従来、電子写真方式を用いた画像形成装置は、図11に示すように、像担持体として一般的にドラム状とされている電子写真感光体(以下、「感光体ドラム」という。)1を備えている。この感光体ドラム1は、その表面を帯電器2により一様に帯電させ、帯電した感光体ドラム1を露光装置3によって画像情報に応じて露光し、感光体ドラム1上に静電潜像を形成する。感光体ドラム1に形成された静電潜像は、現像装置4を用いて現像剤のトナーによって可視像(トナー像)とする。そして、顕像化された画像は、転写装置5によって記録媒体Sへ転写される。その後、記録媒体S上に転写されたトナー像を定着装置6によって熱及び圧力で記録媒体Sへと溶融定着する。そして、上記転写プロセス後に感光体ドラム1上に残留したトナーをクリーニング装置7によって取り除き、更に、除電装置8によって感光体ドラム1上に残留した電荷を除去することで感光体ドラム1は、次回の画像形成プロセスに備える。
現像装置4としては、現像剤として非磁性トナー粒子(トナー)と磁性キャリア粒子(キャリア)を含有する二成分現像剤を使用するものがある。特に、カラー画像形成装置においては、トナーに磁性体を含ませなくてもよいため、色味が良好であるなどの理由から広く用いられている。
例えば、二成分現像剤を用いる現像装置4は、一般的に図2、図3に示すような構成とされる。現像装置4は、現像剤を収容する現像容器41を有する。現像容器41は、垂直方向に延在する隔壁41cによって現像室(現像剤搬送経路)41aと攪拌室(現像剤搬送経路)41bとに分けられている。現像室41aと攪拌室41b内には夫々第1の現像剤搬送攪拌部材42と第2の現像剤搬送攪拌部材43が配されている。また、隔壁41cの長手方向端部には、現像室41aと攪拌室41bの間で現像剤の通過を許す受け渡し部(現像剤搬送経路)41d、41eが設けられている。第1、第2の現像剤搬送攪拌部材42、43は、現像剤を攪拌しながら搬送して現像容器41内を循環させる。現像容器41の感光体ドラム1に対向する位置には、現像剤担持体としての現像スリーブ44が回転可能に配置されている。現像スリーブ44は、磁界発生手段としてのマグネット45を内蔵する。
第1、第2の現像剤搬送攪拌手段42、43によって攪拌されながら搬送されて、摩擦帯電によりキャリアの表面にトナーが付着した状態にある二成分現像剤は、マグネット45が発生する磁界によって現像スリーブ44表面に引き付けられ担持される。そして、現像剤は、現像スリーブ44の回転により現像剤層厚規制手段46を通過して、現像スリーブ44表面に薄層コートされて感光体ドラム1との対向部まで搬送される。該対向部では、マグネット45が発生する磁界によって現像剤は鎖状の磁気穂を形成する。この磁気穂は、感光体ドラム1に近接若しくは接触し、現像スリーブ44に印加される現像バイアスによりトナーのみが感光体ドラム1表面に形成された静電潜像に転移し、感光体ドラム1表面に静電潜像に応じたトナー像が形成される。
上述のように、電子写真方式の画像形成装置に使用される二成分現像剤を用いる現像装置4においては、その現像容器41に収容されている二成分現像剤のトナーとキャリアを攪拌して摩擦帯電させる。その後、現像スリーブ等の現像剤担持体により感光体ドラム等の像担持体に供給することにより該像担持体上の潜像を現像する。この際、トナーは消費・供給されるのに対し、キャリアは消費も供給もされず現像容器内に残り、プリント一枚ずつ使用するにつれてその都度耐久劣化していく。劣化原因としては、例えば、トナーに付いている外添剤が遊離しキャリアに付着する、所謂、「外添剤付着」や、トナー自体がキャリアに固着してしまう、所謂、「トナースペント」などがあり、いずれもキャリア帯電能の劣化を引き起こす場合が多い。この結果、トナーの帯電量が下がるため、白地部トナーかぶりや現像容器外へのトナー飛散などの多種の問題が発生してしまう。
これら問題を回避するために、従来の現像装置においては上記かぶりやトナー飛散が発生する前に、例えば、プリント枚数40k枚で、二成分現像剤を交換して対応していた。しかし、当然交換作業の手間がかかり、さらに交換時のダウンタイム発生は避けられないため望ましい状況ではなかった。
