JP5472526B1 - スピーカ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】バスレフポートで吸排される空気に起因する各種課題を解決する簡単な構造のスピーカ装置を実現する。
【解決手段】バスレフポート10は、主管部100と該主管部の両端に設置された空気整流器101,102とからなる。主管部100は、ヘルムホルツ共振を所望周波数で励起する内径と長さからなる一定の円形中空断面を有する円管形状である。空気整流器101,102は、主管部100に接続する側からこれに反対側に向かって徐々に中空断面積が大きくなる形状で形成されている。この際、空気整流器101,102は、互いに対向する二対の壁面群の内、一対の壁面同士の間隔が一定に形成され、他の一対の壁面同士は、中空断面積が指数関数に準じて単調に増加するように形成される。
【選択図】 図2
【解決手段】バスレフポート10は、主管部100と該主管部の両端に設置された空気整流器101,102とからなる。主管部100は、ヘルムホルツ共振を所望周波数で励起する内径と長さからなる一定の円形中空断面を有する円管形状である。空気整流器101,102は、主管部100に接続する側からこれに反対側に向かって徐々に中空断面積が大きくなる形状で形成されている。この際、空気整流器101,102は、互いに対向する二対の壁面群の内、一対の壁面同士の間隔が一定に形成され、他の一対の壁面同士は、中空断面積が指数関数に準じて単調に増加するように形成される。
【選択図】 図2
Description
この発明は、バスレフ構造を備えたスピーカ装置に関するものである。
従来、低音増強を行うスピーカ装置として、位相反転型エンクロージャを用いたものがある。位相反転型エンクロージャは、キャビネットの前面板となるバッフル板に設置されたスピーカユニットとバスレフポートとを備える。バスレフポートは、前記前面板に形成された開口部と、エンクロージャ内部に設置され当該開口部に接続する筒状部とを有する(例えば、特許文献1参照)。
このようなバスレフポートには、各種の課題を解決する構造が提案されている。
例えば、バスレフポートの径が一定であり開口端の端面にエッジ部(角部)が存在する場合には、吸気時に角部で渦が発生して雑音が生じてしまう。この課題に対しては、一般的に、図10に示すように、バスレフポート10’の開口端101’,102’の角に放射状に丸みを持たせた構造が用いられている。なお、図10は、従来の小型スピーカにおける一般的な位相反転型エンクロージャ1’の各種構造を示す図である。
また、バスレフポートは、エンクロージャ内部の空気バネとバスレフポート内の空気の質量とによるヘルムホルツ共振を利用して低音増強をしている。したがって、増強する低音の設定周波数はエンクロージャ1’を形成するキャビネット11’の形状とバスレフポート10’の形状との関係により決定される。このため、キャビネット11’の形状によってバスレフポート10’の内径が小さくなることがある。
このようにバスレフポート10’の内径を小さくすると、バスレフポート10’内の空気の流速が速くなり、ポートからの排気流速も速くなる。このため、開口部にグリルやパンチングメタルを設置するような構造では、ポートからの排気がグリル等に衝突して雑音が発生する。この課題に対しては、バスレフポート内に空気の流速を抑える緩衝材等を設置する方法などが用いられている。
しかしながら、バスレフポートの開口端の角に放射状に丸みを持たせた構造では、排気流の直進性が強いので、排気時には空気が徐々に拡散しながらもバスレフポートの中心軸に沿ってほぼ直進し、流速がほぼ保たれたまま排気される。従って、上述のようにグリルが配置されていれば雑音を発生する。さらに、スピーカユニット側の開口端についても同様で、当該開口端からの排気がスピーカユニットやエンクロージャ内壁に衝突することで、エンクロージャ内部で雑音が発生する。
また、バスレフポート内に緩衝材を設置した場合、上述の共振動作に対して、緩衝材による空気抵抗から生じる制動が働き、低音増強効果が減少する。そして、この低音増強効果の減少は、エンクロージャを小型化するためにバスレフポートの内径を狭くして流速を速くしなければならない場合に顕著に現れる。
