以下、図面を用いて本発明を実施するための実施例を説明する。
先ず、本発明の実施例を説明する前に、本発明が採用した特徴的な技術思想について、その背景から順を追って説明する。
本発明の半導体装置が有するヘテロ接合を形成する一方の半導体となる、例えば六方晶の炭化珪素は、絶縁破壊電界強度に異方性を有しており、結晶軸の<0001>軸の方向(所謂、面方位がc面)の絶縁破壊電界強度と、<0001>軸に対して水平方向(所謂、面方位がa面)の絶縁破壊電界強度が大きく異なり、a面方向の絶縁破壊電界はc面方向の絶縁破壊電界よりも低いことが知られている。また、図1に示すように、半導体装置の技術分野で一般的に用いられている炭化珪素半導体基板200は、結晶軸の<0001>軸が基板の水平方向に対して数度傾いた状態、すなわちオフセット角を有した状態で各種素子が形成される。
このような炭化珪素半導体基板200上に、前述した背景の技術の欄で説明した従来の半導体装置を形成し、カソード電極に高電圧を印加すると、図2に示すように電界緩和領域201の端部に電界(電気力線)202が集中する。このため、電界緩和領域201に印加される電界202の内、その一部の電界202は、図2の円内で示すように、上述した絶縁破壊電界が低いa面に対して平行に印加される。これにより、絶縁破壊電界が低いa面側から電界を受ける領域を有する電界緩和領域201では、他の領域よりも低い電圧で絶縁破壊が生じやすくなる。その結果、電界緩和領域201の特定箇所にアバランシェ降伏電流が集中し、電流が集中した特定箇所が破壊に至ることになる。
そこで、本発明の半導体装置は、半導体基体と、半導体基体の主面に積層されて半導体基体とヘテロ接合を形成するヘテロ半導体領域と、ヘテロ接合の周縁部における半導体基体に形成された電界緩和領域とを有する半導体装置において、電界緩和領域の内、絶縁破壊電界強度が他の面方位に比べて低い面方位側から電界を受ける第1の電界緩和領域が電界を受けた際に、第1の電界緩和領域に流れる電流の電流流路に位置する第1のヘテロ半導体領域の抵抗値は、他の前記ヘテロ半導体領域の抵抗値よりも大きいことを特徴としている。
また、上記第1の電界緩和領域は、半導体基体の水平面に対して半導体基体を構成する半導体の結晶軸が傾斜してい方向に対して垂直な方向から電界を受けた際に流れる電流は、他の前記電界緩和領域に流れる電流よりも少ないことを特徴としている。
このような特徴的な技術思想を採用することで、カソード電極に高電圧が印加された際に、電界緩和領域の特定箇所、すなわち絶縁破壊電界が低い箇所にアバランシェ降伏電流が集中しても、絶縁破壊電界が低い面方位(a面)側から電界を受ける位置に形成された電界緩和領域に流れる電流を低減することが可能となり、電界緩和領域の破壊を防止することができる。このような本発明の技術思想を実現した実施例を以下に説明する。
図3は本発明の実施例1に係る半導体装置の構成を示す平面図であり、図4(a)は図3のA−A線に沿った断面図であり、同図(b)は図3のB−B線に沿った断面図である。図3、図4に示す実施例1の半導体装置は、炭化珪素半導体基体100に形成されたヘテロ接合タイプのダイオードとして機能する。炭化珪素半導体基体100は、主面の法線が結晶軸の<0001>軸に対して<11_20>方向へ8°程度傾斜した(オフセット角を有する)単結晶のポリタイプ4H−SiCからなる炭化珪素半導体基板1と、炭化珪素半導体基板1の第一主面側に化学気相成長堆積法等で堆積形成された炭化珪素エピタキシャル層2とで構成される。
