JP5467789B2 - 伸線加工性の良好なAlめっき鋼線およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、鋼芯線の表面にAlめっき被覆層を有するAlめっき鋼線であって、伸線加工性が良好であり、自動車のワイヤーハーネス等の導電部材(素線)に適したAlめっき鋼線、およびその製造方法に関する。
自動車のワイヤーハーネスは多数の導線により構成されており、それぞれの導線はさらに数本〜数十本の「素線」を束ねることによって作られている。近年、軽量化、コンパクト化のニーズが高まり、ワイヤーハーネスにも細線化の要求が強くなっている。また、自動車解体時の分別回収作業をできるだけ不要にするために、ワイヤーハーネス用の導線にはリサイクル性の良い構成のものが強く望まれるようになってきた。
ワイヤーハーネスを構成する各導線は端子に「かしめ加工」で締結されることが多く、かしめ部で容易に破断することがないように、個々の素線にはある程度の強度が要求され、また、かしめ締結部での引抜強度が要求される。現状の信号用ワイヤーハーネス導線用の素線には、Cu素線の場合は直径約0.2mm以上、Al素線の場合には直径1mm以上の線径を確保することが必要とされる。
リサイクル性の観点では、鉄のリサイクルにとって阻害元素となるCuよりも、鉄スクラップとともに溶解可能なAlの方が優れている。電気伝導性の面では、AlはCuに比べ体積抵抗率が大きいが、微弱電流を流す信号用ワイヤーハーネスの場合、Al素線でも問題ない。しかしながら、Al素線は上記のように強度不足を解消するために太い線径のものを採用せざるを得ず、コンパクト化のニーズに十分応えられない。
一方、高強度・高耐食性が要求される用途において、鋼線を芯線とするAlめっき鋼線が知られている(特許文献1、2)。特許文献1には漁網ロープ用、送電線の補強用、海底光ファイバーケーブル補強用等のワイヤーに使用するAlめっき鋼線が記載されている。特許文献1の実施例に開示されている鋼線は線径2〜13mmと太いものであり、Alめっきの目的は耐食性改善である。特許文献2のAlめっき線材は高強度ボルト用であり、その図2には7mm径のものが示されている。ワイヤーハーネスの素線に使用できるような低抵抗かつ細径のAlめっき鋼線はまだ実用化されていない。その要因の1つとして、細径の鋼芯線の周囲にAlを付着させた低抵抗の溶融Alめっき鋼線は、伸線加工時にAlめっき鋼線の内部にクラックが生じやすいことが挙げられる。
特開平3−219025号公報 特開2004−360022号公報
導線用の素線を製造する場合、所定の線径とするために伸線工程が不可欠となる。しかしながら、鋼芯線を溶融Alめっきに供すると、Alめっき層と鋼素地の間に脆いFe−Al系合金反応層が形成されることから、伸線加工を行うことは必ずしも容易ではない。溶融めっき条件によっては、伸線加工率(断面減少率)が数%程度であってもFe−Al系合金反応層の部分で激しいクラックが生じることがある。発明者らの検討によれば、伸線加工後にワイヤーハーネスに加工され自動車に搭載されるまでの工程におけるAlめっき層の耐剥離性(特に曲げ戻しを受けた場合の耐剥離性)を十分に確保するためには、鋼芯線に由来する鋼素地の全周に対して合計1/2周以上の部分でAlめっき層/鋼素地間の接合が維持されていることが望まれる。また、ワイヤーハーネス用の素線を製造する場合には、少なくとも10%以上の伸線加工率(断面減少率)で伸線できる性能が要求される。
本発明はこのような現状に鑑み、溶融Alめっき鋼線の伸線加工率を例えば10%以上としたときに、鋼芯線に由来する鋼素地の全周に対して合計1/2周以上の部分でAlめっき層/鋼素地間の接合が維持される(すなわち後述のクラック発生率が50%未満となる)ような、良好な伸線加工性を有する溶融Alめっき鋼線を提供しようというものである。