そこで、トナーのみではなくキャリアも現像容器内に適宜補給すると共に、このキャリア補給により現像容器内で徐々に過剰となる二成分現像剤を回収する現像方法、所謂、「オートリフレッシュ」が特許文献1にて提案されている。この現像方法により、消費により減少するトナーを補充すると同時に、現像容器内の劣化したキャリアを、補給される新しいキャリアに置き換えることができる。
このオートリフレッシュを用いると、キャリアを含む二成分現像剤の補給と回収が行われることにより、トナーと共に、補給された新しい(New)キャリアと耐久キャリアが徐々に入れ替わる。そのために、キャリアの劣化はある一定レベルで飽和するようになる。
この飽和時の劣化レベルは、補給用現像剤のトナーとキャリアの混合比を変更することによって、任意に変更可能である。例えば、補給用現像剤のキャリア比率を高くすると、Newキャリアが現像容器内の劣化キャリアと交換する頻度が増えるために、キャリア劣化があまり進んでいない状態で飽和する。この混合比を適正値にすることで、キャリア劣化の飽和レベルが上記かぶり等の問題発生に至らないレベルで維持可能になるために、二成分現像剤交換不要、若しくは、現像剤の長寿命化が可能になることになる。
一方、オートリフレッシュ構成では、補給用現像剤としてトナーに加えてキャリアも補給及び排出しているため、ランニングコストアップに繋がるというデメリットも潜在的にもっており、可能な限り補給用現像剤のキャリア交換比率を下げることが望まれている。
しかしながら、従来のオートリフレッシュ構成では、キャリア劣化度合いとは関係なく、補給用現像剤としてのトナーとキャリア混合比を常に一定で補給しているために、本来交換不要の劣化が進んでいないキャリアまで無駄に交換している場合があり、ランニングコストの観点から改善の余地があった。
更に、従来のオートリフレッシュ構成では、徐々にキャリアを補給/排出を繰り返すことによりキャリア劣化抑制可能に設定しているが、一方で、徐々にキャリアの帯電能劣化が進むために、長期間にわたってトナー帯電量が不安定な状態になる問題がある。
この結果、長期間にわたっての濃度変動や、濃度変動を防止するための制御ダウンタイムが発生することになり、その観点からも望ましい状態とはいえなかった。
また、特許文献2には、トナー濃度を補正するために補給されるトナー補給量に対応してキャリアを補給する場合とは別に、画像形成枚数又は現像駆動時間に対応してキャリアの補給制御を行うことが提案されている。これにより、キャリアの劣化によるトナーの帯電能力の低下を未然に防止せんとしている。
以下、本発明に係る現像剤補給方法を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
[画像形成装置の全体構成及び動作]
先ず、本実施例の画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。図1は、本実施例の画像形成装置の概略断面構成を示す。
本実施例の画像形成装置100は、画像形成装置本体(装置本体)100Aに接続された原稿読み取り装置或いは装置本体に通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等のホスト機器からの画像情報に従って、フルカラー画像を形成することができる。
つまり、本実施例の画像形成装置100は、4連タンデム式の画像形成装置であり、複数の、本実施例では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色フルカラー画像を、電子写真方式を利用して形成することができる。
そこで、画像形成装置100は、複数の像形成手段として、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像を形成する第1、第2、第3、第4の画像形成部(画像形成ステーション)P(PY、PM、PC、PBk)を有する。そして、転写装置5が備える中間転写体51が図示矢印方向に移動して各画像形成部を通過する間に、中間転写体51上に各画像形成部において各色の画像が重ねられる。そして、この中間転写体51上で重ね合わされた多重トナー像を、記録材(記録用紙、プラスチックシート、布等)Sに転写することで記録画像が得られる。
