JP5476696B2 - 生体用金属材料および医療機器 - Google Patents

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本発明は、生体用金属材料および医療機器に関するものである。
交通事故等の理由により、頭蓋骨、頬骨、顎骨等の骨体を部分的に欠損した場合、その欠損部に人工的に形成されたインプラントを埋め込み、欠損部を補填することが行われている。これにより、骨体の機能を回復することが可能である。
一方、歯の喪失した部位(顎の骨)にインプラントを埋入することが行われている。これにより、喪失した歯を復元し、機能の回復が図られる。
さらには、各種手術の際には、脳動脈クリップ、心臓人工弁、血管内ステント、骨折固定材等の金属製の体内埋込物が用いられる。
このようなインプラントや体内埋込物を構成する材料としては、従来、Ti基合金、Co−Cr合金、ステンレス鋼等の各種金属材料が用いられている。
ところで、かかるインプラントや体内埋込物を用いた際の問題点として、患者に対して磁気共鳴画像診断装置(MRI)を用いた画像診断を行ったときに、診断画像のインプラントや体内埋込物の周辺にアーチファクトと呼ばれる偽像が生じてしまい、造影が妨げられることが知られている。
そこで、このアーチファクトを抑制する目的で、アルミニウムおよびバナジウムを含むチタン基合金で構成された医療器具が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この医療器具は、主にMRIによる画像を取得しつつ診断または治療処置を行う磁気共鳴療法(MRT)においての使用を想定したものである。
ところが、特許文献1に記載のチタン基合金も、磁化率が比較的高いために、アーチファクトの発生を十分に抑制することができない。
特開平9−192114号公報
本発明の目的は、優れた生体適合性および機械的特性を有し、かつ磁化率が低い生体用金属材料、およびかかる金属材料で構成され、磁気共鳴画像診断におけるアーチファクトの発生を抑制することができる医療機器を提供することにある。
上記目的は、下記の本発明により達成される
発明の生体用金属材料は、Zrを主成分とし、該主成分に次いで含有率の多い副成分として、長周期型元素周期表における第6族の主遷移金属(Cr、MoおよびW)のうちの少なくとも1種を0.5〜15質量%含むことを特徴とする。
これにより、優れた生体適合性および機械的特性を有し、かつ磁化率が低い生体用金属材料が得られる。
本発明の生体用金属材料では、前記副成分は、Moであることが好ましい。
発明の生体用金属材料では、質量磁化率が1.28×10−6[cm/g]以下であることが好ましい。
これにより、例えばインプラントを構成する材料として用いた場合に、磁気共鳴画像診断においてアーチファクトの発生を確実に抑制し、鮮明かつ正確な診断画像を造影可能な生体用金属材料が得られる。
本発明の生体用金属材料では、前記主成分および前記副成分により形成されたω相を含んでいることが好ましい。
ω相は六方晶構造からなる組織であるが、原子配置の関係から生体用金属材料の磁化率が低いことの要因になっていると推察される。したがって、ω相の含有率を注目しつつ生体用金属材料を調製すれば、磁化率の低い材料を容易に得ることが可能になる。
本発明の生体用金属材料は、溶融金属を1[K/s]以上の冷却速度で急冷して得られたものであることが好ましい。
本発明の医療機器は、本発明の生体用金属材料で構成されたことを特徴とする。
これにより、磁気共鳴画像診断におけるアーチファクトの発生を抑制可能な医療機器が得られる。
本発明の医療機器では、前記生体用金属材料を溶解した後、所定の形状に鋳造してなるものであることが好ましい。
鋳造法によれば、成形後の収縮等がほとんど生じないことから、寸法精度の高い医療機器が得られる。
本発明の医療機器では、前記生体用金属材料の粉末とバインダとを含む組成物を、所定の形状に成形した後、脱脂・焼結してなるものであることが好ましい。