発明者らは詳細な検討の結果、溶融Alめっき鋼線のAlめっき層/鋼素地間に生成するFe−Al系合金反応層の平均厚さを6μm以下としたとき、伸線加工時のクラック発生に対する抵抗力が急激に向上することを見出した。本発明はこのような知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明では、鋼芯線の周囲に溶融Alめっき層を有しており、溶融Alめっき後にまだ伸線加工を受けていないAlめっき鋼線であって、長手方向に垂直な断面において、鋼素地とAlめっき層の間に介在するFe−Al系合金反応層の平均厚さを6μm以下に低減した伸線加工性の良好なAlめっき鋼線が提供される。長手方向に垂直な断面において、鋼素地の部分の円相当径は例えば0.1〜1mmであり、当該断面に占めるAlめっき層(反応層を除く)の面積率は例えば10%以上である。ここで、当該Alめっき鋼線の長手方向に垂直な断面に存在する鋼素地の断面積をS(mm2)、円周率をπとするとき、S=πD2/4によって定まるD(mm)を鋼素地の円相当径という。
また、本発明では上記のAlめっき鋼線(溶融Alめっき後にまだ伸線加工を受けていないもの)を伸線加工してなるAlめっき鋼線が提供される。
前記のAlめっき鋼線(溶融Alめっき後にまだ伸線加工を受けていないもの)の製造方法として、
(1)素材鋼線を溶融Alめっき浴に浸漬し、浸漬時間を、鋼素地とAlめっき層の間に介在するFe−Al系合金反応層の平均厚さが凝固後に6μm以下となる一定時間にコントロールして溶融Alめっき浴から引き上げる製造方法、あるいは、
(2)表面に平均厚さ0.2〜2μmのNiめっき層を有する素材鋼線を溶融Alめっき浴に浸漬し、浸漬時間を、Niめっき層が凝固後に全部消失するに足る時間、かつ鋼素地とAlめっき層の間に介在するFe−Al系合金反応層の平均厚さが凝固後に6μm以下となる一定時間にコントロールして溶融Alめっき浴から引き上げる製造方法、
が提供される。その際、前記素材鋼線を、300〜800℃の還元性雰囲気で活性化したのち、溶融Alめっき浴に浸漬してもよい。前記溶融Alめっき浴はSi含有量が0〜12質量%のものを使用することができる。
溶融Alめっき鋼線は、従来、脆いFe−Al系合金反応層が生成するために、伸線加工を行うとその反応層の部分でクラックが生じやすく、したがって伸線加工率は低く抑える必要があったところ、本発明によれば、例えば伸線加工率(断面減少率)を10%以上としても反応層のクラックに起因した強度低下の問題が顕在化しない溶融Alめっき鋼線が提供された。これにより、所定の線径に揃えた溶融Alめっき鋼線の素線を大量生産することが可能となり、従来の銅素線を溶融Alめっき鋼線に替えることによってリサイクル性に優れたワイヤーハーネスを実現することができる。
通常の溶融Alめっき鋼線を伸線加工率30%で伸線加工した場合の断面SEM写真。 本発明の溶融Alめっき鋼線を伸線加工率42%で伸線加工した場合の断面SEM写真。
以下において、単に「断面」というときは特に断らない限り鋼線の長手方向に垂直な断面を意味する。「伸線加工率」は断面減少率で表され、次式によって算出される。
[伸線加工率(%)]=([伸線加工前の断面積]−[伸線加工後の断面積])/[伸線加工前の断面積]×100
Alめっき層/鋼素地間の「クラック発生率」は、鋼素地の全周(360°)に占めるクラック発生部分の円弧の合計角度の割合を意味し、以下のようにして定めることができる。伸線加工後の溶融Alめっき鋼線の断面において、鋼芯線に由来する鋼素地の最も長い部分の径(長径)の中点を中心点Oとする。中心点Oを一端とする半直線を想定し、その半直線を中心点Oを軸として断面内を360°回転させたとき、その直線がクラック上を通る(クラックに掛かる)場合の回転角度を積算し、これをθTOTAL(°)とする。クラック発生率は次式により算出される。
[クラック発生率(%)]=θTOTAL(°)/360°×100