本実施例では、各画像形成ステーションPの構成は、現像色が異なる以外は実質的に同一とされる。従って、以下、特に区別を要しない場合は、何れかの画像形成ステーションPに属する要素であることを示すために符号に与えた添え字Y、M、C、Bkは省略し、総括的に説明する。
画像形成ステーションPは、像担持体としてのドラム状の電子写真感光体、即ち、感光体ドラム1を有する。感光体ドラム1の外周には、帯電手段としての帯電器2、露光手段としての露光装置(本実施例ではレーザー露光光学系)3、現像手段としての現像装置4が配置されている。更に、転写手段としての転写装置5、クリーニング手段としてのクリーニング装置7、除電手段としての除電装置8が設けられている。転写装置5は、中間転写体としての中間転写ベルト51を有する。中間ベルト51は、複数のローラに掛け回されて、図示矢印方向に回転(周回移動)する。又、中間転写ベルト51を介して各感光体ドラム1に対向する位置には一次転写部材52が配置されている。又、中間転写ベルト51が掛け回されたローラのうち一つに対向する位置に二次転写部材53が設けられている。
画像形成時には、先ず、帯電器2によって、回転する感光体ドラム1の表面を一様に帯電させる。次いで、帯電した感光体ドラム1の表面を、露光装置3により画像情報信号に応じて走査露光することによって、感光体ドラム1上に静電像を形成する。感光体ドラム1に形成された静電像は、現像装置4を用いて現像剤のトナーにより可視像(トナー像)として顕像化する。
感光体ドラム1上に形成されたトナー像は、中間転写ベルト51と感光体ドラム1とが当接する1次転写部(一次転写ニップ)N1において、一次転写部材52に印加される一次転写バイアスの作用によって中間転写ベルト51上に転写(一次転写)される。例えば、4色フルカラー画像の形成時には、第1の画像形成部PYから順次に、各感光体ドラム1から中間転写ベルト51上にトナー像が転写され、中間転写ベルト51上に4色のトナー像が重ね合わされた多重トナー像が形成される。
一方、記録材Sは、記録材収容部としてのカセット9に収容されている。記録材Sは、ピックアップローラ、搬送ローラ及びレジストローラ等の記録材搬送部材によって、中間転写ベルト51と二次転写部材53とが当接する二次転写部(ニップ部)N2に、中間転写ベルト51上のトナー像と同期がとられて搬送されてくる。そして、中間転写ベルト51上の多重トナー像は、二次転写部N2において、二次転写部材53に印加される二次転写バイアスの作用により、記録材S上に転写される。
その後、中間転写ベルト51から分離された記録材Sは、定着装置6へと搬送される。記録材S上に転写されたトナー像は、定着装置6によって加熱、加圧されることによって溶融混合されると共に、記録材S上に定着される。その後、記録材Sは機外へ排出される。
一次転写工程後に感光体ドラム1上に残留したトナー等の付着物は、クリーニング装置7によって回収される。又、感光体ドラム1に残留した静電像は、除電器8によって消去される。これにより、感光体ドラム1は、次の画像形成工程に備える。又、二次転写工程後に中間転写ベルト51上に残留したトナー等の付着物は、中間転写体クリーナ54によって除去される。
尚、本実施例の画像形成装置100は、例えばブラック単色の画像など、所望の単色又は4色のうちいくつかの色用の画像形成部を用いて、単色又はマルチカラーの画像を形成することも可能である。
[現像装置の基本構成]
次に、現像装置4について更に説明する。
現像装置4は、図2及び図3を参照して前に「背景技術」において説明したが、再度説明すると、非磁性トナーと磁性キャリアを含有する二成分現像剤を収容する現像剤収容部としての現像容器41を有する。現像容器41には、現像剤担持体としての現像スリーブ44が回転可能に設置されており、現像スリーブ44内には、磁界発生手段としてのマグネットロール(磁石)45が固定して配置されている。また、現像スリーブ44の表面には、現像剤の薄層を形成する現像剤量規制部材としての規制ブレード46が近接又は当接して配置されており、現像容器41内には、現像剤を攪拌し且つ搬送する第1、第2の現像剤搬送部材42、43が配置されている。
