JP5446980B2 - マルテンサイト系高Cr電縫鋼管溶接部の熱処理方法及びマルテンサイト系高Cr電縫溶接鋼管の製造方法 - Google Patents

マルテンサイト系高Cr電縫鋼管溶接部の熱処理方法及びマルテンサイト系高Cr電縫溶接鋼管の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、特に、耐食油井管、プラント管、材料管等に好適なマルテンサイト系高Cr電縫溶接鋼管の製造方法に関する。なお、マルテンサイト系高Cr電縫溶接鋼管とは、7%以上のCrを含有し、母材、溶接衝合部および溶接熱影響部の金属組織がマルテンサイトであり、鋼板をロール成形し、シーム部を電縫溶接して製造される鋼管である。
SUS410、SUS420、SUS440等のマルテンサイト系ステンレス鋼によって代表されるマルテンサイト系高Cr鋼管、特に、耐食油井管の製造にはシームレス工程が採用されることが多い。このシームレス工程は製造コストが高く、特に、寸法精度が要求される用途では冷間引抜が必要になるため、製造コストが非常に上昇する。
一方、電縫溶接鋼管は寸法精度に優れ、シームレス鋼管よりも製造コストが安いが、金属組織がマルテンサイトからなる鋼を電縫溶接する際には、低温割れが問題になる。これは、0.1%以上のCを含有する高強度鋼の場合、溶接部のマルテンサイトが硬質になり、水素脆化割れ感受性が非常に高くなるためである。なお、本発明では、溶接衝合部および溶接熱影響部を総称して、溶接部という。
更に、電縫溶接鋼管では、熱延鋼板に含有されていた水素が溶接部に残存したり、電縫溶接時に、溶接雰囲気に存在する水素ガスや水蒸気が分解して生成した水素が、溶接部に侵入して、一定濃度の水素が溶接部に存在する。また、電縫溶接では鋼管長手方向に加熱部分が線状であり、残りの大部分は加熱されないので、溶接部が冷却された際に高い引張応力が発生する。
低温割れは水素脆化の一形態であり、高強度鋼を溶接した後、100℃以下に冷却し、10分から数時間程度、経過した際に発生する。これは、水素が拡散、集積するのに時間を要するためである。特に、高Crマルテンサイト鋼は、溶接後に100℃以下に冷却されると強度が高くなり、また、100℃以下では鋼中からの水素の放散が抑制されるため、低温割れが発生し易くなる。
低温割れの発生を防止するためには、1)鋼中水素を低減すること、2)鋼材の水素脆化割れ感受性を低減すること、3)溶接部に生じる引張応力を低減すること、などが有効である。
従来、マルテンサイト系ステンレス鋼の電縫溶接管を製造する際の、溶接部の低温割れの発生を防止する対策として、電縫溶接後、熱影響部を700℃以上Ac1点以下に加熱し、焼き戻す方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この方法では、溶接部が焼き戻されて、溶接部の硬さが低下し、水素濃度が減少するため、水素脆化割れ感受性が低下し、また、溶接部の残留応力も緩和される。しかし、この方法でも低温割れは完全には防止できず、5%以下の低温割れが発生する場合があった。
特開平8−92648号公報
溶接部の低温割れは、発生頻度が5%以下であってもまだ十分とはいえず、完全に防止することが好ましい。本発明は、マルテンサイト系ステンレス鋼管に代表される、マルテンサイト系高Cr鋼管を電縫管製造工程で製造するに際し、溶接部での低温割れを確実に防止する方法を提案するものである。
本発明は、マルテンサイト系高Cr鋼管を電縫溶接後、適正な条件で加熱することによって、1)溶接部の水素量、2)溶接部の水素脆化割れ感受性、3)溶接部の引張残留張応力、を低減し、低温割れを防止する方法であり、その要旨は以下のとおりである。
(1)質量%で、
C:0.1〜0.5%、
Cr:7〜18%
を含有し、
Si:0.5%以下、
Mn:2%以下、
P:0.03%以下、
S:0.05%以下、
Al:0.1%以下、
N:0.1%以下
に制限し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼板をロール成形し、電縫溶接した後、100℃以下に冷却された電縫鋼管の溶接部を、溶接線から円周方向の加熱幅を、肉厚の2倍に相当する長さ以上として、冷却後直ちに600℃以上、700℃未満に再加熱することを特徴とするマルテンサイト系高Cr電縫鋼管溶接部の熱処理方法。
(2)前記鋼板が、上記(1)に記載の成分組成に加え、さらに、質量%で、
Ni:4%以下、
