JP5426861B2 - 強誘電性酸化物とその製造方法、圧電体、圧電素子 - Google Patents

強誘電性酸化物とその製造方法、圧電体、圧電素子 Download PDF

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Description

本発明は、強誘電性酸化物とその製造方法、強誘電性酸化物を含む強誘電体組成物と圧電体膜、この圧電体膜を用いた圧電素子に関するものである。
電界強度の増減に伴って伸縮する圧電性を有する圧電体と、この圧電体に電界を印加する電極とを備えた圧電素子が、例えばインクジェット式記録ヘッドに搭載されるアクチュエータ等として使用されている。圧電体材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等のペロブスカイト型酸化物が知られている。PZTは電界無印加時において自発分極性を有する強誘電体である。
PZTは、PbTiO(PT)とPbZrO(PZ)との固溶体であり、Zr/Tiの割合を変えたときのPZTの相図を図8に示す。この図は“LANDOLT-BORNSTEIN, Numerical Data and Functional Relationships in Science and Technology, New Series”, GroupIII:Crystal and Solid State Physics, Vol.16, Editors:K.H.Hellwege and A.M.Hellwege, Springer-Verlag Berlin-Heidelberg-New York,1981, p.426,Fig.728に記載の図である。図中、Fは正方晶、Fは菱面体晶を示している。
PZTでは、Tiの割合が多くなると正方晶になりやすく、Zrの割合が多くなると菱面体晶になりやすく、これらがほぼ等モルのときにMPB組成となる。PZTでは、例えばMPB近傍組成であるZr/Ti=52/48のモル比の組成が好適であるとされており、MPB及びその近傍では結晶構造が不安定になり、圧電性能が最も高くなるとされている。MPB及びその近傍では正方晶相と菱面体晶相との2相混晶構造となることが報告されており、電場による相転移によって結晶構造が変化し、その結果分極方向が回転して高い圧電性能が得られている。
ところで、従来の圧電素子では、強誘電体の自発分極軸に合わせた方向に電界を印加することで、自発分極軸方向に伸びる圧電効果を利用することが一般的であった。すなわち、従来は、電界印加方向と自発分極軸方向とが合うように、材料設計を行うことが重要とされてきた(自発分極軸方向=電界印加方向)。しかしながら、強誘電体の上記圧電効果を利用するだけでは歪変位量に限界があり、より大きな歪変位量が求められるようになってきている。
かかる背景下、本発明者は結晶配向性を有する第1の強誘電体相を含み、電界印加により、この第1の強誘電体相の少なくとも一部が結晶系の異なる第2の強誘電体相に相転移する圧電体を備えた圧電素子を提案した(特許文献1)。
この圧電素子では、第1の強誘電体相の相転移に伴う結晶構造の変化による体積変化が得られ、しかも、圧電体は相転移前後のいずれにおいても強誘電体からなり、相転移前後のいずれにおいても強誘電体の圧電効果が得られるので、大きな歪変位量が得られる。
本発明者はさらに、特許文献1において、相転移前の上記強誘電体相の自発分極軸方向と電界印加方向とを変え、好ましくは電界印加方向を相転移後の強誘電体相の自発分極軸方向に一致させることで、エンジニアードドメイン効果等により、より大きな歪変位量が得られることを報告している。
一方、近年、環境負荷に関する関心が高まっており、圧電体の材料に関しても非鉛化の要求が高まっている。非鉛系のペロブスカイト型酸化物では、チタン酸バリウム(BaTiO)がよく知られているが、このチタン酸バリウムをはじめとする非鉛系圧電体はPZTに比べると未だ圧電性は充分とはいえないため、圧電性の高い非鉛系ペロブスカイト型酸化物として、種々の材料系が検討されている。
非特許文献1では、密度汎関数理論によりBiAlO及びBiGaOの最安定な結晶構造とその構造における分極値を計算により求め、Bi(Al,Ga)OがPZTに匹敵する圧電性を有する非鉛系圧電体となりうることが提案されている。
特開2007−116091号公報 Chem. Mater., Vol. 17 (6), pp. 1376 -1380, 2005
上記のとおり、特許文献1に記載の圧電素子では、大きな歪み変位量が得られるため高い圧電性が得られるので、非鉛系の圧電体を用いて特許文献1の圧電素子とすることができれば、圧電性の良好な非鉛系圧電素子を形成可能となる。
従って、特許文献1の圧電素子に適用可能な圧電体の材料及びその組成を簡易な方法により決定することができれば、充分な圧電性を有する非鉛系圧電体及び圧電素子を実現することが可能となる。
非特許文献1では、固溶させる2種類のペロブスカイト型酸化物の結晶構造及び分極値を計算により求めて、Bi(Al,Ga)OがPZTに匹敵する圧電性を有する非鉛系圧電体となりうるとしているが、材料探索までにとどまっており、好適な組成についての設計については記載されていないうえに、菱面体、正方晶の比較検討もない。
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、圧電性能(強誘電性能)に優れた非鉛系ペロブスカイト型酸化物の新規な材料設計思想を提供することを目的とするものである。本発明は特に、本発明者が特許文献1にて提案している電界誘起相転移の系において好適な材料設計思想を提供することを目的とするものである。
本発明はまた、上記材料設計思想に基づいてペロブスカイト型酸化物を製造するペロブスカイト型酸化物の製造方法、及び上記材料設計思想に基づいて設計されたペロブスカイト型酸化物を提供することを目的とするものである。
本発明は、非鉛系ペロブスカイト型酸化物を主に対象としているが、鉛系のペロブスカイト型酸化物及びペロブスカイト型以外の強誘電性酸化物に対しても適用可能である。
本発明の強誘電性酸化物の製造方法は、下記一般式(a)で表される組成を有する強誘電性酸化物の製造方法において、ACOで表される強誘電性酸化物の最も安定な結晶構造Xと、BDOで表される強誘電性酸化物の最も安定な結晶構造Yとが互いに異なる対称性及び分極方向を有し、下記式(1)を充足するように前記強誘電性酸化物の組成を決定し、該組成の強誘電性酸化物を製造することを特徴とするものである。本発明の強誘電性酸化物の製造方法においては、更に、結晶構造Xの時の自発分極密度Pxと、結晶構造Yの時の自発分極密度Pyとが、下記式(2)又は下記式(3)を充足するように組成を決定することが好ましい。また、結晶構造X又はYが正方晶(疑似正方晶を含む)である場合は、正方晶である結晶構造において、下記式(4)を充足するように組成を決定することが好ましい。
また、本発明の強誘電性酸化物は、下記一般式(a)で表される組成を有し、ACOで表される強誘電性酸化物の最も安定な結晶構造Xと、BDOで表される強誘電性酸化物の最も安定な結晶構造Yとが互いに異なる対称性及び分極方向を有し、下記式(1)を充足することを特徴とするものである(但し、Pb(Zr,Ti)Oを除く)。本発明の強誘電性酸化物においては、更に、結晶構造Xの時の自発分極密度Pxと、結晶構造Yの時の自発分極密度Pyとが、下記式(2)又は下記式(3)を充足する組成であることが好ましい。また、結晶構造X又はYが正方晶である場合は、正方晶である結晶構造において、下記式(4)を充足する組成であることが好ましい。
(A,B1-x)(C,D1-y)O・・・(a)