炭化珪素半導体基体100の第一主面には、単結晶4H−SiCとバンドギャップの異なる半導体材料の例えば多結晶シリコンからなるヘテロ半導体領域3が形成され、炭化珪素半導体基体100との間でヘテロ接合が形成されている。炭化珪素エピタキシャル層2の第一主面にはヘテロ接合の端部を終端するように、図3に示すように環状にP型の炭化珪素からなる電界緩和領域4が形成されている。ヘテロ半導体領域3上には、ヘテロ半導体領域3に接するようにアノード電極5が形成され、炭化珪素半導体基板1には、炭化珪素半導体基板1に接するようにカソード電極6が形成されている。
ヘテロ半導体領域3は、図4(a)に示すように、P型の不純物濃度が高いP+ 型の多結晶シリコン層7と、多結晶シリコン層7の不純物濃度に比べてP型の不純物濃度が低いP− 型の多結晶シリコン層8(8A、8B)とから構成されている。すなわち、アノード電極5と電界緩和領域4A、4Bとの間に流れる電流の電流流路に配置形成されて、アノード電極5を挟んで対向する辺に配置形成された電界緩和領域4A、4Bに沿ったヘテロ半導体領域3の対向する周縁部は、不純物濃度が低いP− 型の多結晶シリコン層8A、8Bで構成され、上記周縁部の他のヘテロ半導体領域3は、不純物濃度が高いP+ 型の多結晶シリコン層7で構成されている。
このように、図4(a)に示すように、電界緩和領域4A、4Bとへテロ半導体領域3とが積層された接合領域におけるヘテロ半導体領域3の周端と、アノード電極5とヘテロ半導体領域3とが積層された接合領域におけるアノード電極5の周端との間に位置するへテロ半導体領域3の不純物濃度が、図4(b)に示すように、電界緩和領域4C、4Dとへテロ半導体領域3とが積層された接合領域におけるヘテロ半導体領域3の周端から、最も近接したアノード電極5までの間におけるへテロ半導体領域3の不純物濃度よりも低く設定されている。
図3に示すように不純物濃度が低いP− 型の多結晶シリコン層8は、所定の対向した電界緩和領域4とアノード電極5との間に配置されている。さらに、不純物濃度が低いP− 型多結晶シリコン層8と接している所定の対向した電界緩和領域4の外周部の接線は、少なくとも<11_20>方向に対して垂直方向で、かつ<0001>軸の傾斜方向に対して垂直方向となっている。
すなわち、炭化珪素半導体基体100の絶縁破壊電界強度が他の面方位に比べて低くなる面方位の領域に配置形成された電界緩和領域4A、4B、すなわち炭化珪素半導体基体100の結晶軸の<0001>軸が傾斜している方向となる<11_20>方向に配置形成された電界緩和領域4A、4Bと並行に位置するヘテロ半導体領域3の周端領域の不純物濃度を他の領域に配置形成されたヘテロ半導体領域3の不純物濃度よりも低く設定している。
このような濃度の設定により、図4(a)に示す電界緩和領域4A、4Bとへテロ半導体領域3とが接する領域の少なくとも一部から、アノード電極5までの間におけるへテロ半導体領域3の抵抗は、図4(b)に示す電界緩和領域4C、4Dとへテロ半導体領域3とが接する領域の少なくとも一部から、最も近接したアノード電極5までの間におけるへテロ半導体領域3の抵抗より高くなる。
これにより、先に説明したアバランシェ降伏時に破壊が生じやすい電界緩和領域4A、4Bとへテロ半導体領域3とが接する領域の少なくとも一部から、アノード電極5までの間におけるへテロ半導体領域3の抵抗は、破壊が生じ難い電界緩和領域4C、4Dとへテロ半導体領域3とが接する領域の少なくとも一部から、最も近接したアノード電極5までの間におけるへテロ半導体領域3の抵抗より高くなっている。
次に、この半導体装置の動作について説明する。
例えばカソード電極6を接地してアノード電極5に正電位を印加した場合は、ダイオードの順方向特性に相当する導通特性が得られる。