Cu:4%以下、
Mo:2%以下
の1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)に記載のマルテンサイト系高Cr電縫鋼管溶接部の熱処理方法。
(3)前記鋼板が、上記(1)または(2)に記載の成分組成に加え、さらに、質量%で、
V:0.1%以下、
Ti:0.1%以下、
Nb:0.2%以下
の1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載のマルテンサイト系高Cr電縫鋼管溶接部の熱処理方法。
(4)前記鋼板が、上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の成分組成に加え、さらに、質量%で、
Ca:0.01%以下
を含有することを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか1項に記載のマルテンサイト系高Cr電縫鋼管溶接部の熱処理方法。
(5)前記鋼板のC、N、Ni、Cu、Cr、Moの含有量[質量%]から下記(式1)によって求められるIpsが−11以上であることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか1項に記載のマルテンサイト系高Cr電縫鋼管溶接部の熱処理方法。
Ips=Ni+0.3Cu+40C+34N−1.1Cr−1.8Mo・・・(式1
(6)上記(1)〜()の何れか1項に記載の溶接部の熱処理方法を実施した後、鋼管全体に焼き入れ、焼き戻し処理を施すことを特徴とするマルテンサイト系高Cr電縫溶接鋼管の製造方法。
本発明によれば、電縫管製造工程で製造された、マルテンサイト系高Cr鋼管、特に、マルテンサイト系ステンレス鋼管の、溶接部での低温割れを確実に防止することが可能になり、溶接部の信頼性を確保することができ、また、鋼管の製造時における歩留まりが向上するなど、産業上の貢献が極めて顕著である。
マルテンサイト系高Cr鋼の溶接部の硬さと、再加熱温度との関係を示す図である。
マルテンサイト系高Cr電縫溶接鋼管は、ロール成形および電縫溶接により造管された後、鋼管全体を加熱し、焼入れ、焼き戻しを施して製造される。本発明における溶接部の熱処理は、電縫溶接後の低温割れを防止するために、鋼管全体の熱処理とは別に施される、電縫溶接後の溶接部の再加熱である。
電縫溶接の溶接部は幅が狭く、母材による抜熱のため、溶接完了後は急冷される。また、通常、製造ライン上に超音波探傷装置を設けて、電縫溶接の直後に溶接部の検査を行う。この際、超音波探傷を水中で行うため、溶接部は100℃以下まで水冷される。水冷前には、溶接衝合部の近傍がAc3点以上の高温に加熱されているため、水冷によって溶接部はマルテンサイトに変態する。
その結果、焼入れ性が高いマルテンサイト系高Cr鋼の溶接部にはマルテンサイトが生成し、水素脆化割れ感受性が高くなり、低温割れが発生し易くなる。特に、マルテンサイト変態の終了温度であるMf点が100℃以上である場合は、溶接部の金属組織は完全にマルテンサイトになり、低温割れが発生し易くなる。
したがって、マルテンサイト系高Cr鋼電縫鋼管の低温割れを防止するために、電縫溶接後、溶接部に熱処理を施すことが必要になる。熱処理によって溶接部を軟化させると、水素脆化割れ感受性が低下し、低温割れを防止することができる。しかし、溶接部を、Ac1点以下であっても700℃以上に再加熱すると、その後の冷却によって、以下に説明するように、溶接部には残留応力が負荷されることがわかった。
電縫溶接後、再加熱された部分は変態せずに熱膨張する。上述のように電縫鋼管の溶接部は幅が狭く、通常、再加熱を施す部分は鋼管の周方向の一部である。そのため、周方向の大部分の加熱されない部分によって、再加熱された部分が拘束されている。したがって、溶接部を700℃以上に再加熱すると、熱膨張に起因する応力を緩和するために、再加熱によって軟化した部分が塑性変形する。その後、冷却されると、冷却時の収縮によって生じた引張応力が残留応力として溶接部に負荷されることになる。
溶接部の残留応力が引張応力であると低温割れの原因になるため、電縫溶接後の溶接部熱処理は700℃未満で行うことが必要である。
一方、溶接部を再加熱する温度が低いと、溶接部の硬さの低下が不十分になり、水素脆化割れ感受性を低下させることができない。