これにより、金属材料粉末が成形型内に均一に行き渡ることによって均質な医療機器を製造することができる。また、融点の高い組成の金属材料であっても、その融点未満の温度で焼結に至るため、医療機器の材料選択の幅を広げることができる。
本発明の医療機器では、前記焼結の際の条件は、温度1000〜1400℃×0.2〜7時間であることが好ましい。
これにより、著しい偏析や結晶組織の著しい肥大化等を招くことなく、均質な医療機器を得ることができる。
本発明の医療機器では、体内に留置されるものであることが好ましい。
これにより、磁気共鳴画像診断においてアーチファクトの発生を確実に抑制し得る体内埋込物が得られる。
以下、本発明の生体用金属材料および医療機器について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
<生体用金属材料>
本発明の生体用金属材料は、第4〜6族の主遷移金属(Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W)のうち、Zr(ジルコニウム)を主成分とし、主成分よりも含有率の少ない副成分として、Zr以外の第4〜6族の主遷移金属(Ti、V、Cr、Nb、Mo、Hf、Ta、W)の少なくとも1種を0.5〜15質量%含むことを特徴とするものである。このような生体用金属材料は、優れた生体適合性および機械的特性を有するとともに、磁化率が低いものとなる。したがって、かかる生体用金属材料を用いることにより、生体適合性および機械的特性に優れ、かつ磁化率が低い人工骨、人工歯根等のインプラント、クリップ、ステント等の体内埋込物、MRTにおいて使用する鉗子等の医療器具(以下、インプラント、体内埋込物および医療器具をまとめて「医療機器」と言う。)を得ることができる。そして、このような医療機器は、磁気共鳴画像診断においてアーチファクトの発生を確実に抑制し得るものとなる。なお、前述した「医療機器」は、薬事法に定める医療機器を指すものとする。
ところで、このような磁気共鳴画像診断におけるアーチファクトの発生を確実に抑制し得る例えばインプラント用の生体材料としては、従来、Ti基合金、Co−Cr合金、ステンレス鋼等が知られていた。しかしながら、これらの材料は磁化率が比較的高いため、この材料を用いてインプラントを製造したとしてもアーチファクトを十分に抑制することができなかった。
一方、Zrは、Tiより低磁化率であり、上記のような要請を満足する生体材料として注目されていた。ところが、Zrは機械的強度が低く、インプラント用の材料としては不適当であった。
上記のような問題に鑑み、本発明者は、低い磁化率と高い機械的強度とを高度に両立し得る生体材料について鋭意検討した。その結果、Zrを主成分とし、Zr以外の第4〜6族の主遷移金属の少なくとも1種を0.5〜15質量%含む金属材料が、上記問題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
以下、本発明の生体用金属材料の構成成分について順次説明する。
本発明の生体用金属材料は、前述したように、第4〜6族の主遷移金属(Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W)のうち、Zrと、それ以外の元素から選択された少なくとも1種とを含むものである。なお、第4〜6族の主遷移金属とは、長周期型元素周期表のd−ブロック(最外殻がs殻で、d殻に電子がないか、あっても1個だけのもの)に該当する遷移金属のうち、第4族(チタン族)に該当するTi、Zr、Hf、第5族(バナジウム族)に該当するV、Nb、Ta、第6族(クロム族)に該当するCr、Mo、Wである。
Zrは、本発明の生体用金属材料の主成分をなし、主に生体用金属材料の磁気特性に大きな影響を及ぼす成分である。なお、本明細書において主成分とは、生体用金属材料を構成する各成分の中で、最も含有率が高いもののことを言う。また、Zrは低細胞毒性を有するとともに、耐食性が高く、生体内での耐久性に優れているため、生体用金属材料の生体適合性を高めている。また、単体のZrには脆性があり、機械的特性にやや劣る。