現像容器41の内部は、垂直方向に延在する隔壁41cによって現像室(現像剤搬送経路)41aと攪拌室(現像剤搬送経路)41bとに区画されている。そして、現像室41aに第1の現像剤搬送部材42が配置され、攪拌室41bに第2の現像剤搬送部材43が配置されている。隔壁41cの長手方向両端部(図3中左側及び右側)には、現像室41aと攪拌室41bとの間での現像剤の通過を許す連絡部(現像剤搬送経路)41d、41eが設けられている。
本実施例では、第1、第2の現像剤搬送部材42、43は、いずれも、スクリュー状部材(以下、それぞれ「第1のスクリュー」、「第2のスクリュー」という。)である。
つまり、本実施例では、第1、第2のスクリュー42、43は、それぞれ、磁性体の軸(回転軸)42a、43aの周りに、搬送部としての螺旋形状の羽根42b、43bを設けて形成されている。
又、本実施例では、第2のスクリュー43には、羽根43bに加えて、軸43aからその半径方向に突出し、現像剤の搬送方向に所定の幅を有する攪拌リブ43cをも有している。リブ43cは、軸43aの回転に伴って現像剤を攪拌する。第1のスクリュー42は、現像室41a内の現像剤を攪拌し且つ搬送する。又、第2のスクリュー43は、自動トナー補給制御(ATR:Auto Toner Replenisher)のもとで、現像剤補給装置10によって補給部に供給されたトナーと、既に攪拌室41b内にある現像剤とを攪拌し且つ搬送してトナー濃度を均一化する。
第1、第2のスクリュー42、43は、現像スリーブ44の回転軸線方向(現像幅方向)に沿ってほぼ平行に配置されている。そして、第1のスクリュー42と、第2のスクリュー43とは、現像スリーブ44の回転軸線方向に沿って互いに逆方向に現像剤を搬送する。こうして、現像剤は、第1、第2のスクリュー42、43によって、連絡部41d、41eを介して現像容器41内を循環させられる。
つまり、第1、第2のスクリュー42、43の搬送力により、現像工程でトナーが消費されてトナー濃度の低下した現像室41a内の現像剤が、一方の連絡部41d(図3の紙面左側)を介して撹拌室41b内へ移動する。又、トナーが補給されて攪拌された攪拌室41b内の現像剤が他方の連絡部41e(図3の紙面右側)を介して現像室41aへ移動する。
現像装置4の現像室41aは、感光体ドラム1に対面した現像領域に相当する位置が開口しており、この現像容器41の開口部に、一部露出するようにして現像スリーブ44が回転可能に配置されている。本実施例では、現像スリーブ44は非磁性材料で構成され、現像動作時には図示矢印方向に回転する。そして、現像スリーブ44の内部には、磁界発生手段としての周方向に沿って複数の磁極を有するマグネットロール45が固定されている。
現像室41a内の現像剤は、第1スクリュー42により現像スリーブ44に供給される。現像スリーブ44に供給された現像剤は、マグネットロール45の発生する磁界により現像スリーブ44上に所定の量が担持され現像剤溜まりを形成する。現像スリーブ44上の二成分現像剤は、現像スリーブ44が回転することによって、現像剤溜まりを通過して規制ブレード46によって層厚が規制されると共に、感光体ドラム1と対向する現像領域へと搬送される。現像領域で、現像スリーブ44上の現像剤は穂立ちして磁気穂を形成する。本実施例では、磁気穂を感光体ドラム1に接触させて、現像剤のトナーを感光体ドラム1に供給することで、感光体ドラム1上の静電像を可視像(トナー像)として現像する。又、現像効率、即ち、潜像へのトナーの付与率を向上させるために、通常、現像スリーブ44には電圧印加手段としての現像バイアス電源から、直流電圧と交流電圧を重畳した現像バイアス電圧が印加される。
感光体ドラム1にトナーを供給した後の現像スリーブ44上の現像剤は、更に現像スリーブ44が回転することによって現像室41aに戻る。上述の現像装置4は、攪拌室41bの上流側に過剰の現像剤を排出するための、現像剤排出装置48を有する。また、該現像剤排出装置48は、排出口48a、過剰現像剤搬送部材48b、過剰現像剤格納部(図示せず)で構成されている。現像容器内の現像剤面が所定の高さ以上になったときに、過剰現像剤が、排出口48aを乗り越えて排出され、排出された過剰現像剤が過剰現像剤搬送部材48bによって搬送されて、過剰現像剤格納部に格納される。