本発明者らは、代表的なマルテンサイト系高Cr鋼であるSUS410を電縫溶接し、溶接部を700℃未満の温度に再加熱して、ビッカース硬さ測定した。その結果、図1に示すように、SUS410の溶接部の硬さは、500℃付近から低下し始め、600℃で著しく低下し、それ以上になると、硬さの低下幅が小さくなることがわかった。
更に、本発明者らは、種々のマルテンサイト系高Cr電縫溶接鋼管の溶接部を種々の温度で再加熱し、低温割れの発生を確認した。その結果、軟化と残留応力の効果により、最も低温割れが発生しにくくなる温度域は、600℃以上、700℃未満であることを確認した。また、再加熱によって発生する残留応力は、溶接部の加熱幅により変化し、低温割れの発生に影響を与えることがわかった。検討の結果、肉厚の2倍以上の幅で溶接部を再加熱すると残留応力が低減し、低温割れの発生が著しく抑制されることがわかった。
本発明は以上のような検討結果に基づいてなされたもので、以下、本発明について詳細に説明する。
まず、マルテンサイト系高Cr電縫溶接鋼管の素材である鋼板の成分組成について説明する。なお、成分組成の「%」は、「質量%」を意味する。
Crは、耐食性を向上させる元素であり、7%以上を含有させることが必要である。一方、Crはフェライト生成元素であり、含有量が18%を超えると、フェライトが生成し、強度が低下する。したがって、Cr量を7〜18%とする。
Cは、金属組織をマルテンサイトとし、強度を高めるために必要な元素であり、下限を0.1%とする。一方、C量が0.5%を超えると、強度が高くなり、炭化物の生成によって延性や靭性を損なうため、上限を0.5%以下とする。
Siは、脱酸元素であり、0.5%超を含有させると、延性や靭性を損なうため、上限を0.5%以下に制限する。
Mnは、脱酸元素であり、また、オーステナイト生成元素であることから、金属組織をマルテンサイトにするために、C量に応じて、添加しても良い。しかし、2%を超えて含有させても効果が飽和するので、上限を2%以下とする。
Pは、不純物であり、含有量が0.03%を超えると、延性や靭性を損なうため、上限を0.03%以下に制限する。
Sは、不純物であり、含有量が0.05%を超えると、硫化物が増加して、熱間加工性、延性や靭性を損なうため、上限を0.05%以下に制限する。
Alは、脱酸元素であり、0.1%超を添加すると、介在物が増加して、延性や靭性を損なうため、上限を0.1%以下に制限する。
Nは、オーステナイトに固溶し、強度に寄与する元素であるが、0.1%を超えて含有させると、窒化物を生成して、延性や靭性を損なうため、上限を0.1%以下とする。
更に、必要に応じて、Ni、Cu、Mo、V、Ti、Nb、Caの1種または2種以上を添加しても良い。
Niは、耐食性の向上に有効な元素であり、靭性の向上にも寄与する。Niは高価な元素であるため、上限を4%以下とすることが好ましい。
Cuは、耐食性の向上に有効な元素であり、析出物を生じて強度の向上にも寄与する。Cuを4%超添加すると、強度が上昇し、靭性が低下することがあるため、上限を4%以下とすることが好ましい。
Moは、耐食性の向上に有効な元素であり、固溶強化により強度の向上にも寄与する。Moは高価な元素であるため、上限を2%以下とすることが好ましい。
V、Ti、Nbは、炭窒化物を生じて強度の向上に寄与する元素であるが、過剰に添加すると靭性を損なうことがある。したがって、Vは0.1%以下、Tiは0.1%以下、Nbは0.2%以下を上限として添加することが好ましい。
Caは、硫化物を生成し、熱間加工性を向上させる元素であるが、過剰に添加すると介在物を生じて延性や靭性を損なうことがある。したがって、Ca量の上限は0.01%以下とすることが好ましい。
上述の元素の残部は、Feおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としては、スクラップから混入するSn、Bi等が挙げられる。また、脱酸時に必要に応じて添加される、Mg、Zr、Ta、REMなどを含有することがある。
さらに、C、N、Ni、Cu、Cr、Moの含有量[質量%]から下記(式1)によって求められるIpsが−10以上であることが好ましい。選択元素であるNi、Cu、Cr、Moを含有しない場合は、含有されない元素を0として計算する。
Ipsは、焼入れのために鋼管全体を加熱した際の、金属組織のオーステナイト変態の指標である。下記(式1)の右辺では、オーステナイトを安定化する元素であるNi、Cu、C、Nの係数が正、フェライトを安定化する元素であるCr、Moの係数が負であり、Ipsの数値が大きいほど、オーステナイトが安定になることを意味する。