一方、Zr以外の第4〜6族の主遷移金属(Ti、V、Cr、Nb、Mo、Hf、Ta、W)は、長周期型元素周期表において周期および族が隣接しており、物性が比較的類似している。そして、これらの副成分となる金属は、いずれも細胞毒性が比較的低く、かつ機械的特性に比較的優れている。このため、これらの遷移金属は、副成分として、主成分であるZrと合金または金属間化合物を形成して、Zrの機械的特性を補い、機械的特性に優れた生体用金属材料を実現することができる。
また、これらの副成分の中でも、Nb、Ta、MoおよびTiが好適であり、特にNbがより好適である。Nb、Ta、MoおよびTiは、Zrと全率固溶体を形成するとともに、特に低い細胞毒性を有しているため、偏析を生じることのない均質かつ生体安全性の高い生体用金属材料を得ることができる。
さらに、Zrを主成分とし、副成分としてZr以外の第4〜6族の主遷移金属を含む生体用金属材料において、副成分の含有率を0.5〜15質量%とすることにより、磁化率が極小値をとる。したがって、本発明の生体用金属材料は、抗折や欠損等の不具合が確実に防止されるとともに、磁気共鳴画像診断においてアーチファクトの発生を確実に抑制し得る優れた医療機器を実現することが可能である。
副成分の含有率は、前述したように、0.5〜15質量%とされるが、好ましくは1〜10質量%とされ、より好ましくは1.5〜9質量%とされる。副成分の含有率を前記範囲内とすることにより、生体用金属材料の磁化率が極小になるとともに、主成分(Zr)との合金または金属間化合物の機械的特性が十分に高いものとなる。
なお、副成分の含有率が前記下限値を下回ると、生体用金属材料の磁化率を十分に低下させることができず、また、生体用金属材料の特性において主成分の特性が支配的となり、生体用金属材料の機械的特性を十分に高めることができない。一方、副成分の含有率が前記上限値を上回ると、やはり生体用金属材料の磁化率を十分に小さくすることができない。このため、この生体用金属材料で構成されたインプラントは、磁気共鳴画像診断においてアーチファクトの発生を確実に抑制することができなくなる。
このような組成の生体用金属材料は、Zr単体に比べて磁化率が低いものとなるが、具体的には、磁化率が2×10−6[cm/g]以下のものが得られる。このような低磁化率の生体用金属材料は、例えばインプラントを構成する材料として用いた場合に、磁気共鳴画像診断においてアーチファクトの発生を確実に抑制することができる。これにより、インプラントは、磁気共鳴画像診断において鮮明かつ正確な診断画像を造影可能なものとなる。なお、磁化率が1.5×10−6[cm/g]以下程度まで小さくなれば、従来に比べてアーチファクトのさらなる抑制が可能である。
また、アーチファクトの程度は、磁気共鳴画像診断の際の撮像設定に応じて若干異なるものの、本発明の生体用金属材料で構成されたインプラントの磁化率が前記範囲内であれば、MRI画像においてインプラント周辺に発生するアーチファクトの大きさは、相対的にはTi製インプラントに比べて70%以下程度に小さくすることができる。
また、本発明の生体用金属材料は、副成分の含有率を前記範囲内とすることにより、ω相を含んだものとなる。このω相は、六方晶構造からなる組織であるが、原子配置の関係から生体用金属材料の磁化率が低いことの要因になっていると推察される。なお、この推察は、後述する副成分の含有率と磁化率との関係と、副成分の含有率が前記範囲から外れている場合、X線回折法(XRD)による結晶構造解析の結果から、ω相はほとんど含まれず、α相(六方最密格子)やβ相(体心立方格子)が支配的であることとの相関からも示唆される。したがって、ω相の含有率を注目しつつ生体用金属材料を調製すれば、磁化率の低い材料を容易に得ることが可能になる。
また、本発明の生体用金属材料は、必要に応じてその他の成分、例えば製造過程で不可避的に混入するB(ホウ素)、C(炭素)、N(窒素)、O(酸素)、Na(ナトリウム)、Mg(マグネシウム)、Si(シリコン)、P(リン)、S(硫黄)、K(カリウム)、Ca(カルシウム)、Mn(マンガン)等の不純物を含んでいてもよい。その場合、その他の成分の含有率の総和は、1質量%以下であるのが好ましい。
