ところで、エコー信号の質が悪い場合には、相関ウィンドウ間のマッチングの度合いが低くなって相関係数が低い相関演算となり、生体組織の弾性を正確に反映した物理量を得ることができない。例えば、生体組織の中に石灰化などによって局所的に硬い部分がある場合、この硬い部分が前記超音波プローブによる圧迫とその弛緩によって横方向にずれることがある。この場合、ずれた部分のエコー信号の信号波形は、二つのフレームのそれぞれにおいて異なる波形になるため、相関演算を行なう相関ウィンドウ間のマッチングの度合いが低くなり、相関係数が低くなる。また、信号強度が小さい部分に設定された相関ウィンドウについて相関演算を行なった場合も、上記と同様にマッチングの度合いが低くなり相関係数が低くなる。このように、エコー信号の質が悪い場合、相関演算における相関係数が低くなり、算出される物理量が生体組織の弾性を正確に反映したものにならない。
また、前記相関ウィンドウのマッチング度合いが低く、その相関演算によって得られた物理量が、生体組織の弾性を正確に反映したものではない場合、この物理量に基づいて次に設定される後相関ウィンドウについての相関演算の相関係数も低くなり、その演算結果として得られる物理量も生体組織の弾性を正確に反映したものとはならなくなる。従って、ある音線上において、生体組織の弾性を正確に反映した物理量が得られない相関ウィンドウが存在すると、信号波形によっては、この相関ウィンドウよりも後に設定される後相関ウィンドウ間のマッチング度合いが低い状態が続き、弾性画像に線状のアーチファクトが現れることがある。
本発明が解決しようとする課題は、従来よりも生体組織の弾性を正確に反映した弾性画像を得ることができる超音波診断装置を提供することである。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、弾性画像に線状のアーチファクトが現れることを防止することによって、従来よりも生体組織の弾性を正確に反映した弾性画像を得ることができる超音波診断装置を提供することである。
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、第1の観点の発明は、生体組織に対し超音波の送受信を行なって得られたエコー信号であって、時間的に異なる二つのフレームに属する同一音線上における二つのエコー信号に、相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって生体組織の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、前記物理量に基づいて、前記相関ウィンドウ毎に生体組織の弾性画像データを作成する弾性画像データ作成部と、を備え、前記弾性画像データ作成部は、一の音線上における相関ウィンドウについての弾性画像データの作成にあたり、該相関ウィンドウの相関演算と、前記一の音線とは異なる他の音線上における他音線相関ウィンドウの相関演算とに従って、弾性画像データの作成を行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
第2の観点の発明は、第1の観点の発明において、前記相関ウィンドウについての弾性画像データの作成にあたり、前記相関ウィンドウの相関演算で得られた算出値と、前記他音線相関ウィンドウの相関演算で得られた算出値の中から、前記相関ウィンドウについての弾性画像データの作成に適した算出値を選択する選択部を備え、前記弾性画像データ作成部は、前記選択部によって選択された算出値に基づいて前記相関ウィンドウについての弾性画像データの作成を行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
第3の観点の発明は、第2の観点の発明において、前記物理量算出部は、前記二つのフレームのいずれか一方に属する一の音線上のエコー信号において、前記相関ウィンドウの次に設定される後相関ウィンドウを、前記選択部によって選択された算出値に基づいて設定することを特徴とする超音波診断装置である。
第4の観点の発明は、第2,3の観点の発明において、前記選択部は、前記相関ウィンドウについての弾性画像データの作成に適した算出値の選択を、該算出値が得られた相関演算の相関係数又は前記算出値が所定の範囲内にあるか否かに基づいて行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
第5の観点の発明は、第2〜4のいずれか一の観点の発明において、前記選択部は、前記相関ウィンドウの相関演算における相関係数が所定の閾値を超える場合、該相関ウィンドウの相関演算によって得られた算出値を該相関ウィンドウについての弾性画像データの作成に適した算出値として選択し、一方で前記相関ウィンドウの相関演算における相関係数が前記所定の閾値以下である場合、前記他音線相関ウィンドウの相関演算で得られた算出値であって、前記相関ウィンドウの相関演算における相関係数を超える相関係数の相関演算で得られた算出値又は所定の範囲内の算出値を、前記相関ウィンドウについての弾性画像データの作成に適した算出値として選択することを特徴とする超音波診断装置である。
第6の観点の発明は、第2〜4のいずれか一の観点の発明において、前記選択部は、前記相関ウィンドウの相関演算における相関係数及び前記他音線相関ウィンドウの相関演算における相関係数のうち、相関係数が最も高い相関演算によって得られた算出値を、前記相関ウィンドウについての弾性画像データの作成に適した算出値として選択することを特徴とする超音波診断装置である。