(式(a)中、0≦x≦1、0≦y≦1。A,B:Aサイト元素、C,D:Bサイト元素、O:酸素原子、A〜Dは各々1種又は複数種の金属元素。A,Bは互いに異なる組成でもよいし、共通の組成でもよい。ただし、AとBが共通の組成の場合、CとDとは互いに異なる組成である。C,Dは互いに異なる組成でもよいし、共通の組成でもよい。ただし、CとDが共通の組成の場合、AとBとは互いに異なる組成である。)
|E(X)−E(Y)|≦E・PV ・・・(1)、
(式(1)中、E(X)及びE(Y)はそれぞれ、上記一般式(a)で表される強誘電性酸化物の結晶構造X及びYの時のエネルギー、Pは電場をかける前の自発分極密度ベクトル、Eは駆動電場ベクトル、Vは基本格子の体積である。E・P はEとPの内積である。)、
|Px/Py|>1.1 ・・・(2)、
|Py/Px|>1.1 ・・・(3)、
c/a≧1.008 ・・・(4)
(式(4)中、cは正方晶である結晶構造X又は結晶構造Yにおけるc軸長、aは正方晶である結晶構造X又は結晶構造Yにおけるa軸長。)
自発分極密度ベクトルP及び基本格子の体積Vは、式(a)で表わされる強誘電性酸化物において結晶構造Xの時のものであっても、結晶構造Yの時のものであってもよい。
本発明では、上記一般式(a)で表される強誘電性酸化物について、ACOで表される強誘電性酸化物の最も安定な結晶構造Xと、BDOで表される強誘電性酸化物の最も安定な結晶構造Yを各々計算により理論的に求め、XとYとが互いに異なる対称性及び分極方向を有する結晶構造となる組み合わせを選定し、上記規定の関係となるように、上記一般式(a)の組成を決定する。式(1)を充足する強誘電性酸化物は、MPB組成近傍の組成を有し、結晶構造XとYとが混在しているものとなる。一般に、薄膜の場合は、強誘電性酸化物のMPB組成近傍となる組成は、バルクに比して±8%程度幅を持つことが知られている(S.Yokoyama et. Al, J. of Applied Physics 98, 094106(2005)のFig.3等を参照。)。従って、本発明において決定されるx及びyは、薄膜である場合は、式(1)を充足するxとyの最小値であるxminとyminの値、及び式(1)を充足するxとyの最大値であるxmaxとymaxの値を求め、最小値に-8%、最大値に+8%の幅に含まれる組成であるとする。また、少量のドーパントを含む場合も同様に、母体酸化物において求められた組成に比して±8%程度幅を持つと考えられる。ただし、最小値の下限は0、最大値の上限は1とする。また、AとBが同一の元素である場合はxの値は考慮しないものとし、同様に、CとDが同一の元素である場合はyの値は考慮しないものとする。
本発明は、このように材料設計を行うものであって、強誘電性酸化物の結晶構造は特に制限されない。本発明の強誘電性酸化物としては、ペロブスカイト型酸化物やイルメナイト型酸化物等があげられる。
また、本発明の強誘電性酸化物の相構造は特に制限されない。従って、本発明の強誘電性酸化物は、ACO、BDOの2成分が共存した2相混晶構造になる場合もあるし、ACO、BDOが完全固溶して1つの相になる場合もある。
本発明において決定される組成は、直接数値を代入して得られた計算結果によるものだけでなく、複数のデータから得られた検量線を用いて決定される組成も含む。例えば、一般式(a)において、Aサイト及びBサイトのいずれかのサイトが複数種の金属元素からなる強誘電性酸化物である場合、複数種の金属元素からなるAサイト又はBサイトの組成に対して、この組成を有する式(a)で表される強誘電性酸化物の結晶構造Xの時のエネルギーと結晶構造Yの時のエネルギーとの差であるE(X)−E(Y)をプロットして組成とE(X)−E(Y)との関係を示す検量線を作成し、この検量線を用いて前記組成を決定することができる。ここで、式(1)における基本格子の体積Vや自発分極密度ベクトルPについても、エネルギーと同様に複数のデータから得られた検量線を用いた値であってもよいし、あるいは、式(1)を充足する組成に最も近い計算値を利用してもよい。
本発明の強誘電体組成物は、上記の本発明の強誘電性酸化物を含むことを特徴とするものである。
本発明の圧電体は、上記の本発明の強誘電性酸化物を含むことを特徴とするものである。本発明の圧電体の形態としては、圧電膜が挙げられる。
また、本発明の圧電素子は、上記の本発明の圧電体と、その圧電体に電界を印加する電極とを備えたことを特徴とするものである。
本発明は、圧電性能(強誘電性能)に優れた強誘電性酸化物の新規な材料設計思想を提供するものである。本発明によれば、圧電性能(強誘電性能)に優れた強誘電性酸化物の組成を容易に設計することができる。
本発明は特に、本発明者が特開2007−116091号にて提案している電界誘起相転移の系において好適な材料設計思想を提供するものである。本発明によれば、相転移が起こりやすく、比較的低い電界強度においても大きな歪変位量が得られるドメイン構造の強誘電性酸化物を提供することができる。
また、上記式(2)又は(3)を充足する強誘電性酸化物においては、相転移の前後での自発分極密度の差が大きいため、より大きな歪み変位量を得ることができる。
上記材料設計思想に基づいて設計された本発明の強誘電性酸化物を用いることにより、圧電性能に優れた圧電素子を提供することができる。
「強誘電性酸化物」
本発明の強誘電性酸化物の製造方法は、下記一般式(a)で表される組成を有する強誘電性酸化物の製造方法において、ACOで表される強誘電性酸化物の最も安定な結晶構造Xと、BDOで表される強誘電性酸化物の最も安定な結晶構造Yとが互いに異なる対称性及び分極方向を有し、下記式(1)を充足するように前記強誘電性酸化物の組成を決定し、該組成の強誘電性酸化物を製造することを特徴とするものである。本発明の強誘電性酸化物の製造方法においては、更に、結晶構造Xの時の自発分極密度Pxと、結晶構造Yの時の自発分極密度Pyとが、下記式(2)又は下記式(3)を充足するように組成を決定することが好ましい。また、結晶構造X又はYが正方晶である場合は、正方晶である結晶構造において、下記式(4)を充足するように組成を決定することが好ましい。
また、本発明の強誘電性酸化物は、下記一般式(a)で表される組成を有し、ACOで表される強誘電性酸化物の最も安定な結晶構造Xと、BDOで表される強誘電性酸化物の最も安定な結晶構造Yとが互いに異なる対称性及び分極方向を有し、下記式(1)を充足することを特徴とするものである(但し、Pb(Zr,Ti)Oを除く)。本発明の強誘電性酸化物においては、更に、下記式(2)又は下記式(3)を充足する組成であることが好ましい。また、結晶構造X又はYが正方晶である場合は、正方晶である結晶構造において、下記式(4)を充足する組成であることが好ましい。
(A,B1-x)(C,D1-y)O・・・(a)
(式(a)中、0≦x≦1、0≦y≦1。A,B:Aサイト元素、C,D:Bサイト元素、O:酸素原子、A〜Dは各々1種又は複数種の金属元素。A,Bは互いに異なる組成でもよいし、共通の組成でもよい。ただし、AとBが共通の組成の場合、CとDとは互いに異なる組成である。C,Dは互いに異なる組成でもよいし、共通の組成でもよい。ただし、CとDが共通の組成の場合、AとBとは互いに異なる組成である。)、
|E(X)−E(Y)|≦E・PV・・・(1)、
(式(1)中、E(X)及びE(Y)はそれぞれ、上記一般式(a)で表される強誘電性酸化物の結晶構造X及びYの時のエネルギー、Pは電場をかける前の自発分極密度ベクトル、Eは駆動電場ベクトル、Vは基本格子の体積である。E・PはEとPの内積である。)、
|Px/Py|>1.1 ・・・(2)、
|Py/Px|>1.1 ・・・(3)、
(式(2)及び(3)中、Px及びPyは、上記一般式(a)で表される強誘電性酸化物の結晶構造X及び結晶構造Yの時の自発分極密度。)、
c/a≧1.008 ・・・(4)
(式(4)中、cは正方晶である結晶構造X又は結晶構造Yにおけるc軸長、aは正方晶である結晶構造X又は結晶構造Yにおけるa軸長。)