<インプラント>
以上のような生体用金属材料は、例えば、鍛造、鋳造、粉末冶金等の方法を用いて所望の形状に成形されることにより、人工骨や人工歯根等のインプラント(医療機器)を得ることができる。
以下、(A)鋳造、および(B)粉末冶金によるインプラントの製造方法について順次説明する。
(A)
まず、鋳造によってインプラントの製造する場合、本発明の生体用金属材料を溶解炉に投入し、溶解する。
次いで、溶解した生体用金属材料(溶湯)を鋳型に流し込む。溶湯の冷却後、鋳型から固化した生体用金属材料を取り出すことにより、鋳型のキャビティの形状を転写し、所望の形状のインプラントを製造することができる。このような鋳造法によれば、成形後の収縮等がほとんど生じないことから、寸法精度の高いインプラントが得られる。また、鋳型中に溶湯を流し込むだけの比較的簡単なプロセスであるため、設備投資を抑制できるという利点もある。
なお、鋳造後、必要に応じて切削、研削のような機械加工、各種ブラスト処理のような表面処理等を施すようにしてもよい。
(B)
次いで、粉末冶金によるインプラントの製造方法について説明する。
粉末冶金は、金属粉末とバインダとを混合して所望の形状に成形した後、脱脂・焼成することにより金属焼結体を得る方法であるが、成形方法には、圧粉成形(圧縮成形)法、押出成形法、射出成形法等がある。以下では、射出成形法の場合を例に説明する。
まず、種々の粉末化法により、本発明の生体用金属材料の粉末(以下、省略して「金属材料粉末」と言う。)を製造する。この粉末化法としては、例えば、アトマイズ法(例えば、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、高速回転水流アトマイズ法等)、粉砕法等が挙げられる。
金属材料粉末の平均粒径は、特に限定されないが、好ましくは1〜30μm程度、より好ましくは3〜20μm程度とされる。
次いで、金属材料粉末とバインダとを混練し、混練物を得る。次いで、得られた混練物を射出成形機により成形型内に射出し、所望の形状の成形体を製造する。このようにして得られた成形体は、金属材料粉末とバインダとがほぼ均一に分散した状態となっている。なお、製造される成形体の形状・寸法は、以後の脱脂および焼成による成形体の収縮分を見込んで決定される。
次に、得られた成形体に対し、脱脂処理(脱バインダ処理)を施す。これにより、脱脂体を得る。脱脂処理では、成形体を加熱することにより、熱分解によって成形体中のバインダを除去する。
脱脂処理における加熱温度は、バインダの組成等に応じて若干異なるが、100〜750℃程度であるのが好ましく、150〜600℃程度であるのがより好ましい。
また、脱脂処理における加熱時間は、成形体の体積や加熱温度等に応じて若干異なるものの、加熱温度が前記範囲内である場合、0.1〜20時間程度とするのが好ましく、0.5〜15時間程度とするのがより好ましい。
また、脱脂処理における雰囲気としては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気、水素ガス等の還元性ガス雰囲気、またはこれらを減圧した減圧(真空)雰囲気等が挙げられる。
次に、得られた脱脂体を焼成炉等で焼成する。これにより、脱脂体中の金属材料粉末の各粒子同士の界面で拡散が生じ、焼結体が得られる。このような粉末冶金法によれば、金属材料粉末が成形型内に均一に行き渡ることによって均質なインプラントを製造することができる。また、融点の高い組成の金属材料であっても、その融点未満の温度で焼結に至るため、インプラントの材料選択の幅を広げることができる。
焼成温度は、金属材料粉末の組成や粒径等に応じて若干異なるものの、1000〜1400℃程度であるのが好ましく、1100〜1300℃程度であるのがより好ましい。また、焼成時間は、焼成温度を前記範囲内とする場合、0.2〜7時間程度であるのが好ましく、1〜4時間程度であるのがより好ましい。このような焼成条件であれば、著しい偏析や結晶組織の著しい肥大化等を招くことなく、均質なインプラントを得ることができる。
