部またはその支持部材である。箇所3Eは、ラック軸66またはその支持部材である。
例えば、回転する部材においては、上記振動成分に対応して、角速度の周期的な変化や、回転方向以外の振動が生じる。角速度の周期的な変化は、角速度センサや角加速度センサによって検出することができる。回転方向以外の振動は、加速度センサや変位センサによって検出することができる。また、例えば、直線運動を行う部材や、回転運動または直線運動を行う部材を支持する部材においては、上記振動成分に対応して振動が生じる。この振動は、加速度センサや変位センサによって検出することができる。
次に、本実施の形態に係るシステムの動作の概略について説明する。トルクセンサ63から出力される検出値Tと、車速センサ81から出力される検出値Vは、制御装置80に入力される。また、回転角度センサ2から出力される補正前検出値θ0と、振動センサ3から出力される検出値VCは、補正回路4に入力される。補正回路4は、検出値VCの振幅が小さくなるように補正前検出値θ0を補正して、制御装置80がモータ70の機械的動作を制御するために利用する補正後検出値θsを生成し、制御装置80に出力する。補正後検出値θsは、モータ70の回転軸71の回転角度に対応する。補正回路4の動作については、後で詳しく説明する。
制御装置80は、検出値T,Vおよび補正後検出値θsを利用して、モータ70に供給する電流Iを決定し、この電流Iをモータ70に供給することによって、モータ70を制御する。制御装置80は、特に、補正後検出値θsに対応する回転軸71の回転角度が目標値と一致するように、電流Iを制御する。これにより、モータ70の回転軸71は、その回転角度が制御されながら回転する。この回転軸71の回転は、ねじ歯車71aおよび減速ギア64によって減速されて、ステアリングシャフト62に伝達される。このようにして、ステアリングシャフト62に、操舵補助力が加えられる。ステアリングシャフト62の回転は、ピニオン65aおよびラック66aによって、ラック軸66の直線運動に変換される。これにより、2つのタイロッド67によって、2つの車輪の舵角が変えられる。
次に、図3を参照して、回転角度センサ2の構成について詳しく説明する。回転角度センサ2の構成を示す斜視図である。前述のように、回転角度センサ2は、磁石5と、磁気センサ6とを有している。磁石5は、被検出磁界MFを発生する。磁気センサ6は、被検出磁界MFを検出する第1の検出回路10および第2の検出回路20を有している。なお、図3では、理解を容易にするために、第1および第2の検出回路10,20を別体として描いているが、第1および第2の検出回路10,20は一体化されていてもよい。また、第1および第2の検出回路10,20は、図3における上下方向に積層されているが、その積層順序は図3に示した例に限られない。
ここで、基準平面、基準位置および基準方向を、以下のように想定する。基準平面は、磁気センサ6と所定の位置関係を有する仮想の平面である。基準位置は、基準平面内に位置する。基準方向は、基準平面内に位置して、基準位置と交差する。基準位置における被検出磁界MFの方向であって基準平面内に位置する方向は、磁気センサ6から見て変化可能である。以下の説明において、基準位置における被検出磁界MFの方向とは、基準平面内に位置する方向を指す。基準位置における被検出磁界MFの方向は、例えば、磁気センサ6から見て、基準位置を中心として回転する。磁気センサ6は、基準位置における被検出磁界MFの方向が基準方向に対してなす角度と対応関係を有する補正前検出値θ0を生成する。
磁石5は、例えば、円柱形状を有している。この磁石5は、円柱の中心軸を含む仮想の平面を中心として対称に配置されたN極とS極とを有している。また、磁石5は、円柱の中心軸方向の両端に位置する第1および第2の端面を有している。第1の端面は、モータ70の回転軸71の一端に接合されている。これにより、磁石5は、回転軸71の回転に連動して、円柱の中心軸を中心として回転する。
磁気センサ6は、磁石5の第2の端面に対向するように配置されている。本実施の形態では、基準平面は、例えば、磁石5の第2の端面に平行な平面である。また、基準位置は、例えば、磁気センサ6が被検出磁界MFを検出する位置である。基準位置は、円柱の中心軸を含む回転中心Cと基準平面とが交差する位置であってもよい。この場合、磁石5が回転すると、基準位置における被検出磁界MFの方向は、磁気センサ6から見て、基準位置を中心として回転する。