「背景技術」の項で述べたように、MPB近傍の組成のPZTでは、電場による相転移によって結晶構造が変化し、その結果分極軸が回転して高い圧電性能が得られており、また、特開2007−116091号において本発明者が報告しているように、本発明者は結晶配向性を有する第1の強誘電体相を含み、電界印加により、この第1の強誘電体相の少なくとも一部が結晶系の異なる第2の強誘電体相に相転移する圧電体を備えた圧電素子を提案し、相転移に伴う分極軸の回転による変位と、相転移前後の強誘電体の分極絶対値の変化に伴う圧電効果とにより大きな歪変位量が得られる。
従って、電場による相転移を利用可能な強誘電性酸化物、つまりMPB組成あるいはその近傍の組成を有する強誘電性酸化物を理論的に決定することが可能であれば、種々の材料系において高い圧電性能を有する強誘電性酸化物を提供することが可能となる。
本発明者は、かかる強誘電性酸化物の組成を計算により決定する方法を見いだした。本発明では、上記一般式(a)で表される強誘電性酸化物の組成を、まずMPBを形成しうる強誘電性酸化物の材料選定し、次いで選定した強誘電性酸化物におけるMPB組成あるいはその近傍の組成を決定し、そして、決定された組成となるように強誘電性酸化物を製造する。
本発明の強誘電性酸化物の製造方法は、理論的に組成を決定し、その組成の有する強誘電性酸化物を製造するものであるため、組成決定後の実際の製造において、製造方法は、決定された組成となるように組成制御を行って製造可能な製造方法であればよく、特に限定されない。一般的な強誘電性酸化物の製造方法の中で組成制御が可能なものとしては、例えば、バルク体である場合は酸化物混合法などの通常の焼結法、厚膜である場合はスクリーン印刷法やグリーンシート法、薄膜である場合はパルスレーザデポジション法(PLD法)、スパッタ法、有機金属化学気相堆積法(MOCVD法)等の気相法や、ゾルゲル法や有機金属分解法(MOD法)等の液相法等が挙げられる。製造方法によって組成制御に必要な設定条件は様々であるため、その製造方法に応じて、決定された組成の強誘電性酸化物が製造可能な製造条件を設定して製造する(後記実施例を参照)。
材料の選定は、上記一般式(a)で表される強誘電性酸化物において、ACOで表される強誘電性酸化物及びBDOで表される強誘電性酸化物の、エネルギー的に最安定な結晶構造X及びYを計算により求め、計算により求められた最安定な結晶構造XとYとが互いに異なる対称性及び分極方向を有する結晶構造となるようにACOと、BDOを決定する。最安定な結晶構造XとYの決定において、ACOやBDOが強磁性や反強磁性を有する酸化物である場合には、強磁性や反強磁性の型も考慮して最安定な結晶構造を求める(後記実施例2を参照)。
最安定な結晶構造の異なるACOとBDOを決定後、これらの複合酸化物(固溶体)である一般式(a)で表される強誘電性酸化物において、MPB組成の近傍となる組成を決定する。MPB組成とは、異なる結晶構造の相境界の組成であるため、MPB組成の強誘電性酸化物は、電界の印加等の環境が僅かに変化することよって相転移を生じやすいものとなる。すなわち、MPB組成では、相転移前後での各結晶構造におけるエネルギーE(X)とE(Y)とがほぼ同一となっている。
従って、一般式(a)で表される強誘電性酸化物の、各結晶構造におけるエネルギーE(X)とE(Y)を計算し、各E(X)とE(Y)との差の絶対値である|E(X)−E(Y)|をより0に近づけることにより、MPB組成あるいはその近傍の組成とすることができる。|E(X)−E(Y)|が上記式(1)を充足する範囲内であれば、MPB組成あるいはその近傍の組成となり、電場による相転移を利用可能な強誘電性酸化物とすることができる。上記式(1)の右辺は、駆動電場によって構造相転移を起こす目安となる値である。圧電素子の一般的な駆動電場を考慮すれば、駆動電場Vが10〜500kV/cmにおいて式(1)を充足していることが好ましく、200kV/cmの近傍で充足していることがより好ましい。
本発明において、結晶の全エネルギーの計算方法は特に制限されず、密度汎関数法を用いた第1原理計算によりKohn−Sham方程式を解く方法等が挙げられる。全エネルギーの計算においては、仮定した結晶構造に対する格子定数及び原子座標の最適化ステップを含んでいる。その際に用いる結晶ユニットセルの体積は、計算値だけではなく、実験値を利用してもよい。その他の計算手法としては、分子軌道法、分子動力学法、モンテカルロ法等が挙げられる。
密度汎関数法を用いる場合は、局所密度近似(Local density approximation,LDA)や擬ポテンシャル近似等、種々の近似法を用いてよい。更に、複合酸化物(固溶体)の全エネルギーの計算においては、結晶ユニットセルの代わりにスーパーセルを用いた元素組成の近似や、Virtual Crystal Approximation(VCA)法やKKR法等の固溶性の近似する方法等を利用してもよい。
以下に具体的な手法について、Aサイト元素をAとし、Bサイト元素を異ならせた場合(A(C,D)O)を例に説明する。
まず、Aサイト元素のイオン価数を考慮し、Aサイト元素とBサイト元素のイオン価数の合計が6価となるようにBサイト元素を選択する。例えば、Aサイト元素が3価である場合は3価の元素(33系)、2価である場合は4価の元素(24系)を選択すればよい。Bサイト元素として考えられる元素Zを選びだし、AZOで表される酸化物の全エネルギーを計算し、AZOの最安定な結晶構造を決定する。計算方法として第1原理計算を用いる場合は、AZOに対して、いくつかの結晶対称性を仮定して全エネルギーを計算し、得られた全エネルギー値を比較して最も低いエネルギーの結晶構造をAZOの最安定な結晶構造とする。
かかる計算を複数のZに対して実施して、種々のAZOの最安定な結晶構造を求め、最安定な結晶構造が互いに異なる対称性及び分極方向を有する2種類のAZO(ACOとADO)を決定する。
ACOとADOを決定後、A(C,D)Oで表される強誘電性酸化物に対して、ACOの最安定な結晶構造であるXの時と、ADOの最安定な結晶構造Yの時の全エネルギーE(X)及びE(Y)を計算し、上記式(1)を充足するようにA(C,D)Oの組成を決定する。
密度汎関数法を用いた第1原理計算による複合酸化物(固溶体)の全エネルギーの計算においては、上記したように結晶の体積をユニットセルの代わりにスーパーセルを用いた元素組成の近似を用いるが、この場合、計算可能なBiCOとBiDOの組成比が制限される。その場合の組成決定においては、直接数値を代入して得られた計算結果により得られた組成に加え、複数の計算結果から得られた検量線を用いて決定される組成も含む。例えば、A(C,D)OにおけるCとDの組成に対して、計算により得られたE(X)−E(Y)をプロットして、組成とE(X)−E(Y)との関係を示す検量線を作成し、この検量線を用いて上記式(1)を満たすように組成を決定してもよい(後記実施例1の図6を参照)。また、VCAなどの近似によってC,Dの組成比で決まる仮想的な原子を利用することで式(1)を満たす組成を決定してもよい。
以上のようにして本発明の強誘電性酸化物の組成を決定することができる。
上記のようにして得られた組成の強誘電性酸化物は、MPB組成あるいはその近傍の組成を有するので、電場による相転移に伴う分極軸の回転により高い圧電性能(圧電利得)を有するものとなる。
現在までにMPB組成が既にわかっている強誘電性酸化物としては、「背景技術」の項において挙げたPZTがよく知られている。MPB組成は、それぞれを形成する原子種とその組み合わせによって異なるものであり、材料固有の値であるため、公知のMPB組成の値やその近傍の値から容易に導き出されるものではない。そのため、MPB組成の探索は進められているものの、MPB組成が見出された強誘電性酸化物は通常の実験で確認できるものに限定されている。本発明は、まだ知られていない、MPB組成を有する新規強誘電性酸化物を計算によって見出し、その組成が得られるように製造条件を制御してその新規強誘電性酸化物を製造することを可能にしたものである。上記一般式(a)には、公知であるMPB組成のPZTも含まれることになるが、PZT以外は、これまで見出すことのできなかった、MPB組成を有する新規強誘電性酸化物であり、MPB組成のPZTが上記式(1)を満足するものであり、式(1)をMPB組成の探索に積極的に利用することは従来知られていたものでもない。