第7の観点の発明は、第2〜4のいずれか一の観点の発明において、前記選択部は、前記相関ウィンドウの相関演算によって得られた算出値が所定の範囲内である場合、該相関ウィンドウの相関演算によって得られた算出値を前記相関ウィンドウについての弾性画像データの作成に適した算出値として選択し、一方で前記相関ウィンドウの相関演算によって得られた算出値が所定の範囲外である場合、前記他音線相関ウィンドウの相関演算で得られた算出値であって、前記相関ウィンドウの相関演算における相関係数を超える相関係数の相関演算で得られた算出値又は前記所定の範囲内の算出値を、前記相関ウィンドウについての弾性画像データの作成に適した算出値として選択することを特徴とする超音波診断装置である。
第8の観点の発明は、第2〜4のいずれか一の観点の発明において、前記選択部は、複数の前記他の音線についての前記他音線相関ウィンドウの相関演算で得られた算出値の分布に基づいて、前記相関ウィンドウの相関演算によって得られた算出値が該相関ウィンドウについての弾性画像データの作成に適するか否かを判断し、該相関ウィンドウについての弾性画像データの作成に適していると判断した場合には該相関ウィンドウの相関演算によって得られた算出値を該相関ウィンドウについての弾性画像データの作成に適した算出値として選択し、一方で、前記相関ウィンドウについての弾性画像データの作成に適していないと判断した場合には、いずれかの前記他音線相関ウィンドウの相関演算で得られた算出値であって、前記相関ウィンドウの相関演算における相関係数を超える相関係数の相関演算で得られた算出値又は前記所定の範囲内の算出値を、前記相関ウィンドウについての弾性画像データの作成に適した算出値として選択することを特徴とする超音波診断装置である。
第9の観点の発明は、第1の観点の発明において、前記相関ウィンドウについての弾性画像データの作成にあたり、前記相関ウィンドウの相関演算で得られた算出値と、前記他音線相関ウィンドウの相関演算で得られた算出値との平均演算を行なう平均演算部を備え、前記弾性画像データ作成部は、前記平均演算部で得られた平均値に基づいて前記相関ウィンドウについての弾性画像データの作成を行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
第10の観点の発明は、第9の観点の発明において、前記平均演算部は、複数の前記他の音線についての前記他音線相関ウィンドウの相関演算の算出値と、前記相関ウィンドウの相関演算で得られた算出値との平均演算を行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
第11の観点の発明は、第10の観点の発明において、前記他音線相関ウィンドウの相関演算で得られた算出値について、エラーか否かの判定を行なうエラー判定部を備え、前記平均演算部は、エラーの算出値を除いて前記平均演算を行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
第12の観点の発明は、第1の観点の発明において、前記相関ウィンドウの相関演算で得られた算出値について、エラーか否かの判定を行なうエラー判定部と、前記相関ウィンドウについての弾性画像データの作成にあたり、前記エラー判定部により、前記相関ウィンドウの相関演算で得られた算出値についてエラーと判定された場合、複数の前記他の音線についての前記他音線相関ウィンドウの相関演算で得られた算出値の平均演算を行なう平均演算部と、をさらに備え、前記弾性画像データ作成部は、前記平均演算部で得られた平均値に基づいて前記相関ウィンドウについての弾性画像データの作成を行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
第13の観点の発明は、第11,12のいずれか一の観点の発明において、前記エラー判定部は、判定対象の算出値が得られた相関演算における相関係数に基づいてエラーか否かを判定することを特徴とする超音波診断装置である。
第14の観点の発明は、第11,12の観点の発明において、前記エラー判定部は、判定対象の算出値が予め設定された所定の範囲内にない場合にエラーと判定することを特徴とする超音波診断装置である。
第15の観点の発明は、第11,12の観点の発明において、前記エラー判定部は、判定対象の算出値について、他の判定対象の算出値の分布に基づいて、エラーか否かを判定することを特徴とする超音波診断装置である。
第16の観点の発明は、第9〜15のいずれか一の観点の発明において、前記物理量算出部は、前記二つのフレームのいずれか一方に属する一の音線上のエコー信号において、前記相関ウィンドウの次に設定される後相関ウィンドウを、前記平均演算部で得られた平均値に基づいて設定することを特徴とする超音波診断装置である。
第17の観点の発明は、第9〜16のいずれか一の観点の発明において、前記平均演算部は、前記平均演算の対象となる算出値に対し、相関係数に応じた重み付けを行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
第18の観点の発明は、第1〜17のいずれか一の観点の発明において、前記他音線相関ウィンドウは、前記相関ウィンドウと生体組織において同じ深さに位置することを特徴とする超音波診断装置である。
