JP5463599B2 - フローセンサ - Google Patents
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Description
本発明は、流路内の流体の流量を検出するフローセンサに関する。
従来より、流路内に渦発生体とセンサ部とを流体の流れ方向に沿って順に設け、流路内に流体を流して渦発生体によりカルマン渦が発生した際に、センサ部がカルマン渦の発生周波数(発生周期)に基づき流体の流量を検出するカルマン渦式のフローセンサが知られている。
このようなカルマン渦式のフローセンサにおいて、微小流量(例えば、ゼロ流量近くの流量)を検出するためには、流路の断面積を小さく設計すると共に、下記(1)式に示すレイノルズ数Reを向上させる必要がある。
Re=(流体慣性力)/(流体粘性力) (1)
Re=(流体慣性力)/(流体粘性力) (1)
なお、(1)式において、「流体慣性力」とは、当該流体が周囲の流体とは別個に動こうとする力をいい、「流体粘性力」とは、当該流体が周囲の流体と同様に動こうとする力をいう。
ここで、従来の流路の断面構造について、図21A〜図21Cを参照しながら説明する。
図21Aは、断面円形状の流路14内に渦発生体16を設けた場合を図示したものである。この場合、流路14の幅方向(X方向)の中間位置に柱状の渦発生体16がY方向に沿って立設されており、渦発生体16の端部16a、16bは、流路14の壁面である壁部14eに接触している。
ここで、X方向に沿った渦発生体16の側部16c、16dから壁部14eまでの距離をXeとすれば、断面円形状の流路14の場合、流路径を小さく設計すると距離Xeが狭くなる。特に、渦発生体16の端部16a、16b近傍では、該端部16a、16bと壁部14eとが近接するので、距離Xeは著しく狭くなる。
このため、図21Aの断面構造では、流路14の断面積を小さくすることによる流体慣性力の向上よりも、流路14の壁面抵抗に起因した流体粘性力の上昇が顕著となり、この結果、レイノルズ数Reが向上せず、ゼロ流量近くの微小流量の検出が困難となる。
図21Bは、図21Aの断面構造よりも流路径を大きく設計した場合を図示したものである。この場合、距離Xeが広がるため、低流速域(小流量)での流体粘性力が低下する。しかしながら、流路14の断面積が大きくなることにより、流体慣性力が低下して、レイノルズ数Reが向上しない。この結果、ゼロ流量近くの微小流量の検出が却って困難となる。
そこで、渦発生体16の幅Wを短く設計して、距離Xeを広げることも考えられる。しかしながら、このように設計すれば、発生するカルマン渦の交番力(渦発生体16の下流側で交互に発生する渦の力)や渦発生体16の強度が低下することになる。そのため、センサ部におけるカルマン渦の検出感度が低くなって、カルマン渦の検出が困難になると共に、渦発生体16の耐久性も低下する。
図21Cは、特許文献1に開示された断面構造を示す。
図21Cでは、上述した問題を解決するために、流路14は、渦発生体16の軸方向(Y方向)に沿った流路14の寸法(縦寸法)Ygよりも、渦発生体16の幅方向(X方向)に沿った流路14の寸法(横方向)が長い、長円状の断面形状となっている。
すなわち、流路14は、渦発生体16の端部16a、16bにそれぞれ対向する2つの壁部14g、14hと、渦発生体16の側部16c、16dにそれぞれ対向する2つの壁部14i、14jとから画成されている。各壁部14g、14hは、X方向に沿って直線状に形成され、各壁部14i、14jは、流体が流路14内を円滑に流れるように、半円状に形成されている。
このような断面構造により、特許文献1では、流路14の断面積を小さく設計しても、渦発生体16の側部16c、16dと壁部14i、14jとの距離Xgを広くすることができ、この結果、流体慣性力が向上すると共に、流体粘性力が低下して、ゼロ流量近くの微小流量の検出が可能になる、とされている。