「課題を解決するための手段」の項において説明したように、本発明では、上記のように材料設計を行うのであって、本発明の強誘電性酸化物の相構造は、特に制限されない。したがって、本発明の強誘電性酸化物は、ACO、BDOの2成分が共存した2相混晶構造になる場合もあるし、ACO、BDOが完全固溶して1つの相になる場合もあるし、その他の構造もあり得る。
また、本発明において、Aサイト元素にPb以外の元素を選択することにより、非鉛系において高い圧電性能を有する強誘電性酸化物の組成を決定することが可能である。
従来、Pb系(鉛系)の強誘電性酸化物においては、圧電性能と、Aサイト元素の平均原子量MとBサイト元素の平均原子量Mとの差|M−M|とには相関があり、|M−M|が大きいほど電気機械結合係数kが大きくなり、圧電性能が優れることが報告されている(東芝レビューVol.59, No. 10, p.41 (2004))。本発明者は、非鉛系の強誘電性酸化物においても同様の相関があることを見出している。
従って、上記の組成決定の際に、|M−M|が大きくなるように、Aサイト元素とBサイト元素とを選択することにより、より優れた圧電性能を得ることができると考えられる。例えば、Aサイト元素としてできるだけ質量Mの大きいものPb以外の元素を選択し、Bサイト元素としてできるだけ質量Mの小さいものを選択すればよい。上記した文献に記載された鉛系の強誘電性酸化物における|M−M|の値から判断すると、|M−M|は110以上が好ましい。
Pb以外のAサイト元素となりうる元素中で、質量の大きいものとしては、Bi(209.0)が挙げられる(()内の数値は原子量)。従って、本発明においてAサイト元素を、Biを含むものとして強誘電性酸化物の組成を決定することが好ましい。
また、上記したように、本発明の強誘電性酸化物は、電場による相転移に伴う分極軸の回転(以下、分極回転とする)により高い圧電性能(圧電利得,分極応答効果)を有するものである。図1(a)に分極回転による圧電利得を示す模式図を示す。図1(a)では、菱面体晶から正方晶への相転移による分極回転を利用する場合を例に、各結晶構造とその自発分極軸を示してある。また、図1(b)に、図1(a)に示される系において電場による相転移を生じた時の自発分極軸の回転の様子を示す。図示されるように、この系では、[111]方向の菱面体晶の自発分極軸が、正方晶に相転移することによって[001]方向に回転し、電圧印加方向の自発分極成分がΔP延びている。圧電利得は、ΔPにほぼ比例することから、ΔPが大きくなるほどより大きな圧電利得を有することになる。
ここで、本発明者は、分極回転前後で生じるΔPは、相転移前後での自発分極密度の大きさの絶対値の差が大きいほど、大きくなることに着目し、上記の計算による組成決定において、更に相転移の前後での自発分極の大きさを計算により求め、電界印加前(相転移前)の自発分極密度と相転移後の自発分極密度との比が大きくなるようにすることで、より大きな圧電利得(分極応答効果)を有する強誘電性酸化物を設計可能であることを見いだした。図2に、相転移前後での自発分極密度の大きさの絶対値の差が大きい場合の分極回転による圧電利得を示す模式図を示す。図2において(a)及び(b)は図1に対応している。
図2に示される系では、相転移後の結晶系である正方晶のc軸の大きさがa軸の大きさに比して大きく(c/a>0)、相転移により系全体がc軸方向に大きく伸張するためc軸方向への変位が大きくなり、圧電性が高くなり、またc/aが大きいことで原子がc軸方向に大きく変位し、自発分極密度の絶対値が大きくなる。図3に、PZTおよびBi系酸化物の正方晶におけるc/a値と自発分極密度との関係を調べた結果を示す。図3には、c/a値が大きいほど自発分極密度が大きくなることが示されている。従って、図2に示される系では、自発分極軸の向きが変化する分極の回転効果による圧電利得に加え、系全体をc軸方向に大きく伸張する効果により大きな圧電利得を得ることができる。さらに相転移前後の分極値の絶対値量の変化が大きいことにより、圧電e係数が高くなり、感度の高い圧電素子が実現可能になる。
現在、圧電素子としては圧電定数d33が200pm/V以上の特性が要求されている。自発分極密度Pxと自発分極密度Pyとが、相転移後の結晶系が結晶構造Xである場合は下記式(2)を、相転移後の結晶系が結晶構造Yである場合は下記式(3)を充足すれば、分極回転による圧電効果により、圧電定数d33を200pm/V以上とすることができる。
|Px/Py|>1.1 ・・・(2)、
|Py/Px|>1.1 ・・・(3)
また、相転移後の結晶系が正方晶である場合は下記式(4)を充足する場合にも、圧電定数d33を200pm/V以上とすることができる。この理由は、d33= 200pm/Vを電場200kV/cmで菱面体から正方晶の電界誘起相転移を利用して得るためには、ほぼ菱面体が立方晶で近似できると考えると、c軸方向への歪みηが約0.008であればよく、これはa軸方向の格子定数長が転移によって殆ど変化がないとすると、c/a≧1.008であればよいからである。
c/a≧1.008 ・・・(4)
(式(4)中、cは正方晶である結晶構造X又は結晶構造Yにおけるc軸長、aは正方晶である結晶構造X又は結晶構造Yにおけるa軸長。)
ΔPは電圧印加方向への自発分極密度の差であるので、図2に示される系で、上記式(2)又は(3)を充足すれば、分極が回転する電界誘起相転移によって、回転による効果だけでなく、上記した自発分極密度の絶対値の大きさによる効果も得られる。
自発分極密度Px及びPyの計算は、上記の全エネルギー計算において最適化された格子定数及び原子座標を用い、分極の大きさに関してはBerry位相の方法によって、第1原理計算等により実施することができる。
式(2)又は式(3)を充足する強誘電性酸化物はこれまでに報告された例はなく、MPB組成での相転移による高い圧電効果を有するものとして知られているPZTであってもほぼ1の値で絶対値量の変化は小さい。(後記実施例表3を参照)。本発明では、上記の計算により相転移による分極回転を利用可能であり、かつ相転移前後での自発分極密度の絶対値差の大きい強誘電性酸化物の組成を決定することができる。
更に、特開2007−116091号に示される電界誘起相転移の系では、電界印加により少なくとも一部が結晶系の異なる他の強誘電体相に相転移する性質を有するので、より大きな圧電利得が得られる。以下、発明者が特開2007−116091号にて提案している電界誘起相転移の系について説明する。
図4は、電界印加により結晶系の異なる他の強誘電体相に相転移する性質を有する上記強誘電体相のみからなる圧電体(直線X)及び、相転移による分極回転を利用しない従来の圧電体(直線Y)、相転移前は強誘電体であるが相転移後に常誘電体となる圧電体(直線Z)について電界強度と歪変位量との関係を模式的に示している。ここでは、比較しやすいよう、電界強度0〜E1では直線X,Y,Zの圧電特性を合わせてあり、電界強度E1〜E2では直線X,Zの圧電特性を合わせてある。
図4中、電界強度E1は、上記強誘電体相の相転移が開始する最小の電界強度である。電界強度E2は、上記強誘電体相の相転移が略完全に終了する電界強度である。通常はE1<E2であるが、E1=E2もあり得る。「相転移が略完全に終了する電界強度E2」とは、それ以上電界を印加してもそれ以上相転移が起こらない電界強度を意味している。E2以上の電界強度を印加しても、上記強誘電体相の一部が相転移せずに残る場合がある。