Alめっき層/鋼素地間に介在する反応層の平均厚さh(μm)は、溶融Alめっき後にまだ伸線加工を受けていないAlめっき鋼線の断面の観察画像において、鋼芯線に由来する鋼素地の円相当径をD(μm)、断面内に存在する反応層のうち鋼素地と接している反応層(すなわちAlめっき層中に島状に分離して存在する反応層は含まない)の合計面積をS1(μm2)、円周率をπとするとき、次式により定めることができる。
[反応層の平均厚さh]=S1/(πD)
ここで、分母のπDは鋼素地の円周長さに相当する。反応層は概念的にその円周より外側に存在するので、数学的な正確さからは、反応層の平均厚さhは上式により定まる値よりも僅かに小さい値となる。しかし、hはπDに比べ十分に小さいので、本願では上式により近似したhの値を反応層の平均厚さとして採用することができる。なお、上記のDおよびS1は例えば断面の観察画像(例えばSEM画像)を画像処理することにより求めることができる。
図1、図2に、伸線加工を受けた溶融Alめっき鋼線の長手方向に垂直な断面のSEM写真において、Alめっき層/鋼素地間に介在する反応層の部分で生じたクラックの発生状況を例示する。図1は反応層におけるクラック発生の抑制対策をとっていない通常の溶融Alめっき鋼線を伸線加工率約30%で伸線加工した例である。反応層の部分で激しいクラックが発生し、クラック発生率は50%を大きく上回っている。このようなAlめっき鋼線は、鋼芯線に由来する鋼素地部分の張力を強度として十分に活かすことができず、強度レベルに劣る。図2は本発明の後述実施例1に該当するものであり、伸線加工率42%で伸線加工した例である。この場合でもクラック発生率は45%であり、伸線加工性が改善されている。
本発明の溶融Alめっき鋼線(溶融Alめっき後に未だ伸線加工を施していないもの)は、Alめっき層/鋼素地間に介在するFe−Al系合金反応層が、平均厚さ6μm以下に低減されている点に特徴がある。発明者らの詳細な検討によれば、溶融Alめっき鋼線の断面において、Fe−Al系合金反応層の平均厚さが6μmを超える場合には伸線加工率が数%であっても反応層の部分で激しいクラックが生じることがあり、10%以上の伸線加工を行うと、ほとんどの場合、クラック発生率は50%を超えてしまい、実用に供することが難しい。ところが、Fe−Al系合金反応層の平均厚さが6μm以下となるように溶融Alめっきを施した場合には、伸線加工性が急激に改善されるのである。Fe−Al系合金反応層の平均厚さは5μm以下であることがより好ましく、4μm以下であることが一層好ましい。ただし、反応層が全くないものを製造することはほとんど不可能であり、これまでの試験では平均厚さ0.5μm以上となる。
Fe−Al系合金反応層の組成は、断面内の場所により変動が見られるが、通常、Al濃度が25〜75質量%の範囲で変動し、残部がFeおよび不可避的不純物である。
ワイヤーハーネス等の導線に用いる素線の用途を考慮すると、溶融Alめっき後、伸線加工前の段階の断面において、鋼芯線に由来する鋼素地の部分の円相当径は0.1〜1mmであることが望ましい。鋼芯線が細くなると溶融Alめっきが難しくなるので、鋼素地の部分の円相当径が0.1mm未満の溶融Alめっき鋼線を安定して製造することは容易でない。一方、鋼素地の円相当径が1mmを超える場合は伸線加工の負荷が過大となりやすい。また、断面に占めるAlめっき層(反応層を除く)の面積率は30%以上であることが望ましい。それよりAl付着量が少ないと導電性の面で不利となりやすい。Alめっき層の面積率の上限は、制御可能な装置上の条件範囲によって制約を受けるので、特に定める必要はないが、素線としての強度面からは例えば95%以下とすればよい。
芯線となる鋼線については、例えばJIS G3505に規定される軟鋼線材、G3532に規定される鉄線、G3506に規定される硬鋼線材などが適用可能であるが、これに限られるものではない。