さらに、バスレフポートを長く取るためバスレフポートを途中で湾曲させる必要がある場合において、バスレフポートの流速が速いと、湾曲部を可能な限りゆるやかに曲がる形状にしなければならず、構造的制約を大幅に受けてしまう。
したがって、本発明の目的は、バスレフポートで吸排される空気に起因する各種課題を解決する簡単な構造のスピーカ装置を実現することにある。
この発明は、スピーカユニットとバスレフポートとが設置された位相反転型エンクロージャからなるスピーカ装置に関するものである。
このスピーカ装置のバスレフポートは、中空断面の一方向の長さが軸方向に沿って変化しない一定寸法で、かつ中空断面積が最も小さくなる箇所から一方の開口側に近くなるほど連続的に面積変化率が大きくなることを特徴とする。また、このスピーカ装置は、一方の開口側の近傍に障害物が存在する。
この構成では、バスレフポートは、ポート内部から一方の開口端からに向かって、軸方向に沿って離間する程に中空断面積が大きくなるように形成されている。例えば、一定の間隔からなる第1の壁面対と、徐々に離間する第2の壁面対とにより閉領域が形成されることで、中空断面の一方向の長さを軸方向に沿って変化させることなく、中空断面積が大きくなる。
この構造では、吸気の際には、一方の開口側の吸気断面積がポート内部での中空断面積と比較して大きい。このため、バスレフポートに引き込まれる吸気流速は低くなり、開口端での乱流が抑制される。さらに、中空断面積が連続的に変化する形状であるので、壁面に角部が存在せず、バスレフポート内部側に向かい空気の流速が速くなっても乱流が発生しない。
一方、排気の際には、第1の壁面対により、当該壁面対方向への空気の拡散が抑制され、当該方向に対しては第1の壁面対から中空部内の空気へ一定圧力がかかり続ける。このように第1の壁面対方向からの圧力がかかり続け、断面全体に拡がる気流が生じる。この状態が維持されたまま、第2の壁面対の間隔が広くなって中空部の断面積が大きくなることで、排気流速が徐々に低下する。これにより、排気時には、管状体から排出される排気流速が低減される。
この発明によれば、バスレフポートでの吸気時の乱流が抑制されることで、吸気時の雑音発生を効果的に抑制できる。さらに、排気流速が低減されることで、排気がバスレフポート外部の部材に衝突することで発生する雑音も効果的に抑制できる。これにより、低音増強を効果的に行いながら、雑音の発生を抑えたスピーカ装置を実現することができる。さらに、当該スピーカ装置は、構造上バスレフポートの流速を速くせざるを得ない小型のスピーカ装置において、より効果的に雑音の発生を抑圧することができる。
本発明の第1の実施形態に係るスピーカ装置について図を参照して説明する。
図1は本実施形態のスピーカ装置1の外観斜視図である。図2(A)は本実施形態のスピーカ装置1の正面図であり、図2(B)は本実施形態のスピーカ装置1の側面図である。図2(C)は図2(A)に示すA−A’面断面図であり、図2(D)は図2(A)に示すB−B’断面図、図2(E)は図2(A)に示すC−C’断面図である。
図1および図2に示すように、スピーカ装置は位相反転型エンクロージャ1に信号系配線が配設されたものであって、キャビネット11にスピーカユニットSP、バスレフポート10が設置され、バスレフポート用開口部17が形成される構造を有する。
キャビネット11は、互いに主面が平行な前面板12と背面板13、天面板14と底面板15、および一対の側面板16A,16Bにより形成され、天面板14と底面板15との間隔が他の板面同士の間隔より長い直方体形状からなる。ここで、天面板14と底面板15とを結ぶ方向を長手方向とし、側面板16A,16Bを結ぶ方向を短手方向とし、前面板12と背面板13を結ぶ方向を奥行き方向と称し、キャビネット11(エンクロージャ1)の寸法は、次のように決定される。すなわち、キャビネット11の長手方向は、上述のスピーカユニットSP、バスレフポート10、接続用空間部18が長手方向に順に並び且つスピーカユニットSPとバスレフポート10とが所定間隔を有する長さである。キャビネット11の短手方向は、スピーカユニットSPの幅に準じている。キャビネット11の奥行きは、スピーカユニットSPの奥行きに準じて設定されており、スピーカユニットSPの後端が所定の厚み(例えば、0.5mm程度)の緩衝材を介して背面板13に当接する寸法である。