図4に示すように、上記圧電体は、電界強度E=0〜E1(相転移前)では、相転移前の強誘電体相の圧電効果により、電界強度の増加に伴って歪変位量が直線的に増加し、電界強度E=E1〜E2では、相転移に伴う結晶構造の変化による体積変化が起こり、電界強度の増加に伴って歪変位量が直線的に増加し、電界強度E≧E2(相転移後)では、相転移後の強誘電体相の圧電効果により、電界強度の増加に伴って歪変位量が直線的に増加する圧電特性を有するものである。
上記圧電体では、相転移に伴う結晶構造の変化による体積変化(電界強度E=E1〜E2の範囲)が起こり、しかも、圧電体は相転移前後のいずれにおいても強誘電体からなるので、相転移前後のいずれにおいても強誘電体の圧電効果が得られ、電界強度E=0〜E1、E=E1〜E2、E≧E2のいずれの範囲内においても、大きい歪変位量が得られる。
従来は、強誘電体の自発分極軸に合わせた方向に電界を印加することで、自発分極軸方向に伸びる圧電効果を利用することが一般的であった(図4,直線Y)。直線Yに示すように、ある電界強度までは電界強度の増加に対して歪変位量が直線的に増加するが、ある電界強度を超えると、電界強度の増加に対する歪変位量の増加が著しく小さくなり、歪変位量がほぼ飽和する。
また、図4の直線Zのような圧電特性を有する系では、相転移前は強誘電体相の圧電効果により電界強度の増加に対して歪変位量が直線的に増加し、相転移が開始する電界強度E1から相転移が略完了する電界強度E2までは、相転移に伴う結晶構造の変化によって歪変位量が増加し、常誘電体相への相転移が略完了する電界強度E2を超えると、強誘電体相の圧電効果が得られなくなるので、それ以上電界を印加しても、歪変位量は増加しない。
電界印加により結晶系の異なる他の強誘電体相に相転移する性質を有する強誘電体相からなる圧電体では、従来よりも、より大きな歪変位量が得られる。この圧電体は、最小電界強度Emin及び最大電界強度Emaxが、下記式(5)を充足する条件で駆動されることが好ましく、下記式(6)を充足する条件で駆動されることが特に好ましい。
Emin<E1<Emax・・・(5)、
Emin<E1≦E2<Emax・・・(6)
上記電界誘起相転移の系においては、相転移が起こる強誘電体相が、自発分極軸方向とは異なる方向に結晶配向性を有していることが好ましく、相転移後の自発分極軸方向と略一致した方向に結晶配向性を有していることが特に好ましい。通常、結晶配向方向が電界印加方向である。
電界印加方向を相転移後の自発分極軸方向と略一致させる場合には、相転移前において、「エンジニアードドメイン効果」により、電界印加方向を相転移前の自発分極軸方向に合わせるよりも大きな変位量が得られ、好ましい。単結晶体のエンジニアードドメイン効果は、“Ultrahigh strain and piezoelectric behavior in relaxor based ferroelectric single crystals”, S.E.Park et.al., JAP, 82, 1804(1997)に記載されている。
また、電界印加方向を相転移後の自発分極軸方向と略一致させることで、相転移が起こりやすくなる。これは、自発分極軸方向と電界印加方向とが合う方が結晶的に安定であり、より安定な結晶系へ相転移しやすくなるためと推察される。電界強度E2以上の電界を印加しても、相転移せずに強誘電体相の一部が残る場合があるが、相転移が効率よく進行することで、電界強度E2以上の電界を印加した際に、相転移せずに残る強誘電体相の割合を少なくすることができる。この結果として、電界印加方向を相転移前の自発分極軸方向に合わせるよりも、大きな歪変位量が安定的に得られる。
さらに、相転移後は、電界印加方向と自発分極軸方向とが略一致することになるので、相転移後の強誘電体相の圧電効果が効果的に発現し、大きな歪変位量が安定的に得られる。
以上のように、電界印加方向を相転移後の自発分極軸方向と略一致させる場合には、相転移前、相転移中、相転移後のすべてにおいて、高い歪変位量が得られる。この効果は、少なくとも相転移前の強誘電体相の自発分極軸方向が電界印加方向と異なる方向であれば得られ、電界印加方向が相転移後の強誘電体相の自発分極軸方向に近い程、顕著に発現する。
本発明では、相転移の前後において強誘電性を有する材料を選択することにより、上記の特開2007−116091号に記載の電界印加により結晶系の異なる他の強誘電体相に相転移する強誘電性酸化物の組成を決定することが可能である。
以上説明したように、本発明は、圧電性能(強誘電性能)に優れた強誘電性酸化物の新規な材料設計思想を提供するものである。本発明によれば、圧電性能(強誘電性能)に優れた強誘電性酸化物の組成を容易に設計することができる。
本発明は特に、本発明者が特開2007−116091号にて提案している電界誘起相転移の系において好適な材料設計思想を提供するものである。本発明によれば、相転移が起こりやすく、比較的低い電界強度においても大きな歪変位量が得られるドメイン構造の強誘電性酸化物を提供することができる。
また、上記式(2)又は(3)を充足する強誘電性酸化物においては、相転移の前後での自発分極密度の差が大きいため、より大きな歪み変位量を得ることができる。
「強誘電体組成物」
本発明の強誘電体組成物は、上記の本発明の材料設計により設計された本発明の強誘電性酸化物を含むことを特徴とするものである。
本発明の強誘電体組成物は、上記の本発明の強誘電性酸化物以外の強誘電性酸化物、他の添加元素、焼結助剤など、上記の本発明の強誘電性酸化物以外の任意成分を含むことができる。
「圧電素子(強誘電体素子)、及びインクジェット式記録ヘッド」
本発明の圧電素子(強誘電体素子)は、上記の本発明の材料設計に基づいて設計された本発明の強誘電性酸化物を含む圧電体と、該圧電体に対して電界を印加する電極とを備えたことを特徴とするものである。
本発明の圧電素子は、本発明の強誘電性酸化物を用いたものであるので、高い圧電性能を示すものとなる。以下、図5に基づいて、この圧電素子の一実施形態、及びこれを備えたインクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)の構造について説明する。
図5はインクジェット式記録ヘッドの要部断面図(圧電素子の厚み方向の断面図)である。視認しやすくするため、構成要素の縮尺は実際のものとは適宜異ならせてある。
図5に示す圧電素子1は、基板11の表面に、下部電極12と圧電体13と上部電極14とが順次積層された素子である。圧電体13は、上記の本発明の材料設計により設計された本発明の強誘電性酸化物からなる多結晶体(不可避不純物を含んでいてもよい。)である。
基板11としては特に制限なく、シリコン,ガラス,ステンレス(SUS),イットリウム安定化ジルコニア(YSZ),アルミナ,サファイヤ,及びシリコンカーバイド等の基板が挙げられる。基板11としては、シリコン基板上にSiO膜とSi活性層とが順次積層されたSOI基板等の積層基板を用いてもよい。
下部電極12の主成分としては特に制限なく、Au,Pt,Ir,IrO,RuO,LaNiO,及びSrRuO等の金属又は金属酸化物、及びこれらの組合せが挙げられる。上部電極14の主成分としては特に制限なく、下部電極12で例示した材料,Al,Ta,Cr,Cu等の一般的に半導体プロセスで用いられている電極材料、及びこれらの組合せが挙げられる。下部電極12と上部電極14の厚みは特に制限なく、50〜500nmであることが好ましい。
圧電アクチュエータ2は、圧電素子1の基板11の裏面に、圧電体13の伸縮により振動する振動板16が取り付けられたものである。圧電アクチュエータ2には、圧電素子1を駆動する駆動回路等の制御手段15も備えられている。
インクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)3は、概略、圧電アクチュエータ2の裏面に、インクが貯留されるインク室(液体貯留室)21及びインク室21から外部にインクが吐出されるインク吐出口(液体吐出口)22を有するインクノズル(液体貯留吐出部材)20が取り付けられたものである。
インクジェット式記録ヘッド3では、圧電素子1に印加する電界強度を増減させて圧電素子1を伸縮させ、これによってインク室21からのインクの吐出や吐出量の制御が行われる。
基板11とは独立した部材の振動板16及びインクノズル20を取り付ける代わりに、基板11の一部を振動板16及びインクノズル20に加工してもよい。例えば、基板11がSOI基板等の積層基板からなる場合には、基板11を裏面側からエッチングしてインク室21を形成し、基板自体の加工により振動板16とインクノズル20とを形成することができる。
圧電体13の形態は特に制限されないが、インクジェット式記録ヘッド等の用途では、高画質化等のために、圧電素子の高密度化が検討されており、それに伴って圧電素子の薄型化が検討されているため、圧電素子の薄型化を考慮すれば、圧電体13としては圧電膜が好ましく、厚み20μm以下の圧電薄膜がより好ましい。本発明の強誘電性酸化物は高い圧電定数を有するので、より高い圧電定数が必要とされる薄膜に有効である。
本実施形態において、圧電体13は上記本発明の強誘電性酸化物を含むものであるので、MPB組成あるいはその近傍の組成を有する強誘電性酸化物、つまり電場による相転移を利用可能な強誘電性酸化物である。圧電素子1を非鉛系の圧電素子とする場合には、Biを含む上記本発明の強誘電性酸化物であることが好ましい。
本実施形態の圧電素子1では、基本的には、圧電体13における相転移は、電界強度を変化させるだけで実施されるように、設計を行うことが好ましい。すなわち、圧電体13の組成及びいずれの結晶系間の相転移を採用するかは、使用環境温度に相転移温度を有する系となるよう、決定することが好ましい。ただし、必要に応じて、素子温度が相転移温度となるよう、調温することは差し支えない。いずれにせよ、相転移温度又はその近傍で駆動することで、相転移が効率よく起こり、好ましい。
本実施形態の圧電素子1は、上記の本発明の材料設計により設計された本発明の強誘電性酸化物からなる圧電体13を備えたものであるので、比較的低い電界強度でも高い圧電性能を示すものとなる。
「設計変更」
上記実施形態では、本発明の強誘電性酸化物を含む強誘電体素子として、圧電素子を例に説明したが、本発明の強誘電性酸化物は、圧電素子以外の強誘電体素子にも適用可能である。圧電素子以外の強誘電体素子としては、強誘電体メモリ等が挙げられる。
本発明に係る実施例について、説明する。
(実施例1)
Aサイト元素がBiである強誘電性酸化物について、MPB組成あるいはその近傍の組成を有する組成設計を、密度汎関数法による第1原理計算により実施した。計算には、LDA法に基づいた密度汎関数法において平面波展開を使用する方法を用いた。格子定数及び原子座標の最適化には、PAW法(Projector Augmented-Wave法)及びウルトラソフト擬ポテンシャルを使用した。電子波動関数の平面波展開のカットオフエネルギーは60.0Ryとし、ブリルアンゾーンの6×6×6Monkhorst−Packグリッドで自動的に生成された各k点において波動関数を計算した。格子定数及び原子座標の最適化は、原子間力が0.1mRy/Bohr以下になるまで行った。ここでエネルギー単位Ry(リュードベリ)は、バンド計算において主に使用されるエネルギー単位であり、1Ry=13.6eVに換算される。
Figure 0005426861
計算により得られたエネルギーを表1、格子定数を表2、自発分極密度を表3に示す。自発分極密度はそれぞれの最安定な結晶構造について計算し、各結晶構造における自発分極密度の比を求めた。表3には比較のためにPZTについての同様の計算結果について併せて示してある
表1において、エネルギーの単位はeVであり、結晶構造のエネルギーは最安定となった結晶構造のエネルギーを基準値とした時の相対値で示してある。表1に示されるように、BiGaOは正方晶(P4mm)、BiAlOは菱面体晶(R3c)が最安定な結晶構造である。従って、最安定な結晶構造が互いに異なる対称性及び分極方向を有するBiZO(BiCOとBiDO)として、BiGaOとBiAlOを選択することができることが確認された。
また、表2には、BiGaOとBiAlOとはいずれも正方晶において高い格子定数比(c/a値≧1.008)を有することが示されており、表3にはBiGaOとBiAlOとはいずれも正方晶において高い自発分極密度を有し、いずれも正方晶の自発分極密度Pと菱面体晶の自発分極密度Pとの比であるP/Pが1.1より十分に大きいことが示されている。さらにBiGaOの正方晶での自発分極密度Pは、現状において既知の強誘電体物質中最大の値を示している。PZTの値と比較してもその大きさが確認される。またBiAlOにおいても、自発分極密度PはPZTのそれよりも大きい。したがって、表3より、BiGaOとBiAlOの複合酸化物においては、相転移による分極回転の効果と自発分極密度比P/Pの比の大きさの効果が相まって、電界誘起相転移前後におけるΔPが大きくなると考えられる。
Figure 0005426861
Figure 0005426861
Figure 0005426861
次に、上記式(1)を充足するBi(Al,Ga)Oの組成決定を実施した。まず、Al:Ga=50:50としたBi(Al0.5,Ga0.5)Oについて、スーパーセルを用いた第1原理計算(詳細条件は上記と同様)による全エネルギーの計算、及びBerry位相による自発分極密度の計算を実施した。スーパーセルにおいて、Bサイト原子AlとGaが[111]方向に交互に並んだ構造を採択した。そのため、菱面体ではR3,正方晶の結晶群はI4mm構造となる。一方、シンプルな単純ペロブスカイト構造であるBiGaO3、BiAlOの正方晶はP4mm構造である。計算では、BiGaOの最安定な結晶構造である正方晶、BiAlOの最安定な結晶構造である菱面体晶を仮定した。計算により得られた格子定数を表4に、全エネルギーと自発分極密度を表5に示す。表5においても、表1と同様、結晶構造のエネルギーは最安定となった結晶構造のエネルギーを基準値とした時の相対値で示してある。
表5に示されるように、Bi(Al0.5,Ga0.5)Oでは最安定な結晶構造である菱面体晶(R3)と正方晶(I4mm)とのエネルギー差は0.026eVであり、表1に示されるBiGaO及びBiAlOそれぞれの菱面体晶(R3c)と正方晶(P4mm)とのエネルギー差、BiGaO(0.041)及びBiAlO(0.086)よりも小さくなっている。このことは、最安定な結晶構造が異なるBiGaOとBiAlOとが、複合酸化物(固溶体)となることによって正方晶−菱面体晶間のエネルギー差が小さくなり、電場による相転移が起こりやすくなっていることを示している。
また、表4に示されるように、正方晶における格子定数比も1.26であり、自発分極密度も、正方晶において1.46と非常に大きく、P/Pも1.66程度となっている(表5)。このことから、BiGaOとBiAlOとを複合酸化物(固溶体)としても、BiGaO及びBiAlO単体にみられる高い分極絶対値差が保持され、MPBを利用することにより相転移に伴う分極軸の回転による変位と大きな分極絶対値の増加による変位の両方が得られ、非常に大きな圧電利得(分極応答効果)が期待できることが確認された。
Figure 0005426861
Figure 0005426861