本発明によれば、前記弾性画像データ作成部は、前記一の音線上における相関ウィンドウについての弾性画像データの作成にあたり、前記相関ウィンドウの相関演算と、前記他音線相関ウィンドウの相関演算とに従って弾性画像データの作成を行なう。従って、前記相関ウィンドウの相関演算の結果得られる算出値が、生体組織の弾性を正確に反映したものではない場合でも、前記他音線相関ウィンドウの相関演算の結果得られる算出値が、生体組織の弾性をより正確に反映したものであれば、前記一の音線上における前記相関ウィンドウについての弾性画像データを、生体組織の弾性を従来よりも正確に反映したデータとすることができる。これにより、前記相関ウィンドウについて従来よりも生体組織の弾性を正確に反映した弾性画像を得ることができる。
また、本発明によれば、前記選択部は、前記相関ウィンドウについての弾性画像データの作成にあたり、前記相関ウィンドウの相関演算で得られた算出値と、前記他音線相関ウィンドウの相関演算で得られた算出値の中から、前記相関ウィンドウについての弾性画像データの作成に適した算出値を選択し、選択された算出値に基づいて前記弾性画像データ作成部が前記相関ウィンドウについての弾性画像データの作成を行なう。従って、前記相関ウィンドウの相関演算ので得られる算出値が、生体組織の弾性を正確に反映したものではない場合でも、前記他音線相関ウィンドウの相関演算で得られる算出値が、生体組織の弾性をより正確に反映したものであれば、この他音線相関ウィンドウの相関演算の算出値が、前記相関ウィンドウについての弾性画像データの作成に適した算出値として選択される。これにより、前記相関ウィンドウについて従来よりも生体組織の弾性を正確に反映した弾性画像を得ることができる。
また、前記二つのフレームのいずれか一方に属する一の音線上のエコー信号において、前記相関ウィンドウの次に前記後相関ウィンドウを設定する場合に、前記相関ウィンドウの相関演算の結果得られる算出値が、生体組織の弾性を正確に反映したものでない場合であっても、前記選択部によって選択された算出値に基づいて前記後相関ウィンドウを設定することにより、二つのフレームにおける前記後相関ウィンドウ間のマッチングの度合いが従来よりも高くなるように、一方のフレームにおける後相関ウィンドウの設定を行なうことができる。以上より、弾性画像に線状のアーチファクトが現れることを抑制することができ、従来よりも生体組織の弾性を正確に反映した弾性画像を得ることができる。
また、本発明によれば、前記平均演算部が、前記相関ウィンドウの相関演算で得られた算出値と、前記他音線相関ウィンドウの相関演算で得られた算出値との平均演算を行ない、前記弾性画像データ作成部は、前記平均演算部で得られた平均値に基づいて、前記相関ウィンドウについての弾性画像データの作成を行なう。従って、前記相関ウィンドウの相関演算で得られる算出値が、生体組織の弾性を正確に反映したものではない場合でも、前記他音線相関ウィンドウの相関演算で得られる算出値が、生体組織の弾性をより正確に反映したものであれば、前記相関ウィンドウについての弾性画像データを、生体組織の弾性を従来よりも正確に反映したデータとすることができる。これにより、前記相関ウィンドウについて従来よりも生体組織の弾性を正確に反映した弾性画像を得ることができる。
また、本発明によれば、前記相関ウィンドウについての弾性画像データの作成にあたり、前記エラー判定部により、前記相関ウィンドウの相関演算で得られた算出値についてエラーと判定された場合、複数の前記他の音線についての前記他音線相関ウィンドウの相関演算で得られた算出値の平均演算を行ない、前記弾性画像データ作成部は、前記平均演算部で得られた平均値に基づいて前記相関ウィンドウについての弾性画像データの作成を行なう。従って、前記相関ウィンドウの相関演算で得られる算出値が、生体組織の弾性を正確に反映したものではない場合でも、前記他音線相関ウィンドウの相関演算で得られる算出値が、生体組織の弾性をより正確に反映したものであれば、前記相関ウィンドウについての弾性画像データを、生体組織の弾性を従来よりも正確に反映したデータとすることができる。これにより、前記相関ウィンドウについて従来よりも生体組織の弾性を正確に反映した弾性画像を得ることができる。
また、前記二つのフレームのいずれか一方に属する一の音線上のエコー信号において、前記相関ウィンドウの次に前記後相関ウィンドウを設定する場合に、前記相関ウィンドウの相関演算の結果得られる算出値が、生体組織の弾性を正確に反映したものでない場合でも、前記平均演算部で得られた平均値に基づいて前記後相関ウィンドウを設定することにより、二つのフレームにおける前記後相関ウィンドウ間のマッチングの度合いが従来よりも高くなるように、一方のフレームにおける後相関ウィンドウの設定を行なうことができる。以上より、弾性画像に線状のアーチファクトが現れることを抑制することができ、従来よりも生体組織の弾性を正確に反映した弾性画像を得ることができる。
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について図1〜図7に基づいて説明する。図1に示す超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送受信部3、Bモード画像処理部4、弾性画像処理部5、合成部6、表示部7を備え、さらに制御部8及び操作部9を備える。
前記超音波プローブ2は、生体組織に対して超音波を送信しそのエコーを受信する。この超音波プローブ2を生体組織の表面に当接させた状態で圧迫と弛緩を繰り返しながら超音波の送受信を行なって取得されたエコー信号に基づいて、後述のように弾性画像が作成される。
前記送受信部3は、前記超音波プローブ2を所定の走査条件で駆動させて音線毎の超音波の走査を行なう。また、前記超音波プローブ2で受信したエコー信号について、整相加算処理等の信号処理を行なう。