また、焼成の際の雰囲気は、特に限定されないが、脱脂処理の場合と同様とされる。
なお、焼結体を得た後、必要に応じて切削、研削のような機械加工、各種ブラスト処理のような表面処理等を施すようにしてもよい。
以上のような(A)、(B)の方法により、本発明の生体用金属材料を主材料とするインプラントを製造することができる。
このようにして得られたインプラント(本発明の医療機器)は、優れた生体適合性および機械的特性を有し、かつ磁化率が低いものとなる。このため、かかるインプラントは、骨や歯根を代替し得るものとして十分な機械的強度を備えるとともに、磁気共鳴画像診断においてアーチファクトの発生を確実に抑制し得るものとなる。
なお、上記(A)の方法や、上記(B)の方法においては、本発明の生体用金属材料を溶融した後、鋳型に流し込んだり、粉末化される際に、溶融金属が急速に冷却されることとなる。このように溶融金属を急冷することにより、偏析等が防止され、本発明の生体用金属材料は特に磁化率の低いものとなる。
この場合、溶融金属の冷却速度としては、好ましくは1[K/s]以上とされ、より好ましくは10[K/s]以上とされる。
以上、本発明の生体用金属材料および医療機器について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本発明の生体用金属材料は、鍛造、鋳造、粉末冶金等の方法を用いて所望の形状に成形されることにより、磁気共鳴画像診断による観察下で行う手術(MRT)において使用可能な手術用品(本発明の医療機器)を製造することができる。このような手術用品は、MRIによる観察下で手術に用いられたとしても、MRI画像にアーチファクトが発生するのを防止することができるため、正確な画像診断およびそれに基づく安全な手術が可能になる。
かかる手術用品としては、例えば、薬事法に例示された、医療用刀、医療用はさみ、医療用ピンセット、医療用匙、医療用鈎、医療用鉗子、医療用のこぎり、医療用のみ、医療用剥離子、医療用つち、医療用やすり、医療用てこ、医療用絞断器、注射針、穿刺針、医療用穿刺器、穿削器、穿孔器、医療用嘴管(例えばカテーテルガイドワイヤ)、体液誘導管等が挙げられる。
また、前述したように、本発明の生体用金属材料を用いることにより、磁気共鳴画像診断におけるアーチファクトの発生を確実に抑制し得る体内埋込物を製造することができるが、その具体例としては、金属製人工関節、金属製人工骨等のインプラントの他に、骨接合板、骨接合用くぎ、骨接合用ねじ、骨固定用プレート、髄内釘、結紮器(例えばクリップ)、縫合器(例えばステープラ)、人工血管、血管修復用材料(例えばステント)、人工心臓弁等が挙げられる。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.生体用金属材料(Zr−Nb系)の製造
(実施例1A)
まず、表1に示す組成の金属材料をアーク溶解炉で溶解した。
次に、溶解した金属材料(溶湯)を鋳型に流し込んだ。そして、溶湯の冷却後、鋳型から固化した生体用金属材料を取り出すことにより試料片を得た。なお、得られた試料片は、直径3.2mm、長さ30mmの円柱状であった。
その後、取り出した試料片の表面にサンドブラスト処理を施し、表面を清浄化した。
(実施例2A〜4A)
金属材料の組成を表1に示す組成に変更した以外は、それぞれ実施例1Aと同様にして試料片を得た。
(実施例5A)
まず、表1に示す組成の金属材料をアトマイズ法により粉末化した。これにより、平均粒径10μmの金属材料粉末を得た。
次に、得られた金属材料粉末とバインダ(ポリプロピレンおよびワックス)とを、質量比で9:1となるよう秤量して混合原料を得た。次いで、混合原料を混練機で混練し、コンパウンドを得た。
次に、得られたコンパウンドを射出成形し、成形体を得た。
次に、得られた成形体に対して、窒素ガス雰囲気下で温度520℃×5時間の脱脂処理を施し、脱脂体を得た。