次に、Bi(Al,Ga)OのMPB組成近傍の組成を決定するために、AlとGaの組成に対して、正方晶−菱面体晶エネルギー差E(T)−E(R)をプロットして、組成とE(T)−E(R)との関係を示す検量線を作成した(図6)。検量線の作成には、最小自乗法を用いた。ここで、上記式(1)の右辺を、駆動電場E=200kV/cm、分極値P=0.88C/cm(Bi(Al0.5Ga0.5)Oの菱面体の値)とし、系が菱面体であり分極が[111]方向と電場の方向[001]に向いているとして計算し、エネルギー単位をeVに換算すると約0.004eVとなり、図6よりAl:Ga比が28:72〜34:66の範囲の組成が、電界誘起で構造相転移を利用可能な強誘電性酸化物となりうることがわかった。分極値Pは、Bi系酸化物において、結晶構造が同じであれば、単体の分極値を固溶体として適用することができる。
さらに、薄膜の場合や少量のドーパントを導入した場合は、最大値に+8%、及び最小値に−8%の幅を考慮し、Al:Ga比が20:80〜42:58の組成が電界誘起で構造相転移を利用可能とすることができる。また、E(T)−E(R)はAl:Ga=30:70付近においてほぼ0となることから、Bi(Al0.3,Ga0.7)OがほぼMPB組成比の物質であると考えられる。
次に、(100)SrTiO基板を用意し、その表面にPLD法により基板温度650℃の条件で、膜厚0.2μmのSrRuO下部電極を形成した。次いでBi1.1Al0.3Ga0.7の組成を有するターゲットを用い、レーザ強度300mJ,レーザパルス周波数5Hz,酸素分圧6.7Pa,基板−ターゲット間距離50mm,ターゲット回転数9.7rpm,基板温度を600℃として同じくPLD法にて、膜厚200nmの強誘電体膜を成膜した。得られた強誘電体膜について誘導結合プラズマ(ICP)による組成分析を実施したところ、Bi(Al0.3,Ga0.7)Oであることが確認された。更に得られた膜についてX線回折(XRD)による結晶構造解析を行ったところ、ペロブスカイト単相膜であることが確認された。
Bi(Al0.3,Ga0.7)Oは、Bi(Al0.5,Ga0.5)Oに比してGaリッチな組成であるので、その特性はBiGaOよりに近づくと考えられる。表3及び表5に示されるように、BiAlOのP/Pは1.83,Bi(Al0.5,Ga0.5)OのP/Pは1.65程度であることから、そのほぼ中間の組成であるBi(Al0.3,Ga0.7)OはP/Pも1.65〜1.83の範囲の値を示すと予測される。また同様に、c/a値も、1.26〜1.29の範囲の値を示すと予測される。これらのことから、Bi(Al0.3,Ga0.7)Oは、相転移に伴う分極軸の回転による変位と大きな分極絶対値の増加による変位の両方が得られる強誘電性酸化物であると考えられる。
(実施例2)
Bサイト元素としてFe及びCoを選定して、Aサイト元素がBiである強誘電性酸化物について、MPB組成あるいはその近傍の組成を有する組成設計を実施した。ここで、BiCoO及びBiFeOは、強誘電体であると同時に、反強磁性体であることから、反強磁性のスピン方向の違い(G型、C型等)で更にエネルギーが異なる結果となる。従って、実施例2では、結晶構造とそれぞれの反強磁性のスピン方向の型の両方を考慮し、その他は実施例1と同様にして、密度汎関数法による第1原理計算により計算を実施した。計算により得られたエネルギーを表6、格子定数を表7、自発分極密度を表8に示す。
表6においても、表1と同様に、エネルギーの単位はeVであり、結晶構造のエネルギーは最安定となった結晶構造のエネルギーを基準値とした時の相対値で示してある。表6に示されるように、BiCoOはC型反強磁性の正方晶(P4mm)、BiFeOはG型反強磁性の菱面体晶(R3c)が最安定な結晶構造である。従って、最安定な結晶構造が互いに異なる対称性及び分極方向を有するBiZO(BiCOとBiDO)として、BiCoOとBiFeOを選択することができることが確認された。実際に高圧合成法にて製造されたそれぞれの単体のバルク焼結体では、上記計算結果と同様の反強磁性及び結晶構造であることが確認されている。
また、表7には、BiCoOとBiFeOとはいずれも正方晶において高い格子定数比(c/a≧1.008)を有することが示されており、表8にはBiCoOとBiFeOとはいずれも正方晶において高い自発分極密度を有し、いずれも正方晶の自発分極密度Pと菱面体晶の自発分極密度Pとの比であるP/Pが1.1より十分に大きいことが示されている。したがって、表7より、BiCoOとBiFeOの複合酸化物においても、相転移による分極回転の効果と自発分極密度比P/Pの比の大きさの効果が相まって、電界誘起相転移前後におけるΔPが大きくなると考えられる。
Figure 0005426861
Figure 0005426861
Figure 0005426861
次に、上記式(1)を充足するBi(Fe,Co)Oの組成決定を実施した。まず、Fe:Co=50:50としたBi(Fe0.5,Co0.5)Oについて、スーパーセルを用いた第1原理計算による全エネルギーの計算、及びBerry位相による自発分極密度の計算を実施した。計算では、スーパーセルにおいて、BiCoOの最も安定な結晶構造である正方晶(P4mm)と、BiFeOの最も安定な結晶構造である菱面体晶(R3c)それぞれについて、反強磁性C型、G型の状態でのエネルギー計算を行った。
計算により得られた全エネルギー及び正方晶における格子定数比を表9に示す。表9においても、表1と同様、結晶構造のエネルギーは最安定となった結晶構造のエネルギーを基準値とした時の相対値で示してある。
表9に示されるように、Bi(Fe0.5,Co0.5)Oでは最安定な結晶構造はC型反強磁性正方晶(P4mm)であり、G型反強磁性菱面体晶(R3c)とC型反強磁性正方晶(P4mm)とのエネルギー差は0.017eVである。この値は、表6に示されるBiFeO及びBiCoOそれぞれのG型反強磁性菱面体晶(R3c)とC型反強磁性正方晶(P4mm)とのエネルギー差(BiFeO(0.079)及びBiCoO(0.178))よりも小さくなっている。このことは、最安定な結晶構造が異なるBiFeOとBiCoOとが、複合酸化物(固溶体)となることによって正方晶−菱面体晶間のエネルギー差が小さくなり、電場による相転移が起こりやすくなっていることを示している。
表9に示されるように、C型反強磁性正方晶(P4mm)おける格子定数比も1.27であり、c/a≧1.008を大きく越える。このことから、BiFeOとBiCoOとを複合酸化物(固溶体)としてもMPBを利用することにより大きな格子定数比の増加が得られ、非常に大きな圧電利得(分極応答効果)が期待できることが確認された。
また、表9には、正方晶(P4mm)において、反強磁性の型の違いによって格子定数比はあまり変化しないことが示されているため、磁性状態は圧電応答には強くは影響しないものと考えられる。このことは、CoとFeの組成比の違いで、C型反強磁性、G型反強磁性の違いがあったとしても、圧電応答への影響は小さいと考える事ができる。
Figure 0005426861
次に、実施例1と同様にして、FeとCoの組成に対して、正方晶−菱面体晶エネルギー差E(R)−E(T)をプロットして、組成とE(R)−E(T)との関係を示す検量線を作成した(図7)。ここで、上記式(1)の右辺を、駆動電場E=200kV/cm、分極値P=0.92C/cm(BiFeOの値)とし、系が菱面体であり分極が[111]方向と電場の方向[001]に向いているとして計算し、エネルギー単位をeVに換算すると約0.003eVとなり、図7よりFe:Co比が63:37〜67:33の範囲が電界誘起で構造相転移を利用可能な組成であるとすることができる。さらに、薄膜の場合や少量のドーパントを導入した場合は、最大値に+8%、及び最小値に−8%の幅を考慮し、Fe:Co比が55:45〜75:25の組成が薄膜下条件で、電界誘起で構造相転移を利用可能な組成とすることができる。また、E(R)-E(T)は、約Fe:Co=65:35でほぼ0になり、この組成がMPB組成であると考えられる。
