JP5446284B2 - 無機粒子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、製紙工場から排出される製紙スラッジを原料とし、塗工紙用顔料または製紙用填料として有用な白色の無機粒子を製造する方法に関する。
製紙工場においては、製紙原料であるパルプ等の繊維分、澱粉、合成接着剤等の有機物、紙製品に留まらずに排水中に含まれる製紙用填料または塗工紙用顔料を主とする無機物、さらには、パルプ化工程で洗い出されたリグニンや微細繊維、古紙由来の印刷インク、それに付着した塗工紙用顔料や製紙用填料、また生物廃水処理で生じる余剰汚泥などから成る、いわゆる製紙スラッジが発生する。近年、環境保全の観点から従来の廃棄対象物を資源として有効活用する動きが産業界全体で強まっており、製紙業界においても製紙原料として回収古紙を利用する比率が高まっているが、この古紙利用の増加に伴って製紙工場廃水に含まれるスラッジの処理が大きな課題になっている。
このような製紙スラッジは、従来では産業廃棄物として埋立て処分されることが多かったが、最近では流動床炉、ストーカ炉などの焼却炉内でスラッジ中の有機成分を焼却処理することにより、エネルギーとしての回収と同時に減容化を図るようにしている。しかるに、製紙スラッジ中には無機物が高比率で含まれるため、焼却処理してもスラッジ焼却灰が発生することになる。そして、大量に発生するスラッジ焼却灰は、一部がセメント原料、製鉄の酸化防止剤、土壌改良剤などに再利用されているが、大部分は産業廃棄物として埋立て処分されているのが現状である。
一方、回収される古紙は、無機成分含量が少ない新聞、上質紙などの非塗工紙系古紙と、無機成分含量が多い雑誌などの塗工紙系古紙との2種に大別され、現状では再生処理が容易な非塗工紙系古紙が主流をなしている。しかし、今後の古紙利用率を高める上で必然的に塗工紙系古紙の比率が増すことになり、これに伴ってスラッジ発生量も急増することが予想される。従って、今後は製紙スラッジ、およびその焼却灰を廃棄物として処理することがますます困難になり、また年々高騰している廃棄物処理費用が紙パルプ工業の収益を圧迫することにもなるから、製紙スラッジを高率で有効利用し得る技術の開発が急務である。
製紙スラッジの有望な再生用途として、その焼却処理後の無機成分主体のスラッジ焼却灰を製紙用填料、塗工紙用顔料などの製紙用材料に再利用することが挙げられる。この再利用が実現すれば、大量のスラッジ焼却灰を製紙用材料として消費できるから、産業廃棄物の削減のみならず、古紙利用率の向上にも結び付き、環境対策上の問題が一挙に解消することになる。
製紙スラッジを燃焼させて無機粒子を製造し、これを製紙用材料に転化する様々な方法が提案されている(例えば、特許文献1〜12参照)。
ここで、製紙スラッジの燃焼には直接加熱方式と間接加熱方式があるが、いずれの場合にも、スラッジの燃焼に使用された熱源は排ガスとして回収され、他の施設で利用されることになる。
例えば、特許文献7では、スラッジ中に含まれる有機物からタール、一酸化炭素といった有害化合物を含む揮発性のガスが発生する可能性があり、この揮発性ガスを、少なくとも900℃の第二のキルンまたは炉に通すことによって、これらの有害化合物を分解するのが有利であるとしている(特許文献7の段落0020参照。)。
また、特許文献11では、未燃ガスを含む排ガスが二次焼成炉に送り込まれて、その可燃ガス成分等が完全燃焼させられ、次いで二次焼成炉からの排ガスは、燃焼空気予熱器において空気を予熱する。さらにその排ガスは、高温であるため、廃熱ボイラに供給されて熱回収され、さらにその排ガスは、集塵用ベンチュリースクラバーおよび減湿用湿式スクラバーによって清浄化、冷却されて、大気中に放散されるとされている(特許文献11の段落0024参照)。
特許文献12では、排ガスが、再燃焼室でバーナーにより再燃焼が行われ、予冷器により予冷された後、熱交換器を通し、誘引ファンにより煙突から大気中に排出されるとされている(特許文献12の段落0021参照)。
特開2005−161239号公報 特許第3563707号公報 特開2001−262002号公報 特開2002−308619号公報 特開2004−262701号公報 特開2004−176209号公報 特開平10−029818号公報 特許第3831719号 特開平11−310732号公報 特開2001−026727号公報 特開2004−121936号公報 特開2008−127704号公報
製紙スラッジを製紙用材料として再利用するためには、できるだけ白色度の高いスラッジ焼却灰を得ることが望ましい。そのためには、白色度低下の要因となる煤、炭などの未燃焼の有機成分をスラッジ焼成灰から極力除去することが重要である。
ここで、スラッジ中に含まれる有機成分の除去は、スラッジを焼却し、炭化水素(Cn2n+2)、炭水化物(Cn2nn)などの有機成分を燃焼させることにより行われる。有機成分の燃焼は、有機成分中の炭素(C)、水素(H)および酸素(O)の各原子が酸素(O2)と化学的に反応して、二酸化炭素(CO2)と水(H2O)となる反応である。この燃焼反応を安定して行うためには、(1)燃料となる炭素源(有機成分)、(2)炭素源を発火させるための熱源、および(3)燃焼のための充分な酸素(O2)の3要素が不可欠である。
このような観点から、例えば、回転キルン炉などの焼成設備を用いて、酸素源および熱源を供給することにより、有機成分を発火、燃焼させるに際し、製紙スラッジの撹拌状態、加熱温度条件、炉内酸素濃度その他の条件を調整するなど、様々な工夫がなされている。特に、得られる無機粒子の白色度その他の性能を向上させるためには、その燃焼温度を厳密に管理する必要がある。
このため、焼成炉内で、スラッジに由来する有機成分を完全燃焼させるに至らず、焼成炉から排出されるガス中には、未燃焼の有機成分(主として炭素粉末)が多く存在することになる。これをそのまま排出することができないため、例えば、前掲の特許文献7、11および12のように、再燃焼させ、熱交換器などを使って熱エネルギーとして再利用することも考えられるが、熱交換器を使う場合にはエネルギーロスが大きい。
一方、処理を要する製紙スラッジは最終的に1ヶ月当たり数百トン〜数千トンにもなることが予想されるが、製紙スラッジの着火および燃焼を全てバーナーで賄おうとすると、相当なエネルギーが必要となる。
本発明は、このような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、製紙工場から排出される製紙スラッジから製紙用材料の製紙用填料、塗工紙用顔料などとして有効利用できる高品質の白色の無機粒子を効率よく、経済的且つ大規模に製造するに際して、焼成炉からの排ガスを有効的に利用することができる無機粒子の製造方法を提供することを目的としている。
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、下記の知見を得た。