ここで、図4を参照して、本実施の形態における方向と角度の定義について説明する。まず、図3に示した回転中心Cに平行で、磁石5の第2の端面から磁気センサ6に向かう方向をZ方向と定義する。次に、Z方向に垂直な2つの方向であって、互いに直交する2つの方向をX方向とY方向と定義する。図4では、X方向を右側に向かう方向として表し、Y方向を上側に向かう方向として表している。また、X方向とは反対の方向を−X方向と定義し、Y方向とは反対の方向を−Y方向と定義する。
本実施の形態において、基準位置PRは、磁気センサ6が外部磁界MFを検出する位置である。基準方向DRはX方向とする。基準位置PRにおける外部磁界MFの方向DMが基準方向DRに対してなす角度を記号θで表す。外部磁界MFの方向DMは、図4における反時計回り方向と時計回り方向の両方に回転可能である。角度θは、基準方向DRから反時計回り方向に見たときに正の値で表し、基準方向DRから時計回り方向に見たときに負の値で表す。
次に、図5を参照して、磁気センサ6の構成について詳しく説明する。図5は、磁気センサ6の構成を示す回路図である。第1の検出回路10は、基準位置PRにおける被検出磁界MFの、X方向の成分を検出し、角度θと対応関係を有する第1の信号S1を生成する。第2の検出回路20は、基準位置PRにおける被検出磁界MFの、Y方向の成分を検出し、角度θと対応関係を有する第2の信号S2を生成する。第1の信号S1は、基準位置PRにおける被検出磁界MFの、X方向の成分の強度に対応した信号である。第2の信号S2は、基準位置PRにおける被検出磁界MFの、Y方向の成分の強度に対応した信号である。
第1および第2の信号S1,S2は、互いに等しい信号周期Tで周期的に変化する。第2の信号S2の位相は、第1の信号S1の位相と異なっている。本実施の形態では、第2の信号S2の位相は、第1の信号S1の位相に対して、信号周期Tの1/4の奇数倍だけ異なっていることが好ましい。ただし、磁気検出素子の作製の精度等の観点から、第1の信号S1と第2の信号S2の位相差は、信号周期Tの1/4の奇数倍から、わずかにずれていてもよい。以下の説明では、第1の信号S1の位相と第2の信号S2の位相の関係が上記の好ましい関係になっているものとする。
第1の検出回路10は、第1の信号S1を出力する出力端を有している。第2の検出回路20は、第2の信号S2を出力する出力端を有している。図5に示したように、磁気センサ6は、更に、演算回路30を有している。演算回路30は、2つの入力端と1つの出力端とを有している。演算回路30の2つの入力端は、それぞれ、第1および第2の検出回路10,20の各出力端に接続されている。
演算回路30は、角度θと対応関係を有する補正前検出値θ0を算出する。本実施の形態では、補正前検出値θ0は、磁気センサ6によって検出された角度θの値である。演算回路30は、例えば、マイクロコンピュータによって実現することができる。補正前検出値θ0の算出方法については、後で詳しく説明する。
第1の検出回路10は、ホイートストンブリッジ回路14と、差分検出器15とを有している。ホイートストンブリッジ回路14は、電源ポートV1と、グランドポートG1と、2つの出力ポートE11,E12と、直列に接続された第1の対の磁気検出素子R11,R12と、直列に接続された第2の対の磁気検出素子R13,R14とを含んでいる。磁気検出素子R11,R13の各一端は、電源ポートV1に接続されている。磁気検出素子R11の他端は、磁気検出素子R12の一端と出力ポートE11に接続されている。磁気検出素子R13の他端は、磁気検出素子R14の一端と出力ポートE12に接続されている。磁気検出素子R12,R14の各他端は、グランドポートG1に接続されている。電源ポートV1には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG1はグランドに接続される。差分検出器15は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号の値を第1の信号S1として演算回路30に出力する。
第2の検出回路20の回路構成は、第1の検出回路10と同様である。すなわち、第2の検出回路20は、ホイートストンブリッジ回路24と、差分検出器25とを有している。ホイートストンブリッジ回路24は、電源ポートV2と、グランドポートG2と、2つの出力ポートE21,E22と、直列に接続された第1の対の磁気検出素子R21,R22と、直列に接続された第2の対の磁気検出素子R23,R24とを含んでいる。磁気検出素子R21,R23の各一端は、電源ポートV2に接続されている。磁気検出素子R21の他端は、磁気検出素子R22の一端と出力ポートE21に接続されている。磁気検出素子R23の他端は、磁気検出素子R24の一端と出力ポートE22に接続されている。磁気検出素子R22,R24の各他端は、グランドポートG2に接続されている。電源ポートV2には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG2はグランドに接続される。差分検出器25は、出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号の値を第2の信号S2として演算回路30に出力する。