一方、アノード電極5を接地してカソード電極6に高電圧を印加した場合には、図4(a)に示すように、アノード電極5と電界緩和領域4A、4Bとの間に抵抗値の高い(不純物濃度が低い)P− 型の多結晶シリコン層8が配置形成されているため、抵抗成分による電圧の分配が生じ、電界緩和領域4A、4Bへ印加される電圧は、図4(b)に示す電界緩和領域4C、4Dへ印加される電圧よりも低くなる。すなわち、ダイオードの逆方向特性におけるアバランシェ降伏時には、電界緩和領域4A、4Bを流れる降伏電流は電界緩和領域4C、4Dを流れる降伏電流よりも少なくなる。これにより、従来技術において生じていたアバランシェ降伏時に電流緩和領域の特定箇所が破壊することを防止することが可能となり、高いアバランシェ耐量を実現することができる。
次に、製造工程を示す図5(図5−A、図5−B、図5ーC)を参照して、この半導体装置の製造方法について説明する。なお、図5において、同図(a1)〜(a3)は図3のA−A線に沿った断面図であり、同図(b1)〜(b3)は図3のB−B線に沿った断面図である。
図5において、先ず単結晶4H−SiCからなる炭化珪素半導体基板1の第一主面に炭化珪素エピタキシャル層2を堆積形成した炭化珪素半導体基体100を用意し、炭化珪素エピタキシャル層2の所定の領域に電界緩和領域4(4A、4B、4C、4D)を環状にに形成する(図5−A(a1)、(b1))。電界緩和領域4は、P型の炭化珪素、あるいは高抵抗(極めて不純物濃度が低い)の炭化珪素のいずれを用いてもよい。
続いて、炭化珪素エピタキシャル層2の第一主面にヘテロ半導体領域3となるP− 型の多結晶シリコン層8を堆積した後、フォトレジストなどをマスク材に用いて、P− 型の多結晶シリコン層8に選択的に例えばP型の不純物のボロンをイオン注入し、P+ 型の多結晶シリコン層7を形成し、ヘテロ半導体領域3の内部でそれぞれ不純物濃度が異なる領域を選択的に形成する(図5−B(a2)、(b2))。これにより、抵抗の異なるヘテロ半導体領域3を容易に形成することができる。
最後に、ヘテロ半導体領域3をエッチングして選択的に除去し、ヘテロ半導体領域3に接するようにアノード電極5を形成し、かつ炭化珪素半導体基板1に接するようにカソード電極6を形成し、図3、図4に示すこの実施例1の半導体装置は完成する(図5−C(a3)、(b3))。
このように、ヘテロ半導体領域3の不純物濃度を局所的に変更することで、すなわち、ヘテロ半導体領域3の不純物濃度を選択的に調整することでヘテロ半導体領域の抵抗を局所的に変更して電界緩和領域に流れる電流量を制御しているので、電界緩和領域の厚さを局所的に薄くしたり、絶縁破壊が生じやすい電界緩和領域周辺の炭化珪素エピタキシャル層の不純物濃度を低くして電流量を制御する手法に比べて、簡便に実施することが可能となり、安価な製造コストで実現することができる。
図6は本発明の実施例2に係る半導体装置の構成を示す平面図であり、図7(a)は図6のA−A線に沿った断面図であり、同図(b)は図6のB−B線に沿った断面図である。図6、図7に示すこの実施例2の半導体装置の特徴とするところは、絶縁破壊が他よりも生じやすい位置に形成された電界緩和領域4の電流を制限する手段として、先の実施例1で採用したヘテロ半導体領域3の不純物濃度を選択的に調整する手法に代えて、先の実施例1で不純物濃度を低くした領域のヘテロ半導体領域3を他の領域に比べて薄く形成し、これにより他の領域に比べて抵抗を高く設定する手法を採用したことにあり、他は先の実施例1と同様である。
図6、図7に示す実施例2の半導体装置は、炭化珪素半導体基体100に形成されたヘテロ接合タイプのダイオードである。炭化珪素半導体基体100は、主面の法線が結晶軸の<0001>軸に対して<11_20>方向へ8°程度傾斜した(オフセット角を有する)単結晶のポリタイプ4H−SiCからなる炭化珪素半導体基板1と、炭化珪素半導体基板1の第一主面側に化学気相成長堆積法等で堆積形成された炭化珪素エピタキシャル層2とで構成される。