(a)焼成炉からの排ガスは、多くの未燃焼有機成分を含む可燃性ガスである。しかし、炉内に供給された酸素のほとんどは燃焼に用いられるため、炉から排出される段階では、酸素濃度が低く、排ガス中には未燃焼の可燃性ガスが多く含まれた状態となる。
(b)しかし、この排ガスは、ある程度の温度(通常300〜600℃)を有しているため、酸素を与えれば、燃焼し始める。
(c)従って、この排ガスを未燃焼の状態で、他の焼成設備(燃焼室、再燃室、焼成炉など)に送り込み、その設備内で再度空気を供給することにより、燃源として用いることができる。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、「製紙スラッジを脱水し、乾燥した後、過剰空気雰囲気下で間接的に加熱して焼成し、その後、分散し、粉砕して無機粒子を製造する方法であって、焼成設備からの未燃焼有機成分を含む排ガスを当該焼成設備または乾燥設備に送り込み、その設備内の過剰空気と接触させて熱源とする無機粒子の製造方法。」を要旨とする。
焼成温度が低い焼成炉からの排ガスを焼成温度が高い焼成炉に送り込み、熱源として用いることが好ましい。また、空気を、製紙スラッジの移送方向とは逆向きに流通させつつ、焼成することが好ましい。更に、焼成で得られた焼成物を水と混合、攪拌して懸濁液を得た後、この懸濁液に二酸化炭素を接触させて炭酸化することが好ましい。
本発明は、製紙工場から排出される製紙スラッジから製紙用材料の製紙用填料、塗工紙用顔料などとして有効利用できる高品質の白色の無機粒子を効率よく、経済的且つ大規模に製造するに際して、焼成炉からの排ガスを有効的に利用することができる。これにより、焼成のために必要な燃料を低減できるので、無機粒子の製造コストを低減することができる。
本発明の無機粒子の製造方法の好適な一例を示すフローチャート図 筒型熱処理炉(回転キルン炉)の一例を模式図 乾燥炉および二段階の焼成炉を有する製造装置における排ガスの再利用方法の例を示す図
1.概要
図1は、本発明の無機粒子の製造方法の好適な一例を示すフローチャート図である。例えば、図1に示すように、本発明の無機粒子の製造方法においては、まず、原材料である製紙スラッジを脱水、乾燥および造粒の各工程からなる前処理に供される。焼成効率を向上させるためには、前処理を実施するのがよいが、これらの全部または一部(脱水または造粒)を省略してもよい。
製紙スラッジは、そのまま、または前処理の後、焼成される。この焼成物は、粉砕工程を行って得られた焼成粉砕物を白色の無機粒子として直接使用することもできる。しかし、懸濁液化、炭酸化、脱水、分散および粉砕の各工程からなる後処理を経た白色の無機粒子として回収する方がより好適である。
2.焼成
(a)装置概要
焼成設備としては、特に制限はないが、筒型熱処理炉を用いるのが好ましい。筒型熱処理炉には、被処理物の移送方式により、ロータリーキルン炉(以下、「回転キルン炉」という。)とスクリュー式キルン炉とがあるが、焼成効率の観点からは回転キルン炉を用いるのが望ましい。
図2は、本発明において用いられる筒型熱処理炉(回転キルン炉)の一例を模式的に示す縦断側面図である。図2に示すように、この筒型熱処理炉K1においては、横円筒型の回転胴1が加熱ジャケット(燃焼室)2で包囲されており、回転胴1の原料供給口1aには、排気口3と、排気口3からやや離れて設置された原料投入口4とを有し、この原料投入口4と回転胴1の原料供給口1aとの間には、例えば、スクリューフィーダーなどの原料供給手段5が配設されている。回転胴1の焼成物排出口1bには、給気口6と焼成物取出口7とが設けられている。
そして、間接的加熱手段8A、8Bの複数の熱風放出口82から加熱ジャケット2内に熱風が導入されている。熱風放出口82にはバルブが付けられており、ブロア81からの熱風量を調整できるので、回転胴1内の焼成温度を精度よく制御しながら、製紙スラッジSを間接的に加熱できる構成となっている。また、図に示す例では、加熱ジャケット2内に熱風を送り込む構成の筒型熱処理炉が示されているが、加熱方法はこのような構成に限られず、加熱ジャケット2内に設置したバーナーを使い加熱ジャケット2内の温度を上昇させる構成のものでも良い。
(b)望ましい空気の供給・排気方法
排気口3には、例えば、排気ファンのような排気手段9が介装されており、その稼働によって破線矢印aで示すように回転胴1内の空気が排気されるとともに、排気に伴う減圧作用で給気口6より外部の空気が回転胴1内へ吸入される。排気は、排気口3の下流側に設けた排気循環ブロア10により行われる。このように、本発明の無機粒子の製造方法においては、回転胴内の製紙スラッジの進行方向と逆方向の流れとなるように空気を導入するのが望ましい。
回転胴内での空気の流れ方向は、被処理物(製紙スラッジとその焼成物)の移送方向に対して逆向き(向流)になるのがよい。こうすれば、仮に、燃焼に伴って不完全燃焼状態にある煤などの浮遊性有機成分が炉内に飛散しても、浮遊性有機成分は空気の流れに乗って原料供給口1aへ戻されて燃焼するか、または、更に排気に付随して筒型熱処理炉外へ排出される。このため、焼成物に不完全燃焼の黒色有機成分が混入するのを防止でき、もって白色度の高い焼成物が得られる。このような浮遊性有機成分は、バグフィルターなどで捕集して除去するか、排気と共に適当な加熱手段によって焼成処理して消失させるのがよい。
排気口3からの高温の排ガスは、排気循環ブロア10によって熱風循環系へ送られ、前処理の乾燥工程における熱源、間接的加熱手段8A、8Bの熱源または熱風の一部として循環利用できる。なお、間接的加熱手段8A、8Bの熱源または熱風には、前処理の乾燥工程などからの排熱を利用してもよい。
図3は、乾燥炉および二段階の焼成炉を有する製造装置における排ガスの再利用方法の例を示す図である。図3に示すように、複数(図に示す例では2段階)の焼成炉を用いる焼成設備の場合、任意の焼成炉(例えば、一次焼成炉)からの排ガスを他の焼成炉(例えば、二次焼成炉)における加熱ジャケット(燃焼室)に送り込み、間接的加熱手段(図2の符号8A、8B参照)の熱源または熱風として用いることも可能である。また、各焼成炉からの排ガスを乾燥設備の熱源または熱風として利用することもできるし、逆に、乾燥設備からの排ガスを各焼成炉の熱源または熱風として利用することもできる。
特に、焼成設備が複数の焼成炉を有する場合には、焼成温度が低い焼成炉からの排ガスを焼成温度が高い焼成炉の加熱ジャケット(燃焼室)へ送り、熱源として用いるのが好ましい。これは、焼成温度が低い焼成炉からの排ガスには多くの未燃焼有機物が含まれるため、高温側の焼成炉の加熱ジャケット(燃焼室)内で過剰空気と接触させるだけで、発火、燃焼するからである。条件を整えれば、高温側の焼成炉の加熱ジャケット(燃焼室)に供給される全ての熱源を低温側焼成炉からの排ガスで賄うことが可能となる。
例えば、通常の焼成施設または焼却施設においては、ダイオキシン対策のために再燃室を設けて排ガスを800℃以上に燃焼させることが行われているが、800℃以上での焼成が行われる焼成炉であれば、その加熱ジャケットを焼成のための燃焼室と共に、再燃室としても利用することができる。