本実施の形態では、ホイートストンブリッジ回路(以下、ブリッジ回路と記す。)14,24に含まれる全ての磁気検出素子として、スピンバルブ型のMR素子、特にTMR素子を用いている。なお、TMR素子の代わりにGMR素子を用いてもよい。TMR素子またはGMR素子は、磁化方向が固定された磁化固定層と、被検出磁界MFの方向DMに応じて磁化の方向が変化する磁性層である自由層と、磁化固定層と自由層の間に配置された非磁性層とを有している。TMR素子では、非磁性層はトンネルバリア層である。GMR素子では、非磁性層は非磁性導電層である。TMR素子またはGMR素子では、自由層の磁化の方向が磁化固定層の磁化の方向に対してなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が0°のときに抵抗値は最小値となり、角度が180°のときに抵抗値は最大値となる。以下の説明では、ブリッジ回路14,24に含まれる磁気検出素子をMR素子と記す。図5において、塗りつぶした矢印は、MR素子における磁化固定層の磁化の方向を表し、白抜きの矢印は、MR素子における自由層の磁化の方向を表している。なお、磁気検出素子として、AMR素子やホール素子を用いることもできる。
第1の検出回路10では、MR素子R11,R14における磁化固定層の磁化の方向は、X方向であり、MR素子R12,R13における磁化固定層の磁化の方向は、−X方向である。図4において、符号DP1を付した矢印は、MR素子R11,R14における磁化固定層の磁化の方向を表している。この場合、被検出磁界MFのX方向の成分の強度に応じて、出力ポートE11,E12の電位差が変化する。従って、第1の検出回路10は、被検出磁界MFのX方向の成分の強度を検出して、その強度を表す第1の信号S1を生成する。
第2の検出回路20では、MR素子R21,R24における磁化固定層の磁化の方向は、Y方向であり、MR素子R22,R23における磁化固定層の磁化の方向は、−Y方向である。図4において、符号DP2を付した矢印は、MR素子R21,R24における磁化固定層の磁化の方向を表している。この場合、被検出磁界MFのY方向の成分の強度に応じて、出力ポートE21,E22の電位差が変化する。従って、第2の検出回路20は、被検出磁界MFのY方向の成分の強度を検出して、その強度を表す第2の信号S2を生成する。
なお、検出回路10,20内の複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子の作製の精度等の観点から、上述の方向からわずかにずれていてもよい。
次に、図6を参照して、MR素子の構成の一例について説明する。図6は、図5における1つのMR素子の一部を示す斜視図である。この例では、1つのMR素子は、複数の下部電極42と、複数のMR膜50と、複数の上部電極43とを有している。複数の下部電極42は図示しない基板上に配置されている。個々の下部電極42は細長い形状を有している。下部電極42の長手方向に隣接する2つの下部電極42の間には、間隙が形成されている。図6に示したように、下部電極42の上面上において、長手方向の両端の近傍に、それぞれMR膜50が配置されている。
MR膜50は、下部電極42側から順に積層された自由層51、非磁性層52、磁化固定層53および反強磁性層54を含んでいる。図6に示した例では、MR膜50は、円柱形状を有している。図4において、符号11は、第1の検出回路10内のMR膜50の平面形状(上から見た形状)を表し、符号21は、第2の検出回路20内のMR膜50の平面形状を表している。
自由層51は、下部電極42に電気的に接続されている。反強磁性層54は、反強磁性材料よりなり、磁化固定層53との間で交換結合を生じさせて、磁化固定層53の磁化の方向を固定する。複数の上部電極43は、複数のMR膜50の上に配置されている。個々の上部電極43は細長い形状を有し、下部電極42の長手方向に隣接する2つの下部電極42上に配置されて隣接する2つのMR膜50の反強磁性層54同士を電気的に接続する。このような構成により、図6に示したMR素子は、複数の下部電極42と複数の上部電極43とによって直列に接続された複数のMR膜50を有している。