ところで、断面が円形状又は矩形状の流路14において、カルマン渦の安定性は、下記(2)式に示すアスペクト比の影響を受けやすいことが一般的に知られており、アスペクト比が1に近いほどカルマン渦の安定性が高くなる。
1≦アスペクト比=(流路断面の横寸法)/(流路断面の縦寸法) (2)
1≦アスペクト比=(流路断面の横寸法)/(流路断面の縦寸法) (2)
しかしながら、図21Cに示す特許文献1の流路14では、レイノルズ数Reを確保して、ゼロ流量近くの微小流量を測定できるようにするため、流路14の壁部14gと壁部14hとの間の距離(縦寸法)Ygを短くし、流路14の断面積を小さくしている。これにより、アスペクト比が1よりも大きくなって、カルマン渦の安定性が低下し、センサ部では、高流速域(大流量域)で大流量を検出する際、流体が乱れ、その乱れの影響を大きく受ける。この結果、図22に示すように、大流量域では、体積流量[l/min]に対するカルマン渦の発生周波数[Hz]の直線性(体積流量と発生周波数との関係を示す特性の直線性)が著しく劣化するおそれがある。
なお、図22において、ゼロ流量近傍は、微小流量の検出が不可能な「検出不可域」と、カルマン渦の発生周波数の直線性が劣化する「微小流量域」とであり、微小流量域と大流量域との間は、直線性の劣化が少ない「安定流量域」とされている。
本発明は、上記の課題を解消するためになされたものであり、大流量域での体積流量に対するカルマン渦の発生周波数の直線性を確保する(安定化させる)と共に、ゼロ流量近くの微小流量も検出可能な流路構造を有するフローセンサを提供することを目的とする。
前述のように、ゼロ流量近くの微小流量を検出可能とするためには、流路の断面積を小さく設計することで流体慣性力を向上させると共に、該流路の壁部と渦発生体との間の距離をできる限り広く設計することにより、流体粘性力を抑制して、レイノルズ数を向上させる必要がある。
また、大流量域でのカルマン渦の安定性を向上させるためには、アスペクト比を1に近づける必要もある。
そこで、本発明においても、フローセンサは、流体が流れる流路と、該流路内で前記流体の流れ方向と交差するように設けられた柱状の渦発生体と、前記流路内で前記渦発生体よりも前記流れ方向の下流側に設けられたセンサ部とを有し、前記流体が流されて前記渦発生体によりカルマン渦が発生した場合に、前記センサ部が前記カルマン渦の発生周波数に基づき前記流体の流量を検出可能な構成を前提としている。
このような構成を前提とした上で、本発明に係るフローセンサでは、前記流れ方向と直交する前記流路の断面が、前記渦発生体の軸方向の両端部にそれぞれ対向する第1の壁部及び第2の壁部と、前記軸方向に直交する幅方向の両側部にそれぞれ対向し且つ第1の壁部及び第2の壁部を連結する第3の壁部及び第4の壁部とによって画成されている。
そして、本発明に係るフローセンサでは、従来技術と比較して、下記の特徴的な構成(1)〜(3)を備えている。
(1)前記第3の壁部と前記第4の壁部との間の第1の寸法を、前記第1の壁部と前記第2の壁部との間の第2の寸法よりも長くしている。(2)前記第3の壁部及び前記第4の壁部を、前記渦発生体に沿って略直線状に形成している。(3)前記第1の壁部及び前記第2の壁部を、所定の曲率半径で湾曲させている。
これにより、本発明では、(1)の構成により、前記流路の断面積を小さく設計しても、前記第3の壁部及び前記第4の壁部と前記渦発生体との間の距離を長く設定することが可能となり、流体粘性力を低下させることができる。
また、本発明では、(2)の構成により、前記流路のアスペクト比に依存することなく、前記第1の壁部及び前記第2の壁部の曲率半径を変更することが可能となり、前記アスペクト比を1に近づけても、断面視で円形状又は矩形状の流路に近い形状とはならない。
また、前記第3の壁部及び前記第4の壁部が直線部として構成されるため、前記第3の壁部及び前記第4の壁部と前記渦発生体との間の距離が一定となる。この結果、前記渦発生体の軸方向に沿った流体粘性力の変化を小さくすることができる。