以上、主として、間接加熱方式、即ち、熱風または火炎を外部に設けられた燃焼室に供給し、その熱により間接的に製紙スラッジを加熱する方式を採用する焼成炉または乾燥炉における排ガスの再利用方法について述べたが、直接加熱方式、即ち、熱風または火炎を炉内に吹き込み、直接的に製紙スラッジを加熱する方式を採用する焼成炉または乾燥炉の場合には、排ガスを燃焼室ではなく、炉内に直接吹き込むことにより、熱源として利用することができる。
なお、回転胴内への空気の供給は、給気口6から空気を吹き込む、吹き込み方式により行ってもよい。但し、上記のように、排気に伴う減圧作用で給気口6より外部の空気が回転胴1内に吸入する方式を採用すれば、排気量によって空気供給量を容易に制御できると共に、安定した空気流によって長い回転胴の全長にわたって空気を確実に行き渡らせることができるので望ましい。また、吹き込み方式および吸入方式を併用することも好ましい。
(c)望ましい空気中の酸素量:製紙スラッジに含まれる有機成分の完全燃焼に要する理論酸素量の1.1〜5倍
空気供給量が少ない場合には、回転胴内を過剰空気雰囲気にすることが困難になり、有機成分の一部の燃焼が不十分となって、その炭化物が残存して焼成物の白色度が低下するおそれがある。一方、空気供給量が過剰な場合には、供給空気によって回転胴内が過度に冷やされ、燃焼温度を維持するためのエネルギーコストが嵩むことになる。従って、供給する空気中の酸素量は、製紙スラッジに含まれる有機成分の完全燃焼に要する理論酸素量の1.1〜5倍とするのが望ましい。特に望ましい下限は2倍程度である。なお、この燃焼用の空気は、有機成分を充分に燃焼させる酸素を含んでおればよいから、通常の外気よりも二酸化炭素の含有量が多いものでも支障はない。
(d)製紙スラッジの移送
なお、回転胴1は、実際には、原料供給口1aから焼成物排出口1bに向かって非常に緩やかな下り勾配を有し、この回転胴1の下り勾配と回転により、内部の被処理物が重力作用で原料供給口1aから焼成物排出口1bへ徐々に移送されるようになっている。
原料投入口4から投入された製紙スラッジSは、実線矢印bで示すように、原料供給手段5によって回転胴1の原料供給口1aに送り込まれ、回転胴1の回転によって焼成物排出口1bへ移送する過程で焼成される。このとき、製紙スラッジS中の有機成分が燃焼される。
(e)望ましい加熱方式
本発明における筒型熱処理炉の加熱方式としては、直接的加熱方式(内熱式)よりも、図2に示すような間接的加熱方式(外熱式)の方が好ましい。すなわち、直接的加熱方式では、処理炉内で熱源ガスを燃焼させるのに大量の空気(酸素)を消費するため、製紙スラッジSに含まれる有機成分の燃焼が空気不足で不完全になる懸念がある上、熱源ガスの燃焼によって炉内温度(スラッジ温度)の制御が非常に困難になる。これに対し、間接的加熱方式では、熱源のために炉内空気を消費することがないから、炉内を過剰空気雰囲気に確実に設定できることに加え、外部からの加熱度合を自在に変化できるので、炉内温度の制御が極めて容易になる。
上記の間接的加熱方式における加熱手段としては、電気的ヒータや誘導電流による加熱も可能ではある。より好ましいのは、エネルギーコスト低減のため、灯油、重油などの燃焼ガス、既存の焼却設備から排出される燃焼排ガス、高温空気、過熱水蒸気などを加熱ジャケット2内に導入する方法、処理炉の周壁にガスバーナーからの燃焼ガスを吹き付けて加熱する方法などである。例えば、炉本体内での焼成処理を経た高温の排気、前処理の乾燥工程からの燃焼排ガスなども、間接的加熱方式の熱媒、熱源の一部として利用できる。
本発明における筒型熱処理炉においては、回転胴1が数〜数十メートルの長さに及ぶ場合もある。そのような場合には、回転胴全体を所望の焼成温度に安定して維持するため、図2に示すように、複数の間接的加熱手段を設けるのがよい。
(f)回転胴の形状
より多くの製紙スラッジを焼成処理するためには、回転胴への製紙スラッジの充填率を増やすことが重要であるが、あまりに多くの製紙スラッジを回転胴内に供給すると、回転胴内における製紙スラッジの積層、堆積の度合いが大きくなり過ぎて有機成分の燃焼が不十分となり、高品質の無機粒子を高効率で得ることが難しくなる。
本発明は、筒型熱処理炉K1の回転胴1内が横長の回転胴の長手方向に対して直交する方向の断面(径方向断面)において複数の区分室に分割されており、この複数の区分室に製紙スラッジSを分散配置した状態で焼成することによりこの問題を解決するものである。
(g)望ましい回転胴のサイズ
回転胴1の内径は、0.5〜10mとすることが好ましい。回転胴1の内径が0.5m未満では効率的な焼成を行えず、一方、回転胴1の内径が10mを超える場合には、筒型熱処理炉K1が過大な装置となり、実用的ではない。望ましい上限は5mである。
(h)回転胴および多分割構造部の望ましい材質と形状
回転胴および多分割構造部は、1000℃程度という焼成温度に充分に耐え得るとともに、酸性またはアルカリ性に耐え得る材質であることが望ましく、例えば、ステンレス、チタン等の耐熱性および耐腐食性を有する金属材料が好適である。
特に、造粒した製紙スラッジを焼成する場合には、パンチングメタルのような穴明きの金属板で多分割構造部の隔壁を構成することが好ましい。穴明き金属板であれば、多分割構造部の各区分室内に導入された製紙スラッジSに空気(酸素)を行き渡らせやすいからである。金属板の穴の形状、大きさには特に限定はなく、造粒成形された製紙スラッジS粒子が穴明き金属板に設けられた穴から別の区分室にこぼれ落ちないような大きさであればよく、また、丸形、三角形、四角形、スリット形などの各種穴形状の穴明き金属板を使用することができる。
(i)望ましい製紙スラッジの充填率:5〜50%
回転胴の回転軸に垂直な断面において、製紙スラッジの充填率(製紙スラッジが占める面積/区分室の面積の合計×100)は、5%未満の場合、有機成分の燃焼を行いやすいが、処理効率が悪くなる。一方、充填率が50%を超えると、製紙スラッジの積層、堆積の度合いが大きくなり過ぎて、製紙スラッジの焼成効率が低下し、高品質の無機粒子を高効率で得ることが難しくなる。有機成分の燃焼が不十分となる。従って、充填率は、5〜50%とするのが望ましい。望ましい下限は15%である。
(j)焼成温度
焼成温度が600℃未満では、インキ由来のカーボンブラックなど、発火、燃焼しにくい有機成分を確実に燃焼除去するのが難しい。一方、焼成温度が850℃を超えると、ゲーレナイトと呼ばれる硬質焼結物が発生し、製紙機械設備を磨耗させて操業不安定化の要因となるおそれがある。このため、焼成温度は、600〜850℃とするのが望ましい。望ましい上限は、800℃である。
(k)望ましい炭酸カルシウムの分解率:50%以上