前面板12は、スピーカユニットSPが設置されるとともに、バスレフポート用開口部17が形成されており、バッフル板として機能する。ここで、スピーカユニットSPは、前面板12の長手方向の天面板14付近に設置されており、バスレフポート用開口部17は、スピーカユニットSPの配置側に対向する長手方向の底面板15付近に形成されている。前面板12のキャビネット11の内面側には、バスレフポート10が形成されている。バスレフポート10は、接続用空間部18を介してバスレフポート用開口部17に接続する。
バスレフポート10は、前記長手方向に延びる形状の主管部100と、該主管部100の長手方向両端に接続された空気整流器101,102とからなる。これら主管部100、空気整流器101,102は中空の管形状であり、当該中空の長手方向に沿った中心軸が一致するように形成されている。
主管部100は、長手方向(軸方向)に垂直な中空断面の形状が円形であり、且つ当該中空断面積が長手方向の各位置で一定の中空管形状からなる。この中空管部190の長さおよび内径は、エンクロージャ1として増強したい低音の周波数に基づいて設定される値である。この際、内径が細いほど主管部100の長さを短くすることができるため、中空管部190の内径断面積はスピーカユニットSPの有効面積よりも小さくなるように設定されている。例えば、主管部100の中空断面積は、スピーカユニットSPの有効面積の0.2〜1.0倍に設定されている。
空気整流器101は、主管部100のバスレフポート用開口部17側の開口端に接続されており、主管部100への接続側から内形変換部103および主変換部104が連続的に形成されている。
内形変換部103の中空の形状は、主管部100側端部で中空管部190と同じ断面円形状となり、主変換部104側端部で中空管部190の内径と同じか該内径よりも若干長い縦横寸法からなる断面正方形状で形成されている。内形変換部103の壁面131〜134は、内形変換部103の中空が上述のように断面円形状から断面正方形状へ徐々に変化するように成形されている。
主変換部104の中空の形状は、内形変換部103側端部で内形変換部103と同じ断面正方形状であり、バスレフポート用開口部17(接続用空間部18)側端部で内形変換部103側よりも広い面積からなる断面長方形状で形成されている。
主変換部104の中空を形成する壁面141〜144のうち、キャビネット11の奥行き方向に対向する壁面141と壁面142は、内形変換部103の奥行き方向に対向する壁面131と壁面132とにそれぞれ接続する。この際、壁面141と壁面142とは向かい合う面同士が平行になるように設置されている。この構造により、壁面141と壁面142は、対向する面の間隔がどの位置であっても同じとなり、主変換部104は中空形状が奥行き方向に広がらない形状となる。キャビネット11の短手方向に対向する壁面143と壁面144とは、内径変形部103側からバスレフポート用開口部17側へ進むにつれて、互いの間隔が指数関数値に準じて徐々に広がる形状で形成されている。
このような構造とすることで、空気整流器101は、主管部100に接続する側からバスレフポート用開口部17側にかけて、キャビネット11の奥行き方向に対しては壁面の間隔を変化させることなく、徐々に中空断面積が大きくなる形状となる。
空気整流器102は、主管部100のスピーカユニットSP側の開口端に接続されており、主管部100への接続側から内形変換部105および主変換部106が連続的に形成されている。
内形変換部105の中空の形状は、主管部100側端部で中空管部190と同じ断面円形状となり、主変換部106側端部で中空管部190の内径と同じか該内径よりも若干長い縦横寸法からなる断面正方形状で形成されている。内形変換部105の壁面151〜154は、内形変換部105の中空が上述のように断面円形状から断面正方形状へ徐々に変化するように成形されている。
主変換部106の中空の形状は、内形変換部105側端部で内形変換部105と同じ断面正方形状であり、スピーカユニットSP側端部で内形変換部105側よりも広い面積からなる断面長方形状で形成されている。