炭化珪素半導体基体100の第一主面には、単結晶4H−SiCとバンドギャップの異なる半導体材料の例えばP+ 型の多結晶シリコン層7からなるヘテロ半導体領域3が形成され、炭化珪素半導体基体100との間でヘテロ接合が形成されている。炭化珪素エピタキシャル層2の第一主面にはヘテロ接合の端部を終端するように、図6に示すように環状にP型の炭化珪素からなる電界緩和領域4が形成されている。ヘテロ半導体領域3上には、ヘテロ半導体領域3に接するようにアノード電極5が形成され、炭化珪素半導体基板1には、炭化珪素半導体基板1に接するようにカソード電極6が形成されている。
アノード電極5と電界緩和領域4A、4Bとの間に流れる電流の電流流路に配置形成されて、アノード電極5を挟んで対向する辺に配置形成された電界緩和領域4A、4Bに沿って並行に配置形成されたヘテロ半導体領域3の対向する周縁部は、その厚さが他の周縁部の厚さに比べて薄く形成されている。
このように、図7(a)に示すように、電界緩和領域4A、4Bとへテロ半導体領域3とが積層された接合領域におけるヘテロ半導体領域3の周端と、アノード電極5とヘテロ半導体領域3とが積層された接合領域におけるアノード電極5の周端との間に位置するへテロ半導体領域3の厚さは、図7(b)に示すように、電界緩和領域4C、4Dとへテロ半導体領域3とが積層された接合領域におけるヘテロ半導体領域3の周端から、最も近接したアノード電極5までの間におけるへテロ半導体領域3の厚さよりも薄く形成されている。
また、図6に示すように厚さが薄いヘテロ半導体領域3は、所定の対向した電界緩和領域4とアノード電極5との間に配置されている。さらに、厚さが薄いヘテロ半導体領域3(P+ 型の多結晶シリコン層7)と接している所定の対向した電界緩和領域4の外周部の接線は、少なくとも<11_20>方向に対して垂直方向で、かつ<0001>軸の傾斜方向に対して垂直方向となっている。
すなわち、炭化珪素半導体基体100の絶縁破壊強度が他の面方位に比べて低くなる面方位の領域に配置形成された電界緩和領域4A、4B、すなわち炭化珪素半導体基体100の結晶軸の<0001>軸が傾斜している方向となる<11_20>方向に配置形成された電界緩和領域4A、4Bと並行に位置するヘテロ半導体領域3の周端領域の厚さを他の領域に配置形成されたヘテロ半導体領域3の厚さよりも薄く形成している。
このような形状により、図7(a)に示す電界緩和領域4A、4Bとへテロ半導体領域3とが接する領域の少なくとも一部から、アノード電極5までの間におけるへテロ半導体領域3の抵抗は、図7(b)に示す電界緩和領域4C、4Dとへテロ半導体領域3とが接する領域の少なくとも一部から、最も近接したアノード電極5までの間におけるへテロ半導体領域3の抵抗より高くなる。
これにより、先に説明したアバランシェ降伏時に破壊が生じやすい電界緩和領域4A、4Bとへテロ半導体領域3とが接する領域の少なくとも一部から、アノード電極5までの間におけるへテロ半導体領域3の抵抗は、破壊が生じ難い電界緩和領域4C、4Dとへテロ半導体領域3とが接する領域の少なくとも一部から、最も近接したアノード電極5までの間におけるへテロ半導体領域3の抵抗より高くなる。
したがって、この実施例2では、先に説明した実施例1と同様に、ダイオードの逆方向特性におけるアバランシェ降伏時には、電界緩和領域4A、4Bを流れる降伏電流は電界緩和領域4C、4Dを流れる降伏電流よりも少なくなる。これにより、従来技術において生じていたアバランシェ降伏時に電流緩和領域の特定箇所が破壊することを防止することが可能となり、高いアバランシェ耐量を実現することができる。