ちなみに、前記送受信部3は、Bモード画像を作成するための走査と、弾性画像を作成するための走査とを別に行なう。弾性画像を作成するための走査としては、被検体における弾性画像を作成する領域において、同一音線上に二回の走査を行なう。
前記Bモード画像処理部4は、前記送受信部3から出力されたエコー信号に対し、対数圧縮処理、包絡線検波処理等のBモード処理を行い、Bモード画像データを作成する。
前記弾性画像処理部5は、前記送受信部3から出力されたエコー信号に基づいて、弾性画像データを作成する。この弾性画像処理部5は、図2に示すように、物理量算出部51と弾性画像データ作成部52とを有し、さらに選択部53を有している。
前記物理量算出部51は、生体組織における各部の弾性に関する物理量として、前記超音波プローブ2による圧迫とその弛緩によって生じた生体組織における各部の変形による変位(以下、単に「変位」と云う)を算出する。前記物理量算出部51は、後述の説明で用いる図4に示すように時間的に異なる二つのフレーム(i),(ii)に属する同一音線上における二つのエコー信号に基づいて変位を算出する。詳細は後述する。前記物理量算出部51は本発明における物理量算出部の実施の形態の一例である。
前記弾性画像データ作成部52は、前記物理量算出部51によって算出された変位を色相情報に変換し、弾性画像を作成する領域における弾性画像データを作成する。前記弾性画像データ作成部52は本発明における弾性画像データ作成部の実施の形態の一例である。
ここで、本例では、図3に示すように前記表示部7に表示されたBモード画像BG上に関心領域(ROI:Region Of Interest)Rが設定され、この関心領域Rについて前記弾性画像データが作成される。ただし、本発明は、このように前記Bモード画像BGの一部について弾性画像を作成する場合に限られるものではなく、前記Bモード画像BGの全体について前記弾性画像データを作成してもよい。
前記選択部55は、一の音線上における相関ウィンドウについての弾性画像データの作成にあたり、前記相関ウィンドウの変位と、前記一の音線とは異なる他の音線上における他音線相関ウィンドウの相関演算で得られた変位の中から、前記相関ウィンドウについての弾性画像データの作成に適した変位を選択する。詳細については後述する。前記選択部55は、本発明における選択部の実施の形態の一例である。
前記Bモード画像処理部4で作成されたBモード画像データと、前記弾性画像処理部5で作成された弾性画像データは、前記合成部6で合成される。具体的には、この合成部6は、一フレーム分の前記Bモード画像データと前記弾性画像データとを加算処理し、前記表示部7に表示する一フレーム分の超音波画像データを作成する。そして、前記合成部6で得られた超音波画像データは、図3に示すように白黒のBモード画像BGとカラーの弾性画像EGとが合成された超音波画像Gとして前記表示部7に表示される。本例では、前記弾性画像EGは、前記関心領域R内に半透明で(背景のBモード画像が透けた状態で)表示される。
前記制御部8は、CPU(Central Processing Unit)で構成され、図示しない記憶部に記憶された制御プログラムを読み出し、前記超音波診断装置1の各部における機能を実行させる。また、前記操作部9は、操作者が指示や情報を入力するためのキーボード及びポインティングデバイス(図示省略)などを含んで構成されている。
さて、本例の超音波診断装置1の作用について説明する。先ず、前記送受信部3は、前記超音波プローブ2から被検体の生体組織へ超音波を送信させ、そのエコー信号を取得する。このとき、前記超音波プローブ2により、被検体への圧迫とその弛緩を繰り返しながら超音波の送受信を行う。
そして、エコー信号が取得されると、前記Bモード画像処理部4は、前記送受信部3からのエコー信号に基づいてBモード画像データを作成する。また、前記弾性画像処理部5は、前記送受信部3からのエコー信号に基づいて弾性画像データを作成する。前記Bモード画像データと前記弾性画像データは、前記合成部6で合成され、図3に示すようにBモード画像BGと弾性画像EGとが合成された超音波画像Gが前記表示部7に表示される。
前記弾性画像処理部5における弾性画像データの作成について詳細に説明する。図4に示す前記フレーム(i),(ii)は、複数本の音線上において取得されたエコー信号からなる。図4では、前記フレーム(i)における複数本の音線の一部として、五本の音線L1a,L1b,L1c,L1d,L1eが示され、また前記フレーム(ii)において前記音線L1a〜L1eに対応する音線として、音線L2a,L2b,L2c,L2d,L2eが示されている。すなわち、前記音線L1a及び前記音線L2a、前記音線L1b及び前記音線L2b、前記音線L1c及び前記音線L2c、前記音線L1d及び前記音線L2d、前記音線L1e及び前記音線L2eは、異なる二つのフレームに属する同一音線に該当する。また、図4においてR(i),R(ii)は、前記関心領域Rに対応する領域を示している。
弾性画像データの作成の際には、前記物理量算出部51は、前記フレーム(i)における前記領域R(i)の上端部100から下端部101に向かって、各音線上に相関ウィンドウW1を順次設定し、また前記フレーム(ii)における前記領域R(ii)の上端部100から下端部101に向かって、各音線上に相関ウィンドウW2を順次設定する。そして、前記弾性画像データ作成部52が前記相関ウィンドウW1,W2に対応する画素についての弾性画像を作成する。