なお、MR膜50における層51〜54の配置は、図6に示した配置とは上下が反対でもよい。また、MR膜50の形状は、図6に示した例に限られない。例えば、MR膜50は、角柱形状を有していてもよい。
次に、図5を参照して、補正前検出値θ0の算出方法について説明する。図5に示した例では、理想的には、第2の検出回路20におけるMR素子の磁化固定層の磁化方向は、第1の検出回路10におけるMR素子の磁化固定層の磁化方向に直交している。この場合、理想的には、第1の信号S1の波形は、角度θに依存したコサイン(Cosine)波形になり、第2の信号S2の波形は、角度θに依存したサイン(Sine)波形になる。この場合、第2の信号S2の位相は、第1の信号S1の位相に対して、信号周期Tの1/4すなわちπ/2(90°)だけ異なっている。
角度θが0°以上90°未満のとき、および270°より大きく360°以下のときは、第1の信号S1は正の値であり、角度θが90°よりも大きく270°よりも小さいときは、第1の信号S1は負の値である。また、角度θが0°よりも大きく180°よりも小さいときは、第2の信号S2は正の値であり、角度θが180°よりも大きく360°よりも小さいときは、第2の信号S2は負の値である。
演算回路30は、第1および第2の信号S1,S2に基づいて、角度θと対応関係を有する補正前検出値θ0を算出する。具体的には、例えば、演算回路30は、下記の式(1)によって、θ0を算出する。なお、“atan”は、アークタンジェントを表す。
θ0=atan(S2/S1) …(1)
式(1)におけるatan(S2/S1)は、θ0を求めるアークタンジェント計算を表している。なお、θ0が0°以上360°未満の範囲内では、式(1)におけるθ0の解には、180°異なる2つの値がある。しかし、S1,S2の正負の組み合わせにより、θ0の真の値が、式(1)におけるθ0の2つの解のいずれであるかを判別することができる。すなわち、S1が正の値のときは、θ0は、0°以上90゜未満、および270°より大きく360°以下の範囲内である。S1が負の値のときは、θ0は90°よりも大きく270゜よりも小さい。S2が正の値のときは、θ0は0°よりも大きく180゜よりも小さい。S2が負の値のときは、θ0は180°よりも大きく360゜よりも小さい。演算回路30は、式(1)と、上記のS1,S2の正負の組み合わせの判定により、0°以上360°未満の範囲内でθ0を求める。
角度θおよび補正前検出値θ0は、モータ70の機械的動作である回転軸71の回転に対応して周期的に変化する。角度θは、モータ70の機械的動作に対応して周期的に変化する物理量であり、補正前検出値θ0は、その物理量の検出結果である。
以下、補正回路4の動作と、本実施の形態に係る物理量検出値補正装置1およびシステムの効果について詳しく説明する。始めに、本実施の形態との比較のために、本実施の形態における第2のセンサ(振動センサ)3と補正回路4がなく、第1のセンサ(回転角度センサ)2から出力される補正前検出値θ0が、そのまま制御装置80に入力される場合における問題点について説明する。この場合、磁石5の着磁の精度や、磁石5または磁気センサ6の取り付けの精度が低いと、磁石5の回転方向の位置によって、磁気センサ6が検出する被検出磁界MFの強度が変化したり、磁石5が一定の角速度で回転していても磁気センサ6が検出する被検出磁界MFの方向が一定の角速度で回転しなかったりする場合がある。これらの場合には、磁気センサ6から出力される補正前検出値θ0に誤差が生じる。この誤差は、磁石5の回転に同期して周期的に変化する。ここで、補正前検出値θ0に生じる誤差を角度誤差と呼ぶ。図7に、この角度誤差の角度θに対する変化の態様の一例を示す。図7において、横軸は角度θを示し、縦軸は角度誤差を示している。
上記の角度誤差が生じると、モータ70の回転軸71の実際の角速度が一定であっても、補正前検出値θ0の角速度は、一定にならずに、角度誤差に起因して周期的に変動する。この場合、制御装置80は、補正前検出値θ0の角速度が一定になるようにモータ70を制御する。その場合、補正前検出値θ0の角速度は一定値に近づくが、モータ70の回転軸71の実際の角速度は、逆に、一定値ではなくなり、周期的に変動してしまう。その結果、モータ70の動作が、本来の円滑な動作ではなくなるという問題が生じる。