従って、(2)の構成においても、流体粘性力の上昇を抑制することができる。
さらに、本発明では、(3)の構成により、前記流路を画成する長辺としての前記第1の壁部及び前記第2の壁部を、前記流体粘性力の影響が大きくならない程度に湾曲させることにより、前記第3の壁部及び前記第4の壁部と前記渦発生体との間の距離を確保しつつ、前記アスペクト比を1に近づけた場合でも、前記流路の断面積の増加を抑えることが可能となる。この結果、流体慣性力の低下を抑制することができる。
このように、本発明に係るフローセンサでは、上記(1)〜(3)の構成を採用したことにより、低流速域での壁面抵抗による流体粘性力の上昇を抑えることが可能となり、ゼロ流量近くの微小流量域においてもレイノルズ数を向上させることが可能となる。また、アスペクト比を1に近づけることで、高流速域(大流量域)での流体の乱れを抑制することが可能となる。
従って、本発明では、大流量域での体積流量[l/min]に対するカルマン渦の発生周波数[Hz]の直線性を安定化させると共に、ゼロ流量近くの微小流量の検出も可能となる。
また、本発明では、下記の構成を採用することも可能である。
前記フローセンサでは、前記渦発生体及び前記センサ部を、前記第3の壁部と前記第4の壁部との間の略中間位置に設けてもよい。これにより、前記第3の壁部及び前記第4の壁部と前記渦発生体との間の距離を長くすることができ、流体粘性力を容易に低下させることが可能となる。
また、前記フローセンサでは、前記曲率半径を15[mm]〜40[mm]の範囲に設定することが望ましい。これにより、前記渦発生体の側部近傍では、高速の流速分布になると共に、前記センサ部は、ゼロ流量近くの微小流量を容易に検出することが可能となる。
さらに、前記フローセンサでは、前記渦発生体の前記第3の壁部側の側部と前記第3の壁部との間の距離をXc、前記渦発生体の前記第4の壁部側の側部と前記第4の壁部との間の距離をXd、前記渦発生体の幅をWとした場合、Xc/W>0.9及びXd/W>0.9に設定してもよい。これにより、カルマン渦の交番力や前記渦発生体の強度の低下を回避することができる。
本発明によれば、大流量域での体積流量に対するカルマン渦の発生周波数の直線性を安定化させると共に、ゼロ流量近くの微小流量の検出も可能となる。
本発明に係るフローセンサの好適な実施形態について、図面を参照しながら以下詳細に説明する。
図1〜図3は、本実施形態に係るフローセンサ10を図示したものである。ここで、図21A〜図21C中の構成要素と同じ構成要素については、同一の参照符号を付して説明する。
本実施形態に係るフローセンサ10は、管体12でZ方向に沿って形成された流路14内に、流体の流れ方向(Z1からZ2に向かう方向)に沿って、柱状の渦発生体16と、柱状のセンサ部18とを順に配設することにより構成される。この場合、渦発生体16及びセンサ部18は、流路14内における幅方向(X方向)の略中間位置でY方向に沿ってそれぞれ立設している。また、渦発生体16は、図3の平面視で、前記流れ方向の下流側(Z2方向側)が先細りとなった略五角形状の形状とされている。なお、図1に示すように、流路14の入口から渦発生体16までの距離Lは、流体の助走区間とされている。
図2に示すように、流体の流れ方向に対して直交する流路14の断面は、渦発生体16の軸方向(Y方向)の端部16a、16bに対向する壁部14a、14b(第1の壁部、第2の壁部)と、渦発生体16の幅方向(X方向)の側部16c、16dに対向し、且つ、壁部14a、14bを連結する壁部14c、14d(第3の壁部、第4の壁部)とによって画成されている。
この場合、流路14の長辺側(Y1、Y2方向側)の壁面としての壁部14a、14bは、所定の曲率半径R(R=15[mm]〜40[mm])で湾曲し、一方で、短辺側(X1、X2方向側)の壁面としての壁部14c、14dは、柱状の渦発生体16の側部16c、16dに略平行な直線部として構成されている。