Ips=Ni+0.3Cu+40C+34N−1.1Cr−1.8Mo・・・(式1)
本発明では、電縫鋼管の焼入れ後の金属組織をマルテンサイトとし、高強度化を図るため、Ipsを−11以上にすることが好ましい。Ipsが−11未満になると、加熱時の金属組織が完全にオーステナイトにならず、フェライトが混在することがある。そのため、焼入れ後の金属組織がマルテンサイトとフェライトとの混合組織になり、強度が低下することがある。合金元素の添加量を減少させても高強度を得るには、Ipsを−9以上にすることが好ましい。
上述の成分組成からなる鋼を溶製し、常法によって鋼板とし、電縫溶接する。鋼板は、鋼片を加熱して熱間圧延すれば良い。必要に応じて、酸洗、冷間圧延を施しても良い。なお、熱間圧延の条件及び製造される鋼板の金属組織は特に規定しないが、ロール成形を行う際には鋼板が軟質であることが好ましい。そのため、熱間圧延後、鋼板の金属組織がフェライト・パーライトになるように、高温で巻取って、除冷することが好ましい。
得られた鋼板を管状にロール成形し、シーム部を電縫溶接する。電縫溶接後、溶接部は冷却され、超音波探傷などの検査を行い、溶接部熱処理を施す。
超音波探傷は水中で施されるため、溶接部は100℃以下に冷却される。マルテンサイト系高Cr電縫鋼管は、焼入れ性が高い成分組成を有しており、Mf点が100℃以上または近傍になることが多い。そのため、100℃以下に冷却された溶接部の金属組織はほぼマルテンサイトになり、低温割れが生じ易くなる。
しかし、本発明においては、電縫溶接と、超音波探傷及び溶接部の熱処理とは、同一の製造ライン上で行われるため、溶接部の熱処理は、超音波探傷での冷却に引き続いて連続して直ちに行われる。したがって、超音波探傷において100℃以下に冷却された後、溶接部の熱処理が施されるまでの時間が10分を超えることはなく、この間に低温割れが発生することはない。
なお、Mf点は、マルテンサイトが完了する温度であり、鋼板の一部から試験片を採取するか、鋼板と同等の成分組成を有する試験材を製造して試験片を採取し、加熱および冷却した際の膨張曲線から求めることができる。
次に、本発明の溶接部の熱処理方法について説明する。
溶接部の再加熱温度は、600℃以上、700℃未満とする。溶接部の再加熱温度が600℃以上であると溶接衝合部近傍が十分に軟化し、低温割れの発生を抑制することができる。また、溶接部の再加熱温度を700℃未満にすると、溶接部に発生する引張の残留応力が小さくなり、低温割れの発生を抑制することができる。
また、溶接部を再加熱する際には、衝合部、すなわち溶接線から離れるに従って温度が低下する。本発明では、再加熱の目標温度の80%以上に加熱された範囲の、溶接線から鋼管の周方向の片側の距離を加熱幅という。この加熱幅、即ち、溶接線からの距離が鋼管の肉厚に相当する長さ以上になると、加熱される範囲の幅が十分広く、冷却時に発生する応力が低減され、低温割れが発生し難くなる。更に、加熱幅が肉厚の2倍以上になると、残留応力が低減し、低温割れの発生が著しく抑制される。
溶接部熱処理時の加熱幅は、再加熱の目標温度の80%以上に加熱された部位の、溶接線から鋼管の周方向の片側の距離であるから、サーモビュアーによって温度分布を測定し、求めることができる。また、電縫鋼管の溶接部近傍の断面組織によって、熱影響を受けた部位を測定すれば、求めることができる。
溶接部の再加熱方法は、特に規定せず、高周波誘導加熱、通電加熱、レーザー等の熱源を利用した加熱などを用いることができる。なお、電縫鋼管を製造する際のラインスピードは、数10m/分以上であるため、このような造管速度に追従し、かつ電縫溶接部のような狭い幅を加熱するためには、誘導加熱が好適である。誘導加熱では、加熱装置の配置によって、溶接部熱処理に再加熱される部位の幅を制御することができる。
このようにして電縫溶接後、電縫溶接部及びその近傍が熱処理を施された鋼管に、最終的な材質特性を得るための熱処理を施す。すなわち、鋼管全体を加熱して、焼入れ、焼戻しを施す。
焼入れは、管をAc3点以上に加熱した後、マルテンサイト変態するように冷却する。高Crマルテンサイト系鋼は焼入れ性が高く、空冷でもマルテンサイト変態するので、焼入れ時の冷却速度は必ずしも高い必要は無い。また、Ac3点以上に加熱してもオーステナイト中に炭化物が残存することがあるが、材質上有益または無害であれば問題ない。