また、この実施例2では、先の実施例1に比べて単一の不純物濃度を有する多結晶シリコンを用いてヘテロ半導体領域3を形成することができるので、ヘテロ接合の障壁の高さを一定にすることが可能となり、リーク電流を低減することができる。
図8は本発明の実施例3に係る半導体装置の構成を示す平面図であり、図9(a)は図8のA−A線に沿った断面図であり、同図(b)は図8のB−B線に沿った断面図である。図8、図9に示すこの実施例3の半導体装置の特徴とするところは、絶縁破壊が他よりも生じやすい位置に形成された電界緩和領域4の電流を制限する手段として、先の実施例1で採用したヘテロ半導体領域3の不純物濃度を選択的に調整する手法に代えて、先の実施例1で不純物濃度を低くした領域のヘテロ半導体領域3の幅方向(面方位<11_20>の方向に対して垂直な方向)の長さを他の領域に比べて長く形成し、これにより他の領域に比べて抵抗を高く設定する手法を採用したことにあり、他は先の実施例1と同様である。
図8、図9に示す実施例2の半導体装置は、炭化珪素半導体基体100に形成されたヘテロ接合タイプのダイオードである。炭化珪素半導体基体100は、主面の法線が結晶軸の<0001>軸に対して<11_20>方向へ8°程度傾斜した(オフセット角を有する)単結晶のポリタイプ4H−SiCからなる炭化珪素半導体基板1と、炭化珪素半導体基板1の第一主面側に化学気相成長堆積法等で堆積形成された炭化珪素エピタキシャル層2とで構成される。
炭化珪素半導体基体100の第一主面には、単結晶4H−SiCとバンドギャップの異なる半導体材料の例えばP+ 型の多結晶シリコン層7からなるヘテロ半導体領域3が形成され、炭化珪素半導体基体100との間でヘテロ接合が形成されている。炭化珪素エピタキシャル層2の第一主面にはヘテロ接合の端部を終端するように、図6に示すように環状にP型の炭化珪素からなる電界緩和領域4が形成されている。ヘテロ半導体領域3上には、ヘテロ半導体領域3に接するようにアノード電極5が形成され、炭化珪素半導体基板1には、炭化珪素半導体基板1に接するようにカソード電極6が形成されている。
また、図9(a)に示すように、電界緩和領域4A、4Bとへテロ半導体領域3とが積層された接合領域におけるヘテロ半導体領域3の周端と、アノード電極5とヘテロ半導体領域3とが積層された接合領域におけるアノード電極5の周端との間(アノード電極5から電界緩和領域4A、4Bに流れる電流のヘテロ半導体領域3における電流流路)に位置するへテロ半導体領域3の距離(同図にL1で示す)は、図9(b)に示すように、電界緩和領域4C、4Dとへテロ半導体領域3とが積層された接合領域におけるヘテロ半導体領域3の周端から、最も近接したアノード電極5までの間(アノード電極5から電界緩和領域4C、4Dに流れる電流のヘテロ半導体領域3における電流流路)におけるへテロ半導体領域3の距離(L2)よりも長く形成されている。
また、図8に示すように幅が広いヘテロ半導体領域3は、所定の対向した電界緩和領域4とアノード電極5との間に配置されている。さらに、幅が広いヘテロ半導体領域3(
P+ 型の多結晶シリコン層7)と接している所定の対向した電界緩和領域4の外周部の接線は、少なくとも<11_20>方向に対して垂直方向で、かつ<0001>軸の傾斜方向に対して垂直方向となっている。
すなわち、炭化珪素半導体基体100の絶縁破壊強度が他の面方位に比べて低くなる面方位の領域に配置形成された電界緩和領域4A、4B、すなわち炭化珪素半導体基体100の結晶軸の<0001>軸が傾斜している方向となる<11_20>方向に配置形成された電界緩和領域4A、4Bと並行に位置するヘテロ半導体領域3の周端領域の幅を他の領域に配置形成されたヘテロ半導体領域3の幅よりも広く形成している。