ここで、壁部14aの中点と壁部14bの中点との間の距離(縦寸法、第2の寸法)をYt、壁部14cと壁部14dとの間の距離(横寸法、第1の寸法)をXtとすれば、流路14のアスペクト比が前述の(2)式を満足するように、Xt≧Ytであることが好ましい。なお、渦発生体16は、流路14内でX方向に沿った中間位置に立設されているため、縦寸法Ytは、渦発生体16の全長でもある。
また、渦発生体16の側部16c、16d間の幅をW、側部16cと壁部14cとの間の距離をXc、側部16dと壁部14dとの間の距離をXdとすれば、Xc/W>0.9及びXd/W>0.9であることが好ましい。
このようなフローセンサ10において、流路14内でZ1からZ2に向かう方向に流体を流すと、渦発生体16の下流側にカルマン渦20が発生する。すなわち、渦発生体16の側部16c、16dから下流側に向かって、互いに反対向きの渦が交互に発生し、この結果、規則正しい渦列としてのカルマン渦20が形成される。
センサ部18は、圧電素子等を含み、交互に発生した渦列(カルマン渦20)の交番力を圧電素子により検出し、検出した交番力に基づいてカルマン渦20の発生周波数[Hz](発生周期[s])を検出し、検出した発生周波数から流体の流速[m/s]や体積流量[l/min]を検出する。なお、センサ部におけるカルマン渦20の発生周波数[Hz]の検出方法や、流体の流速[m/s]及び体積流量[l/min]の検出方法については、例えば、特許文献1や特開平9−89613号公報に開示されているため、その詳細な説明は省略する。
次に、このように構成されるフローセンサ10の効果について、図4A〜図20を参照しながら説明する。なお、この説明では、必要に応じて、図1〜図3及び図21A〜図22も参照しながら説明する。
図4Aは、図21A及び図21Bに示す従来の流路14の断面構造を模式的に図示したものであり、図4Bは、図2に示すフローセンサ10の流路14の断面構造を模式的に図示したものである。
図4Aの断面構造では、図21A及び図21Bにおいても説明したように、流路14の断面積を小さく設計すると、渦発生体16の端部16a、16b近傍では距離Xeが短くなって流体粘性力が大きくなる。
これに対して、図4Bに示す本実施形態の断面構造では、縦寸法Ytに比べて横寸法Xtが長い形状であるため(Xt≧Yt)、流路14の断面積を小さく設計しても、距離Xc、Xdを長く設定することが可能である。この結果、図4Aの断面構造と比較して、流体粘性力を低下させることができる。
ここで、図4Aの断面構造と図4Bの断面構造との違いについて、図5A〜図5Cを参照しながら、さらに詳しく説明する。
図5Aに示すように、流路14内を流れる流体の流速分布は、理論的には、壁面としての壁部14a〜14eでの流速Vが0[m/s]であり、2つの壁部14a〜14eの中間位置で流速Vが最大となる。この場合、流体粘性力は、流体の変化(流れ)を抑制する方向に働くため、壁部14a〜14e近傍での流体粘性力は非常に大きくなる。
図5Bは、図4A中、渦発生体16の端部16a、16bの下流側でのカルマン渦22の発生を図示した説明図であり、側部16c、16dの端部16a、16b側と壁部14eとの間の距離はXe1である。また、図5Cは、渦発生体16の中間位置の下流側でのカルマン渦22の発生を図示した説明図であり、側部16c、16dの中間位置と壁部14eとの間の距離はXe2である。
図5Bのように、壁部14eと渦発生体16との間の距離(距離Xe1)が短い場合、大きな流体粘性力が生じやすく、ゼロ流量近くの微小流量域では、流体粘性力が流体慣性力と比べて大きくなってしまう。この結果、レイノルズ数Reが低下して、カルマン渦22が発生しづらくなると共に、該カルマン渦22の乱れが発生する。図5Bでは、本来発生すべきカルマン渦22を破線で図示している。
そのため、図5Cのように、側部16c、16dの中間位置の下流側では、図5Bに示す渦発生体16の端部16a、16bの下流側の影響を受け、カルマン渦22が乱れてしまう。