焼入れ後のマルテンサイトままでは強度が高すぎ、靭性も低いので、Ac1点以下の温度で焼き戻しを行う。
なお、Ac1点、Ac3点はMf点と同様、小試験片を加熱、冷却して得られた膨張曲線から測定することができる。
表1に示す成分組成を有するマルテンサイト系高Cr鋼を溶製し、熱間圧延して熱延鋼板を製造した。なお、熱延鋼板の強度を低下させて成形し易くするため、熱延後の巻取りを高温で行い、その後、徐冷して、金属組織をフェライト・パーライト組織とした。得られた熱延鋼板をロール成形し、電縫溶接して直径194mm、肉厚9.4mmの鋼管を製造した。電縫溶接は内外面にアルゴンガスのシールボックスを設置して溶接した。
電縫溶接後、得られた電縫鋼管を冷却して溶接部に水を散布して超音波探傷を行い、そのまま、製造ラインに設置された誘導加熱装置を用いて、表2に示す条件で加熱し、自然放冷した。なお、電縫溶接直後の超音波探傷では、全ての鋼管に割れ等の欠陥が発生していないことが確認された。
製造後、低温割れの有無を検出するために、鋼管の溶接部を超音波探傷によって検査した。この2回目の超音波探傷は、電縫溶接直後の超音波探傷から10分を超えた時間経過後に行った。また、溶接衝合部の近傍の残留応力は、X線回折法によって測定し、500MPa未満を○、500MPa以上を×として評価した。
表2に示すように、加熱条件が本発明の範囲では低温割れが発生していない。
Figure 0005446980
Figure 0005446980
更に、表2の製造No.2、7、9、10、11、12の鋼管については、表3に示す条件で、鋼管全体に焼入れ、焼戻しを施した。得られた鋼管から、周方向を長手とする引張試験片を採取し、引張試験を行った。表3に示すように、本発明によれば、良好な特性を有するマルテンサイト系高Cr電縫鋼管が得られる。
Figure 0005446980

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C:0.1〜0.5%、
    Cr:7〜18%
    を含有し、
    Si:0.5%以下、
    Mn:2%以下、
    P:0.03%以下、
    S:0.05%以下、
    Al:0.1%以下、
    N:0.1%以下
    に制限し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼板をロール成形し、電縫溶接した後、100℃以下に冷却された電縫鋼管の溶接部を、溶接線から円周方向の加熱幅を、肉厚の2倍に相当する長さ以上として、冷却後直ちに600℃以上、700℃未満に再加熱することを特徴とするマルテンサイト系高Cr電縫鋼管溶接部の熱処理方法。
  2. 前記鋼板が、請求項1に記載の成分組成に加え、さらに、質量%で、
    Ni:4%以下、
    Cu:4%以下、
    Mo:2%以下
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のマルテンサイト系高Cr電縫鋼管溶接部の熱処理方法。
  3. 前記鋼板が、請求項1または2に記載の成分組成に加え、さらに、質量%で、
    V:0.1%以下、
    Ti:0.1%以下、
    Nb:0.2%以下
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のマルテンサイト系高Cr電縫鋼管溶接部の熱処理方法。
  4. 前記鋼板が、請求項1〜3の何れか1項に記載の成分組成に加え、さらに、質量%で、
    Ca:0.01%以下
    を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のマルテンサイト系高Cr電縫鋼管溶接部の熱処理方法。
  5. 前記鋼板のC、N、Ni、Cu、Cr、Moの含有量[質量%]から下記(式1)によって求められるIpsが−11以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のマルテンサイト系高Cr電縫鋼管溶接部の熱処理方法。
    Ips=Ni+0.3Cu+40C+34N−1.1Cr−1.8Mo・・・(式1)
  6. 請求項1〜の何れか1項に記載の溶接部の熱処理方法を実施した後、鋼管全体に焼き入れ、焼き戻し処理を施すことを特徴とするマルテンサイト系高Cr電縫溶接鋼管の製造方法。
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