本実施の形態に係る物理量検出値補正装置1は、以下のようにして、上記の問題を解決する。まず、上述のように周期的に変化する角度誤差を含む補正前検出値θ0をそのまま利用して、制御装置80がモータ70を制御すると、モータ70の機械的動作は、本来の動作と、それに重畳された周期的な振動成分とを含むことになる。本実施の形態では、このモータ70の機械的動作中の周期的な振動成分を、第2のセンサ(振動センサ)3によって検出する。
図8は、第2のセンサ(振動センサ)3から出力される検出値VCの、角度θに対する変化の態様の一例を示している。図8には、第2のセンサ(振動センサ)3が加速度センサであって、検出値VCが、検出された加速度である場合の例を示している。図8において、横軸は角度θを示し、縦軸は検出値VC(加速度)を示している。
本実施の形態では、図8において矢印で示したように、検出値VCの振幅が小さくなるように、補正回路4によって、第1のセンサ(回転角度センサ)2から出力された補正前検出値θ0を補正して、制御装置80がモータ70の機械的動作を制御するために利用する補正後検出値θsを生成する。制御装置80は、この補正後検出値θsを利用して、モータ70を制御する。これにより、検出値VCの振幅は、徐々に小さくなる。図9は、検出値VCの振幅の、時間に対する変化の一例を示している。図9において、横軸は時間を示し、縦軸は検出値VC(加速度)の振幅を示している。ここでは、検出値VCの振幅を、補正前検出値θ0が360°だけ変化する期間内における検出値VCの最大値と最小値の差の1/2としている。
このように、本実施の形態では、補正前検出値θ0に、周期的に変化する角度誤差が含まれていても、振動成分(検出値VC)の振幅が小さくなるように補正後検出値θsが生成され、制御装置80は、この補正後検出値θsを利用して、モータ70を制御する。これにより、本実施の形態によれば、補正前検出値θ0に生じる周期的に変化する角度誤差に起因して、モータ70の機械的動作が本来の動作と異なることを防止することができる。
次に、補正回路4の動作の一例について説明する。この例では、補正前検出値θ0を補正するための補正データをAsin(θ0−α)と表す。“A”は、補正データの振幅であり、“α”は、補正前検出値θ0に対する補正データの位相差である。補正回路4は、下記の式(2)によって、補正前検出値θ0を補正して、補正後検出値θsを生成する。
θS=θ0−Asin(θ0−α) …(2)
補正回路4は、振動センサ3から出力される検出値VCの振幅が小さくなるように、図10に示した処理によって、補正データの振幅Aと位相差αを決定する。図10に示した処理では、補正回路4は、まず、振幅Aを初期値a1に設定し、位相差αを初期値0°に設定し、パラメータnを0に設定する(ステップS101)。なお、初期値a1は、任意に設定することができる。補正回路4は、常に、最新のAとαの値を用いて、式(2)によって補正後検出値θsを生成する。
補正回路4は、次に、nが6と等しいか否かを判定する(ステップS102)。nが6と等しい場合(Y)は、ステップS105へ進む。nが6と等しくない場合(N)は、補正前検出値θ0が例えば360°だけ変化する期間内における検出値VCの振幅を、現在のαの値と対応させて記憶する(ステップS103)。検出値VCの振幅は、上記の期間内における検出値VCの最大値と最小値の差としてもよいし、この差の1/2としてもよい。ステップS103の実行後は、nを1だけ増加させ、αを60°だけ増加させて(ステップS104)、ステップS102に戻る。このようにして、nが6になるまで、ステップS102〜S104が繰り返される。その結果、αが0°、60°、120°、180°、240°、300°のそれぞれのときの6つの検出値VCの振幅が記憶される。
補正回路4は、ステップS102においてnが6と等しくなると、ステップS105において、記憶した6つの検出値VCの振幅のうちの最小値に対応するαの値を保持する(ステップS105)。これ以降、補正回路4は、次にαが変更されるまで、保持したαの値を用いて、式(2)によって補正後検出値θsを生成する。ステップS101〜S105では、検出値VCの振幅を小さくすることのできるαの値を求めている。
補正回路4は、ステップS105の実行後、補正データの振幅Aを所定のステップ値a2だけ増加させる(ステップS106)。ステップ値a2は、任意に設定することができる。次に、新たに、補正前検出値θ0が例えば360°だけ変化する期間内における検出値VCの振幅を求め、ステップS106の実行前に比べて、検出値VCの振幅が減少したか否かを判定する(ステップS107)。検出値VCの振幅が減少した場合(Y)は、ステップS106に戻る。検出値VCの振幅が減少しなかった場合(N)は、ステップS108へ進む。ステップS108では、振幅Aをa2だけ減少させて、振幅Aを保持する。ステップS106〜S108により、振幅Aをa2ずつ増加させていったときに、検出値VCの振幅が最も小さくなるときの振幅Aの値が求められる。補正回路4は、ステップS108を実行して、図10に示した処理を終了する。図10に示した処理によって、検出値VCの振幅が小さくなるように、補正データの振幅Aと位相差αが決定される。