更に、上述の現像装置4は、現像剤補給装置10を有しており、補給用現像剤容器20に連結している現像容器41には初期現像剤としてトナーとキャリアが所定の比率、例えば、重量比がトナー8に対してキャリア92で混合された初期現像剤が220g充填されている。補給用現像剤容器20は、画像形成装置本体に着脱可能なカートリッジ形式、即ち、補給剤カートリッジとすることもできる。
[補給系]
次に、本実施例の特徴とする補給形態について説明する。先ず、従来のオートリフレッシュ系の作用効果とその理由について、再度詳細に説明する。
オートリフレッシュ系では、上述したように、従来のトナーのみ補給と異なり、新しい(New)キャリアを含む二成分現像剤の補給と回収を行うことにより、キャリア劣化レベルを現像特性が満足できうる一定レベルに飽和させている。
画像形成動作によってトナーが消費されると、現像容器内部には、現像剤補給装置10によって消費したトナー分だけ、トナーとキャリアの補給用現像剤が供給される。しかし、現像容器中の現像剤はキャリアの分だけ少しずつ増加していくため、現像剤が次第に過剰になる。現像剤が過剰になると、現像剤面の高さが高くなるため、上記排出口48aから溢れ出して排出される。この繰り返しにより、トナーと共に補給されたNewキャリアと、過剰現像剤として排出される現像容器内の劣化したキャリアが入れ替わることにより、キャリアの平均劣化レベルはある一定レベルに飽和することになる。
つまり、オートリフレッシュ系ではキャリア単体としての劣化を抑制するのではなく、Newキャリアと劣化キャリアを一定の確率で補給/排出を繰り返すことにより、全キャリアのプリントで使用される平均プリント回数(即ち、枚数)(以下、「キャリア平均プリント枚数」と呼ぶ。)を制限することにより、キャリア劣化を抑制している。
なお、キャリア平均プリント枚数とキャリア劣化度合いが略比例関係にあることを、以下に述べる検討結果によって裏づけしている。
本実施例では、キャリア劣化の度合いを表す物性値として「キャリア帯電能」を用いており、下記で説明する方法でキャリア帯電能を測定している。
先ず、一定プリント枚数耐久を行った二成分現像剤を、トナーとキャリアに分離する。分離する方法として、本実施例ではマグネットによって二成分現像剤を磁気拘束した状態で、トナー飛翔方向に電界をかけることによってトナーをキャリアから飛翔させることで分離させる、所謂、電界剥離法を用いた。そして、分離したキャリアを、再度Newトナーと所定重量比率、例えば、重量比8:92で混合し一定時間攪拌を行った後に、E−SPART ANALYZER(ホソカワミクロン社製)でNewトナーの帯電量を測定する。
ここで、測定されるトナー帯電量は、所定プリント枚数時のキャリア単体の帯電能を示す。なお、本来耐久を行った場合のトナー帯電量は、トナーとキャリア双方の耐久劣化で決定される。しかし、上述したように耐久に使用した二成分現像剤から耐久トナーを分離して、Newトナーに置換した後のトナー帯電量のため、耐久時のキャリア単体としての帯電能を示すことになる。
なお、キャリア劣化度合いとして帯電能を用いた理由は、耐久時に顕著に発生する「白地部かぶり」や「トナー飛散」は、いずれもトナー帯電量が下がったときに起きる現象であるからである。
このキャリア帯電量を用いて、耐久時のプリント枚数に対するキャリア帯電量低下量(初期帯電量からの低下量)とキャリア平均プリント枚数を図4に示す。耐久プリント画像としては、一般によく用いられるA4サイズ10%画像比率のものを用いている。
なお10%画像比率とは、A4全ベタ時のトナー使用量を100%画像比率としており、本実施例ではA4全ベタ時のトナー使用量は約0.4g、10%画像比率時は約0.04gとなっている。補給用現像剤として、
(1)トナーのみの補給用現像剤、
(2)重量比キャリア:トナー=20:80の補給用二成分現像剤
を用いている。また、上記で説明した通り現像容器内の現像剤充填量は220gとしている。