以上のようなFe−Al系合金反応層の生成厚さを低減した本発明の溶融Alめっき鋼線は、(1)溶融Alめっき浴への浸漬時間を短くする手法、あるいは、(2)鋼芯線の表面に薄いNiめっきを施した素材鋼板を溶融Alめっき浴に浸漬する手法、によって製造可能であることがわかった。
(1)の溶融Alめっき浴への浸漬時間を短くする手法は、主としてライン速度を上げることによって実施できる。素材鋼線(芯線)の径および目的とするAlめっき付着量によって異なるが、例えば溶融Alめっき浴への浸漬時間が0.05〜1.5秒の範囲においてFe−Al系合金層の平均厚さを6μm以下に低減できる条件を見出すことができる。その条件は予め予備実験により把握しておくことができ、そのデータに基づいて、浸漬時間を、Fe−Al系合金層の平均厚さが凝固後に6μm以下となる一定時間にコントロールすればよい。素材鋼線の線径が細くなるとライン速度を向上させることが難しくなるが、装置のワイヤーの送給精度を高めるなどの工夫により、実現可能となる。装置の仕様によっては浸漬時間を0.1秒以上、あるいは0.3秒以上の範囲に管理しても構わない。
(2)の薄いNiめっきを施した素材鋼線を溶融Alめっき浴に浸漬する手法は、ライン速度の条件を緩和する上で有効である。発明者らの検討によれば、素材鋼線の表面に存在するNiめっき層は、Alめっき層/鋼素地間に介在する反応層の成長を抑制する作用を有することがわかった。薄いNiめっき層は溶融Alめっき浴中で溶失してしまうが、鋼素地のFeとめっき浴のAlが直接接触して反応する時間が短縮化されることによって、Fe−Al系合金反応層の成長が抑制されるものと考えられる。Niめっき層の厚さが厚くなりすぎると、凝固後もNiめっき層が残存し、Alめっき層/鋼素地間の界面構造が複雑になる。本発明では溶融Alめっきに供する素材鋼線の表面に存在させるNiめっき層の平均厚さを0.2〜2μmとする。0.2〜1.5μmとすることがより好ましく、0.2〜1.0μmとすることが一層好ましい。Niめっき層が薄すぎると反応層の成長抑制効果があまり発揮されない。厚すぎると凝固後にNiめっき層が残存しやすく、その場合は複雑な界面構造となる。
薄いNiめっき層は、例えば硫酸ニッケル浴、塩化ニッケル浴などを用いた、公知の電気めっき法によって形成できる。Niめっき層の平均厚さは、電気Niめっきにおける電流密度および通電時間から算出することができ、Niめっき後、溶融Alめっき前に伸線加工を行う場合はその加工率(断面減少率)をも考慮してNiめっき層の平均厚さをコントロールすることができる。
Niめっきを施した素材鋼線を用いる場合は、溶融Alめっきにおける浸漬時間を、Niめっき層が凝固後に全部消失するに足る時間、かつFe−Al系合金層の平均厚さが凝固後に6μm以下となる一定時間にコントロールすればよい。具体的には、例えば溶融Alめっき浴への浸漬時間が0.05〜3秒の範囲においてFe−Al系合金層の平均厚さを6μm以下に低減できる条件を見出すことができ、上記(1)の場合よりもライン速度を緩和することが可能になる。
溶融Alめっき浴に浸漬する直前に還元性雰囲気での活性化を行えば、めっき付着性を向上させる上で有効である。還元性雰囲気としては例えば10%H2−N2等のガスが挙げられ、温度は300〜800℃の範囲とすることが望ましい。
溶融Alめっき浴は、Si含有量を0〜12質量とすることができる。Siを添加することにより反応層の成長を抑制することができ、伸線加工性の向上に有効となる。また、Si添加により融点が低下するので、製造が容易となる。ただし、Si含有量が増加するとAlめっき層の加工性が低下する。また導電性低下にも繋がる。したがって、Alめっき浴にSiを含有させる場合は12質量%以下とすることが好ましく、高い加工性が要求される場合は9質量%以下、あるいは6質量%以下に規制することが有効である。Siを含有するAlめっき浴を使用した場合、Fe−Al系合金反応層中にもSiが検出されるが、めっき浴組成が上記の範囲であれば特に弊害はない。
《実施例1》