補正回路4は、図10に示した処理を、所定の時間間隔を開けて、繰り返し実行するように設定されていてもよい。あるいは、補正回路4は、初期設置時や定期検査時等の特定の時期に、例えば使用者の指示に応じて、図10に示した処理を実行するように設定されていてもよい。補正回路4は、次に図10に示した処理を実行するまでは、最新のAとαの値を用いて、式(2)によって補正後検出値θsを生成する。
なお、補正回路4の動作は、上記の例に限られない。例えば、予め、式(2)における位相差αが分かっている場合には、図10に示した処理中の位相差αを決定する処理は不要になる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。始めに、図11および図12を参照して、本実施の形態に係るシステムの概略の構成について説明する。図11は、本実施の形態に係るシステムの概略の構成を示す斜視図である。図12は、図11に示した第1のセンサの構成を示す斜視図である。
図11に示したように、本実施の形態に係るシステムは、機械的動作を行う動作体90と、動作体90の機械的動作を制御する制御装置91と、本実施の形態に係る物理量検出値補正装置100を備えている。動作体90の機械的動作は、直線的な移動である。
物理量検出値補正装置100は、第1のセンサ101と、第2のセンサ102と、補正回路4とを備えている。第1のセンサ101は、動作体90の機械的動作に対応して周期的に変化する物理量を検出し、その検出結果を補正前検出値θ0として、補正回路4に出力する。第2のセンサ102は、動作体90の機械的動作中の本来の動作に重畳された、機械的動作中の周期的な振動成分を検出し、振動成分の検出値VCを補正回路4に出力する。補正回路4は、第2のセンサ102によって検出された振動成分すなわち検出値VCの振幅が小さくなるように補正前検出値θ0を補正して、制御装置91が動作体90の機械的動作を制御するために利用する補正後検出値θsを生成し、制御装置91に出力する。補正回路4と制御装置91は、例えば、マイクロコンピュータによって実現することができる。
第1のセンサ101は、被検出磁界を発生する磁界発生部120と、この磁界発生部120が発生する被検出磁界を検出する磁気センサ110とを有している。具体的には、磁界発生部120は、複数組のN極とS極が交互に直線状に配列された磁気スケールである。以下、磁界発生部120を磁気スケール120とも記す。磁気スケール120は、磁気スケール120のN極とS極が並ぶ方向Tに平行な上面120aを有している。磁気センサ110は、磁気スケール120の上面120aに対向する位置に配置されている。
磁気スケール120と磁気センサ110のうちの一方は、動作体90の機械的動作に連動して、直線的に移動する。この場合、動作体90の機械的動作に対応して周期的に変化する物理量は、磁気センサ110が検出する被検出磁界に関連したものである。図11には、磁気センサ110が連結部95によって動作体90に連結されて、磁気センサ110が動作体90の機械的動作に連動して移動する例を示している。しかし、磁気スケール120が動作体90の機械的動作に連動して移動してもよい。
図12に示したように、磁気センサ110は、被検出磁界を検出する第1の検出回路10および第2の検出回路20を有している。ここで、磁気スケール120における隣接するN極とS極の1組の、方向Tについて長さを1ピッチと言う。第1の検出回路10と第2の検出回路20は、方向Tについて、1/4ピッチ分だけ互いにずれた位置に配置されている。
第1および第2の検出回路10,20は、それぞれ磁気検出素子を含んでいる。本実施の形態における磁気検出素子は、第1の実施の形態と同様に、例えばTMR素子またはGMR素子である。以下、磁気検出素子をMR素子と記す。本実施の形態では、検出回路10,20は、MR素子(MR膜)を構成する複数の層の面が、磁気スケール120の上面120aに対して平行になるように配置されている。
図13は、MR素子の形状と配置を模式的に示している。図13において、符号11,21は、それぞれ、検出回路10,20内のMR素子の自由層の平面形状を表している。第2の検出回路20のMR素子は、方向Tについて、第1の検出回路10のMR素子に対して1/4ピッチ分だけずれた位置に配置されている。