以下、前記音線L1c,L2c上における弾性画像データを作成する場合を例にして説明する。すなわち、ここでは前記音線L1c,L2cが本発明における一の音線の実施の形態の一例であり、これ以外の音線が本発明における他の音線の実施の形態の一例である。
前記物理量算出部51は、前記音線L1c,L2c上のエコー信号S1,S2(図示省略)のそれぞれに、相関ウィンドウW1,W2を設定する。ここでは、前記相関ウィンドウW1,W2として、相関ウィンドウW11c、W21cが設定されたとする。
前記物理量算出部51は、前記相関ウィンドウW11c,W21c間で相関演算を行ない、変位Xcを算出する。次に、前記選択部53は、相関ウィンドウW11c,W21c間の相関演算における相関係数Cc(0<Cc<1、後述する他の相関係数についても同様の数値範囲)を所定の閾値CTHと比較する。ちなみに、この閾値CTHは、操作者により予め設定される。
前記選択部53は、前記相関係数Ccが前記閾値CTHを超えている場合、前記変位Xcを前記相関ウィンドウW11c,W21cについての弾性画像データの作成に適した変位として選択する。ここで、「前記相関ウィンドウW11c,W21cについての」とは、「前記相関ウィンドウW11c,W21cに対応する画素についての」という意味である。
一方、前記相関係数Ccが前記閾値CTH以下である場合、前記選択部53は、図5に示すように、前記音線L1c,L2cの左隣の音線である前記音線L1b,L2bに設定された前記相関ウィンドウW11b,W21b間の相関演算における相関係数Cbを前記相関係数Ccと比較する。ただし、この時前記相関係数Cbを前記閾値CTHと比較してもよい。そして、前記相関係数Cbが前記相関係数Cc又は前記閾値CTHよりも高ければ、前記選択部53は、前記変位Xbを前記相関ウィンドウW11c,W21cについての弾性画像データの作成に適した変位として選択する。一方、前記相関係数Cbが前記相関係数Cc又は前記閾値CTH以下である場合、前記選択部53は、図6に示すように、前記音線L1c,L2cの右隣の音線である前記音線L1d,L2dにおける前記相関ウィンドウW11d,W21d間の相関演算における相関係数Cdを前記相関係数Cc又は前記閾値CTHと比較する。そして、前記相関係数Cdが前記相関係数Cc又は閾値CTHよりも高ければ、前記相関ウィンドウW11d,W21d間で得られた変位Xdを前記相関ウィンドウW11c,W21cについての弾性画像データの作成に適した変位として選択する。一方、前記相関係数Cdが前記相関係数Cc又は閾値CTH以下である場合、前記選択部53は、さらに異なる音線について、上述の処理を繰り返し、前記相関係数Cc又は閾値CTHよりも高い相関係数となった相関演算で得られた変位を、前記相関ウィンドウW11c,W21cについての弾性画像データの作成に適した変位として選択する。
ちなみに、弾性画像データを作成する対象となっている一の音線とは異なる他の音線に設定される相関ウィンドウを他音線相関ウィンドウとする。前記相関ウィンドウW11b,W21b及び前記相関ウィンドウW11d,W21dは、他音線相関ウィンドウの一例である。これら相関ウィンドウW11b,W21b及び前記相関ウィンドウW11d,W21dは、前記相関ウィンドウW11c,W21cと生体組織において同じ深さとなる位置に設定されている。前記相関ウィンドウW11b,W21b及び前記相関ウィンドウW11d,W21dは新たに設定されて相関演算が行なわれてもよいが、すでに前記音線L1b,L2b及び前記音線L1d,L2dについて、前記相関ウィンドウW11b,W21b及び前記相関ウィンドウW11d,W21dが設定されて相関演算が行なわれ、弾性画像データの作成が行なわれている場合には、この時の相関演算における相関係数Cb,Cdを前記相関係数Cc又は前記閾値CTHと比較してもよい。
前記弾性画像データ作成部52は、前記選択部53によって選択された変位に基づいて、前記相関ウィンドウW11c,W21cについての弾性画像データを作成する。
前記音線L1c上において、前記相関ウィンドウW11cの次に設定される相関ウィンドウW12cは、図7に示すように、前記相関ウィンドウW11cから予め定められた所定のデータ数分だけ移動させて設定される。ここでは、前記相関ウィンドウW11cのウィンドウ幅分のデータ数だけ移動させて前記相関ウィンドウW12cが設定される。この相関ウィンドウW12cのウィンドウ幅は、前記相関ウィンドウW11cのウィンドウ幅と同じである。前記音線L1c上のエコー信号S1には、前記上端部100から前記下端部101へ向かって、同じウィンドウ幅の相関ウィンドウW1が順次設定される。
また、前記音線L2c上において、前記相関ウィンドウW21cの次に設定される相関ウィンドウW22cは、前記相関ウィンドウW11c,W21cについての弾性画像データの作成に用いた変位に基づいて、前記相関ウィンドウW21cからの移動量を決定し前記相関ウィンドウW22cを設定する。このようにして設定される前記相関ウィンドウW22cは、前記相関ウィンドウW21cと重複する部分を有し、またこの相関ウィンドウW21cのウィンドウ幅とは異なるウィンドウ幅になっている。