素材鋼線として、線径0.2mmの鋼線(JIS G3505の軟鋼線相当材)を用意した。溶融Alめっき浴として、Alおよび不可避的不純物からなるめっき浴を用い、前記素材鋼線を、10%H2−N2ガス、600℃の雰囲気に曝すことにより表面の活性化を行った後、溶融Alめっき浴に浸漬し、垂直に引き上げる方法で溶融Alめっきに供した。その際、ライン速度を70m/minとし、めっき浴中への浸漬時間を0.8秒とした。窒素ガスワイピングによってめっき付着量を調整した。
得られた溶融Alめっき鋼線の断面を観察して、Alめっき層/鋼素地間に介在する反応層の平均厚さhを前述の方法で測定した結果、反応層の平均厚さは5.1μmであった。SEM−EDXによりその反応層を分析した結果、この反応層はFe−Al系合金反応層であり、Al濃度が25〜75質量%の範囲で変動し、残部はFeおよび不可避的不純物であった。断面に占めるAlめっき層(反応層を除く)の面積率は77%であった。
上記の溶融Alめっき鋼線を引き抜きによる伸線加工に供し、得られたAlめっき鋼線の断面におけるクラック発生率を前述の方法で測定し、以下の結果を得た。
伸線加工率30%のとき、クラック発生率38%
伸線加工率42%のとき、クラック発生率45%
40%程度の伸線加工率においてクラック発生率は50%未満に抑えられており、良好な伸線加工性を有していることが確認された。
《比較例1》
実施例1において、溶融Alめっきのライン速度を45m/minとして、めっき浴中への浸漬時間を1.1秒としたことを除き、実施例1と同様の実験を行った。結果は以下のとおりであった。
反応層の平均厚さは8.2μmであった。この反応層はAl濃度が25〜75質量%の範囲で変動し、残部はFeおよび不可避的不純物からなるFe−Al系合金反応層であることが確認された。断面に占めるAlめっき層(反応層を除く)の面積率は79%であった。この溶融Alめっき鋼線を伸線加工率13%で伸線加工したところ、クラック発生率は87%であり、伸線加工性に劣るものであった。
《比較例2》
実施例1において、溶融Alめっきのライン速度を30m/minとして、めっき浴中への浸漬時間を1.6秒としたことを除き、実施例1と同様の実験を行った。結果は以下のとおりであった。
反応層の平均厚さは11.5μmであった。この反応層はAl濃度が25〜75質量%の範囲で変動し、残部はFeおよび不可避的不純物からなるFe−Al系合金反応層であることが確認された。断面に占めるAlめっき層(反応層を除く)の面積率は76%であった。この溶融Alめっき鋼線を伸線加工率9%で伸線加工したところ、クラック発生率は90%であり、伸線加工性に劣るものであった。
《実施例2》
実施例1において、素材鋼線を平均厚さ0.5μmのNiめっき層を有する電気Niめっき鋼線としたこと、溶融めっき前の活性化処理を省略したこと、および溶融Alめっきのライン速度を35m/minとして、めっき浴中への浸漬時間を1.4秒としたことを除き、実施例1と同様の実験を行った。結果は以下のとおりであった。
反応層の平均厚さは4.8μmであった。この反応層はAl濃度が25〜75質量%の範囲で変動し、残部はFeおよび不可避的不純物からなるFe−Al系合金反応層であることが確認された。Niめっき層は完全に消失していた。素材鋼線としてNiめっき鋼線を使用することにより、ライン速度を遅くしても実施例1と同等以下に反応層を薄くすることが可能であった。すなわち、Niめっき層による反応層の生成抑制効果が認められた。断面に占めるAlめっき層(反応層を除く)の面積率は81%であった。
この溶融Alめっき鋼線を伸線加工したときのクラック発生率は以下のとおりであった。
伸線加工率29%のとき、クラック発生率35%
伸線加工率42%のとき、クラック発生率44%
実施例1と同様、良好な伸線加工性を有することが確認された。
《実施例3》