主変換部106の中空を形成する壁面161〜164のうち、キャビネット11の奥行き方向に対向する壁面161と壁面162は、内形変換部105の奥行き方向に対向する壁面151と壁面152とにそれぞれ接続する。この際、壁面161と壁面162とは向かい合う面同士が平行になるように設置されている。この構造により、壁面161と壁面162は、対向する面の間隔がどの位置であっても同じとなり、主変換部106は中空形状が奥行き方向に広がらない形状となる。キャビネット11の短手方向に対向する壁面163と壁面164とは、内径変形部105側からスピーカユニットSP側へ進むにつれて、互いの間隔が指数関数値に準じて徐々に広がる形状で形成されている。
このような構造とすることで、空気整流器102は、主管部100に接続する側からスピーカユニットSP側にかけて、キャビネット11の奥行き方向に対しては壁面の間隔を変化させることなく、徐々に中空断面積が大きくなる形状となる。
このような構造のエンクロージャ1では、スピーカユニットSPが振動することにより、次に示すような動作が生じる。
図3および図4は、空気整流器102側から吸気して、空気整流器101側から排気する場合の気流の様子を、従来例の構造と比較して示す説明図である。図3(A)は本願の構成における吸気動作を示し、図3(B)は従来の単純な円筒形状のバスレフポートによる吸気動作を示す。また、図4(A)は本願の構成における排気動作を示し、図4(B)は従来のバスレフポートの開口端の角に放射状の丸みを持たせたバスレフポートによる排気動作を示す。なお、図3および図4において、図中の白抜きヘッドの矢印が気流を示し、矢印方向が気流方向、矢印の長さが流速を示す。
空気整流器102のスピーカユニットSP側開口端は、主管部100と比較して中空断面積が大幅に大きい。さらに、この空気整流器102のスピーカユニットSP側開口面の中空断面積はスピーカユニットSPの有効面積と略同じである。このため、空気整流器102のスピーカユニットSP側開口端では、吸気流速が非常に低くなり、当該開口端での乱流が殆ど発生しない。
また、空気整流器102の中空断面積は、空気の進行方向に沿って指数関数値に準じて滑らかに小さくなるので、空気整流器102を通過中も乱流が発生しない。
さらに、空気整流器102と主管部100との接続部では、内形変換部105により空気整流器102の主変換部106に対応する断面方形状から主管部100に対応する断面円形状に中空形状が滑らかに変換される。これにより、主管部100に至って空気の流速が増しても、空気整流器102から主管部100への流入時の乱流も発生しない。このように、空気整流器102は、吸気時の乱流を大幅に抑制し、これに基づく雑音の発生を大幅に抑制することができる。
主管部100は、既述の様にスピーカユニットSPの有効面積よりも小さな一定の中空断面積を有する。主管部100は、空気整流器102から流入された空気を所定の流速で流し、空気整流器101へ出力する。この際、主管部100が一定形の円管状であるので主管部101内では乱流が発生しない。これにより、主管部100は、乱流を発生することなく、所望の周波数でのヘルムホルツ共振を励起することができる。
主管部100と空気整流器101との接続部では、内形変換部103により主管部100に対応する断面円形状から主変換部104に対応する断面方形状に中空形状が滑らかに変換される。さらに、主管部101と内形変換部103とでは中空断面積が同じか、内形変換部103の方が若干大きいだけである。これにより、主管部101から内形変換部103へ流入される空気は、内形変換部103の壁に沿って流入する。すなわち、内形変換部103に流入される空気は、内形変換部103の内壁面からの影響を受けながら内形変換部103内を通過する。
空気整流器101の主変換部104は、中空断面積が空気の進行方向に沿って指数関数値に準じて滑らかに大きくなる。しかしながら、壁面141と壁面142との間隔が一定であるので、主変換部104内では、壁面141および壁面142方向へ拡散しようとする空気に対して、壁面141および壁面142から圧力が加わり続ける。このため、空気は、互いの距離が徐々に離間する壁面143と壁面144との方向へ広がり、壁面143、壁面144からも圧力を受け続ける。すなわち、主変換部104を流れる空気は、常に壁面141〜144の影響を受け続け、中空断面全体に拡がりながら流れる。このように、中空断面全体に拡がりながら流れる空気に対して、主変換部104では、徐々にその断面積が大きくなるので、流速は徐々に低下する。そして、主変換部104のバスレフポート用開口部17側の開口端に達すると、当該開口端の断面積がスピーカユニットSPに相当する大きさまで達するので、流速は十分に低下する。すなわち、空気整流器101からの排気の流速が主管部100と比較して大幅に低くなる。