以上説明した本例の超音波診断装置1によれば、前記一の音線上における相関ウィンドウについての弾性画像データの作成にあたり、この相関ウィンドウの相関演算と、前記一の音線とは異なる他の音線上における他音線相関ウィンドウの相関演算とに従って前記弾性画像データが作成される。例えば、前記相関ウィンドウW11c,W21c間の相関演算で得られた変位Xcと他音線相関ウィンドウ(前記相関ウィンドウW11b,W21b、前記相関ウィンドウW11d,W21d等)間の相関演算で得られた変位の中から、前記選択部53によって選択された変位に基づいて、前記相関ウィンドウW11c,W21cについての弾性画像データが作成される。従って、前記変位Xcが生体組織の弾性を正確に反映したものではない場合でも、前記前記他音線相関ウィンドウ間の相関演算で得られた変位が生体組織の弾性をより正確に反映したものであれば、この他音線相関ウィンドウ間の相関演算で得られた変位が、前記相関ウィンドウW11c,W21cについての弾性画像データの作成に適した算出値として選択され、弾性画像データが作成される。これにより、前記相関ウィンドウW11c,W21cについて従来よりも生体組織の弾性を正確に反映した弾性画像を得ることができる。
また、フレーム(ii)において前記相関ウィンドウW21cよりも後に相関演算が行なわれる後相関ウィンドウ(前記相関ウィンドウW22c等)は、前記選択部53によって選択された変位に基づいて設定される。これにより、前記相関ウィンドウW11c,W21cの相関演算で得られた変位Xcが、生体組織の弾性を正確に反映したものでない場合でも、フレーム(i)の相関ウィンドウとのマッチングの度合いが従来よりも高くなるように、前記フレーム(ii)において後相関ウィンドウを設定することができる。以上より、弾性画像EGに線状のアーチファクトが現れることを抑制することができ、従来よりも生体組織の弾性を正確に反映した弾性画像を得ることができる。
次に、第一実施形態の変形例について説明する。先ず、第一変形例について図8に基づいて説明する。この第一変形例においては、前記相関係数Ccが前記閾値CTH以下である場合、図8に示すように、前記物理量算出部51は、前記音線L1c,L2cの左右の隣り二本の音線、すなわち音線L1a,L2a、音線L1b,L2b、音線L1d,L2d、音線L1e,L2eに、それぞれ他音線相関ウィンドウとして相関ウィンドウW11a,W21a、相関ウィンドウW11b,W21b、相関ウィンドウW11d,W21d、相関ウィンドウW11e,W21eを設定する。そして、前記物理量算出部51は、相関ウィンドウW11a,W21a間の相関演算と、相関ウィンドウW11b,W21b間の相関演算と、相関ウィンドウW11d,W21d間の相関演算と、相関ウィンドウW11e,W21e間の相関演算とを行ない、それぞれ変位Xa,Xb,Xd,Xeを算出する。
ちなみに、すでに他音線相関ウィンドウについて弾性画像データを作成する時に前記変位Xa,Xb,Xd,Xeが算出されている場合には、改めて算出することなく、この時に算出された値を用いればよい。
次に、前記選択部53は、前記相関係数Ccよりも高く、なおかつ前記変位Xa,Xb,Xd,Xeの中で最も高い相関係数の相関演算で得られた変位を、前記相関ウィンドウW11c,W21cについての弾性画像データの作成に適した変位として選択する。
ただし、前記選択部53は、前記相関係数Ccが前記閾値CTH以下である場合において、前記変位Xa,Xb、Xd,Xeの中で、予め設定された所定の範囲内にあるいずれかの変位を、前記相関ウィンドウW21cを設定するための変位として選択してもよい。前記所定の範囲は、例えば操作者によって設定され、操作者が、通常得られると思料する変位の範囲である。
次に第二変形例について説明する。この第二変形例では、前記選択部53は、弾性画像データを作成しようとする前記相関ウィンドウの相関演算における相関係数及び前記他音線相関ウィンドウの相関演算における相関係数のうち、相関係数が最も高い相関演算によって得られた算出値を、前記相関ウィンドウについての弾性画像データの作成に適した算出値として選択する。例えば、前記選択部53は、前記相関ウィンドウW10a,W20aの相関演算における相関係数Ca、前記相関ウィンドウW10b,W20bの相関演算における相関係数Cb、前記相関ウィンドウW10c,W10cの相関演算における相関係数Cc,前記相関ウィンドウW10d,W20dの相関演算における相関係数Cd、前記相関ウィンドウW10e,W20eの相関演算における相関係数Ceのうち、相関係数が最も高い相関演算によって得られた変位を、前記相関ウィンドウW11c,W21cについての弾性画像データの作成に適した変位として選択する。
次に第三変形例について説明する。この第三変形例では、前記選択部53は、弾性画像データを作成しようとする相関ウィンドウの相関演算によって得られた変位が所定の範囲内である場合、この変位を前記相関ウィンドウに対応する画素についての弾性画像データの作成に適した変位として選択する。一方、前記選択部53は、前記相関ウィンドウの相関演算によって得られた変位が所定の範囲外の変位である場合、前記他音線相関ウィンドウの相関演算によって得られた変位であって、前記所定の範囲内の変位を、前記相関ウィンドウについての弾性画像データの作成に適した変位として選択する。
例えば、前記相関ウィンドウW11c,W21cについての弾性画像データを作成する場合、これら相関ウィンドウW11c,W21cの相関演算によって得られた変位Xcが、予め設定された所定の範囲内である場合、前記選択部53は、この変位Xcを前記相関ウィンドウW11c,W21cについての弾性画像データの作成に適した変位として選択する。