次に、キャリア平均プリント枚数の算出法について説明する。
オートリフレッシュでは現像容器内の二成分現像剤にトナーとキャリアで構成された補給用現像剤が入ることで、トナーは消費されるので増減はないが、キャリア分の量が増えるために過剰現像剤量として排出される。即ち、キャリアプリント枚数0、即ち、新品のキャリアdgが補給され、平均プリント枚数X枚の二成分現像剤220gから、過剰分のdgが排出される。排出されなかった二成分現像剤(220−d)gのキャリア平均プリント枚数は、X+1枚となる。
これらを繰り返し計算することによりキャリア平均プリント枚数の曲線が得られる。なお、トナーのみ補給系の場合は、キャリアの入れ替わりがないためにプリント枚数とキャリア平均プリント枚数は同値となる。
この結果、上記補給用現像剤(1)、(2)共に、プリント耐久枚数に対して、キャリア平均プリント枚数とキャリア帯電能が略同様の傾向を示すことが分かった。つまり、オートリフレッシュ系ではNewキャリア/耐久キャリアの入れ替えによって、キャリアプリント枚数を一定レベル以下に抑えて、キャリア帯電能を維持していることが裏付けられた。
なお、本実施例で用いた現像構成において、キャリア平均プリント枚数が40kになった時点、すなわちキャリア帯電量低下量が16μC/gになった時点で、かぶり/トナー飛散が発生しており、上記(1)トナーのみ補給系では、この時点で現像剤の交換が必要となる。
ところで、従来のオートリフレッシュ系では、上記で説明したような作用効果があるものの、一方でオートリフレッシュ系の潜在問題である交換キャリア分のランニングコストについては最適化されているとは言えなかった。すなわち、従来のオートリフレッシュ系では、現像特性を維持するうえで、本来交換不要なキャリアまでも交換している場合がある。その理由は、従来のオートリフレッシュ系ではキャリア劣化度合いにかかわらず補給用現像剤のトナーとキャリア比率を一律同じにしていることに起因している。以下、図5を用いて説明する。
従来のオートリフレッシュ系では、キャリア平均プリント枚数を飽和レベル以下に維持するために一定キャリア比率の補給剤を用いている。そのため、図5の(1)の領域において、キャリア平均プリント枚数が飽和レベルに達する以前からキャリア交換を行わなければならなかった。極端な例でいえば、プリント枚数0枚時では、完全に新品キャリアと補給用現像剤の新品キャリアを入れ替えていることになる。すなわち、破線部におけるキャリア交換は、キャリア平均プリント枚数に飽和するまでのプリント枚数を延ばしているだけであって、現像特性を維持する観点では意味がないことになる。
更に、(1)の領域ではキャリアの帯電能劣化が徐々に進んでいる状態であって、それに併せてトナー帯電量も徐々に変動するため、長期間にわたって画像濃度が不安定な状態になっていることになる。この濃度変動は、例えば、二成分現像剤のトナーとキャリア混合比率を変更してトナー帯電量を一定に維持する公知のトナー濃度制御によって対応可能である。しかし、長期間にわたって制御のためにダウンタイムが発生することになり、ユーザービリティの観点から望ましい状態とは言えなかった。
上記問題を考慮して、本実施例では、二種類の補給用現像剤(第1の補給用現像剤、第2の補給用現像剤)を用いている。そして、現像容器内のキャリアの劣化状態によって、これら補給用現像剤を最適に使い分けることにより、白地部かぶりやトナー飛散等の現像特性を実使用上問題にならないレベルに維持しつつ、しかも無駄なキャリア交換を行わないことが可能になる。
二種の補給用現像剤の違いはトナーとキャリアの混合比率であって、少なくとも第1の補給用現像剤は、第2の補給用現像剤よりキャリア比率が低いこと(ゼロを含む)が重要である。本実施例では、一例として、第1の補給用現像剤はトナーのみ、即ち、トナーとキャリアの比率が重量比で100:0とし、第2の補給用現像剤はトナーとキャリアの混合比率が、重量比で80:20としている。