実施例1において、溶融Alめっき浴をSi:4質量%、残部Al及び不可避的不純物となるめっき浴としたことを除き、実施例1と同様の実験を行った。反応層はFe−Al系合金反応層であり、その平均厚さ、Al濃度、Alめっき層の面積率は実施例1と同様の傾向であった。
この溶融Alめっき鋼線を伸線加工したときのクラック発生率は以下のとおりであった。
伸線加工率29%のとき、クラック発生率36%
伸線加工率42%のとき、クラック発生率44%
実施例1と同様、良好な伸線加工性を有することが確認された。
《実施例4》
実施例1において、窒素ガスワイピングの条件を調整してめっき付着量を低下させ、Alめっき層の面積率が実施例1よりも小さいAlめっき鋼線を製造した。
製造したAlめっき鋼線から、断面におけるAlめっき層の面積率が18%と39%の2水準のものを抽出した。これらの反応層の平均厚さ、組成は実施例1と同様の傾向であった。そして、このAlめっき層の面積率が18%と39%の溶融Alめっき鋼線を伸線加工率42%で伸線加工したときのクラック発生率は以下のとおりであった。
Alめっき層の面積率が18%のもの、クラック発生率48%
Alめっき層の面積率が39%のもの、クラック発生率46%
実施例1と同様、良好な伸線加工性を有することが確認された。
《比較例2》
実施例4において、窒素ガスワイピングの条件を調整してめっき付着量をさらに低下させ、断面におけるAlめっき層の面積率がさらに小さいAlめっき鋼線を製造した。
製造したAlめっき鋼線から、断面におけるAlめっき層の面積率が8%のものを抽出した。これらの反応層の平均厚さ、組成は実施例4と同様の傾向であった。そして、このAlめっき層の面積率が8%の溶融Alめっき鋼線を伸線加工率42%で伸線加工したところ、クラック発生率は55%であり、伸線加工性に劣るものであった。

Claims (5)

  1. 鋼芯線の周囲に溶融Alめっき層を有しており、溶融Alめっき後にまだ伸線加工を受けていないAlめっき鋼線であって、長手方向に垂直な断面において、鋼素地の部分の円相当径が0.1〜1mmであり、鋼素地とAlめっき層の間に介在するFe−Al系合金反応層の平均厚さが0.5〜6μmであり、当該断面に占めるAlめっき層(反応層を除く)の面積率が30%以上である伸線加工性の良好なAlめっき鋼線。
  2. 請求項1に記載のAlめっき鋼線を伸線加工してなるAlめっき鋼線であって、下記(1)式で定義される伸線加工率が10%以上、かつ下記(A)で定義されるクラック発生率が50%未満であるAlめっき鋼線。
    [伸線加工率(%)]=([伸線加工前の断面積]−[伸線加工後の断面積])/[伸線加工前の断面積]×100 …(1)
    (A)伸線加工後の溶融Alめっき鋼線の断面において、鋼素地の最も長い部分の径(長径)の中点を中心点Oとして、中心点Oを一端とする半直線を想定し、その半直線を中心点Oを軸として断面内を360°回転させたとき、その直線がクラック上を通るときの回転角度を積算し、これをθ TOTAL (°)として、下記(2)式によりクラック発生率を算出する。
    [クラック発生率(%)]=θ TOTAL (°)/360°×100 …(2)
  3. 表面に平均厚さ0.2〜2μmのNiめっき層を有する素材鋼線を溶融Alめっき浴に浸漬し、浸漬時間を、Niめっき層が凝固後に全部消失するに足る時間、かつ鋼素地とAlめっき層の間に介在するFe−Al系合金反応層の平均厚さが凝固後に6μm以下となる一定時間にコントロールして溶融Alめっき浴から引き上げる、伸線加工性に優れたAlめっき鋼線の製造方法。
  4. 前記素材鋼線を、300〜800℃の還元性雰囲気で活性化したのち、溶融Alめっき浴に浸漬する請求項に記載のAlめっき鋼線の製造方法。
  5. 溶融Alめっき浴中のSi含有量が0〜12質量%である請求項3、4のいずれか1項に記載のAlめっき鋼線の製造方法。
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