図5は、排気流速を低下させる別の原理を示す図である。図5(A)は本実施形態の構成の場合を示し、図5(B)は従来の構成の場合を示す。
一般的に、管状体から気体が所定の流速で排気される場合、圧力が急激に解放されるため、当該管状体の開口端からは、渦気流が発生する。この渦気流は、管状体の開口面を正面視して、管状体の中心軸から放射方向に弧を描くような気流となる。そして、この渦気流は、外的な圧力を受けなければ、放射方向へ徐々に拡散しながら直進する気流である。このため、管状体の開口部が徐々に拡大することなく管状体を切断した形状であった場合、管状体の中心軸方向に沿って渦気流が発生し、遠方まで勢いを保って進行するので、開口部の外部にグリルやパンチングメタルなどの構造物を配置すると、渦気流の衝突により雑音が発生する。
ここで、図5(B)に示すように、一定径からなる主管部から全放射方向に対して同時に断面積が大きくなるような従来の開口端の角に丸みを持たせた構成では、渦気流が発生し、遠方まで勢いを保って進行する。すなわち、上述の渦気流の自然拡散の面積変化よりもポート壁面内の断面積の増加率が大きくなった時点で、ポートの壁面からの圧力が四方同時に解放されるため、渦気流が発生し、ポートから排気される空気は、流速が低下することなく、且つ渦気流を発生させて進行してしまう。一方で、断面積の増加率を小さくしようとすると、必然的開口部の角に付ける丸みの曲率半径が大きくなってしまい。小型のスピーカ装置には適用できなくなる。
ところが、図5(A)に示す本実施形態の構成を用いることで、主管部100から空気整流器101へ空気が排気された時点で、壁面141と壁面142との間隔が一定であるので、気流は、これらの壁面141,142からの圧力を受け続けるので、当該壁面141,142方向への拡散が抑圧され、徐々に間隔が広がる壁面143,144方向に拡散される。これにより、気流は、主管部100および空気整流器101の中心軸に沿って直進することなく、壁面143,144に沿って拡散しながら進行する。この結果、排気中は、空気整流器101内では、徐々に圧力および流速が低下することになり、空気整流器101のバスレフポート用開口部17側の開口端では、空気流そのものがほとんど発生せず、渦気流も発生し難い。したがって、開口端の断面積をスピーカユニットSPの有効面積と同程度(それ以上にすればなおよい。)にすることで、バスレフポート10の排気流速を十分に低下させることができる。さらに、空気整流器101の形状をスピーカ装置の仕様に応じて適宜設計することで開口端の面積を大幅に小さくしても(スピーカユニットSPの有効面積の1/10程度であっても)、雑音の発生を抑止することができる。
このように流速の低下した空気は、接続用空間部18を介してバスレフポート用開口部17から外部へ排気される。したがって、バスレフポート用開口部17からは、バスレフポートにより増幅された低音成分が放音される。この際、バスレフポート10(空気整流器101)からの排気流速が低いので、接続用空間部18により放音方向が底面方向から前面方向に変化させられても、バスレフポート10から排気された空気が接続用空間部18を緩やかに流れ、接続用空間部18の壁面に高速で衝突して雑音を発生することがない。このため、バスレフポート用開口部17の前面にグリル等が配置されていても、雑音が発生しない。
なお、バスレフポートは両開口面から吸排気を交互に行うことで動作するものであり、バスレフポート用開口部17から接続用空間部18を介して空気整流器101から吸気が行われ、空気整流器102から排気が行われるという動作も存在する。この場合、上述の空気整流器102の吸気動作を空気整流器101が行い、上述の空気整流器101の排気動作を空気整流器102が行う。