製紙スラッジの焼成処理においては、原料の製紙スラッジに含まれていた炭酸カルシウムが熱分解(脱炭酸)して酸化カルシウムに変化する。その分解率は、焼成処理前の炭酸カルシウム全量の50%以上とするのが好ましい。焼成処理における炭酸カルシウムの分解率を50%未満にしようとすると、600℃以上の温度でスラッジ中の有機成分を燃焼除去させながら、その燃焼温度よりも低い525℃程度から生じる炭酸カルシウムの熱分解を抑制せざるを得ず、その処理は非効率になってしまう。
従って、本発明の無機粒子の製造方法においては、炭酸カルシウム含有量は、後述の後処理工程で容易に増加できることから、焼成処理においては、炭酸カルシウムの熱分解が進んでも良いこととし、有機成分の燃焼除去を優先的に行うこととした。
(l)焼成炉
本発明では、筒型熱処理炉により製紙スラッジの焼成を行うこととしているが、焼成工程の全部又は一部を本発明方法により実施すればよい。従って、焼成工程に用いる焼成炉として、本発明で用いる筒型熱処理炉と、筒型熱処理炉以外の各種焼成処理炉とを組合せて用いることができる。組み合わせて用いることができる焼成処理炉としては、例えば、回転キルン炉、スクリューキルン炉、流動床炉、ストーカ炉、縦型円筒路(タワーキルン)、サイクロン炉、半乾留・負圧式燃焼式炉、炭化炉(低酸素雰囲気下焼成炉)などが挙げられる。これらの焼成処理炉は、前焼成工程または後焼成工程としても用いることができる。
ここで、熱処理工程は、少なくとも2段階に設定することで、製紙スラッジに含まれる有機成分を効率的に燃焼させやすく、製紙材料に適した無機粒子を得やすくなる。すなわち、熱処理工程は、下記の条件の一次燃焼工程および二次燃焼工程を含むことが望ましい。
一次燃焼工程:加熱炉内から燃焼ガスを強制的に排出しつつ、650℃以下の温度で原料を加熱する工程
二次燃焼工程:加熱炉内から燃焼ガスを強制的に排出しつつ、700〜850℃の温度で原料を加熱する工程
まず、一次燃焼工程では、加熱炉から燃焼ガスを強制的に排出することにより、炉内を過剰空気雰囲気、即ち、有機成分の燃焼に対して充分な酸素量を与えて不完全燃焼を生じさせない空気雰囲気とするとともに、650℃以下という比較的低温の燃焼条件とすることが重要である。このような条件であれば、製紙スラッジ中の易燃焼性有機成分が、分子中の官能基を起点として熱分解・発火し、炭化することなく燃焼して消失しやすいからである。
ここで、一次燃焼工程の原料温度が650℃を超えると、易燃焼性有機成分が炭化して難燃焼性有機成分に変化し、燃焼効率が悪化させる場合がある。従って、一次燃焼工程における原料の加熱温度の上限は650℃とすることが望ましい。一次燃焼工程における原料の加熱温度のより好ましい上限は、630℃である。一方、この一次燃焼工程の原料の加熱温度が低過ぎると、易燃焼性有機成分の熱分解・発火も困難となり、燃焼効率が悪化する。従って、一次燃焼工程における原料の加熱温度の下限を250℃とすることが望ましい。一次燃焼工程における原料の加熱温度のより好ましい下限は、350℃である。
一次燃焼工程の燃焼時間は、10分以上5時間以下とすることが好ましい。一次燃焼工程の燃焼時間が10分未満では、製紙スラッジ中の易燃焼性有機成分の燃焼除去が不充分になる恐れがある。全ての易燃焼性有機成分が燃焼除去されるのに充分な時間をかけることが重要である。しかし、製紙スラッジ中の易燃焼性有機成分の燃焼は5時間でほぼ完了するため、5時間を超える燃焼はエネルギーの無駄になる。一次燃焼工程の燃焼時間の下限は、15分とするのがより好ましく、上限は、2時間とするのがより好ましい。
次に、二次燃焼工程では、加熱炉内から燃焼ガスを強制的に排出することにより、炉内を過剰空気雰囲気とした状態で、700〜850℃という高温の燃焼を実施するのがよい。このような条件で原料を燃焼させれば、一次燃焼工程では燃焼しきらずに残っていた難燃焼性有機成分をも確実に燃焼して消失させやすいからである。
ここで、二次燃焼工程における原料温度が700℃未満になると、難燃焼性有機成分の燃焼に長時間を要し、燃焼効率が悪化しやすくなる。逆に、原料温度が850℃を超える高温燃焼になった場合は、ゲーレナイトが生成しやすくなる。従って、二次燃焼工程における原料の加熱温度は、700〜850℃とするのが望ましい。
二次燃焼工程の燃焼時間は、10分以上5時間以下とすることが好ましい。二次燃焼工程の燃焼時間が10分未満では、製紙スラッジ中の易燃焼性有機成分の燃焼除去が不充分になる恐れがある。全ての易燃焼性有機成分が燃焼除去されるのに充分な時間をかけることが重要である。しかし、製紙スラッジ中の易燃焼性有機成分の燃焼は5時間でほぼ完了するため、5時間を超える燃焼はエネルギーの無駄になる。二次燃焼工程の燃焼時間の下限は、20分とするのがより好ましく、上限は、2時間とするのがより好ましい。そして、一次燃焼工程と二次燃焼工程の燃焼時間の比率は、一次燃焼工程/二次燃焼工程で1/10〜10/1の範囲とすることが好ましい。
このような2段階の燃焼工程は、易燃焼性有機成分を燃焼しにくい炭化物に変化させずに燃焼除去できるとともに、製紙スラッジ中の有機成分全体の燃焼除去も短時間で効率よく行えるという利点がある。そして、このような燃焼工程により得られる焼成物は、煤、炭などの未燃焼の有機成分を含まず、白色度が高く、製紙用材料に好適に利用できるものとなる。
熱処理工程は、上記の一次燃焼工程および二次燃焼工程からなる2段階で行う以外に、これら一次燃焼工程から二次燃焼工程への移行区間としての燃焼工程を挟んだり、一次燃焼工程および二次燃焼工程の一方または両方を更に燃焼温度の異なる複数の燃焼工程に分けたりして、3段階以上とすることも可能である。
3.原料となる製紙スラッジおよび前処理
原料となる製紙スラッジは、そのまま、または、後段の脱水等の前処理を実施した後、本発明の無機粒子の製造方法に供される。
(a)原料スラッジ
原料の製紙スラッジは、パルプ化工程、紙製造工程、古紙再生工程などの各種工程から排出される。古紙再生工程からのスラッジについては、古紙脱墨工程の加圧浮上(フローテーション、または浮選)および/または洗浄によって古紙パルプから分離排出される脱墨廃液に対して凝集および脱水処理を行い、脱墨排水中の固形分を脱墨スラッジとして回収することが推奨される。また、白色度の低い古紙原料からスラッジを回収する場合には、古紙再生工程における脱墨処理及び浮選処理を充分に行い、カーボンブラックなどを含むインク粒子をできるだけ除去しておくのがよく、必要に応じて複数回のスラッジの加圧浮上工程および/または洗浄工程を追加することもできる。また、古紙脱墨工程から回収する脱墨スラッジについては、上質古紙、新聞古紙、雑誌(塗工紙系)古紙などに分別して古紙種類毎の脱墨スラッジを調製し、必要に応じてこれらの古紙種類別脱墨古紙を単独、または混合して適宜原料スラッジとして用いることができる。
製紙スラッジには、パルプ等の繊維成分、澱粉および合成樹脂接着剤を主とする有機成分、製紙用填料および塗工紙用顔料などの無機物などが利用されずに廃水中へ移行したもの、パルプ化工程などで発生するリグニンおよび微細繊維、古紙由来の製紙用填料および印刷インキ、生物廃水処理工程から生じる余剰汚泥などからなり、古紙処理工程において印刷インキなどを除去する脱墨工程および製紙用原料を回収して洗浄する洗浄工程に由来する固形成分などを含んでいる。この製紙スラッジの一部には、再利用困難な低級古紙およびそれに付随するプラスチックを主としたRPF(Refused Paper & Plastic Fuel)を含まれることがあるが、本発明においては、これらいずれの製紙スラッジをも、単独または適宜混合して原料とすることができる。