一方、前記相関ウィンドウW11c,W21cの相関演算によって得られた変位Xcが、前記所定の範囲内にない場合、前記選択部53は、例えば前記変位Xa,Xb,Xd,Xeのうち、前記所定の範囲内にあるいずれかの変位を、前記相関ウィンドウW11c,W21cについての弾性画像データの作成に適した変位として選択する。この場合において、前記変位Xa,Xb,Xd,Xeのうち、相関係数が前記相関係数Cc又は前記所定の閾値CTHを超える相関演算によって得られたいずれかの変位を任意に選択してもよい。また、前記変位Xa,Xb,Xd,Xeのうち、相関係数が最も高い相関演算によって得られた変位を選択してもよい。
ちなみに、前記所定の範囲は、本例においても、例えば操作者によって設定され、操作者が、通常得られると思料する変位の範囲である。
次に第四変形例について説明する。前記選択部53は、複数の前記他の音線についての他音線相関ウィンドウの相関演算によって得られた変位の分布に基づいて、前記相関ウィンドウの相関演算によって得られた算出値がこの相関ウィンドウについての弾性画像データの作成に適しているか否かを判断する。そして、前記相関ウィンドウの相関演算によって得られた変位が、前記他音線相関ウィンドウの相関演算によって得られた変位の分布に対して著しく異なるものでない場合、前記選択部53は、前記相関ウィンドウの相関演算によって得られた変位を、前記相関ウィンドウについての弾性画像データの作成に適した変位として選択する。一方、前記相関ウィンドウの相関演算によって得られた変位が、前記他音線相関ウィンドウの相関演算によって得られた変位の分布に対して著しく異なる場合、前記選択部53は、前記他音線相関ウィンドウの相関演算によって得られた変位であって、所定の範囲内の変位を、前記相関ウィンドウについての弾性画像データの作成に適した変位として選択する。ちなみに、著しく異なると判定される範囲は、操作者の判断により予め設定される。
例えば、前記相関ウィンドウW11c,W21cについての弾性画像データを作成する場合、これら相関ウィンドウW11c,W21cの相関演算によって得られた変位Xcが、前記変位Xa,Xb,Xd,Xeの平均値に対し操作者によって設定された±n%の範囲内である場合、前記変位Xcが前記相関ウィンドウW11c,W21cについての弾性画像データの作成に適した変位として選択される。
一方、前記変位Xcが、前記変位Xa,Xb,Xd,Xeの平均値に対し操作者によって設定された±n%の範囲内に入っていない場合、前記変位Xa,Xb,Xd,Xeのいずれかの変位であって予め設定された所定の範囲内の変位が、前記相関ウィンドウW21cの設定に適した相関ウィンドウとして選択される。この場合、前記変位Xa,Xb,Xd,Xeのうち、前記相関係数Cc又は所定の閾値CTHを超える相関係数の相関演算で得られたいずれかの変位を選択してもよいし、最も相関係数が高い相関演算によって得られた変位を選択してもよい。
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。この第二実施形態は第一実施形態と基本的構成を同じくし、第一実施形態と同様の事項については説明を省略する。
本例においても、前記弾性画像データ作成部52は、第一実施形態と同様に、一の音線上における相関ウィンドウについての弾性画像データの作成にあたり、この相関ウィンドウの相関演算と、前記一の音線とは異なる他の音線上における他音線相関ウィンドウの相関演算とに従って前記弾性画像データを作成するが、具体的手法が異なっている。
具体的に説明すると、本例では、図9に示すように、前記弾性画像処理部5は、前記物理量算出部51及び前記弾性画像データ作成部52のほか、平均演算部54を有している。この平均演算部54は、本発明における平均演算部54の実施の形態の一例であり、前記相関ウィンドウの相関演算で得られた変位と、前記他音線相関ウィンドウの相関演算で得られた変位との平均演算を行なう。そして、前記弾性画像データ作成部52は、前記平均演算部54によって得られた平均値に基づいて、前記相関ウィンドウについての弾性画像データを作成する。
例えば、前記相関ウィンドウW11c,W21cについての弾性画像データを作成する場合、先ず前記物理量算出部51は、前記相関ウィンドウW11a,W21aの相関演算と、前記相関ウィンドウW11b,W21bの相関演算と、前記相関ウィンドウW11c,W21cの相関演算と、前記相関ウィンドウW11d,W21dの相関演算と、前記相関ウィンドウW11e,W21eの相関演算とを行ない、それぞれ変位Xa,Xb,Xc,Xd,Xeを算出する。そして、前記平均演算部54は、前記変位Xa〜Xeの平均演算を行ない、各変位の平均値XAVを算出する。
ちなみに、他音線相関ウィンドウについての前記変位Xa,Xb,Xd,Xeは、前記平均演算を行なうにあたり、前記物理量算出部51によって算出してもよいが、すでに他音線相関ウィンドウについて弾性画像データを作成する時に前記変位Xa,Xb,Xd,Xeが算出されている場合には、改めて算出することなく、この時に算出された値を前記平均演算に用いればよい。
ここで、前記平均演算を行なう際には、前記変位Xa,Xb,Xc,Xd,Xeに対し、相関係数に応じた重み付けを行ってもよい。すなわち、前記相関ウィンドウW11a,W21a間の相関演算における前記相関係数Caに応じた重み係数を前記変位Xaに乗算し、前記相関ウィンドウW11b,W21b間の相関演算における前記相関係数Cbに応じた重み係数を前記変位Xbに乗算し、前記相関ウィンドウW11c,W21c間の相関演算における前記相関係数Ccに応じた重み係数を前記変位Xcに乗算し、前記相関ウィンドウW11d,W21d間の相関演算における前記相関係数Cdに応じた重み係数を前記変位Xdに乗算し、前記相関ウィンドウW11e,W21e間の相関演算における前記相関係数Ceに応じた重み係数を前記変位Xeに乗算して平均演算を行なう。重み係数は、相関係数が高くなるほど大きくなるような係数とする。