ここで、空気整流器101と空気整流器102とは同じ構造であるので、バスレフポート用開口部17から吸気する場合であっても、上述のように吸気時の乱流発生を抑制するとともに、排気流速を低減させることができる。そして、この場合、排気された空気はスピーカユニットSP方向へ進行するが、排気流速が遅いので、当該排気によりスピーカユニットSPの振動板が振動する等の原因で発生する可能性のある雑音を抑制できる。
なお、バスレフポート10は、上述のような主管部100の両端に空気整流器101および空気整流器102が設置されている構造に限るものではない。例えば、図6に示すように、主管部100の一方の端にのみ空気整流器101が設置される構造であってもよい。この場合も、空気整流器の設置側において、上述のような吸気時の作用、および排気時の作用が得られる。
以上のように、本実施形態の構成を用いることで、バスレフポートに起因する雑音の発生を抑制するスピーカ装置を簡単な構造で実現することができる。さらに、本実施形態の構成を用いることで、バスレフポートの排気口の近傍に壁面やグリル等の障害物が存在しても、これらに排気が衝突することによる雑音の発生がないので、バスレフポートの近傍にエンクロージャを構成する他要素を配置することができる。これにより、エンクロージャすなわちキャビネットの形状を小型化することができる。この結果、低雑音で低音増強された小型のスピーカユニットを簡素な構成で実現することができる。
なお、上述の説明では、主管部の中空断面形状を円形としたが、図7(A)、図7(B)の主管部100A,100Bに示すように、正方形や長方形の多角形状にしたり、楕円や長円形状にしてもよい。この際、多角形状では、各角部をR面取りした形状にするとより効果的である。さらに、空気整流器101,102の中空断面を長方形としたが、図7(C)、図7(D)の空気整流器101C,101Dに示すように、一対の対向する壁面の間隔を同じにすれば、当該長方形の角部をR面取りした形状や、楕円形状、長円形状であってもよい。図7(A)〜(D)はバスレフポートの他の構造例を示した図である。
また、上述の説明では、バスレフポートの主管部の両端に空気整流器を設置する例を示したが、いずれか一方にのみ空気整流器を設置する構造であってもよい。
また、上述の説明では、空気整流器の壁面間隔が変化する側の一対の壁面間の距離が指数関数に準じて変化する例を示したが、内壁面に角部が生じない形状であれば、長手方向に沿って壁面間隔が単調に増加(減少)する他の構造を用いても良い。
また、上述の説明では、バスレフポートの長手方向に沿って、主管部の中空部の中心軸と空気整流器の中空部の中心軸とが一致する例を示したが、これらが平行で若干ズレている構造であってもよい。
また、上述の説明では、バスレフポートを前面板側に設置する例を示したが、エンクロージャ内部であれば他の板面上や中央に設置されていてもよい。
次に、第2の実施形態に係るスピーカ装置について図を参照して説明する。
図8は第2の実施形態に係るスピーカ装置の外観斜視図である。また、図9(A)は本実施形態のスピーカ装置2の正面図であり、図9(B)は本実施形態のスピーカ装置2の側面図であり、図9(C)は図9(A)に示すD−D’面断面図である。
本実施形態のスピーカ装置2は、第1の実施形態に示したスピーカ装置のバスレフポートに対して、主管部100を省略した構造からなる。
図8、図9に示すように、本実施形態のスピーカ装置は、第1の実施形態に示したスピーカ装置1と同様に、キャビネット11にスピーカユニットSP、バスレフポート20が設置され、バスレフポート用開口部27が形成される構造を有する。
スピーカユニットSPおよびバスレフポート用開口部27のキャビネット11への配置は、第1の実施形態に示したスピーカユニットSPおよびバスレフポート用開口部17の配置と同じである。
バスレフポート20は、キャビネット11の長手方向に延びる管状体からなる空気整流器201,202とからなり、空気整流器201、202は、前記長手方向に沿って連続するように接続されており、当該管状体の長手方向に沿った中心軸が一致するように形成されている。これら空気整流器201、202により、中空断面積が最も小さくなる箇所から、ポート開口端に向かう軸方向に沿って中空断面積を徐々に大きくする形状を有する管状体を備えたバスレフポートを構成する。