(b)製紙スラッジの組成
原料として用いることができる製紙スラッジ中の無機成分(灰分)は、製紙用填料または塗工紙用顔料に由来するカオリン(クレー)および炭酸カルシウムを主成分とし、これらが無機成分全体の約80〜95質量%を占めており、その他にタルク、二酸化チタンなどが少量混在しているものである。
上記カオリンと炭酸カルシウムとの比率は、処理する古紙の種類などによって多少のばらつきはあるが、概ねカオリン/炭酸カルシウムの質量比で(20/80)〜(80/20)の範囲である。また、上記無機成分(灰分)中のカルシウム(CaO換算)、アルミニウム(Al換算)およびケイ素(SiO換算)のそれぞれの含有比率(カルシウム/アルミニウム/ケイ素)は、(13〜73)/(12〜40)/(15〜47)である。
製紙スラッジ中の有機成分と無機成分との含有比率については、処理する古紙の種類や脱墨工程の程度によって多少は変動するが、概ね無機成分/有機成分の質量比で(30/70)〜(80/20)の範囲である。
(c)前処理1(脱水)
脱水は、製紙スラッジを含有する排水を濾過、遠心分離、加圧脱水、圧搾等して、所要の含水率の製紙スラッジを得る工程である。好適な濾過装置としては、ロータリースクリーンと称される濾過装置があり、また脱水装置としては、スクリュープレスと称される加圧・圧搾脱水装置があって、これらの濾過装置、圧搾装置を単独、または適宜組合せて用いることができる。また、遠心脱水装置としては、デカンタ型遠心脱水装置がある。
(c)前処理2(乾燥)
乾燥は、製紙スラッジの水分を蒸発させて固形分濃度を高める工程である。本発明においては、焼成処理する際の製紙スラッジの固形分濃度は、特に限定されない。但し、固形分濃度は、熱エネルギー効率を高め、また装置をコンパクト化するためには、なるべく高い方がよい。特に、70質量%以上とすることが好ましい。前記の脱水工程のみでは、脱水装置機の能力によって異なるものの、固形分濃度は概ね5〜60質量%程度であるため、更に乾燥処理して固形分濃度を高めることが推奨される。
このような乾燥工程に用いる乾燥機としては、特に限定はなく、例えば、直接加熱型回転キルン、間接加熱型回転キルン、気流乾燥機、流動層乾燥機、回転・通気回転乾燥機(サイクロン)等を用いることができる。また、これら乾燥機の熱源として前述した焼成処理の排熱を使用することにより、エネルギーコストを低減することが可能である。
乾燥処理の温度は、気流乾燥機や回転・通気回転乾燥機のような熱風を利用して乾燥させる装置においては、スラッジの燃焼や炭化を防止するために熱風温度を600℃以下とすることが好ましく、250℃以下とすることが特に好ましい。この熱風温度が高過ぎては、スラッジが発火し、その際の焼成条件が適切でなければ、易燃焼性の有機成分が炭化して難燃焼性に変化する懸念がある。また、乾燥工程においては乾燥効率を向上させるために、スラッジを細かく解すことが好ましく、撹拌機や機械式ロール等により強制的にスラッジを解し、必要に応じてスラッジを300〜2000μm程度に分級して乾燥させることが好ましい。
(d)前処理3(造粒工程)
造粒は、乾燥後の製紙スラッジを適当な手段で適度な粒子サイズに成形する工程である。本発明で原料とする製紙スラッジは、筒型熱処理炉内を移送しつつ空気(酸素)と接触して有機成分を燃焼できる形態および粒子サイズであればよい。粒子サイズが細か過ぎると堆積層が高密度化し、その層内に空気が入り込みにくくなり、一方、粗大になり過ぎると、塊状物内部まで空気が行き渡りにくくなる。いずれの場合も、有機成分の燃焼性が悪化して未燃焼炭化物による焼成物の白色度の低下を招くため、ある程度の大きさに造粒することが好ましい。
造粒手段としては、ブリケットマシン、ローラコンパクタなどの圧縮成形機、ディスクペレッターなどの押出成形機、転動造粒法、攪拌造粒法等によってペレット造粒する一般的な造粒装置を用いることができる。また、スクリューフィーダーなどの剪断作用のある搬送装置を用い、脱水処理後の製紙スラッジを乾燥装置または筒型熱処理炉置へ投入する際に、搬送を兼ねて造粒することができる。更に、乾燥工程中での製紙スラッジの搬送運動を利用して造粒することも可能である。
造粒後のスラッジ粒子のサイズは、長さ又は直径で2〜30mm程度の範囲が好適である。2mm未満では、焼成時の空気との接触が不十分となり、30mmを越えると中心部まで完全に燃焼させることが困難となるおそれがある。より好ましい上限は20mmである。造粒の粒子形状としては、円柱状、球状、楕円、三角形、その他の多角形や、凹凸を有するもの等、特に制約はない。
4.後処理
前記の方法により得た焼成物は、原料スラッジがカオリン(クレー)を含有しているため、カオリンが焼結凝集した焼成カオリン(メタカオリン)に類似した「焼成カオリン類似態様」の多孔質凝集体となっており、このため嵩高性、吸油性および不透明性に優れる特性を有している。したがって、そのまま、または後述の後処理を実施した後に、粉砕され、無機粒子として使用される。
(a)懸濁液化および炭酸化
焼成物を水に混合・攪拌して懸濁液とし、この懸濁液中に炭酸ガスを吹き込んで焼成物を炭酸化処理する。原料の製紙スラッジ中の炭酸カルシウムは、焼成過程において酸化カルシウム(CaO)となるが、この酸化カルシウムを含む無機粒子は、製紙用填料、塗工紙用顔料等の製紙用材料に用いると、アルカリ性が非常に強くなったり、粘度の上昇や顔料の分散不良等の問題が生じたりする。このため、焼成後には、懸濁液化で酸化カルシウムを水酸化カルシウム〔Ca(OH)〕に変換し、更に炭酸化処理して炭酸カルシウムに戻すのが望ましい。
懸濁液化工程には、特に条件的な制約はない。但し、処理温度が高すぎるとカルシウムイオンが溶出し難くなり、後続の炭酸化処理を行っても、カルシウムイオンの影響を抑えることができず、スラリー分散性が悪くなる。従って、処理温度は70℃以下とするのが好ましい。より好ましくは50℃以下、さらに好ましいのは30℃以下である。因みに、懸濁液化時間は、9時間以下とするのが好ましい。より好ましいのは6時間以下、さらに好ましいのは3時間以下である。また、懸濁液の固形分濃度は、5〜20質量%とするのが好ましい。後続の炭酸化処理を効率的に行い、また懸濁液の粘度を低く維持して流動攪拌性および送液性を良好に維持するためである。