前記平均演算部54により前記平均値XAVが算出されると、前記弾性画像データ作成部52は、前記平均値XAVに基づいて、前記相関ウィンドウW11c,W21cについての弾性画像データを作成する。
ちなみに、本例において、前記フレーム(i)における相関ウィンドウの設定は、第一実施形態と同様にして行なわれる。一方、前記フレーム(ii)における相関ウィンドウの設定について説明すると、例えば、前記音線L2c上において、前記相関ウィンドウW21cの次に設定される相関ウィンドウW22c(後相関ウィンドウ)は、前記平均値XAVに基づいて、前記相関ウィンドウW21cからの移動量を決定して設定される。
以上説明した本例によれば、例えば前記相関ウィンドウW11c,W21cについての弾性画像データは、前記平均演算部54で得られた平均値XAVに基づいて作成される。従って、前記相関ウィンドウW11c,W21cの相関演算の結果得られる変位Xcが、生体組織の弾性を正確に反映したものではない場合でも、前記他音線相関ウィンドウの相関演算で得られる変位Xa,Xb,Xd,Xeが、生体組織の弾性をより正確に反映したものであれば、前記相関ウィンドウW11c,W21cについての弾性画像データを、生体組織の弾性を従来よりも正確に反映したデータとすることができる。これにより、前記相関ウィンドウW11c,W21cについて従来よりも生体組織の弾性を正確に反映した弾性画像を得ることができる。
また、フレーム(ii)において前記相関ウィンドウW21cよりも後に相関演算が行なわれる後相関ウィンドウ(前記相関ウィンドウW22c等)は、前記平均演算部54の平均演算で得られた平均値に基づいて設定される。これにより、前記相関ウィンドウW11c,W21cの相関演算で得られた変位Xcが、生体組織の弾性を正確に反映したものでない場合でも、前記フレーム(i)の相関ウィンドウとのマッチングの度合いが従来よりも高くなるように、前記フレーム(ii)において後相関ウィンドウを設定することができる。以上より、弾性画像に線状のアーチファクトが現れることを抑制することができ、従来よりも生体組織の弾性を正確に反映した弾性画像を得ることができる。
次に、第二実施形態の変形例について説明する。この変形例では、図10に示すように、前記弾性画像処理部5は、エラー判定部55をさらに有している。このエラー判定部55は、前記平均演算部54による前記平均演算を行なうにあたり、この平均演算に用いる変位を対象としてこれら変位がエラーか否かを判定する。そして、前記平均演算部54は、エラーとされた変位を除いて平均演算を行なう。前記エラー判定部55は、本発明におけるエラー判定部の実施の形態の一例である。
例えば、前記エラー判定部55は、前記変位Xa,Xb,Xc,Xd,Xeの平均演算を行なうにあたり、これら変位Xa〜Xeについてエラーか否かを判定する。そして、前記平均演算部54は、前記変位Xa〜Xeのうち前記エラー判定部55でエラーと判定された変位を除いて平均演算を行なう。すなわち、前記平均演算部54は、前記他音線相関ウィンドウの相関演算で得られた変位であるXa,Xb,Xd,Xeのいずれかがエラーと判定された場合、エラーと判定されたものを除く前記他音線相関ウィンドウにおける変位と、前記相関ウィンドウW11c,W21cの相関演算で得られた変位Xcとの平均演算を行なう。また、前記平均演算部53は、前記変位Xcがエラーと判定された場合、前記変位Xa,Xb,Xd,Xeの平均演算を行なう。
前記エラー判定部55による判定手法の一例としては、判定対象の変位が得られた相関演算における相関係数Cに基づいてエラーか否かを判定する手法が挙げられる。この場合、相関係数Cについて所定の閾値CTHを予め設定しておき、この閾値CTHよりも相関係数Cが小さい場合、前記エラー判定部55はエラーと判定する。例えば、前記エラー判定部55は、前記変位Xaについてエラーか否かを判定する場合、前記相関ウィンドウW11a,W21a間で行なわれた相関演算の相関係数Caを前記閾値CTHと比較し、前記相関係数Caが閾値CTHよりも低かった場合、前記変位Xaをエラーと判定する。
また、前記エラー判定部55による判定手法の他例としては、判定対象の変位が、予め設定された所定の範囲内にない場合にエラーと判定する手法が挙げられる。ここで、所定の範囲は、例えば操作者によって設定され、操作者が、通常得られると思料する変位の範囲である。
さらに、前記エラー判定部55による判定手法の他例としては、判定対象の変位について、他の判定対象の変位の分布に基づいてエラーか否かを判定する手法が挙げられる。具体的には、前記エラー判定部55は、判定対象の変位が、他の判定対象の変位の分布に対して著しく異なる場合、エラーと判定する。著しく異なると判定される範囲は、操作者の判断により予め設定される。
例えば、前記エラー判定部55は、前記変位Xaについてエラーか否かを判定する場合、前記変位Xb,Xc,Xd,Xeの平均値を求め、この平均値に対し操作者によって設定された±n%の範囲内に前記変位Xaが入っていない場合にエラーと判定する。このように、前記エラー判定部55は、前記変位Xb,Xc,Xd,Xeの分布に基づいて、エラーか否かを判定する。
以上、本発明を前記各実施形態によって説明したが、本発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。例えば、前記物理量算出部51は、生体組織の弾性に関する物理量として、生体組織の変形による変位の代わりに生体組織の歪みや弾性率を算出してもよい。