これに対して、図4Bに示す本実施形態の断面構造では、流路14を構成する短辺としての壁部14c、14dが直線部として構成されるため、壁部14c、14dと渦発生体16との間の距離(距離Xc、Xd)を一定とすることができ、カルマン渦20の安定性を向上させることができる。
図6Aは、断面楕円状の流路14を模式的に図示したものである。
この場合、流路14のアスペクト比を変更すれば、流路14の壁部14fのうち、上下の壁面(Y1、Y2方向の壁面)の曲率半径Rが変化する。そのため、アスペクト比が1に近づけば、図4Aに示す断面円形状の流路14に近い形状になり、ゼロ流量近くの微小流量について、レイノルズ数Reを向上させることが困難となる。
また、図6Bは、図21Cに示す特許文献1の流路14の断面構造を模式的に図示したものである。
図6Bでは、流路14を構成する短辺としての壁部14i、14jの形状が半円状であるため、アスペクト比を1に近づけると、図6Aの場合と同様に、図4Aで説明した断面円形状の流路14に近い形状となる。従って、この場合でも、ゼロ流量近くの微小流量について、レイノルズ数Reを向上させることが困難となる。
これに対して、図4Bに示す本実施形態の断面構造では、短辺としての壁部14c、14dが直線部であるため、流路14のアスペクト比に依存することなく、長辺としての上下の壁部14a、14bの曲率半径Rを変更することが可能となる。従って、図7に示すように、本実施形態の断面構造では、アスペクト比を1に近づけても、図4Aのような断面円形状の流路14に近い形状にはならない。
また、壁部14c、14dが直線部であるため、前述のように、壁部14c、14dと渦発生体16との間の距離(距離Xc、Xd)が一定となり、渦発生体16のY方向に沿った流体粘性力の変化を小さくすることができる。
このように、本実施形態では、壁部14c、14dを直線部にしたことにより、流体粘性力の上昇を抑制することができる。
図8Aは、本実施形態の断面構造を示し、図8Bは、図8Aと同じアスペクト比を有する断面矩形状の流路14の断面構造を示す。
図8Bの場合、壁部14m、14nが直線部であるため、壁部14m、14nと渦発生体16との間の距離が一定となるが、各壁部14k〜14nが直線部である断面矩形状の流路14であるため、該距離をある程度の長さに確保しつつ、アスペクト比を1に近づけると、流路14の断面積が大きくなりすぎてしまい、流体慣性力が低下してしまう。
これに対して、図8Aに示す本実施形態の断面構造では、長辺としての壁部14a、14bを、流体粘性力の影響が大きくならない程度に湾曲させることにより(R=15[mm]〜40[mm])、壁部14c、14dと渦発生体16との間の距離(距離Xc、Xd)を確保しつつ、アスペクト比を1に近づけた場合でも、流路14の断面積の増加を抑えることが可能となる。この結果、流体慣性力の低下を抑制することができる。
次に、本実施形態に係るフローセンサ10の効果について、図9〜図20を参照しながら、より具体的に説明する。
図9〜図12は、本実施形態での流路14の断面構造(実施例1)と、従来の流路14の断面構造(比較例1〜3)とについて、それぞれの流路14に流体を流した際のカルマン渦20、22の発生周波数を測定した結果を示す。
なお、実施例1は、図1〜図3、図4B及び図8Aに示す本実施形態の流路14である。また、比較例1は、図4Aに示す断面円形状の流路14であり、比較例2は、図8Bに示す断面矩形状の流路14であり、比較例3は、図6Aに示す断面楕円状の流路14である。
図9は、実施例1及び比較例1〜3の各流路14の形状を示す一覧表である。
図9中、「全長(Z)」は、Z方向に沿った流路14の長さをいい、「縦(Y)」は、Y方向に沿った流路14の最大長さをいい、「横(X)」は、X方向に沿った流路14の最大幅をいう。また、「曲率半径(R)」は、実施例1の流路14における壁部14a、14bの曲率半径Rをいう。