次に、得られた脱脂体に対して、減圧雰囲気下で温度1200℃×2.5時間の焼成を行い、直径3.2mm、長さ30mmの円柱状の試料片を得た。
(比較例1A〜6A)
金属材料の組成を表1に示す組成に変更した以外は、それぞれ実施例1Aと同様にして試料片を得た。
(比較例7A)
純Tiの溶湯を、直径3.2mm、長さ30mmの円柱状に鋳造した以外は、前記実施例1Aと同様にして試料片を得た。
(比較例8A)
SUS−304Lの溶湯を、直径3.2mm、長さ30mmの円柱状に鋳造した以外は、前記実施例1Aと同様にして試料片を得た。
Figure 0005476696
2.生体用金属材料(Zr−Mo系)の製造
(実施例1B)
まず、表2に示す組成の金属材料をアーク溶解炉で溶解した。
次に、溶解した金属材料(溶湯)を鋳型に流し込んだ。そして、溶湯の冷却後、鋳型から固化した生体用金属材料を取り出すことにより試料片を得た。なお、得られた試料片は、直径3.2mm、長さ30mmの円柱状であった。
その後、取り出した試料片の表面にサンドブラスト処理を施し、表面を清浄化した。
(実施例2B〜10B)
金属材料の組成を表2に示す組成に変更した以外は、それぞれ実施例1Bと同様にして試料片を得た。
(実施例11B)
まず、表2に示す組成の金属材料をアトマイズ法により粉末化した。これにより、平均粒径10μmの金属材料粉末を得た。
次に、得られた金属材料粉末とバインダ(ポリプロピレンおよびワックス)とを、質量比で9:1となるよう秤量して混合原料を得た。次いで、混合原料を混練機で混練し、コンパウンドを得た。
次に、得られたコンパウンドを射出成形し、成形体を得た。
次に、得られた成形体に対して、窒素ガス雰囲気下で温度520℃×5時間の脱脂処理を施し、脱脂体を得た。
次に、得られた脱脂体に対して、減圧雰囲気下で温度1200℃×2.5時間の焼成を行い、直径3.2mm、長さ30mmの円柱状の試料片を得た。
(比較例1B〜4B)
金属材料の組成を表2に示す組成に変更した以外は、それぞれ実施例1Bと同様にして試料片を得た。
(比較例5B)
純Tiの溶湯を、直径3.2mm、長さ30mmの円柱状に鋳造した以外は、前記実施例1Bと同様にして試料片を得た。
(比較例6B)
SUS−304Lの溶湯を、直径3.2mm、長さ30mmの円柱状に鋳造した以外は、前記実施例1Bと同様にして試料片を得た。
Figure 0005476696
3.生体用金属材料の評価
3.1 磁化率の評価(Zr−Nb系)
各実施例1A〜5Aおよび各比較例1A〜8Aで得られた試料片について、磁気天秤(MSB-MKI、Sherwood Scientific LTD)により磁化率を測定した。
そして、各実施例および各比較例で得られた試料片のNb含有率を横軸とし、各試料片の質量磁化率を縦軸として、測定結果をプロットした。このようにして得られたグラフを図1に示す。
図1から明らかなように、生体用金属材料は、Nbの含有率が0.5〜15質量%の範囲において、質量磁化率がZr単体の磁化率よりも小さいことが認められた。
また、実施例2A(Nbの含有率:6質量%)、実施例3A(Nbの含有率:9質量%)、および比較例4A(Nbの含有率:20質量%)の各試料片について、X線回折法による結晶構造解析を行った。その結果を図3〜5に示す。なお、図3〜5中において、各ピークに対応して付された符号のうち、α、β、ωは、各ピークがそれぞれα相、β相、ω相に帰属するピークであることを示し、またその符号の後に付された3桁の数字は、各ピークが帰属する結晶面の面方位を表すものである。
図3(実施例2A)のXRDスペクトルには、α相およびω相に帰属するピークが認められた。また、図4(実施例3A)のXRDスペクトルには、α相、β相およびω相に帰属するピークが認められた。
一方、図5(比較例4A)のXRDスペクトルには、β相に帰属するピークのみが認められ、この試料片にはω相の組織をほとんど含んでいないことが明らかとなった。
また、試料片の製造方法については、鋳造法または粉末冶金法を問わず、同様の優れた結果が得られた。
3.2 磁化率の評価(Zr−Mo系)