なお、補給用現像剤に用いるトナーは、初期現像剤のトナーと同じものであり、負極性に帯電するトナーである。また、補給用現像剤に用いるキャリアは、予め現像装置内に収容している二成分現像剤のキャリアと同じものである。キャリアの種類は任意であって、例えば、本実施例では、結着樹脂中に磁性体微粒子を分散させてなるコア材を有し、該コア材表面を樹脂によりコートしてなる磁性体分散型キャリアを用いている。
次に、第1の補給用現像剤と、第2の補給用現像剤を用いた補給方法と効果について図6を用いて説明する。
本実施例では、図6の(1)領域のように「キャリア平均プリント枚数の飽和値」に至るまでは、第1の補給用現像剤を用い、プリント枚数がキャリア平均プリント枚数の飽和値に至る直前で、第2の補給用現像剤に切り替えている。即ち、使用初期よりも使用後期の方が現像剤に対するキャリアの比率が高くなるように補給する現像剤を切り替えている。
なお、キャリア平均プリント枚数の飽和値は、上記で説明した繰り返し計算によって約22000枚と見積もることができる。
なお、現像容器内の二成分現像剤量W(本実施形態では220g)と、第2の補給用現像剤中のキャリア重量比率T(本実施形態では20%)と、一枚当たりのプリントで使用される予想平均トナー量D(本実施形態では約0.04g)とする。この場合、上記飽和値は、二成分現像剤Wgを1回の補給で用いられる補給用現像剤中のキャリア量(予想平均トナー量Dg×キャリア比率T/トナー比率100−T)で割った、
キャリア平均プリント枚数=W/(D×(T/(100−T))
=220/(0.04×(20/80))=22000
と同値である。
このような補給を行うと、図6の(1)領域では、キャリア入れ替わりがないためにプリント枚数に比例して、キャリア平均プリント枚数は増加していく。キャリア平均プリント枚数22000枚に至った時点で、トナー・キャリア比が80:20である第2の補給用現像剤に変更すると、図6の(2)領域に示すように、キャリア平均プリント枚数が一定状態に飽和する。
つまり、本実施例では初期〜キャリア平均プリント枚数までキャリア交換を行わなくとも、従来のオートリフレッシュ系と、同じキャリア平均プリント枚数、すなわちキャリア劣化度合いを維持することが可能になるのである。
図7は、第1の補給用現像剤と第2の補給用現像剤を上記したようにキャリア平均プリント枚数の飽和値で切り替えて、プリント耐久を行い、耐久枚数とキャリア帯電能変化を評価した結果を示す。比較データとして、従来の補給用現像剤のキャリア比率を変更していない耐久−帯電能変化も挙げている。この結果、図7から見て取れるように、キャリア平均プリント枚数と略同じ傾向で帯電能が変化しており、かぶり・トナー飛散の発生しない帯電能に維持していることが分かる。
また、従来のオートリフレッシュ制御に比べて、早くキャリア帯電能の安定状態に至るため良好な濃度安定性も実現できる。なお第1の補給用現像剤の充填現像剤量は、無駄なキャリア交換をなくすために、キャリア平均プリント枚数でちょうど第2の補給用現像剤に切り替わるように設定している。すなわち、本実施例では、上で述べたキャリア平均プリント枚数と、平均トナー使用量Dを掛け合わせた、
キャリア平均プリント枚数×平均使用トナー量
=W/(D×(T/(100−T))×D
=W/(T/(100−T))
=220/(20/80)
=880 (g)
としている。
なお、ここで述べた第1の補給用現像剤量880gは、無駄なキャリア交換を一切なくすために設定した値である。しかし、第1の補給用現像剤量が880g以下、例えば、従来のオートリフレッシュ系に比べては、上記で述べたようなキャリアランニングコストと濃度安定性の観点で一定のメリットがでる。例えば、小型製品のようにスペースの関係上、第1の補給用現像剤容器が上記で述べた880gを収容できない場合であって、その際の補給用現像剤容量が500gであっても、少なくともトナー500g消費するまでは無駄なキャリア交換を避けられる。そのため、従来のオートリフレッシュ系に比べて上記で述べたメリットが発生することになる。
次に、第1の補給用現像剤と第2の補給用現像剤を切り替える方法について説明する。