次に、図12を参照して、本実施の形態における基準平面、基準位置、基準方向について説明する。まず、本実施の形態では、方向Tに平行な一方向(図12では右側に向かう方向)をX方向と定義し、磁気スケール120の上面120aに垂直な一方向(図12では上側に向かう方向)をY方向と定義し、X方向およびY方向に垂直な一方向(図12では奥へ進む方向)をZ方向と定義する。また、X方向とは反対の方向を−X方向と定義する。
本実施の形態における基準平面PLは、Z方向に垂直な平面である。基準位置PRは、基準平面PL内に位置する。基準位置PRは、第1の検出回路10が被検出磁界を検出する位置でもよいし、第2の検出回路20が被検出磁界を検出する位置でもよい。以下の説明では、第1の検出回路10が被検出磁界を検出する位置を基準位置PRとする。基準平面PL内において、基準位置PRにおける被検出磁界の方向DMは、磁気センサ110から見て、基準位置PRを中心として回転する。方向Tについて磁気スケール120と磁気センサ110の相対的位置関係が1ピッチ分変化すると、基準位置PRにおける被検出磁界の方向DMは360°だけ回転する。従って、磁気スケール120と磁気センサ110の相対的位置関係と、基準位置PRにおける被検出磁界の方向DMは、対応関係を有している。1ピッチは、被検出磁界の方向DMの回転角度の360°に相当する。前述のように、第1の検出回路10と第2の検出回路20は、方向Tについて、1/4ピッチ分だけ互いにずれた位置に配置されていることから、第2の検出回路20が被検出磁界を検出する位置における被検出磁界の方向は、基準位置PRにおける被検出磁界の方向DMに対して90°だけずれている。
また、本実施の形態では、基準方向DRはX方向とする。また、基準位置PRにおける被検出磁界の方向DMが基準方向DRに対してなす角度を記号θで表す。角度θは、基準方向DRから時計回り方向に見たときに正の値で表し、基準方向DRから反時計回り方向に見たときに負の値で表す。
次に、図14を参照して、磁気センサ110の構成について詳しく説明する。図14は、磁気センサ110の構成を示す回路図である。磁気センサ110は、前記の第1および第2の検出回路10,20と、演算回路30を備えている。検出回路10,20の構成は、MR素子を構成するMR膜の形状と、MR素子における磁化固定層の磁化の方向を除いて、第1の実施の形態と同じである。演算回路30は、2つの入力端と1つの出力端とを有している。演算回路30の2つの入力端は、それぞれ、検出回路10,20の各出力端に接続されている。
演算回路30は、角度θと対応関係を有する補正前検出値θ0を算出する。本実施の形態では、補正前検出値θ0は、磁気センサ110によって検出された角度θの値であり、これは、方向Tについての磁気スケール120と磁気センサ110の相対的位置関係に対応している。このように、第1のセンサ101は、方向Tについての、磁気スケール120に対する磁気センサ110の位置を検出することができる。
図14において、塗りつぶした矢印は、MR素子における磁化固定層の磁化の方向を表し、白抜きの矢印は、MR素子における自由層の磁化の方向を表している。本実施の形態では、MR素子R11,R14,R21,R24における磁化固定層の磁化の方向はX方向である。また、MR素子R12,R13,R22,R23における磁化固定層の磁化の方向は−X方向である。
本実施の形態では、第1の検出回路10は、基準位置PRにおける被検出磁界の、方向T(X方向、−X方向)の成分の強度を検出して、その強度を表す第1の信号S1を、演算回路30に出力する。第1の信号S1は、基準位置PRにおける被検出磁界の方向DMが基準方向DRに対してなす角度θと対応関係を有する。
また、第2の検出回路20は、第2の検出回路20が被検出磁界を検出する位置における被検出磁界の、方向T(X方向、−X方向)の成分の強度を検出して、その強度を表す第2の信号S2を、演算回路30に出力する。前述のように、第2の検出回路20が被検出磁界を検出する位置における被検出磁界の方向は、基準位置PRにおける被検出磁界の方向DMに対して90°だけずれた一定の関係を有している。そのため、第2の信号S2も、基準位置PRにおける被検出磁界の方向DMが基準方向DRに対してなす角度θと対応関係を有する。
第2の信号S2の位相は、第1の信号S1の位相と異なっている。本実施の形態では、特に、第2の信号S2の位相は、第1の信号S1の位相と90°だけ異なっている。理想的には、第1の信号S1の波形は、角度θに依存したコサイン波形になり、第2の信号S2の波形は、角度θに依存したサイン波形になる。演算回路30における補正前検出値θ0の算出方法は、第1の実施の形態と同じである。