各実施例1B〜11Bおよび各比較例1B〜6Bで得られた試料片について、磁気天秤(MSB-MKI、Sherwood Scientific LTD)により磁化率を測定した。
そして、各実施例および各比較例で得られた試料片のMo含有率を横軸とし、各試料片の質量磁化率を縦軸として、測定結果をプロットした。このようにして得られたグラフを図2に示す。
図2から明らかなように、生体用金属材料は、Moの含有率が0.5〜15質量%の範囲において、質量磁化率がZr単体の磁化率よりも小さいことが認められた。特に、Moの含有率が1〜10質量%の範囲では、その傾向が顕著であった。
なお、各比較例2B〜4Bで得られた試料片については、機械的強度が著しく低かったため磁化率の測定を行わなかった。この機械的強度の低下は、Moの結晶粒界が本質的に脆い(粒界脆化)ため、Moの含有率が多くなり過ぎると、試料片の機械的強度が著しく低下するためであると推察される。
また、試料片の製造方法については、鋳造法または粉末冶金法を問わず、同様の優れた結果が得られた。
3.3 強度の評価
各実施例および各比較例で得られた試料片について、抗折強度を測定し、以下の評価基準にしたがって評価した。なお、以下の評価は、Zrの含有率が100質量%である試料片(比較例1Aおよび比較例1B)の抗折強度を基準にしたものである。
<抗折強度の評価基準>
◎:基準より150%以上強度が高い
○:基準より120%以上強度が高い
△:基準と同程度(100%以上120%未満)である
×:基準より強度が低い(100%未満)
以上、3.1〜3.3の評価結果について、表1および表2に示す。
以上の評価結果から、各実施例で得られた試料片は、ω相を含んでおり、機械的特性に優れかつアーチファクトの発生を確実に抑制し得るインプラント等の医療機器になり得る材料であることが明らかとなった。
本発明の生体用金属材料(Zr−Nb系)の磁化率とNb含有率との関係を示すグラフである。 本発明の生体用金属材料(Zr−Mo系)の磁化率とMo含有率との関係を示すグラフである。 実施例2Aで得られた試料片についてのXRDスペクトルである。 実施例3Aで得られた試料片についてのXRDスペクトルである。 比較例4Aで得られた試料片についてのXRDスペクトルである。

Claims (10)

  1. Zrを主成分とし、該主成分に次いで含有率の多い副成分として、長周期型元素周期表における第6族の主遷移金属(Cr、MoおよびW)のうちの少なくとも1種を0.5〜15質量%含むことを特徴とする生体用金属材料。
  2. 前記副成分は、Moである請求項1に記載の生体用金属材料。
  3. 質量磁化率が1.28×10−6[cm/g]以下である請求項1または2に記載の生体用金属材料。
  4. 前記主成分および前記副成分により形成されたω相を含んでいる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の生体用金属材料。
  5. 当該生体用金属材料は、溶融金属を1[K/s]以上の冷却速度で急冷して得られたものである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の生体用金属材料。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の生体用金属材料で構成されたことを特徴とする医療機器。
  7. 当該医療機器は、前記生体用金属材料を溶解した後、所定の形状に鋳造してなるものである請求項6に記載の医療機器。
  8. 当該医療機器は、前記生体用金属材料の粉末とバインダとを含む組成物を、所定の形状に成形した後、脱脂・焼結してなるものである請求項6に記載の医療機器。
  9. 前記焼結の際の条件は、温度1000〜1400℃×0.2〜7時間である請求項8に記載の医療機器。
  10. 当該医療機器は、体内に留置されるものである請求項6ないし9のいずれか1項に記載の医療機器。
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