実施例1及び比較例1〜3では、流体の体積流量が4[l/min]である場合に流速Vが6.4[m/s]〜7.1[m/s]となるように流路14に流体を流し、その際に発生するカルマン渦20、22の発生周波数(測定周波数)[Hz]と流体の体積流量[l/min]とをセンサ部18で測定した。
図10は、センサ部18での測定結果を示す一覧表である。なお、図10中、「最小測定流量」は、センサ部18で測定可能な体積流量の最小値を示し、「測定周波数」は、0〜4.0[l/min]の体積流量の範囲内でセンサ部18が測定したカルマン渦20、22の発生周波数の最大値を示す。
図10に示すように、比較例1〜3と比べて、実施例1では、最小測定流量が小さく、且つ、測定周波数が大きい。
また、図11は、センサ部18が測定した測定周波数及び体積流量をプロットしたグラフであり、図12は、図11中、0.80[l/min]以下の低流量域を拡大して図示したグラフである。
図11及び図12に示すように、実施例1では、比較例1〜3と比較して、より低い体積流量を検出できると共に、同一の体積流量において、より大きな測定周波数を検出することができる。すなわち、図10及び図12に示すように、比較例1〜3は、破線Bに示す0.40[l/min]が最小測定流量であるのに対して、実施例1では、破線Aに示す0.24[l/min]にまで最小測定流量が小さくなっている。
これは、実施例1の場合、流路14の短辺としての壁部14c、14dを直線部とし、壁部14c、14dと渦発生体16との間の距離(距離Xc、Xd)を一定とし、長辺としての壁部14a、14bを湾曲させたことにより、流体慣性力の低下と流体粘性力の上昇とが共に防止されるからである。この結果、実施例1では、ゼロ流量近くの微小流量を容易に測定することができる。
図13〜図16は、本実施形態での流路14の断面構造(実施例2)と、特許文献1の流路14の断面構造(比較例4)とについて、それぞれの流路14に流体を流した際のカルマン渦20、22の発生周波数を測定した結果を示す。
図13は、実施例2及び比較例4の各流路14の形状を示す一覧表である。図13中、「断面積(S)」は、流路14の断面積を示す。なお、実施例2及び比較例4でも、流路14に流体を流した際に発生するカルマン渦20、22の発生周波数(測定周波数)[Hz]と、流体の体積流量[l/min]とをセンサ部18で測定した。
図14は、センサ部18での測定結果を示す一覧表である。
なお、図14中、「周波数特性」は、4.0[l/min]の体積流量でセンサ部18が測定したカルマン渦20、22の発生周波数(測定周波数)を示す。
また、「直線性」は、測定周波数のフルスケールに対して、どの程度の誤差があるのか、具体的に、図15のグラフにおいて、0[l/min]での測定周波数の値と4.0[l/min]での測定周波数の値とを一本の直線で結んだ場合に、該一本の直線に対する測定周波数のずれ量(誤差)の大きさをいう。
なお、図14では、0〜4.0[l/min]の体積流量の範囲内における正側の最大誤差「+MAX [%]F.S.」及び負側の最大誤差「−MAX [%]F.S.」と、4.0〜6.0[l/min]の体積流量の範囲内における正側の最大誤差「+MAX [%]F.S.」及び負側の最大誤差「−MAX [%]F.S.」とをそれぞれ表記している。
図14に示すように、比較例4と比べて、実施例2では、4.0[l/min]の体積流量での測定周波数が高く、且つ、最大誤差の絶対値も低い。
また、図15は、センサ部18が測定した測定周波数及び体積流量をプロットしたグラフであり、図16は、図15のデータを用いて、測定周波数の誤差の大きさをプロットしたグラフである。
図15及び図16に示すように、比較例4では、4.0[l/min]以上の大流量域において、周波数の直線性が乱れている。これに対して、実施例2では、比較例4のような直線性の乱れは発生せず(周波数の直線性が維持され)、大流量域やゼロ流量近傍であっても、測定周波数の誤差は小さい。
これは、特許文献1の流路14は、単純に、縦寸法Ygを短くすることでレイノルズ数Reを向上させるような断面構造であるため、アスペクト比が上昇した場合等には、大流量域での周波数の直線性が劣化する傾向にあるからである。