懸濁液に対しては、本発明のスラッジ焼成物の他に、必要に応じて酸化カルシウム(CaO:生石灰)または水酸化カルシウム〔Ca(OH):消石灰〕を添加してスラッジ焼成物と水酸化カルシウムの所定固形分濃度の混合懸濁液とすることもできる。この場合、酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムは、消和後の形態である水酸化カルシウム〔Ca(OH):消石灰〕として、例えば、スラッジ焼成物100重量部に対して最大100重量部(スラッジ:水酸化カルシウム=50:50)まで添加することができる。100重量部を超えて水酸化カルシウムを添加することもできるが、消和懸濁液中のスラッジ焼成物の配合率が少なくなり、スラッジ利用が進まなくなるため好ましくない。
炭酸化は、焼成物の懸濁液に炭酸ガスを吹き込んで行う。炭酸ガスとしては、高純度の二酸化炭素ガスを用いることができるが、不経済である。一方、二酸化炭素濃度が低過ぎると、炭酸化に長時間を要し、それだけ無機粒子の生産性が低下する。従って、吹き込む炭酸ガス中の二酸化炭素濃度は5〜40容量%とするのが好ましい。より好ましい下限は10容量%である。また好ましい上限は35容量%である。このような二酸化炭素含有ガスとしては、例えば、スラッジ燃焼排ガス、石灰石焼成排ガス、石灰焼成排ガス、ゴミ焼却排ガス、発電ボイラ排ガスまたはパルプ製造工程で用いられる苛性化炭酸カルシウム焼成キルンからの排出ガス等、種々の燃焼排ガスを適当な手段で除塵して用いることができる。
炭酸化工程での炭酸ガスの吹き込み量は、焼成物懸濁液中の水酸化カルシウム固形分1kgに対し、二酸化炭素ガスとして0.5〜15L/分の割合が好適である。吹き込み量が少な過ぎると、炭酸化に時間を要して無機粒子の生産性を低下させ、多過ぎると動力負荷が大きくなって不経済となる。また、炭酸化の際の焼成物懸濁液の温度(炭酸化反応温度)は、70℃以下とするのが望ましい。高過ぎると二酸化炭素ガスが懸濁液中に充分に溶解しなくなって炭酸化反応の効率低下を招く。より好ましいのは50℃以下、さらに好ましいのは40℃以下である。
炭酸化では、焼成物懸濁液中に所望の結晶形状を持つ炭酸カルシウムの種結晶を添加してもよい。また、前記炭酸カルシウムの種結晶を添加しないで、炭酸化処理における焼成物の炭酸化反応効率を最優先し、無機粒子の粒子形状を、あえて針状、紡錘状、柱状などの特定の粒子形状を有さない塊粒状とすることもできる。
なお、通常、炭酸化処理後の無機粒子は、炭酸化処理によって生じた微細な炭酸カルシウムの1次粒子が凝集して2次粒子(凝集粒子)を形成し、製紙用填料に適した粒子径となっている。従って、この懸濁液をそのまま製紙用填料としてパルプなどの製紙用原材料に配合して用いることもできる。
炭酸化処理物の懸濁液は、そのまま、または液体サイクロンを用いた分級処理を行った後、脱水前に振動篩等の篩でろ過処理するのがよい。ろ過処理を実施すれば、炭酸化処理物中に混入するα−クオーツなどの珪素を含む粒子や粗大粒子が除去され、抄紙用ワイヤーの摩耗を低減できる。また、ろ過処理前に液体サイクロンによる分級処理を行えば、後続するろ過処理の篩の目詰まりを防止できる。
(b)脱水、分散および粉砕
炭酸化処理物は、脱水した後、分散および粉砕され、塗工紙用顔料として適した微細な白色の無機粒子の高濃度スラリーとなる。その脱水は、前処理における脱水と同様に、炭酸化処理物の懸濁液から、濾過、遠心分離、加圧脱水、圧搾等により、所要の含水率の炭酸化処理物とする工程である。好適な脱水装置としては、フィルタープレスと称される圧搾濾過装置があり、炭酸化処理物の脱水ケーキを得ることができる。
分散は、脱水されたケーキ状の炭酸化処理物に水分を加えて高濃度スラリーとする工程である。その分散操作には、通常の分散処理で行われている攪拌、解砕、分散などの各種手法を採用できる。この分散操作に際して分散剤を添加することにより、無機粒子が良好な分散状態になり、製紙用材料としての品質が向上すると共に、取り扱いやすくなる。分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成高分子系の分散剤など、製紙用材料の製造の際に用いられる一般的な分散剤を使用できる。
粉砕は、分散後の無機粒子を粉砕して微粒子化することにより、塗工紙用顔料として好適な高品質の無機粒子とする工程である。粉砕装置としては、製紙用材料の製造において一般的に用いられるサンドミル、湿式ボールミル、振動ミル、攪拌槽型ミル、流通管型ミル、コボールミルなどを使用できる。
後処理後に得られた無機粒子の組成は、無機粒子を配合した紙の不透明性や被覆性を向上させるべく、焼成カオリン(メタカオリン)と炭酸カルシウムの2成分で80%以上とすることが好ましい。無機粒子を好適な組成とするためには、各種スラッジを必要に応じて混合し、前記組成となるように各種スラッジ配合率を調整することが好ましい。
後処理工程後に得られた無機粒子の懸濁液は、pH11以下とすることが好ましい。これは、無機粒子懸濁液中に遊離したカルシウムイオン(Ca2+)を低減することで、塗被液の分散状態の悪化を防ぐことができるからである。また、塗被液、原紙のアルカリ性を低減するから、アルカリによる紙の変色(アルカリ焼け)等の問題を改善できる。pHの調整は、炭酸化における炭酸ガス吹込み量の調整に加えて、さらに分散工程や粉砕工程における炭酸ガス吹込みなどによっても調整できる。
後処理工程後に得られた無機粒子の大きさ(粒子径)は、レーザー回折粒度分布測定による平均粒子径で、0.1〜20μmとすることが好ましい。塗工用顔料として用いる場合には下限を0.3μm、上限を5μmとするのが特に好ましい。また、内添用製紙顔料として用いる場合には、下限を3μm、上限を15μmとすることが特に好ましい。この平均粒子径は、製紙用填料および塗工用顔料として、抄紙の際のワイヤー歩留りならびに紙製品に仕上げた際の不透明性、白色度、平滑性および印刷適性に優れる品質が得られるように、操業および品質上バランスされた粒子径を選んだものである。したがって、無機粒子の平均粒子径を前記粒子径の範囲とすることにより、操業において、従来の製紙用填料および塗工用顔料と同様に取り扱うことができ、また無機粒子を内添した原紙および無機粒子を塗工した塗被紙の品質についても、従来の製紙用填料および塗工用顔料と概ね同等の品質を発現させることができる。
無機粒子の平均粒子径が0.1μm未満のような微細な粒子になると、不透明性、白色度および平滑性等の改善に対しては有効ではあるが、反面、製紙用填料として用いる場合にワイヤー歩留りが悪くなることがある。このために、多量の填料が必要となり、操業性が不安定になる場合がある。また、塗工用顔料として用いる場合に充分な塗工層強度を発現させるためには著しく多量の接着剤が必要となる場合がある。他方、平均粒子径が20μmを越える無機粒子を製紙用填料として用いた場合には、填料のワイヤー歩留りは良くなるが、反面、ワイヤー摩耗性が悪化するおそれがある。また、上記粗大な無機粒子を塗工用顔料として用いた場合には、塗工紙製品の平滑性や光沢が低下し、印刷適性を低下させることがある。
無機粒子を所望の粒子径とするためには、脱水工程後に分散工程および粉砕工程を設けることが好ましい。ただし、分散処理後の無機粒子の平均粒子径が所望の範囲になる場合は、粉砕工程を行わなくてもよい。この場合、分散処理後の無機粒子の分散液をそのまま製紙用填料または塗工用顔料として使用することになる。