なお、図13に示したように、本実施の形態では、検出回路10,20内のMR素子の自由層の平面形状(符号11,21)は、長軸がZ方向に向いた楕円形である。これにより、自由層は、磁化容易軸がZ方向に向いた形状異方性を有している。これは、以下の理由による。本実施の形態では、自由層が形状異方性を有していない場合には、自由層の磁化は、Y方向の成分を持ち難いために、X方向または−X方向に向きやすくなる。そのため、この場合には、第1および第2の信号S1,S2の波形は、いずれも、正弦曲線から矩形波に近づく。自由層の形状を、例えば、長軸がZ方向に向いた楕円形とすることにより、自由層の磁化はX方向または−X方向に向き難くなり、第1および第2の信号S1,S2の波形を、正弦曲線に近づけることができる。
本実施の形態における第2のセンサ102は、特に動作体90または動作体90に連結された部材の機械的振動を検出する振動センサである。以下、第2のセンサ102を振動センサ102とも記す。振動センサ102は、接触式でもよいし、非接触式でもよい。
本実施の形態では、動作体90は、直線的な移動を行う。動作体90の機械的動作中の本来の動作とは、例えば、動作体90を一定の速度で移動させるべき状況においては、動作体90が一定の速度で移動することである。この状況において、動作体90の機械的動作中の本来の動作に、周期的な振動成分が重畳されると、動作体90の速度は、一定値を中心として振動する。この場合、周期的な振動成分は、動作体90の実際の速度から一定値を引いた値と言うことができる。
動作体90の機械的動作が、本来の動作に上記振動成分が重畳されたものとなると、動作体90または動作体90に連結された部材において、上記振動成分がない場合には発生しない機械的振動が発生する箇所が生じる。振動センサ102は、この機械的振動を検出することによって、上記振動成分を直接または間接的に検出する。振動センサ102としては、例えば、加速度センサや変位センサを用いることができる。
振動センサ102は、上記機械的振動を検出できる箇所であれば、どこに設けてもよい。図11には、振動センサ102を設けることのできる複数の箇所を、記号102A,102B,102Cで示している。箇所102Aは、連結部95またはその支持部材である。箇所102Bは、磁気センサ110のハウジングまたはその支持部材である。箇所102Cは、磁気スケール120またはその支持部材であり、これは、磁気スケール120が動作体90の機械的動作に連動して移動する場合の例である。
次に、図11を参照して、本実施の形態に係るシステムの動作の概略について説明する。第1のセンサ101から出力される補正前検出値θ0と、振動センサ102から出力される検出値VCは、補正回路4に入力される。補正回路4は、検出値VCの振幅が小さくなるように補正前検出値θ0を補正して、制御装置91が動作体90の機械的動作を制御するために利用する補正後検出値θsを生成し、制御装置91に出力する。制御装置91は、補正後検出値θsに対応する磁気スケール120と磁気センサ110の相対的位置関係が、目標とする相対的位置関係と一致するように、動作体90の機械的動作を制御する。
なお、本実施の形態において、MR素子(MR膜)を構成する複数の層の面に対して垂直な方向がXY平面と交差するように、検出回路10,20を配置してもよい。この場合には、方向Tについて磁気スケール120と磁気センサ110の相対的位置関係が変化すると、自由層の磁化の方向は回転する。この場合、基準平面PLは、MR素子を構成する複数の層の面に平行な平面としてもよい。また、磁気センサ110の代わりに、第1の実施の形態における磁気センサ6を用いて、MR素子を構成する複数の層の面に対して垂直な方向がXY平面と交差するように検出回路10,20を配置してもよい。この場合には、第1の実施の形態と同様に、検出回路10,20を同じ位置に配置しながら、第2の信号S2の位相を、第1の信号S1の位相に対して、信号周期Tの1/4すなわちπ/2(90°)だけ異ならせることができる。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、本発明における第1のセンサは、各実施の形態に示した磁気式のセンサに限らず、動作体の機械的動作に対応して周期的に変化する物理量を検出するものであればよい。磁気式のセンサ以外の第1のセンサの例としては、インダクタンス式のポテンショメータやレゾルバがある。