例えば、製品に同梱している補給剤カートリッジに第1の補給用現像剤を収容して、装置の作動開始に際して、補給用現像剤容器20に投入し、その後、第1の補給用現像剤を使いきった後の交換用の補給剤カートリッジには第2の補給用現像剤を収容するようにして用いることができる。勿論、補給用現像剤容器20自体が、補給剤カートリッジとされる場合は、この第1の補給用現像剤を収容した補給剤カートリッジを補給用現像剤容器として装置本体に装着する。その後、第1の補給用現像剤を使いきった後、第2の補給用現像剤を収容した交換用の補給剤カートリッジを装置本体に装着する。
また、第1の補給用現像剤と第2の補給用現像剤を切り替える別の方法として、図9に示すように、収納部としての補給用現像剤容器(補給剤カートリッジ)20の内部の補給剤排出口側に第1の補給用現像剤を充填し、補給剤排出口とは逆側に第2の補給用現像剤を充填して、補給時にはまず第1の補給用現像剤が消費され、そののちに第2の補給用現像剤に切り替わる構成を用いても良い。
また、第1の補給用現像剤と第2の補給用現像剤を切り替える別の方法として、図10に示すように、補給用現像剤容器20の内部には第2の補給用現像剤を充填し、補給用現像剤容器20と現像装置4をつなぐホッパー部Aに第1の補給用現像剤を充填しておいても良い。
以上説明したように、本実施例によれば、二種類の補給用現像剤(第1の補給用現像剤、第2の補給用現像剤)を用いており、現像容器内のキャリアの劣化状態、即ち、キャリア平均プリント枚数に応じて、これら補給用現像剤を使い分ける。この構成により、白地部かぶりやトナー飛散等の現像特性を実使用上問題にならないレベルに維持しつつ、しかも無駄なキャリア交換を行わないことが可能になる。更にまた、従来のオートリフレッシュ制御に比べて、早くキャリア帯電能の安定状態に至らせているため、良好な濃度安定性が実現できる。
実施例2
次に、本発明の画像形成装置他の実施例について説明する。画像形成装置の基本的な構成は、実施例1の画像形成装置100と同じであるので、実施例1のものと実質的に同一若しくは相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳細な説明は省略し、本実施例特有の構成部分のみ、詳細に説明する。
実施例1では、第1の補給用現像剤をトナーのみとしたが、少なくとも第2の補給用現像剤よりキャリア比率(即ち、キャリア含有量)が低ければ、実施例1と略同等の効果が見込める。
例えば、第1の補給用現像剤をトナー/キャリア比率を95:5、第2の補給用現像剤を実施例1と同様にトナー/キャリア比率を80:20として、キャリア平均プリント枚数22000枚で第1の補給用現像剤と第2の補給用現像剤を切り替えてもよい。
この場合、キャリア平均プリント枚数は、図8のような曲線を示す。図8の(1)領域までは、第1の補給用現像剤(T/C比=95:5)を使い続けた場合に飽和する枚数に向かって増加していく。しかし、キャリア平均プリント枚数22000枚になった時点で、第2の補給用現像剤に切り替えることにより、その後は、図8の(2)領域に示すように、キャリア平均プリント枚数が一定状態に飽和するため、実施例1で述べた通りの理由から、かぶり等の問題が発生することはない。
なお、ランニングコストを最適化するうえでは、耐久初期で無駄なキャリア交換が一切ない第1の補給用現像剤をトナー比率100%にすることが望ましい。しかしながら、現像剤の種類によって、補給用現像剤中のキャリア比率を急激に変更すると、補給用現像剤の流動性が変動して補給性能が安定しない場合がある。この場合、ランニングコストダウンのメリットを多少損なっても、補給性能の安定化を優先させるほうが望ましい。
上記理由から、実施例2では第1の補給用現像剤のキャリア比率を、第2の補給用現像剤のキャリア比率に若干近づけている。
以上説明したように、本発明の実施例2によれば、実施例1と略同等の効果が得られ、且つ第1の補給用現像剤から第2の補給用現像剤に切り替わる際にも安定した補給性能を実現することが可能になる。
上記実施例では、本発明をタンデム式の中間転写方式カラー画像形成装置に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の原理は、当業者には周知の種々の画像形成装置に適用することができ、モノクロの画像形成装置であっても良い。