これに対して、実施例2では、縦寸法Ytが横寸法Xtよりも短いが、短辺である壁部14c、14dが直線部であるため、壁部14c、14dと渦発生体16との間の距離(距離Xc、Xd)を確保しつつ、アスペクト比を上昇させた場合、大流量域でも周波数の直線性を安定させることができる。
図17〜図20は、本実施形態での流路14の断面構造について、壁部14a、14bの曲率半径Rを変化させた場合(条件1〜6)、異なる曲率半径Rの流路14に流体を流した際のカルマン渦20の発生周波数を測定した結果を示す。
図17は、条件1〜6の流路14の断面構造を示す一覧表である。この場合でも、0〜4.0[l/min]の体積流量に対するカルマン渦20の発生周波数(測定周波数)をセンサ部18で測定した。
図18は、センサ部18での測定結果を示す一覧表である。図18に示すように、条件2(R=40[mm])、条件3(R=20[mm])及び条件4(R=15[mm])は、他の条件1、5及び6(R=∞、10、5[mm])と比べて、最小測定流量が小さく、且つ、測定周波数が大きい。
また、図19は、センサ部18が測定した測定周波数及び体積流量をプロットしたグラフであり、図20は、図19中、0.80[l/min]以下の低流量域を拡大して図示したグラフである。なお、条件3(R=20[mm])及び条件4(R=15[mm])については、同じ測定結果が得られたため、図19及び図20では、条件3の測定結果の図示を省略している。すなわち、図19及び図20において、条件4の測定結果は、条件3の測定結果とみなすことができる。
図19及び図20に示すように、条件2(R=40[mm])、条件3(R=20[mm])及び条件4(R=15[mm])では、他の条件1、5及び6(R=∞、10、5[mm])と比較して、より低い流量を検出できると共に、同一の流量において、より大きな測定周波数を検出することができる。すなわち、図20に示すように、条件2〜4では、破線Cに示す0.24[l/min]が最小測定流量であり、他の条件1、5及び6での最小測定流量よりも低い。
ここで、長辺である壁部14a、14bの曲率半径Rを小さくしすぎると、壁部14a、14bと渦発生体16の端部16a、16bとの接触部分近傍での流体粘性力が上昇し、ゼロ流量近くの微小流量の検出が困難となる。また、曲率半径Rを大きくしすぎると、流路14の断面積が大きくなって、流体慣性力が低下するため、この場合でも、ゼロ流量近くの微小流量の検出が困難となる。
従って、図17〜図20に示すように、条件2〜4の40[mm]、20[mm]及び15[mm]を含むR=15[mm]〜40[mm]の範囲内の値を曲率半径Rとして設定すれば、ゼロ流量近くの微小流量を容易に検出することが可能となる。
以上説明したように、本実施形態に係るフローセンサ10によれば、(1)壁部14c、14d間の横寸法Xtを、壁部14a、14b間の縦寸法Ytよりも長くし(Xt≧Yt)、(2)壁部14c、14dを渦発生体16の側部16c、16dに沿った直線部に構成し、(3)壁部14a、14bを所定の曲率半径Rで湾曲させている。
これにより、本実施形態では、(1)の構成により、流路14の断面積Sを小さく設計しても、壁部14c、14dと渦発生体16の側部16c、16dとの間の距離Xc、Xdを長く設定することが可能となり、流体粘性力を低下させることができる。
また、本実施形態では、(2)の構成により、流路14のアスペクト比に依存することなく、曲率半径Rを変更することが可能となり、アスペクト比を1に近づけても、断面視で円形状又は矩形状の流路に近い形状とはならない。さらに、壁部14c、14dが直線部として構成されるため、距離Xc、Xdが一定となる。この結果、渦発生体16の軸方向に沿った流体粘性力の変化を小さくすることができる。従って、(2)の構成でも、流体粘性力の上昇を抑制することができる。