次に、(100)SrTiO基板を用意し、その表面にPLD法により基板温度650℃の条件で、膜厚0.2μmのSrRuO下部電極を形成した。次いでBi1.1Fe0.65Co0.35の組成を有するターゲットを用い、レーザ強度300mJ,レーザパルス周波数5Hz,酸素分圧6.7Pa,基板−ターゲット間距離50mm,ターゲット回転数9.7rpm,基板温度を600℃として同じくPLD法にて、膜厚200nmの強誘電体膜を成膜した。得られた強誘電体膜について誘導結合プラズマ(ICP)による組成分析を実施したところ、Bi(Fe0.65,Co0.35)Oであることが確認された。更に得られた膜についてX線回折(XRD)による結晶構造解析を行ったところ、ペロブスカイト単相膜であることが確認された。
Bi(Fe0.65,Co0.35)Oは、Bi(Fe0.5,Co0.5)Oに比して僅かにFeリッチな組成であるので、その特性は若干BiFeOよりに近づき、c/a値も、1.27付近の値を示すと予測される。これらのことから、Bi(Fe0.65,Co0.35)Oは、相転移に伴う分極軸の回転による変位と大きな分極絶対値の増加による変位の両方が得られる強誘電性酸化物であると考えられる。
(参考例1)
本発明の強誘電性酸化物の製造方法における組成決定方法の有効性を確認するために、MPB組成が既知の値であるPZTについて、MPB組成のPZTが、式(1)を満足しているかどうかを確認した。
PZTのMPB組成は、Zr:Ti=52:48近傍であるとされている。そこで、MPB組成近傍であるZr:Ti=50:50としたPb(Zr0.5,Ti0.5)Oについて、スーパーセルを用いた第1原理計算(詳細条件は上記と同様)による全エネルギーの計算、及びBerry位相による自発分極密度の計算を実施した。PZTでは、スーパーセルにおいて、Bサイト原子ZrとTiが[111]方向に交互に並んだ正方晶(I4mm)構造,ZrとTiが[001]方向に交互に並んだ正方晶(P4mm)構造,ZrとTiが[111]方向に交互に並んだ菱面体晶(R3m)構造を採択した。
計算により得られた格子定数比、全エネルギー値を表10に示す。表10においても、表1と同様、結晶構造のエネルギーは最安定となった結晶構造のエネルギーを基準値とした時の相対値で示してある。表10に示されるように、正方晶I4mmと菱面体晶R3mとのエネルギー差は約0.001eVである。この値は、上記式(1)の右辺を、駆動電場E=100kV/cm、分極値P=0.71C/cm(PZT菱面体の値)とし、電場が[001]方向、分極は[111]方向にあるとして電場と分極の内積をとり、結晶の基本格子の体積(64Å3)を代入して計算すると、上記式(1)の右辺は、約0.003eVであり、一方PZT(Zr:Ti=50:50)の菱面体構造と正方晶エネルギーの差は約0.001eVとなり、上式(1)を満足している。実際PZTは(バルク結晶体の場合)Zr:Ti=52:48でMPBであり、本発明における組成決定法の妥当性が確認された。
Figure 0005426861
(評価)
実施例1及び実施例2では、MPBを形成する酸化物は全く異なるが、図6及び図7では、いずれも線形性のよい検量線が得られている。このことから、本発明の強誘電性酸化物の製造方法における組成決定方法は、材料の種類に限らず適用可能なものであると考えられる。
また、参考例1により、計算により得られたMPB組成の値の妥当性が確認されている。これにより、本発明の有効性が確認され、また、実施例1及び実施例2により、非鉛系において高い圧電性能を有するMPB組成及びその近傍の組成を有する強誘電性酸化物が見出されたことが確認された。
本発明の圧電素子は、インクジェット式記録ヘッド,磁気記録再生ヘッド,MEMS(Micro Electro-Mechanical Systems)デバイス,マイクロポンプ、及び超音波探触子等に搭載される圧電アクチュエータ、及び強誘電メモリ(FRAM)等に好ましく利用できる。
(a)は菱面体晶から正方晶への相転移による通常の分極回転で生じる圧電利得を示す模式図、(b)は(a)に示される系において電場による相転移を生じた時の自発分極軸の回転の様子を示す図 (a)及び(b)は、電場による相転移による分極回転において自発分極密度の絶対値の増加を伴う場合の図1に対応する図 PZT及びBi系強誘電性酸化物の正方晶伸張度(c/a)と自発分極密度との関係を示す図 電界印加により結晶系の異なる他の強誘電体相に相転移する性質を有する強誘電体相のみからなる圧電体の圧電特性を模式的に示す図 本発明に係る一実施形態の圧電素子及びこれを備えたインクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)の構造を示す要部断面図 実施例1のBサイト元素の組成比に対するE(T)−E(R)をプロットした検量線を示す図 実施例2のBサイト元素の組成比に対するE(R)−E(T)をプロットした検量線を示す図 PZTの相図
符号の説明
1 圧電素子(強誘電体素子)
12、14 電極
13 圧電体(圧電体膜、強誘電体膜)

Claims (4)

  1. 下記一般式(a)で表される組成を有する強誘電性酸化物の製造方法において、ACOで表される強誘電性酸化物の最も安定な結晶構造Xと、BDOで表される強誘電性酸化物の最も安定な結晶構造Yとが互いに異なる対称性及び分極方向を有し、下記式(1)を充足するように前記強誘電性酸化物の組成を決定し、
    該組成の強誘電性酸化物を製造することを特徴とする強誘電性酸化物の製造方法。
    (A,B1-x)(C,D1-y)O・・・(a)
    (式(a)中、0≦x≦1、0≦y≦1。
    A,B:Aサイト元素、C,D:Bサイト元素、O:酸素原子、A〜Dは各々1種又は複数種の金属元素。
    A,Bは互いに異なる組成でもよいし、共通の組成でもよい。ただし、AとBが共通の組成の場合、CとDとは互いに異なる組成である。
    C,Dは互いに異なる組成でもよいし、共通の組成でもよい。ただし、CとDが共通の組成の場合、AとBとは互いに異なる組成である。)、
    |E(X)−E(Y)|≦E・PV・・・(1)
    (式(1)中、E(X)及びE(Y)はそれぞれ、上記一般式(a)で表される強誘電性酸化物の結晶構造X及びYの時のエネルギー、Pは電場をかける前の自発分極密度ベクトル、Eは駆動電場ベクトル、Vは基本格子の体積である。E・PはEとPの内積である。10<E(kV/cm)<500。)
  2. 更に、下記式(2)又は(3)を充足するように組成を決定することを特徴とする請求項1に記載の強誘電性酸化物の製造方法。
    |Px/Py|>1.1 ・・・(2)、
    |Py/Px|>1.1 ・・・(3)
    (式(2)及び(3)中、Px及びPyは、前記一般式(a)で表される強誘電性酸化物の結晶構造X及び結晶構造Yの時の自発分極密度。)
  3. 更に、下記式(4)を充足するように組成を決定することを特徴とする請求項1に記載の強誘電性酸化物の製造方法。
    c/a≧1.008 ・・・(4)
    (式(4)中、cは正方晶である結晶構造X又は結晶構造Yにおけるc軸長、aは正方晶である結晶構造X又は結晶構造Yにおけるa軸長。)
  4. 前記一般式(a)において、Aサイト及びBサイトのいずれかのサイトが複数種の金属元素からなる強誘電性酸化物であり、該複数種の金属元素からなるAサイト又はBサイトの組成に対して、該組成を有する前記式(a)で表される強誘電性酸化物の結晶構造Xの時のエネルギーと結晶構造Yの時のエネルギーとの差であるE(X)−E(Y)をプロットして前記組成と前記差との関係を示す検量線を最小自乗法により作成し、該検量線を用いて前記組成を前記式(1)を充足するように決定することを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の強誘電性酸化物の製造方法。
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