このような形状により、図9(a)に示す電界緩和領域4A、4Bとへテロ半導体領域3とが接する領域の少なくとも一部から、アノード電極5までの間におけるへテロ半導体領域3の抵抗は、図9(b)に示す電界緩和領域4C、4Dとへテロ半導体領域3とが接する領域の少なくとも一部から、最も近接したアノード電極5までの間におけるへテロ半導体領域3の抵抗より高くなる。
これにより、先に説明したアバランシェ降伏時に破壊が生じやすい電界緩和領域4A、4Bとへテロ半導体領域3とが接する領域の少なくとも一部から、アノード電極5までの間におけるへテロ半導体領域3の抵抗は、破壊が生じ難い電界緩和領域4C、4Dとへテロ半導体領域3とが接する領域の少なくとも一部から、最も近接したアノード電極5までの間におけるへテロ半導体領域3の抵抗より高くなる。
したがって、この実施例3では、先に説明した実施例1と同様に、ダイオードの逆方向特性におけるアバランシェ降伏時には、電界緩和領域4A、4Bを流れる降伏電流は電界緩和領域4C、4Dを流れる降伏電流よりも少なくなる。これにより、従来技術において生じていたアバランシェ降伏時に電流緩和領域の特定箇所が破壊することを防止することが可能となり、高いアバランシェ耐量を実現することができる。
また、この実施例3では、先に説明した従来技術に比べてアノード電極5の形状を変えるだけで実施可能な構造であるため、従来技術に対して工程を追加することなく低コストで高アバランシェ耐量の半導体装置を実現することができる。
図10は本発明の実施例4に係る半導体装置の構成を示す平面図であり、図11(a)は図10のA−A線に沿った断面図であり、同図(b)は図10のB−B線に沿った断面図である。図10、図11に示すこの実施例4の半導体装置の特徴とするところは、前述した本発明の技術思想をトランジスタとダイオードの双方の機能を備えた半導体装置で実現したことにあり、絶縁破壊が他よりも生じやすい位置に形成された電界緩和領域4の電流を制限する手段として、先の実施例1で採用したヘテロ半導体領域3の不純物濃度を選択的に調整する手法と、先の実施例3で採用したヘテロ半導体領域3の幅方向(面方位<11_20>の方向に対して垂直な方向)の長さを他の領域に比べて長く形成する手法の双方の手法を採用したことにある。
図10、図11に示す実施例4の半導体装置は、炭化珪素半導体基体100に形成されたヘテロ接合タイプを有するトランジスタとダイオードの双方の機能を備えている。炭化珪素半導体基体100は、主面の法線が結晶軸の<0001>軸に対して<11_20>方向へ8°程度傾斜した(オフセット角を有する)単結晶のポリタイプ4H−SiCからなる炭化珪素半導体基板1と、炭化珪素半導体基板1の第一主面側に化学気相成長堆積法等で堆積形成された炭化珪素エピタキシャル層2とで構成される。
炭化珪素半導体基体100の第一主面には、単結晶4H−SiCとバンドギャップの異なる半導体材料の例えば多結晶シリコンからなるヘテロ半導体領域3が形成され、炭化珪素半導体基体100との間でヘテロ接合が形成されている。炭化珪素エピタキシャル層2の第一主面にはヘテロ接合の端部を終端するように、図10に示すように環状にP型の炭化珪素からなる電界緩和領域4が形成されている。ヘテロ半導体領域3上には、ヘテロ半導体領域3に接するようにアノード電極5が形成され、炭化珪素半導体基板1には、炭化珪素半導体基板1に接するようにカソード電極6が形成されている。
ヘテロ半導体領域3は、図11(a)に示すように、N型の不純物濃度が高いN+ 型の多結晶シリコン層9と、多結晶シリコン層9の不純物濃度に比べてN型の不純物濃度が低いN− 型の多結晶シリコン層10(10A、10B)とから構成されている。すなわち、アノード電極5と電界緩和領域4A、4Bとの間に流れる電流の電流流路に配置形成されて、アノード電極5を挟んで対向する辺に配置形成された電界緩和領域4A、4Bに沿ったヘテロ半導体領域3の対向する周縁部は、不純物濃度が低いN− 型の多結晶シリコン層10A、10Bで構成され、上記周縁部の他のヘテロ半導体領域3は、不純物濃度が高いN+ 型多結晶シリコン層9によって構成されている。