さらに、本実施形態では、(3)の構成により、流路14を画成する長辺としての壁部14a、14bを、流体粘性力の影響が大きくならない程度に湾曲させることにより、距離Xc、Xdを確保しつつ、アスペクト比を1に近づけた場合でも、流路14の断面積の増加を抑えることが可能となる。この結果、流体慣性力の低下を抑制することができる。
このように、本実施形態に係るフローセンサ10では、上記(1)〜(3)の構成を採用したことにより、低流速域での壁面抵抗による流体粘性力の上昇を抑えることが可能となり、ゼロ流量近くの微小流量においてもレイノルズ数Reを向上させることが可能となる。また、アスペクト比を1に近づけることで、高流速域(大流量域)での流体の乱れを抑制することが可能となる。
従って、本実施形態では、大流量域の体積流量に対するカルマン渦20の発生周波数の直線性を安定化させると共に、ゼロ流量近くの微小流量の検出も可能となる。
また、本実施形態では、壁部14c、14d間の略中間位置に渦発生体16及びセンサ部18が設けられているため、距離Xc、Xdを長くすることができ、流体粘性力を容易に低下させることが可能となる。
さらに、曲率半径Rが15[mm]〜40[mm]の範囲に設定されているため、渦発生体16の側部16c、16d近傍では、高速の流速分布となると共に、センサ部18は、ゼロ流量近くの微小流量を容易に検出することが可能となる。
さらに、距離Xc、Xdと、渦発生体16の幅Wとの間では、Xc/W>0.9及びXd/W>0.9に設定されているため、カルマン渦20の交番力や渦発生体16の強度の低下を回避することができる。
なお、本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。
10…フローセンサ 12…管体
14…流路 14a〜14n…壁部
16…渦発生体 16a、16b…端部
16c、16d…側部 18…センサ部
20、22…カルマン渦
14…流路 14a〜14n…壁部
16…渦発生体 16a、16b…端部
16c、16d…側部 18…センサ部
20、22…カルマン渦
Claims (4)
- 流体が流れる流路と、該流路内で前記流体の流れ方向と交差するように設けられた柱状の渦発生体と、前記流路内で前記渦発生体よりも前記流れ方向の下流側に設けられたセンサ部とを有し、前記流体が流されて前記渦発生体によりカルマン渦が発生した場合に、前記センサ部が前記カルマン渦の発生周波数に基づき前記流体の流量を検出可能なフローセンサにおいて、
前記流れ方向と直交する前記流路の断面は、前記渦発生体の軸方向の両端部にそれぞれ対向する第1の壁部及び第2の壁部と、前記軸方向に直交する幅方向の両側部にそれぞれ対向し且つ第1の壁部及び第2の壁部を連結する第3の壁部及び第4の壁部とによって画成され、
前記第3の壁部と前記第4の壁部との間の第1の寸法は、前記第1の壁部と前記第2の壁部との間の第2の寸法よりも長く、
前記第3の壁部及び前記第4の壁部は、前記渦発生体に沿って略直線状に形成され、
前記第1の壁部及び前記第2の壁部は、所定の曲率半径で湾曲されている
ことを特徴とするフローセンサ。 - 請求項1記載のフローセンサにおいて、
前記渦発生体及び前記センサ部は、前記第3の壁部と前記第4の壁部との間の略中間位置に設けられる
ことを特徴とするフローセンサ。 - 請求項1又は2記載のフローセンサにおいて、
前記曲率半径は、15[mm]〜40[mm]に設定される
ことを特徴とするフローセンサ。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載のフローセンサにおいて、
前記渦発生体の前記第3の壁部側の側部と前記第3の壁部との間の距離をXc、前記渦発生体の前記第4の壁部側の側部と前記第4の壁部との間の距離をXd、前記渦発生体の幅をWとした場合、Xc/W>0.9及びXd/W>0.9に設定される
ことを特徴とするフローセンサ。
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