空気整流器201は、空気整流器202に対してバスレフポート用開口部27側に配置されており、空気整流器202への接続側から低音増強機能部203および主変換部204が連続的に形成されている。
低音増強機能部203の中空の形状は、断面方形状で形成されている。低音増強機能部203の壁面231〜234は、空気整流器202への接続側からバスレフポート用開口部207側へ向けて中空断面積が徐々に増加するように成形されている。この際、低音増強機能部203の壁面231,232間の距離が前記長手方向に沿って一定となるように、低音増強機能部203が形成されている。
主変換部204の中空の形状は、低音増強機能部203と同じ断面方形状であり、低音増強機能部203側からバスレフポート用開口部27(接続用空間部28)側端部へ向かって中空断面積が徐々に増加するように成形されている。この際、主変換部204の壁面241,242間の距離は、低音増強機能部203の壁面231,232間の距離と同じで且つ一定距離になるように、設定されている。また、主変換部204の壁面243は、低音増強機能部203の壁面233に対して滑らかに連続するように形成されている。また、主変換部204の壁面244は、低音増強機能部203の壁面234に対して滑らかに連続するように形成されている。
一方、空気整流器202は、空気整流器201に対してスピーカユニットSP側に配置されており、空気整流器201への接続側から低音増強機能部205および主変換部206が連続的に形成されている。
低音増強機能部205の中空の形状は、断面方形状で形成されている。低音増強機能部205の壁面251〜254は、空気整流器201への接続側からスピーカユニットSP側へ向けて中空断面積が徐々に増加するように成形されている。この際、低音増強機能部205の壁面251,252間の距離が前記長手方向に沿って一定となるように、低音増強機能部205が形成されている。
主変換部206の中空の形状は、低音増強機能部205と同じ断面方形状であり、低音増強機能部205側からスピーカユニットSP側端部へ向かって中空断面積が徐々に増加するように成形されている。この際、主変換部206の壁面261,262間の距離は、低音増強機能部205の壁面251,252間の距離と同じで且つ一定距離になるように、設定されている。また、主変換部206の壁面263は、低音増強機能部205の壁面253に対して滑らかに連続するように形成されている。また、主変換部206の壁面264は、低音増強機能部205の壁面254に対して滑らかに連続するように形成されている。
このような構成であっても、スピーカ装置2の低音増強の仕様に応じて、低音増強機能部203,205の中空断面積および長さを適宜設定することで、主管部を有さなくても、上述の第1の実施形態に示した作用と同じ作用を発生し、同様の効果を得ることができる。
なお、上記実施形態では、空気整流器201、202が同一の形状である場合を示したが、必ずしも同一の形状である必要はない。例えば、一方の空気整流器201の軸方向の長さが長く、他方の空気整流器202の軸方向の長さが短くてもよい。また、空気整流器201の軸方向の長さが十分に長ければポートとして機能するため、その場合はポート開口側の空気整流器201のみであっても、本発明の管状体(バスレフポート)を実現することが可能である。
1,2−エンクロージャ(スピーカ装置)、10,20−バスレフポート、100−主管部、101,102,201,202−空気整流器、11−キャビネット、12−前面板、13−背面板、14−天面板、15−底面板、16A,16B−側面板、17−バスレフポート用開口部、18−接続用空間部、SP−スピーカユニット
Claims (1)
- スピーカユニットとバスレフポートとが設置された位相反転型エンクロージャからなるスピーカ装置であって、
前記バスレフポートは、中空断面の一方向の長さが軸方向に沿って変化しない一定寸法で、かつ中空断面積が最も小さくなる箇所から一方の開口側に近くなるほど連続的に面積変化率が大きくなり、
前記一方の開口側の近傍に障害物が存在することを特徴とするスピーカ装置。
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