このように、図11(a)に示すように、電界緩和領域4A、4Bとへテロ半導体領域3とが積層された接合領域におけるヘテロ半導体領域3の周端と、アノード電極5とヘテロ半導体領域3とが積層された接合領域におけるアノード電極5の周端との間に位置するへテロ半導体領域3の不純物濃度が、図11(b)に示すように、電界緩和領域4C、4Dとへテロ半導体領域3とが積層された接合領域におけるヘテロ半導体領域3の周端から、最も近接したアノード電極5までの間におけるへテロ半導体領域3の不純物濃度よりも低く設定されている。
図10に示すように不純物濃度が低いN− 型の多結晶シリコン層9は、所定の対向した電界緩和領域4とアノード電極5との間に配置されている。さらに、不純物濃度が低い
N− 型の多結晶シリコン層9と接している所定の対向した電界緩和領域4の外周部の接線は、少なくとも<11_20>方向に対して垂直方向で、かつ<0001>軸の傾斜方向に対して垂直方向となっている。
すなわち、炭化珪素半導体基体100の絶縁破壊強度が他の面方位に比べて低くなる面方位の領域に配置形成された電界緩和領域4A、4B、すなわち炭化珪素半導体基体100の結晶軸の<0001>軸が傾斜している方向となる<11_20>方向に配置形成された電界緩和領域4A、4Bと並行に位置するヘテロ半導体領域3の周端領域の不純物濃度を他の領域に配置形成されたヘテロ半導体領域3の不純物濃度よりも低く設定している。
このような濃度の設定により、図11(a)に示す電界緩和領域4A、4Bとへテロ半導体領域3とが接する領域の少なくとも一部から、アノード電極5までの間におけるへテロ半導体領域3の抵抗は、図4(b)に示す電界緩和領域4C、4Dとへテロ半導体領域3とが接する領域の少なくとも一部から、最も近接したアノード電極5までの間におけるへテロ半導体領域3の抵抗より高くなる。
また、図11(a)に示すように、電界緩和領域4A、4Bとへテロ半導体領域3とが積層された接合領域におけるヘテロ半導体領域3の周端と、アノード電極5とヘテロ半導体領域3とが積層された接合領域におけるアノード電極5の周端との間に位置するへテロ半導体領域3の長さは、図11(b)に示すように、電界緩和領域4C、4Dとへテロ半導体領域3とが積層された接合領域におけるヘテロ半導体領域3の周端から、最も近接したアノード電極5までの間におけるへテロ半導体領域3の長さよりも長く(幅が広く)形成されている。
また、図10に示すように幅が広い(距離が長い)ヘテロ半導体領域3は、所定の対向した電界緩和領域4とアノード電極5との間に配置されている。さらに、幅が広い(距離が長い)ヘテロ半導体領域3(N− 型の多結晶シリコン層10A、10B)と接している所定の対向した電界緩和領域4の外周部の接線は、少なくとも<11_20>方向に対して垂直方向で、かつ<0001>軸の傾斜方向に対して垂直方向となっている。
すなわち、炭化珪素半導体基体100の絶縁破壊強度が他の面方位に比べて低くなる面方位の領域に配置形成された電界緩和領域4A、4B、すなわち炭化珪素半導体基体100の結晶軸の<0001>軸が傾斜している方向となる<11_20>方向に配置形成された電界緩和領域4A、4Bと並行に位置するヘテロ半導体領域3の周端領域の幅を他の領域に配置形成されたヘテロ半導体領域3の幅よりも広く形成している。
このような形状により、図11(a)に示す電界緩和領域4A、4Bとへテロ半導体領域3とが接する領域の少なくとも一部から、アノード電極5までの間におけるへテロ半導体領域3の抵抗は、図11(b)に示す電界緩和領域4C、4Dとへテロ半導体領域3とが接する領域の少なくとも一部から、最も近接したアノード電極5までの間におけるへテロ半導体領域3の抵抗より高くなる。