5.本発明方法により得られる無機粒子の用途
本発明の無機粒子は、不透明度、平滑度、高吸油度、およびインキ乾燥性に優れ、そのまま製紙用填料、塗工紙用顔料などの製紙用材料として使用できる。
本発明の無機粒子の特徴を最大限に有効活用できる用途としては、不透明度および平滑度が発現し難く、白色度も要求されるオフセット印刷、グラビア印刷等の各種印刷用紙がある。本発明の無機粒子の用途としては、例えば、(1)坪量が75g/m以下の非塗工印刷用紙または塗工用原紙の内添填料(以下、「第1の用途」と呼ぶ。)、(2)坪量が75g/m以下の片面あたり1層塗工された微塗工〜軽量コート紙(A3コート紙、B3コート紙)の塗工用顔料(以下、「第2の用途」と呼ぶ。)の他、嵩高性、高被覆性(平滑性)、インキ乾燥性等が要求される洋紙として、(3)片面あたり2層塗工のコート紙(A2コート紙、B2コート紙)、アート紙(A0コート紙、B0コート紙、A1コート紙、B1コート紙)などの塗工用顔料(以下、「第3の用途」と呼ぶ。)などが挙げられる。
以下に、具体例を挙げて本発明を説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断らない限り、「部」および「%」は、それぞれ「質量部」および「質量%」を意味する。
古紙処理設備を有する製紙工場における雑誌古紙主体の古紙脱墨工程において、浮遊選別法(フローテーション法)によって古紙パルプから浮上分離除去された泡沫状の脱墨浮選廃液に、凝集剤を添加して廃液中の固形分を凝集させた後に、ロータリースクリーンおよびスクリュープレスに順次通液して、固形分約50%の製紙スラッジ(脱墨スラッジ)を回収した。その後、乾燥機を用いて固形分約75%になるように乾燥し、次いでディスクペレッターを用いて直径約12mm、長さ約15mmのペレットに造粒成形して、前処理を終えた。
この処理後の製紙スラッジ造粒物を、図2に示すような間接加熱式の回転式キルン炉(回転胴の内径500mm、長さ3000mm)を用いて一次焼成した。
この一次焼成では、ホッパを用いて原料の製紙スラッジ造粒物を200Kg/hの供給速度で原料投入口4から供給し、原料供給手段5であるスクリューフィーダーによって回転胴1の原料供給口1aに送り込み、回転胴1内を移送しつつ、焼成を行った。この焼成は、加熱バーナーからの燃焼ガスを熱源として加熱ジャケット2への燃焼ガスの導入量で熱処理温度を制御し、スラッジ温度600℃で処理時間(スラッジ滞留時間)を約30分に設定した。一方、排気手段9の排気ファンによって回転胴1内から燃焼排ガスを5600L/分(空気温度20℃換算)で排出し、これに伴う減圧作用で排気口3から排出される排ガスと同量の外気を給気口6から吸入して、もって回転胴1内全体を常に過剰空気雰囲気に維持した。
次いで、一次焼成によって得られた焼成処理物を、一次焼成と同様の回転式キルン炉(図2)を用いた二次焼成に供した。
この2次焼成では、ホッパを用いてスラッジの1次焼成処理物を100Kg/hの供給速度で原料投入口4から供給し、原料供給手段5であるスクリューフィーダーによって回転胴1の原料供給口1aに送り込み、回転胴1内を移送しつつ、焼成を行った。この焼成は、加熱バーナーからの燃焼ガスを熱源として加熱ジャケット2への燃焼ガスの導入量で熱処理温度を制御し、スラッジ温度800℃で処理時間(スラッジ滞留時間)を約60分に設定した。一方、排気手段9の排気ファンによって回転胴1内から燃焼排ガスを500L/分(空気温度20℃換算)で排出し、これに伴う減圧作用で排気口3から排出される排ガスと同量の外気を給気口6から吸入し、もって回転胴1内全体を常に過剰空気雰囲気に維持した条件で焼成して、無機粒子を得た。
次いで、上記の焼成物を懸濁液化槽(消和槽)を用いて20℃の水と混合し、温度を20℃に保持しながら60分間攪拌して、固形分濃度が約12%の焼成物懸濁液を調製した。その後、この焼成物懸濁液500kgを炭酸化反応槽に仕込み、この炭酸化反応槽の温度を40℃に保持しつつ、懸濁液中に15容量%の二酸化炭素含有ガスを800L/分で吹き込みながら150分間攪拌を行って懸濁液状の炭酸化処理物を得た。この炭酸化処理後の無機粒子の組成をX線回折で調べた結果、焼成処理によって分解されていた炭酸カルシウムの全量が炭酸カルシウムに転化していた。また、炭酸化処理後の無機粒子の平均粒子径を測定したところ12.8μmで、製紙用填料に適した粒子径であった。
さらに、前記炭酸化処理にて得られた炭酸化処理物の懸濁液をフィルタープレスで脱水処理し、得られた固形分濃度が約52%のケーキ状の炭酸化処理物をインテンシブミキサーにて水に分散させることにより、固形分濃度が約48%の白色の無機粒子スラリーを調製した。なお、この分散させる水には、分散剤としてポリアクリル酸系分散剤(商品名:アロンT−50、東亜合成株式会社製)を炭酸化処理物の固形分100質量部に対して1.5質量部添加した。そして、最後に横型ビーズミルを用いて上記の無機粒子スラリーを湿式粉砕し、平均粒子径が1.5μmで、塗工紙用顔料に適した無機粒子を得た。
(比較例1)
比較例1では、上記の焼成に際し、一次焼成炉からの排ガスは、消煙、冷却した後、大気中に放出した。二次焼成炉からの排ガスについては乾燥炉の燃焼室に導入した。乾燥炉は、乾燥に必要な温度になるまではバーナーで加熱され、焼成設備の運転開始後は、二次焼成炉からの排ガスの熱のみで乾燥を実施した。
(本発明例1)
本発明例1では、上記の焼成に際し、一次焼成炉からの排ガスを二次焼成炉の燃焼室に送り込み、焼成を行った。即ち、二次焼成炉を加熱し、一定時間経過後、焼成が安定した時点で、二次焼成炉のバーナーを消火し、一次焼成炉からの排ガスのみで二次焼成炉の焼成を行った。また、二次焼成炉からの排ガスは乾燥炉の燃焼室に導入した。乾燥炉は、乾燥に必要な温度になるまではバーナーで加熱され、焼成設備の運転開始後は、二次焼成炉からの排ガスの熱のみで乾燥を実施した。その結果、この焼成設備においては、一次焼成炉に投入される製紙スラッジ造粒物の着火のためのバーナーのみを使用し、その他のバーナーを全て消火することができた。一次焼成炉の排ガスの再利用をしない比較例1と比較して、バーナーに要する燃料を1/4以下に低減することができた。
(本発明例2)
排気手段9および排気循環ブロア10を原料投入口4側から給気口6側に移設して、回転胴内1における空気の流れを原料供給口1aから焼成物排出口1bへ流れる方向(並流:図2に示した矢印aと逆方向)としたことを除き、本発明例1と同様の方法により無機粒子を得た。その結果、一次焼成炉の排ガスの再利用をしない比較例1と比較して、バーナーに要する燃料を1/4を超え1/3以下に低減することができた。
(比較例2)
本発明例1の間接加熱式の回転式キルン炉を直接加熱式の回転式キルン炉(回転胴の内径500mm、長さ3000mm)に変更したこと、および、一次焼成炉からの排ガスを乾燥炉の燃焼室に導入したことを除き、本発明例1と同様の方法により無機粒子を得た。直接的加熱型であるのでスラッジ供給側からいわゆる燃焼用ガスバーナーで炉内を直接加熱し、その燃焼量により温度調整をおこなった。この際、炉内の温度を均一に調整することは困難であった。但し、一次焼成炉の排ガスの再利用をしない比較例1と比較して、バーナーに要する燃料を1/3を超え1/2以下に低減することができた。
このようにして得られた無機粒子の各種性能について下記の方法に従って調査した。その結果を表1に示した。
[焼成処理後の炭酸カルシウム分解率]
焼成処理後の焼成物(焼成灰)における炭酸カルシウム分解率を下記の(1)〜(7)の手順に従って求め、評価した。
(1)カルサイト炭酸カルシウムの検量線の作成
結晶構造がカルサイトの炭酸カルシウム(奥多摩工業社製:タマパール222H)に対して、内部標準物質として酸化亜鉛(キシダ化学社製:試薬特級)を、質量比1:5、1:1、5:1となるようにそれぞれ混合した。次いで、各混合物について、乳鉢を用いて充分に磨り潰したのちに、X線回折装置(マックスサイエンス社製:MO3XHF)を用いて、40KV、20mA、回折角測定範囲5〜50度の条件で測定し、カルサイト炭酸カルシウムと酸化亜鉛のそれぞれのX線回折100%ピーク面積を基にして、カルサイト炭酸カルシウムの検量線を作成した。
(2)アラゴナイト炭酸カルシウムの検量線の作成
結晶構造がアラゴナイトの炭酸カルシウム(奥多摩工業社製:タマパール123)を用いた以外は、前記カルサイト炭酸カルシウムの検量線作成と同様にして、アラゴナイト炭酸カルシウムの検量線を作成した。
(3)焼成処理前の製紙スラッジ中の炭酸カルシウムの定量
秤量した絶乾の製紙スラッジに対して、秤量した酸化亜鉛(試薬特級:前出)を添加混合した。次いで、この混合物について乳鉢を用いて充分に磨り潰したのちに、X線回折装置(MO3XHF 前出)を用いて、40KV、20mA、回折角測定範囲5〜50度の条件で測定し、酸化亜鉛に対するカルサイト炭酸カルシウム及びアラゴナイト炭酸カルシウムのX線回折100%ピーク面積を求め、前記した各炭酸カルシウムの検量線を基にして、製紙スラッジ1g中に含まれる炭酸カルシウム量(g)を算出した。
(4)製紙スラッジの灰分の測定
秤量した絶乾の製紙スラッジを、マッフル炉を用いて実施例における回転キルン炉の各焼成処理条件と同条件となるように焼成処理し、得られたスラッジ焼成物の質量を秤量し、下式によってスラッジの灰分含有量(%)を測定した。
灰分含有量(%)=(スラッジ焼成物質量/絶乾の製紙スラッジ質量)×100
(5)スラッジ焼成物中の炭酸カルシウムの定量
秤量したスラッジ焼成物に対して、秤量した酸化亜鉛(試薬特級:前出)を添加混合した。次いで、該混合物について、乳鉢を用いて充分に磨り潰したのちに、X線回折装置(MO3XHF:前出)を用いて、40KV、20mA、回折角測定範囲5〜50度の条件で測定し、酸化亜鉛に対するカルサイト炭酸カルシウム及びアラゴナイト炭酸カルシウムのX線回折100%ピーク面積を求め、前記した各炭酸カルシウムの検量線を基にして、スラッジ焼成物1g中に含まれる炭酸カルシウム量(g)を算出した。
(6)焼成処理後の炭酸カルシウムの分解率
スラッジ焼成物1g中の炭酸カルシウム量(g)をA、製紙スラッジ1g中の炭酸カルシウム量(g)をB、灰分含有量(%)をCとし、下式によって焼成処理後の炭酸カルシウムの分解率を算出した。
炭酸カルシウム分解率(%)=100−〔A×(C/100)〕÷B×100
[焼成時のエネルギーコスト]
一次焼成炉の排ガスの再利用をしない比較例1の方法で必要なエネルギーコストを1とした場合に、エネルギーコストを1/4以下に低減することができたものを「◎」、1/4を超え1/3以下に低減することができたものを「○」、1/3を超え1/2以下に低減することができたものを「△」として評価した。
[白色度]
懸濁液の状態の無機粒子を120℃乾燥機で乾燥させて無機粒子の乾燥物を調製し、この無機粒子乾燥物約10gを乳鉢で粗い粒子がなくなるまで磨り潰した後、粉体錠剤成形機(理化学電気工業社製 Cat9302/30型)を用いて圧力100kNにて30秒加圧成形した。次いで、この成形試料の白色度を分光白色度測色計(スガ試験機社製 SC−10WT型)を用いてJIS P 8148(2001年)に準拠して測定した。
[無機粒子分散液のワイヤー磨耗度]
得られた無機粒子の固形分濃度10%の分散液を、ワイヤー摩耗試験機(王子工営製)を使用して、ポンプ循環させながら、試験条件(加重=650g,ワイヤー=プラスチックワイヤ/SS−40…日本フィルコン社製を使用,試験時間=3時間)で摩耗度試験を行い、減量したワイヤーの重量(mg)をもって、ワイヤー摩耗度とした。数値が大きい程、ワイヤー摩耗性が大きいことを示す。
Figure 0005446284
表1に示すように、排ガスの再利用前の無機粒子と排ガスの再利用後の無機粒子とでは、その性能にほとんど差異はなかった。一方、本発明例では、これまで燃焼に要した燃料を格段に低減できることが分かった。
本発明は、製紙工場から排出される製紙スラッジから製紙用材料の製紙用填料、塗工紙用顔料などとして有効利用できる高品質の白色の無機粒子を効率よく、経済的且つ大規模に製造するに際して、焼成炉から排出される排ガスを有効的に利用することができる。これにより、焼成のために必要な燃料を低減できるので、無機粒子の製造コストを低減することができる。
1 ・・・・回転胴
1a ・・・・原料供給口
1b ・・・・焼成物排出口
2 ・・・・加熱ジャケット
3 ・・・・排気口
4 ・・・・原料投入口
5 ・・・・原料供給手段
6 ・・・・・給気口
7 ・・・・・焼成物取出口
8A,8B・・間接的加熱手段
81 ・・・熱風ブロア
82 ・・・熱風放出口
9 ・・・・・排気手段
10 ・・・排気循環ブロア
a ・・・・空気が流れる方向
b ・・・・製紙スラッジの進行方向
K1・・・・・筒型熱処理炉
S ・・・・・製紙スラッジ

Claims (4)

  1. 製紙スラッジを脱水し、乾燥した後、過剰空気雰囲気下で間接的に加熱して焼成し、その後、分散し、粉砕して無機粒子を製造する方法であって、焼成設備からの未燃焼有機成分を含む排ガスを当該焼成設備または乾燥設備に送り込み、その設備内の過剰空気と接触させて熱源とすることを特徴とする無機粒子の製造方法。
  2. 焼成温度が低い焼成炉からの排ガスを焼成温度が高い焼成炉に送り込み、熱源として用いることを特徴とする請求項1に記載の無機粒子の製造方法。
  3. 製紙スラッジの移送方向とは逆向きに空気を流通させることを特徴とする請求項1または2に記載の無機粒子の製造方法。
  4. 焼成で得られた焼成物を水と混合、攪拌して懸濁液を得た後、この懸濁液に二酸化炭素を接触させて炭酸化することを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の無機粒子の製造方法。
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