これにより、先に説明したアバランシェ降伏時に破壊が生じやすい電界緩和領域4A、4Bとへテロ半導体領域3とが接する領域の少なくとも一部から、アノード電極5までの間におけるへテロ半導体領域3の抵抗は、破壊が生じ難い電界緩和領域4C、4Dとへテロ半導体領域3とが接する領域の少なくとも一部から、最も近接したアノード電極5までの間におけるへテロ半導体領域3の抵抗より高くなる。
また、へテロ半導体領域3を貫通し、炭化珪素エピタキシャル層2に達するようにトレンチ(溝)11が形成され、トレンチ11の内部にヘテロ接合に隣接してゲート絶縁膜12を介してゲート電極13が形成されている。ゲート電極13は、ゲート絶縁膜12および層間絶縁膜14によってアノード電極5と電気的に絶縁されている。さらに、ゲート電極13は、図10に示すようにゲートパッド15に電気的に接続されて、このゲートパッド15を介して外部からゲート電圧が印加される。
なお、図10には示されていないが、トレンチ11とゲート絶縁膜12およびゲート電極13は、図10において縦方向にストライプ状に配置形成されている。
次に、この半導体装置の動作について説明する。
先ずアノード電極5とゲート電極13を接地にした状態で、カソード電極6に然るべき所定の電圧を印加すると、アノード電極5とカソード電極6との間はヘテロ接合のエネルギー障壁によって電気的に遮断された状態となる。これにより、アノード電極5とカソード電極6との間に電流は流れず、オフ状態となる。
一方、アノード電極5を接地し、カソード電極6に然るべき所定の電圧を印加した状態において、ゲート電極13に然るべき所定の電圧を印加すると、ゲート絶縁膜12を介してヘテロ半導体領域3に印加されるゲート電界によってヘテロ接合のエネルギー障壁の高さが変化するとともに、ヘテロ半導体領域3の内部に形成された空乏化領域には電子が蓄積されて蓄積層が形成される。これにより、カソード電極6からの電界によりアノード電極5からカソード電極6へと電子が流れ、オン状態となる。その後、カソード電極6に然るべき所定の電圧を印加した状態で、ゲート電極13を接地してゲート電極13に印加されていたゲート電圧を取り除くと、オフ状態となる。
このような動作により、この実施例4の半導体装置は、アノード電極5をソース電極、カソード電極6をドレイン電極とし、ゲート電圧によりスイッチング制御される絶縁ゲート駆動型のトランジスタとして機能することになる。
次に、カソード電極6とゲート電極13を接地し、アノード電極5に然るべき所定の電圧を印加すると、先の実施例1〜実施例3で説明した半導体装置と同様に、ダイオードの順方向特性に相当する導通特性が得られ、ユニポーラ型の還流ダイオードとして機能することになる。
したがって、この実施例4では、トランジスタとダイオードとの双方の機能を有する半導体装置において、ダイオードの逆方向特性におけるアバランシェ降伏時には、電界緩和領域4A、4Bを流れる降伏電流は電界緩和領域4C、4Dを流れる降伏電流よりも少なくなる。これにより、従来技術において生じていたアバランシェ降伏時に電流緩和領域の特定箇所が破壊することを防止することが可能となり、高いアバランシェ耐量を実現することができる。
なお、上記実施例1〜実施例4においては、半導体基体を構成する材料を単結晶4H−SiCを用いて説明しているが、その他の材料、例えば窒化ガリウムなどを用いてもよい。
また、ヘテロ半導体領域の材料として多結晶シリコンを用いて説明しているが、単結晶シリコンやアモルファスシリコンでもよいし、シリコン材料に限定されず、シリコンゲルマニウムなどを用いてもよい。